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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】フィラー含有フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230726BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20230726BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230726BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20230726BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
H01R11/01 501C
B32B27/20 Z
H01B5/16
H01B13/00 Z
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022092829
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2017166276の分割
【原出願日】2017-08-30
(65)【公開番号】P2022125045
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2017084915
(32)【優先日】2017-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017158303
(32)【優先日】2017-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
H01R 11/01
B32B 27/20
H01B 5/16
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー分散層を有するフィラー含有フィルムであって、
フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して傾斜または起伏を有し、
該傾斜では、フィラーの周りの樹脂層の表面が前記接平面に対して欠けており、
該起伏では、フィラー直上の樹脂層の樹脂量が、該フィラー直上の樹脂層の表面が前記接平面にあるとしたときに比して少なく
式で算出されるフィラーの面積占有率
面積占有率(%)=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100
が0.3%以上であるフィラー含有フィルム。
【請求項2】
フィラーの真球度が70~100である請求項1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項3】
前記接平面からのフィラーの最深部の距離Lbと、フィラーの粒子径Dとの比(Lb/D)が60%以上105%以下である請求項1又は2記載のフィラー含有フィルム。
【請求項4】
フィラーが樹脂層から露出している請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項5】
フィラーが樹脂層から露出することなく樹脂層内に埋まっている請求項1~3のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項6】
前記傾斜または起伏の前記接平面からの深さLeとフィラーの粒子径Dとの比(Le/D)が50%未満である請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項7】
前記傾斜または起伏の最大径Ldとフィラーの粒子径Dとの比(Ld/D)が100%以上である請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項8】
樹脂層の層厚Laとフィラーの粒子径Dとの比(La/D)が0.6~10である請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項9】
フィラーが互いに非接触で配置されている請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項10】
最近接フィラー間距離がフィラーの粒子径の0.5倍以上である請求項1~のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項11】
フィラー分散層の樹脂層の傾斜または起伏が形成されている表面と反対側の表面に、第2の樹脂層が積層されている請求項1~10のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項12】
フィラー分散層の樹脂層の傾斜または起伏が形成されている表面に、第2の樹脂層が積層されている請求項1~10のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項13】
第2の樹脂層の最低溶融粘度がフィラー分散層の樹脂層の最低溶融粘度よりも低い請求項1又は1記載のフィラー含有フィルム。
【請求項14】
フィラー分散層の樹脂層の60℃における粘度が1100Pa・sより大きい請求項1~13のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項15】
フィラーが導電粒子であり、フィラー分散層の樹脂層が絶縁性樹脂層であり、異方性導電フィルムとして使用される請求項1~1のいずれかに記載のフィラー含有フィルム。
【請求項16】
請求項1~1のいずれかに記載のフィラー含有フィルムが物品に貼着されているフィルム貼着体。
【請求項17】
請求項1~1のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品が接続されている接続構造体。
【請求項18】
請求項15記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続されている接続構造体。
【請求項19】
請求項1~1のいずれかに記載のフィラー含有フィルムを介して第1物品と第2物品を圧着する接続構造体の製造方法。
【請求項20】
求項1記載のフィラー含有フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着することにより第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続して接続構造体を製造する接続構造体の製造方法。
【請求項21】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー分散層を形成する工程を有するフィラー含有フィルムの製造方法であって、
フィラー分散層を形成する工程が、フィラーを樹脂層表面に保持させる工程と、
樹脂層表面に保持させたフィラーを該樹脂層に押し込む工程を有し、
フィラーを樹脂層表面に保持させる工程では、樹脂層表面でフィラーが分散した状態とし、かつ該樹脂層表面において、次式で算出されるフィラーの面積占有率
面積占有率(%)=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100
を0.3%以上とし、
フィラーを樹脂層に押し込む工程では、フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して傾斜または起伏を有し、該傾斜ではフィラーの周りの樹脂層の表面が前記接平面に対して欠け、該起伏ではフィラー直上の樹脂層の樹脂量が、該フィラー直上の樹脂層の表面が前記接平面にあるとしたときに比して少なくなるように、フィラーを押し込むときの樹脂層の粘度、押込速度又は温度を調整するフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項22】
フィラーの真球度が70~100である請求項21記載のフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項23】
フィラーを樹脂層に押し込む工程において、前記接平面からのフィラーの最深部の距離Lbと、フィラーの粒子径Dとの割合(Lb/D)が60%以上105%以下となるように押し込み時の押圧力、樹脂層の粘度、押込速度、又は温度を調整する請求項21又は22記載のフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項24】
フィラーを樹脂層表面に保持させる工程において、樹脂層の表面にフィラーを所定の配列で保持させ、
フィラーを樹脂層に押し込む工程において、フィラーを平板又はローラーで樹脂層に押し込む請求項21~23のいずれかに記載のフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項25】
フィラーを樹脂層表面に保持させる工程において、転写型にフィラーを充填し、そのフィラーを樹脂層に転写することにより樹脂層の表面にフィラーを所定の配置で保持させる請求項21~24のいずれかに記載のフィラー含有フィルムの製造方法。
【請求項26】
フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして使用するために、フィラーとして導電粒子を使用し、フィラー分散層の樹脂層として絶縁性樹脂層を使用する請求項21~25のいずれかに記載のフィラー含有フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー含有フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーが樹脂層に分散しているフィラー含有フィルムは、艶消しフィルム、コンデンサー用フィルム、光学フィルム、ラベル用フィルム、耐電防止用フィルム、異方性導電フィルムなど多種多様の用途で使用されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。フィラー含有フィルムを、該フィラー含有フィルムの被着体とする物品に熱圧着するときには、フィラー含有フィルムを形成している樹脂の不用な樹脂流動を抑制してフィラーの偏在を抑制することが、光学的特性、機械的特性、又は電気的特性の点から望ましい。特に、フィラーとして導電粒子を含有させ、フィラー含有フィルムを、ICチップなどの電子部品の実装に使用する異方性導電フィルムとする場合に、電子部品の高実装密度に対応できるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させると、高密度に分散した導電粒子が電子部品の実装時に樹脂流動により不用に移動して端子間に偏在し、ショートの発生要因となる。
【0003】
これに対し、ショートを低減させると共に、異方性導電フィルムを基板に仮圧着するときの作業性を改善するため、導電粒子を単層で埋め込んだ光硬化性樹脂層と絶縁性接着剤層とを積層した異方性導電フィルムが提案されている(特許文献5)。この異方性導電フィルムの使用方法としては、光硬化性樹脂層が未硬化でタック性を有する状態で仮圧着を行い、次に光硬化性樹脂層を光硬化させて導電粒子を固定化し、その後、基板と電子部品とを本圧着する。
【0004】
また、特許文献5と同様の目的を達成するために、第1接続層が、主として絶縁性樹脂からなる第2接続層と第3接続層とに挟持された3層構造の異方性導電フィルムも提案されている(特許文献6,7)。具体的には、特許文献6の異方性導電フィルムは、第1接続層が、絶縁性樹脂層の第2接続層側の平面方向に導電粒子が単層で配列された構造を有し、隣接する導電粒子間の中央領域の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっている。他方、特許文献7の異方性導電フィルムは、第1接続層と第3接続層の境界が起伏している構造を有し、第1接続層が、絶縁性樹脂層の第3接続層側の平面方向に導電粒子が単層で配列された構造を有し、隣接する導電粒子間の中央領域の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-15680号公報
【文献】特開2015-138904号公報
【文献】特開2013-103368号公報
【文献】特開2014-183266号公報
【文献】特開2003-64324号公報
【文献】特開2014-060150号公報
【文献】特開2014-060151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献5に記載の異方性導電フィルムでは、異方性導電接続の仮圧着時に導電粒子が動きやすく、異方性導電接続前の導電粒子の精密な配置を異方性導電接続後に維持できない、または導電粒子間の距離を十分に離間させることができないという問題がある。また、このような異方性導電フィルムを基板と仮圧着した後に光硬化性樹脂層を光硬化させ、導電粒子が埋め込まれている光硬化した樹脂層と電子部品とを貼り合わせると、電子部品のバンプの端部で導電粒子が捕捉されにくいという問題や、導電粒子の押込に過度に大きな力が必要となり、導電粒子を十分に押し込むことができないという問題があった。また、特許文献5では、導電粒子の押し込みの改善のために、光硬化性樹脂層からの導電粒子の露出の観点等からの検討も十分になされていない。
【0007】
