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特許7319667熱遮蔽コーティング、及びこれを用いたタービン用ブレード部材、航空機用ジェットエンジン、発電用ガスタービン
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  • 特許-熱遮蔽コーティング、及びこれを用いたタービン用ブレード部材、航空機用ジェットエンジン、発電用ガスタービン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】熱遮蔽コーティング、及びこれを用いたタービン用ブレード部材、航空機用ジェットエンジン、発電用ガスタービン
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/11 20160101AFI20230726BHJP
   C23C 4/073 20160101ALI20230726BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20230726BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C23C4/11
C23C4/073
F02C7/00 F
F02C7/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019194449
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021066942
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】増田 紘士
(72)【発明者】
【氏名】川岸 京子
(72)【発明者】
【氏名】ウー ラダー
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0153408(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0131611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/04,4/073,4/11,14/06,14/08,
28/00
F02C 7/00,7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
を6.0以上16.0質量%以下で含み、
残部をZrO及び不可避的不純物で組成されるイットリア安定化ジルコニアであって、
前記イットリア安定化ジルコニアを<111>方位に優先成長させた柱状組織からなると共に、
前記イットリア安定化ジルコニアは正方晶単相組織もしくは正方晶と立方晶の二相組織からなるマトリックス組織にナノ双晶が含まれていると共に、
<111>方位付近では、0.2%耐力が5GPa程度であり、公称ひずみ15%まで加工硬化を伴う塑性変形を生じ、公称ひずみ44%までひずみバーストを伴う不連続的なひずみ増加を生じることを特徴とする
トップコートを有する熱遮蔽コーティング。
【請求項2】
前記Yを7.0以上8.0質量%以下で含むことを特徴とする請求項1に記載の熱遮蔽コーティング。
【請求項3】
前記イットリア安定化ジルコニアの優先成長させた柱状組織は、<001>、<101>、<111>の3方位に囲まれた結晶方位図において、<111>、<212>、<113>の3方位に囲まれた結晶方位範囲に含まれる方位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱遮蔽コーティング。
【請求項4】
前記イットリア安定化ジルコニアの優先成長させた柱状組織は、<111>から15度以内に含まれる方位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱遮蔽コーティング。
【請求項5】
前記マトリックス組織は、前記イットリア安定化ジルコニアは正方晶単相組織もしくは正方晶と立方晶の二相組織からなり、正方晶型の結晶構造において、格子定数の軸比(c/a)が、1.005以上1.025以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱遮蔽コーティング。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱遮蔽コーティングを有するタービン用ブレード部材。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱遮蔽コーティングを有する航空機用ジェットエンジン。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱遮蔽コーティングを有する発電用ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用ジェットエンジンや発電用ガスタービンのブレード部材に用いて好適な熱遮蔽コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機用ジェットエンジンや発電用ガスタービンのブレード部材においては、耐熱性および断熱性に優れるセラミックスをトップコートとする、熱遮蔽コーティング(TBC:Thermal barrier coating)が利用されている(例えば、非特許文献1参照)。特に、現在商用化されているTBCのトップコートは、主にイットリア安定化ジルコニア(YSZ:Yttria stabilized zirconia)からなり、電子ビーム物理気相蒸着法(EB-PVD:Electron beam physical vapor deposition)もしくはプラズマ溶射法によって製造される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特に、前者の方法によって製造されたトップコートは、直径数マイクロメートルのコラム構造からなり、熱応力緩和特性に優れている(非特許文献2参照)。TBCにおけるトップコートは、断熱性の向上と同時に、金属基材との界面における剥離を抑えるための設計がなされている一方、外部からの機械的損傷に対しては、明確な構造設計指針が得られていない。これは、TBCのミクロ構造と力学応答との関係が十分に理解されていないことに起因するものである。
