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特許7319653排ガス処理方法、排ガス処理システムおよび排ガス処理システムを備える船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】排ガス処理方法、排ガス処理システムおよび排ガス処理システムを備える船舶
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/04 20060101AFI20230726BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230726BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230726BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20230726BHJP
   B01D 53/90 20060101ALI20230726BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230726BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20230726BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20230726BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20230726BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F01N3/04 ZAB
F01N3/08 B
F01N3/08 G
F01N3/24 T
B01D53/86 222
B01D53/90
B01D53/94 222
B01D53/94 400
B01D53/50 220
B01D53/78
B01D53/92 215
B01D53/92 331
B01J35/02 P
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019061180
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159317
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 武行
(72)【発明者】
【氏名】西尾 澄人
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-068735(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094915(WO,A1)
【文献】特開2017-180157(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054607(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/04
F01N 3/08
F01N 3/24
B01D 53/86
B01D 53/90
B01D 53/94
B01D 53/50
B01D 53/78
B01D 53/92
B01J 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物および硫黄酸化物を処理する排ガス処理方法であって、
前記排ガスに含まれる前記窒素酸化物を、貯留手段から供給される脱硝還元剤を前記排ガスの熱により分解させたアンモニアを用いて選択的還元触媒により脱硝し、
脱硝後に、前記選択的還元触媒による脱硝反応により温度が上昇した前記排ガスの熱を用いて前記貯留手段から別途供給される前記脱硝還元剤からアンモニアを発生させ、
別途供給された前記脱硝還元剤から発生させた前記アンモニアを水に溶解したアンモニア水に前記硫黄酸化物を吸収させて脱硫を行うことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
別途供給される前記脱硝還元剤から前記アンモニアを発生させるに当り、前記脱硝還元剤からの前記アンモニアの発生を促進する脱硝還元剤分解触媒を用いることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記脱硝還元剤分解触媒を前記排ガスの熱を利用して加熱することを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記脱硝還元剤は、脱硝還元剤水溶液として脱硝及び脱硫に利用し、前記脱硝還元剤水溶液は、前記燃焼機関の近傍において、前記脱硝還元剤の粉末を水に溶解させて調整することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排ガス処理方法。
【請求項5】
前記脱硝還元剤水溶液を、前記脱硝のための還元剤として使用する及び/または前記脱硫のために前記アンモニアを発生させるに当たり、加熱して供給することを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記脱硝還元剤水溶液は蒸気とともに用いることで加熱することを特徴とする請求項5に記載の排ガス処理方法。