そこで、光硬化性樹脂層に代えて、異方性導電接続時の加熱温度で高粘度となる絶縁性樹脂層に導電粒子を分散させ、異方性導電接続時の導電粒子の流動性を抑制すると共に、異方性導電フィルムを電子部品と貼着するときの作業性を向上させることが考えられる。しかしながら、そのような絶縁性樹脂層に導電粒子を仮に精密に配置したとしても、異方性導電接続時に樹脂層が流動すると導電粒子も同時に流動してしまうので、導電粒子の捕捉性の向上やショートの低減を十分に図ることは困難であり、異方性導電接続後の導電粒子に当初の精密な配置を維持させることも、導電粒子同士を離間した状態に保持させることも困難である。
【0008】
また、特許文献6、7に記載の3層構造の異方性導電フィルムの場合、基本点な異方性導電接続特性については問題が認められないものの、3層構造であるため、製造コストの観点から、製造工数を減数化することが求められている。また、第1接続層の片面における導電粒子の近傍において、第1接続層の全体またはその一部が導電粒子の外形に沿って大きく隆起し、第1接続層をなす絶縁性樹脂層そのものが平坦ではなく、その隆起した部分に導電粒子が保持されているため、導電粒子の保持と端子による捕捉性を向上させるための設計上の制約が多くなることが懸念される。
【0009】
これに対し、本発明は、異方性導電フィルムを初めとするフィラー含有フィルムにおいて、3層構造を必須としなくても、また、導電粒子等のフィラーを保持している樹脂の当該フィラー近傍において樹脂層の全体またはその一部をフィラーの外形より大きく隆起させなくても、フィラー含有フィルムの熱圧着時における樹脂層の流動によるフィラーの不用な移動を抑制すること、特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成する場合には、導電粒子の捕捉性を向上させ、且つショートを低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、導電粒子等のフィラーが樹脂層に分散したフィラー分散層を有するフィラー含有フィルムに関し、樹脂層のフィラー近傍の表面形状と樹脂層の粘度との関係について以下の知見を得た。即ち、特許文献5に記載の異方性導電フィルムでは、導電粒子が埋め込まれた側の絶縁性樹脂層(即ち、光硬化性樹脂層)自体の表面が平坦になっているのに対し、(i)導電粒子等のフィラーが樹脂層から露出している場合に、フィラーの周囲の樹脂層の表面を、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して凹むように傾斜させると、その樹脂層の表面の一部が欠けた状態となり、その結果、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着してフィラーを物品に接合させるときに、フィラーと物品との接合を妨げる虞のある不用な樹脂を低減させることができ、また、(ii)フィラーが樹脂層から露出することなく樹脂層内に埋まっている場合に、フィラーの直上の樹脂層に、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対し、フィラーの埋込の痕跡と認められる、うねりのような微小な起伏(以下、単に起伏とのみ記す)が形成されるようにすると、その起伏の凹み部分で樹脂量が少なくなっていることにより、フィラー含有フィルムを物品に圧着したときにフィラーが物品に押し込まれやすくなること、(iii)したがって、フィラー含有フィルムを介して対向する2つの物品を圧着すると、対向する物品で挟持されたフィラーとその物品とが良好に接続すること、言い換えると、物品におけるフィラーの捕捉性、または物品で挟持されたフィラーの圧着前後における配置状態の一致性が向上し、さらにフィラー含有フィルムの製品検査や、使用面の確認が容易になることを見出した。加えて、樹脂層におけるこのような凹みは、樹脂層にフィラーを押し込むことによってフィラー分散層を形成する場合に、フィラーを押し込む樹脂層の粘度を調整することにより形成できることを見出した。
【0011】
本発明は上述の知見に基づくものであり、フィラーが樹脂層に分散しているフィラー分散層を有するフィラー含有フィルムであって、
フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して傾斜若しくは起伏を有し、
該傾斜では、フィラーの周りの樹脂層の表面が前記接平面に対して欠けており、
該起伏では、フィラー直上の樹脂層の樹脂量が、該フィラー直上の樹脂層の表面が前記接平面にあるとしたときに比して少なく、
フィラーの粒子径のCV値が20%以下であり、
次式で算出されるフィラーの面積占有率
面積占有率(%)=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100
が0.3%以上であるフィラー含有フィルムを提供する。
【0012】
また本発明は、フィラーが樹脂層に分散しているフィラー分散層を形成する工程を有するフィラー含有フィルムの製造方法であって、
フィラー分散層を形成する工程が、粒子径のCV値が20%以下であるフィラーを樹脂層表面に保持させる工程と、
樹脂層表面に保持させたフィラーを該樹脂層に押し込む工程を有し、
フィラーを樹脂層表面に保持させる工程では、樹脂層表面でフィラーが分散した状態とし、かつ該樹脂層表面において次式で算出されるフィラーの面積占有率
面積占有率(%)=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100
を0.3%以上とし、
フィラーを樹脂層に押し込む工程では、フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して傾斜または起伏を有し、該傾斜ではフィラーの周りの樹脂層の表面が前記接平面に対して欠け、該起伏ではフィラー直上の樹脂層の樹脂量が、該フィラー直上の樹脂層の表面が前記接平面にあるとしたときに比して少なくなるように、フィラーを押し込むときの樹脂層の粘度、押込速度又は温度を調整するフィラー含有フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフィラー含有フィルムは、フィラーが樹脂層に分散しているフィラー分散層を有する。このフィラー含有フィルムにおいては、フィラー近傍の、フィラー分散層の表面をなす樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して凹むように傾斜しているか、若しくは該接平面に対して起伏を有する。より具体的には、フィラーが樹脂層から露出している場合には、露出しているフィラーの周囲の樹脂層に傾斜があり、フィラーが樹脂層から露出することなく該樹脂層内に埋まっている場合には、フィラーの直上の樹脂層に起伏がある。なお、起伏は、樹脂層に埋まっているフィラーが1点で該樹脂層の表面に接する場合にも存在しうる。
【0014】
この傾斜と起伏は、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法によって製造したフィラー含有フィルムに形成される。即ち、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法によれば、フィラーを樹脂層に押し込むことにより該樹脂層にフィラーを埋め込む。そのため、フィラーの近傍では埋め込みの程度により、フィラーの全体が樹脂層に埋め込まれてフィラーの直上に該樹脂層の樹脂が存在している場合(例えば、図4図6参照)や、フィラーの頂部が樹脂層から露出しており、フィラー近傍の樹脂層がフィラーの埋め込みに引きずられて内部に入り込んでいる場合(例えば、図1B図2参照)が存在し、また両者が混在する場合も存在する。形成機序の点から述べると、傾斜は、フィラー近傍の樹脂層がフィラーの埋め込みに引きずられて内部に入り込むことによりフィラーの周囲に形成される斜面である。また、起伏は、フィラーの埋め込みによりフィラー全体が樹脂層に埋まった場合に、その埋め込みの痕跡として導電粒子の直上に形成されたうねりである。
【0015】
このように、傾斜と起伏は、比較的高粘度な樹脂層にフィラーを押し込んだ場合に形成されるので、樹脂層における傾斜または起伏の存在は、その樹脂層が傾斜または起伏の形成を可能とする高い粘度であることを意味する。樹脂層が高粘度であると、フィラー含有フィルムの物品への熱圧着時に不用な樹脂流動が抑制され、フィラーが樹脂流動によって流されることを抑制できる。さらに、熱圧着時にフィラーと物品の接合の邪魔になる樹脂が存在しないか、低減していることにより、樹脂層が高粘度であっても、樹脂層が物品とフィラーとの接合に支障をきたすことはない。
【0016】
また、樹脂層が、傾斜または起伏の形成を可能とする高粘度の樹脂で形成されていると、樹脂層自体の厚みを薄くし、その樹脂層と該樹脂層に比して低粘度の第2の樹脂層とを積層することにより、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着したときのフィラー含有フィルムの接着性能を維持し、かつ熱圧着時のフィラーの不用な流動を抑えることが可能となる。樹脂層を薄くすることは、接続ツールの加熱加圧条件のマージンが取り易くなるという効果ももたらす。かかる効果は、フィラーの粒子径のバラツキが小さいと、より顕著に発揮される。本発明では、フィラーの粒子径のCV値が20%以下と低いため、上述の効果を十分に発揮させることができる。
【0017】
加えて、樹脂層の傾斜や起伏はフィラーの近傍に存在するため、フィラー含有フィルムの製造時にはフィラー含有フィルムの外観を観察することによってフィラーの分散状態の良否を容易に判定することが可能となる。
【0018】
樹脂層に上述の傾斜や起伏があると、フィラー含有フィルムの被着体とする物品に、フィラー含有フィルムを該フィラー含有フィルムのフィラー側から圧着した場合に樹脂層の不用な流動を低減できるという効果も得られる。そのため、例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合には、異方性導電フィルムを介して第1電子部品と第2電子部品を熱圧着する異方性導電接続時に不用な樹脂流動の影響を最小限にでき、異方性導電接続時の導電粒子の捕捉性が向上する。
【0019】
また、傾斜により、特許文献6や7に比べ、傾斜や起伏がある分だけフィラー近傍の樹脂量が低減する。このため、フィラー含有フィルムを物品に圧着するときに樹脂流動が少なくなるとともに、フィラーが物品に押し付けられやすくなる。さらに、フィラー含有フィルムを介して2つの物品を圧着するときには、フィラーが挟持されることや、フィラーが扁平に潰れようとすることに対して樹脂が妨げとなりにくい。また、傾斜によってフィラーの周囲の樹脂量が低減している分、フィラーを不用に流動させることに繋がる樹脂流動が低減する。よって、物品におけるフィラーの捕捉性が向上し、特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムに構成した場合には、端子における導電粒子の捕捉性が向上することにより導通信頼性が向上する。
【0020】
絶縁性樹脂層内に埋まっている導電粒子の直上の絶縁性樹脂層に起伏がある場合にも傾斜がある場合と同様に、異方性接続時に端子からの押圧力が導電粒子にかかりやすくなる。これは、起伏に伴われる凹みにより導電粒子の直上の樹脂量が低減して存在しているためである。そのため、導電粒子の直上に樹脂が平坦に堆積している場合(図8参照)よりも端子における導電粒子の捕捉性が向上して導通信頼性が向上する。
【0021】
以上のように本発明のフィラー含有フィルムによれば、フィラー含有フィルムの被着体とする物品にフィラー含有フィルムを圧着するときに不用な樹脂流動を抑制でき、それによりフィラーの不用な流動も抑制でき、フィラーと物品との接合性が向上する。
【0022】
したがって、本発明のフィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成し、その異方性導電フィルムを用いて第1電子部品と第2電子部品を接続すると、端子上の導電粒子が流動し難い。そのため、導電粒子の捕捉性が向上し、異方性導電接続時の導電粒子の配置を精密に制御できる。したがって、例えば、端子幅6μm~50μm、端子間スペース6μm~50μmのファインピッチの電子部品の接続に使用することができる。また、導電粒子の大きさが3μm未満(例えば2.5~2.8μm)のときに有効接続端子幅(接続時に対向した一対の端子の幅のうち、平面視にて重なり合っている部分の幅)が3μm以上、最短端子間距離が3μm以上であればショートを起こすこと無く電子部品を接続することができる。
【0023】
また、導電粒子の配置を精密に制御できるので、ノーマルピッチの電子部品を接続する場合には、導電粒子の配置領域や、導電粒子の個数密度を変えた領域のレイアウトを種々の電子部品の端子のレイアウトに対応させることが可能となる。
【0024】
さらに、本発明のフィラー含有フィルムにおいて、樹脂層内に埋まっているフィラーの直上の樹脂層に上述の起伏による凹みがあると、フィラー含有フィルムの外観観察によりフィラーの位置が明確に分かるので、外観による製品検査が容易になり、フィルム面の表裏の識別も容易になる。このため、フィラー含有フィルムを物品に圧着するときに、フィラー含有フィルムのどちらのフィルム面を物品に貼り合わせるかという使用面の確認が容易になる。フィラー含有フィルムを製造する場合にも、同様の利点が得られる。
【0025】
加えて、本発明のフィラー含有フィルムによれば、フィラーの配置の固定のために樹脂層を光硬化させておくことが必ずしも必要ではないので、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着するときに樹脂層がタック性を持ち得る。このため、フィラー含有フィルムと物品を仮圧着するときの作業性が向上し、仮圧着後にさらに第2物品を圧着するときにも作業性が向上する。
【0026】
