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特許7319585画像処理装置、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】画像処理装置、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 205
B41J2/01 209
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019043229
(22)【出願日】2019-03-09
(65)【公開番号】P2020142491
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康成
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189884(JP,A)
【文献】特開2004-345138(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168191(WO,A1)
【文献】特開2016-190427(JP,A)
【文献】特開2016-210050(JP,A)
【文献】特開2011-73186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定方向の位置が互いに異なるm1個(m1は、3以上の整数)の第1ノズルを備える第1ヘッドユニットと、前記特定方向の位置が互いに異なるm2個(m2は、3以上の整数)の第2ノズルを備える第2ヘッドユニットと、を含む複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドであって、前記m1個の第1ノズルが位置する前記特定方向の第1範囲の少なくとも一部と前記m2個の第2ノズルが位置する前記特定方向の第2範囲の少なくとも一部とは重複しない、前記印刷ヘッドを用いる印刷実行部のための画像処理装置であって、
イメージセンサを用いて特定画像を読み取ることによって生成される読取画像データを取得する画像取得部であって、
前記特定画像は、前記m1個の第1ノズルのうちの第1基準ノズルを用いて印刷される第1基準画像と、前記m1個の第1ノズルのうちの第2基準ノズルであって前記第1基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第2基準ノズルを用いて印刷される第2基準画像と、前記m1個の第1ノズルと前記m2個の第2ノズルとを含む複数個のノズルを用いて印刷されるテスト画像と、を含む、
前記画像取得部と、
前記読取画像データを用いて、前記第1基準画像の対応方向の位置である第1基準位置と、前記第2基準画像の前記対応方向の位置である第2基準位置と、を特定する基準特定部であって、前記対応方向は、前記特定方向に対応する前記特定画像上の方向である、前記基準特定部と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置とを用いて、前記m1個の第1のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm1個の第1の位置を特定する位置特定部と、
前記読取画像データのうち、前記m1個の第1の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m1個の第1ノズルの濃度に関する特性値を算出する特性算出部と、
を備え
前記基準特定部は、
前記読取画像データのうち前記第1基準画像があると推定される第1探索範囲内にて、前記第1基準画像に対応する複数の第1の画素列を決定し、
決定される前記複数の第1の画素列のそれぞれの濃度を算出し、
前記複数の第1の画素列のそれぞれの濃度を前記複数の第1の画素列の濃度の合計で除して得られる重みを用いて、前記複数の第1の画素列の位置の重み付き平均を前記第1基準位置として算出する、画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記特定画像は、前記m2個の第2ノズルのうちの第3基準ノズルを用いて印刷される第3基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第4基準ノズルであって前記第3基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第4基準ノズルを用いて印刷される第4基準画像と、を含み、
前記基準特定部は、前記読取画像データを用いて、前記第3基準画像の前記対応方向の位置である第3基準位置と、前記第4基準画像の前記対応方向の位置である第4基準位置と、を特定し、
前記位置特定部は、前記第3基準位置と前記第4基準位置とを用いて、前記m2個の第2のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm2個の第2の位置を特定し、
前記特性算出部は、前記読取画像データのうち、前記m2個の第2の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m2個の第2ノズルの濃度に関する特性値を算出し、
前記基準特定部は、
前記読取画像データのうち前記第2基準画像があると推定される第2探索範囲内にて、前記第2基準画像に対応する複数の第2の画素列を決定し、
決定される前記複数の第2の画素列のそれぞれの濃度を算出し、
前記複数の第2の画素列のそれぞれの濃度を前記複数の第2の画素列の濃度の合計で除して得られる重みを用いて、前記複数の第2の画素列の位置の重み付き平均を前記第2基準位置として算出する、画像処理装置。
【請求項3】
特定方向の位置が互いに異なるm1個(m1は、3以上の整数)の第1ノズルを備える第1ヘッドユニットと、前記特定方向の位置が互いに異なるm2個(m2は、3以上の整数)の第2ノズルを備える第2ヘッドユニットと、を含む複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドであって、前記m1個の第1ノズルが位置する前記特定方向の第1範囲の少なくとも一部と前記m2個の第2ノズルが位置する前記特定方向の第2範囲の少なくとも一部とは重複しない、前記印刷ヘッドを用いる印刷実行部のための画像処理装置であって、
イメージセンサを用いて特定画像を読み取ることによって生成される読取画像データを取得する画像取得部であって、
前記特定画像は、前記m1個の第1ノズルのうちの第1基準ノズルを用いて印刷される第1基準画像と、前記m1個の第1ノズルのうちの第2基準ノズルであって前記第1基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第2基準ノズルを用いて印刷される第2基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第3基準ノズルを用いて印刷される第3基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第4基準ノズルであって前記第3基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第4基準ノズルを用いて印刷される第4基準画像と、前記m1個の第1ノズルと前記m2個の第2ノズルとを含む複数個のノズルを用いて印刷されるテスト画像と、を含む、
前記画像取得部と、
前記読取画像データを用いて、前記第1基準画像の対応方向の位置である第1基準位置と、前記第2基準画像の前記対応方向の位置である第2基準位置と、前記第3基準画像の前記対応方向の位置である第3基準位置と、前記第4基準画像の前記対応方向の位置である第4基準位置と、を特定する基準特定部であって、前記対応方向は、前記特定方向に対応する前記特定画像上の方向である、前記基準特定部と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置とを用いて、前記m1個の第1のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm1個の第1の位置を特定し、前記第3基準位置と前記第4基準位置とを用いて、前記m2個の第2のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm2個の第2の位置を特定する位置特定部と、
前記読取画像データのうち、前記m1個の第1の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m1個の第1ノズルの特性値を算出し、前記読取画像データのうち、前記m2個の第2の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m2個の第2ノズルの特性値を算出する特性算出部と、
を備え
前記m1個の第1ノズルのうちの前記特定方向の端に位置する第1の端ノズルは、前記m2個の第2ノズルのうちの前記特定方向の反対方向の端に位置する第2の端ノズルと前記特定方向に隣合うノズルであり、
前記第2基準ノズルは、前記第1の端ノズルとは異なるノズルであり、
前記第3基準ノズルは、前記第2の端ノズルとは異なるノズルである、画像処理装置。
【請求項4】
特定方向の位置が互いに異なるm1個(m1は、3以上の整数)の第1ノズルを備える第1ヘッドユニットと、前記特定方向の位置が互いに異なるm2個(m2は、3以上の整数)の第2ノズルを備える第2ヘッドユニットと、を含む複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドであって、前記m1個の第1ノズルが位置する前記特定方向の第1範囲の少なくとも一部と前記m2個の第2ノズルが位置する前記特定方向の第2範囲の少なくとも一部とは重複しない、前記印刷ヘッドを用いる印刷実行部のための画像処理装置であって、
イメージセンサを用いて特定画像を読み取ることによって生成される読取画像データを取得する画像取得部であって、
前記特定画像は、前記m1個の第1ノズルのうちの第1基準ノズルを用いて印刷される第1基準画像と、前記m1個の第1ノズルのうちの第2基準ノズルであって前記第1基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第2基準ノズルを用いて印刷される第2基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第3基準ノズルを用いて印刷される第3基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第4基準ノズルであって前記第3基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第4基準ノズルを用いて印刷される第4基準画像と、前記m1個の第1ノズルと前記m2個の第2ノズルとを含む複数個のノズルを用いて印刷されるテスト画像と、を含む、
前記画像取得部と、
前記読取画像データを用いて、前記第1基準画像の対応方向の位置である第1基準位置と、前記第2基準画像の前記対応方向の位置である第2基準位置と、前記第3基準画像の前記対応方向の位置である第3基準位置と、前記第4基準画像の前記対応方向の位置である第4基準位置と、を特定する基準特定部であって、前記対応方向は、前記特定方向に対応する前記特定画像上の方向である、前記基準特定部と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置とを用いて、前記m1個の第1のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm1個の第1の位置を特定し、前記第3基準位置と前記第4基準位置とを用いて、前記m2個の第2のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm2個の第2の位置を特定する位置特定部と、
