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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】パワーアシスト装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019154099
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021030380
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩二
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170618(WO,A1)
【文献】特開2007-130234(JP,A)
【文献】特開2014-172129(JP,A)
【文献】特開2017-052064(JP,A)
【文献】特開2017-185101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0143503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/00-11/00
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に装着されるパワーアシスト装置であって、
前記使用者の動きを制止するためのロック機構を備え、
前記ロック機構は、移動部材と、ロック部材と、摩擦部材と、アクチュエータを含み、
前記移動部材は、前記使用者の動きによって所定の移動方向に移動し、
前記ロック部材は、前記アクチュエータによって移動させられて前記移動部材に係合し、当該係合している部分における前記移動部材の前記所定の移動方向への移動をロックするよう構成され、且つ、前記所定の移動方向と前記ロック部材が前記移動部材に向かう方向とに垂直な方向から見た際に前記移動部材に向かう方向に向かって先細りとなる1対の斜面を備え、
前記摩擦部材は、前記所定の移動方向に離間する1対の側部を備え、当該1対の側部の間に前記ロック部材が挿通され、前記所定の移動方向において前記1対の側部と前記ロック部材との間には間隙が設けられるとともに、前記ロック部材と前記移動部材とが係合した状態における前記移動部材の移動に伴って前記ロック部材が前記1対の側部間で移動して当該1対の側部と接触することにより、前記移動部材をロックする摩擦力を発生させ、
前記移動部材がロックされることにより使用者の動きが制止され、
前記ロック部材によるロックは、前記移動部材に所定の閾値以上の力が前記移動方向に加わった場合に、前記移動部材により前記斜面が押されることで生じる前記ロック部材が前記移動部材から離れる方向への力によって、前記ロック部材が前記1対の側部との間の摩擦力に抗して移動することで解除される、パワーアシスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーアシスト装置であって、
前記ロック部材は前記一対の斜面の前記移動部材に向かう方向の端部に凸部を備え、前記移動部材に形成された凹部と係合する、パワーアシスト装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパワーアシスト装置であって、
前記摩擦部材は、前記ロック部材が挿通される挿通部を備え、
前記1対の側部の間隔は、調整可能に構成されている、パワーアシスト装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のパワーアシスト装置であって、
前記移動部材は、往復方向に移動可能に構成される、パワーアシスト装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のパワーアシスト装置であって、
前記移動部材は円盤状に形成され、中心軸を基準として円周方向に回転可能に構成される、パワーアシスト装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のパワーアシスト装置であって、
前記アクチュエータは、接触面において、前記ロック部材と接触し、
前記ロック部材は、前記アクチュエータに対して突出した突出部を有する、パワーアシスト装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のパワーアシスト装置であって、
前記摩擦部材は、蓄勢部を備え、
前記蓄勢部は、前記ロック部材が前記移動部材と係合している際に蓄勢し、前記ロック部材によるロックが解除された際に、前記ロック部材を前記移動部材から離れた方向へ移動させる、パワーアシスト装置。
【請求項8】
請求項7に記載のパワーアシスト装置であって、
前記ロック部材は、前記移動の方向と垂直な方向に突出したフランジ部を備え、