一方、本発明のフィラー含有フィルムの製造方法によれば、樹脂層に上述の傾斜若しくは起伏が形成されるように、樹脂層にフィラーを埋め込むときの該樹脂層の粘度等を調整する。そのため、上述の効果を奏する本発明のフィラー含有フィルムを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A図1Aは、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Aの導電粒子の配置を示す平面図である。
図1B図1Bは、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Aの断面図である。
図2図2は、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Bの断面図である。
図3A図3Aは、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Cの断面図である。
図3B図3Bは、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10C’の断面図である。
図4図4は、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Dの断面図である。
図5図5は、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Eの断面図である。
図6図6は、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Fの断面図である。
図7図7は、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Gの断面図である。
図8図8は、本発明のフィラー含有フィルムの比較例になる異方性導電フィルム10Xの断面図である。
図9図9は、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Hの断面図である。
図10図10は、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルム10Iの断面図である。
図11A図11Aは、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルムの上面写真である。
図11B図11Bは、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である実施例の異方性導電フィルムの上面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0029】
<フィラー含有フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明の一実施例のフィラー含有フィルム10Aの粒子配置を説明する平面図であり、図1BはそのX-X断面図である。このフィラー含有フィルム10Aは、異方性導電フィルムとして使用されるもので、フィラー1として導電粒子を絶縁性の樹脂層2に分散させたものである。
【0030】
このフィラー含有フィルム10Aは、例えば長さ5m以上の長尺のフィルム形態とすることができ、巻き芯に巻いた巻装体とすることもできる。
【0031】
フィラー含有フィルム10Aはフィラー分散層3から構成されており、フィラー分散層3では、樹脂層2の片面にフィラー1が露出した状態で規則的に分散している。フィルムの平面視にてフィラー1は互いに接触しておらず、フィルム厚方向にもフィラー1が互いに重なることなく規則的に分散し、フィラー1のフィルム厚方向の位置が揃った単層のフィラー層が形成されている。
【0032】
個々のフィラー1の近傍で該フィラー1の周囲の樹脂層2の表面2aには、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層2の接平面2pに対して傾斜2bが形成されている。なお後述するように、本発明のフィラー含有フィルムでは、樹脂層2に埋め込まれたフィラー1の直上の樹脂層の表面に起伏2cが形成されていてもよい(図4図6)。
【0033】
本発明において、「傾斜」とは、フィラー1の近傍で樹脂層2の表面の平坦性が損なわれ、前記接平面2pに対して樹脂層の一部が欠けて樹脂量が低減している状態を意味する。一方、「起伏」とは、導電粒子の直上の樹脂層の表面にうねりがあり、うねりに伴われる凹み部分が存在することで樹脂が低減している状態を意味する。これらは、フィラーの直上に相当する部位とフィラー間の平坦な表面部分(図1B、4、6の2f。図11Aの2bの外側、図11Bの2cの外側。)とを対比して認識することができる。なお、起伏の開始点が傾斜として存在する場合もある。
【0034】
<フィラーの分散状態>
本発明におけるフィラーの分散状態には、フィラー1がランダムに分散している状態も規則的な配置に分散している状態も含まれる。どちらの場合においても、フィルム厚方向の位置が揃っていることが、フィラー含有フィルムの被着体とする物品にフィラー含有フィルムを熱圧着するときのフィラーの不用な流動を抑える点で好ましく、特にフィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、電子部品の端子における捕捉安定性の点から好ましい。ここで、フィルム厚方向のフィラー1の位置が揃っているとは、フィルム厚方向の単一の深さに揃っていることに限定されず、樹脂層2の表裏の界面又はその近傍のそれぞれに導電粒子が存在している態様を含む。
【0035】
フィラー含有フィルムの光学的、機械的又は電気的な特性を均一にするため、特に、フィラーを導電粒子とし、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムに構成する場合には、導電粒子の捕捉とショートの抑制とを両立させるため、フィラー1はフィルムの平面視にて規則的に配列していることが好ましい。配列の態様は特に限定はなく、例えば、フィルムの平面視にて図1Aに示したように正方格子配列とすることができる。この他、フィラーの規則的な配列の態様としては、長方格子、斜方格子、6方格子、3角格子等の格子配列をあげることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。
フィラーの配列の態様としては、フィラーが所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。また、フィラーの抜けがフィルムの所定の方向に規則的に存在する態様であってもよい。
【0036】
フィラー1を互いに非接触とし、格子状等の規則的な配列にすることにより、フィラー含有フィルムを物品に圧着するときに各フィラー1に圧力を均等に加え、接続状態のばらつきを低減させることができる。また、フィラーの抜けをフィルムの長手方向に繰り返し存在させること、あるいはフィラーの抜けている箇所をフィルムの長手方向に漸次増加または減少させることにより、ロット管理が可能となり、フィラー含有フィルム及びそれを用いた接続構造体にトレーサビリティ(追跡を可能とする性質)を付与することも可能となる。これは、フィラー含有フィルムやそれを用いた接続構造体の偽造防止、真贋判定、不正利用防止等にも有効となる。
【0037】
したがって、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムに構成した場合には、導電粒子を互いに非接触な規則的な配列とすることにより、異方性導電フィルムを用いて第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続した場合の導通抵抗のバラツキを低減させることができる。なお、フィラーが規則的な配列をしているか否かは、例えばフィルムの長手方向にフィラーの所定の配置が繰り替えされている否かを観察することで判別することができる。また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムに構成する場合には、導電粒子がフィルムの平面視にて規則的に配列し、且つフィルム厚方向の位置が揃っていることが、異方性導電フィルムを用いて第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続した場合の端子における捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。
【0038】
一方、接続する電子部品の端子間スペースが広くショートが発生しにくい場合には、導電粒子を規則的に配列させることなく導通に支障を来たさない程度に導電粒子があればランダムに分散させていてもよい。
【0039】
フィラーを規則的に配列させる場合に、その配列の格子軸又は配列軸は、フィラー含有フィルムの長手方向や長手方向と直行する方向に対して平行でもよく、フィラー含有フィルムの長手方向と交叉してもよく、フィラー含有フィルムを圧着する物品に応じて定めることができる。例えば、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、規則的に配列した導電粒子の格子軸又は配列軸は、異方性導電フィルムで接続する端子幅、端子ピッチ、レイアウトなどに応じて定めることができる。より具体的には、フィラー含有フィルムを、ファインピッチ用の異方性導電フィルムとする場合、図1Aに示したように導電粒子1の格子軸Aを異方性導電フィルム10Aの長手方向に対して斜行させ、異方性導電フィルム10Aで接続する端子20の長手方向(フィルムの短手方向)と格子軸Aとのなす角度θを好ましくは6°~84°、より好ましくは11°~74°にする。
【0040】
フィラー含有フィルムにおいてフィラー間の距離も接続する物品に応じて定めることができ、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、フィラー1とする導電粒子の粒子間距離を、異方性導電フィルムで接続する端子の大きさや端子ピッチに応じて適宜定めることができる。例えば、異方性導電フィルムをファインピッチのCOG(Chip On Glass)に対応させる場合、ショートの発生を防止する点から最近接フィラー間距離(即ち、最近接粒子間距離)を導電粒子径Dの0.5倍以上にすることが好ましく、0.7倍より大きくすることがより好ましい。一方、最近接フィラー間距離の上限はフィラー含有フィルムの目的によって決めることができ、例えば、フィラー含有フィルムの製造上の難易度の点からは、最近接粒子間距離を導電粒子径Dの好ましくは100倍以下、より好ましくは50倍以下とすることができる。また、異方性導電接続時の端子における導電粒子1の捕捉性の点からは、最近接粒子間距離を導電粒子径Dの4倍以下とすることが好ましく、3倍以下とすることがより好ましい。
【0041】
また、本発明のフィラー含有フィルムでは、次式で算出されるフィラーの面積占有率を、フィラーの含有効果を発現させるために0.3%以上とする。
面積占有率(%)=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100
【0042】
この面積占有率は、フィラー含有フィルムを物品に圧着するために押圧治具に必要とされる推力の指標となる。後述するようにフィラー含有フィルムを物品に圧着するために押圧治具に必要とされる推力を抑制する点から、面積占有率は、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。
【0043】
ここで、フィラーの個数密度の測定領域としては、1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm2以上とすることが好ましい。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。ファインピッチ用途の異方性導電フィルムの比較的個数密度が大きい場合の一例として、フィラー含有フィルムから任意に選択した面積100μm×100μmの領域の200箇所(2mm2)について、金属顕微鏡などによる観察画像を用いて個数密度を測定し、それを平均することにより上述の式中の「平面視におけるフィラーの個数密度」を得ることができる。面積100μm×100μmの領域は、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、バンプ間スペース50μm以下の接続対象物において、1個以上のバンプが存在する領域になる。
【0044】
なお、面積占有率が上述の範囲内であれば個数密度の値には特に制限はないが、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には実用上、個数密度は30個/mm以上であればよく、150~70000個/mm2が好ましく、特にファインピッチ用途の場合には好ましくは6000~42000個/mm2、より好ましくは10000~40000個/mm2、更により好ましくは15000~35000個/mm2である。
【0045】
フィラーの個数密度は、上述のように金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事株式会社等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0046】
また、フィラー1個の平面視面積の平均は、フィルム面の金属顕微鏡やSEMなどの電子顕微鏡などによる観測画像の計測により求められる。画像解析ソフトを用いてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0047】