前記読取画像データのうち、前記m1個の第1の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m1個の第1ノズルの特性値を算出し、前記読取画像データのうち、前記m2個の第2の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m2個の第2ノズルの特性値を算出する特性算出部と、
を備え
前記第1範囲のうち前記特定方向側の一部は、前記第2範囲のうち前記特定方向とは反対側の一部と重複する重複範囲であり、
前記第2基準ノズルは、前記第1範囲のうち、前記重複範囲とは異なる範囲に位置し、
前記第3基準ノズルは、前記第2範囲のうち、前記重複範囲とは異なる範囲に位置している、画像処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記第1範囲のうち前記特定方向側の一部は、前記第2範囲のうち前記特定方向とは反対側の一部と重複する重複範囲であり、
前記第2基準ノズルは、前記重複範囲内に位置し、
前記第3基準ノズルは、前記重複範囲内に位置し、かつ、前記第2基準ノズルから前記特定方向に離れた位置にある、画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記印刷実行部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとを前記特定方向の位置に応じた使用比率で用いて、前記重複範囲に対応する画像を印刷し、
前記第2基準ノズルの前記特定方向の位置は、前記第1ノズルの使用比率が前記第2ノズルの使用比率よりも高い位置であり、
前記第3基準ノズルの前記特定方向の位置は、前記第2ノズルの使用比率が前記第1ノズルの使用比率よりも高い位置である、画像処理装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記第1範囲のうち前記特定方向側の一部は、前記第2範囲のうち前記特定方向とは反対側の一部と重複する重複範囲であり、
前記印刷実行部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとを前記特定方向の位置に応じた使用比率で用いて、前記重複範囲に対応する画像を印刷し、
特定の前記第1ノズルと特定の前記第2ノズルとは、前記重複範囲内に位置し、前記テスト画像内の特定のラスタラインを印刷する一組のノズルであり、
前記特性算出部は、
前記特定の第1ノズルに対応する前記第1の位置と、前記特定の第2ノズルに対応する前記第2の位置と、前記特定の第1ノズルと前記特定の第2ノズルとの前記使用比率と、を用いて、前記読取画像データのうち、前記特定のラスタラインに対応するデータを特定し、
前記特定のラスタラインに対応するデータを用いて、前記特定の第1ノズルの特性値と前記特定の第2ノズルの特性値とを算出する、画像処理装置。
【請求項8】
請求項1、2、5のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記第1探索範囲の前記特定方向の長さは、前記第1探索範囲の前記特定方向と直交する方向の長さよりも短い、画像処理装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の画像処理装置であって、さらに、
前記印刷実行部に印刷データを供給して前記特定画像を印刷させる印刷制御部を備える、画像処理装置。
【請求項10】
特定方向の位置が互いに異なるm1個(m1は、3以上の整数)の第1ノズルを備える第1ヘッドユニットと、前記特定方向の位置が互いに異なるm2個(m2は、3以上の整数)の第2ノズルを備える第2ヘッドユニットと、を含む複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドであって、前記m1個の第1ノズルが位置する前記特定方向の第1範囲の少なくとも一部と前記m2個の第2ノズルが位置する前記特定方向の第2範囲の少なくとも一部とは重複しない、前記印刷ヘッドを用いる印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
イメージセンサを用いて特定画像を読み取ることによって生成される読取画像データを取得する画像取得機能であって、
前記特定画像は、前記m1個の第1ノズルのうちの第1基準ノズルを用いて印刷される第1基準画像と、前記m1個の第1ノズルのうちの第2基準ノズルであって前記第1基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第2基準ノズルを用いて印刷される第2基準画像と、前記m1個の第1ノズルと前記m2個の第2ノズルとを含む複数個のノズルを用いて印刷されるテスト画像と、を含む、
前記画像取得機能と、
前記読取画像データを用いて、前記第1基準画像の対応方向の位置である第1基準位置と、前記第2基準画像の前記対応方向の位置である第2基準位置と、を特定する基準特定機能であって、前記対応方向は、前記特定方向に対応する前記特定画像上の方向である、前記基準特定機能と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置とを用いて、前記m1個の第1のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm1個の第1の位置を特定する位置特定機能と、
前記読取画像データのうち、前記m1個の第1の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m1個の第1ノズルの濃度に関する特性値を算出する特性算出機能と、
をコンピュータに実現させ
前記基準特定機能は、
前記読取画像データのうち前記第1基準画像があると推定される第1探索範囲内にて、前記第1基準画像に対応する複数の第1の画素列を決定し、
決定される前記複数の第1の画素列のそれぞれの濃度を算出し、
前記複数の第1の画素列のそれぞれの濃度を前記複数の第1の画素列の濃度の合計で除して得られる重みを用いて、前記複数の第1の画素列の位置の重み付き平均を前記第1基準位置として算出するコンピュータプログラム。
【請求項11】
特定方向の位置が互いに異なるm1個(m1は、3以上の整数)の第1ノズルを備える第1ヘッドユニットと、前記特定方向の位置が互いに異なるm2個(m2は、3以上の整数)の第2ノズルを備える第2ヘッドユニットと、を含む複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドであって、前記m1個の第1ノズルが位置する前記特定方向の第1範囲の少なくとも一部と前記m2個の第2ノズルが位置する前記特定方向の第2範囲の少なくとも一部とは重複しない、前記印刷ヘッドを用いる印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
イメージセンサを用いて特定画像を読み取ることによって生成される読取画像データを取得する画像取得機能であって、
前記特定画像は、前記m1個の第1ノズルのうちの第1基準ノズルを用いて印刷される第1基準画像と、前記m1個の第1ノズルのうちの第2基準ノズルであって前記第1基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第2基準ノズルを用いて印刷される第2基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第3基準ノズルを用いて印刷される第3基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第4基準ノズルであって前記第3基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第4基準ノズルを用いて印刷される第4基準画像と、前記m1個の第1ノズルと前記m2個の第2ノズルとを含む複数個のノズルを用いて印刷されるテスト画像と、を含む、
前記画像取得機能と、
前記読取画像データを用いて、前記第1基準画像の対応方向の位置である第1基準位置と、前記第2基準画像の前記対応方向の位置である第2基準位置と、前記第3基準画像の前記対応方向の位置である第3基準位置と、前記第4基準画像の前記対応方向の位置である第4基準位置と、を特定する基準特定機能であって、前記対応方向は、前記特定方向に対応する前記特定画像上の方向である、前記基準特定機能と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置とを用いて、前記m1個の第1のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm1個の第1の位置を特定し、前記第3基準位置と前記第4基準位置とを用いて、前記m2個の第2のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm2個の第2の位置を特定する位置特定機能と、
前記読取画像データのうち、前記m1個の第1の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m1個の第1ノズルの特性値を算出し、前記読取画像データのうち、前記m2個の第2の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m2個の第2ノズルの特性値を算出する特性算出機能と、
をコンピュータに実現させ
前記m1個の第1ノズルのうちの前記特定方向の端に位置する第1の端ノズルは、前記m2個の第2ノズルのうちの前記特定方向の反対方向の端に位置する第2の端ノズルと前記特定方向に隣合うノズルであり、
前記第2基準ノズルは、前記第1の端ノズルとは異なるノズルであり、
前記第3基準ノズルは、前記第2の端ノズルとは異なるノズルであるコンピュータプログラム。
【請求項12】
特定方向の位置が互いに異なるm1個(m1は、3以上の整数)の第1ノズルを備える第1ヘッドユニットと、前記特定方向の位置が互いに異なるm2個(m2は、3以上の整数)の第2ノズルを備える第2ヘッドユニットと、を含む複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドであって、前記m1個の第1ノズルが位置する前記特定方向の第1範囲の少なくとも一部と前記m2個の第2ノズルが位置する前記特定方向の第2範囲の少なくとも一部とは重複しない、前記印刷ヘッドを用いる印刷実行部のためのコンピュータプログラムであって、
イメージセンサを用いて特定画像を読み取ることによって生成される読取画像データを取得する画像取得機能であって、
前記特定画像は、前記m1個の第1ノズルのうちの第1基準ノズルを用いて印刷される第1基準画像と、前記m1個の第1ノズルのうちの第2基準ノズルであって前記第1基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第2基準ノズルを用いて印刷される第2基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第3基準ノズルを用いて印刷される第3基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第4基準ノズルであって前記第3基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第4基準ノズルを用いて印刷される第4基準画像と、前記m1個の第1ノズルと前記m2個の第2ノズルとを含む複数個のノズルを用いて印刷されるテスト画像と、を含む、
