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7319563羽口部材、および、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法
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  • -羽口部材、および、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】羽口部材、および、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/48 20060101AFI20230726BHJP
   F27B 3/22 20060101ALI20230726BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C21C5/48 E
F27B3/22
F27D3/16 Z
C21C5/48 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021207075
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023092079
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊賀棒 公一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 寛之
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0890808(KR,B1)
【文献】実開平05-054532(JP,U)
【文献】特開2016-148102(JP,A)
【文献】実開平05-083691(JP,U)
【文献】特開平04-120211(JP,A)
【文献】特開昭58-153719(JP,A)
【文献】特開昭57-120085(JP,A)
【文献】実開昭60-40454(JP,U)
【文献】特開昭56-94182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/48
C21C 7/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属精錬容器の底部に使用される羽口部材であって、
耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグと、当該プラグを包囲して配置される複数の周囲れんがと、を備え、前記周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、
前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、該周囲れんがの天面の面積が、前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記プラグのプラグ天面の面積の、40%以上70%以下である羽口部材
【請求項2】
溶融金属精錬容器の底部に使用される羽口部材であって、
耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグと、当該プラグを包囲して配置される複数の周囲れんがと、を備え、前記周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、
前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、該周囲れんがの天面の短手方向の平均幅が、当該短手方向を延長する方向に沿う前記プラグのプラグ天面の平均幅の、20%以上50%以下である羽口部材
【請求項3】
前記溶融金属精錬容器の内側から見たときに、前記プラグ天面が正方形であり、前記周囲れんがの天面の長方形の長辺の長さが、前記プラグ天面の一辺よりも長く、前記周囲れんがの天面の長方形の片方の短辺と前記プラグ天面の四辺のうちの一辺とが同一直線上に並ぶように、4つの前記周囲れんがが前記プラグを包囲して前記周囲れんがと前記プラグとの間に隙間ができないように配置される、請求項1又は2に記載の羽口部材
【請求項4】
溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法であって、
耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグを設置する工程と、
前記プラグを包囲する周囲れんがを複数設置する工程と、を含み、
当該プラグに隣接して使用される周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、
当該周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、