上述のように、面積占有率は、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下であり、これは以下の理由による。即ち、従来、異方性導電フィルムでは、ファインピッチに対応させるために、ショートを発生させない限りで導電粒子の粒子間距離を狭め、個数密度が高められてきた。しかしながら、電子部品の端子個数が増え、電子部品1個当りの接続総面積が大きくなるのに伴い、導電粒子の個数密度を高めると、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力が大きくなり、従前の押圧治具では押圧が不十分になるという問題が起こることが懸念される。このような押圧治具に必要とされる推力の問題は、異方性導電フィルムに限られず、フィラー含有フィルム全般に共通する。これに対し、本発明では面積占有率を上述のように好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下とし、フィラー含有フィルムを物品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力を抑える。
【0048】
<フィラー>
本発明においてフィラー1は、フィラー含有フィルムの用途に応じて、公知の無機系フィラー(金属、金属酸化物、金属窒化物など)、有機系フィラー(樹脂粒子、ゴム粒子など)、有機系材料と無機系材料が混在したフィラー(例えば、コアが樹脂材料で形成され、表面が金属メッキされている粒子(金属被覆樹脂粒子)、導電粒子の表面に絶縁性微粒子を付着させたもの、導電粒子の表面を絶縁処理したもの等)から、硬さ、光学的性能などの用途に求められる性能に応じて適宜選択される。例えば、光学フィルムや艶消しフィルムでは、シリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。コンデンサー用フィルムでは、酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。接着フィルムではポリマー系のゴム粒子、シリコーンゴム粒子等を含有させることができる。異方性導電フィルムでは導電粒子を含有させる。導電粒子としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。上述の用途別に挙げたフィラーは、当該用途に限定されるものではなく、必要に応じて他の用途のフィラー含有フィルムが含有してもよい。また、各用途のフィラー含有フィルムでは、必要に応じて2種以上のフィラーを併用することができる。
【0049】
フィラーの形状は、フィラー含有フィルムの用途に応じ、球形、楕円球、柱状、針状、それらの組み合わせ等から適宜選択して定められる。フィラー配置の確認が容易になり、均等な状体を維持し易い点から、球形が好ましい。特に、異方性導電フィルムでは、導電粒子が、略真球であることが好ましい。導電粒子として略真球のものを使用することにより、例えば、特開2014-60150号公報に記載のように転写型を用いて導電粒子を配列させた異方性導電フィルムを製造するにあたり、転写型上で導電粒子が滑らかに転がるので、導電粒子を転写型上の所定の位置へ高精度に充填することができる。したがって、導電粒子を精確に配置することができる。
【0050】
ここで、略真球とは、次式で算出される真球度が70~100であることをいう。
【0051】
【数1】
【0052】
上記式中、Soはフィラーの平面画像における該フィラーの外接円の面積であり、Siはフィラーの平面画像における該フィラーの内接円の面積である。
【0053】
この算出方法では、フィラーの平面画像をフィラー含有フィルムの面視野および断面で撮り、それぞれの平面画像において任意のフィラー100個以上(好ましくは200個以上)の外接円の面積と内接円の面積を計測し、外接円の面積の平均値と内接円の面積の平均値を求め、上述のSo、Siとすることが好ましい。また、面視野及び断面のいずれにおいても、真球度が上記の範囲内であることが好ましい。面視野および断面の真球度の差は20以内であることが好ましく、より好ましくは10以内である。フィラー含有フィルムの生産時の検査は主に面視野であり、物品に熱圧着した後の詳細な良否判定は面視野と断面の両方で行うため、真球度の差は小さい方が好ましい。なお、この真球度はフィラー単体であるなら、湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることもできる。
【0054】
フィラーの粒子径Dは、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜定められる。例えば、異方性導電フィルムでは、配線高さのバラツキに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2.5μm以上9μm以下である。接続対象物によっては、9μmより大きいものが適する場合もある。
【0055】
なお、樹脂層2に分散させる前のフィラーの粒子径Dは、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。粒度分布測定装置の一例としてFPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。一方、フィラー含有フィルムにおけるフィラーの粒子径Dは、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、粒子径Dを測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。また、フィラーの形状が球形でない場合、最大長または球形に模した形状の直径をフィラーの粒子径Dとすることができる。
【0056】
本発明では、フィラー含有フィルムにおけるフィラーの粒子径Dのバラツキを、CV値(標準偏差/平均)20%以下とする。CV値を20%以下とすることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着時にフィラー含有フィルムが均等に押圧され易くなり、特にフィラーが配列している場合には押圧力が局所的に集中することを防止でき、接続の安定性に寄与できる。また接続後に圧痕による接続状態の評価を精確に行うことができる。具体的には、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとして構成した場合に、異方性導電フィルムと電子部品の異方性導電接続後の検査において、端子サイズが大きいもの(FOGなど)でも、小さいもの(COGなど)でも圧痕による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、異方性接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
【0057】
ここで、粒子径のバラツキは画像型粒度分析装置などにより算出することができる。フィラー含有フィルムに含有されていない、フィラー含有フィルムの原料粒子としてのフィラーの粒子径も上述の湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることができる。この場合、フィラー個数は1000個以上、好ましくは3000個以上、より好ましくは5000個以上を測定すれば正確にフィラー単体のバラツキを把握することができる。フィラーがフィラー含有フィルムに配置されている場合は、上記真球度と同様に平面画像又は断面画像により求めることができる。
【0058】
<樹脂層>
(樹脂の粘度)
本発明において樹脂層2の最低溶融粘度は、特に制限はなく、フィラー含有フィルムの用途や、フィラー含有フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、上述の傾斜2b又は起伏2cを形成できる限り、フィラー含有フィルムの製造方法によっては1000Pa・s程度とすることもできる。一方、フィラー含有フィルムの製造方法として、フィラーを樹脂層の表面に所定の配置で保持させ、そのフィラーを樹脂層に押し込む方法を行うとき、樹脂層がフィルム成形を可能とする点から樹脂の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。
【0059】
また、後述のフィラー含有フィルムの製造方法で説明するように、図1B等に示すように樹脂層2に押し込んだフィラー1の露出部分の周りに傾斜2bを形成したり、図4及び図6に示すように樹脂層2に押し込んだフィラー1の直上に起伏2cを形成したりする点から、最低溶融粘度は、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、特に3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0060】
樹脂層2の最低溶融粘度を1500Pa・s以上の高粘度とすることにより、フィラー含有フィルムの物品への熱圧着時にフィラーの不用な移動を抑制でき、特にフィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子1が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0061】
また、樹脂層2にフィラー1を押し込むことによりフィラー含有フィルム10Aのフィラー分散層3を形成する場合において、フィラー1を押し込むときの樹脂層2は、フィラー1が樹脂層2から露出するようにフィラー1を樹脂層2に押し込んだときに樹脂層2が塑性変形してフィラー1の周囲の樹脂層2に傾斜2b(図1B)が形成されるような高粘度な粘性体とするか、あるいは、フィラー1が樹脂層2から露出することなく樹脂層2に埋まるようにフィラー1を押し込んだときに、フィラー1の直上の樹脂層2の表面に起伏2c(図4図6)が形成されるような高粘度な粘性体とする。そのため、樹脂層2の60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。この測定は最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。
【0062】
樹脂層2にフィラー1を押し込むときの該樹脂層2の具体的な粘度は、形成する傾斜2b、起伏2cの形状や深さなどに応じて、下限については好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限については、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。
【0063】
上述したように、樹脂層2から露出しているフィラー1の周囲に傾斜2b(図1B)が形成されていることにより、フィラー含有フィルムの物品への圧着時に生じるフィラー1の扁平化に対して樹脂層2から受ける抵抗が、傾斜2bが無い場合に比して低減する。このため、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子における導電粒子の挟持がされ易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。
【0064】
傾斜2bは、フィラーの露出部分の外形に沿っていることが好ましい。接続における傾斜の効果がより発現し易くなる以外に、フィラーを認識し易くなることで、フィラー含有フィルムの製造における製品検査などが行い易くなるからである。
【0065】
また、樹脂層2から露出することなく埋まっているフィラー1の直上の樹脂層2の表面に起伏2c(図4図6)が形成されていることにより、傾斜の場合と同様に、物品への圧着時に物品からの押圧力がフィラーにかかりやすくなる。また、起伏の凹みがあることにより、フィラーの直上の樹脂が平坦である場合よりもフィラーの直上の樹脂量が低減しているため、圧着時にはフィラー直上の樹脂が排除されやすくなり、物品とフィラーの接続状態が良好となる。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、異方性導電接続時に端子と導電粒子とが接触し易くなることから、端子における導電粒子の捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。
【0066】
傾斜2bおよび起伏2cは、樹脂層にヒートプレスするなどにより、その一部が消失してしまう場合があるが、本発明はこれを包含する。また、フィラーは樹脂層の表面に1点で露出し、その1点の周りに傾斜又は起伏が存在する場合があるが、本発明はこれも包含する。これらの態様は、フィラー含有フィルムの用途や、熱圧着する物品に応じて適宜選択される。即ち、本発明のフィラー含有フィルムは設計の自由度が高く、必要に応じて傾斜または起伏の程度を低減させ、又は傾斜または起伏を部分的に消失させて用いることができる。
【0067】
(樹脂層の層厚)
本発明のフィラー含有フィルムでは、樹脂層2の層厚Laとフィラーの粒子径Dとの比(La/D)が0.6~10が好ましい。ここで、フィラーの粒子径Dは、その平均粒子径を意味する。樹脂層2の層厚Laが大き過ぎるとフィラー含有フィルムの物品への圧着時にフィラーが位置ズレしやすくなる。そのため、フィラー含有フィルムを光学フィルムとした場合には、光学特性にばらつきが生じる。また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、電子部品と異方性導電導接続した端子における導電粒子の捕捉性が低下する。この傾向はLa/Dが10を超えると顕著である。そこでLa/Dは8以下がより好ましく、6以下が更により好ましい。反対に樹脂層2の層厚Laが小さすぎてLa/Dが0.6未満となると、フィラー1を樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持することが困難となる。特に、フィラー含有フィルムが異方性導電フィルムの場合に接続する端子が高密度COGのときには、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子径Dとの比(La/D)は、好ましくは0.6~3、より好ましくは0.8~2である。一方、フィラー含有フィルムが異方性導電フィルムである場合に、接続する電子部品のバンプレイアウトなどによりショート発生のリスクが低いと考えられるときには、比(La/D)の下限に関し、0.25以上としてもよい。