前記画像取得機能と、
前記読取画像データを用いて、前記第1基準画像の対応方向の位置である第1基準位置と、前記第2基準画像の前記対応方向の位置である第2基準位置と、前記第3基準画像の前記対応方向の位置である第3基準位置と、前記第4基準画像の前記対応方向の位置である第4基準位置と、を特定する基準特定機能であって、前記対応方向は、前記特定方向に対応する前記特定画像上の方向である、前記基準特定機能と、
前記第1基準位置と前記第2基準位置とを用いて、前記m1個の第1のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm1個の第1の位置を特定し、前記第3基準位置と前記第4基準位置とを用いて、前記m2個の第2のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm2個の第2の位置を特定する位置特定機能と、
前記読取画像データのうち、前記m1個の第1の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m1個の第1ノズルの特性値を算出し、前記読取画像データのうち、前記m2個の第2の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m2個の第2ノズルの特性値を算出する特性算出機能と、
をコンピュータに実現させ
前記第1範囲のうち前記特定方向側の一部は、前記第2範囲のうち前記特定方向とは反対側の一部と重複する重複範囲であり、
前記第2基準ノズルは、前記第1範囲のうち、前記重複範囲とは異なる範囲に位置し、
前記第3基準ノズルは、前記第2範囲のうち、前記重複範囲とは異なる範囲に位置しているコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドを備える印刷実行部のための画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する複数個のノズルを備える印刷ヘッドを用いて印刷を行う印刷装置では、ノズルの吐出特性のばらつきに起因して、印刷画像に濃度ムラが生じる場合がある。特許文献1では、印刷装置を用いてテストパターンを印刷し、印刷されたテストパターンをスキャナを用いて読み取ることでテストパターンの画像データを生成する。検査装置は、画像データを分析し、テストパターンにおけるノズル列方向に沿った色分布情報を取得する。検査装置は、色分布情報を用いて、各ノズルの補正値を取得する。印刷装置は、印刷データを生成する際に、各ノズルの補正値を用いて濃度補正を実行することで、印刷画像に濃度ムラが生じることを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-190427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、テストパターンにおいて各ノズルを用いて印刷される部分の位置を特定するための十分な工夫がされているとは言えなかった。このために、印刷ヘッドの構成によっては、各ノズルを用いて印刷される部分の位置を精度良く特定できず、各ノズルの補正値を適切に決定できない可能性があった。
【0005】
本明細書は、複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドのノズルの特性を示す適切な特性値を算出できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]特定方向の位置が互いに異なるm1個(m1は、3以上の整数)の第1ノズルを備える第1ヘッドユニットと、前記特定方向の位置が互いに異なるm2個(m2は、3以上の整数)の第2ノズルを備える第2ヘッドユニットと、を含む複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドであって、前記m1個の第1ノズルが位置する前記特定方向の第1範囲の少なくとも一部と前記m2個の第2ノズルが位置する前記特定方向の第2範囲の少なくとも一部とは重複しない、前記印刷ヘッドを用いる印刷実行部のための画像処理装置であって、イメージセンサを用いて特定画像を読み取ることによって生成される読取画像データを取得する画像取得部であって、前記特定画像は、前記m1個の第1ノズルのうちの第1基準ノズルを用いて印刷される第1基準画像と、前記m1個の第1ノズルのうちの第2基準ノズルであって前記第1基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第2基準ノズルを用いて印刷される第2基準画像と、前記m1個の第1ノズルと前記m2個の第2ノズルとを含む複数個のノズルを用いて印刷されるテスト画像と、を含む、前記画像取得部と、前記読取画像データを用いて、前記第1基準画像の対応方向の位置である第1基準位置と、前記第2基準画像の前記対応方向の位置である第2基準位置と、を特定する基準特定部であって、前記対応方向は、前記特定方向に対応する前記特定画像上の方向である、前記基準特定部と、前記第1基準位置と前記第2基準位置とを用いて、前記m1個の第1のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm1個の第1の位置を特定する位置特定部と、前記読取画像データのうち、前記m1個の第1の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m1個の第1ノズルの特性値を算出する特性算出部と、を備える、画像処理装置。
【0008】
上記構成によれば、第1基準画像の第1基準位置と、第2基準画像の第2基準位置とを用いて、テスト画像においてm1個の第1のノズルに対応する第1の位置が特定される。この結果、例えば、第1ヘッドユニットの取り付け時の傾きなどによってm1個の第1のノズルの間隔が変動する場合であっても、テスト画像においてm1個の第1の位置を精度良く特定することができる。したがって、複数個のヘッドユニットを備える印刷ヘッドのノズルの適切な特性値を算出することができる。
[適用例2]
適用例1に記載の画像処理装置であって、
前記特定画像は、前記m2個の第2ノズルのうちの第3基準ノズルを用いて印刷される第3基準画像と、前記m2個の第2ノズルのうちの第4基準ノズルであって前記第3基準ノズルから前記特定方向に離れた前記第4基準ノズルを用いて印刷される第4基準画像と、を含み、
前記基準特定部は、前記読取画像データを用いて、前記第3基準画像の前記対応方向の位置である第3基準位置と、前記第4基準画像の前記対応方向の位置である第4基準位置と、を特定し、
前記位置特定部は、前記第3基準位置と前記第4基準位置とを用いて、前記m2個の第2のノズルに対応する前記テスト画像上の前記対応方向の位置であるm2個の第2の位置を特定し、
前記特性算出部は、前記読取画像データのうち、前記m2個の第2の位置に基づいて決定されるデータを用いて、前記m2個の第2ノズルの特性値を算出する、画像処理装置。
[適用例3]
適用例2に記載の画像処理装置であって、
前記m1個の第1ノズルのうちの前記特定方向の端に位置する第1の端ノズルは、前記m2個の第2ノズルのうちの前記特定方向の反対方向の端に位置する第2の端ノズルと前記特定方向に隣合うノズルであり、
前記第2基準ノズルは、前記第1の端ノズルとは異なるノズルであり、
前記第3基準ノズルは、前記第2の端ノズルとは異なるノズルである、画像処理装置。
[適用例4]
適用例2に記載の画像処理装置であって、
前記第1範囲のうち前記特定方向側の一部は、前記第2範囲のうち前記特定方向とは反対側の一部と重複する重複範囲であり、
前記第2基準ノズルは、前記第1範囲のうち、前記重複範囲とは異なる範囲に位置し、
前記第3基準ノズルは、前記第2範囲のうち、前記重複範囲とは異なる範囲に位置している、画像処理装置。
[適用例5]
適用例2に記載の画像処理装置であって、
前記第1範囲のうち前記特定方向側の一部は、前記第2範囲のうち前記特定方向とは反対側の一部と重複する重複範囲であり、
前記第2基準ノズルは、前記重複範囲内に位置し、
前記第3基準ノズルは、前記重複範囲内に位置し、かつ、前記第2基準ノズルから前記特定方向に離れた位置にある、画像処理装置。
[適用例6]
適用例5に記載の画像処理装置であって、
前記印刷実行部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとを前記特定方向の位置に応じた使用比率で用いて、前記重複範囲に対応する画像を印刷し、
前記第2基準ノズルの前記特定方向の位置は、前記第1ノズルの使用比率が前記第2ノズルの使用比率よりも高い位置であり、
前記第3基準ノズルの前記特定方向の位置は、前記第2ノズルの使用比率が前記第1ノズルの使用比率よりも高い位置である、画像処理装置。
[適用例7]
適用例2~6のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記第1範囲のうち前記特定方向側の一部は、前記第2範囲のうち前記特定方向とは反対側の一部と重複する重複範囲であり、
前記印刷実行部は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとを前記特定方向の位置に応じた使用比率で用いて、前記重複範囲に対応する画像を印刷し、
特定の前記第1ノズルと特定の前記第2ノズルとは、前記重複範囲内に位置し、前記テスト画像内の特定のラスタラインを印刷する一組のノズルであり、
前記特性算出部は、
前記特定の第1ノズルに対応する前記第1の位置と、前記特定の第2ノズルに対応する前記第2の位置と、前記特定の第1ノズルと前記特定の第2ノズルとの前記使用比率と、を用いて、前記読取画像データのうち、前記特定のラスタラインに対応するデータを特定し、
前記特定のラスタラインに対応するデータを用いて、前記特定の第1ノズルの特性値と前記特定の第2ノズルの特性値とを算出する、画像処理装置。
[適用例8]
適用例1~7のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記基準特定部は、
前記第1基準画像に対応する複数の第1の画素列の位置と、前記複数の第1の画素列の画素の値に応じた重みと、を用いて、前記第1基準位置を特定し、
前記第2基準画像に対応する複数の第2の画素列の位置と、前記複数の第2の画素列の画素の値に応じた重みと、を用いて、前記第2基準位置を特定する、画像処理装置。
[適用例9]
適用例1~8のいずれかに記載の画像処理装置であって、さらに、
前記印刷実行部に印刷データを供給して前記特定画像を印刷させる印刷制御部を備える、画像処理装置。
【0009】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置、ノズルの特性値の決定方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例における複合機600の構成を示すブロック図である。
図2】印刷ヘッド240の概略構成を示す図である。
図3】ノズル特性テーブルNPTの一例を示す図である。
図4】特性テーブル生成処理のフローチャートである。
図5】パターン画像PIの一例を示す図である。