【請求項7】
前記蒸気を、前記排ガスの熱を利用して発生させることを特徴とする請求項6に記載の排ガス処理方法。
【請求項8】
前記脱硝還元剤として、尿素を用いることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の排ガス処理方法。
【請求項9】
前記窒素酸化物の処理および前記硫黄酸化物の処理のため供給する前記脱硝還元剤の比率を、前記燃焼機関の排ガス規制への対応レベルに応じて変更することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の排ガス処理方法。
【請求項10】
前記燃焼機関が過給器を利用し、前記過給器の駆動力を前記選択的還元触媒よりも上流側で取り出すことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に排ガス処理方法。
【請求項11】
燃焼機関から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物および硫黄酸化物を処理する排ガス処理システムであって、
前記排ガスに含まれる前記窒素酸化物を、貯留手段から供給される脱硝還元剤を前記排ガスの熱により分解させたアンモニアを用いて選択的還元触媒により脱硝する脱硝手段と、
脱硝後に、前記選択的還元触媒による脱硝反応により温度が上昇した前記排ガスの熱を用いて前記貯留手段から別途供給される前記脱硝還元剤からアンモニアを発生させるアンモニア生成手段と、
前記アンモニア生成手段で別途供給された前記脱硝還元剤から発生させた前記アンモニアを水に溶解したアンモニア水に前記硫黄酸化物を吸収させて脱硫を行う脱硫手段と
を備えたことを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項12】
前記アンモニア生成手段は、別途供給される前記脱硝還元剤からの前記アンモニアの発生を促進する脱硝還元剤分解触媒を有することを特徴とする請求項11に記載の排ガス処理システム。
【請求項13】
前記アンモニア生成手段は、前記脱硝還元剤分解触媒を前記排ガスの熱を利用して加熱することを特徴とする請求項12に記載の排ガス処理システム。
【請求項14】
前記脱硝還元剤を脱硝還元剤水溶液として利用するに当り、前記脱硝還元剤の粉末を水に溶解させて調整する前記燃焼機関の近傍に設けた脱硝還元剤水溶液調整手段を有することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の排ガス処理システム。
【請求項15】
前記脱硝還元剤水溶液を、前記脱硝手段及び/または前記アンモニア生成手段に供給する際に、加熱して供給することを特徴とする請求項14に記載の排ガス処理システム。
【請求項16】
前記脱硝還元剤水溶液の供給時に前記脱硝還元剤水溶液と蒸気を合わせて供給する二流体供給手段を有することを特徴とする請求項15に記載の排ガス処理システム。
【請求項17】
前記蒸気を前記排ガスの熱を利用して発生させる蒸気発生手段を有することを特徴とする請求項16に記載の排ガス処理システム。
【請求項18】
前記脱硝還元剤として、尿素を用いることを特徴とする請求項11から請求項17のいずれか1項に記載の排ガス処理システム。
【請求項19】
前記窒素酸化物の処理および前記硫黄酸化物の処理のため供給する前記脱硝還元剤の比率を前記燃焼機関の排ガス規制への対応レベルに応じて変更する比率変更手段を備えたことを特徴とする請求項11から請求項18のいずれか1項に記載の排ガス処理システム。
【請求項20】
前記排ガスにより駆動され前記燃焼機関に過給空気を供給する過給器を有し、前記過給器を前記選択的還元触媒よりも上流側に設けることを特徴とする請求項11から請求項19のいずれか1項に記載の排ガス処理システム。
【請求項21】
請求項11から請求項20のいずれか1項に記載の排ガス処理システムを有する船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機関から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物および硫黄酸化物を処理する排ガス処理方法、排ガス処理システムおよび排ガス処理システムを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関などの燃焼機関から排出される排ガスには、窒素酸化物NOxおよび硫黄酸化物SOxが含まれる場合が多く、これら有害物質を除去する必要がある。
【0003】
窒素酸化物を処理する代表的な方法として選択触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)脱硝装置がある。この装置は排ガス中にアンモニアを供給し、アンモニアと窒素酸化物とをSCR脱硝触媒上で反応させ、窒素と水とに還元させるものである。
【0004】
ここで、アンモニアは毒性があるため、代わりに安全な尿素が多く使われる。すなわち、尿素を排ガス中に供給すれば、排ガスの熱により加水分解等化学反応してアンモニアが発生するのでアンモニアの代わりに尿素を用いることができる。特許文献1では、脱硝還元剤として尿素水を使用する。
【0005】