【0068】
(樹脂層の組成)
本発明において樹脂層2は、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物から形成することができる。樹脂層2を構成する樹脂組成物は、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜選択され、また、樹脂層2を絶縁性とするか否かもフィラー含有フィルムの用途に応じて決定される。
【0069】
ここで硬化性樹脂組成物は、例えば、熱重合性化合物と熱重合開始剤とを含有する熱重合性組成物から形成することができる。熱重合性組成物には必要に応じて光重合開始剤を含有させてもよい。
【0070】
熱重合開始剤と光重合開始剤を併用する場合に、熱重合性化合物として光重合性化合物としても機能するものを使用してもよく、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させてもよい。好ましくは、熱重合性化合物とは別に光重合性化合物を含有させる。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系硬化開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。
【0071】
光重合開始剤として、波長の異なる光に反応する複数種類を含有させてもよい。これにより、フィラー含有フィルムの製造時において樹脂層をフィルム化するための樹脂の光硬化と、フィラー含有フィルムを物品に圧着するときの樹脂の光硬化とで使用する波長を使い分けることができる。
【0072】
フィラー含有フィルムの製造時に光硬化を行う場合、樹脂層に含まれる光重合性化合物の全部又は一部を光硬化させることができる。この光硬化により、樹脂層2におけるフィラー1の配置が保持乃至固定化される。したがって、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、ショートの抑制と捕捉性の向上が見込まれる。また、この光硬化により、フィラー含有フィルムの製造工程における樹脂層の粘度を適宜調整してもよい。
【0073】
樹脂層における光重合性化合物の配合量は30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、2質量%未満がより好ましい。光重合性化合物が多すぎるとフィラー含有フィルムを物品に圧着するときの押し込みにかかる推力が増加するためである。
【0074】
熱重合性組成物の例としては、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合性アクリレート系組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物等が挙げられる。熱カチオン重合開始剤を含む熱カチオン重合性エポキシ系組成物に代えて、熱アニオン重合開始剤を含む熱アニオン重合性エポキシ系組成物を使用してもよい。また、特に支障を来たさなければ、複数種の重合性組成物を併用してもよい。併用例としては、熱カチオン重合性化合物と熱ラジカル重合性化合物の併用などが挙げられる。
【0075】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の熱重合型(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。
【0076】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0077】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0078】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0079】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0080】
熱カチオン重合開始剤の使用量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0081】
熱アニオン重合開始剤としては、通常用いられる公知の硬化剤を使用することができる。例えば、有機酸ジヒドラジド、ジシアンジアミド、アミン化合物、ポリアミドアミン化合物、シアナートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物、カルボン酸、三級アミン化合物、イミダゾール、ルイス酸、ブレンステッド酸塩、ポリメルカプタン系硬化剤、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0082】
熱重合性組成物は、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有することが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。重量平均分子量は10000以上であることが好ましい。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0083】
熱重合性組成物には、溶融粘度調整のために、上述のフィラー1とは別に絶縁性フィラーを含有させてもよい。これはシリカ粉やアルミナ粉などが挙げられる。絶縁性フィラーは粒子径20~1000nmの微小なフィラーが好ましく、また、配合量はエポキシ化合物等の熱重合性化合物(光重合性組成物)100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい。フィラー1とは別に含有させる絶縁性フィラーは、フィラー含有フィルムの用途が異方性導電フィルムの場合に好ましく使用されるが、用途によっては絶縁性でなくともよく、例えば導電性の微小なフィラーを含有させてもよい。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、フィラー分散層を形成する樹脂層には、必要に応じて、フィラー1とは異なるより微小な絶縁性フィラー(所謂ナノフィラー)を適宜含有させることができる。
【0084】
本発明のフィラー含有フィルムには、上述の絶縁性又は導電性のフィラーとは別に充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0085】
(樹脂層の厚さ方向におけるフィラーの位置)
本発明のフィラー含有フィルムでは、樹脂層2の厚さ方向におけるフィラー1の位置は前述のように、フィラー1が樹脂層2から露出していてもよく、露出することなく、樹脂層2内に埋め込まれていても良いが、隣接するフィラー間の中央部における接平面2pからのフィラーの最深部の距離(以下、埋込量という)Lbと、フィラーの粒子径Dとの比(Lb/D)(以下、埋込率という)が60%以上105%以下であることが好ましい。
【0086】
埋込率(Lb/D)を60%以上とすることにより、フィラー1を樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持し、また、105%以下とすることにより、フィラー含有フィルムの物品との圧着時にフィラーを不用に流動させるように作用する樹脂層の樹脂量を低減させることができる。
【0087】
なお、本発明において、埋込率(Lb/D)の数値は、フィラー含有フィルムに含まれる全フィラー数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が60%以上105%以下とは、フィラー含有フィルムに含まれる全フィラー数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上の埋込率が60%以上105%以下であることをいう。
【0088】
このように全フィラーの埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、フィラー含有フィルムを物品に圧着するときの押圧加重がフィラーに均一にかかる。したがって、フィラー含有フィルムを物品に圧着して貼り合わせたフィルム貼着体では光学特性、機械的特性などの品質の均一性を確保することができる。また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子における導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が向上する。
【0089】
埋込率(Lb/D)は、フィラー含有フィルムから面積30mm以上の領域を任意に10箇所以上抜き取り、そのフィルム断面の一部をSEM画像で観察し、合計50個以上のフィラーを計測することにより求めることができる。より精度を上げるため、200個以上のフィラーを計測して求めてもよい。
【0090】
また、埋込率(Lb/D)の計測は、面視野画像において焦点調整することにより、ある程度の個数について一括して求めることができる。もしくは埋込率(Lb/D)の計測にレーザー式判別変位センサ(キーエンス製など)を用いてもよい。
【0091】
(埋込率60%以上100%未満の態様)
埋込率(Lb/D)60%以上105%以下のフィラー1のより具体的な埋込態様としては、まず、図1Bに示したフィラー含有フィルム10Aのように、フィラー1が樹脂層2から露出するように埋込率60%以上100%未満で埋め込まれた態様をあげることができる。このフィラー含有フィルム10Aは、樹脂層2の表面のうち該樹脂層2から露出しているフィラー1と接している部分及びその近傍が、隣接するフィラー間の中央部の樹脂層の表面2aにおける接平面2pに対して凹んだ傾斜2bを有し、この凹みはフィラーの外形に概ね沿った稜線を形成している。
【0092】
このような傾斜2bまたは起伏2c(図4図6)は、フィラー含有フィルムを、樹脂層2にフィラー1を押し込むことにより製造する場合に、フィラー1の押し込み時の樹脂層2の粘度を、下限は、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上とし、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下とする。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。
【0093】
(埋込率100%の態様)
次に、本発明のフィラー含有フィルムのうち、埋込率(Lb/D)100%の態様としては、図2に示すフィラー含有フィルム10Bのように、フィラー1の周りに図1Bに示したフィラー含有フィルム10Aと同様のフィラーの外形に概ね沿った稜線を形成する傾斜2bを有し、樹脂層2から露出しているフィラー1の露出径Lcがフィラーの粒子径Dよりも小さいもの、図3Aに示すフィラー含有フィルム10Cのように、フィラー1の露出部分の周りの傾斜2bがフィラー1近傍で急激に現れ、フィラー1の露出径Lcとフィラーの粒子径Dとが略等しいもの、図4に示すフィラー含有フィルム10Dのように、樹脂層2の表面に浅い起伏2cがあり、フィラー1がその頂部1aの1点で樹脂層2から露出しているものをあげることができる。
【0094】
なお、フィラーの露出部分の周りの樹脂層2の傾斜2bや、フィラーの直上の樹脂層2の起伏2cに隣接して微小な突出部分2qが形成されていてもよい。この一例を図3Bのフィラー含有フィルム10C’に示す。
【0095】
これらフィラー含有フィルム10B、10C、10C’、10Dは埋込率100%であるため、フィラー1の頂部1aと樹脂層2の表面2aとが面一に揃っている。フィラー1の頂部1aと樹脂層2の表面2aとが面一に揃っていると、図1Bに示したようにフィラー1が樹脂層2から突出している場合に比して、フィラー含有フィルムと物品との熱圧着時に個々のフィラーの周辺にてフィルム厚み方向の樹脂量が不均一になりにくく、樹脂流動によるフィラーの移動を低減できるという効果がある。なお、埋込率が厳密に100%でなくても、樹脂層2に埋め込まれたフィラー1の頂部と樹脂層2の表面とが面一となる程度に揃っているとこの効果を得ることができる。言い換えると、埋込率(Lb/D)が概略80~105%、特に、90~100%の場合には、樹脂層2に埋め込まれたフィラー1の頂部と樹脂層2の表面とは面一であるといえ、樹脂流動によるフィラーの移動を低減させることができる。
【0096】
これらフィラー含有フィルム10B、10C、10C’、10Dの中でも、10Dはフィラー1の周りの樹脂量が不均一になりにくいので樹脂流動によるフィラーの移動を解消でき、また頂部1aの1点であっても樹脂層2からフィラー1が露出しているので、フィラーと物品が接合しやすくなり、フィラー含有フィルムが異方性導電フィルムの場合には、端子における導電粒子1の捕捉性もよく、導電粒子のわずかな移動も起こりにくいという効果が期待できる。したがって、この態様は、特にファインピッチやバンプ間スペースが狭い場合に有効である。
【0097】
なお、傾斜2b、起伏2cの形状や深さが異なるフィラー含有フィルム10B(図2)、10C(図3A)、10D(図4)は、後述するように、フィラー1の押し込み時の樹脂層2の粘度等を変えることで製造することができる。