図6】第1実施例の特定画像SIの概念図である。
図7】ノズル対応濃度Dの算出の説明図である。
図8】ノズル対応位置特定処理のフローチャートである。
図9】第1基準画像RI1の位置Xr1の算出の説明図である。
図10】第2実施例の特定画像SIbの概念図である。
図11】第2実施例の特定画像SIcの概念図である。
図12】第4実施例のノズルNZの特性値CVの算出のフローチャートである。
図13】第4実施例のノズルNZの特性値CVの算出の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例:
A-1.印刷装置の構成:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、実施例における複合機600の構成を示すブロック図である。複合機600は、複合機600の全体を制御する制御装置100と、印刷を行う印刷機構200と、画像を読み取る読取機構300と、を備えている。
【0012】
制御装置100は、CPU110と、DRAMなどの揮発性記憶装置120と、フラッシュメモリやハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置130と、液晶ディスプレイなどの表示部140と、液晶ディスプレイのパネルと重畳されたタッチパネルやボタンなどを含む操作部150と、パーソナルコンピュータ(図示省略)などの外部装置との通信のための通信インタフェースを含む通信部160と、を備えている。
【0013】
揮発性記憶装置120には、CPU110が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域125が設けられている。不揮発性記憶装置130には、複合機600を制御するためのコンピュータプログラムPGと、ノズル特性テーブルNPTと、パターン印刷データPDと、が格納されている。
【0014】
コンピュータプログラムPGとパターン印刷データPDは、複合機600の出荷時に予め不揮発性記憶装置130に格納されている。なお、コンピュータプログラムPGとパターン印刷データPDは、DVD-ROMなどに格納された形態や、サーバからダウンロードする形態で提供され得る。CPU110は、コンピュータプログラムPGを実行することによって、後述する複合機600の制御処理を実現する。該制御処理は、後述する特性テーブル生成処理を含む。パターン印刷データPDは、後述する特性テーブル生成処理において用いられる。ノズル特性テーブルNPTは、後述する特性テーブル生成処理によって生成される。パターン印刷データPDおよびノズル特性テーブルNPTについては後述する。
【0015】
読取機構300は、制御装置100の制御に従って、イメージセンサを用いて原稿を光学的に読み取ることによってスキャンデータ(読取画像データ)を生成する。イメージセンサは、CCDやCMOSなどの複数の光電変換素子が一列に並んで配置された構造を備える一次元イメージセンサである。
【0016】
生成されるスキャンデータは、例えば、RGB画像データである。RGB画像データは、複数個の画素の値を含み、各画素の値は、RGB表色系の色値(RGB値とも呼ぶ)で各画素の色を示す。各RGB値は、赤(R)と緑(G)と青(B)の3つの色成分の階調値(例えば、0~255の256階調)を含む。
【0017】
印刷機構200は、制御装置100のCPU110の制御に従って、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の各インクを吐出してドットを形成することによって印刷を行う。印刷機構200は、搬送部210と、ヘッド駆動部230と、印刷ヘッド240と、を備えている。搬送部210は、図示しない搬送モータを備え、搬送モータの動力で印刷媒体としての用紙Mを搬送方向に搬送する。ヘッド駆動部230は、印刷ヘッド240に駆動信号DSを供給して、印刷ヘッド240を駆動する。印刷ヘッド240は、駆動信号DSに従って、搬送部210によって搬送される用紙上にインクを吐出してドットを形成する。印刷機構200は、いわゆるシリアルプリンタとは異なり、印刷ヘッド240を搬送方向と交差する方向に移動させる主走査を行わずに、印刷を実行するラインプリンタである。
【0018】
図2は、印刷ヘッド240の概略構成を示す図である。図2(A)に示すように、搬送部210によって搬送される用紙Mの搬送方向をY方向とし、搬送される用紙Mに沿う方向であり、搬送方向と直交する方向をX方向とする。印刷機構200はいわゆるラインプリンタであるので、印刷ヘッド240は、X方向に沿って用紙MのX方向の幅とおおよそ同じ長さに亘って並ぶ複数個のノズルNZを備えている。以下に詳しく説明する。
【0019】
印刷ヘッド240は、複数個のヘッドユニット241~245を備えている(図2(A))。図2(B)には、-Z側から見た1個のヘッドユニット241の構成が図示されている。図2(B)に示すように、ヘッドユニット241のノズル形成面241sには、複数のノズルからなる複数のノズル列NG、すなわち、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NGc、NGm、NGy、NGkが形成されている。各ノズル列NGは、X方向に沿って所定のノズルピッチNTで並ぶm個(mは3以上の自然数)のノズルNZを含む。各ノズル列NGの複数個のノズルNZは、X方向の位置が互いに異なっている。ノズルピッチNTは、例えば、300dpiや600dpi相当の間隔である。ヘッドユニット241について説明したが、他のヘッドユニット242~245の構成も、ヘッドユニット241と同一である。
【0020】
5個のヘッドユニット241~245は、X方向の位置が違いに異なり、X方向の上流側から末尾の数字(1~5)の順に並んでいる。3個のヘッドユニット241、243、245は、Y方向の位置が同じである。2個のヘッドユニット242、244は、Y方向の位置が同じである。3個のヘッドユニット241、243、245と2個のヘッドユニット242、244との間では、Y方向の位置がずれている。ヘッドユニット242のX方向の下流端を含む一部は、ヘッドユニット241のX方向の上流端を含む一部と、X方向の位置が重複している。ヘッドユニット242のX方向の上流端を含む一部は、ヘッドユニット243のX方向の下流端を含む一部と、X方向の位置が重複している。ヘッドユニット244のX方向の下流端を含む一部は、ヘッドユニット243のX方向の上流端を含む一部と、X方向の位置が重複している。ヘッドユニット244のX方向の上流端を含む一部は、ヘッドユニット245のX方向の下流端を含む一部と、X方向の位置が重複している。
【0021】
5個のヘッドユニット241~245は、例えば、それぞれ、Kインクのノズル列NGkを備えており(図2(B))、各ノズル列NGkは、m個のノズルNZを含んでいる。このために、印刷ヘッド240のKインクのノズルNZの個数nは、mの5倍である(n=(5×m))。同様に、印刷ヘッド240は、C、M、Yインクのそれぞれについて、(5×m)個のノズルNZを備えている。
【0022】
A-2.ノズル特性テーブルNPT
図3は、ノズル特性テーブルNPTの一例を示す図である。図3のノズル特性テーブルNPTは、C、M、Y、Kのノズル用の4個のサブテーブルを含む。各テーブルには、C、M、Y、Kのうちの対応するインク用のn個のノズルの特性値CVが、ノズル番号と対応付けて記録されている。
【0023】
ノズルNZの製造バラツキやノズルNZを駆動する圧電素子の製造バラツキなどに起因して、各ノズルNZのインクの吐出量にはバラツキがある。このために、各ノズルNZから吐出されるインクによって形成されるドットのサイズにはバラツキがあり、ひいては、該ドットによって表現される濃度にはバラツキがある。各ノズルNZの特性値CVは、ノズルNZを用いて形成されるドットによって表現される濃度と、基準濃度Dreと、の差分を示している。例えば、特性値CVが正の値である場合には、対応するノズルNZを用いて形成されるドットによって表現される濃度は、基準濃度Dreより高いことを示し、特性値CVが負の値である場合には、対応するノズルNZを用いて形成されるドットによって表現される濃度は、基準濃度Dreより低いことを示す。基準濃度Dreは、例えば、CMYK値の各成分値が0~255の値を取る場合に、「255」である。
【0024】
ノズル特性テーブルNPTに記録された特性値は、例えば、複合機600の印刷機構200に印刷を実行させるための印刷データを生成する際に、ノズルNZごとのインクの吐出量のバラツキを補償する補償処理を行うために利用される。これによって、該印刷データを用いて印刷される印刷画像において、インクの吐出量のバラツキに起因する濃度ムラが発生することを抑制することができる。該補償処理を含む印刷データの生成処理は、例えば、特開2011-131428号公報に開示されている。
【0025】
A-3.特性テーブル生成処理
次に、ノズル特性テーブルNPTを生成する特性テーブル生成処理について説明する。図4は、特性テーブル生成処理のフローチャートである。
【0026】
S10では、CPU110は、パターン印刷データPDを印刷機構200に供給することによって、印刷機構200にパターン画像PIを用紙M上に印刷させる。パターン印刷データPDは、例えば、CMYKの成分ごと、かつ、画素ごとにドットの形成状態を示すドットデータである。図5は、パターン画像PIの一例を示す図である。図5の上方には、印刷ヘッド240が、パターン画像PIを印刷する際のX方向の位置に図示されている。パターン画像PIの図5の上下方向(Y方向)は、搬送方向に対応する方向であり、パターン画像PIの図5の左右方向(X方向)は、搬送方向と直角に交差する方向に対応する方向である。
【0027】
パターン画像PIは、1種のインクに対して、1個ずつの特定画像SIを含む。本実施例の図5のパターン画像PIは、印刷に用いられるCMYKの4種類のインクに対応する4個の特定画像SI_C、SI_M、SI_Y、SI_Kを含む。4個の特定画像SI_C、SI_M、SI_Y、SI_Kは、それぞれ、対応する1種類のインクを用いて印刷される。特定画像SIは、帯状のテスト画像TIと、複数本の線状の基準画像RIと、を含む。例えば、図5のKインクに対応する特定画像SI_Kは、特定画像SI_Kと、複数個の線状の基準画像RI_Kと、を含んでいる。
【0028】
テスト画像TI_Kは、印刷ヘッド240のn個のKインクのノズルNZを全て用いて印刷される。このために、テスト画像TI_Kは、n個のKインクのノズルNZのうちのX方向の最上流に位置するノズルに対応するX方向の位置から、X方向の最下流に位置するノズルに対応するX方向の位置まで伸びる帯状の画像である。基準画像RI_Kの本数は、5個のヘッドユニット241~245のそれぞれに2本ずつであり、合計10本である。各基準画像RI_Kは、Y方向に伸びる線状の画像である。
【0029】
同様に、C、M、Yのインクに対応する特定画像SI_C、SI_M、SI_Yは、それぞれ、画像TI_Kと同様のテスト画像TI_C、TI_M、TI_Yと、基準画像RI_Kと同様の複数本の基準画像RI_C、RI_M、RI_Yと、を含んでいる。
【0030】
図6は、1種の特定インク(CMYKのいずれか)に対応する1個の特定画像SIの概念図である。図6には、1個の特定画像SIのうち、テスト画像TIの一部と、10本の基準画像RIのうちの6本の基準画像RI1~RI6と、が図示されている。図6には、特定画像SIを構成するドットが黒丸で図示されている。図6には、さらに、特定画像SIの上方に、各ドットを印刷する際に用いられたノズル列NG1~NG3が図示されている。ノズル列NG1は、ヘッドユニット241の特定インクのノズル列である。同様に、ノズル列NG2、NG3は、それぞれ、ヘッドユニット242、243の特定インクのノズル列である。