前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、該周囲れんがの天面の面積が、前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記プラグのプラグ天面の面積の40%以上70%以下である、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法
【請求項5】
溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法であって、
耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグを設置する工程と、
前記プラグを包囲する周囲れんがを複数設置する工程と、を含み、
当該プラグに隣接して使用される周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、
当該周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、
前記周囲れんがの天面の短手方向の平均幅が、当該短手方向を延長する方向に沿う前記プラグのプラグ天面の平均幅の20%以上50%以下である、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法
【請求項6】
前記溶融金属精錬容器の内側から見たときに、前記プラグ天面が正方形であり、前記周囲れんがの天面の長方形の長辺の長さが、前記プラグ天面の一辺よりも長く、
前記プラグを包囲する前記周囲れんがを複数設置する工程が、前記溶融金属精錬容器の内側から見たときに、前記周囲れんがの天面の長方形の片方の短辺と前記プラグ天面の四辺のうちの一辺とが同一直線上に並ぶように、4つの前記周囲れんがで前記プラグを包囲して前記周囲れんがと前記プラグとの間に隙間ができないように配置される工程を含む、請求項4又は5に記載の溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽口部材、および、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業などにおいて溶融金属を取り扱う容器として、底部に溶融金属を撹拌および精錬するためのガス吹き羽口が設けられた精錬容器が汎用されている。精錬容器の内側の溶融金属が接触する部分は、一般的に耐火物により構成されているが、精錬容器の操業を続けるうちに耐火物が溶損する。この溶損は、羽口の周辺において特に進行しやすいため、特に羽口について耐久性を向上し、長寿命化することが望まれる。
【0003】
羽口の構造としては、耐火物にガスを吹き込むための細管が埋設されている構造のプラグと、当該プラグの周囲に設置された周囲れんがと、の組合せが汎用される。この構造においては、炉外と連通する管体を有するプラグが炉体に固定されているのに対し、周囲れんがは固定されていない。そのため、溶融金属の撹拌や炉自体の動作などに起因して、プラグと周囲れんがとの間および周囲れんが間相互の目地が開く場合がある。このように目地が開くと、溶融金属が流入し、プラグおよび周囲れんがの損耗が進行するおそれがある。
【0004】
そこで、羽口において目地が開くことを防ぐ技術が検討されている。たとえば、国際公開第2019/012601号(特許文献1)には、調整れんが等を使用せずに隙間なくプラグを施工する方法が記載されている。特許文献1に技術によれば、調整れんが等を使用する必要がないため、組付け性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/012601号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術によっては、施工時に隙間が生じにくいものの、操業中に隙間が生じることは十分に回避できなかった。すなわち、特許文献1の技術は、溶融金属の撹拌や炉自体の動作などに起因する隙間の拡大に対しては対策が不十分だった。また、耐火物の膨張に起因する羽口の破損についても、改善の余地があった。
【0007】
そこで、操業中における耐火物の破損を防止して、羽口を長寿命化しうる技術が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る羽口部材は、溶融金属精錬容器の底部に使用される羽口部材であって、耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグと、当該プラグを包囲して配置される複数の周囲れんがと、を備え、前記周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、該周囲れんがの天面の面積が、前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記プラグのプラグ天面の面積の、40%以上70%以下であることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、操業中における耐火物の膨張、溶融金属の撹拌、および炉自体の動きなどに起因する耐火物の破損を好適に防止できるので、羽口を長寿命化しうる。
また、この構成によれば、羽口の長寿命化と良好な施工性とを両立しやすい
【0010】