【0098】
(埋込率100%超の態様)
本発明のフィラー含有フィルムのうち、埋込率100%を超える場合、図5に示すフィラー含有フィルム10Eのようにフィラー1が露出し、その露出部分の周りの樹脂層2に接平面2pに対する傾斜2bがあるもの、または図6に示すフィラー含有フィルム10Fのようにフィラー1の直上の樹脂層2の表面に接平面2pに対する起伏2cがあるものをあげることができる。
【0099】
なお、フィラー1の露出部分の周りの樹脂層2に傾斜2bを有するフィラー含有フィルム10E(図5)とフィラー1の直上の樹脂層2に起伏2cを有するフィラー含有フィルム10F(図6)は、それらを製造する際のフィラー1の押し込み時の樹脂層2の粘度等を変えることで製造することができる。
【0100】
図5に示すフィラー含有フィルム10Eと物品を圧着すると、フィラー1が物品から直接押圧されるので、物品とフィラーとが接合しやすくなり、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、端子における導電粒子の捕捉性が向上する。また、図6に示すフィラー含有フィルム10Fと物品を圧着すると、フィラー1が物品を直接には押圧せず、樹脂層2を介して押圧することになるが、押圧方向に存在する樹脂量が図8の状態(即ち、フィラー1が埋込率100%を超えて埋め込まれ、フィラー1が樹脂層2から露出しておらず、かつ樹脂層2の表面が平坦である状態)に比べて少ないため、フィラーに押圧力がかかりやすくなる。したがって、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時に端子間の導電粒子1が樹脂流動により不用に移動することが妨げられる。
【0101】
上述したフィラーの露出部分の周りの樹脂層2の傾斜2b(図1B図2図3A図3B図5)や、フィラーの直上の樹脂層の起伏2c(図4図6)の効果を得易くする点からフィラー1の露出部分の周りの傾斜2bの最大深さLeとフィラー1の粒子径Dとの比(Le/D)は、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、さらに好ましくは20~25%であり、フィラー1の露出部分の周りの傾斜2bの最大径Ldとフィラー1の粒子径Dとの比(Ld/D)は、好ましくは100%以上、より好ましくは100~150%であり、フィラー1の直上の樹脂における起伏2cの最大深さLfとフィラー1の粒子径Dとの比(Lf/D)は、0より大きく、好ましくは10%未満、より好ましくは5%以下である。
【0102】
なお、フィラー1の露出径(即ち、露出している部分の径)Lcは、フィラー1の粒子径D以下とすることができ、好ましくはフィラーの粒子径Dの10~90%である。図4に示したようにフィラー1の頂部の1点で露出するようにしてもよく、フィラー1が樹脂層2内に完全に埋まり、露出径Lcがゼロとなるようにしてもよい。
【0103】
一方、樹脂層2に埋め込まれたフィラー1の頂部と樹脂層2の表面とが略面一であり、且つ傾斜2bまたは起伏2cによる凹みの深さ(隣接するフィラー間の中央部における接平面からの凹みの最深部の距離)が粒子径の10%以上のフィラー(以下、単に「樹脂層と面一で凹み深さが10%以上のフィラー」という)が局所的に集中した領域が存在すると、フィラー含有フィルムの性能や品質に問題はなくとも、外観が損なわれる場合がある。また、そのような領域の傾斜2bまたは起伏2cを物品に向けてフィラー含有フィルムと物品とを貼り合わせると傾斜2bまたは2cが貼り合わせ後に浮き等の原因となることがある。例えば、フィラー含有フィルムが異方性導電フィルムの場合に、絶縁性樹脂層2と面一で傾斜または起伏による凹み深さが10%以上の導電粒子が一つのバンプに集中的に存在するとバンプとの接続後に浮きが生じ、導通性の低下が生じる場合がある。そのため、樹脂層2と面一で凹み深さが10%以上の任意のフィラーからフィラーの粒子径の200倍以内の領域において、トータルのフィラー数に対する、樹脂層と面一で凹み深さが10%以上のフィラー数の割合が50%以内であることが好ましく、40%以内であることがより好ましく、30%以内であることが更により好ましい。これに対してこの割合が50%を超える領域には、フィラー含有フィルムの表面に樹脂を散布するなどして傾斜2bまたは起伏2cによる凹みを浅くすることが好ましい。この場合、散布する樹脂は、樹脂層2を形成する樹脂よりも低粘度であることが好ましく、また、散布後に樹脂層2の凹みが確認できる程度に、散布する樹脂の濃度が希釈されていることが望ましい。こうして傾斜2bまたは起伏2cによる凹みを浅くすることにより、上述した外観や浮きの問題を改善することができる。
【0104】
なお、図7に示すように、埋込率(Lb/D)が60%未満のフィラー含有フィルム10Gでは、樹脂層2上でフィラー1が転がりやすくなるため、フィラー含有フィルムと物品との圧着時に、フィラーと物品との接続状態を良好にするため、特にフィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとした場合には、異方性導電接続時の捕捉率を向上させる点から、埋込率(Lb/D)を60%以上とすることが好ましい。
【0105】
また、埋込率(Lb/D)が100%を超える態様において、図8に示す比較例のフィラー含有フィルム10Xのように樹脂層2の表面が平坦な場合は、フィラー含有フィルムと物品との熱圧着時に、フィラー1と端子との間に介在する樹脂量が過度に多くなり、また、フィラー1が直接的に物品を押圧することなく、樹脂層を介して物品を押圧することになり、フィラーが樹脂流動によって流され易くなる。
【0106】
本発明において、樹脂層2の表面の傾斜2b、起伏2cの存在は、フィラー含有フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、面視野観察においても確認できる。光学顕微鏡、金属顕微鏡でも傾斜2b、起伏2cの観察は可能である。また、傾斜2b、起伏2cの大きさは画像観察時の焦点調整などで確認することもできる。前述のようにヒートプレスにより傾斜または起伏を減少させた後であっても、残存する傾斜または起伏を、上述と同様の手法で確認することができる。
【0107】
<フィラー含有フィルムの変形態様>
(第2の樹脂層)
本発明のフィラー含有フィルムは、図9に示すフィラー含有フィルム10Hのように、フィラー分散層3の樹脂層2の傾斜2bが形成されている面に、該樹脂層2よりも好ましくは最低溶融粘度が低い第2の樹脂層4を積層してもよい。第2の樹脂層および後述する第3の樹脂層はフィラー分散層に分散しているフィラー1を含有しない層になる。また図10に示すフィラー含有フィルム10Iのように、フィラー分散層3の樹脂層2の傾斜2bが形成されていない面に、該樹脂層2よりも最低溶融粘度が低い第2の樹脂層4を積層してもよい。傾斜2bに代えて起伏2cが形成されている場合も同様である。
【0108】
第2の樹脂層4もフィラー含有フィルムの用途に応じて絶縁性又は導電性にすることができる。第2の樹脂層4を積層すると、フィラー含有フィルムを介して対峙する2つの物品を熱圧着する場合に、それらの接着性を向上させることができ、特に、フィラー含有フィルムを、第2の樹脂層として絶縁性樹脂層を有する異方性導電フィルムとし、電子部品を異方性導電接続するときには、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を第2の樹脂層で充填し、電子部品同士の接着性を向上させることができる。
【0109】
第2の樹脂層4を有するフィラー含有フィルムを用いて対向する物品同士を接続する場合、第2の樹脂層4が傾斜2bの形成面上にあるか否かに関わらず第2の樹脂層4が、熱圧着ツールで加圧する物品側にあること、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、熱圧着ツールで加圧するICチップ等の第1電子部品側にあること(言い換えると、樹脂層2がステージに載置される基板等の第2電子部品側にあること)が好ましい。このようにすることで、フィラーの不本意な移動を避けることができ、異方性導電フィルムにおいては異方性導電接続時の導電粒子の捕捉性を向上させることができる。傾斜2bが起伏2cであっても同様である。なお、第1電子部品と第2電子部品を異方性導電フィルムを用いて接続する場合、通常はICチップ等の第1電子部品を押圧治具側とし、基板等の第2電子部品をステージ側とし、異方性導電フィルムを第2電子部品と仮圧着した後に、第1電子部品と第2電子部品を本圧着するが、第2電子部品の熱圧着領域のサイズ等によっては、異方性導電フィルムを第1電子部品に仮貼りした後に、第1電子部品と第2電子部品を本圧着する。
【0110】
樹脂層2と第2の樹脂層4との最低溶融粘度は、差があるほど、フィラー含有フィルムを介して接続する2つの物品間の空間が第2の樹脂層4で充填され易くなる。したがって、第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続する場合には、電子部品の電極やバンプによって形成される空間が第2の絶縁性樹脂層4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させる効果が期待できる。また、この差があるほど導電粒子分散層において導電粒子を保持している絶縁性樹脂層2の移動量が第2の樹脂層4に対して相対的に小さくなるため、端子における導電粒子の捕捉性が向上しやすくなる。
【0111】
樹脂層2と第2の樹脂層4との最低溶融粘度比は、実用上は、樹脂層2と第2の樹脂層4の層厚の比率にもよるが、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺のフィラー含有フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングが生じる虞があるので、実用上は15以下が好ましい。第2の樹脂層4の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に100~2000Pa・sである。
【0112】
なお、第2の樹脂層4は、樹脂層2と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0113】
第2の樹脂層4の厚さは、フィラー含有フィルムの用途に応じて適宜設定することができる。第2の樹脂層4の積層工程の難易度を過度に上げない点からは、一般にフィラーの粒子径の0.2~50倍とすることが好ましい。また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルム10H、10Iとする場合には、第2の樹脂層4の層厚は、好ましくは4~20μmであり、また、導電粒子径の好ましくは1~8倍である。
【0114】
また、フィラー含有フィルム10H、10Iにおいて、第2の樹脂層4の層厚はフィラー含有フィルムの用途によって定めることができ、熱圧着する物品や熱圧着条件に影響される部分があるために特に限定はされないが、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、好ましくは4~20μmである。または、導電粒子径に対して、好ましくは1~8倍である。
【0115】
また、樹脂層2と第2の樹脂層4を合わせたフィラー含有フィルム10H、10I全体の最低溶融粘度は、フィラー含有フィルムの用途や、樹脂層2と第2の樹脂層4の厚みの比率等に応じて定めるが、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、実用上は8000Pa・s以下とし、バンプ間への充填を行い易くするために200~7000Pa・sとしてもよく、好ましくは、200~4000Pa・sである。
【0116】
(第3の樹脂層)
本発明のフィラー含有フィルムでは、第2の樹脂層4と樹脂層2を挟んで反対側に第3の樹脂層が設けられていてもよい。第3の樹脂層も、フィラー含有フィルムの用途に応じて絶縁性又は導電性とすることができる。例えば、フィラー含有フィルムを、絶縁性の第3の樹脂層を有する異方性導電フィルムとした場合に、該第3の樹脂層をタック層として機能させることができる。フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、第3の樹脂層は、第2の樹脂層と同様に、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填させるために設けてもよい。
【0117】
第3の樹脂層の樹脂組成、粘度及び厚みは第2の樹脂層と同様でもよく、異なっていても良い。樹脂層2と第2の樹脂層4と第3の樹脂層を合わせたフィラー含有フィルムの最低溶融粘度は特に制限はないが、8000Pa・s以下としてもよく、200~7000Pa・sであってもよく、200~4000Pa・sとすることもできる。
【0118】
(その他の積層態様)
フィラー含有フィルムの用途によっては、フィラー分散層を積層してもよく、積層したフィラー分散層間に、第2の樹脂層のようにフィラーを含有していない層を介在させてもよく、更に最外層に第2の樹脂層や第3の樹脂層を設けてもよい。
【0119】
<フィラー含有フィルムの製造方法>
本発明のフィラー含有フィルムの製造方法は、フィラーが樹脂層に分散しているフィラー分散層を形成する工程を有する。このフィラー分散層を形成する工程は、フィラーを樹脂層表面に、特定の面積占有率で保持させる工程と、樹脂層に保持させたフィラーを該樹脂層に押し込む工程を有する。
【0120】
