(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】心電図伝送システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/332 20210101AFI20230726BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20230726BHJP
【FI】
A61B5/332
A61B5/33 300
(21)【出願番号】P 2018051971
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2017059247
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511212240
【氏名又は名称】束原 幸俊
(73)【特許権者】
【識別番号】516251897
【氏名又は名称】ノラブ メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NORAV Medical Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】束原 幸俊
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106264516(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0039040(US,A1)
【文献】特表2014-503087(JP,A)
【文献】特表2015-519087(JP,A)
【文献】特開2013-048749(JP,A)
【文献】特開2004-147993(JP,A)
【文献】特開2001-198096(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0256417(US,A1)
【文献】特表2014-519944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0297080(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被検者に
それぞれ取り付けられて当該
各被検者の12誘導の心電図情報を
それぞれ取得する
複数の心電計と、
各被検者の様子を観察しながら
各被検者の心電図を監視する監視者用として設けられ、前記
各心電計から近距離通信にて送信される心電図情報に基づいて心電図を作成して表示する監視用表示端末と、
各被検者の心機能を診断する診断者用として設けられ、コンピュータネットワークを通じて前記監視用表示端末から心電図を受けて表示する診断用表示端末と、を備え、
前記
各心電計は、
心電図作成の基となる心電図情報を途中途切れることなく継続して保存し、保存された心電図情報を必要時に読出し可能とされたメモリと、
前記監視用表示端末に向けて近距離通信により心電図情報を常時送信する送信機と、を備え、
前記監視用表示端末は、
操作に応じてそのとき表示中の心電図を直ちに前記診断用表示端末に送信する
心電図伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の心電図を取得するケースとして、健康診断時、救急車での患者搬送時、手術中等がある。救急車での患者搬送中に使用するものとして特許文献1の心電図伝送システムがある。このシステムは、救急車で搬送中の患者の心電図を、救急車から病院内の医師に伝送する際に主に使用されるシステムである。このシステムでは、12誘導心電計により取得された心電図が、コンピュータネットワークを通じて医師のパソコン(表示端末ともいう)に表示される。
【0003】
近年、例えば、心筋梗塞の手術をした患者が、手術後2日目で歩行訓練することが推奨されている。また、心臓疾患の患者のリハビリテーションでは、心肺運動負荷試験が行われている。これら歩行中やリハビリテーション中は、患者に対して12誘導心電計による心電図の監視が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の心電計は、被検者が歩行や運動をしない安静状態で使用することを前提とした構成となっているため、歩行中やリハビリテーション中の被検者の心電図の取得は困難であった。特許文献1のシステムでは、心電計からの心電図情報を無線送信にて取得することも可能としているが、被検者が歩行や運動により移動すると、無線送信ができなくなる状況も起きる。その場合、心電計からの心電図情報は途切れてしまう。その結果、心電図情報に基づいて作成される心電図も途中で途切れたものとなり、歩行中やリハビリテーション中の被検者の心電図を継続して取得することができない。
【0006】