【0004】
ガスタービンは、しばしば外的環境からの異物衝突(FOD:Foreign object damage)に曝される。特に、ジェットエンジンに対するFODには、バードストライク、滑走路上デブリ、大気中火山灰などが多種類の損傷が想定される。
異物衝突によりトップコートを構成するコラム構造が損壊すると、高温の燃焼ガスが基材である耐熱超合金に作用する影響が増大する。この燃焼ガスの温度は耐熱超合金基材の耐熱温度を超過しているため、ブレード部材の寿命に深刻な影響を与える。
【0005】
図7は、バードストライクによる航空機用ジェットエンジンにおける熱遮蔽コーティングの損傷状態を説明する熱遮蔽コーティングの顕微鏡写真である。
脆性材料であるセラミックスから構成されるトップコートにおいては、FODによる損傷は極めて深刻であり、タービンブレードや、エンジンの性能に大きな影響を及ぼすことが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-172731号公報
【文献】特開2018-161883号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】佐藤彰洋、他4名、『航空ジェットエンジン用熱遮蔽コーティングシステムの現状』、石川島播磨技報、第47巻第1号第1頁~第6頁(2007)
【文献】A.G. Evans、 D.R. Clarke、 C.G. Levi、 J. Eur. Ceram. Soc. 28 (2008) 1405-1419.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外的環境からの異物衝突が生じた際のセラミックス層における脆性破壊を抑制し、強靭化されて信頼性を向上させた熱遮蔽コーティングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ところで、本発明者はセラミックスにおける塑性変形の特性を探求することで、TBCに関して、FODへの耐久性を高めることのできる適切なミクロ構造の制御指針を提示できるのではないかと考え、本発明を想到するに至った。
【0010】
[1]本発明の熱遮蔽コーティングは、Yを6.0以上16.0質量%以下で含み、残部をZrO及び不可避的不純物で組成されるイットリア安定化ジルコニアであって、前記イットリア安定化ジルコニアを<111>方位に優先成長させた柱状組織からなると共に、前記イットリア安定化ジルコニアは正方晶単相組織もしくは正方晶と立方晶の二相組織からなるマトリックス組織にナノ双晶が含まれているトップコートを有するものである。
[2]本発明の熱遮蔽コーティングにおいて、好ましくは、前記Yを7.0以上8.0質量%以下で含むとよい。
【0011】
[3]本発明の熱遮蔽コーティングにおいて、好ましくは、前記イットリア安定化ジルコニアの優先成長させた柱状組織は、<001>、<101>、<111>の3方位に囲まれた結晶方位図において、<111>、<212>、<113>の3方位に囲まれた方位範囲に含まれる方位であるとよい。
[4]本発明の熱遮蔽コーティングにおいて、好ましくは、前記イットリア安定化ジルコニアの優先成長させた柱状組織は、<111>から15度以内に含まれる方位であるとよい。
[5]本発明の熱遮蔽コーティングにおいて、好ましくは、前記マトリックス組織は、前記イットリア安定化ジルコニアは正方晶単相組織もしくは正方晶と立方晶の二相組織からなり、正方晶型の結晶構造において、格子定数の軸比(c/a)が、1.005以上1.025以下であるとよい。
【0012】
[6]本発明の熱遮蔽コーティングを有するタービン用ブレード部材。
[7]本発明の熱遮蔽コーティングを有する航空機用ジェットエンジン又は発電用ガスタービン。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱遮蔽コーティングは、トップコートの脆性破壊の抑制に効果のあるもので、航空機用ジェットエンジンや発電用ガスタービンの信頼性向上に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】航空機用ジェットエンジン又は発電用ガスタービンに用いられる熱遮蔽コーティングの層構造の説明図である。
図2】本発明の一実施例を示す、イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)マイクロピラーの圧縮挙動の分類図である。
図3】本発明の一実施例を示す、<111>付近の安定塑性変形『●』における代表的な応力-ひずみ応答とマイクロピラーの電子顕微鏡写真である。
図4】本発明の一比較例を示す、<101>付近の擬へき開破壊『▲』における代表的な応力-ひずみ応答とマイクロピラーの電子顕微鏡写真である。