このうち、フィラーを樹脂層表面に保持させる工程では、樹脂層の表面に保持させるフィラーの粒子径のCV値を20%以下とする。また、フィラーが樹脂層の表面で分散し、且つ次式で算出されるフィラーの面積占有率が0.3%以上となるようにフィラーを樹脂層の表面に保持させる。
【0121】
面積占有率(%)=[平面視におけるフィラーの個数密度]×[フィラー1個の平面視面積の平均]×100
【0122】
一方、樹脂層に保持させたフィラーを該樹脂層に押し込む工程では、フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して傾斜または起伏を有するように、樹脂層の表面に保持させたフィラーを樹脂層に押し込む。
【0123】
フィラーを押し込む樹脂層は、前術の起伏2bまたは傾斜2cを形成できる限り特に制限はないが、最低溶融粘度を1100Pa・s以上、60℃における粘度を3000Pa・s以上とすることが好ましい。中でも、最低溶融粘度は、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、特に好ましくは3000~10000Pa・sであり、60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、更に好ましくは10000Pa・s以下である。
【0124】
フィラー含有フィルムがフィラー分散層3の単層から形成されている場合、本発明のフィラー含有フィルムは、例えば、樹脂層2の表面にフィラー1を所定の配列で保持させ、そのフィラー1を平板又はローラーで樹脂層に押し込むことにより製造される。なお、埋込率100%超のフィラー含有フィルムを製造する場合に、フィラーの配列に対応した凸部を有する押し板で押し込んでもよい。
【0125】
ここで、樹脂層2におけるフィラー1の埋込量は、フィラー1の押し込み時の押圧力、温度等により調整することができる。また、傾斜2b、起伏2cの形状及び深さは、押し込み時の絶縁性樹脂層2の粘度、押込速度、温度等により調整する。
【0126】
樹脂層2にフィラー1を保持させる手法としては、公知の手法を利用することができる。例えば、樹脂層2にフィラー1を直接散布する、あるいは二軸延伸させることのできるフィルムにフィラー1を単層で付着させ、そのフィルムを二軸延伸し、その延伸させたフィルムに樹脂層2を押圧してフィラーを樹脂層2に転写することにより、樹脂層2にフィラー1を保持させる。また、転写型にフィラーを充填し、そのフィラーを樹脂層2に転写することにより、樹脂層2にフィラー1を保持させることもできる。
【0127】
転写型を使用して樹脂層2にフィラー1を保持させる場合、転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したもの、印刷法を応用したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。なお、本発明は上記の手法で限定されるものではない。
【0128】
また、フィラーを押し込んだ樹脂層の、該押し込み側の表面、又はその反対面に、樹脂層よりも低粘度の第2の樹脂層を積層することができる。
【0129】
フィラー含有フィルムと物品との圧着を工業的生産ラインで経済的に行えるようにするため、フィラー含有フィルムはある程度の長尺に製造することが好ましい。そこでフィラー含有フィルムは長さを、好ましくは5m以上、より好ましくは10m以上、さらに好ましくは25m以上に製造する。一方、フィラー含有フィルムを過度に長くすると、既存の圧着装置を使用することが困難になり、取り扱い性も劣る。そこで、フィラー含有フィルムは、その長さを好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、さらに好ましくは500m以下に製造する。また、このような長尺のフィラー含有フィルムは、巻芯に巻かれた巻装体とすることが取り扱い性に優れる点から好ましい。
【0130】
<フィラー含有フィルムの使用方法>
本発明のフィラー含有フィルムは、従前のフィラー含有フィルムと同様に物品に貼り合わせて使用することができ、フィラー含有フィルムを貼り合わせることができれば物品に特に制限はない。フィラー含有フィルムの用途に応じた種々の物品に圧着により、好ましくは熱圧着により貼着することができる。この貼り合わせ時には光照射を利用してもよく、熱と光を併用してもよい。例えば、フィラー含有フィルムの樹脂層が、該フィラー含有フィルムを貼り合わせる物品に対して十分な粘着性を有する場合、フィラー含有フィルムの樹脂層を物品に軽く押し付けることによりフィラー含有フィルムが一つの物品の表面に貼着したフィルム貼着体を得ることができる。この場合に、物品の表面は平面に限られず、凹凸があってもよく、全体として屈曲していてもよい。物品がフィルム状又は平板状である場合には、圧着ローラーを用いてフィラー含有フィルムを物品に貼り合わせてもよい。これにより、フィラー含有フィルムのフィラーと物品を直接的に接合させることもできる。
【0131】
また、対向する第1物品と第2物品の間にフィラー含有フィルムを介在させ、熱圧着ローラーや圧着ツールで対向する2つの物品を接合し、その物品間でフィラーが挟持されるようにしてもよい。また、フィラーと物品とを直接接触させないようにしてフィラー含有フィルムを物品で挟み込むようにしてもよい。
【0132】
また、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合、熱圧着ツールを用いて異方性導電フィルムを、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品との異方性導電接続に使用することができる。本発明の異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。
【0133】
したがって、本発明は、本発明のフィラー含有フィルムを種々の物品に熱圧着により貼着した貼合体や、貼合体の製造方法を包含する。特に、フィラー含有フィルムを異方性導電フィルムとする場合には、異方性導電フィルムを用いて第1電子部品と第2電子部品を異方性導電接続する接続構造体の製造方法や、それにより得られた接続構造体、即ち、本発明の異方性導電フィルムにより第1電子部品と第2電子部品が異方性導電接続されている接続構造体も包含する。
【0134】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、異方性導電フィルムが導電粒子分散層3の単層からなる場合、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれている側から仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの導電粒子1が表面に埋め込まれていない側にICチップ等の第1電子部品を合わせ、熱圧着することにより製造することができる。異方性導電フィルムの絶縁性樹脂層に熱重合開始剤と熱重合性化合物だけでなく、光重合開始剤と光重合性化合物(熱重合性化合物と同一でもよい)が含まれている場合、光と熱を併用した圧着方法でもよい。このようにすれば、導電粒子の不本意な移動は最小限に抑えることができる。また、導電粒子が埋め込まれていない側を第2電子部品に仮貼りして使用してもよい。尚、第2電子部品ではなく、第1電子部品に異方性導電フィルムを仮貼りすることもできる。
【0135】
また、異方性導電フィルムが、導電粒子分散層3と第2の絶縁性樹脂層4の積層体から形成されている場合、導電粒子分散層3を各種基板などの第2電子部品に仮貼りして仮圧着し、仮圧着した異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側にICチップ等の第1電子部品をアライメントして載置し、熱圧着する。異方性導電フィルムの第2の絶縁性樹脂層4側を第1電子部品に仮貼りしてもよい。また、導電粒子分散層3側を第1電子部品に仮貼りして使用することもできる。
【実施例
【0136】
以下、本発明のフィラー含有フィルムの一態様である異方性導電フィルムについて、実施例により具体的に説明する。
【0137】
実施例1~11、比較例1~2
(1)異方性導電フィルムの製造
表1に示した配合で、絶縁性樹脂層及び第2の絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0138】
絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物をバーコーターでフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に表2に示す厚さの絶縁性樹脂層を形成した。同様にして、第2の絶縁性樹脂層を、表2に示す厚さでPETフィルム上に形成した。
【0139】
【表1】
【0140】
一方、導電粒子1が平面視で図1Aに示す正方格子配列で粒子間距離が導電粒子の粒子径と等しくなり、導電粒子の個数密度が28000個/mm2となるように、金型を作製した。即ち、金型の凸部パターンが正方格子配列で、格子軸における凸部のピッチが平均導電粒子径(3μm)の2倍であり、格子軸と異方性導電フィルムの短手方向(端子の長手方向)とのなす角度θが15°となる金型を作製し、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で該金型に流し込み、冷やして固めることで、凹みが図1Aに示す配列パターンの樹脂型を形成した。
【0141】
導電粒子として、金属被覆樹脂粒子(積水化学工業(株)、AUL703、平均粒子径3μm)を用意し、この導電粒子を樹脂型の凹みに充填し、その上に上述の絶縁性樹脂層を被せ、60℃、0.5MPaで押圧することで貼着させた。そして、型から絶縁性樹脂層を剥離し、絶縁性樹脂層上の導電粒子を、加圧(押圧条件:60~70℃、0.5MPa)することで絶縁性樹脂層に押し込み、導電粒子分散層の単層からなる異方性導電フィルムを作製した(実施例6~11及び比較例2)。導電粒子の埋め込みの状態は、押し込み条件でコントロールした。なお、使用した金属被覆樹脂粒子のCV値はFPIA-3000(マルバーン社)を用いて、粒子個数1000個以上で測定したところ20%以下であった。
【0142】
こうして製造した異方性導電フィルムにおける導電粒子の面積占有率は、
28000個/mm×(1.5×1.5×3.14×10-6)×100
=19.8%である。
【0143】
また、同様に作製した導電粒子分散層に、第2の絶縁性樹脂層を積層することにより2層タイプの異方性導電フィルムを作製した(実施例1~5、比較例1)。
【0144】
(2)埋込状態
各実施例1~11及び比較例1~2の異方性導電フィルムを、導電粒子を通る切断線で切断し、その断面を金属顕微鏡で観察した。また、導電粒子が異方性導電フィルムの表面に露出しているか、導電粒子が異方性導電フィルムのフィルム表面近傍にある実施例4~11、比較例2について、そのフィルム表面を金属顕微鏡で観察した。図11Aに実施例4の上面写真、図11Bに実施例8の上面写真を示す。
【0145】
実施例1~6、9~11及び比較例1では、導電粒子が絶縁性樹脂層から露出していた。このうち実施例1~6、9~11ではその導電粒子の周りの絶縁性樹脂層表面に傾斜2bが観察され、その周囲の表面部分(図11Aの点線の外側部分)が平坦であることが観察された。一方、比較例1では導電粒子の周りに傾斜は観察されなかった。
【0146】
実施例8では導電粒子が絶縁性樹脂層に完全に埋め込まれており、導電粒子が絶縁性樹脂層から露出していないが、導電粒子の真上の絶縁性樹脂層表面に起伏2cが観察され、また、その周囲の表面部分(図11Bの点線の外側部分)が平坦であることが観察された。比較例2は埋込率が100%よりも若干大きく、導電粒子が樹脂層から露出していないが、樹脂層の表面は平坦で、導電粒子の真上の樹脂層表面にも起伏は観察されなかった。
【0147】
なお、実施例7の異方性導電フィルムは、実施例6の傾斜2bと実施例8の起伏2cとが混在した例である。絶縁性樹脂層から露出している導電粒子の周りの絶縁性樹脂層表面に傾斜2bが観察され、また、その周囲の表面部分が平坦であることが観察された。他方、絶縁性樹脂層に完全に埋め込まれた導電粒子の真上の絶縁性樹脂層表面に起伏2cが観察され、その周囲の表面部分が平坦であることが観察された。
【0148】
(3)評価
(1)で作製した実施例及び比較例の異方性導電フィルムに対し、以下のようにして(a)初期導通抵抗、(b)導通信頼性、(c)粒子捕捉性を測定ないし評価した。結果を表2に示す。
【0149】
(a)初期導通抵抗
各実施例及び比較例の異方性導電フィルムを、接続に十分な面積で截断し、導通特性の評価用ICとガラス基板との間に挟み、加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)して各評価用接続物を得、得られた評価用接続物の導通抵抗を4端子法で測定した。初期導通抵抗は、実用上B評価以上であれば好ましく、A評価であればより好ましい。C評価であっても、2Ω以下であれば実用上問題はない。
【0150】
ここで、評価用ICとガラス基板は、それらの端子パターンが対応しており、サイズは次の通りである。また、評価用ICとガラス基板を接続する際には、異方性導電フィルムの長手方向とバンプの短手方向を合わせた。
【0151】
導通特性の評価用IC
外形 1.8×20.0mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 サイズ30×85μm、バンプ間距離50μm、バンプ高さ15μm
【0152】
ガラス基板(ITO配線)
ガラス材質 コーニング社製1737F
外形 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0153】