本発明の課題は、心電計にメモリ機能を付加することにより、心電計から無線送信される心電図情報が途切れることがあっても、継続的に心電図を取得可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明は、被検者に取り付けられて当該被検者の12誘導の心電図情報を取得し、外部に接続された表示端末に心電図を表示させる心電計である。心電計は、心電図情報を保存し、保存された心電図情報を必要時に読出し可能とされたメモリと、前記表示端末に向けて近距離通信により心電図情報を常時送信する送信機とを備える。
【0008】
第1発明によれば、心電計は、心電信号を保存するメモリを備える。そのため、心電計から外部の表示端末への通信が途切れても、心電信号は心電計にて保存され続ける。即ち、通信が途切れたとき、外部の表示端末によるその時点の心電図の表示は行われなくなるが、その間も心電信号は心電計のメモリ内に保存される。
【0009】
例えば、歩行中やリハビリテーション中の被検者に監視者が接近すると、近距離通信が可能となり、心電計から心電信号が送信され、表示端末に心電図が表示される。そのため、監視者は、被検者の様子と心電図とから被検者の容体を監視することができる。監視者が被検者から離れて、近距離通信が不能となれば、表示端末の心電図の表示は行われなくなるが、心電信号は心電計内のメモリに保存され続ける。従って、医師は、必要に応じてメモリに保存された心電信号に基づいて心電図を取得して被検者の診断を行うことができる。
【0010】
第2発明は、請求項1の心電計の心電図情報に基づいて作成された心電図を、その心電図に基づいて被検者の心機能を診断する診断者に向けて伝送する心電図伝送システムである。そして、被検者の様子を観察しながら被検者の心電図を監視する監視者用として設けられ、心電計から近距離通信にて送信される心電図情報に基づいて心電図を作成して表示し、その心電図を必要時に前記診断者に向けて伝送する監視用表示端末と、前記診断者用として設けられ、コンピュータネットワークを通じて前記監視用表示端末から心電図を受けて表示する診断用表示端末とを備える。
【0011】
第2発明によれば、心電図は、監視用表示端末からの指示により診断用表示端末に表示して診断者に被検者の容体を診断させることができる。そのため、例えば、被検者が自ら異常を感じたとき、直ちに診断用表示端末に心電図を伝送して、診断者に心電図に基づく容体の診断をしてもらうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態のシステム構成図である。
【
図2】上記実施形態における心電計の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、複数の歩行訓練中の心臓疾患患者である被検者の心電図を、病院内で離れた場所にいる医師の表示端末に伝送するシステムである。
【0014】
心電計1は、12誘導心電計であり、被検者の体表面から心電信号を取り込んで、心電図作成の基になる心電図情報を作成する。この場合、歩行中の複数の患者に対応して、心電計1は、複数個(
図1では2個のみ示す)あり、被検者毎に設けられる。心電計1で作成された心電図情報は、近距離通信により監視用表示端末2に送信される。監視用表示端末2は、被検者の様子を観察しながら被検者の心電図を監視する理学療法士(監視者)が所持するパソコン、タブレット端末、スマートフォン等により構成される。なお、近距離通信としては、一般的に使用されているBluetooth(登録商標)が使用される。
【0015】
監視用表示端末2では、心電計1からの心電図情報を心電信号の計測時刻と対応させた心電図として保存し表示する。監視用表示端末2は、無線LANを介してインターネットワーク(本発明のコンピュータネットワークに相当)3に接続されており、このインターネットワーク3には、診断用表示端末4及びサーバー5が接続されている。そのため、監視用表示端末2に保存された心電図は、診断用表示端末4及びサーバー5に伝送可能とされている。この場合、診断用表示端末4は、病院内で医師(診断者)が所持し使用するパソコン又はタブレット端末であり、監視用表示端末2から伝送された心電図を表示する。また、サーバー5は、システム管理地に設置されたサーバーコンピュータであり、監視用表示端末2から伝送された心電図を保存している。そのため、サーバー5に保存された心電図は、必要時に診断用表示端末4、若しくは他のパソコンにおいて、インターネットワーク3経由で共有可能とされている。なお、インターネットワーク3と監視用表示端末2、診断用表示端末4、サーバー5との接続は、有線でも無線でもよい。
【0016】
図2は、心電計1の詳細構成を示す。心電計1には、心電図アンプ14があり、心電図アンプ14は、被検者の体表面に取り付けられた複数の検出端子から心電信号が取り込まれ、その心電信号を増幅してコントローラ12に伝送する。一方、コントローラ12からは心電図アンプ14に対して心電図の作成を指示する指令信号が送られる。コントローラ12では、公知のように、心電図アンプ14から心電信号を受けて心電図作成の基となる心電図情報を作成する。コントローラ12には、メモリ11、表示器13及び送信機15が接続されている。
【0017】