前記摩擦部材の蓄勢部は、前記フランジ部と接触する板バネで構成されている、パワーアシスト装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のパワーアシスト装置であって、
前記使用者の上半身に装着され、
前記ロック機構は前記使用者の腕部の動きを制止する、パワーアシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーアシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業員が上方のワイヤーを支えたり、植物を剪定するために腕を長時間上げたりする場合に、姿勢を維持するためのパワーアシスト装置が開発されている。例えば、特許文献1には、姿勢維持に電力を要しないパワーアシスト装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-251057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載のパワーアシスト装置では、姿勢維持には電力を消費しないが、姿勢維持の解除のためには電力が必要であり、電力の供給が絶たれると解除ができないといった不具合があった。また、突然の転倒時などには解除の指示が間に合わないなど、不測の事態に対処することが困難である懸念もあった。
【0005】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電力の供給がなくても姿勢維持および解除が可能であり、不測の事態において姿勢維持の解除が可能なパワーアシスト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、使用者に装着されるパワーアシスト装置であって、前記使用者の動きを制止するためのロック機構を備え、前記ロック機構は、移動部材と、ロック部材と、摩擦部材と、アクチュエータを含み、前記移動部材は、前記使用者の動きによって所定の移動方向に移動し、前記ロック部材は、前記アクチュエータによって移動させられて、前記移動部材に係合し、前記摩擦部材は、前記ロック部材と接触することにより、前記移動部材をロックする摩擦力を発生させ、前記移動部材がロックされることにより使用者の動きが制止され、前記ロック部材によるロックは、前記移動部材に所定の閾値以上の力が前記移動方向に加わった場合に解除される、パワーアシスト装置が提供される。
【0007】
このような構成とすることにより、電力の供給がなくとも姿勢の維持および解除が可能になるとともに、ロック機構に所定の閾値以上の力が加わるような不測の事態には、姿勢の維持が解除されることとなり、使用者の安全が確保される。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴が独立に発明を構成する。
【0009】
好ましくは、前記ロック部材は凸部を備え、前記移動部材に形成された凹部と係合する。
好ましくは、前記摩擦部材は、前記ロック部材が挿通される挿通部を備え、前記挿通部の間隔は、調整可能に構成されている。
好ましくは、前記移動部材は、往復方向に移動可能に構成される。
好ましくは、前記移動部材は円盤状に形成され、中心軸を基準として円周方向に回転可能に構成される。
好ましくは、前記アクチュエータは、接触面において、前記ロック部材と接触し、前記ロック部材は、前記アクチュエータに対して突出した突出部を有する。
好ましくは、前記摩擦部材は、畜勢部を備え、前記蓄勢部は、前記ロック部材が前記移動部材と係合している際に蓄勢し、前記ロック部材によるロックが解除された際に、前記ロック部材を前記移動部材から離れた方向へ移動させる。
好ましくは、前記ロック部材は、前記移動の方向と垂直な方向に突出したフランジ部を備え、前記摩擦部材の蓄勢部は、前記フランジ部と接触する板バネで構成されている。
好ましくは、前記使用者の上半身に装着され、前記ロック機構は前記使用者の腕部の動きを制止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願発明の実施形態に係るパワーアシスト装置Pの全体斜視図である。
図2】ロック機構6の斜視図である。
図3】取付部5におけるロック機構6の配置を模式的に示す平面図である。
図4】ロック機構6における円盤12と、ゲート部13と、ロック部14の配置を模式的に示す斜視図である。
図5】パワーアシスト装置Pの制御機構を示すブロック図である。
図6図6Aは、円盤12とロック部14の係合を示す図である。図6Bは、ロック部14とゲート部13の間に摩擦力が発生している状態を示す図である。図6Cは、移動部材とロック部材の係合が解除された状態を示す図である。
図7図7Aは、ゲート部13とロック部14の係合状態を示す図である。図7Bは、実施例としての数値解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1.実施形態>