【0031】
重複範囲OL1は、ノズル列NG1が位置するX方向の範囲RG1と、ノズル列NG2が位置するX方向の範囲RG2と、が重複するX方向の範囲である。重複範囲OL2は、範囲RG2と、ノズル列NG3が位置するX方向の範囲RG3と、が重複するX方向の範囲である。
【0032】
非重複範囲NO1は、ノズル列NG1が位置するX方向の範囲RG1のうち、他のノズル列が位置するX方向の範囲(例えば、RG2)と重複しない範囲である。同様に、非重複範囲NO2、NO3は、それぞれ、ノズル列NG1、NG3が位置するX方向の範囲RG2、RG3のうち、他のノズル列が位置するX方向の範囲と重複しない範囲である。
【0033】
図6のテスト画像TIは、図6のノズル列NG1~NG3に含まれるノズルNZを含む全てのノズルNZを用いて印刷される。例えば、重複範囲OL1に対応する画像は、ノズル列NG1に含まれるノズルとノズル列NG2に含まれるノズルとの両方を用いて印刷される。例えば、図6のラスタラインRL1上のドットは、ノズル列NG1に含まれるノズルNZaとノズル列NG2に含まれるノズルNZbとの両方を用いて形成される。ラスタラインRL1上のドットを形成する際に、ノズルNZaとノズルNZbとは、X方向の位置に応じた使用比率で用いられる。すなわち、ラスタラインRL1上の複数個のドットのうち、ノズルNZaの使用比率R1分のドットは、ノズルNZaを用いて形成され、ノズルNZbの使用比率R2分のドットは、ノズルNZbを用いて形成される。重複範囲OL1、OL2に対応する画像内の1本のラスタラインの印刷に用いられる2個のノズル(例えば、ノズルNZa、NZb)を、一組のノズルセットとも呼ぶ。
【0034】
図6には、X方向の位置に応じた使用比率R1~R3が図示されている。使用比率R1は、ノズル列NG1に含まれるノズルNZの使用比率を示す。同様に、使用比率R2、R3は、ノズル列NG2、NG3に含まれるノズルNZの使用比率を示す。使用比率R1~R3は、0~1の範囲の値を取る。重複範囲OL1では、ノズル列NG1のみが存在する非重複範囲NO1に近いほど、ノズル列NG1の使用比率R1が高くなり、ノズル列NG2のみが存在する非重複範囲NO2に近いほど、ノズル列NG2の使用比率R2が高くなる。重複範囲OL2では、ノズル列NG2のみが存在する非重複範囲NO2に近いほど、ノズル列NG2の使用比率R2が高くなり、ノズル列NG3のみが存在する非重複範囲NO3に近いほど、ノズル列NG3の使用比率R3が高くなる。非重複範囲NO1、NO2、NO3では、それぞれ、使用比率R1、R2、R3は、1である。
【0035】
第1基準画像RI1は、ノズル列NG1に含まれるm個のノズルNZのうちの1個のノズルNZ1(図6)を用いて印刷される。第2基準画像RI2は、ノズル列NG2に含まれるm個のノズルNZのうちの1個のノズルNZ2(図6)を用いて印刷される。ノズルNZ1を第1基準ノズルNZ1とも呼び、ノズルNZ2を第2基準ノズルNZ2とも呼ぶ。
【0036】
同様に、第3基準画像RI3、第4基準画像RI4は、それぞれ、ノズル列NG2に含まれるm個のノズルNZのうちのノズルNZ3、NZ4(図6)を用いて印刷される。ノズルNZ3、NZ4を、それぞれ、第3基準ノズルNZ3、第4基準ノズルNZ4とも呼ぶ。第5基準画像RI5、第6基準画像RI6は、それぞれ、ノズル列NG3に含まれるm個のノズルNZのうちのノズルNZ5、NZ6(図6)を用いて印刷される。ノズルNZ5、NZ6を、それぞれ、第5基準ノズルNZ5、第6基準ノズルNZ6とも呼ぶ。
【0037】
図6から解るように、1個のヘッドユニットは、2個の基準ノズルを含むので、1個のヘッドユニット(1個のノズル列NG)には、2本の基準画像RIが対応している。1個のヘッドユニットの2個の基準ノズルは、非重複範囲内に位置する2個のノズルNZであって、X方向に離れた2個のノズルNZである。したがって、ノズル列NG内の2個の基準ノズルの間には、同じノズル列NG内の少なくとも1個以上の他のノズルNZが存在している。
【0038】
図4のS15では、CPU110は、用紙Mに印刷されたパターン画像PIを、読取機構300を用いて読み取ることによって、パターン画像PIを示すスキャンデータを生成する。S15の処理は、例えば、パターン画像PIが印刷された用紙Mが読取機構300の原稿台(図示省略)に設置された状態で、ユーザが読取指示を複合機600に入力した際に実行される。パターン画像PIのX方向の読取解像度は、パターン画像PIのX方向の印刷解像度(上述したノズルピッチNTで決定されるX方向の印刷解像度)以上の解像度に設定される。例えば、ノズルピッチNTが、300dpi相当の間隔である場合には、X方向の読取解像度は、少なくとも300dpi、好ましくは、600dpiや1200dpiに設定される。これは、1個のノズルNZに対して、テスト画像TI内の少なくとも1本以上のラスタラインRL(例えば、図6のラスタラインRL1)を対応させるためである。
【0039】
図5図6の用紙M上に印刷されたパターン画像PIや特定画像SIを示す図は、生成されたスキャンデータによって示されるスキャン画像SN内のパターン画像PIや特定画像SIを示す図である、とも言うことができる。スキャン画像SNは、図5図6のX方向とY方向とに沿ってマトリクス状に配置された複数個の画素を含む。スキャン画像SNは、図5に示すように、スキャン画像SNは、パターン画像PIを含む。以下では、単に、パターン画像PI(図5)、テスト画像TI(図6)、特定画像SI(図6)、基準画像RI1~RI6(図6)と言うときは、スキャン画像SN内のパターン画像PI(図5)、テスト画像TI(図6)、特定画像SI(図6)、基準画像RI1~RI6(図6)を意味する。
【0040】
図4のS20では、CMYKの4種類のインクから、1つの注目インクを選択する。
【0041】
S25では、CPU110は、スキャンデータを用いて、ノズル対応位置特定処理を実行する。ノズル対応位置特定処理は、スキャン画像SNにおいて、印刷ヘッド240に含まれる注目インクのn個のノズルNZに対応するX方向の位置(ノズル対応位置とも呼ぶ)Xnzをそれぞれ特定する処理である。ここで、n個のノズルNZのうち、i番目のノズルNZ(i)のX方向の位置をXnz(i)とする。iは、n個のノズルNZを識別する識別子であり、1~nの範囲の整数値を取る。特定される位置Xnz(i)は、例えば、1画素に相当する長さを1とする単位で表され、整数ではなく、小数を含む値である。
【0042】
S30では、CPU110は、注目インクのn個のノズルNZに対応するテスト画像TIの濃度(ノズル対応濃度とも呼ぶ)D(i)を算出する。テスト画像TIの両端の近傍は、用紙Mの地色(例えば、白)の部分と隣接しているために、用紙Mの地色の影響を受ける。この結果、テスト画像TIの両端の近傍の画素の値は、テスト画像TIの本来の濃度よりも低い濃度を示す。このために、ノズル対応濃度D(i)の算出には、テスト画像TIのうち、Y方向の両端部を除いた中央部TIm(図6)を示す画素の値が用いられる。
【0043】
図7は、ノズル対応濃度Dの算出の説明図である。図7には、中央部TImの一部が図示されている。図7において、中央部TImを構成する複数個の画素PXのうち、ノズルNZ(i)の位置Xnz(i)に最も近い複数個の画素PX1は、クロスハッチングされた一列分の画素である。また、中央部TImを構成する複数個の画素PXのうち、ノズルNZ(i)の位置Xnzに2番目に近い複数個の画素PX2は、シングルハッチングされた一列分の画素である。複数個の画素PX1のX方向の位置をXp1とし、複数個の画素PX2のX方向の位置をXp2とする。
【0044】
CPU110は、複数個の画素PX1の値(RGB値)を用いて、複数個の画素PX1の平均濃度D1を算出し、複数個の画素PX2の値を用いて、複数個の画素PX2の平均濃度D2を算出する。CPU110は、平均濃度D1と平均濃度D2との重み付き平均(例えば、式(1))をノズル対応濃度D(i)として算出する。
D(i)={|Xnz(i)-Xp2|×D1}
+{|Xnz(i)-Xp1|×D2} …(1)
【0045】
S35では、CPU110は、n個のノズルNZ(i)のそれぞれの特性値CVを算出する。例えば、ノズル対応濃度D(i)と、予め定められた基準濃度Dreと、の差分が、特性値CVとして算出される。S40では、CPU110は、算出された特性値を記録したテーブルを、ノズル特性テーブルNPT(図3)に記録する。
【0046】
S45では、CPU110は、CMYKの全てのインクについて、処理したか否かを判断する。未処理のインクがある場合には(S45:NO)、CPU110は、S20に処理を戻す。全てのインクについて処理された場合には(S45:YES)、CPU110は、特性テーブル生成処理を終了する。
【0047】
次に、図4のS25のノズル対応位置特定処理について説明する。図8は、ノズル対応位置特定処理のフローチャートである。S110では、CPU110は、印刷ヘッド240に含まれる複数個のヘッドユニット241~245から1個の注目ヘッドユニットを選択する。
【0048】
S115では、CPU110は、スキャンデータを用いて、スキャン画像SN内において、注目ヘッドユニットの注目インクのノズル列NGに対応する2本の基準画像RIのX方向の位置Xrを算出する。算出される位置Xrは、例えば、1画素に相当する長さを1とする単位で表され、整数ではなく、小数を含む値である。
【0049】
例えば、図6のノズル列NG1が、注目ヘッドユニットのノズル列NGである場合には、2本の基準画像RI1、RI2のX方向の位置Xr1、Xr2が算出される。CPU110は、線状の第1基準画像RI1がY方向に横切ると推定される予め定められた探索範囲SA1内において、第1基準画像RI1を探索する。図9は、第1基準画像RI1の位置Xr1の算出の説明図である。図9(A)には、スキャン画像SNのうちの探索範囲SA1(図6)が概念的に示されている。CPU110は、例えば、探索範囲SA1内の複数本の画素列のそれぞれの濃度を算出する。複数本の画素列は、それぞれ、Y方向に並ぶ複数個の画素PXで構成される。例えば、図9(A)には、4本のハッチングされた画素列PLa~PLdが示されている。一の画素列の濃度は、例えば、該画素列を構成する複数個の画素PXの濃度の平均値である。
【0050】
探索範囲SA1内の複数本の画素列のうち、濃度が閾値以上である1以上の画素列が、第1基準画像RI1を示す画素列として特定される。図9(A)の例では、4本のハッチングされた画素列PLa~PLdが、第1基準画像RI1を示す画素列として特定されるものとする。ここで、画素列PLa~PLdの濃度をVa~Vdとする。画素列PLa~PLdのX方向の位置をPa~Pdとする。
【0051】
このとき、第1基準画像RI1のX方向の位置Xr1は、以下の式(2)で表される。
Xr1=(Wa×Pa+Wb×Pb+Wc×Pc+Wd×Pd) …(2)
ただし、重みWa~Wdは、Vsum=(Va+Vb+Vc+Vd)とすると、それぞれ、Wa=(Va/Vsum)、Wb=(Vb/Vsum)、Wc=(Vc/Vsum)、Wd=(Vd/Vsum)である。重みWa~Wdは、画素列PLa~PLdの画素の値に応じた重みである、と言うことができ。位置Xr1は、画素列PLa~PLdの位置の重み付き平均として算出される、と言うことができる。