また、硫黄酸化物を処理する代表的な方法として湿式脱硫装置がある。この装置はアルカリ性の吸収剤(水溶液)を排ガスに循環噴霧し、排ガス中のSOx成分を中和し塩にして吸収剤に吸収させることで、SOx成分を排ガスから除去する。アルカリ性の吸収剤は、一般的には水酸化ナトリウム水や水酸化マグネシウム水が用いられる。しかし、これらは、皮膚に付着すると化学やけどを生じるなど、取扱いには十分な注意が必要である。
【0006】
このように、ディーゼル機関などの燃焼機関からの排ガスの処理においては、窒素酸化物と硫黄酸化物の両方を処理しなければならない。
【0007】
特許文献2では、黄リンの水性エマルジョンを用いて、窒素酸化物と硫黄酸化物の両方を単一の方法で処理することを提案する。
【0008】
特許文献3,4では、脱硝においてアンモニアを過剰に供給し、残留するアンモニアを用いて脱硫を行うことが提案されている。また、アンモニアに代えて、尿素を使用することについても記載がある。特許文献5には、多段の脱硝装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開WO2014/054607号公報
【文献】特表平4-502121号公報
【文献】特表2014-513231号公報
【文献】特表2017-506716号公報
【文献】特開2017-180157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、燃焼機関から排出される排ガスについて、なるべく安全な薬剤を使用し、窒素酸化物および硫黄酸化物の両方を効果的に処理したいという要求がある。
【0011】
本発明は、燃焼機関の排ガスに含まれる窒素酸化物と硫黄酸化物の処理に必要な薬剤を同一のものにすることで薬剤に関わる作業量を軽減するとともに、窒素酸化物と硫黄酸化物を効果的に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1係る排ガス処理方法は、燃焼機関から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物および硫黄酸化物を処理する排ガス処理方法であって、前記排ガスに含まれる前記窒素酸化物を、貯留手段から供給される脱硝還元剤を前記排ガスの熱により分解させたアンモニアを用いて選択的還元触媒により脱硝し、脱硝後に、前記選択的還元触媒による脱硝反応により温度が上昇した前記排ガスの熱を用いて前記貯留手段から別途供給される前記脱硝還元剤からアンモニアを発生させ、別途供給された前記脱硝還元剤から発生させた前記アンモニアを水に溶解したアンモニア水に前記硫黄酸化物を吸収させて脱硫を行うことを特徴とする。
【0013】
このように、燃焼機関からの排ガスをまず脱硝する。脱硝反応は発熱反応であり、脱硝により排ガスの温度を上昇することができ、脱硫の際に脱硝還元剤からのアンモニア発生を効果的に行うことができる。
【0014】
別途供給される前記脱硝還元剤から前記アンモニアを発生させるに当り、前記脱硝還元剤からの前記アンモニアの発生を促進する脱硝還元剤分解触媒を用いるとよい。熱分解によるアンモニアの発生に比べ排ガス温度が低温でも確実にアンモニアを発生することができる。
【0015】
前記脱硝還元剤分解触媒を前記排ガスの熱を利用して加熱するとよい。
【0016】
前記脱硝還元剤は、脱硝還元剤水溶液として脱硝及び脱硫に利用し、前記脱硝還元剤水溶液は、前記燃焼機関の近傍において、前記脱硝還元剤の粉末を水に溶解させて調整するとよい。燃焼機関の近傍には、通常その冷却水を生成するために清水の生成装置があり、この清水を使用して、脱硝還元剤の粉末から水溶液を調整することができる。
【0017】
前記脱硝還元剤水溶液を、前記脱硝のための還元剤として使用する及び/または前記脱硫のために前記アンモニアを発生させるに当たり、加熱して供給するとよい。
【0018】
前記脱硝還元剤水溶液は蒸気とともに用いることで加熱するよい。
【0019】
前記蒸気を、前記排ガスの熱を利用して発生させるとよい。例えば、排ガスエコノマイザによって生成した蒸気を用いることで、排ガスの熱を回収利用することができる。
【0020】
前記脱硝還元剤として、尿素を用いるとよい。尿素は、安全でかつ安価である。
【0021】
前記窒素酸化物の処理および前記硫黄酸化物の処理のため供給する前記脱硝還元剤の比率を、前記燃焼機関の排ガス規制への対応レベルに応じて変更するとよい。
【0022】
前記燃焼機関が過給器を利用し、前記過給器の駆動力を前記選択的還元触媒よりも上流側で取り出すとよい。
【0023】
請求項11に係る排ガス処理システムは、燃焼機関から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物および硫黄酸化物を処理する排ガス処理システムであって、前記排ガスに含まれる前記窒素酸化物を、貯留手段から供給される脱硝還元剤を前記排ガスの熱により分解させたアンモニアを用いて選択的還元触媒により脱硝する脱硝手段と、脱硝後に、前記選択的還元触媒による脱硝反応により温度が上昇した前記排ガスの熱を用いて前記貯留手段から別途供給される前記脱硝還元剤からアンモニアを発生させるアンモニア生成手段と、前記アンモニア生成手段で別途供給された前記脱硝還元剤から発生させた前記アンモニアを水に溶解したアンモニア水に前記硫黄酸化物を吸収させて脱硫を行う脱硫手段とを備えたことを特徴とする。