メモリ11は、コントローラ12から心電図情報を受けて逐次保存する。メモリ11は、USBメモリ、SDカード等のフラッシュメモリにより構成することができる。勿論、フラッシュメモリ以外のメモリを用いることもできる。
【0018】
表示器13では、コントローラ12にて作成された心電図波形が表示される。表示器13は、被検者自身及び被検者周辺の介護者等により容易に視認可能とされている。この場合、表示器13では、12誘導の心電図のうちの一部の波形のみが表示されている。なぜなら、この表示器13は、診断を目的として心電図を見るためのものではなく、心電計1が正常に機能しているか否かを確認するだけのためのものとされている。そのため、システムに不具合が生じて監視用表示端末2や診断用表示端末4に心電図が表示されない事態が生じたとき、心電計1が正常動作しているか否かにより不具合の原因を特定し易くしている。
【0019】
送信機15では、コントローラ12にて作成された心電図情報が監視用表示端末2に送信される。送信機15は、上述のように近距離通信を実現する構成とされている。
【0020】
以上の実施形態によれば、歩行中の被検者の一人Aに理学療法士が接近すると、その被検者Aの心電計1と監視用表示端末2との間の近距離通信が可能となり、監視用表示端末2に被検者Aの心電計1から心電図情報が送信される。監視用表示端末2では、その心電図情報に基づいて心電図が作成され、表示される。そのため、理学療法士は、被検者Aの様子と心電図とから被検者Aの容体を監視することができる。
【0021】
理学療法士が被検者Aから離れて、近距離通信が不能となれば、監視用表示端末2の心電図の表示は行われなくなるが、心電図情報は被検者Aの心電計1内のメモリ11に保存され続ける。そのため、理学療法士が監視できない期間の被検者Aの心電図は、図示しない解析装置により後で必要に応じてメモリ11から読み出して診断することができる。
【0022】
被検者Aから離れた理学療法士が別の被検者Bに接近すると、今度は、監視用表示端末2に被検者Bの心電計1から心電図情報が送信される。監視用表示端末2では、その心電図情報に基づいて心電図を作成し表示する。そのため、理学療法士は、被検者Bの様子と心電図とから被検者Bの容体を監視することができる。このように、理学療法士は、患者が歩行中であっても心電図を確認しながら患者を監視することができる。しかも、一人の理学療法士が複数の患者を対象として監視することができる。
【0023】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の心電図伝送システムを歩行訓練中の患者である被検者の心電図を監視、診断する場合に適用したが、救急車で搬送中の患者を被検者とする場合にも適用することもできる。救急車で搬送中の患者を被検者とする場合、心電計1で作成された心電図情報は、監視用表示端末2で心電図とされ、診断用表示端末4に伝送される。このとき伝送される心電図は、10秒程度の一定時間のみである。その前後を含む全ての期間の心電図は、メモリ11に保存されているため、救急車が病院に到着後、メモリ11から図示しない解析装置により読み出して見ることができる。
【0024】
また、本発明の心電図伝送システムは、自宅等で普段どおり生活する外来患者を被検者とする場合にも適用することができる。この場合、被検者は、心電計1と共に監視用表示端末2も身に着けて生活し、心電計1により作成された心電図情報は、メモリ11に継続して保存される。メモリ11に保存された心電図情報は、通常のホルタ心電計にて保存された心電図の場合と同様、決められた時間が経過した後に医師の許に届けて診断を受ける。しかし、決められた時間が経過する前でも被検者自身が異常を感じた場合は、監視用表示端末2を操作することにより、そのときの心電図を診断用表示端末4に伝送することができる。そのため、決められた時間の経過を待つまでもなく、異常時の心電図を医師に診断してもらうことができる。
【0025】
更にまた、本発明の心電図伝送システムは、ホルタ心電計を基にして構成することもできる。即ち、ホルタ心電計は、上記実施形態にて説明した心電計1における表示器13及び送信機15以外の機能は備えるため、少なくともホルタ心電計に送信機能を追加することにより本発明の心電図伝送システムを実現することができる。なお、表示器13の機能を備えない場合、ホルタ心電計の動作状態を確認することはできないが、ホルタ心電計を所持した患者が監視用表示端末2に対し接近して通信することにより、監視用表示端末2にてホルタ心電計により取得した心電図を表示することができる。また、ホルタ心電計のメモリに記録された心電情報を読み出すことにより必要時に医師の診断を受けることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 心電計
11 メモリ
12 コントローラ
13 表示器
14 心電図アンプ
15 送信機
2 監視用表示端末(表示端末)
3 インターネットワーク(コンピュータネットワーク)
4 診断用表示端末
5 サーバー