図1に、実施形態にかかるパワーアシスト装置Pの全体図を示す。パワーアシスト装置Pは、使用者の上半身に装着され、使用者の腕部の姿勢維持をアシストする。以下、各構成について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、パワーアシスト装置Pを装着する使用者の人体を基準として、上下左右および前後の方向を規定している。
【0012】
(1.1.全体構成)
パワーアシスト装置Pは、背面プレート1と、制御ボックス2と、アーム部3と、上腕固定部4と、取付部5と、ロック機構6を備える。背面プレート1は、パワーアシスト装置Pが使用者に装着される際に、使用者の背中に配置される。
【0013】
制御ボックス2は、背面プレート1の後方に取り付けられており、パワーアシスト装置Pの制御機構が収納されている。パワーアシスト装置Pの制御機構については、詳細を後述する。アーム部3は、使用者の左右の上腕に相当する位置に一対設けられており、3つのアーム3aをそれぞれ備える。
【0014】
アーム部3の下方には、図示しないベルトなどの締結部材によって、使用者の上腕に取り付けられる上腕固定部4が設けられている。上腕固定部4は、半円の円弧状に湾曲して形成され、湾曲部分の内面が上腕の肘側部分に配置される。アーム部3の備える3つのアーム3aは、締結ボルト4aによって、上腕固定部4の外側に取り付けられている。
【0015】
アーム部3の上方には、取付部5が設けられている。取付部5は、上腕固定部4と同様に、半円の円弧状に湾曲して形成され、使用者の肩部の上方に配置される。アーム部3の備える3つのアーム3aは、締結ボルト5aによって、取付部5の外側に取り付けられている。このように、上腕固定部4と取付部5の間に取り付けられた3つのアーム3aは、パワーアシスト装置Pを装着した使用者の上腕の動きに追随することになる。
【0016】
取付部5の上面には、ロック機構6が取り付けられる。視認性を考慮して、図1に示す例では使用者の右側の取付部5にのみロック機構6が取り付けられているが、左側の取付部5にロック機構6を取り付けることもできるし、両側の取付部5にロック機構6を1対取り付けてもよい。
【0017】
取付部5にロック機構6が取り付けられることにより、アーム3aの動きが制限される。以下、ロック機構6の構成について詳細に説明する。
【0018】
(1.2.ロック機構6の構成)
図2図4を参照し、ロック機構6の構成を説明する。なお、図3においては、可視性を考慮して一部の構成を点線で示している。図2に示すように、ロック機構6は、第1ソレノイド11a(特許請求の範囲における「アクチュエータ」の一例に相当)を有する第1ユニット10aと、第2ソレノイド11b(特許請求の範囲における「アクチュエータ」の他の例に相当)を有する第2ユニット10bを備える。
【0019】
図3に示すように、第1ユニット10aは、第1ソレノイド11aの他に、円盤12(特許請求の範囲における「移動部材」に相当)と、ゲート部13(特許請求の範囲における「摩擦部材」に相当)と、ロック部14(特許請求の範囲における「ロック部材」に相当)と、第1可動部15を備える。第2ユニット10bは、第2ソレノイド11bの他に、円盤12と、ゲート部13と、ロック部14をそれぞれ1対と、第2可動部16を備える。
【0020】
円盤12は、いずれも、取付部5の締結ボルト5aに取り付けられている。これにより、取付部5に取り付けられたアーム3aの動きは、締結ボルト5aを介して円盤12へ伝達される。
【0021】
第1可動部15は、第1ソレノイド11aによって、取付部5へ向かう方向(すなわち、図3における矢印A方向)、およびその反対方向に移動可能に構成される。第2可動部16は、第2ソレノイド11bによって、取付部5へ向かう方向(すなわち、図3における矢印B方向)、およびその反対方向に移動可能に構成される。
【0022】
第1可動部15が取付部5へ向かう方向へ移動することにより、第1可動部15の接触面15aによって押圧されたロック部14が、円盤12へ向かう方向へ移動する。また、第2可動部16が取付部5へ向かう方向へ移動することにより、円弧状に湾曲するように形成された接触面16aによって押圧された1対のロック部14,14が、それぞれ円盤12へ向かう方向へ移動する。すなわち、ひとつの第2ソレノイド11bにより複数のロック部14を移動させることができるので、パワーアシスト装置のコストを削減することができる。以下、円盤12、ゲート部13、およびロック部14の構成および配置について詳細に説明する。
【0023】
図4に示すように、円盤12は、ロック部14と対向する底面に凹部12aが形成されている。凹部12aは、底面の中心から径方向外側に向かって放射状に形成されており、本実施形態では、底面の中心を基準として点対称に8つ形成されている。凹部12aの両側には、斜面12bが形成されている。
【0024】
円盤12は、底面の中心を通過する中心軸を基準として、円周方向(すなわち、図4におけるC方向)に回転可能に構成されている。上述したように、円盤12は、取付部5の締結ボルト5aに取り付けられているため、アーム3aの動きに連動して円盤12が回転することになる。