【0024】
前記アンモニア生成手段は、別途供給される前記脱硝還元剤からの前記アンモニアの発生を促進する脱硝還元剤分解触媒を有するとよい
【0025】
前記アンモニア生成手段は、前記脱硝還元剤分解触媒を前記排ガスの熱を利用して加熱するとよい。
【0026】
前記脱硝還元剤を脱硝還元剤水溶液として利用するに当たり、前記脱硝還元剤の粉末を水に溶解させて調整する前記燃焼機関の近傍に設けた脱硝還元剤水溶液調整手段を有するとよい。
【0027】
前記脱硝還元剤水溶液を、前記脱硝手段及び/または前記アンモニア生成手段に供給する際に、加熱して供給するとよい。
【0028】
前記脱硝還元剤水溶液の供給時に前記脱硝還元剤水溶液と蒸気を合わせて供給する二流体供給手段を有するとよい。
【0029】
前記蒸気を前記排ガスの熱を利用して発生させる蒸気発生手段を有するとよい。
【0030】
前記脱硝還元剤として、尿素を用いるとよい。
【0031】
前記窒素酸化物の処理および前記硫黄酸化物の処理のため供給する前記脱硝還元剤の比率を前記燃焼機関の排ガス規制への対応レベルに応じて変更する比率変更手段を備えるとよい。
【0032】
前記排ガスにより駆動され前記燃焼機関に過給空気を供給する過給器を有し、前記過給器を前記選択的還元触媒よりも上流側に設けるとよい。
【0033】
請求項21に係る船舶は、上記排ガス処理システムを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、脱硝還元剤を、脱硝および脱硫に用いることで、脱硝還元剤についての作業の効率化や供給の簡素化を図ることができる。また、脱硝を脱硫の前に行うことで、脱硝反応によって発生した熱を脱硫の際の脱硝還元剤の分解に利用することができ、また脱硝における反応を脱硫から独立して制御することができる。
【0035】
脱硝還元剤分解触媒を用いて、脱硫用のアンモニア発生を行うことで、比較的低温でもアンモニアの発生を確実に行うことができる。また、脱硝還元剤分解触媒を排ガスで加熱することでアンモニアの発生を効果的に行うことができる。
【0036】
脱硝還元剤を粉末で貯蔵することで、貯蔵場所をコンパクトにできる。また、燃焼機関の近傍において溶解することで、燃焼機関の冷却水を利用して生成した清水を使用することができる。
【0037】
また、脱硝還元剤の水溶液を加熱することでアンモニアを発生することができ、特に排ガス処理において生成した蒸気を用いる二流体供給により効率的なアンモニア発生が行える。
【0038】
脱硝還元剤として、尿素を用いることで、安全かつ低コストの排ガス処理が行える。
【0039】
排ガス対応レベルに応じて、脱硝還元剤の供給を変更することで、適切な排ガス処理が行える。
【0040】
過給器を脱硝の上流側に設けることで、過給器に脱硝に伴う不純物が析出することが無くなり、効果的な排ガス処理が行える。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】排ガス処理システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】尿素分解触媒を利用する還元剤供給部16の構成例を示す図である。
図3】還元剤供給部と脱硝装置のセットを複数直列に接続して構成した多段脱硝装置の構成を示す図である。
図4】排ガスエコノマイザを設けた構成例を示す図である。
図5】蒸気と尿素水を混合して噴出させるための二流体供給型の混合ノズルの構成例を示す図である。
図6】脱硝装置を過給器の前段に配置した構成例を示す図である。
図7】好適な排ガス処理システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0043】
「システム構成」
図1は、実施形態に係る排ガス処理方法を実施する排ガス処理システムの全体構成を示すブロック図である。燃焼機関12は、エンジンやガスタービンなどの内燃機関、例えば船舶の主機関としてのディーゼル機関である。このディーゼル機関は、通常2サイクルまたは4サイクルである。
【0044】
燃焼機関12からの排ガスは、過給器14に導入される。過給器14は、ターボチャージャとも呼ばれ、排ガスの流れを受けて回転するタービンを利用して、燃焼機関12へ供給する空気の圧力を上昇して、燃焼機関12に過給空気を供給する。
【0045】
過給器14からのガスは還元剤供給部16に供給される。還元剤供給部16には、脱硝還元剤タンク18からの脱硝還元剤が供給される。ここで、この脱硝還元剤としては、熱によって分解されアンモニアが発生する尿素が好適である。尿素は化粧品に用いられる等安全であり、既に大型トラックやバスに取り付けられているSCR脱硝装置用の還元剤として大量に販売されているため、価格も比較的安い。また、食品の膨張剤として用いられている、炭酸水素アンモニウムも熱により分解され、アンモニア(および二酸化炭素と水)が発生する。そのため、尿素の代わりに炭酸水素アンモニウムを脱硝還元剤として用いることができる。なお、脱硝還元剤としては、尿素、炭酸水素アンモニウムの他、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム等があげられる。
【0046】
