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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】フィンガーチャックの連結装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 13/02 20060101AFI20230726BHJP
   B23B 31/113 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B23B13/02 F
B23B31/113 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019109591
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020199614
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000127042
【氏名又は名称】株式会社アルプスツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 拓郎
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-177909(JP,U)
【文献】特開2006-239798(JP,A)
【文献】特開2004-276157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/02
B23B 31/113
F16B 21/04
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を保持するフィンガーチャックと、該フィンガーチャックを着脱自在に組み付けるスピンドルとを連結させる連結装置であって、
前記フィンガーチャックの後端又は前記スピンドルの先端の何れか一方に係合部材が取り付けられ、
前記スピンドル又は前記フィンガーチャックの何れか他方には、前記係合部材に挿入可能且つ係合可能に構成された係止軸部材を備え、
前記係止軸部材は、径方向に延びる係止部と、前記係合部材を軸方向に押圧する押圧部材とを備え、
前記係合部材は、前記係止軸部材を挿入可能な貫通孔と、前記係止部と係合可能なポケット部とを備え、
前記フィンガーチャックを周方向に回転させて前記ポケット部に前記係止部が係合することで前記フィンガーチャックと前記スピンドルとを連結し、
前記貫通孔は、前記係止部が挿通可能な係止部貫通部を備え、
前記係止部貫通部と前記ポケット部とは、周方向に略90°ずらされて配置され、
前記係止部貫通部と前記ポケット部とは、軸方向に傾斜するテーパ部を介して互いに連絡していることを特徴とする連結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の連結装置において、
前記ポケット部は、前記係合部材の前記フィンガーチャックの後端側に形成され、
前記フィンガーチャックの後端には前記係止軸部材との接触を防止する退避部が形成されることを特徴とする連結装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の連結装置において、
前記押圧部材は、弾性部材によって軸方向に押圧されると共に、前記係止軸部材に形成された鍔部に当接可能であることを特徴とする連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材供給機や棒材排出機におけるフィンガーチャックの連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
棒材供給機には、棒材を旋盤等の棒材加工機に送り込むためのフィードロッドが設けられる。フィードロッドの先端の筒部には、フィンガーチャックの後端の軸部が回転自在に挿入連結され、このフィンガーチャックの先端のチャック部で棒材の後端部が把持される(例えば、特許文献1,2,3参照)。また、棒材排出機は、棒材加工機によって加工された加工済みの棒材をフィンガーチャックによって受け取って棒材加工機から排出している(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
フィンガーチャックは旋盤等に送り込もうとする棒材の径の大きさに応じて交換する必要があるので、フィードロッドに対して連結装置を介して着脱可能に連結される。
【0004】
