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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ブロワ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/12 20060101AFI20230726BHJP
   F04D 29/08 20060101ALI20230726BHJP
   F04D 25/08 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F04D29/12 Z
F04D29/08 F
F04D25/08 302E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021576138
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021011827
(87)【国際公開番号】W WO2021246029
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020097939
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507031099
【氏名又は名称】株式会社大阪送風機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】奥野 薫
(72)【発明者】
【氏名】木下 龍男
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-004663(JP,U)
【文献】国際公開第2020/017635(WO,A1)
【文献】特開2012-107609(JP,A)
【文献】特開2016-089671(JP,A)
【文献】特開2014-125986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/12
F04D 29/08
F04D 25/08
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガスの一部を導入可能なガス通路と該ガス通路に連通する軸穴とが形成されたケーシングと、前記ケーシングの前記軸穴に回転自在に挿通された回転軸と、前記回転軸に支持されて前記ケーシング内に収納され、前記ガス通路に導入し昇圧した前記排ガスを前記エンジンに再循環させるインペラと、前記軸穴をシールするシール装置と、を備えたブロワであって、
前記シール装置が、
前記軸穴の近傍で前記回転軸を取り囲む環状の第1および第2のシールリングと、
前記第1および第2のシールリングを取り囲む環状壁部と該環状壁部に対し前記回転軸の軸方向の両側で一体に結合する一対の内側壁部とを有する環状の軸封ボックスと、
前記軸封ボックス内にシールエアを導入するとともに前記第1および第2のシールリングを前記一対の内側壁部に密接させた主シール室を形成し、前記ガス通路から大気側への前記排ガスの漏れを防止する静圧ガスシール手段と、
前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側で前記回転軸を取り囲む環状の第3のシールリングを有し、前記主シール室から大気側へのシールエアの漏れを制限する補助シール室を形成するバックアップシール手段と、
前記エンジンの運転状態に応じて制御され、前記静圧ガスシール手段に対し、前記シールエアを大気圧より高圧でかつ前記ガス通路内の圧力以上の増減可能な供給圧で供給するシールエア供給回路と、を含んでおり、
前記主シール室から大気側への前記シールエアの漏れ流量を、前記静圧ガスシール手段の前記第1、第2のシールリングのうち大気側のシールリングと前記バックアップシール手段とにより制限するようにしたことを特徴とするブロワ。
【請求項2】
前記エンジンが、船舶の機関室に主機関として搭載される多気筒のディーゼル機関であることを特徴とする請求項1に記載のブロワ。
【請求項3】
前記第1、第2のシールリングのうち少なくとも大気側の前記第2のシールリングと前記第3のシールリングとが、それぞれ、周方向に隣り合う複数の円弧状のセグメントシール部材と、該複数のセグメントシール部材を前記回転軸側に付勢しつつ弾性的に一体に拘束するガータスプリングとで構成されており、前記複数のセグメントシール部材同士が、軸方向および径方向に広がりつつ周方向に対面する第1対向面と、前記周方向および径方向に広がりつつ軸方向に対面する第2対向面とを有していることを特徴とする請求項1または2に記載のブロワ。
【請求項4】
前記バックアップシール手段が、前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側で前記第3のシールリングを径方向の外側および軸方向の外側から覆う外付け環状部材と、前記第3のシールリングを前記外付け環状部材に密接するよう前記回転軸の軸方向に付勢する弾性部材と、をさらに有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のブロワ。
【請求項5】
前記外付け環状部材が、前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側に固定されていることを特徴とする請求項4に記載のブロワ。
【請求項6】
前記回転軸を回転駆動するモータが設けられており、
前記ケーシングと前記モータが一体に連結されていることを特徴とする請求項5に記載のブロワ。
