IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メイコーの特許一覧 ▶ 国立大学法人山梨大学の特許一覧

特許7319615インク塗布ユニットおよびインク塗布装置
<>
  • 特許-インク塗布ユニットおよびインク塗布装置 図1
  • 特許-インク塗布ユニットおよびインク塗布装置 図2
  • 特許-インク塗布ユニットおよびインク塗布装置 図3
  • 特許-インク塗布ユニットおよびインク塗布装置 図4
  • 特許-インク塗布ユニットおよびインク塗布装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】インク塗布ユニットおよびインク塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20230726BHJP
   B05B 5/08 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B05B5/025 A
B05B5/08 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020012327
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021115554
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594119298
【氏名又は名称】株式会社メイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 義時
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】米山 詩麻夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 誠
(72)【発明者】
【氏名】田口 千博
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512384(JP,A)
【文献】特開2019-098257(JP,A)
【文献】特開平04-293564(JP,A)
【文献】特開平09-038530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを噴霧する複数のノズルが所定の間隔で配置されたノズル部と、
前記インクに電界を印加するためのノズル電極部と、
前記複数のノズルのうち最も外側の一以上の前記ノズルから前記ノズル部の外側の位置に設けられた一以上のダミー電極と
前記インクを収容する収容部と
を備え
前記ノズル電極部は、前記収容部を向く第1面から前記第1面とは反対側の第2面に設けられている前記複数のノズルの端部へと、前記収容部に収容されている前記インクを通過させるように複数の貫通孔が形成され、前記複数のノズルのそれぞれを囲うように設けられており、
前記複数のノズルは、前記収容部に接続されており、前記ノズル電極部の前記貫通孔を貫通してそれぞれ延伸し、前記ノズル電極部から印加された電界に基づいて前記ノズル電極部とは反対側の端部から前記ノズル電極部を通過した前記インクを噴霧し、
前記複数のノズルは、絶縁材料で形成されている、
インク塗布ユニット。
【請求項2】
前記収容部は、絶縁性材料で形成されており
前記ダミー電極は、前記ノズル電極部の前記第2面から延伸する、求項1に記載のインク塗布ユニット。
【請求項3】
前記ノズル電極部の前記第2面よりも収容部側に、導電性の整流プレートが更に設けられている、請求項2に記載のインク塗布ユニット。
【請求項4】
前記整流プレートは、前記ノズル電極部の周囲に設けられており、前記ノズル電極部に印加する電圧と同一極性で、前記ノズル電極部に印加する電圧よりも絶対値が大きい電圧が印加される、請求項3に記載のインク塗布ユニット。
【請求項5】
前記複数のノズルは、少なくとも1つの方向において等間隔に配列されている、請求項1からのいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項6】
前記複数のノズルは、異なる3つの方向において同一の間隔で配列されている、請求項1からのいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項7】
前記ダミー電極は、前記ノズル電極部において複数設けられおり、前記複数のノズルの配列方向のうち少なくとも1つの方向に対して平行に配列されている、請求項1からのいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項8】
前記ダミー電極は、前記ノズル電極部において複数設けられおり、前記複数のノズルの配列方向のうち3つの方向に対して平行に配列されている、請求項1からのいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項9】
前記ダミー電極は、前記ノズルの形状と同一の形状に形成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項10】
前記ノズル電極部と前記一以上のダミー電極とに同一極性の電圧を印加する電圧印加部を更に備える、請求項1から9のいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項11】