初期導通抵抗評価基準
A 0.3Ω未満
B 0.3Ω超1Ω未満
C 1Ω以上
【0154】
(b)導通信頼性
(a)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、初期導通抵抗と同様に測定した。導通信頼性は、実用上B評価以上であれば好ましく、A評価であれば更により好ましい。C評価であっても、6Ω以下であれば実用上問題はない。
【0155】
導通信頼性評価基準
A 2.5Ω以下
B 2.5Ω超5Ω未満
C 5Ω以上
【0156】
(c)粒子捕捉性
粒子捕捉性の評価用ICを使用し、この評価用ICと、端子パターンが対応するガラス基板(ITO配線)とを、アライメントを6μmずらして加熱加圧(180℃、60MPa、5秒)し、評価用ICのバンプと基板の端子とが重なる6μm×66.6μmの領域の100個について導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求め、次の基準で評価した。実用上、B評価以上であることが好ましい。
【0157】
粒子捕捉性の評価用IC
外形 1.6×29.8mm
厚み 0.3mm
バンプ仕様 サイズ12×66.6μm、バンプピッチ22μm(L/S=12μm/10μm)、バンプ高さ12μm
【0158】
粒子捕捉性評価基準
A 5個以上
B 3個以上5個未満
C 3個未満
【0159】
【表2】
【0160】
表2から、導電粒子の埋込率が60~105%の間にあり、導電粒子が絶縁性樹脂層から露出し、かつ傾斜2bを有する実施例1~7、9や、導電粒子が絶縁性樹脂層に完全に埋まり、かつ起伏2cを有する実施例8は、初期導通抵抗及び導通信頼性が共にA評価であり、粒子捕捉性の評価も良好であるが、埋込率がこの範囲にあり導電粒子が絶縁性樹脂層から露出していても傾斜2bが無い比較例1と、埋込率が略100%で導電粒子が絶縁性樹脂層に完全に埋まり、起伏2cが無い比較例2は粒子捕捉性がC評価であり、接続時に導電粒子が保持できず、ファインピッチ接続には対応できないことがわかる。このことから、絶縁性樹脂層2の表面が導電粒子1の形状に沿って隆起していると異方性導電接続時に導電粒子が樹脂流動の影響を受け易くなり、また導電粒子の端子への押し込みが不足することが推察できる。
【0161】
また、上述の実施例1~7、9は絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が2000Pa・s以上、60℃溶融粘度が3000Pa・s以上であるが、比較例1、2は最低溶融粘度が1000Pa・s、60℃溶融粘度が1500Pa・sであり、導電粒子の押し込み条件の調整により押し込み時の粘度が低くなったために傾斜2b、起伏2cが形成されなかったことがわかる。
【0162】
実施例4、5と実施例6、9から、異方性導電フィルムを導電粒子分散層と第2の絶縁性樹脂層の2層タイプとした場合も、導電粒子分散層の単層とした場合も、粒子捕捉性の評価が実用上良好であることがわかる。
【0163】
実施例3と実施例4、5から、異方性導電フィルムを導電粒子分散層と第2の絶縁性樹脂層の2層タイプとする場合に、絶縁性樹脂層の導電粒子を押し込んだ面に第2の絶縁性樹脂層を積層した場合も、それと反対側に第2の絶縁性樹脂層を積層した場合も粒子捕捉性の評価が実用上良好であることがわかる。
【0164】
なお、実施例4、5の異方性導電フィルムの導電粒子が露出している表面に希釈した同一の樹脂組成物を噴霧し、その表面を略平坦にしたものについて、同様の評価をしたところ、略同等の結果が得られた。
【0165】
全ての実施例の初期導通を測定した評価物において、特開2016-085983号公報の実施例に記載されているショート数の測定方法と同様にしてバンプ間100個におけるショート数を確認したところ、ショートしているものはなかった。また、全ての実施例の異方性導電フィルムについて特開2016-085982号公報に記載されている実施例のショート発生率の測定方法に従いショート発生率を求めたところ、全て50ppm未満であり実用上問題がないことを確認した。なお、導電粒子を絶縁性樹脂中に混練してランダムに分散させた異方性導電フィルムの場合、これよりも大きい桁数のショート発生率となる。これは特許文献2の比較例2や、特許文献3の比較例2などを参照すれば確認できる。
【0166】
なお、傾斜と起伏とが混在する実施例7の異方性導電フィルムは、実施例6、8と同等の結果が得られた。このことから、傾斜または起伏が導電粒子の近傍に存在することにより、その効果が発揮されることがわかる。また、実施例6~8で同等の効果が得られたということは、異方性導電フィルムの製造条件においてマージンを広くとれることを表している。これにより、異方性導電フィルムの製造コストの低減化や設計変更の迅速化など、様々な効果が見込まれ、産業上のメリットが大きい。
【0167】
実験例1~4
(異方性導電フィルムの作製)
COG接続に使用する異方性導電フィルムについて、絶縁性樹脂層の樹脂組成がフィルム形成能と導通特性に及ぼす影響を調べるために、表3に示す配合で絶縁性樹脂層と第2の絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物を調製した。この場合、絶縁性樹脂組成物の調製条件により樹脂組成物の最低溶融粘度を調整した。得られた樹脂組成物を使用して、実施例1と同様にして絶縁性樹脂層を形成し、その絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込むことにより導電粒子分散層の単層からなる異方性導電フィルムを作製し、さらにその絶縁性樹脂層の導電粒子を押し込んだ側に第2の絶縁性樹脂層を積層して表4に示す異方性導電フィルムを作製した。この場合、導電粒子の配置は実施例1と同じものである。また、導電粒子の押し込み条件を適宜調整することにより、導電粒子は表4に示す埋込状態となった。
【0168】
この異方性導電フィルムの作製工程において、絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込んだ後に実験例4ではフィルム形状が維持されなかった(フィルム形状評価:NG)が、それ以外の実験例ではフィルム形状が維持された(フィルム形状評価:OK)。そのため、実験例4を除く実験例の異方性導電フィルムについて導電粒子の埋込状態を金属顕微鏡で観察して計測し、さらに以降の評価を行った。
【0169】
なお、実験例4を除く各実験例では傾斜、又は傾斜と起伏の双方が観察されたが、表4には、各実験例ごとに傾斜が最も明確に観察されたものの計測値を示した。観察された埋込状態は前述した好ましい範囲を満たしていた。
【0170】
【表3】
【0171】
【表4】
【0172】
(評価)
(a)初期導通抵抗及び導通信頼性
実施例1と同様にして初期導通抵抗と導通信頼性をそれぞれ3段階に評価した。この場合の評価基準も実施例1と同様である。結果を表4に示す。
【0173】
(b)粒子捕捉性
実施例1と同様にして粒子捕捉性を評価した。
その結果、実験例1~3のいずれもB判定以上であった。
【0174】
(c)ショート発生率
実施例1と同様にしてショート発生率を評価した。
その結果、実験例1~3のいずれも50ppm未満であり実用上問題がないことを確認した。
【0175】
表4から絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が1000Pa・s以下であれば、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層が傾斜を有するフィルムの形成は難しいことがわかる。一方、絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が1500Pa・s以上であると、導電粒子の埋込時の条件の調整により導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面に傾斜を形成できること、こうして得られた異方性導電フィルムはCOG用に導通特性が良好であることがわかる。
【0176】
実験例5~8
(異方性導電フィルムの作製)
FOG接続に使用する異方性導電フィルムについて、絶縁性樹脂層の樹脂組成がフィルム形成能と導通特性に及ぼす影響を調べるために、表5に示す配合で絶縁性樹脂層と第2の絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物を調製した。この場合、導電粒子の配置は個数密度15000個/mmの6方格子配列とし、その格子軸の一つを異方性導電フィルムの長手方向に対して15°傾斜させた。また、絶縁性樹脂組成物の調製条件により樹脂組成物の最低溶融粘度を調整した。得られた樹脂組成物を使用して、実施例1と同様にして絶縁性樹脂層を形成し、その絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込むことにより導電粒子分散層の単層からなる異方性導電フィルムを作製し、さらにその絶縁性樹脂層の導電粒子を押し込んだ側に第2の絶縁性樹脂層を積層して表6に示す異方性導電フィルムを作製した。この場合、導電粒子の押し込み条件を適宜調整することにより、導電粒子は表6に示す埋込状態となった。
【0177】
この異方性導電フィルムの作製工程において、絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込んだ後に実験例8ではフィルム形状が維持されなかった(フィルム形状評価:NG)が、それ以外の実験例ではフィルム形状が維持された(フィルム形状評価:OK)。そのため、実験例8を除く実験例の異方性導電フィルムについて導電粒子の埋込状態を金属顕微鏡で観察して計測し、さらに以降の評価を行った。
【0178】
なお、実験例8を除く各実験例には傾斜、又は傾斜と起伏の双方が観察されたが、表6には、各実験例ごとに傾斜が最も明確に観察されたものの計測値を示した。観察された埋込状態は前述した好ましい範囲を満たしていた。
【0179】
【表5】
【0180】
【表6】
【0181】
(評価)
(a)初期導通抵抗及び導通信頼性
次のようにして(i)初期導通抵抗と(ii)導通信頼性を評価した。結果を表6に示す。
【0182】
(i)初期導通抵抗
各実験例で得た異方性導電フィルムを接続に十分な面積で裁断し、導通特性の評価用FPCとノンアルカリガラス基板との間に挟み、熱圧着ツールのツール幅1.5mmで加熱加圧(180℃、4.5MPa、5秒)し、各評価用接続物を得た。得られた評価用接続物の導通抵抗を4端子法で測定し、その測定値を次の基準で評価した。
【0183】
導通特性の評価用FPC:
端子ピッチ 20μm
端子幅/端子間スペース 8.5μm/11.5μm
ポリイミドフィルム厚(PI)/銅箔厚(Cu)=38/8、Sn plating
【0184】
ノンアルカリガラス基板:
電極 ITO配線
厚み 0.7mm
【0185】
初期導通抵抗の評価基準
OK:2.0Ω未満
NG:2.0Ω以上
【0186】
(ii)導通信頼性
(i)で作製した評価用接続物を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間置き、その後の導通抵抗を初期導通抵抗と同様に測定し、その測定値を次の基準で評価した。
【0187】
導通信頼性の評価基準
OK:5.0Ω未満
NG:5.0Ω以上
【0188】
(b)粒子捕捉性
(i)で作製した評価用接続物の端子100個について導電粒子の捕捉数を計測し、最低捕捉数を求めた。最低捕捉数が10個以上であれば、実用上問題はない。
実験例5~7のいずれも最低捕捉数が10個以上であった。
【0189】
(c)ショート発生率
(i)で作製した評価用接続物のショート数を計測し、計測されたショート数と評価用接続物のギャップ数からショート発生率を求めた。実験例5~7のいずれもショート発生率は50ppm未満であり実用上問題がないことを確認した。
【0190】
表6から絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が1000Pa・s以下であれば、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面に傾斜を有するフィルムの形成は難しいことがわかる。一方、絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が1500Pa・s以上であると、導電粒子の埋込時の条件の調整により導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面に傾斜を形成できること、こうして得られた異方性導電フィルムはFOG用に導通特性が良好であることがわかる。
【符号の説明】
【0191】
1 フィラー、導電粒子
1a フィラーの頂部
2 樹脂層、絶縁性樹脂層
2a 樹脂層の表面
2b 傾斜
2c 起伏
2f 平坦な表面部分
2p 接平面
2q 突出部分
3 フィラー分散層、導電粒子分散層
4 第2の樹脂層、第2の絶縁性樹脂層
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I フィラー含有フィルム、実施例の異方性導電フィルム
20 端子
A 格子軸
D 導電粒子径、フィラーの粒子径
La 樹脂層の層厚
Lb 埋込量(隣接する導電粒子間の中央部における接平面からの導電粒子の最深部の
距離)
Lc 露出径
Ld 傾斜の最大径
Le 傾斜の最大深さ
Lf 起伏の最大深さ
θ 端子の長手方向と導電粒子の配列の格子軸とのなす角度
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B