【0052】
第2基準画像RI2の位置Xr2は、探索範囲SA2内を探索することによって、第1基準画像RI1の位置Xr1と同様に算出される。
【0053】
図6のノズル列NG2が、注目ヘッドユニットのノズル列NGである場合には、2本の基準画像RI3、RI4のX方向の位置Xr3、Xr4が算出される。
【0054】
S120では、CPU110は、注目ヘッドユニットのノズル列NGに含まれる2個の基準ノズルのノズル番号を取得する。2個の基準ノズルは、注目ヘッドユニットに対応する2本の基準画像RIを印刷する際に用いられたノズルであり、2個の基準ノズルのノズル番号は、例えば、予めコンピュータプログラムPGに組み込まれたテーブル(図示省略)に記録されている。図6のノズル列NG1が、注目ヘッドユニットのノズル列NGである場合には、第1基準ノズルNZ1と第2基準ノズルNZ2とのノズル番号N1、N2が取得される。
【0055】
S125では、CPU110は、スキャン画像SN上におけるノズル間隔ΔNXを算出する。ノズル間隔ΔNXは、ノズルピッチNT(図2(B))に相当するスキャン画像SN上のX方向の長さである。例えば、図6のノズル列NG1が、注目ヘッドユニットのノズル列NGである場合には、ノズル間隔ΔNXは、以下の式(3)によって算出される。
ΔNX=(Xr2-Xr1)/(N2-N1) …(3)
ただし、ノズル列NG1において、ノズル番号は、m個のノズルNZに対して、図6のX方向の上流側から下流側に向かって順次に付されているものとする。
【0056】
S130では、CPU110は、注目ヘッドユニットのノズル列NGに含まれるm個のノズルNZのノズル対応位置Xnzを算出する。m個のノズルNZのうち、j番目のノズルNZ(j)のノズル対応位置をXnz(j)とする。jは、m個のノズルNZを識別する識別子であり、1~mの範囲の整数値を取る。ノズルNZ(j)のノズル番号をNjとすると、ノズル対応位置Xnz(j)は、以下の式(4)によって算出される。
Xnz(j)=Xr1+(Nj-N1)×ΔNX …(4)
【0057】
S135では、CPU110は、全てのヘッドユニット241~245を注目ヘッドユニットとして処理したか否かを判断する。未処理のヘッドユニットがある場合には(S135:NO)、CPU110は、S110に処理を戻す。全てのヘッドユニットについて処理された場合には(S135:YES)、CPU110は、S140に処理を進める。
【0058】
S140の時点で、印刷ヘッド240のn個(すなわち、(5×m)個)のノズルNZのそれぞれのノズル対応位置Xnzが算出されている。この時点では、重複範囲OL1、OL2内のノズルセットを構成する2個のノズルNZのノズル対応位置Xnzは、互いに異なる値となっている。例えば、図6の2個のノズルNZa、NZbのノズル対応位置Xnzは、互いに異なる値となっている。これらのノズルセット(2個のノズル)で印刷されるラスタラインは1本であるので、S140では、CPU110は、各ノズルセットを構成する2個のノズルのノズル対応位置Xnzを共通する1個の値に修正する。
【0059】
例えば、S130にて算出されたノズルNZaのノズル対応位置Xnzを、Xnzaとし、ノズルNZbのノズル対応位置Xnzを、Xnzbとする。この場合に、ノズルNZa、NZbに共通の修正ノズル対応位置Xnzabは、例えば、以下の式(5)に示すように、修正前の2つのノズル対応位置Xnza、Xnzbの重み付き平均値とされる。
Xnzab=(Xnza×R1)+(Xnzb×R2) …(5)
式(5)に示すように、重みには、ノズルNZa、NZbの使用比率R1、R2(図6)が用いられる。
【0060】
変型例としては、修正ノズル対応位置Xnzabは、以下の式(6)に示すように、修正前の2つのノズル対応位置Xnza、Xnzbの単純平均値とされても良い。
Xnzab=(Xnza+Xnzb)/2 …(6)
【0061】
以上説明したノズルNZa、NZbのノズルセットと同様に、重複範囲内の全てのノズルセットについて、それぞれ、修正ノズル対応位置が算出される。
【0062】
以上説明した本実施例によれば、印刷ヘッド240は、X方向の位置が互いに異なるm個のノズルNZから成るノズル列NG1(図6)を備えるヘッドユニット241と、X方向の位置が互いに異なるm個のノズルNZから成るノズル列NG2(図6)を備える。CPU110は、イメージセンサを用いてパターン画像PIを読み取ることによって生成されるスキャンデータを取得する(図4のS15)。パターン画像PIは、ノズル列NG1の第1基準ノズルNZ1を用いて印刷される第1基準画像RI1と、第2基準ノズルNZ2を用いて印刷される第2基準画像RI2と、ノズル列NG1のm個のノズルNZとノズル列NG2のm個のノズルNZとを含む(5×m)個のノズルNZを用いて印刷されるテスト画像TIと、を含む(図6)。CPU110は、スキャンデータを用いて、第1基準画像RI1の位置Xr1と、第2基準画像RI2の位置Xr2と、を特定する(図8のS115)。CPU110は、位置Xr1、Xr2を用いて、ノズル列NG1のm個のノズルNZに対応するテスト画像TI上の位置であるノズル対応位置Xnzを特定する(図8のS125、S130)。CPU110は、スキャンデータのうち、ノズル列NG1のm個のノズル対応位置Xnzに基づいて決定されるデータ(例えば、図7の画素PX1、PX2のRGB値)を用いて、該m個のノズルNZの特性値CVを算出する(図4のS30、S35)。この結果、例えば、ヘッドユニット241の取り付け時の傾きなどによってノズル列NG1のm個のノズルNZのX方向の間隔が変動する場合であっても、テスト画像TIにおいて該m個のノズルNZのノズル対応位置Xnzを精度良く特定することができる。したがって、複数個のヘッドユニット241~245を備える印刷ヘッド240のノズルNZの適切な特性値CVを算出することができる。
【0063】
例えば、複数個のヘッドユニット241~245を備える印刷ヘッド240では、各ヘッドユニットのノズルNZの配列方向がX方向と完全に平行ではなく、X方向に対して僅かに傾く場合がある。このような傾きは、製造時における印刷ヘッド240への各ヘッドユニットの取り付け誤差などに起因する。このような傾きは、ヘッドユニットごとに異なる。そして、当該傾きが大きいほど、m個のノズルNZのX方向の間隔が小さくなるので、該X方向の間隔もヘッドユニットごとに異なる。スキャン画像SNには、読取時のぼけなどが発生するので、スキャン画像SN内のテスト画像TIには、テスト画像TIを構成する各ドットが明瞭に表れるわけではない。また、スキャン画像SNのテスト画像TIは、連続した1個の帯状の画像である。したがって、仮にパターン画像PIに基準画像RI1、RI2が含まれない場合には、テスト画像TIにおいてヘッドユニット241(ノズル列NG1)のm個のノズルのノズル対応位置Xnzを特定することは困難である。本実施例によれば、パターン画像PIに基準画像RI1、RI2が含まれるので、基準画像RI1、RI2の位置Xr1、Xr2を用いて、ヘッドユニット241のm個のノズルNZのノズル対応位置Xnzを精度良く特定することができる。したがって、該m個のノズルNZの特性値CVの適切な特性値を算出することができる。
【0064】
同様に、パターン画像PIは、ヘッドユニット242(ノズル列NG2)の第3基準ノズルNZ3を用いて印刷される第3基準画像RI3と、第4基準ノズルNZ4を用いて印刷される第4基準画像RI4と、を含む。CPU110は、スキャンデータを用いて、第3基準画像RI3の位置Xr3と、第4基準画像RI4の位置Xr4と、を特定する(図8のS115)。CPU110は、位置Xr3、Xr4を用いて、ノズル列NG2のm個のノズルNZのノズル対応位置Xnzを特定する(図8のS125、S130)。CPU110は、スキャンデータのうち、ノズル列NG2のm個のノズル対応位置Xnzに基づいて決定されるデータを用いて、該m個のノズルNZの特性値CVを算出する(図4のS30、S35)。この結果、例えば、ヘッドユニット242の取り付け時の傾きなどによってノズル列NG2のm個のノズルNZのX方向の間隔が変動する場合であっても、テスト画像TIにおいて該m個のノズルNZのノズル対応位置Xnzを精度良く特定することができる。したがって、複数個のヘッドユニット241~245を備える印刷ヘッド240のノズルNZの適切な特性値CVを算出することができる。
【0065】
さらに、上記実施例によれば、第2基準ノズルNZ2は、ノズル列NG1が位置する第1範囲RG1のうち、重複範囲OL1とは異なる非重複範囲NO1に位置している(図6)。また、第3基準ノズルNZ3は、ノズル列NG2が位置する第2範囲RG2のうち、重複範囲OL1とは異なる非重複範囲NO2に位置している(図6)。この結果、例えば、パターン画像PIを印刷機構200で印刷する際に、印刷されるパターン画像PIが、第2基準画像RI2が第2基準ノズルNZ2だけを用いて印刷され、第3基準画像RI3が第3基準ノズルNZ3だけを用いて印刷されることを、容易に担保できる。仮に第2基準ノズルNZ2が重複範囲OL1内にある場合には、第2基準画像RI2は、第2基準ノズルNZ2だけでなく、ノズル列NG2のノズルNZを用いて印刷され得る。仮に第3基準ノズルNZ3が重複範囲OL1内にある場合には、第3基準画像RI3は、第3基準ノズルNZ3だけでなく、ノズル列NG1のノズルNZを用いて印刷され得る。この場合には、第2基準画像RI2の位置Xr2や第3基準画像RI3の位置Xr3に基づいて、各ノズルNZのノズル対応位置Xnzを算出する際に、算出精度が低下し得る。本実施例によれば、このような不都合を抑制することができる。
【0066】
さらに、上記実施例によれば、重複範囲OL1内のノズル列NG1のノズルNZaと、ノズル列NG2のノズルNZbとは、ラスタラインRL1に対応するノズルセットである。CPU110は、ノズルNZaのノズル対応位置Xnzaと、ノズルNZbのノズル対応位置Xnzbと、ノズルNZaの使用比率R1とノズルNZbの使用比率R2と、を用いて、共通の修正ノズル対応位置Xnzabを決定する(図8のS140、式(5))。そして、該修正ノズル対応位置Xnzabに基づいて、スキャンデータのうち、ラスタラインRLに対応するデータ(例えば、図7の画素PX1、PX2のRGB値)を特定して、ノズル対応濃度Dを算出する(図4のS30)。そして、CPU110は、ノズル対応濃度Dを用いて、ノズルNZaの特性値CVとノズルNZbの特性値CVとを算出する(図4のS35)。この結果、使用比率を考慮して、ラスタラインRLを印刷するノズルセットの各ノズルNZa、NZbの特性値CVを適切に算出することができる。
【0067】
さらに、本実施例によれば、図9、および、式(2)に示すように、CPU110は、第1基準画像RI1に対応する複数の画素列PLa~PLdの位置Pa~Pdと、複数の画素列の画素の値に応じた重みWa~Wdと、を用いて、第1基準画像RI1の位置Xr1を特定する(図8のS115)。CPU110は、同様に、第2基準画像RI2に対応する複数の画素列(図示省略)の位置と、該複数の画素列の画素の値に応じた重みと、を用いて、第2基準画像RI2の位置Xr2を特定する(図8のS115)。この結果、例えば、スキャンデータを生成する際の読取解像度が、ノズルピッチNTに相当する印刷解像度と同程度であっても、精度良く基準画像RI1、RI2の位置Xr1、Xr2を特定することができる。
【0068】
さらに、本実施例によれば、CPU110は、印刷実行部としての印刷機構200にパターン印刷データPDを供給して、特定画像SI_C、SI_M、SI_Y、SI_Kを印刷させる(図4のS10)。この結果、特定画像SI_C、SI_M、SI_Y、SI_Kを示すスキャンデータを生成するための原稿を、印刷機構200を用いて適切に作成することができる。