前記電圧印加部は、前記ノズル電極部と前記一以上のダミー電極とに同一の電圧を印加する、請求項10に記載のインク塗布ユニット。
【請求項12】
前記電圧印加部は、所定の時間が経過したことに応じて、前記ノズル電極部と前記一以上のダミー電極とに供給する電圧の極性を反転させる、請求項10または11に記載のインク塗布ユニット。
【請求項13】
前記インクを塗布する塗布対象物を載置する搭載部を更に備え、
前記電圧印加部は、前記搭載部に前記ノズル電極部に供給する電圧とは異なる電圧を供給する、
請求項10から12のいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項14】
前記収容部に接続されている減圧システムを更に備え、
前記減圧システムは、前記収容部のインクの消費と共に前記収容部の内部に空き空間が形成されると、当該空き空間が減圧気体で満たされるように減圧気体を供給する、
請求項1から13のいずれか一項に記載のインク塗布ユニット。
【請求項15】
ロール状に巻いた塗布対象物に前記インクを塗布して乾燥させてからロール状に巻き取る、ロールツーロール方式のインク塗布装置であって、
前記塗布対象物を搬送する搬送ローラーと、
前記塗布対象物の第1面に対向し、前記塗布対象物の前記第1面に前記インクを塗布する、請求項1から14のいずれか一項に記載の第1の前記インク塗布ユニットと
を備える、インク塗布装置。
【請求項16】
ロール状に巻いた塗布対象物に前記インクを塗布して乾燥させてからロール状に巻き取る、ロールツーロール方式のインク塗布装置であって、
前記塗布対象物を搬送する搬送ローラーと、
前記塗布対象物の第1面に対向し、前記塗布対象物の前記第1面に前記インクを塗布する、請求項1から14のいずれか一項に記載の第1の前記インク塗布ユニットと、
前記塗布対象物の前記第1面とは反対側の第2面に対向し、前記塗布対象物の前記第2面に前記インクを塗布する、請求項1から14のいずれか一項に記載の第2の前記インク塗布ユニットと
を備える、インク塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク塗布ユニットおよびインク塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク等の液体を静電気力で噴霧して塗布対象物に塗布する装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、複数のノズルを用いてインク等を塗布対象物に効率的に塗布する装置も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4232713号公報
【文献】特許第6494095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高密度に配置した複数のノズルからインク等を噴霧すると、噴霧されたインクのほとんどは同電位の静電気力となるので、近接する霧状のインク同士は反発し合うことがある。これにより、近接するインクは互いの軌道を乱すことがあり、塗布対象物に対してインク等を効率的に塗布することが困難になってしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、複数のノズルを用いて塗布対象物にインク等を効率的に塗布することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、インクを噴霧する複数のノズルが所定の間隔で配置されたノズル部と、前記インクに電界を印加するためのノズル電極部と、前記複数のノズルのうち最も外側の一以上の前記ノズルから前記ノズル部の外側の位置に設けられた一以上のダミー電極とを備えるインク塗布ユニットを提供する。
【0007】
前記インク塗布ユニットは、前記インクを収容し、絶縁性材料で形成されている収容部を更に備え、前記ノズル電極部は、収容部を向く第1面から前記第1面とは反対側の第2面に設けられている前記複数のノズルへと、前記収容部に収容されている前記インクを通過させ、前記複数のノズルは、前記ノズル電極部の前記第2面から延伸し、前記ノズル電極部から印加された電界に基づいて前記ノズル電極部とは反対側の端部から前記ノズル電極部を通過した前記インクを噴霧し、前記ダミー電極は、前記ノズル電極部の前記第2面から延伸してもよい。
【0008】
前記インク塗布ユニットには、前記ノズル電極部の前記第2面よりも収容部側に、導電性の整流プレートが更に設けられていてもよい。
【0009】
前記複数のノズルは、少なくとも1つの方向において等間隔に配列されていてもよい。前記複数のノズルは、異なる3つの方向において同一の間隔で配列されていてもよい。
【0010】
前記ダミー電極は、前記ノズル電極部において複数設けられおり、前記複数のノズルの配列方向のうち少なくとも1つの方向に対して平行に配列されていてもよい。前記ダミー電極は、前記ノズル電極部において複数設けられおり、前記複数のノズルの配列方向のうち3つの方向に対して平行に配列されていてもよい。
【0011】
前記複数のノズルは、絶縁材料で形成されていてもよい。前記ダミー電極は、前記ノズルの形状と同一の形状に形成されていてもよい。前記インク塗布ユニットは、前記ノズル電極部と前記一以上のダミー電極とに同一極性の電圧を印加する電圧印加部を更に備えてもよい。
【0012】
前記電圧印加部は、前記ノズル電極部と前記一以上のダミー電極とに同一の電圧を印加してもよい。前記電圧印加部は、所定の時間が経過したことに応じて、前記ノズル電極部と前記一以上のダミー電極とに供給する電圧の極性を反転させてもよい。