本発明に係る羽口部材は、溶融金属精錬容器の底部に使用される羽口部材であって、耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグと、当該プラグを包囲して配置される複数の周囲れんがと、を備え、前記周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、該周囲れんがの天面の短手方向の平均幅が、当該短手方向を延長する方向に沿う前記プラグのプラグ天面の平均幅の、20%以上50%以下であることを特徴とする。
【0011】
これらの構成によれば、操業中における耐火物の膨張、溶融金属の撹拌、および炉自体の動きなどに起因する耐火物の破損を好適に防止できるので、羽口を長寿命化しうる。
また、この構成によれば、羽口の長寿命化と良好な施工性とをさらに両立しやすい
【0012】
本発明に係る、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法は、耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグを設置する工程と、前記プラグを包囲する周囲れんがを複数設置する工程と、を含み、当該プラグに隣接して使用される周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、当該周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、該周囲れんがの天面の面積が、前記溶融金属精錬容器の内側に露出して配置される面である前記プラグのプラグ天面の面積の40%以上70%以下である、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置することを特徴とする。
【0013】
これらの構成によれば、操業中における耐火物の膨張、溶融金属の撹拌、および炉自体の動きなどに起因する耐火物の破損を好適に防止できるので、羽口を長寿命化しうる。
また、この構成によれば、羽口の長寿命化と良好な施工性とを両立しやすい
【0014】
本発明に係る、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法は、耐火物および当該耐火物に埋設されている細管を含む芯体部分、ならびに、当該芯体部分を包囲して設けられるブロック部分、を有するプラグを設置する工程と、前記プラグを包囲する周囲れんがを複数設置する工程と、を含み、当該プラグに隣接して使用される周囲れんがの長手方向の長さが、前記プラグの前記ブロック部分の長手方向の長さと実質的に同一であり、当該周囲れんがの天面は実質的に長方形であり、前記周囲れんがの天面の短手方向の平均幅が、当該短手方向を延長する方向に沿う前記プラグのプラグ天面の平均幅の20%以上50%以下である、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置することを特徴とする。
【0015】
これらの構成によれば、操業中における耐火物の膨張、溶融金属の撹拌、および炉自体の動きなどに起因する耐火物の破損を好適に防止できるので、羽口を長寿命化しうる。
また、この構成によれば、羽口の長寿命化と良好な施工性とをさらに両立しやすい
【0016】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
本発明に係る羽口部材は、一態様として、前記溶融金属精錬容器の内側から見たときに、前記プラグ天面が正方形であり、前記周囲れんがの天面の長方形の長辺の長さが、前記プラグ天面の一辺よりも長く、前記周囲れんがの天面の長方形の片方の短辺と前記プラグ天面の四辺のうちの一辺とが同一直線上に並ぶように、4つの前記周囲れんがが前記プラグを包囲して前記周囲れんがと前記プラグとの間に隙間ができないように配置されることが好ましい。
本発明に係る、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法は、一態様として、前記溶融金属精錬容器の内側から見たときに、前記プラグ天面が正方形であり、前記周囲れんがの天面の長方形の長辺の長さが、前記プラグ天面の一辺よりも長く、前記プラグを包囲する前記周囲れんがを複数設置する工程が、前記溶融金属精錬容器の内側から見たときに、前記周囲れんがの天面の長方形の片方の短辺と前記プラグ天面の四辺のうちの一辺とが同一直線上に並ぶように、4つの前記周囲れんがで前記プラグを包囲して前記周囲れんがと前記プラグとの間に隙間ができないように配置される工程を含むことが好ましい。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る電気炉の羽口部材周辺の縦断面図である。
図2】実施形態に係る羽口部材を電気炉の内側から見た図である。
図3】実施形態に係る羽口部材の縦断面図である。