ここで、脱硝還元剤タンク18には、脱硝還元剤の水溶液が貯留され、水溶液が排ガス中に噴霧される。例えば、脱硝還元剤水溶液を空気と混合して排ガス流路内に噴射する。排ガスは高温であり、この排ガスの熱によって、尿素や炭酸水素アンモニウムなどの脱硝還元剤が分解されてアンモニアが発生する。尿素の場合、化学式(1)のような加水分解反応で、アンモニアと二酸化炭素が発生する。
【0047】
[化1]
(NHCO+HO→2NH+CO
【0048】
還元剤供給部16において、尿素水から発生したアンモニアを含む排ガスは、脱硝装置(脱硝手段)20に導入される。脱硝装置20は、選択的還元触媒を用いるSCR脱硝装置であり、排ガス流路に脱硝触媒を設け、この脱硝触媒の存在下、アンモニアと窒素酸化物を反応させて、窒素酸化物を窒素に還元する。例えば、チタン・バナジウム系の触媒を用いて、化学式(2)のような反応を生起する。例えば、窒素酸化物がNOであれば、1モルのNOを還元するのに、1モルのアンモニア(0.5モルの尿素)が必要になる。
【0049】
[化2]
4NO+4NH+O→4N+6H
6NO+8NH→7N+12H
【0050】
なお、脱硝装置20は、その反応面積を広くするために各種の充填剤を充填したり、ハニカム構造にしたりするとよい。すなわち、充填剤や、ハニカム流路の表面に触媒を担持することによって、触媒の表面においてアンモニアと窒素酸化物が接触しやすくすることができる。
【0051】
なお、還元剤供給部16と、脱硝装置20を別の部材として記載したが、これらを一体化し、脱硝装置20内に尿素などの脱硝還元剤を供給してもよい。
【0052】
脱硝装置20において、窒素酸化物が還元除去された排ガスは、アンモニア生成部(アンモニア生成手段)22に導入される。このアンモニア生成部22は、上述した還元剤供給部16と同様の構成であり、脱硝還元剤タンク18から尿素などの脱硝還元剤が供給され、排ガスの熱によって吸収剤としてのアンモニアと二酸化炭素が発生される。
【0053】
アンモニア生成部22によりアンモニアが混合された排ガスは、スクラバ(脱硫手段)26に供給される。このスクラバ26は、湿式の脱硫装置であり、吸収塔に吸収剤としてのアンモニア水を循環して、排ガス中の硫黄酸化物を塩(例えば硫酸アンモニウム)として液側に除去する。例えば、排気ガスに含まれる二酸化硫黄(SO)は、アンモニアと反応して、化学式(3)で示される反応によって酸性硫安((NH)HSO)や硫酸アンモニウム((NHSO)が生成される。硫酸アンモニウムが生成される場合、1モルに対し2モルのアンモニア(1モルの尿素)が必要になる。
【0054】
[化3]
SO+(1/2)O+NH+HO→(NH)HSO
SO+(1/2)O+2NH+HO→(NHSO
【0055】
ここで、アンモニア生成部22内に脱硝還元剤を供給することでアンモニアを発生させて、このアンモニアをスクラバ26内の循環液に溶け込ませ、SOxの吸収剤として用いることが好適である。
【0056】
スクラバ26において、脱硫処理が行われた排ガスは、同時にスクラバ26内にて水洗浄などを行い、ばいじん粒子や残留する汚染物質などを除去する。そして、スクラバ26からの処理済みガスが大気に放出される。
【0057】
このように、本実施形態によれば、窒素酸化物の処理に必要な薬剤と硫黄酸化物の処理に必要な薬剤を、同一の脱硝還元剤としている。このため、薬剤充填作業が1回で済む等、薬品に関わる作業を効率化することができる。また、脱硝装置20の下流に脱硫用の脱硝還元剤の供給箇所(アンモニア生成部22)を設置する。脱硫用のアンモニア発生箇所であるアンモニア生成部22を脱硝装置20より上流に設置してしまうと、脱硝装置20中の脱硝還元剤の当量比が過大となりやすく、その結果SCR脱硝触媒の劣化を助長してしまう可能性があるが、本実施形態ではこれを避けることができる。また、脱硝装置20における脱硝反応は発熱反応であり、後段のアンモニア生成部22における温度を比較的高くすることができる。
【0058】
また、脱硝還元剤として尿素や炭酸水素アンモニウムなど安全な薬剤を使用することで、作業の安全化を図ることができる。
【0059】
「温度について」
ここで、本実施形態では、燃焼機関12としては、船舶用ディーゼル機関を対象としているが、船舶用ディーゼル機関については、4サイクルディーゼル機関と、2サイクルディーゼル機関があり、両者において排ガス温度が異なる。
【0060】
4サイクルディーゼル機関の過給器14後の排ガス温度は300℃程度である。脱硝装置20における脱硝反応は、発熱反応である。従って、脱硝装置20から排出されるガスの温度は320℃程度に上昇する。一方、アンモニア生成部22における反応は吸熱反応である。従って、アンモニア生成部22からの排ガス温度は280℃程度になる。
【0061】
2サイクルディーゼル機関の過給器14後の排ガス温度は220℃程度である。従って、脱硝装置20から排出されるガスの温度は240℃程度に上昇する。また、アンモニア生成部22からの排ガス温度は200℃程度になる。
【0062】
このように、2サイクルディーゼル機関では、排ガス温度が比較的低い。本実施形態では、脱硝装置20をアンモニア生成部22の上流側に配置する。脱硝反応は発熱反応であり、脱硝装置20において、排ガス温度の上昇が見込める。よって、脱硫用の尿素水等の供給箇所であるアンモニア生成部22を脱硝装置20よりも下流に設置することで、脱硝反応で得た排ガス温度上昇を、脱硫用の脱硝還元剤のアンモニアへの変化に有効活用できる。