【0013】
前記インク塗布ユニットは、前記インクを塗布する塗布対象物を載置する搭載部を更に備え、前記電圧印加部は、前記搭載部に前記ノズル電極部に供給する電圧とは異なる電圧を供給してもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、ロール状に巻いた塗布対象物に前記インクを塗布して乾燥させてからロール状に巻き取る、ロールツーロール方式のインク塗布装置であって、前記塗布対象物を搬送する搬送ローラーと、前記塗布対象物の第1面に対向し、前記塗布対象物の前記第1面に前記インクを塗布する、第1の態様の第1の前記インク塗布ユニットとを備える、インク塗布装置を提供する。
【0015】
本発明の第3の態様においては、ロール状に巻いた塗布対象物に前記インクを塗布して乾燥させてからロール状に巻き取る、ロールツーロール方式のインク塗布装置であって、前記塗布対象物を搬送する搬送ローラーと、前記塗布対象物の第1面に対向し、前記塗布対象物の前記第1面に前記インクを塗布する、第1の態様の第1の前記インク塗布ユニットと、前記塗布対象物の前記第1面とは反対側の第2面に対向し、前記塗布対象物の前記第2面に前記インクを塗布する、第1の態様の第2の前記インク塗布ユニットとを備える、インク塗布装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のノズルを用いて塗布対象物にインク等を効率的に塗布することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係るインク塗布装置10の構成例を示す。
図2】本実施形態に係るインク塗布ユニット100の構成例を示す。
図3】本実施形態に係るノズル部230およびダミー電極240の構成例を示す。
図4】本実施形態に係るノズル部230およびダミー電極240の変形例を示す。
図5】本実施形態に係るノズルユニット300の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<インク塗布装置10の構成例>
図1は、本実施形態に係るインク塗布装置10の構成例を示す。図1は、互いに略垂直な軸をx、y、z軸とし、インク塗布装置10のxy平面における断面の概略構成を示す。インク塗布装置10は、ロール状に巻いた塗布対象物20にインクを塗布して乾燥させてからロール状に巻き取る、ロールツーロール方式のインク塗布装置である。
【0019】
塗布対象物20は、ロール状に巻き取ることが可能なシート状に形成されており、ローラー等によって搬送される。塗布対象物20は、有機物、無機物、および金属のうち少なくとも1つを有する基板である。塗布対象物20は、例えば、樹脂等で形成された基板である。また、塗布対象物20は、導電性を有する基板であってもよい。図1において、塗布対象物20は、塗布前の第1ロール21から搬送され、複数のインク塗布ユニット100によってインクが塗布された後に、第2ロール22に再び巻き取られる例を示す。ここで、塗布対象物20の一方の面を第1面とし、第1面とは反対側の面を第2面とする。インク塗布装置10は、インク塗布ユニット100と、搬送ローラー110と、第1基準プレート120と、第2基準プレート130と、電圧印加部140とを備える。
【0020】
インク塗布ユニット100は、塗布対象物20の第1面側および第2面側に設けられている。第1面側のインク塗布ユニット100は、塗布対象物20の第1面に対向し、塗布対象物20の第1面にインクを塗布する。第1面側のインク塗布ユニット100を便宜上、第1のインク塗布ユニット101と呼ぶ。第2面側のインク塗布ユニット100は、塗布対象物20の第1面とは反対側の第2面に対向し、塗布対象物20の第2面にインクを塗布する。第2面側のインク塗布ユニット100を便宜上、第2のインク塗布ユニット102と呼ぶ。図1は、複数の第1のインク塗布ユニット101と複数の第2のインク塗布ユニット102とが、塗布対象物20を挟んで設けられている例を示す。
【0021】
塗布対象物20は、例えば、-y方向に搬送されて複数のインク塗布ユニット100の間を移動する。この場合、塗布対象物20のx方向の幅をx、移動距離をyとすると、複数のインク塗布ユニット100は、対向する塗布対象物20の面のうちx・yの面積に対してインクを塗布できるように配置されていることが望ましい。インク塗布ユニット100については後述する。
【0022】
第1基準プレート120は、塗布対象物20の第1面とは反対側の第2面に対向し、基準電位が供給される。第1基準プレート120は、複数の第1のインク塗布ユニット101に対応して複数設けられていることが望ましい。基準電位の第1基準プレート120が第1のインク塗布ユニット101に対向していることにより、第1のインク塗布ユニット101から静電気力によって噴霧されたインクは、当該第1基準プレート120に向かって移動する。したがって、第1のインク塗布ユニット101から噴霧されたインクは、第1のインク塗布ユニット101と第1基準プレート120との間に配置している塗布対象物20に塗布されることになる。なお、第1のインク塗布ユニット101が塗布対象物20にインクを十分に塗布できる場合、このような第1基準プレート120は無くてもよい。
【0023】