【請求項7】
前記外付け環状部材より前記軸方向外方側の前記回転軸上に、前記外付け環状部材の内周径より大径の円環板状の振切板が配置されていることを特徴とする請求項6に記載のブロワ。
【請求項8】
エンジンの排ガスの一部を導入可能なガス通路と該ガス通路に連通する軸穴とが形成されたケーシングと、前記ケーシングの前記軸穴に回転自在に挿通された回転軸と、前記回転軸に支持されて前記ケーシング内に収納され、前記ガス通路に導入し昇圧した前記排ガスを前記エンジンに再循環させるインペラと、を備えたブロワに装着され、前記軸穴をシールするブロワのシール装置であって、
前記軸穴の近傍で前記回転軸を取り囲む環状の第1および第2のシールリングと、
前記第1および第2のシールリングを取り囲む環状壁部と該環状壁部に対し前記回転軸の軸方向の両側で一体に結合する一対の内側壁部とを有する環状の軸封ボックスと、
前記軸封ボックス内に前記ガス通路内以上に高圧のシールエアを導入するとともに前記第1および第2のシールリングを前記一対の内側壁部に密接させた主シール室を形成し、前記ガス通路から大気側への前記排ガスの漏れを防止する静圧ガスシール手段と、
前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側で前記回転軸を取り囲む環状の第3のシールリングを有し、前記主シール室から大気側へのシールエアの漏れを制限する補助シール室を形成するバックアップシール手段と、
前記エンジンの運転状態に応じて制御され、前記静圧ガスシール手段に対し、前記シールエアを大気圧より高圧でかつ前記ガス通路内の圧力以上の増減可能な供給圧で供給するシールエア供給回路と、を含んでおり、
前記主シール室から大気側への前記シールエアの漏れ流量を、前記静圧ガスシール手段の前記第1、第2のシールリングのうち大気側のシールリングと前記バックアップシール手段とにより制限するようにしたことを特徴とするブロワのシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロワに関し、特に大型のエンジンの排気再循環システムに好適なブロワに関する。
【背景技術】
【0002】
送風対象のガスを吸入して昇圧させるブロワとして、従来、動力や電力を出力するシステムからの排ガスを昇圧して同システムに再循環させる再循環ブロワや、同システムへの供給ガス(低圧再循環ガスを含む)を昇圧する補助ブロワ等が知られている。
【0003】
例えば、舶用ディーゼルエンジン等のエンジンの排気エミッション低減技術の一つとして、エンジンの排ガスの一部をそのエンジンの吸気側(掃気作用をなす場合はその給気側の意)に還流させて再循環させ、排気中のNOx(窒素酸化物)を低減させるEGRシステム(排気再循環システム)が普及してきているが、そのようなEGRシステムにおいて、排ガスの一部を再循環可能な圧力に昇圧するEGRブロワが、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
また、例えば特許文献3には、再循環排ガス流量を自身のブロワ回転数により制御可能なもので、ブロワ回転数を計測する回転センサを取り付けたものが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献4には、インペラと回転軸とが樹脂材により一体成型されてハウジングに収納された遠心ブロワで、その回転軸の軸方向におけるハウジング内部の複数箇所に、回転軸の外周面と略同径の内周面を有するフッ素系樹脂製の第1、第2のシールリングが設けられるとともに、両シールリングの間のハウジング内部空間にシールエアを供給するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-157959号公報
【文献】特開2012-172647号公報
【文献】特開2002-332919号公報
【文献】特開2016-89671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のような従来のブロワにあっては、インペラケーシング内で昇圧されエンジンに再循環されるべきEGRガスが、インペラ回転軸の軸穴を通してハウジングの内部空間側に侵入するのを抑制するべく、ハウジング内部のインペラ側空間に供給するシールエアの圧力をインペラケーシングの内部より十分に大きく設定すると、インペラ側空間からハウジングの外部(大気側)に連通するモータ側空間側へと漏れ出るシールエア量が多くなってしまうという問題があった。
【0008】
そのため、従来のブロワにあっては、シールエア供給源を駆動する駆動モータの消費動力が増加してしまうという問題や、船舶内に設けられる舶用エンジンのEGRブロワ等には採用し難いという問題が生じていた。
【0009】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたものであり、シールエア供給源の消費動力を抑えることができるブロワを提供することを目的とし、併せて、船舶用のエンジンのEGRブロワに好適なブロワを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るブロワは、上記目的達成のため、ガス通路と該ガス通路に連通する軸穴とが形成されたケーシングと、前記ケーシングの前記軸穴に回転自在に挿通された回転軸と、前記回転軸に支持されて前記ケーシング内に収納されインペラと、前記軸穴をシールするシール装置と、を備えたブロワであって、前記シール装置が、前記軸穴の近傍で前記回転軸を取り囲む環状の第1および第2のシールリングと、前記第1および第2のシールリングを取り囲む環