【0063】
「尿素水の供給」
脱硝還元剤としては、安全面、コスト面から尿素が好適である。尿素は尿素水として、脱硝還元剤タンク18に貯留され、ポンプなどを利用して適切な量を還元剤供給部16およびアンモニア生成部22に供給する。供給量は予めポンプ出力に対して流量計で尿素水流量を計測してマップを作成しておき、マップに基づきポンプを制御するとよい。尿素水は、例えば40%、75%などの一定の濃度とする。
【0064】
ここで、SOxを1モル脱硫するのに必要な尿素は1モル、NOxを1モル脱硝するのに必要な尿素は0.5モルである。燃料中の硫黄分が3.5%の場合、排ガス中にはSOxがおおよそ800ppm含まれる。国際海事機関(IMO)のNOx規制に対応していない舶用ディーゼル機関においては、排ガス中のNOxは約2000~2500ppm、IMOのNOx1次規制や2次規制に後処理装置を使用せずに対応する舶用ディーゼル機関では約600~1000ppmであるので、脱硫に必要な尿素水と脱硝に必要な尿素水の比率は、IMOのNOx規制に対応していない舶用ディーゼル機関においてはおおよそ2:3、IMOのNOx1次規制や2次規制に後処理装置を使用せずに対応する舶用ディーゼル機関ではおおよそ2:1である。このように、排ガス規制への対応レベルに応じて排ガス中の窒素酸化物、硫黄酸化物の比率が異なる。また、排ガス中のSOx濃度は燃料の硫黄分によって変化し、排ガス中のNOx濃度は舶用ディーゼル機関の出力によって変化する。さらに航行区域によってもNOx規制値やSOx規制値は異なる。そのため、航行区域の排ガス規制状況や舶用ディーゼル機関の対応レベル及びその出力、燃料の硫黄分等に応じて尿素の供給比率を比率変更手段(図示せず)で変更するとよい。
【0065】
従って、脱硝還元剤としての尿素水は、脱硝用の還元剤供給部16とアンモニア生成部22とでその量を変更するとともに、ディーゼル機関がIMOのNOx規制に対応しているかどうか、使用する燃料、及び、航行区域内で定められているNOx及びSOx規制、さらにディーゼル機関の出力によって比率を変更する。
【0066】
また、排ガス中にSOxが含まれ、かつ、排ガス温度が約350℃以下の場合、脱硝に用いるSCR脱硝触媒が劣化する可能性があり、その劣化度合いは還元剤である尿素の加水分解後のアンモニアの当量比に対し指数関数的にひどくなる。このため、脱硝においては尿素水の噴霧量を必要最小限に抑える。すなわち、アンモニア量がNOxに対し当量となるように尿素水供給量を制御する。また、上流側の方が排ガスの温度が高いため、アンモニア生成部22よりも上流側に脱硝装置20を設置する。
【0067】
燃焼機関12とその出力、および供給する燃料が特定されれば、排ガス中に排出される窒素酸化物、硫黄酸化物の量も決定され、それにより航行区域内で定められているNOx及びSOx規制に対応した、還元剤供給部16、アンモニア生成部22への尿素水の供給量を決定することができる。従って、制御装置を設け、燃料供給量に対し、尿素水供給量を決定し、還元剤供給部16、アンモニア生成部22への尿素水の供給を制御するとよい。
【0068】
「脱硫用の脱硝還元剤分解触媒」
脱硝用の還元剤供給部16や脱硫用のアンモニア生成部22において、尿素の分解を促進する脱硝用還元剤分解触媒を利用することが好適である。尿素分解触媒の具体例は、特許文献1などに示されており、(1)酸化チタン系触媒、(2)ゼオライト系触媒、(3)金属酸化物微粒子付着触媒などがある。また、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムについては、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、カルシア、マグネシア、チタニア等の触媒が、またカルバミン酸アンモニウムについては、貴金属系のアンモニア分解触媒などを利用することができる。
【0069】
脱硝還元剤の尿素水等は排ガスの熱によりアンモニアに変化するが、例えば尿素水は排ガスの温度が低いとアンモニア以外の、イソシアン酸等の副生成物が発生する問題がある(なお、イソシアン酸はSCR脱硝触媒の表面上では脱硝反応に還元剤として寄与する)。尿素分解性能を持つ触媒の存在下であれば、排ガス温度が低くても尿素水は全てアンモニアに変化する。このため、とりわけ脱硫用の脱硝還元剤の供給は尿素分解性能を持つ尿素分解触媒の存在下で行うことが好適である。
【0070】
ここで、尿素分解触媒が排ガス中の成分(SOx、すす等)によって被毒等の影響を受ける場合がある。図2は、尿素分解触媒を利用する還元剤供給部16やアンモニア生成部22の間接加熱方式での構成例を示す。過給器14からの排ガスは、管状の流路30内を流れる。流路30の内部には流路30から隔離された隔離室32が形成されている。隔離室32の周囲には、排ガス流通部34が位置している。なお、隔離室32は、同心状に配置された管路であり、流路30の内壁から支持材で支持されることが好適である。
【0071】
隔離室32の内部には尿素分解触媒36が配置されている。例えば、ハニカム構造などで、触媒の表面積が大きくされているとよい。そして、尿素分解触媒36の上流側には、混合ノズル40が設置されており、ここに空気と尿素水が供給され、尿素分解触媒36に向けて噴出される。