第2基準プレート130は、塗布対象物20の第1面に対向し、基準電位が供給される。第2基準プレート130は、複数の第2のインク塗布ユニット102に対応して複数設けられていることが望ましい。これにより、第2のインク塗布ユニット102から噴霧されたインクは、第2基準プレート130の方向に移動し、第2のインク塗布ユニット102と第2基準プレート130との間に配置している塗布対象物20に塗布されることになる。なお、第2のインク塗布ユニット102が塗布対象物20にインクを十分に塗布できる場合、このような第2基準プレート130は無くてもよい。
【0024】
電圧印加部140は、インク塗布ユニット100に所定の電圧を印加する。電圧印加部140は、インク塗布ユニット100の電源として機能する。なお、インク塗布ユニット100は、電圧印加部140を含んでもよい。電圧印加部140については、後述する。
【0025】
以上の本実施形態に係るインク塗布装置10は、塗布対象物20の第1面および第2面の幅方向にインクを塗布させるので、塗布対象物20を長手方向に移動させるだけで、例えば、塗布対象物20の表面と裏面の全面にインクを塗布することができる。また、インク塗布装置10は、静電気力によってインクを微粒子化して噴霧するインク塗布ユニット100を用いるので、インクの乾燥時間を短縮させることができ、乾燥工程を省くことができる。したがって、インク塗布装置10の設置面積を大幅に減少させることができる。
【0026】
また、インク塗布装置10は、小型で軽量なインク塗布ユニット100を用いるので、図1に示すように、塗布対象物20を地面に対して略垂直な方向に搬送させつつ、インクを塗布できる。これにより、インク塗布装置10の設置面積を更に減少させることができる。
【0027】
なお、図1のインク塗布装置10の構成は、一例であり、これに限定されることはない。例えば、インク塗布ユニット100は、塗布対象物20の一方の面だけに配置されていてもよい。この場合、インク塗布装置10は、第1のインク塗布ユニット101または第2のインク塗布ユニット102と、対応する基準プレートとを備える。
【0028】
また、例えば、インク塗布装置10は、塗布対象物20を地面と略平行な方向に搬送させてもよい。更に、インク塗布装置10は、インクを塗布した後の塗布対象物20を加熱しつつ圧力を加える、ホットプレス装置を備えてもよい。また、インク塗布装置10は、インクを塗布した後の塗布対象物20を保護する保護膜を貼り付ける保護膜貼り付け装置を更に備えてもよい。
【0029】
以上のように、インク塗布装置10は、インク塗布ユニット100を用いることにより、より装置規模を低減させて、簡便に、低コストでインクを塗布対象物20に塗布することができる。このようなインク塗布装置10に設けられているインク塗布ユニット100について、次に説明する。
【0030】
<インク塗布ユニット100の構成例>
図2は、本実施形態に係るインク塗布ユニット100の構成例を示す。図2は、互いに略垂直な軸をx、y、z軸とし、インク塗布ユニット100のxy平面における平面視の概略構成を示す。インク塗布ユニット100は、複数のノズルを用いて塗布対象物20にインク等を効率的に塗布する。インク塗布ユニット100は、収容部210と、ノズル電極部220と、ノズル部230と、ダミー電極240と、整流プレート250とを備える。
【0031】
収容部210は、インクを収容する。収容部210は、絶縁性材料で形成されていることが望ましい。また、収容部210は、インクを密閉して収容できるように形成されていることが望ましい。収容部210の内部には、例えば、空気等の気体が存在する程度にインクが充填されている。この場合、後に述べるが、収容部210の内部の空気は、減圧システム等によって供給されてもよい。
【0032】
ノズル電極部220は、インクに電界を印加するために設けられている。ノズル電極部220は、例えば、全体が板状に形成されており、一方の面に収容部210が配置されている。ここで、ノズル電極部220の収容部210を向く面を第1面221とする。ノズル電極部220の第1面221と収容部210とは接していてもよく、これに代えて、他の部材を挟むように配置されていてもよい。図2は、ノズル電極部220の第1面221と収容部210との間に、整流プレート250が設けられている例を示す。
【0033】
ノズル電極部220は、収容部210を向く第1面221から第1面221とは反対側の第2面222に設けられている複数のノズル232へと、収容部210に収容されているインクを通過させる。ノズル電極部220は、収容部210が収容しているインクを第2面222側へと流通できるように、複数の貫通孔が形成されている。そして、ノズル電極部220は、貫通孔を流通するインクに電界を印加するための電極がそれぞれの貫通孔に形成されている。ノズル電極部220に形成されている複数の電極は、略同一の電圧となるように、電気的に接続されている。
【0034】
ノズル部230は、インクを噴霧する複数のノズル232が所定の間隔で配置されている。ノズル部230は、ノズル電極部220の第2面222に設けられている。複数のノズル232は、略一定の間隔で配置されていることが望ましい。
【0035】
複数のノズル232は、ノズル電極部220の第2面222から延伸している。例えば、複数のノズル232は、収容部210に接続されており、ノズル電極部220を貫通してノズル電極部220の第2面222から延伸する。この場合、ノズル電極部220の電極は、それぞれのノズル232を囲うように設けられていることが望ましい。また、ノズル電極部220の電極は、ノズル電極部220の少なくとも収容部210に近い領域に形成されていることが望ましい。これにより、ノズル電極部220の電極は、静電結合的に電荷を印加したインクを収容部210からノズル232へ押し出すように電界を印加することができる。