状壁部と該環状壁部に対し前記回転軸の軸方向の両側で一体に結合する一対の内側壁部とを有する環状の軸封ボックスと、前記軸封ボックス内に前記ガス通路内以上に高圧のシールエアを導入するとともに前記第1および第2のシールリングを前記一対の内側壁部に密接させた主シール室を形成し、前記ガス通路から大気側への前記排ガスの漏れを防止する静圧ガスシール手段と、前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側で前記回転軸を取り囲む環状の第3のシールリングを有し、前記主シール室から大気側へのシールエアの漏れを制限する補助シール室を形成するバックアップシール手段と、を含んでいることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明では、第1、第2のシールリングの間に形成される主シール室内に静圧ガスシール手段によってガス通路内よりも高圧のシールエアが導入されることで、ブロワ内の排ガスがガス通路側から大気側への漏れ出ることが確実に防止される。しかも、第2のシールリングの前後差圧がバックアップシール手段の第3のシールリングにより抑えられるとき、第3のシールリングの前後差圧も抑えられることから、各シールリングの前後差圧に応じたシールエアの大気側への漏れ流量を有効に低減させることができる。
【0012】
(2)本発明の好ましい実施形態は、前記ケーシングに、エンジンの排ガスの一部を導入可能な前記ガス通路と該ガス通路に連通する軸穴とが形成されており、前記インペラが、前記ガス通路に導入し昇圧した排気ガスを前記エンジンに再循環させる構成とすることができる。
【0013】
この場合、NOx等の低減のためにエンジンの排気を再循環させるEGRブロワに好適なものとなる。
【0014】
(3)本発明の好ましい実施形態は、前記第1、第2のシールリングのうち少なくとも大気側の前記第2のシールリングが、周方向に隣り合う複数の円弧状のセグメントシール部材で構成されており、前記複数のセグメントシール部材同士が、軸方向および径方向に広がりつつ周方向に対面する第1対向面と、前記周方向および径方向に広がりつつ軸方向に対面する第2対向面とを有している構成とすることができる。
【0015】
このようにすると、複数のセグメントシール部材の内周面形状や端部形状に応じてそれらの間の微小隙間形状を適宜設定でき、第2のシールリングの微小隙間を通過するシールエアの流量および第2のシールリングの前後差圧を安定確保可能となる。
【0016】
(4)本発明の好ましい実施形態は、前記バックアップシール手段が、前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側で前記第3のシールリングを径方向の外側および軸方向の外側から覆う外付け環状部材と、前記第3のシールリングを前記外付け環状部材に密接するよう前記回転軸の軸方向に付勢する弾性部材と、をさらに有している構成とすることもできる。
【0017】
この場合、第3のシールリングおよび外付け環状部材によって補助シール室を容易に形成できるとともに、第3のシールリングの安定したシール姿勢を設定可能となり、運転中のシールエアの大気側への漏れをより有効に低減可能となる。
【0018】
(5)本発明の好ましい実施形態は、前記外付け環状部材が、前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側に固定されている構成としてもよい。
【0019】
このようにすると、既存のブロワに、第3のシールリングおよび外付け環状部材を容易に追加することができる。
【0020】
(6)本発明の好ましい実施形態は、前記回転軸を回転駆動するモータが設けられており、前記ケーシングと前記モータが一体に連結されている構成とすることができる。
【0021】
この場合、コンパクトなブロワを作製可能となる。
【0022】
(7)本発明の好ましい実施形態は、前記外付け環状部材より前記軸方向外方側の前記回転軸上に、前記外付け環状部材の内周径より大径の円環板状の振切板が配置されている構成としてもよい。
【0023】
この構成により、補助シール室から軸方向の外側に漏れ出るシールエアを振切板によって周囲の塵埃などと共に放射外方向に振り切ることができ、モータ側への塵埃の侵入を有効に抑制することができる。
【0024】
(8)本発明の好ましい実施形態は、船舶用のエンジンの排ガスの一部を導入可能なガス通路と該ガス通路に連通する軸穴とが形成されたケーシングと、前記ケーシングの前記軸穴に回転自在に挿通された回転軸と、前記回転軸に支持されて前記ケーシング内に収納され、前記ガス通路に導入し昇圧したEGRガスを前記エンジンに再循環させるインペラと、を備えたブロワに装着され、前記軸穴をシールするEGRブロアのシール装置であって、前記軸穴の近傍で前記回転軸を取り囲む環状の第1および第2のシールリングと、前記第1および第2のシールリングを取り囲む環状壁部と該環状壁部に対し前記回転軸の軸方向の両側で一体に結合する一対の内側壁部とを有する環状の軸封ボックスと、前記軸封ボックス内に前記ガス通路内以上に高圧のシールエアを導入するとともに前記第1および第2のシールリングを前記一対の内側壁部に密接させた主シール室を形成し、前記ガス通路から大気側への前記排ガスの漏れを防止する静圧ガスシール手段と、前記軸封ボックスに対し前記ガス通路から離隔する軸方向外方側で前記回転軸を取り囲む環状の第3のシールリングを有し、前記主シール室から大気側へのシールエアの漏れを制限する補助シール室を形成するバックアップシール手段と、を含んでいる構成とすることができる。
【0025】