図4】従来技術に係る羽口部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る周囲れんが、羽口部材、および、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法(以下、「設置方法」という。)、の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、電気炉100(溶融金属精錬容器の例である。)の底部に使用される周囲れんが1(本発明に係る周囲れんがの一実施形態である。)、ならびに周囲れんが1とプラグ2とを備える羽口部材10(本発明に係る羽口部材の一実施形態である。)を例として説明する。なお、電気炉100の底部に周囲れんが1およびプラグ2を設置する方法は、本発明に係る設置方法の一実施形態である。
【0020】
なお、以下の説明において部材の形状を説明する目的で用いられる各用語は、数学的な定義に従って解釈されるべきではなく、当該形状を工業的に実装する際に通常適用される変形がなされた形状を含んで解釈されるべきである。たとえば、「四角形」は、数学的に定義される四角形(四本の直線によって画定される形状)に限定されず、数学的な定義に従う四角形を工業的に実装するために通常適用される変形(丸み付け、面取りなど)が加えられた実質的に四角形とみなしうる形状を含む。
【0021】
〔電気炉の構成〕
まず、本実施形態に係る周囲れんが1、羽口部材10、および設置方法の適用対象である電気炉100について説明する(図1)。本実施形態に係る電気炉100は、溶融金属容器として使用される電気炉として公知の構成である。電気炉100は、耐火物により構成された略円筒状の本体部101を有する。電気炉100の底部100aは中央部が外側(下方)に突出した曲面状に形成されており、本体部101は曲面状の底面102を形成している。
【0022】
電気炉100の底部100aには、本体部101を覆う鉄皮(不図示)が設けられている。底部100aに設けられた羽口103は精錬ガス供給源(不図示)に接続されており、羽口103を通じて電気炉100の内部に精錬ガスを吹き込むことができるように構成されている。なお、電気炉100に設けられた加熱手段などは公知の構成であり、図示および説明を省略する。
【0023】
〔羽口部材の構成〕
羽口部材10は、複数の周囲れんが1と、プラグ2とを備える。複数の周囲れんが1は、プラグ2を包囲して配置される(図2図3)。なお、図2および図3には、周囲れんが1のさらに外側に設置される炉底れんがRを併せて図示しているが、炉底れんがRは羽口部材10の構成要素ではない。
【0024】
プラグ2は、耐火物および当該耐火物に埋設されている細管21aを含む芯体部分21、ならびに、芯体部分21を包囲して設けられるブロック部分22、を有する。芯体部分21は、ガスプール21bと給気管21cと、をさらに含む(図3)。
【0025】
細管21a、ガスプール21b、および給気管21cは、精錬ガス供給源(不図示)から供給される精錬ガスの流路を形成する部材である。細管21aは、ステンレス製の孔径2mmの直管である。本実施形態では、芯体部分21の、電気炉100の内側(底面102)に露出して配置される面である芯体天面21dに、六本の細管21aが開口している。ここで、芯体天面21dは、プラグ2の、電気炉100の内側(底面102)に露出して配置される面であるプラグ天面2aの一部である。なお、六本の細管21aのうちの二本が図3の断面に現れている。ガスプール21bは、プラグ2の基端側において六本の細管21aの全てと流体連通する箱状の部材であり、精錬ガス供給源から給気管21cを経て供給された精錬ガスを各細管21aに分配する役割を果たす。
【0026】
ブロック部分22は、耐火物製である。当該耐火物は特に限定されないが、たとえば公知のマグネシア-カーボン質の耐火物を使用できる。当該耐火物の組成も特に限定されないが、たとえば、マグネシアを70重量%以上95重量%以下含み、カーボンを5%以上30%以下含むマグネシア-カーボン質の耐火物でありうる。なお、芯体部分21の耐火物部分を構成する耐火物の組成と、ブロック部分22を構成する耐火物の組成とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
本実施形態に係るプラグ2では、円錐台状の芯体部分21がブロック部分22で包囲されて、プラグ2全体としては四角錐台状に構成されている。したがって、プラグ2の断面の四角形は正方形である。ただし、プラグ2の形状は、プラグ2が設置される電気炉100の底部の形状に対応した形状として、適宜選択される。
【0028】
本実施形態に係る周囲れんが1は、プラグ2と同様に、四角錐台状に構成されている。ただし、周囲れんが1の断面の四角形は長方形である。以下では、当該長方形の長辺に沿う方向を長手方向といい、短辺に沿う方向を短手方向という。
【0029】
周囲れんが1は、耐火物製である。当該耐火物は特に限定されないが、たとえば公知のマグネシア-カーボン質の耐火物を使用できる。当該耐火物の組成も特に限定されないが、たとえば、マグネシアを70重量%以上95重量%以下含み、カーボンを5%以上30%以下含むマグネシア-カーボン質の耐火物でありうる。なお、周囲れんが1を構成する耐火物の組成と、プラグ2を構成する耐火物の組成とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