【0069】
以上の説明から解るように、本実施例のヘッドユニット241は、第1ヘッドユニットの例であり、ヘッドユニット242は、第2ヘッドユニットの例である。本実施例のヘッドユニット241のノズル列NG1(図6)のm個のノズルNZは、第1ノズルの例であり、ヘッドユニット242のノズル列NG2(図6)のm個のノズルNZは、第2ノズルの例である。本実施例の基準画像RI1、RI2、RI3、RI4の位置Xr1、Xr2、Xr3、Xr4は、それぞれ、第1基準位置、第2基準位置、第3基準位置、第4基準位置の例である。本実施例のノズル列NG1のm個のノズルNZのノズル対応位置Xnzは、第1の位置の例であり、ノズル列NG2のm個のノズルNZのノズル対応位置Xnzは、第2の位置の例である。
【0070】
B.第2実施例
第2実施例では、印刷ヘッドの構成と、特定画像と、の構成が第1実施例と異なる。図10は、第2実施例の特定画像SIbの概念図である。図10には、1個の特定画像SIbのうち、テスト画像TIbの一部と、6本の基準画像RI1b~RI6bと、が図示されている。図10には、さらに、特定画像SIbの上方に、各ドットを印刷する際に用いられたノズル列NG1b~NG3bが図示されている。ノズル列NG1bは、ヘッドユニット241の特定インクのノズル列である。同様に、ノズル列NG2b、NG3bは、それぞれ、ヘッドユニット242、243の特定インクのノズル列である。
【0071】
第2実施例の印刷ヘッドでは、ヘッドユニット241~245のノズル列NGが位置するX方向の範囲は、互いに重複しない。すなわち、第1実施例の図6の重複範囲OL1~OL3は、第2実施例では存在しない。例えば、図10のノズル列NG1bのm個のノズルNZのうち、-X方向の端に位置するノズルを、第1の端ノズルNZe1とする。ノズル列NG2bのm個のノズルのうち、+X方向の端に位置するノズルを、第2の端ノズルNZe2とする。第1の端ノズルNZe1は、第2の端ノズルNZe2のX方向に隣合っている。ノズル列NG2bのm個のノズルNZのうち、-X方向の端に位置するノズルを、第3の端ノズルNZe3とする。ノズル列NG3bのm個のノズルのうち、+X方向の端に位置するノズルを、第4の端ノズルNZe4とする。第3の端ノズルNZe3は、第4の端ノズルNZe4のX方向に隣合っている。
【0072】
ここで、第1基準画像RI1b、第2基準画像RI2bの印刷に用いられる第1基準ノズルNZ1b、第2基準ノズルNZ2bは、ノズル列NG1bのX方向の両端のノズルNZとは異なるノズルである。例えば、第1基準ノズルNZ1bは、ノズル列NG1bの+X方向の端から5番目のノズルであり、第2基準ノズルNZ2bは、ノズル列NG1bの-X方向の端から5番目のノズルである。同様に、第3基準画像RI3b、第4基準画像RI4bの印刷に用いられる第3基準ノズルNZ3b、第4基準ノズルNZ4bは、ノズル列NG2bのX方向の両端のノズルNZとは異なるノズルである。第5基準画像RI5b、第6基準画像RI6bの印刷に用いられる第5基準ノズルNZ5b、第6基準ノズルNZ6bは、ノズル列NG3bのX方向の両端のノズルNZとは異なるノズルである。
【0073】
第2実施例では、上述したように、特定画像SIbにおいて、重複範囲OL1~OL3が存在しない。このために、第2実施例では、図8のノズル対応位置特定処理において、S140の処理は実行されない。第2実施例の複合機600の他の構成、および、複合機600のCPU110が実行する他の処理は、第1実施例と同様である。
【0074】
以上説明した第2実施例によれば、上述したように、第2基準ノズルNZ2bは、第1の端ノズルNZe1とは異なるノズルであり、第3基準ノズルNZ3bは、第2の端ノズルNZe2とは異なるノズルである。この結果、特定画像SIbにおいて、第2基準画像RI1bと第3基準画像RI3bとが重なることを抑制できる。この結果、図8のノズル対応位置特定処理のS115にて、基準画像RI2b、RI3bの位置を精度良く特定できる。仮に、第1の端ノズルNZe1が第1基準ノズルNZ1bであり、第2の端ノズルNZe2が第2基準ノズルNZ2bであると、第2基準画像RI1bと第3基準画像RI3bとが繋がった状態で印刷される不都合や、第2基準画像RI1bと第3基準画像RI3bとが重なる不都合が発生し得る。特に、印刷ヘッド240に対するヘッドユニット241、242の取り付け誤差によって、第1の端ノズルNZe1と第2の端ノズルNZe2とのX方向の間隔が狭くなった場合には、このような不都合が発生しやすい。このような不都合が発生すると、第2基準画像RI1bと第3基準画像RI3bとを分離して特定することが困難になり、図8のノズル対応位置特定処理のS115にて、基準画像RI2b、RI3bの位置を精度良く特定できない可能性がある。本実施例によれば、このような不都合の発生を抑制できるので、基準画像RI2b、RI3bの位置を精度良く特定できる。
【0075】
C.第3実施例
第3実施例では、特定画像の構成が第1実施例とは異なる。第3実施例では、特定画像の構成以外の構成、例えば、印刷ヘッド240の構成を含む複合機600の構成、および、CPU110が実行する処理は、第1実施例と同じである。
【0076】
図11は、第2実施例の特定画像SIcの概念図である。図11には、1個の特定画像SIcのうち、テスト画像TIの一部と、6本の基準画像RI1c~RI6cと、が図示されている。図11には、さらに、特定画像SIcの上方に、各ドットを印刷する際に用いられたノズル列NG1~NG3が図示されている。ノズル列NG1~NG3の構成は、第1実施例のノズル列NG1~NG3と同一である。このために、ノズル列NG1の範囲RG1は、重複範囲OL1と非重複範囲NO1とを含んでいる。ノズル列NG2の範囲RG2は、重複範囲OL1、OL2と、非重複範囲NO2と、を含んでいる。ノズル列NG3の範囲RG3は、重複範囲OL2と非重複範囲NO3とを含んでいる。
【0077】
図11には、さらに、X方向の位置に応じた各ノズルNZの使用比率R1~R3が図示されている。使用比率R1~R3は、第1実施例の使用比率R1~R3(図6)と同一である。
【0078】
第3実施例の特定画像SIcは、第1実施例のテスト画像TI(図6)と同様のテスト画像TIと、第1実施例の基準画像RI1~RI6とは異なる基準画像RI1c~RI6cと、を含んでいる。
【0079】
第3実施例では、第1実施例とは異なり、テスト画像TIと、基準画像RI1c~RI6cと、の間に、間隙GPが存在している。このように、テスト画像TIと基準画像RI1c~RI6cとは、第1実施例のように連続していても良く、第3実施例のように分離していても良い。
【0080】
また、第3実施例では、ノズル列NG1の+X方向側の第1基準ノズルNZ1cは、ノズル列NG1のm個のノズルNZのうち、+X方向の端に位置するノズルNZである。このために、第3実施例の第1基準画像RI1cのX方向の位置は、テスト画像TIcの+X方向の端の位置と一致している。このように、ヘッドユニット241のノズル列NG1の+X方向の基準ノズルは、第1実施例のように、ノズル列NG1のm個のノズルNZのうち、+X方向の端に位置するノズルNZとは異なるノズルであっても良いし、第3実施例のように、ノズル列NG1のm個のノズルNZのうち、+X方向の端に位置するノズルNZであっても良い。ヘッドユニット245のノズル列(図示省略)の-X方向の基準ノズルについても同様である。
【0081】
第3実施例では、ノズル列NG1の第2基準ノズルNZ2cは、重複範囲OL1内の複数個(図11の例では5個)のノズルNZのうち、+X方向の端に位置するノズルNZである。このために、第3実施例では、第2基準画像RI2cは、重複範囲OL1に対応する位置にある。ここで、第2基準画像RI2cは、黒丸で示すドットが形成されていない空白部分VPを含んでいる。空白部分VPの位置は、第2基準ノズルNZ2cとノズルセットを構成するノズル列NG2のノズルNZx(図11)によってドットが形成される位置である。第2基準画像RI2cは、第2基準ノズルNZ2cのみによって印刷される(ドットが形成される)ことが好ましいために、ノズルNZxにて印刷される(ドットが形成される)位置は、空白部分VPとされている。これは、パターン印刷データPDにおいて、ノズルNZxにてドットが形成される位置に対応する画素の値をドットの非形成を示す値とし、第2基準ノズルNZ2cにてドットが形成される位置に対応する画素の値をドットの形成を示す値とすることによって、実現される。
【0082】
ここで、第2基準画像RI2cにおいて、ドットが形成される位置と空白部分VPとの比率は、ノズル列NG1に属する第2基準ノズルNZ2cの使用比率R1と、ノズル列NG2に属するノズルNZxの使用比率R2と、によって決定される。このために、第2基準ノズルNZ2cの位置は、重複範囲OL1のうち、使用比率R1が使用比率R2よりも高くなるX方向の位置に決定されている。具体的には、上述のように、第2基準ノズルNZ2cは、重複範囲OL1内の複数個のノズルNZのうち、+X方向の端に位置するノズルNZに決定されている。
【0083】
同様に、第3基準画像RI3cにおいて、空白部分VPとドットが形成される位置との比率は、ノズル列NG1に属するノズルNZzの使用比率R1と、ノズル列NG2に属する第3基準ノズルNZ3cの使用比率R2と、によって決定される。このために、第3基準ノズルNZ3cの位置は、重複範囲OL1のうち、使用比率R2が使用比率R1よりも高くなるX方向の位置に決定されている。具体的には、上述のように、第3基準ノズルNZ3cは、重複範囲OL1内の複数個のノズルNZのうち、-X方向の端に位置するノズルNZに決定されている。
【0084】
この結果、基準画像RI2c、RI3cにおいて、空白部分VPが過度に多くなることを抑制できるので、図8のS115において基準画像RI2c、RI3cの位置を精度良く決定することができる。
【0085】
さらに、第2基準画像RI2cが重複範囲OL1に対応する位置にあるので、例えば、重複範囲OL1が比較的広い場合であっても、第1基準画像RI1cと第2基準画像RI2cとのX方向の距離を比較的長くすることができる。また、第1基準画像RI1cと第2基準画像RI2cとがX方向に距離が長い場合には、第1基準画像RI1cと第2基準画像RI2cとのX方向の距離が短い場合よりも、図8のS125にて算出されるノズル間隔ΔNXを精度良く算出できる。
【0086】
同様に、第4基準ノズルNZ4cは、重複範囲OL2内の複数個のノズルNZのうち、+X方向の端に位置するノズルNZである。第5基準ノズルNZ5cは、重複範囲OL2内の複数個のノズルNZのうち、-X方向の端に位置するノズルNZである。第6基準ノズルNZ6cは、重複範囲OL3内の複数個のノズルNZのうち、+X方向の端に位置するノズルNZである。
【0087】
第3実施例によれば、上述したように、第2基準ノズルNZ2cは、重複範囲OL1内に位置し、第3基準ノズルNZ3cは、重複範囲OL1内に位置し、かつ、第2基準ノズルNZ2cからX方向に離れた位置にある。この結果、第2基準画像RI2cと第3基準画像RI3cとの間の距離を確保できるので、第2基準画像RI2cと第3基準画像RI3cとが重なることを抑制できる。また、上述したように、重複範囲OL1が比較的広い場合であっても、第1基準画像RI1cと第2基準画像RI2cとのX方向の距離を比較的長くすることができる。
【0088】