この構成により、ブロワ内の排ガスがガス通路側から船舶内の大気側への漏れるのを静圧ガスシール手段の加圧されたシールエアによって有効に抑制できるとともに、シールエアの大気側への漏れ量を静圧ガスシール手段およびバックアップシール手段の協働により十分に低減させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シールエア供給源の消費動力を抑えることができるブロワを提供することができ、併せて、船舶用のエンジンのEGRブロワに好適なブロワを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るEGRブロワおよびそれを含む舶用エンジンのEGRシステムの概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るEGRブロワの軸穴近傍部分の拡大断面図である。
図3図2中の二点鎖線で囲んだM部分をさらに拡大して示す部分拡大断面図である。
図4A】本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるセグメントシール型のシールリングの正面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係るEGRブロワにおけるセグメントシール型のシールリングの構成図であり、図4A中のB矢視図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るEGRブロワの軸穴近傍部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(一実施形態)
図1ないし図4Bは、本発明の一実施形態に係るブロワを、EGR装置付きの動力システム中にEGRブロワとして設けた場合を示している。
【0030】
まず、その構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の動力システム100は、多気筒の大型2サイクルのディーゼル機関であるエンジン110と、ターボ過給機120と、EGR装置130とを具備しており、これらが全て図示しない船舶の機関室に搭載されるようになっている。
【0032】
エンジン110は、例えば外洋航行船の主機関として使用可能な電子制御式の大出力のエンジンであり、多気筒の機関本体101に、燃料供給ユニット102、給気レシーバ103および排気レシーバ104等を装着した構成を有している。なお、本実施形態では船舶用としているが、船舶用以外とする場合、エンジン110は、例えば発電所の発電機を動作させるための定置機関としても使用可能である。
【0033】
多気筒の機関本体101には、複数のシリンダ111が設けられている。これら複数のシリンダ111は、それぞれ掃気ポート113を介して給気レシーバ103に接続される一方、対応するそれぞれの排気弁114の開弁時に排気レシーバ104内に排気可能になっている。各シリンダ111内では、掃気により取り込まれた後にピストン112により発火点以上に圧縮された空気とその空気中に噴射された燃料とが燃焼するとき、燃焼ガスが膨張してピストン112が駆動されるとともに排ガスが発生する。そして、各シリンダ111からの排ガスが排気レシーバ104内に間欠的に送り出されるようになっている。
【0034】
燃料供給ユニット102は、燃料清浄機で清浄化した舶用ディーゼル燃料をポンプ加圧し、気筒ごとの燃料弁が所定のタイミングで開弁するとき、機関本体101の各シリンダ111内に燃料を噴射・供給できるようになっている。
【0035】
給気レシーバ103は、機関本体101の各シリンダ111内の燃焼ガスを排出させつつ新たな空気で満たす掃気作用をなすための圧縮空気溜め(掃気受け)となっており、排気レシーバ104は、機関本体101の各気筒からの排気を蓄圧貯留しつつその大部分をターボ過給機120側に供給することができる排気溜めとなっている。
【0036】
ターボ過給機120は、排気レシーバ104側から供給された排気により駆動されるタービン121と、タービン121により駆動されるとき外気を導入および圧縮して給気レシーバ103内に供給するコンプレッサ122とを有している。
【0037】
EGR装置130は、排気レシーバ104からの排気の一部を給気レシーバ103側への再循環経路Leに取り込んで浄化する湿式のスクラバユニット131と、スクラバユニット131により浄化された排気ガス(以下、EGRガスという)を熱交換により冷却するEGRクーラ132と、EGRクーラ132で冷却されたEGRガスを、ターボ過給機120のコンプレッサ122から給気レシーバ103への過給通路Lc中に供給可能な圧力レベルに昇圧させるEGRブロワ133とを含んで構成されている。
【0038】
湿式のスクラバユニット131は、例えば再循環経路Leに取り込まれた排気ガス中の硫黄酸化物を中和可能な液滴を噴霧させたり、排気ガス中のすす(煤)粒子の吸収や再循環経路Le中の還流排気ガスの一次冷却に適した液滴の大きさにしたりすることができるスクラバと、スクラバの内底部側で還流排気ガス浄化後の液滴を収集するミストキャッチャとを含んで構成されている。
【0039】
EGRクーラ132には、詳細を図示しないが、スクラバユニット131を通過し浄化および一次冷却されたEGRガスを通すEGRガス通路と、外部からの冷却水を通す冷却水通路とを有する熱交換器で構成されており、両通路を通る流体間での熱交換によりEGRガスを冷却(二次冷却)することができる熱交換器で構成されている。
【0040】