周囲れんが1の長手方向の長さL1は、プラグ2のブロック部分22の長手方向の長さL2と実質的に同一である。ここで、周囲れんが1およびブロック部分22の長手方向とは、図3紙面における上下方向であり、電気炉100に設置された状態(図1)においては、電気炉100の底面102から外側に向かう方向である。また、「実質的に同一」とは、周囲れんが1およびブロック部分22の長手方向の長さが、当業者がこれを使用する際に同一と見なしうる程度に近い値であれば十分であり、両者が厳密に一致することを求めるものではない。より具体的には、たとえば、ブロック部分22の長手方向の長さL2に対して2%の誤差が許容されうるが、これに限定されない。
【0031】
通常、電気炉の底部にこの種の羽口を設ける場合(図4)、プラグ2を、プラグ2のブロック部分22より短い周囲れんが3で包囲することが通常である。この場合、周囲れんが3の長さが不足する分、底上げする必要がある。しかし、プラグ2のブロック部分22を包囲する周囲れんが3が当該ブロック部分22より短い場合、周囲れんが3をさらに包囲する耐火物(不図示)が熱膨張したときに、周囲れんが3の下面がプラグ2の側面に応力を与えて、これによってプラグ2が破損する場合があった。本実施形態に係る羽口部材10では、周囲れんが1の長手方向の長さL1と、プラグ2のブロック部分22の長手方向の長さL2とが実質的に同一であるので、周囲れんが1の周囲の耐火物が膨張した場合であっても、当該膨張に伴う応力がプラグ2の側面に加わりにくい。そのため、プラグ2の破損を防止でき、プラグ2の長寿命化を期待できる。
【0032】
また、この種の電気炉から溶融金属を排出する場合、電気炉の全体を傾けて、電気炉の上方の開口部(不図示)から溶融金属を注ぎ出す場合がある。このような操作が行われる場合、羽口の短手方向に重力が作用するため、羽口を構成する部材(本実施形態では周囲れんが1およびプラグ2である。)の間、および、羽口と炉底れんがRとの間の目地が開くおそれがある。目地が開くと、目地に溶融金属が入り込むため、羽口を構成する耐火物の破損を招く。本実施形態では、周囲れんが1の長手方向の長さL1と、プラグ2のブロック部分22の長手方向の長さL2とが実質的に同一であるため、電気炉100が傾いて羽口部材10の短手方向(図1および図3の紙面左右方向)に重力が作用した場合であっても、周囲れんが1とプラグ2とが一体に動きやすく、これによって目地が開きにくい。そのため、プラグ2の長寿命化を期待できる。
【0033】
周囲れんが1の、電気炉100の内側(底面102)に露出して配置される面である天面1aの面積は、プラグ天面2aの面積の40%以上70%以下であることが好ましい。天面1aの面積がプラグ天面2aの面積の40%以上であると、周囲れんが1の周囲の耐火物の膨張に伴う応力がプラグ2に伝わることをより効果的に抑制しうる。また、天面1aの面積がプラグ天面2aの面積の70%以下であると、周囲れんが1の寸法を施工しやすい規模にできるので、精度よく施工しやすい。天面1aの面積は、プラグ天面2aの面積の45%以上であることがより好ましい。また、天面1aの面積は、プラグ天面2aの面積の65%以下であることがより好ましい。
【0034】
また、天面1aの短手方向の幅T1(天面の短手方向の平均幅の例である。)は、当該短手方向を延長する方向に沿うプラグ天面2aの幅T2(プラグ天面の平均幅の例である。)の、20%以上50%以下であることが好ましい。ここで、天面1aの短手方向は、複数の周囲れんが1についてそれぞれ考慮され、したがって比較対象とするプラグ天面2aの「当該短手方向を延長する方向」も、複数の周囲れんが1についてそれぞれ考慮される。たとえば、図2における周囲れんが1Aの天面1aの幅T1Aについて比較対象とするプラグ天面2aの幅T2Aは、図2紙面の左右方向に沿う幅である。一方、図2における周囲れんが1Bの天面1aの幅T1Bについて比較対象とするプラグ天面2aの幅T2Bは、図2紙面の上下方向に沿う幅である。
【0035】
天面1aの幅T1が、プラグ天面2aの幅T2の20%以上であると、周囲れんが1の周囲の耐火物の膨張に伴う応力がプラグ2に伝わることをより効果的に抑制しうる。また、周囲れんが1の長手方向の幅Wが取り扱いやすい水準の値になりやすい。天面1aの幅T1は、プラグ天面2aの幅T2の25%以上であることがより好ましい。
【0036】
〔溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法〕
次に、本実施形態に係る設置方法について説明する。本実施形態に係る設置方法は、プラグ2を設置する工程(以下、プラグ設置工程という。)と、周囲れんが1を複数設置する工程(以下、周囲れんが設置工程という。)と、を含む。なお、両工程の完了時点で、上記の羽口部材10が完成される。すなわち、両工程の完了時点で、複数の周囲れんが1が、プラグ2を包囲して配置されることになる。
【0037】
ここで、プラグ設置工程と、周囲れんが設置工程との順序は限定されないが、プラグ設置工程を先に実施することが一般的である。プラグ設置工程を先に実施する場合は、先に設置されているプラグ2の周囲に、複数の周囲れんが1を、隙間ができないように配置して、プラグ2が複数の周囲れんが1に包囲される状態を実現する。プラグ設置工程を先に実施すると、プラグ2の周囲に周囲れんが1を隙間なく設置しやすい。