この連結装置には、(1)フィンガーチャックのチャック部を軸部に止めネジで固定するようにしたもの(例えば、特許文献1参照)、(2)フィンガーチャックの軸部をフィードロッドの先端に固定された筒部内に回転自在に挿入し、筒部と軸部との間に設けた連結装置によりフィンガーチャックをフィードロッドに着脱するようにしたもの(例えば、特許文献2参照)、(3)操作筒に係合溝とガイド溝を形成し、操作筒を周方向に摺動させて突起をガイド溝内でスライドさせて連結を解除し、操作筒を軸方向に摺動させて突起を係合溝内でスライドさせて連結させるようにしたもの(例えば、特許文献3参照)がある。また、その他の構成としては、フィンガーチャックの端部にねじ溝を形成し、フィードロッドに形成された連結部材に当該ねじ溝を介してフィンガーチャックをねじ込むことでフィンガーチャックを連結するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-70701号公報
【文献】実公平7-27042号公報
【文献】特開2006-239798号公報
【文献】特開平4-343602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のフィンガーチャックの連結装置は、例えば上記(1)の連結装置では、フィンガーチャックの着脱に工具を使用して止めネジを締めたり緩めたりする面倒な操作を必要とするという問題があった。
【0007】
また、上記(2)の連結装置では、軸部の外周面に環状の凹部が形成され、筒部には軸部が挿入されたときに凹部に正対する貫通孔が形成され、貫通孔内に球体が筒部の半径方向に移動可能に挿入され、筒部には操作筒が周方向及び軸方向に摺動可能に被せられ、操作筒の内部には球体を凹部内へと押圧する内周面と球体を凹部外へと逃がす逃げ穴とが設けられ、操作筒を周方向に摺動させると逃げ穴で球体を解放した状態から内周面で球体を押圧した状態に移行するようになっている。ところが、操作筒の外から逃げ穴や球体を視認することができず、例えば操作筒を周方向に回して押圧を解除した後に操作筒を元の位置に戻す際に元の位置が分からなくなるので、再び押圧するときの操作が面倒になる。また、フィンガーチャックの軸部がフィードロッドの筒部内に軸受を介して保持されるので、フィンガーチャックがそれだけ長くなって嵩張り、フィードロッドに対する着脱が面倒になり、また、着脱装置の球体が回転する軸部に接触するので球体、軸部等が磨耗しやすくなるという問題があった。
【0008】
また、上記(3)の連結装置は、フィンガーチャックの着脱時に操作筒を周方向又は軸方向に回転又は摺動させる操作が必要となることから、連結装置の操作が煩雑であるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決することを目的としており、より簡単な操作でフィンガーチャックの着脱を行うことができるフィンガーチャックの連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る連結装置は、材料を保持するフィンガーチャックと、該フィンガーチャックを着脱自在に組み付けるスピンドルとを連結させる連結装置であって、前記フィンガーチャックの後端又は前記スピンドルの先端の何れか一方に係合部材が取り付けられ、前記スピンドル又は前記フィンガーチャックの何れか他方には、前記係合部材に挿入可能且つ係合可能に構成された係止軸部材を備え、前記係止軸部材は、径方向に延びる係止部と、前記係合部材を軸方向に押圧する押圧部材とを備え、前記係合部材は、前記係止軸部材を挿入可能な貫通孔と、前記係止部と係合可能なポケット部とを備え、前記フィンガーチャックを周方向に回転させて前記ポケット部に前記係止部が係合することで前記フィンガーチャックと前記スピンドルとを連結し、前記貫通孔は、前記係止部が挿通可能な係止部貫通部を備え、前記係止部貫通部と前記ポケット部とは、周方向に略90°ずらされて配置され、前記係止部貫通部と前記ポケット部とは、軸方向に傾斜するテーパ部を介して互いに連絡していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る連結装置において、前記ポケット部は、前記係合部材の前記フィンガーチャックの後端側に形成され、前記フィンガーチャックの後端には前記係止軸部材との接触を防止する退避部が形成されると好適である。
【0014】