EGRブロワ133は、EGRクーラ132を通過したEGRガスが導入されるガス通路11とそのガス通路11に連通する軸穴12とが形成されたケーシング10と、ケーシング10の軸穴12に回転自在に挿通された回転軸21と、回転軸21に支持されてケーシング10内に収納されインペラ22と、軸穴12をシールするシール装置30とを具備している。
【0041】
また、図1に示すように、軸封ボックス33に対しケーシング10のガス通路11から離隔する外面側(図1中の右側)には、回転軸21を回転駆動する出力軸71を有するモータ70が配置されている。
【0042】
図1および図2に示すように、ケーシング10のガス通路11は、ケーシング10の外端側である図1中の左端側で大口径に開口する一方、同図中の右側(内方側)へと回転軸21の軸線方向に延びつつ内方側で縮径した導入通路11aと、導入通路11aの内端部を取り囲むスクロール通路11bとを有している。そして、ケーシング10は、導入通路11aの外端側で大口径に開口する導入口部11cと、スクロール通路11bの下流端を導入口部11cより径方向の外方側に突出させる吹出口部11dとを有している。
【0043】
ケーシング10は、このガス通路11を形成するとともにモータ取付面側が開口する本体部13と、本体部13のモータ取付面側を閉塞する略円板状でその中心部で軸穴12を形成するモータ取付板14と、本体部13に対しモータ取付板14を着脱可能に固定する複数のボルト15とによって構成されている。そして、ケーシング10のモータ取付板14にはモータ70を取り付けるための取付ブラケット73が、ケーシング10の背面側にはモータ70を下方から支持する支持ブラケット74が、それぞれ装着されている。そして、これら取付ブラケット73および支持ブラケット74を介して、ケーシング10とモータ70のケース72とが、一体に連結されている。
【0044】
また、回転軸21は、モータ70の出力軸71に対し一体回転するように連結することができる蓋付きの筒状体となっており、モータ70の出力軸71に所定の嵌合圧で嵌合する段付きの略円筒体23と、インペラ22内の略円筒体23の一端に同心的に嵌合しその一端を閉止する蓋体24と、蓋体24とモータ70の出力軸71との間に介在し略円筒体23および蓋体24をモータ70の出力軸71に対して軸方向所定位置に位置決め可能な環状のスペーサ25と、モータ70の出力軸71に対して略円筒体23、蓋体24およびスペーサ25を一体に締結固定するボルト26と、を有している。
【0045】
ケーシング10内で回転軸21に支持されたインペラ22は、ガス通路11のうち導入通路11aの内端部に近接する入口部22aと、スクロール通路11b内で放射外方向に向かって開口する出口部22bと、入口部22aから出口部22bへと延びつつ相互に等角度間隔に離間する複数の羽根部22cとを有している。このインペラ22は、ケーシング10および回転軸21と共に遠心式の送風機を構成し、回転軸21を介してモータ70により回転駆動されるとき、ケーシング10のガス通路11に導入されたEGRガスをエンジン110に再循環可能に昇圧するようになっている。
【0046】
図2に示すように、シール装置30は、ケーシング10と回転軸21の間に介装されており、軸穴12内の回転軸21の周囲の隙間Gを閉塞している。
【0047】
このシール装置30は、軸穴12の一端近傍で回転軸21を取り囲む環状の第1および第2のシールリング31、32と、第1および第2のシールリング31、32を収納する環状の軸封ボックス33とを含んで構成されている。また、図2および図3に示すように、シール装置30は、静圧ガスシール手段40と、バックアップシール手段60とを備えている。
【0048】
軸封ボックス33は、第1および第2のシールリング31、32を取り囲む円環内周面形状の環状壁部33aと、その環状壁部33aに対し回転軸21の軸方向の両側で略直交するよう一体に結合した一対の内側壁部33b、33cとを有している。
【0049】
具体的には、軸封ボックス33は、外面側で複数のボルト33gによりケーシング10の軸穴12の周囲に固定された第1環状体34と、一対のうち片側の内側壁部33bを形成するとともに第1環状体34の内面側(図2中の左端面側)にボルト固定された第2環状体35と、第1環状体34の外面側に一体に形成されつつ一対のうち片側の内側壁部33bに対向するよう他の片側の内側壁部33cを形成する第3環状体36とによって構成されている。
【0050】
静圧ガスシール手段40は、軸封ボックス33内の第1および第2のシールリング31、32の間に複数の圧縮コイルばね41を周方向等間隔(等角度間隔)に縮設して、第1および第2のシールリング31、32を軸封ボックス33の一対の内側壁部33b、33cに密接させるように付勢することで、軸封ボックス33内に環状の主シール室42を形成している。この主シール室42内には、図3に示すシールエア(シール用の空気)供給回路45から、ケーシング10のガス通路11および軸穴12内以上に高圧のシールエアが導入されるようになっており、ケーシング10内のガス通路11から大気側への排ガスの漏れを抑止できるようになっている。
【0051】
図3に示すように、シールエア供給回路45は、軸封ボックス33の第1環状体34に形成されたシールエア通路34hに連通するエア供給通路45h上に、逆止弁46と、図示しない圧力計や流量計、リリーフ弁、フィルタ等を含んだ調圧ユニット47と、開閉弁48と、エアポンプ等の空気供給源49とによって構成されている。
【0052】