【0038】
ただし、周囲れんが設置工程を先に実施することも妨げられない。周囲れんが設置工程を先に実施する場合は、プラグ2の寸法を考慮した空地を設けて複数の周囲れんが1を配置したのちに、当該空地にプラグ2を挿入する。また、一部の周囲れんが1を設置したのちに、プラグ2を設置し、残りの周囲れんが1を設置してプラグ2の包囲を完成する、という手順で実施してもよい。この場合、周囲れんが設置工程、プラグ設置工程、周囲れんが設置工程の順で実施されることになる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る周囲れんが、羽口部材、および、溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する方法のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0040】
上記の実施形態では、周囲れんが1の断面が長方形である構成を例として説明した。しかし、本発明に係る周囲れんがの断面形状は特に限定されず、たとえば台形であってもよい。
【0041】
上記の実施形態では、プラグ2の断面が長方形である構成を例として説明した。しかし、本発明に係るプラグの断面形状は特に限定されず、たとえば台形であってもよい。
【0042】
なお、周囲れんがの断面形状によっては、天面の短手方向の幅が測定位置によって異なる場合がある。同様に、プラグの断面形状によっては、プラグ天面の短手方向の幅が測定位置によって異なる場合がある。このような場合については、天面の短手方向の平均幅が、当該短手方向を延長する方向に沿うプラグ天面の平均幅の、20%以上50%以下であることが好ましい。ここで、「平均幅」とは、幅を測定しうる全ての位置における幅の平均値である。たとえば、周囲れんがの天面が台形であり、上底と下底との距離(当該台形の「高さ」である。)が、上底の長さおよび下底の長さより長い場合は、上底の長さと下底の長さとの平均値が、当該天面の短手方向の平均幅である。
【0043】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例
【0044】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0045】
〔試験方法〕
図2および図3に示す配置で、周囲れんが1およびプラグ2を設置した。実施例および比較例の各例について、周囲れんが1の寸法は後掲の表に記載したとおりである。プラグ2としては、いずれの例においても、プラグ天面2aが一辺300mmの正方形であり、ブロック部分22の長手方向の長さL2が1550mmであるものを用いた。なお、プラグ天面2aが一辺300mmの正方形であることから、プラグ天面2aの面積は90000mmである。また、周囲れんが1およびプラグ2に係る記載外の条件は、上記の実施形態に従った。
【0046】
〔評価方法〕
(目地開き)
実施例および比較例の各例について、隙間ゲージを用いて目地開きを評価した。評価結果を、A~Dの四段階で表した。各水準の基準は下記の通りとした。
A:0.5mm未満
B:0.5mm以上1.0mm未満
C:1.0mm以上3.0mm未満
D:3.0mm以上
【0047】
(施工性)
実施例および比較例の各例について、周囲れんが1一つあたりの重量に基づいて施工性を評価した。評価結果を、A~Dの四段階で表した。各水準の基準は下記の通りとした。
A:周囲れんが1一つあたり200kg未満
B:周囲れんが1一つあたり200kg以上250kg未満
C:周囲れんが1一つあたり250kg以上300kg未満
D:周囲れんが1一つあたり300kg以上
【0048】
〔結果〕
実施例および比較例の各例についての目地開きおよび施工性の評価結果を表1~表3に示す。周囲れんが1の長さL1を1550mm(ブロック部分22の長さL2と同じ)にした実施例1~11のいずれにおいても、周囲れんが1とブロック部分22との長さが異なる比較例1~3に比べて、目地開きが抑制された。したがって、実施例1~11では、比較例1~3に比べてプラグ2の長寿命化を期待できる。
【0049】
表1:実施例のブロックの構成および評価結果
【表1】
【0050】
表2:実施例のブロックの構成および評価結果
【表2】
【0051】
表3:比較例のブロックの構成および評価結果
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、たとえば溶融金属精錬容器の底部に羽口を設置する用途に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 :周囲れんが
1a :天面
2 :プラグ
2a :プラグ天面
21 :芯体部分
21a :細管
21b :ガスプール
21c :給気管
21d :芯体天面
22 :ブロック部分
3 :周囲れんが(従来技術)
10 :羽口部材
100 :電気炉
100a :底部
101 :本体部
102 :底面
103 :羽口
R :炉底れんが
図1
図2
図3
図4