【0036】
また、複数のノズル232は、ノズル電極部220から印加された電界に基づいてノズル電極部220とは反対側の端部からノズル電極部220を通過したインクを噴霧する。このように、ノズル232から噴霧されたインクを、Charge-up Dropletsと呼ぶ。複数のノズル232は、例えば、絶縁材料で形成されている。ここで、出願人は、絶縁材料で形成されているノズル232を用いると、金属等で形成されているノズルと比較して、ノズル232の先端部においてインクが円錐形状のテーラーコーンを安定に形成でき、略均一な液滴形状のインクを噴霧することができることを見出した。
【0037】
ノズル232が絶縁材料で形成されていると、ノズル232の先端部および先端部に近いインクには、絶縁材料を介してノズル電極部220からの電界が印加されることになる。これにより、ノズル232の先端部においてインクが円錐形状のテーラーコーンを安定に形成できると考えられる。また、基準プレート等を用いて、塗布対象物20の塗布領域を基準電位に近づけることにより、このようなテーラーコーンの形成をより安定化させることができると考えられる。
【0038】
なお、ノズル232は、表面が絶縁性材料で形成されており、インクに接する内側の少なくとも一部が導電性材料で形成されていてもよい。これに代えて、ノズル232は、導電性金属で形成されていてもよい。また、複数のノズル232は、異なる材料で形成された複数種類のノズル232を含んでもよい。
【0039】
ダミー電極240は、ノズル電極部220の第2面222から延伸するように設けられている。ダミー電極240は、例えば、ノズル232と同様に、収容部210に接続されており、ノズル電極部220を貫通してノズル電極部220の第2面222から延伸する。これに代えて、ダミー電極240は、ノズル電極部220と一体に形成されていてもよい。また、ダミー電極240は、ノズル電極部220に取り付けられていてもよい。
【0040】
インク塗布ユニット100には、1または複数のダミー電極240が設けられている。ダミー電極240は、複数のノズル232のうち最も外側の一以上のノズル232からノズル部230の外側の位置に設けられている。ダミー電極240は、例えば、ノズル232の形状と同一の形状に形成されている。これに代えて、ダミー電極240は、ノズル232とは異なる形状に形成されていてもよい。ノズル部230およびダミー電極240の配置については、後に述べる。
【0041】
整流プレート250は、ノズル電極部220の第2面222よりも収容部210側に設けられている。整流プレート250は、ノズル電極部220の一部として形成されていてもよい。また、整流プレート250は、収容部210のノズル電極部220とは反対側の面に設けられていてもよく、収容部210のノズル電極部220とは反対側に収容部210と離隔されて設けられていてもよい。また、整流プレート250は、ノズル電極部220の周囲に庇状に形成されていてもよい。例えば、整流プレート250がノズル電極部220の第2面222と収容部210との間に設けられている場合、整流プレート250は、ノズル電極部220が貫通するように形成されている。
【0042】
図2は、整流プレート250は、収容部210とノズル電極部220の第1面221との間に設けられている例を示す。整流プレート250には、ノズル電極部220に形成されている複数の電極と同一の極性の電圧が印加される。整流プレート250は、予め定められた電圧が印加されることにより、複数のノズル232から噴霧されたインクの液滴を加速させるように電界を発生させる。これにより、複数のノズル232から噴霧されたインクは、より速く塗布対象物20に到達し、塗布対象物20においてインクが塗布される領域を略一定の範囲内に抑制することができる。言い換えると、整流プレート250は、塗布対象物20におけるインクの分散範囲を制御して、適切な塗布領域を形成することができる。
【0043】
電圧印加部140は、ノズル電極部220、一以上のダミー電極240、および整流プレート250に同一極性の電圧を印加する。電圧印加部140は、例えば、ノズル電極部220と一以上のダミー電極240とに略同一の電圧を印加する。電圧印加部140は、例えば、数kVから20数kV程度の電圧を供給する。電圧印加部140は、10数kV程度の電圧を供給することが望ましい。また、電圧印加部140は、一例として、ノズル電極部220に印加する電圧よりも絶対値が大きい電圧を整流プレート250に印加する。
【0044】
以上の本実施形態に係るインク塗布ユニット100は、複数のノズル232からインクを噴霧可能に形成されており、複数の静電スプレーとして機能する。インク塗布ユニット100には、より多くのノズル232が設けられることにより、塗布対象物20にインクを塗布できる領域を拡大することができる。また、複数のノズル232を高密度に配置することにより、インク塗布ユニット100がインクを塗布する領域に隙間なく効率的にインクを塗布できる。
【0045】
したがって、ノズル部230には、より多くのノズル232が高密度に配置されていることが望ましい。しかしながら、高密度に配置した複数のノズル232からインクを噴霧すると、噴霧されたインクのほとんどは同電位の静電気力を有するので、近接する霧状のインク同士は反発し合うことになる。このような反発力が生じると、噴霧されたインクの軌道が曲げられてしまい、塗布対象物20に対してインクを効率的に塗布することが困難になってしまうことがあった。