調圧ユニット47および開閉弁48は、例えばエンジン110の回転速度[rpm]、負荷、ガス通路11内の圧力等に応じて制御されるようになっており、シールエア供給回路45は、ガス通路11に連通する軸穴12内の隙間Gの圧力以上に高い供給圧でシールエアを主シール室42内に常時供給することで、ケーシング10内のガス通路11から軸穴12を通して大気側にEGRガスが漏れ出るのを常時抑止するようになっている。したがって、シールエアの供給圧は、常時大気圧より高い圧力であって、排気レシーバ104の出口側圧力やターボ過給機120のタービン121側からの背圧、給気レシーバ103の入口側圧力やターボ過給機120のコンプレッサ122側からの過給圧、モータ70の回転速度[rpm]等のいずれかに応じて、ガス通路11内の圧力(インペラ22の背面側の圧力)が上昇するとき、その圧力以上に高い圧力に調圧され得る。このシールエアの供給圧は、段階的に増減されてもよい。
【0053】
静圧ガスシール手段40の第1、第2のシールリング31、32のうち大気側の第2のシールリング32は、周方向に隣り合う複数の円弧状のセグメントシール部材51と、これら複数のセグメントシール部材51を回転軸21側に付勢しつつ弾性的に一体に拘束するガータスプリング52とで構成された分割シール構造を有している。
【0054】
また、本実施形態においては、第2のシールリング32のみならずケーシング10の軸穴12に近接する第1のシールリング31も、周方向に隣り合う複数の円弧状のセグメントシール部材51と、これら複数のセグメントシール部材51を回転軸21側に付勢しつつ弾性的に一体に拘束するガータスプリング52とで構成された分割シール構造を有している。
【0055】
第1、第2のシールリング31、32のそれぞれ複数のセグメントシール部材51は、それぞれの片面側に所定角度間隔を隔てる一対のノックピン穴51kを有するとともに、他の片面側に複数の圧縮コイルばね41の端部を保持可能な複数の凹状の保持穴51nを有している。また、第1のシールリング31と第2のシールリング32とは、それぞれの凹状の保持穴51n同士およびノックピン穴51k同士が回転軸21の軸線方向において逆向きに開くように、互いに逆向きに設置されている。
【0056】
そして、複数のセグメントシール部材51同士が、軸方向および径方向に広がりつつ微小隙間Ecを隔てて周方向に対面する第1対向面51aと、周方向および径方向に広がりつつ摺動隙間Edを隔てて軸方向に対面する第2対向面51bとを有するように、同一円周上に配置されるとともに、複数対のノックピン穴51kに遊嵌された軸封ボックス33側の複数のノックピン33j、33kによって回転軸21上に案内されるとともに、外周側のガータスプリング52によって回転軸21の外周面上に所定の接触圧で付勢されている。
【0057】
ここで、回転軸21の軸方向に延びる微小隙間Ecは、第1、第2のシールリング31、32の外周面側および相互対面側(凹状の保持穴51n側)では何ら覆われることが無い一方、第1、第2のシールリング31、32が一対の内側壁部33b、33cに密接する密接面側(ノックピン穴51k側)では、一対の内側壁部33b、33cにより覆われて狭められている。
【0058】
また、第1、第2のシールリング31、32の軸方向両面側では、回転軸21の軸方向に延びる微小隙間Ecの周方向位置がずれており、周方向に延びる摺動隙間Edは、図4Bに示すように、第1、第2のシールリング31、32の軸方向両面側の微小隙間Ecの間で逆方向の屈曲をなすとともに、軸方向両面側の微小隙間Ecより狭くなっている。これら微小隙間Ecおよび微小隙間Ecは、圧力損失が大きいオリフィス状の漏れ通路51eを構成している。
【0059】
バックアップシール手段60は、ケーシング10のガス通路11から離隔する軸封ボックス33の外面側(図2中の右端側)に配置され、回転軸21を取り囲む環状の第3のシールリング61と、この第3のシールリング61を径方向の外側および軸方向の外側から覆うよう設けられ、軸封ボックス33の第1環状体34にボルト66により着脱可能に固定された外付け環状部材63と、第3のシールリング61を外付け環状部材63の内側壁部63aに密接するよう回転軸21の軸方向外方側に付勢する圧縮コイルばね等の弾性部材64と、軸封ボックス33の第1環状体34と外付け環状部材63の間に介装されたゴム弾性リングからなるハーメティカルシール65とを有している。
【0060】
このバックアップシール手段60は、軸封ボックス33と外付け環状部材63との間に、静圧ガスシール手段40の主シール室42から大気側へのシールエアの漏れを制限する補助シール室62を形成している。
【0061】
また、バックアップシール手段60の第3のシールリング61は、詳細を図示しないが、静圧ガスシール手段40の大気側の第2のシールリング32と略同様に、周方向に隣り合う複数の円弧状のセグメントシール部材(51相当)と、これら複数のセグメントシール部材を回転軸21側に付勢しつつ弾性的に一体に拘束するガータスプリング(52相当)とで構成された分割シール構造を有している。
【0062】
そして、第3のシールリング61の複数のセグメントシール部材も、図4A図4Bに示す第2のシールリング32の複数の円弧状のセグメントシール部材51と同様に、複数のセグメントシール部材によって圧力損失の大きいオリフィス状の漏れ通路(同図中に括弧付き符号61eで示す)を有している。
【0063】
このような本実施形態のシール装置30においては、主シール室42へのシールエアの供給圧が大気圧より十分に高い圧力P1[MPa]であるとき、第2のシールリング32の漏れ通路51eから漏れ出るシールエアがいわゆるチョーク流れになる条件((P2+0.1)/(P1+0.1)が臨界圧力比b以下)が成立し得る。この場合、主シール室42から補助シール室62側にシールエアが漏れ出る際に第2のシールリング32によって上流圧力P1に応じた大きな圧力損失が生じることになり、主シール室42から補助シール室62側に漏れ出るシールエアの質量流量が有効に制限される。