【0072】
また、隔離室32の下流側および排ガス流通部34の下流側は、流路によって脱硝装置20に供給される。なお、還元剤供給部16内で両者を混合しても構わない。
【0073】
このように、尿素分解触媒36と尿素水の供給部分をまとめて密閉構造とし、排ガス流れ内に設置することによって、排ガスの廃熱を利用しつつ尿素分解触媒36が排ガス中の成分に影響を受けないようにできる。
【0074】
なお、低温で尿素水がアンモニアに分解するときに発生する、主要な副生成物であるイソシアン酸は、上述の通りSCR脱硝触媒の表面上では還元剤として脱硝反応に寄与する。そのため、還元剤供給部16においては図2のような間接加熱方式を用いず、さらに尿素分解触媒も用いず、排ガスに直接尿素水を噴霧する方法でもよい。
【0075】
「脱硝装置の多段構成」
上述したように、2サイクルディーゼル機関の過給器14後の排ガス温度は220℃程度とかなり低い。このような低温条件において、排ガス中にSOxが含まれていると脱硝装置20のSCR脱硝触媒が劣化しやすい。
【0076】
そこで、特許文献5に示されるように、脱硝装置20を複数直列に接続する多段構成とすることが好適である。図3には、還元剤供給部16と脱硝装置20のセットを複数直列に接続して構成した多段脱硝装置200の構成を示してある。この構成では、各還元剤供給部16における脱硝還元剤の供給量を窒素酸化物の除去に必要な当量の0.8以下にする。このような構成によって、1つの脱硝装置20での窒素酸化物の還元処理は不十分であるが、トータルとしては十分な処理を行いつつ、SCR脱硝触媒の劣化を抑制することができる。
【0077】
「尿素水について」
尿素水は、市販のものを購入しても良く、あるいは、尿素粉末を用いて船内で調製してもよい。粉末を用いることで、その貯蔵場所が小さくて済むというメリットがある。なお、尿素は、粉末でも安全である。
【0078】
また、船舶用ディーゼル機関などの燃焼機関では、その冷却水に海水から生成した清水を使用する。従って、燃焼機関の近傍では清水の生成装置があり、清水の利用が容易である。そこで、尿素粉末の溶解装置(脱硝還元剤水溶液調整手段)は、燃焼機関の近傍に設置することが好ましい。
【0079】
また、粉末の尿素を用いる場合、尿素が水に溶ける時は吸熱反応となる。従って、尿素水温度が低下するため、必要に応じ熱源(燃焼機関の冷却水や排ガスエコノマイザからの蒸気等)を用いて加温するとよい。なお、50℃以上で有毒なアンモニアが発生するおそれがあるため、船内で尿素水を調製する場合、尿素水製造装置は密閉構造とする。例えば、密閉された撹拌タンク内に所定量の水と、尿素粉末を導入して、撹拌機で撹拌することで尿素粉末を溶解して尿素水を調整する。
【0080】
また、純度の低い尿素水あるいは尿素粉末を使用する場合、不純物が脱硝触媒や脱硫触媒に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、あらかじめ高純度化装置等を用いて純度を高めてから使用することが好ましい。
【0081】
「尿素水の排ガス内への供給方法について」
図4は、蒸気発生手段として排ガスエコノマイザ28を設けた構成例を示す。この例では、アンモニア生成部22の後段で、スクラバ26の前段に排ガスエコノマイザ28を設けている。排ガスエコノマイザ28は、熱交換器の1種であり、排ガスから熱を回収して清水から蒸気を生成し、生成した蒸気を各種用途に使用するものである。なお、燃焼機関12が2サイクルディーゼル機関の場合、排ガスエコノマイザ28へ流入してくる排ガス温度が200℃程度であり、得られる蒸気温度も200℃程度になり、排ガスエコノマイザ28から排出されるガス温度は160℃程度になる。
【0082】
ここで、上述したように、尿素水の加水分解は吸熱反応であり、温度が低いとアンモニア以外の副生成物が発生して尿素水出口近傍を初めとして排ガス配管、触媒等に付着し、問題が発生するおそれがある。そのため、尿素水の加水分解時の温度低下をできるだけ避けたいという要求がある。
【0083】
図4では、排ガスエコノマイザ28においては、生成した蒸気をアンモニア生成部22に供給することで、尿素水の加水分解時の温度低下を抑制する。すなわち、蒸気を混合することで供給する尿素水の温度が上昇されるため、アンモニア生成部22の尿素水の加水分解時の温度を上昇することができる。例えば、燃料流量の10%程度の尿素水を供給する場合、その温度を200℃程度に向上することができ、尿素水の加水分解時の温度低下が避けられ、結果副生成物の発生の可能性が小さくなる。
【0084】
図5は、蒸気と尿素水を混合して噴出させるための二流体供給型の混合ノズル(二流体供給手段)40の構成例を示す。混合ノズル40は、外筒42と内筒44の2重構造となっており、内筒44内が尿素水通路、両者の間隙が蒸気通路になっている。そして、外筒42と内筒44の先端部分の開口が隣接しており、ここから両者が混合されて噴出される。特に蒸気通路は先端部において内側に向けて傾斜しており、尿素水の流れに引き込まれ、ここで尿素水が蒸気となる。なお、混合ノズルの設計にもよるが、内筒44内が蒸気通路、両者の間隙が尿素水通路であってもよい。
【0085】