【0046】
そこで、本実施形態に係るインク塗布ユニット100は、ノズル部230およびダミー電極240を適切に配置して、塗布対象物20にインクを効率的に塗布する。このようなノズル部230およびダミー電極240の配置について、次に説明する。
【0047】
<ノズル部230およびダミー電極240の配置>
図3は、本実施形態に係るノズル部230およびダミー電極240の構成例を示す。図3は、互いに略垂直な軸をx、y、z軸とし、インク塗布ユニット100のzy平面における平面視の概略構成を示す。図3に示すノズル部230およびダミー電極240は、図2で説明したインク塗布ユニット100の一部の例である。
【0048】
複数のノズル232は、ノズル電極部220を貫通し、ノズル電極部220の第2面222に配置されている。図3において、ノズル232を白丸で示す。複数のノズル232は、ノズル電極部220の第2面222において、少なくとも1つの方向において等間隔に配列されていることがより望ましい。複数のノズル232から噴霧されたインクのそれぞれは、略同一の電荷を有し、近傍のインクに対して互いに反発する静電力が発生する。そこで、複数のノズル232を一方向以上の方向において等間隔に配列すると、1つのノズルから噴霧されるインクに対する他のノズルから噴霧されるインクによる反発力を合成した合成力の絶対値を低減させることができる。
【0049】
また、1つのノズル232がインクに印加する電界と、他の近接するノズル232が発生する電界とが合成された電界が、当該1つのノズル232に存在するインクに加わることになる。そこで、複数のノズル232を一方向以上の方向において等間隔に配列することにより、複数のノズル232がインクに印加する電界を均等な電界に近づけ、インクの軌道の乱れを低減させることができる。
【0050】
例えば、複数のノズル232は、ノズル電極部220の第2面222において、異なる3つの方向において同一の間隔で配列されていることがより望ましい。図3は、複数のノズル232が正三角形を第2面222に隙間なく敷きつめた場合の頂点の位置に配列されている例を示す。この場合、一のノズル232から噴霧されたインクに対して、当該一のノズル232の周囲の複数のノズル232から噴霧されたインクから発生する反発力を、理想的には相殺することができる。
【0051】
これにより、隣接するノズル232の間隔をより近づけて、複数のノズル232をより高密度に配置しても、塗布対象物20に略均一にインクを噴霧して塗布を効率化することができる。隣接するノズル232の間隔は、一例として、3mmから10mm程度の間隔にすることができる。また、ノズル部230には、数個から数千個程度のノズル232を配列させることができる。ノズル232の数は、10個から1000個程度の数であることが望ましい。
【0052】
ダミー電極240は、このようなノズル部230から噴霧するインクの塗布対象物20における塗布領域を調節するように配置されている。図3において、ダミー電極240を黒丸で示す。図3に示すダミー電極240は、ノズル232と略同一の形状を有する例を示す。
【0053】
ダミー電極240は、ノズル部230のノズル232のうち外側のノズル232に隣接するように設けられている。外側のノズル232は、例えば、隣接するノズル232の数が、他のノズル232と比較して少ないノズル232である。ダミー電極240は、ノズル部230を囲うように設けられていることが望ましい。
【0054】
ダミー電極240には、例えば、ノズル電極部220と同一の電圧が印加される。ダミー電極240には、ノズル電極部220の電極と少なくとも同一の極性の電圧が印加される。これにより、ダミー電極240は発生させる電界は、ノズル部230から噴霧されたインクを反発するように働く。
【0055】
これにより、ダミー電極240がノズル部230の周囲に配置されていることにより、ノズル部230から噴霧されたインクは、ノズル部230から大きく発散することを抑制することができる。このように、ダミー電極240は、最外周のノズル232の電界とノズル部230の内部のノズル232の電界とを均一にさせるように、ノズル部230の最外周のノズル232の更に外側に設けられている。
【0056】
このようなダミー電極240は、ノズル232の配列に合わせて配置されていることが望ましい。例えば、ダミー電極240は、ノズル電極部220の第2面222において複数設けられており、複数のノズル232の配列方向のうち少なくとも1つの方向に対して平行に配列されていることが望ましい。
【0057】
また、ダミー電極240は、ノズル電極部220の第2面222において複数設けられており、複数のノズル232の配列方向のうち3つの方向に対して平行に配列されていることがより望ましい。図3は、ダミー電極240が、複数のノズル232と同様に、正三角形を第2面222に隙間なく敷きつめた場合の頂点の位置に配列されている例を示す。
【0058】
例えば、図3において、外側のノズル232の一例をノズル232Aとする。ノズル232Aには、例えば、隣接するノズル232B、ノズル232C、およびノズル232Dから電界が印加されるので、噴霧されたインクの方向は図中の矢印の方向に傾斜する。そこで、ダミー電極240A、ダミー電極240B、およびダミー電極240Cをノズル232Bの外側に設ける。これにより、ノズル232Aには、ノズル232B、ノズル232C、およびノズル232Dによる電界と、ダミー電極240A、ダミー電極240B、およびダミー電極240Cによる電界が合成された電界が印加される。