【0064】
また、この場合、補助シール室62内の圧力P2は、大気圧以上であるものの主シール室42内のシールエアの圧力P1より十分に小さい所定圧以下となり、第3のシールリング61の上流圧力である補助シール室62内の圧力P2に対して、下流圧力である大気圧P3[MPa]の圧力比が比較的大きくなる。よって、第3のシールリング61のオリフィス状の漏れ通路61eから漏れ出るシールエアがいわゆる亜音速流れになる条件((P3+0.1)/(P2+0.1)が臨界圧力比bより大きい)が成立し得る。したがって、補助シール室62から大気側に漏れ出るシールエアの質量流量は、補助シール室62内の圧力P2および大気圧P3の双方に依存するものとなり、第3のシールリング61によって十分に(補助シール室62内が圧力P1程度に高圧でチョーク流れになる場合よりも小流量に)制限される。
【0065】
一方、主シール室42へのシールエアの供給圧が大気圧より高い圧力であってもさほど高圧でない場合か、あるいは、主シール室42へのシールエアの供給圧が大気圧より十分に高い圧力P1であるものの補助シール室62内の圧力P2が比較的高い場合、第2のシールリング32のオリフィス状の漏れ通路51eから漏れ出るシールエアが亜音速流れになる条件((P2+0.1)/(P1+0.1)が臨界圧力比bより大きい)が成立し得る。
【0066】
この場合には、主シール室42から補助シール室62側に漏れ出るシールエアの質量流量は、主シール室42内の圧力P1および補助シール室62内の圧力P2の双方に依存するものとなって、第2のシールリング32によって十分に(チョーク流れになる場合よりも小流量に)制限される。
【0067】
このように、本実施形態のシール装置30を有するEGRブロワ133は、シール装置30の静圧ガスシール手段40およびバックアップシール手段60を協働させることで、ケーシング10の軸穴12を通して大気側に漏れ出るシールエアの漏れ量を十分に低減させるようになっている。
【0068】
図2に示すように、ケーシング10に対して外付け環状部材63より軸方向外方側に位置する回転軸21上には、外付け環状部材63の内周径より大径の円環板状の振切板81が配置されている。この振切板81は、回転軸21の外周面上に略垂直な邪魔板状に突出しており、補助シール室62から回転軸21の軸方向に漏れ出るシールエアを、周囲の塵埃などと共に放射外方向に振り切ることで、モータ70側への塵埃の侵入を抑制するようになっている。
【0069】
ところで、ターボ過給機120では、エンジン110の排気レシーバ104からの排気エネルギによってタービン121が回転駆動されるとき、コンプレッサ122に取り込まれる新気(外からの空気)およびEGRガスが加圧され、エンジン110の給気レシーバ103側に所定の過給圧で過給される。このターボ過給機120は、予め設定された運転条件に従って、タービン121への排気の取り込みを可変ノズル機能により制御したり、排気をバイパスさせるとともにそのバイパス流量を制御したりするように構成されてもよい。その場合、エンジン110の運転状態により排気レシーバ104からの排気のエネルギが変化し得るのに対し、ターボ過給機120による過給圧を好適に制御可能となる。
【0070】
また、EGR装置130は、エンジンの回転数[rpm]に応じて、あるいは予め設定された運転条件に従って、再循環経路Leを絞ったり遮断したりすることで、その作動を選択的に制限するものとすることができる。このようにすることで、エンジンの回転数[rpm]や船舶の航行海域に応じたNOxの選択的な排出制限が可能となる。
【0071】
次に、作用について説明する。
【0072】
上述のように構成された本実施形態のシール装置30を備えたEGRブロワ133においては、第1、第2のシールリング31、32の間に形成される主シール室42内に静圧ガスシール手段40によってガス通路11に連通する軸穴12内よりも高圧のシールエアが導入されることで、EGRブロワ133内の排ガスがガス通路11側から大気側への漏れ出ることが確実に防止される。
【0073】
また、第2のシールリング32の前後差圧がバックアップシール手段60の第3のシールリング61により抑えられるとともに、第3のシールリング61の前後差圧も抑えられることから、各シールリング32、61の前後差圧に応じて変化し得る大気側へのシールエアの漏れ流量が、静圧ガスシール手段40およびバックアップシール手段60の協働により有効に制限される。
【0074】
しかも、本実施形態では、ケーシング10に、エンジン110の排ガスの一部を導入可能なガス通路11が形成されており、そのガス通路11に連通する軸穴12に回転軸21が挿通されてインペラ22が支持され、ガス通路11に導入した排気ガスをエンジン110に再循環可能に昇圧させるブロワ構成となっているので、NOx等の排出量の低減のためにエンジン110の排気を再循環させることができるEGRブロワ133に好適なものとなる。
【0075】
さらに、本実施形態では、第1、第2のシールリング31、32のうち少なくとも大気側の第2のシールリング32が、複数の円弧状のセグメントシール部材51で構成されているので、複数のセグメントシール部材51の内周面形状や端部形状に応じてそれらの間の微小隙間Ec、Ed等を適宜の形状やサイズに設定でき、第2のシールリング32の微小隙間を通過するシールエアの漏れ流量および第2のシールリング32の前後差圧を安定確保可能となる。