【0025】
ゲート部13は、1対の側部13a(特許請求の範囲における「挿通部」に相当)と、頂部13bを備える。1対の側部13aは、頂部13bによって連結されている。1対の側部13a同士の間隔は、調整可能に構成されており、当該間隔にロック部14が挿通される。側部13aにおけるロック部14側の面には、1対の板バネ17(特許請求の範囲における「畜勢部」に相当)が設けられている。
【0026】
ロック部14は、円盤12へ向かう方向(すなわち、図4におけるA方向。以下、移動方向ともいう。)に対して突出した凸部14aと、側部13aの方向に延伸したフランジ部14bを備える。凸部14aは、ロック部14が移動方向に移動した際に、円盤12に設けられた凹部12aの1つ(図4に示す例では、領域D1に相当する箇所)と係合する。
【0027】
ロック部14は、第1ソレノイド(または第2ソレノイド)に対して突出した突出部14cをさらに備える。当該構成とすることにより、第1ソレノイドが第1可動部15を移動させた際、接触面15aが突出部14cと接触する。また、第2ソレノイドが第2可動部16を移動させた際、接触面16aが突出部14cと接触する。
【0028】
(1.3.制御機構の構成)
図5を参照し、パワーアシスト装置Pの制御機構の構成について説明する。図5に示すように、制御ボックス2は、制御装置21と、レギュレータ22と、バッテリー23と、トランジスタアレイ24と、音声センサ25を備える。
【0029】
制御装置21は、いわゆるワンボードマイコンで構成され、パワーアシスト装置Pの制御を行う。具体的には、使用者の音声指示を検知した音声センサ25からの信号に基づいて、トランジスタアレイ24に制御信号を発信する。こうすることにより、両手がふさがった状態でもロックの指示を行うことができる。なお、制御信号の発信のトリガーは音声センサ25からの信号に限定されない。たとえば、掌や足元に配置された感圧センサや押しボタンスイッチからの信号にも基づいてもよい。
【0030】
レギュレータ22は、バッテリー23から供給された電源の電圧を調整し、制御装置21へ電源を供給する。トランジスタアレイ24は、制御装置21からの制御信号に基づいて、第1ソレノイド11aおよび第2ソレノイド11bへの電流を供給する。
【0031】
第1ソレノイド11aおよび第2ソレノイド11bは、トランジスタアレイ24からの電流に基づいて、第1可動部15および第2可動部16を移動させる。
【0032】
(1.4.ロック機構6の動作原理)
図6A図6Cを参照し、ロック機構6の動作原理を説明する。説明の簡略のため、第1ユニット10aを例にして説明するが、第2ユニット10bについても同様である。
【0033】
図6Aに示すように、使用者の音声指示に基づいて、トランジスタアレイ24からの電流が第1ソレノイド11aへ供給されると、第1可動部15がロック部14を円盤12の方向へ移動させる。その結果、ロック部14の凸部14aと、円盤12の凹部12aが係合する。このとき、ゲート部13に設けられた板バネ17は、ロック部14のフランジ部14bに押圧されることとなり(図4参照)、板バネ17が蓄勢される。
【0034】
次に、第1ソレノイド11aへの電流を制御して、第1可動部15を円盤12と反対方向(すなわち、図6BにおけるA′方向)に移動させる。その状態で、アーム3aの動きに伴って円盤12をC方向に回転させることにより、図6Bに示すように、ゲート部13に挿通されたロック部14は、領域D2~D4で示す3点で固定される。ここで、領域D3において、ゲート部13とロック部14との間に摩擦力が発生している。そのため、円盤12の回転がロックされることとなり、アーム3aの動きが制止される。その結果、パワーアシスト装置Pを装着した使用者の上腕部の動きが制止されることになるため、使用者の腕部の姿勢維持がアシストされる。
【0035】
ここで、円盤12の回転方向に対して所定の閾値以上の強い力が加わると、円盤12はC方向へ回転する。その結果、図6Cに示すように、ロック部14の凸部14aが円盤12の凹部12aから外れることとなる。このとき、ロック部14は蓄勢されていた板バネ17にA′方向へ付勢され、ロック部14は円盤12から離れた方向へ移動し、円盤12のロックが解除される。すなわち、不測の事態などが発生し、アーム3aに強い力が加わった場合には、円盤12のロックが解除されることとなり、使用者は腕部を動かすことが可能となる。
【0036】
以上のようにして、実施形態に係るパワーアシスト装置Pは、使用者の腕部の動きを制止するためのロック機構6を備える。ロック機構6は、移動部材としての円盤12と、ロック部材としてのロック部14と、摩擦部材としてのゲート部13と、アクチュエータとしての第1ソレノイド11aおよび第2ソレノイド11bを含む。
【0037】