【0059】
したがって、ノズル232Aから噴霧されたインクの方向は、理想的にはx方向と略平行な方向とすることができる。なお、この場合、外側のノズル232Aに印加される電界は、内側のノズル232Cと略同一となる。同様に、隣接するノズル232Bおよびノズル232Dに印加される電界も、隣接するダミー電極240によって、ノズル232Aに印加される電界と略同一となる。したがって、複数のノズル232にそれぞれ印加される電界が均一になることがわかる。
【0060】
以上のように、ダミー電極240を設けることにより、ノズル部230の外側のノズル232から噴霧されたインクであっても、内側のノズル232から噴霧されたインクと同様に、軌道が乱されてしまうことを抑制できる。このように、ダミー電極240は、複数のノズル232から噴霧されたインクの軌道の乱れを低減させて、塗布対象物20におけるインクの塗布領域が拡散してしまうことを防止できる。
【0061】
以上のように、本実施形態に係るインク塗布ユニット100は、複数のノズル232およびダミー電極240を適切に配置することにより、塗布対象物20にインクを効率的に塗布することができる。なお、図3は、複数のノズル232およびダミー電極240の配置の一例であり、このような配置に限定されることはない。
【0062】
複数のノズル232は、例えば、ノズル電極部220の第2面222において、正方形、長方形、平行四辺形、台形、正n角形等を敷きつめた場合の頂点、中心点、および/または対角線が交差する点の位置等に配置されてもよい。この場合、隣接するノズル232、またはダミー電極240の間隔は、略一致する方が望ましい。
【0063】
また、ダミー電極240の形状は、ノズル232の形状とは異なっていてもよい。ダミー電極240は、長さ、断面等の形状がノズル232とは異なって形成されてよい。また、ダミー電極240は、板状に形成されていてもよい。図4は、本実施形態に係るノズル部230およびダミー電極240の変形例を示す。本変形例のノズル電極部220およびノズル部230は、図3に示された本実施形態に係るノズル電極部220およびノズル部230の動作と略同一なので、説明を省略する。
【0064】
図4は、ダミー電極240がノズル部230を囲う壁状に形成されている例を示す。このように、ダミー電極240がノズル部230の周囲を覆うように形成されていても、図3で説明したように、複数のノズル232から噴霧されたインクの塗布領域が拡散してしまうことを防止できる。なお、図4は、ダミー電極240が一体に形成されている例を示すが、これに代えて、ダミー電極240は、複数の板状部材で形成されていてもよい。
【0065】
また、電圧印加部140は、ノズル電極部220とダミー電極240とに略同一の電圧を印加する例を説明したが、これに限定されることはない。インク塗布ユニット100から塗布対象物20までの距離、ダミー電極240の形状および配置、ノズル232の配置、電圧印加部140の印加電圧等に基づき、塗布対象物20におけるインクの塗布領域は変化することがある。そこで、電圧印加部140がノズル電極部220とダミー電極240とに印加する電圧値を異ならせて、インクの塗布領域を調節してもよい。
【0066】
この場合、インク塗布装置10のオペレータ等がインクの塗布領域を確認して、電圧印加部140が出力する電圧値を調整してもよい。これに代えて、電圧印加部140は、出力電圧を調節する制御部と、インクの塗布領域を撮像する撮像部とを有してもよい。この場合、制御部は、撮像部が撮像したインクの塗布領域の大きさに応じて、電圧印加部140が出力する電圧値を調整する。これにより、インク塗布ユニット100の塗布領域を自動で調節することができる。
【0067】
また、電圧印加部140は、ノズル電極部220とダミー電極240とに印加する電圧の極性を調節してもよい。例えば、電圧印加部140は、所定の時間が経過したことに応じて、ノズル電極部220と一以上のダミー電極240とに供給する電圧の極性を反転させる。ノズル部230が噴霧するインクは帯電しているので、インクが塗布された塗布対象物20が電荷を帯びてしまうことがある。
【0068】
そこで、電圧印加部140は、例えば、略一定の時間が経過したことに応じて、印加電圧の極性を反転させる。これにより、塗布対象物20が帯電したとしても、一定時間ごとに中和させることができ、噴霧するインクへの影響を低減させることができる。これにより、塗布対象物20により多くのインクを安定に塗布させることができ、所定の厚さの塗布膜を塗布対象物20に形成することができる。
【0069】
これに代えて、または、これに加えて、電圧印加部140は、塗布対象物20と接する部材等に電圧を印加してもよい。例えば、インク塗布装置10が塗布対象物20を載置する搭載部を備えていることがある。この場合、電圧印加部140は、搭載部にノズル電極部220に供給する電圧とは異なる電圧を供給する。電圧印加部140は、例えば、ノズル電極部220に供給する電圧と比較して、絶対値が小さく、極性を反転した電圧を搭載部に供給する。
【0070】
これにより、電圧印加部140は、帯電した塗布対象物20を中和させることができる。また、搭載部の電圧の極性をノズル電極部220の電圧の極性に対して反転させているので、噴霧されたインクを引き寄せる電界を発生することになる。したがって、電圧印加部140は、インクの塗布領域が分散することを抑制することができ、所定の厚さの塗布膜を塗布対象物20に形成することができる。