【0076】
加えて、本実施形態では、バックアップシール手段60が第3のシールリング61を径方向の外側および軸方向の外側から覆う外付け環状部材63と、第3のシールリング61を外付け環状部材63に密接するよう回転軸21の軸方向に付勢する弾性部材64とを有しているので、第3のシールリング61および外付け環状部材63によって補助シール室62を容易に形成できるとともに、第3のシールリング61の安定したシール姿勢を設定可能となり、運転中のシールエアの大気側への漏れをより有効に低減可能となる。
【0077】
また、本実施形態では、外付け環状部材63が軸封ボックス33に対しガス通路11から離隔する軸方向外方側に着脱可能に結合されているので、既存のブロワに、第3のシールリング61および外付け環状部材63を容易に追加することができる。
【0078】
さらに、本発明の好ましい実施形態は、軸封ボックス33に対しガス通路11から離隔する軸方向外方側に回転軸21を回転駆動するモータ70が配置されており、ケーシング10とモータ70のケース72とが一体に連結されているので、コンパクトなEGRブロワ133を作製可能となる。
【0079】
加えて、本実施形態では、外付け環状部材63より軸方向の外側の回転軸21上に、外付け環状部材63の内周径(図2中の半径R1に対応する穴径(2R1))より大径の円環板状の振切板81が配置されているので、補助シール室62から軸方向の外側に漏れ出るシールエアを振切板81によって周囲の塵埃などと共に放射外方向に振り切ることができ、モータ70側への塵埃の侵入を有効に抑制することができる。
【0080】
このように、本実施形態においては、EGRブロワ133の軸穴12を閉塞するメカニカルシール方式のシール装置30が、軸穴12の近傍で回転軸21を取り囲む環状の第1および第2のシールリング31、32と、第1および第2のシールリング31、32を取り囲む環状壁部33aとその環状壁部33aに対し回転軸21の軸方向の両側で一体に結合する一対の内側壁部33b、33cとを有する環状の軸封ボックス33と、軸封ボックス33内にガス通路11内以上に高圧のシールエアを導入するとともに第1および第2のシールリング31、32を一対の内側壁部33b、33cに密接させた主シール室42を形成し、ガス通路11から大気側への排ガスの漏れを防止する静圧ガスシール手段40と、軸封ボックス33に対しガス通路11から離隔する軸方向外方側で回転軸21を取り囲む環状の第3のシールリング61を有し、主シール室42から大気側へのシールエアの漏れを制限する補助シール室62を形成するバックアップシール手段60とを含んでいる構成となっている。
【0081】
したがって、EGRブロワ133内の排ガスがガス通路11側から船舶内の大気側への漏れるのを静圧ガスシール手段40の加圧されたシールエアによって有効に抑制できるとともに、シールエアの大気側への漏れ量を静圧ガスシール手段40およびバックアップシール手段60の協働により十分に低減させることができる。
【0082】
なお、上述の一実施形態に係るEGRブロワ133においては、回転軸21がモータ70の出力軸71に一体に締結されるものとしていたが、図5に示すように、回転軸21がのモータ70の出力軸71に一体に締結される略円筒体23とは別に、略円筒体23の外周面上に回り止め固定されたシール専用の回転スリーブ27を有しており、その回転スリーブ27に、シールリング31、32、61との摺動に対する摩擦抵抗が小さく、かつ、耐摩耗性に優れた摺動面を形成する表面処理部27aが設けられるような構成とすることも可能である。
【0083】
また、上述の一実施形態では、シールリング31、32、61はすべて同一の分割シール構造を有するものとしたが、第1のシールリング31または第3のシールリング61が第2のシールリング32とは異なるシール構造であってもよいことはいうまでもない。さらに、一実施形態ではエンジン110を船舶用としたが、本発明は、船舶用以外の大型の機関、例えば発電機を動作させるための定置機関等であって、その発電機および定置機関等が相対的に狭い空間内に設置されるような場合にも、適用可能である。
【0084】
以上説明したように、本発明は、シールエア供給源の消費動力を抑えることができるブロワを提供することができ、併せて、船舶用のエンジンのEGRブロワに好適なブロワを提供することができるものであり、大型のエンジンの排気再循環システムに好適なブロワ全般に有用である。
【符号の説明】
【0085】
10 ケーシング
11 ガス通路
12 軸穴
21 回転軸
22 インペラ
30 シール装置
31 第1のシールリング
32 第2のシールリング
33 軸封ボックス
33a 環状壁部
33b、33c 一対の内側壁部
34h シールエア通路
40 静圧ガスシール手段
42 主シール室
45 シールエア供給回路
51 セグメントシール部材
51a 第1対向面
51b 第2対向面
51e、61e 漏れ通路
60 バックアップシール手段
61 第3のシールリング
62 補助シール室
63 外付け環状部材
63a 内側壁部
64 弾性部材
65 ハーメティカルシール
70 モータ
71 出力軸
81 振切板
100 動力システム
103 給気レシーバ
104 排気レシーバ
110 エンジン
120 ターボ過給機
130 EGR装置
133 EGRブロワ
Ec 微小隙間
Ed 摺動隙間
Lc 過給通路
Le 再循環経路
P1 圧力(主シール室内の圧力)
P2 圧力(補助シール室内の圧力)
P3 大気圧

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5