円盤12は、使用者の腕部の動きによって円周方向に回転し、ロック部14は、第1ソレノイド11aおよび第2ソレノイド11bによって円盤12に設けられた凹部12aに係合する。ゲート部13は、ロック部14と接触することにより、円盤12の回転をロックする摩擦力を発生させ、円盤12の回転がロックされることで使用者の動きが制止される。ロック部14によるロックは、円盤12に所定の閾値以上の力が回転方向に加わった場合に解除される。後述するように、ロックが解除される所定の閾値以上の力は調整可能である。
【0038】
このような構成とすることにより、電飾の供給がなくても姿勢維持および解除が可能であり、不測の事態において姿勢維持の解除をすることが可能となるパワーアシスト装置Pを実現することができる。
【0039】
(1.5.実施例)
図7Aおよび図7Bを参照し、パワーアシスト装置Pの実施例を説明する。図7Aに示す関係に基づくと、ゲート部13とロック部14との間に発生する最大の静止摩擦力F2と、ロックを解除するために円盤12がロック部14を移動させるための解除力Fとの関係は、以下の(式1)で求められる。
【0040】
【数1】
【0041】
一方、ゲート部13の側部13a同士の間隔Lと、ロック部14の幅L3との差分を間隙xとすると、以下の(式2)が導出される。
【0042】
【数2】
【0043】
図7Bは、上記(式1)および(式2)の関係に基づいて、数値解析によって解除力Fを間隙xの関数として求めたグラフである。図7Bに示すように、間隙xの値に応じて、解除力Fが変化することがわかる。すなわち、本願発明のパワーアシスト装置Pは、ゲート部13の側部13aの間隔を調整可能に構成されているため、解除力Fの値を調整可能であることが見て取れる。言い換えると、パワーアシスト装置Pの使用用途や使用者の体力に応じて、解除力Fを適宜設定することが可能であることがわかる。
【0044】
<2.その他の実施形態>
以上、実施形態について説明したが、本願の技術的範囲の適用範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0045】
たとえば、上記実施形態では、移動部材としての円盤12が一方向に回転する場合について説明したが、この形態に限定されることはなく、たとえば、円周方向の両方向に回転する場合でも同様の効果を得ることが可能である。すなわち、円盤12の両方向への回転でロックおよび解除が可能であるため、使用者はより容易にロックおよび解除することができ、操作性が向上する。
【0046】
また、上記実施形態では、円盤12の底面には、中心を基準として点対称に8つの凹部が形成されていたが、この形態に限定されることはない。たとえば、中心を基準として点対称に2つまたは4つの凹部を形成してもよいし、凹部を1つのみあるいは8つより多く形成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、移動部材は円盤12で構成されており、円周方向に回転する構成としていたが、この形態に限定されることはない。たとえば、一方向または往復方向にスライド可能な部材によって、移動部材を構成してもよい。この場合においても、本願発明は上記実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0048】
また、上記実施形態では、3つのロック部14を2つのソレノイド(第1ソレノイド11aおよび第2ソレノイド11b)にて移動させることによりロックしていたが、この形態に限定されることはない。たとえば、複数のロック部14を同数のソレノイドで移動させてもよいし、複数のロック部14をひとつのソレノイドで移動させてもよい。また、複数のソレノイドで移動させる場合、それぞれ独自のタイミングで移動させてもよいし、駆動しないソレノイドがあってもかまわない。
【0049】
また、上記実施形態では、畜勢部は板バネ17で構成されていたが、この形態に限定されることはない。たとえば、コイルバネやゴム等の弾性部材により畜勢部を構成してもよい。この場合においても、本願発明は上記実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0050】
本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1 :背面プレート
2 :制御ボックス
3 :アーム部
3a :アーム
4 :上腕固定部
4a :締結ボルト
5 :取付部
5a :締結ボルト
6 :ロック機構
10a :第1ユニット
10b :第2ユニット
11a :第1ソレノイド
11b :第2ソレノイド
12 :円盤
12a :凹部
12b :斜面
13 :ゲート部
13a :側部
13b :頂部
14 :ロック部
14a :凸部
14b :フランジ部
14c :突出部
15 :第1可動部
15a :接触面
16 :第2可動部
16a :接触面
17 :板バネ
21 :制御装置
22 :レギュレータ
23 :バッテリー
24 :トランジスタアレイ
25 :音声センサ
P :パワーアシスト装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7