ここで、上述のように、尿素の加水分解には尿素分解触媒を用いることが好適であり、混合ノズル40からの尿素含有蒸気を尿素分解触媒と接触させることで尿素を加水分解してアンモニアを効果的発生することができる。特に、燃焼機関12が2サイクルディーゼル機関である場合、温度が200℃程度と比較的低いため、尿素分解触媒を用いることが好適である。
【0086】
脱硝装置20における脱硝反応は発熱反応であり、脱硫用の尿素分解触媒に比べ問題発生の可能性は少ないが、還元剤供給部16においても蒸気と尿素水との2流体供給としても良い。
【0087】
「脱硝装置の過給器前設置」
ここで、過給器14前の排ガスの温度は、燃焼機関12が2サイクルディーゼル機関であっても350℃~400℃であり、この温度範囲では排ガスにSOxが含まれていても脱硝装置20において使用するSCR脱硝触媒は劣化しない。このため、過給器14の前に脱硝装置20を設置することにより、多段脱硝システムを用いる必要はなくなり、脱硝装置の小型化が期待できる。
【0088】
図6は、脱硝装置20を過給器14の前段に配置した構成例、すなわち過給器の駆動力を脱硝装置20の後段で取り出す構成例を示す。このように、燃焼機関12の排ガスは、還元剤供給部16において尿素が供給されて脱硝装置20に供給され、比較的高温状態で脱硝される。そして、この排ガスが過給器14に供給される。
【0089】
このような構成では、脱硝装置20に流入する排ガスの温度は400℃程度、流出する排ガス温度は420℃、過給器14の流出排ガス温度は240℃となり、アンモニア生成部22に流入する排ガス温度は240℃程度となり、この排ガス温度は過給器14を前段に設けた場合と同様になる。
【0090】
ここで、脱硝装置20からの排ガス中には、脱硝時に発生しうる酸性硫安等が含まれ、過給器14通過時に冷却され、過給器14内部に付着する。従って、過給器14のタービンの回転が不安定となるおそれがある。これを避けるため、過給器14の内部について表面に付着防止用のコーティングを施すとよい。これによって、過給器14の内部における汚染物質の付着などを防止して、安定した機能を維持することが可能となる。なお、過給器14の内表面に、空気または水蒸気の噴出孔をもうけて、ここから噴出させることで、過給器14の内表面を空気または水蒸気で覆うことで、過給器14に内部に付着物が付着しないようにすることもできる。
【0091】
なお、この例では、排ガスエコノマイザ28を有しており、アンモニア生成部22では尿素水と蒸気との二流体供給を行っている。また、脱硝還元剤タンク18に尿素水などの脱硝還元剤水溶液を貯留してもよいが、粉末を溶解して水溶液を生成してもよい。
【0092】
「排ガス処理システムの構成例」
図7は、好適な排ガス処理システムの構成例を示す図である。燃焼機関(2サイクルディーゼル機関)12からの排ガス(400℃)は、過給器14を経由して、220℃程度で多段脱硝装置200に導入される。この多段脱硝装置200は、図3に示すような還元剤供給部16と脱硝装置20のセットを複数有するものである。脱硝還元剤タンク18は、尿素粉末を清水で溶解して尿素水を貯留する。脱硝還元剤タンク18からの尿素水は、多段脱硝装置200の各段の還元剤供給部16に供給される。還元剤供給部16は、図5に示されるような蒸気と尿素水の二流体供給を行う混合ノズルを含み、排ガス流路に供給されることでアンモニアが発生する。そして、これがSCR脱硝触媒からなる脱硝装置20に供給され、ここで脱硝反応が起こる。多段脱硝装置200からの脱硝された240℃程度の排ガスは、アンモニア生成部22に供給される。このアンモニア生成部22は、図2に示すような尿素水と分解触媒とを密閉室内で接触させてアンモニアを発生する装置であり、排ガスにより間接的に加熱される。また、尿素水は図5に示される混合ノズルにより上記とともに導入されるとよい。
【0093】
アンモニア生成部22からのアンモニアが混合された排ガスは、湿式の脱硫装置であるスクラバ26において排ガス中のアンモニアがスクラバ26の循環液に溶けることによって得られるアンモニア水によって、排ガス中のSOxが捕集される。脱硝され、さらにアンモニア生成部22でアンモニアが発生しアンモニアが混合された200℃程度の排ガスは排ガスエコノマイザ28で熱が回収され、160℃程度になった後スクラバ26で循環液であるアンモニア水によりSOxが吸収・除去されるとともに水洗処理されて排出される。排ガスエコノマイザ28からの蒸気は、上述したように、尿素水の供給の際に用いられる。
【0094】
このようなシステムにおいて、2サイクルディーゼル機関からの比較的低温の排ガスについて、効果的な脱硝、脱硫を行うことができる。
【0095】
なお、尿素水は脱硝用と脱硫用とは濃度を変えてもよく、また脱硝用還元剤タンク18を別に備え別系統としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
12 燃焼機関、14 過給器、16 還元剤供給部(間接加熱方式)、18 脱硝還元剤タンク、20 脱硝装置(脱硝手段)、22 アンモニア生成部(アンモニア生成手段)、26 スクラバ(脱硫手段)、28 排ガスエコノマイザ(蒸気生成手段)、30 流路、32 隔離室、34 排ガス流通部、36 尿素分解触媒、40 混合ノズル(に流体供給手段)、42 外筒、44 内筒、200 多段脱硝装置。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7