また、本発明に係る連結装置において、前記押圧部材は、弾性部材によって軸方向に押圧されると共に、前記係止軸部材に形成された鍔部に当接可能であると好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、係合部材のポケット部に係止部を係合させるだけでフィンガーチャックとスピンドルとを連結することができるので、より簡単な操作でフィンガーチャックを連結させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、係止部を挿通する係止部貫通部とポケット部とが周方向に略90°ずらされて配置されているので、係止部を係止部貫通部に挿通させた後、フィンガーチャックを周方向に略90°回転させるだけで係止部とポケット部との係合を行うことができるので、より簡単な操作でフィンガーチャックを連結させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る連結装置を備えた棒材排出機の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る連結装置の構成を説明するための断面図。
図3】本発明の実施形態に係る連結装置の係合部材の斜視図。
図4図3におけるA矢視図。
図5】本発明の実施形態に係る連結装置の連結動作を説明するための図。
図6】本発明の実施形態に係る連結装置の連結動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る連結装置を備えた棒材排出機の斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る連結装置の構成を説明するための断面図であり、図3は、本発明の実施形態に係る連結装置の係合部材の斜視図であり、図4は、図3におけるA矢視図であり、図5は、本発明の実施形態に係る連結装置の連結動作を説明するための図であり、図6は、本発明の実施形態に係る連結装置の連結動作を説明するための図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る連結装置を備えた棒材排出機1は、例えば二つの主軸を有する旋盤などの棒材加工装置から加工済みの棒材を受け取って排出する排出部5を有する本体部2と、本体部2を支持する一対の脚部3と、本体部2に設けられ、種々の操作を行う操作部4とを備えている。
【0021】
棒材排出機1の本体部2内には、図示しないフィードロッドが水平に配置される。フィードロッドは図示しない公知の駆動装置により棒材加工装置の主軸の延長線上で移動可能である。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る連結装置10は、フィードロッドの先端に接続されたスピンドル7と、フィンガーチャック6とを着脱自在に連結している。なお、フィンガーチャック6のチャック部に棒材等の材料の後端部が把持される。
【0023】
本実施形態に係る連結装置10は、フィンガーチャック6の後端に取り付けられた係合部材11と、スピンドル7に形成されると共に、係合部材11に挿入可能且つ係合可能に構成された係止軸部材12を備えている。フィンガーチャック6の後端には、後述する係止軸部材12の係止部14が周方向に回転可能な退避部18が形成されており、該退避部18の直径は、係止部14の軸方向長さよりも大きく形成されている。
【0024】
係止軸部材12は、スピンドル7内に配置された連結側部材13に固着された軸部材であり、係合部材11へ挿入する先端部には、径方向に延びる係止部14が形成されている。係止部14は、ピン状部材であり、係止軸部材12の径方向に貫通して形成された貫通孔に挿入して固着又は圧入され、当該ピン状部材の先端側及び基端側が係止軸部材12の外表面から突出するように固着されている。即ち、係止部14の軸方向長さは、係止軸部材12の直径よりも長く形成されている。
【0025】
また、係止軸部材12には鍔部15が形成されている。鍔部15は、係止軸部材12の長手方向の略中央部分に径方向に拡径する段差として形成されている。また、鍔部15と連結側部材13との間には、弾性体17によって軸方向に付勢された押圧部材16が取り付けられている。
【0026】
押圧部材16は、係止軸部材12に挿入可能且つ、鍔部15に当接可能な円管状の部材であり、鍔部15が挿通可能な内周を備える本体16aと、本体16aの連結側部材13側の端部に形成され、鍔部15と当接可能な鍔部当接部16bとを備えている。なお、鍔部当接部16bの連結側部材13側の端部には、上述した弾性体17が当接しており、弾性体17の弾性力によって押圧部材16を鍔部15に当接させるように係止軸部材12の先端側へ付勢している。弾性体17は、弾性力を有する部材であればどのような部材を適用してもよいが、例えば、コイルバネやゴム製の管状部材などが好適に用いられる。
【0027】
次に、図3を参照して本実施形態に係る連結装置10の係合部材11について説明を行う。係合部材11は、中央部に軸方向に貫通する貫通孔21を有した円盤状の部材である。図2に示すように、係合部材11のフィンガーチャック6の後端側には、径方向に延びるポケット部22が形成されている。また、図4に示すように、貫通孔21は、ポケット部22とは周方向に略90°ずらされて径方向に延びるように係止部貫通部23を有する長穴形状に形成されている。