さらに、第3実施例によれば、上述したように、第2基準ノズルNZ2cの位置は、使用比率R1が使用比率R2よりも高い位置であり、第3基準ノズルNZ3cの位置は、使用比率R2が使用比率R1よりも高い位置である。この結果、上述したように、第2基準画像RI1cが第2基準ノズルNZ2cだけを用いて印刷され、第3基準画像RI3cが第3基準ノズルNZ3cだけを用いて印刷される場合に、空白部分VPが過度に多くなることなく、適切な基準画像RI2c、RI3cを印刷させることができる。
【0089】
D.第4実施例
図12は、第4実施例のノズルNZの特性値CVの算出のフローチャートである。図13は、第4実施例のノズルNZの特性値CVの算出の説明図である。第4実施例では、図4のS35のノズルNZの特性値CVの算出に代えて、図12の処理が実行される。第4実施例の他の構成、例えば、複合機600の構成やCPU110が実行する他の処理は、第1実施例と同様である。
【0090】
S210では、第1実施例のS35と同様に、CPU110は、n個のノズルNZ(i)のそれぞれの特性値CVを算出する。図13には、ノズル列NG1の-X方向側の一部のノズルNZと、ノズル列NG2の+X方向側の一部のNZと、が図示されている。図13には、さらに、これらのノズルNZの上方に、該ノズルNZについて算出される特性値CVがグラフで図示されている。グラフの黒丸は、S210にて算出される特性値CVを示している。例えば、グラフの特性値CV2は、非重複範囲NO1のノズルNZ2の特性値であり、特性値CV3は、非重複範囲NO2のノズルNZ3の特性値である。そして、グラフの特性値CVabは、重複範囲OL1のノズルセットを構成するノズルNZa、NZbの共通の特性値である。このように、第1実施例にて説明したように、ノズルセットを構成するノズルNZa、NZbの修正ノズル対応位置Xnzabは、ノズルNZa、NZbに共通の値である。このために、ノズルNZa、NZbの特性値CVabもノズルNZa、NZbに共通の値となる。
【0091】
S210では、CPU110は、重複範囲の両側に隣接する2個の非重複範囲の間の特性値CVの差分ΔCVを算出する。図13の例では、重複範囲OL1の両側に隣接する2個の非重複範囲NO1、NO2の間の特性値CVの差分ΔCVが算出される。本実施例では、非重複範囲NO1内の複数個のノズルNZのうち、重複範囲OL1に最も近いノズルNZ2の特性値CV2が非重複範囲NO1の代表特性値とされ、非重複範囲NO2内の複数個のノズルNZのうち、重複範囲OL1に最も近いノズルNZ3の特性値CV3が非重複範囲NO1の代表特性値とされる。これらの代表特性値CV2、CV3の差分が差分ΔCVとして算出される(ΔCV=(CV3-CV2))。なお、重複範囲OL1に最も近いノズルNZ2の特性値CV2に限らず、非重複範囲NO1内の複数個のノズルNZのうち、他のノズルNZの特性値もしくは2個以上のノズルNZの特性値に基づく値が、非重複範囲NO1の代表特性値として用いられても良い。例えば、非重複範囲NO1内の複数個のノズルNZのうち、重複範囲OL1の近傍の他のノズルNZの特性値が代表特性値として用いられても良い。また、非重複範囲NO1内の複数個のノズルNZのうち、重複範囲OL1の近傍の複数個のノズルNZの特性値の平均値が代表特性値として用いられても良い。非重複範囲NO2の代表特性値についても同様である。
【0092】
S220では、CPU110は、重複範囲内のノズルセットの1個の特性値CV、すなわち、ノズルセットを構成する2個のノズルNZに共通な特性値CVを分離する。これによって、ノズルセットを構成する2個のノズルNZのそれぞれの特性値CVが生成される。例えば、図13の例では、2個のノズルNZa、NZbに共通な特性値CVabは、ノズルNZaの特性値CVaと、ノズルNZbの特性値CVbと、に分離される。
【0093】
分離後の特性値CVa、CVbは、S210にて算出された差分ΔCVと、ノズルNZaの使用比率R1およびノズルNZbの使用比率R2(図6)と、を用いて、以下の式(7)、(8)に従って算出される。
CVa=CVab-(ΔCV/ΔN)×R2 …(7)
CVb=CVab+(ΔCV/ΔN)×R1 …(8)
ここで、ΔNは、ノズルNZ2のノズル番号N2と、ノズルNZ3のノズル番号N3と、の差分である(ΔN=(N3-N2))。
【0094】
同様にして、全ての重複範囲内の各ノズルセットについて、特性値CVの分離が行われて、ノズルごとに異なる特性値CVが算出される。図13の例では、白丸は、分離によって生成される特性値CVであって、ノズル列NG1に属するノズルNZの特性値CVを示す。二重丸は、分離によって生成される特性値CVであって、ノズル列NG2に属するノズルNZの特性値CVを示す。
【0095】
以上説明した第4実施例によれば、重複範囲内の各ノズルセットの共通の特性値CVabを用いて、ノズルセットを構成するノズルごとに適切な特性値CVa、CVbを算出できる。この結果、ノズル特性テーブルNPTに記録された特性値を用いて印刷を行う際に、ノズルごとの特性値CVa、CVbを用いて、ノズルセットを構成する一方のノズルによって形成されるドットの濃度制御と、他方のノズルによって形成されるドットの濃度制御と、をそれぞれ適切に実行できる。したがって、ノズルセットを構成する2個のノズルによって形成される全てのドットについて共通の特性値CVabを用いて濃度制御を行う場合と比較して、適切に濃度を制御できる。
【0096】
E.変形例
(1)上記各実施例では、ヘッドユニット241~245のそれぞれのノズル列NGに含まれるノズルNZの個数は、互いに等しい個数mである。これに代えて、ヘッドユニット241~245のそれぞれのノズル列NGに含まれるノズルNZの個数は、互いに異なっていても良い。一般的に言えば、ヘッドユニット241のノズル列NG1は、m1個(m1は3以上の整数)のノズルNZを含み、ヘッドユニット242のノズル列NG2は、m2個(m2は3以上の整数)のノズルNZを含む。m1とm2は、等しくても良いし、異なっていても良い。
【0097】
また、1個の印刷ヘッド240が備えるヘッドユニットの個数は、5個に限らず、2以上の他の個数、たとえば、2~4個、あるいは、6個以上であっても良い。
【0098】
(2)上記各実施例では、印刷機構200は、印刷ヘッド240の主走査を行うことなく、印刷を実行するラインプリンタである。これに限らず、印刷機構は、印刷ヘッドを搬送方向と垂直な方向に移動させる主走査を行いつつ、ドットを形成するいわゆるシリアルプリンタであっても良い。この場合には、印刷ヘッドには、複数個のヘッドユニットが、搬送方向に沿って並べられる。そして、各ヘッドユニットのノズル列NGは、搬送方向の位置が互いに異なる複数個のノズルNZを備える。例えば、図2の印刷ヘッド240をZ軸を回転軸として90度回転した構成の印刷ヘッドが採用される。そして、該印刷ヘッドを図2のX方向に移動させる主走査を行いつつ、印刷が行われる。この場合には、1回の主走査で図5のパターン画像PIが用紙Mに印刷される。
【0099】
(3)上記第1実施例では、特定画像SI(図6)において、1個のヘッドユニットに対応する基準画像RIの本数は、2本であるが、これに限られない。基準画像RIの本数は、2本以上の任意の本数、例えば、3本や4本であっても良い。他の実施例においても同様である。また、一本の基準画像を2個以上の基準ノズルを用いて印刷することで、上記各実施例よりも太い基準画像が印刷されても良い。
【0100】
(4)上記第1、第3、第4実施例では、重複範囲OL1~OL3における各ノズルNZの使用比率R1~R3は、X方向に応じて異なっているが、重複範囲OL1~OL3における各ノズルNZの使用比率R1~R3は、X方向に位置に拘わらずに、50%であっても良い。この場合であっても、各基準ノズルは、第1実施例のように、重複範囲外のノズルNZであっても良いし、第3実施例のように、重複範囲内のノズルNZであっても良い。
【0101】
(5)上記第1実施例では、ノズルセットを構成する2個のノズルNZa、NZb(図6)に共通する修正ノズル対応位置Xnzabを決定して、2個のノズルNZa、NZbに共通の特性値CVが算出される。これに代えて、2個のノズルNZa、NZbのノズル対応位置として、修正前の互いに異なる位置が採用されても良い。この場合には、2個のノズルNZa、NZbの特性値CVは、互いに異なる値となっても良い。
【0102】
(6)上記各実施例では、図9に示すように、複数の画素列PLa~PLdの位置と、各画素列の濃度に応じた重みと、を用いて、1個の基準画像RIの位置Xrが算出される。基準画像RIの位置Xrは、これに限られない。例えば、濃度が最も高い1つの画素列の位置が、基準画像RIの位置Xrに決定されても良いし、閾値以上の濃度を有する複数の画素列のX方向の中心の位置が、基準画像RIの位置Xrに決定されても良い。
【0103】
(7)上記各実施例では、上記実施例では、1台の複合機600の印刷機構200を用いて、パターン画像PIが印刷され(図4のS10)、該複合機600の読取機構300を用いて、パターン画像PIが印刷された用紙Mを読み取ることのよって、スキャンデータが生成される(図4のS15)。これに代えて、パターン画像PIの印刷は、一のプリンタを用いて行われ、スキャンデータの生成は、一のプリンタとは別体のスキャナによって実行されても良い。
【0104】
(8)図4の特性テーブル生成処理のうち、S20以降の処理は、例えば、複合機600や、別体のスキャナとは、異なる計算機によって実行されてもよい。例えば、複合機600のユーザが利用するスマートフォンやパーソナルコンピュータなどの端末装置が、スキャンデータを複合機600や別体のスキャナから取得して、図4のS20以降の処理を実行しても良い。あるいは、複合機600と接続されたサーバであって、例えば、複合機600の製造者によって運用されるサーバが、スキャンデータを複合機600や別体のスキャナから取得して、図4のS20以降の処理を実行しても良い。この場合には、例えば、端末装置やサーバは、複合機600に対して、パターン印刷データPDを供給し、複合機600は、該パターン印刷データPDを用いて、パターン画像PIを用紙Mに印刷しても良い。上記実施例では、複合機600が画像処理装置の例であり、本変形例では、端末装置やサーバが画像処理装置の例である。
【0105】
S20以降の処理を実行するサーバは、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個のコンピュータ(例えば、クラウドサーバ)でが、処理に要する機能を一部ずつ分担して、全体として、S20以降の処理を実行してもよい。この場合、複数個のコンピュータの全体が、画像処理装置の例である。
【0106】
(9)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0107】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0108】
100…制御装置、110…CPU、120…揮発性記憶装置、125…バッファ領域、130…不揮発性記憶装置、140…表示部、150…操作部、160…通信部、200…印刷機構、210…搬送部、230…ヘッド駆動部、240…印刷ヘッド、241~245…ヘッドユニット、241s…ノズル形成面、300…読取機構、600…複合機、SI…特定画像、RI…基準画像、TI…テスト画像、NG…ノズル列、NZ…ノズル、PD…パターン印刷データ、PG…コンピュータプログラム
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