【0071】
なお、電圧印加部140が制御部を有する場合、当該制御部は、CPU等のコンピュータと記憶部とを含むことが好ましい。記憶部は、制御部が機能するためのOS(Operating System)、およびプログラムの情報を格納してもよい。また、記憶部は、当該プログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してもよい。例えば、コンピュータは、記憶部に記憶されたプログラムを実行することによって、制御部として機能する。
【0072】
記憶部は、例えば、コンピュータ等のBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、および作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)および/またはSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでもよい。また、コンピュータは、GPU(Graphics Processing Unit)等を更に備えてもよい。
【0073】
以上の本実施形態に係るインク塗布ユニット100において、収容部210がインクを収容することを説明した。これに加えて、収容部210は、減圧システム等と接続されていてもよい。例えば、減圧システムは、収容部210のインクの消費と共に収容部210の内部に空き空間が形成されると、当該空き空間に減圧気体を供給するように設けられる。これにより、インク塗布ユニット100のインクの塗布方向を重力が加わる方向とは異なる方向にしても、重力の影響を低減させることができる。
【0074】
以上の本実施形態に係るインク塗布ユニット100において、複数のノズル232が1つの収容部210に接続されている例を説明したが、これに限定されることはない。例えば、インク塗布ユニット100は、複数の収容部210を備え、それぞれの収容部210と1または複数のノズル232とが接続されていてもよい。また、インク塗布ユニット100は、1つのノズル232毎に形成されているノズルユニットを複数有する構成であってもよい。このようなノズルユニットについて次に説明する。
【0075】
<ノズルユニット300の構成例>
図5は、本実施形態に係るノズルユニット300の構成例を示す。ノズルユニット300は、収容部310と、ノズル電極320と、ノズル330とを備える。
【0076】
収容部310は、インクを収容する。収容部310は、図2に示すインク塗布ユニット100の収容部210と同様に、絶縁性材料で形成されていることが望ましい。また、収容部310は、インクを密閉して収容できるように形成されていることが望ましい。収容部310の内部には、例えば、空気等の気体が存在する程度にインクが充填されている。また、収容部310は空き空間に減圧気体が満たされるように、、減圧システム等と接続されていてもよい。
【0077】
ノズル電極320は、インクに電界を印加するために設けられている電極である。ノズル電極320は、例えば、ノズル330の一部の周囲を囲うように設けられている。言い換えると、ノズル電極320は、ノズル330を貫通させる貫通孔を有する。ノズル電極320は、ノズル330の収容部310側に設けられている。ノズル電極320と収容部310とは接するように設けられていてもよい。
【0078】
ノズル330は、一端が収容部310に接続され、収容部310から延伸している。ノズル330の収容部310に接続されている一端とは反対側の他端は、ノズル電極320から露出している。ノズル電極320に電圧が供給されると、ノズル電極320は収容部210のインクを帯電させてノズル330へ押し出すように電界を印加する。これにより、ノズル330は、インクを噴霧する。
【0079】
ノズル330は、絶縁材料で形成されている。図2に示すインク塗布ユニット100のノズル232と同様に、ノズル330が絶縁材料で形成されていることにより、ノズル330の先端部においてインクが円錐形状のテーラーコーンの液滴形状を安定に形成でき、略均一なCharge-up Dropletsを噴霧することができる。
【0080】
本実施形態に係るインク塗布ユニット100は、以上のようなノズルユニット300を複数備える構成であってもよい。また、塗布領域が比較的狭い場合、1つのノズルユニット300をインク塗布ユニット100として用いてもよい。また、本実施形態に係るインク塗布ユニット100は、インクを噴霧する例を説明したが、これに限定されることはない。インク塗布ユニット100が静電スプレーとして機能して噴霧できる液体であれば、インク以外の液体であってもよい。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0082】
10 インク塗布装置
20 塗布対象物
21 第1ロール
22 第2ロール
100 インク塗布ユニット
101 第1のインク塗布ユニット
102 第2のインク塗布ユニット
110 搬送ローラー
120 第1基準プレート
130 第2基準プレート
140 電圧印加部
210 収容部
220 ノズル電極部
221 第1面
222 第2面
230 ノズル部
232 ノズル
240 ダミー電極
250 整流プレート
300 ノズルユニット
310 収容部
320 ノズル電極
330 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5