【0028】
図3に示すように、貫通孔21の長軸方向とポケット部22とは係止部貫通部23からポケット部22に向かって軸方向に傾斜するテーパ部25を介して互いに連絡している。なお、係合部材11は取付孔24が複数形成されており、当該取付孔24にボルト等の締結手段を締結することで、係合部材11とフィンガーチャック6とを互いに連結している。
【0029】
次に、図5及び6を参照して、本実施形態に係る連結装置10の作用について説明を行う。図5に示すように、本実施形態に係る連結装置10のフィンガーチャック6とスピンドル7との連結は、フィンガーチャック6をスピンドル7に挿入し、連結側部材13から軸方向に延びる係止軸部材12を係合部材11に貫通孔21に挿入する。このとき、貫通孔21は、長穴形状に形成されているので、係止軸部材12の係止部14は、係止部貫通部23を挿通するように長穴方向に位置することで軸方向に挿通可能となる。
【0030】
この状態で、フィンガーチャック6を連結側部材13側に更に押し込むと、押圧部材16が係合部材11に当接し、弾性体17を押し縮める。ここで、係止部14が係合部材11のフィンガーチャック6側の端面まで至ると、係止部14は、フィンガーチャック6の後端に形成された退避部18内を周方向に回転可能となるため、フィンガーチャック6を連結側部材13側へ押圧しながらフィンガーチャック6を略90°回転させることができる。
【0031】
そうすると、図6に示すように、係止部14はテーパ部25に倣ってポケット部22と係合する。ここで、フィンガーチャック6の連結側部材13側への押込みを解除すると、弾性体17の弾性力によって押圧部材16が係合部材11を軸方向に押し込むことで、ポケット部22に係止部14が押さえつけられてフィンガーチャック6とスピンドル7とを連結することが可能となる。
【0032】
なお、フィンガーチャック6を取り外す場合は、上記取付の手順と逆に、弾性体17の弾性力に抗するようにフィンガーチャック6を連結側部材13側に押し込むことでポケット部22と係止部14の係合を解除し、フィンガーチャック6を押し込んだ状態でフィンガーチャック6を90°逆方向に回転させることで係止部14と貫通孔21の位置を合せることで、フィンガーチャック6を抜き出すことが可能となる。
【0033】
このように、本実施形態に係る連結装置10によれば、フィンガーチャック6をスピンドル7に挿入後、フィンガーチャック6を回転させるだけでフィンガーチャック6とスピンドル7との連結を行うことができるので、工具を用いたり、他の操作部を操作する必要がなく、より簡単な操作でフィンガーチャック6の着脱を行うことができる。
【0034】
なお、上記実施形態に係る連結装置10では、フィンガーチャック6を連結側部材13側に押し込み、時計回りにフィンガーチャック6を回転させた場合について説明を行ったが、回転方向はこれに限らず、反時計回りに形成しても構わない。この場合、テーパ部25は、図3図6に示した位置と逆側に形成されると好適である。
【0035】
なお、このテーパ部25を形成せずに、フィンガーチャック6の回転時に係合部材11のフィンガーチャック6側表面を摺接して回転させることで係止部14とポケット部22の係合を行っても構わない。このように構成することで、時計回り・反時計回りのいずれの方向に回転させてもフィンガーチャック6の着脱を行うことができ、ポケット部22と係止部14の係り代も大きくなることから、より強固にフィンガーチャック6とスピンドル7の連結を行うことが可能となる。また、上記実施形態に係る連結装置10では、フィンガーチャック6の連結時及び連結解除時にフィンガーチャック6を連結側部材13側に押し込んで着脱動作を行う場合について説明を行ったが、この押込み動作は必須ではなく、押込み動作を行わずにフィンガーチャック6の着脱動作を行うことができるように構成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0036】
1 棒材排出機, 2 本体部, 3 脚部, 4 操作部, 5 排出部, 6 フィンガーチャック, 7 スピンドル, 10 連結装置, 11 係合部材, 12 係止軸部材, 13 連結側部材, 14 係止部, 15 鍔部, 16 押圧部材, 16a 本体, 16b 鍔部当接部, 17 弾性体, 18 退避部, 21 貫通孔, 22 ポケット部, 23 係止部貫通部, 24 取付孔, 25 テーパ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6