図5】本発明の一比較例を示す、<001>付近の不安定塑性変形『■』における代表的な応力-ひずみ応答とマイクロピラーの電子顕微鏡写真である。
図6】本発明の一実施例を示す、イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)マイクロピラーの電子顕微鏡写真で、ナノ双晶を表している。
図7】バードストライクによる航空機用ジェットエンジンにおける熱遮蔽コーティングの損傷状態を説明する熱遮蔽コーティングの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0015】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。
【0016】
図1は、航空機用ジェットエンジン又は発電用ガスタービンに用いられる熱遮蔽コーティングの層構造の説明図である。図において、タービンのブレード部材は、母材10の表面を熱遮蔽コーティングによって被覆された膜構造を有している。母材10は、例えばニッケル基耐熱超合金が用いられるが、コバルト基耐熱超合金やニッケル・コバルト基耐熱超合金等の別の耐熱超合金を組成物として用いてもよい。
【0017】
熱遮蔽コーティングは、例えばボンドコート20、熱成長酸化物層22、トップコート24の三層構造となっており、熱遮蔽コーティングによって母材の耐熱温度に対して200℃程度までの熱遮蔽を実現している。
【0018】
ボンドコート20は母材10の表面を被覆するもので、例えばMCrAlY等のAl含有耐熱合金を用いる。MCrAlY(エムクラリィ)コーティングは、高応力タービン部品における性能と信頼性を提供する。MCrAlYのMは、クロム、アルミニウム及びイットリウムと合金化された母材(通常、ニッケル、コバルト又はそれらの組み合わせ)を表す。コバルトおよびニッケルは、金属中間層を延性にするためのアンダーコートの母材として一般に使用される。アルミニウムおよびクロムは、表面被覆を酸化物から保護する安定した酸化物層を形成する。イットリウムはこの酸化物層の結合を強化する。
【0019】
熱成長酸化物層22は、ボンドコート20の表面を酸化させて下地としたもので、TGO(Thermally Grown Oxide)と称される。
トップコート24は、熱成長酸化物層22を下地として被覆されるもので、熱伝導率の低い酸化物系セラミックス、例えば部分安定化ジルコニア(YSZ)が組成材料として用いられる。トップコート24は、プラズマ溶射法や電子ビーム物理気相蒸着法(EB-PVD)等の急冷プロセスを用いて製造される。
【0020】
次に、急冷プロセスを用いて製造された部分安定化ジルコニア(YSZ)試料に対して、イオンビーム加工により二次加工して、当該試料の表面に形成して得た、力学的特性試験用のマイクロピラー(柱状組織)を用いた二次試料の測定結果を説明する。
図2は、本発明の一実施例を示す、イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)マイクロピラーの圧縮挙動の分類図で、<001>、<101>、<111>の3方位に囲まれた結晶方位図で示してある。
【0021】
図2の測定結果をえる試料は、次の手順で作成された。即ち、材料組成としては、典型的なTBC用トップコートとして用いられる、非変態型正方晶構造からなる8質量%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)を用いている。この8YSZは、昭和電工製の溶射粉末K90を用いている。不可避的不純物とは、イットリア安定化ジルコニアの原料に含まれる、原料由来の不純物をいう。
マイクロピラー試料の製作は、プラズマ溶射により液相から急冷凝固処理した粉末の形成体から、イオンビーム微細加工によって、直径1μm、高さ2~3μmの擬単結晶マイクロピラーを作製した。結晶方位図を得るための機械的試験においては、ナノインデンテーション装置を用いた圧縮試験を各種荷重方位において行った。イオンビーム微細加工には、カールツァイス製の収束イオンビーム装置Auriga Laserを利用した。結晶方位の測定は、日本電子製の走査顕微鏡JSM7000Fを用いた電子線後方散乱回折法によった。
【0022】
本測定用試料として作成されたピラーは、TBCトップコートのコラム直径におおよそ対応するものであり、本圧縮試験は、TBCがFODを受けた際の単一コラムにおける変形・破壊挙動を模擬して行われたものである。
圧縮試験におけるマイクロピラーの挙動は、『●』加工硬化を伴う安定塑性変形、『■』不安定塑性変形、『▲』擬へき開破壊に分類することができ、これらの挙動は結晶方位に強く依存することが明らかとなった。
【0023】
図3は、本発明の一実施例を示す、<111>付近の安定塑性変形『●』における代表的な応力-ひずみ応答とマイクロピラーの電子顕微鏡写真である。<111>方位付近では、『●』で示す加工硬化を伴う安定塑性変形が広く認められた。0.2%耐力を計測すると5GPa程度であった。即ち、垂直応力およそ5GPaで降伏して最大10GPaまで加工硬化を示すと同時に、亀裂発生・進展に対する抑止効果を示すことが明らかとなった。
なお、微小領域での力学特性は、マクロな物性とは異なり、「ひずみバースト」と呼ばれる現象が、不可避的に観測される。図3のピラーは、公称ひずみ15%まで加工硬化を伴う塑性変形を生じ、見かけの加工軟化を示した後、公称ひずみ44%までひずみバーストを伴う不連続的なひずみ増加を生じた。
また、本測定用試料として作成されたピラーのマトリックス組織は、イットリア安定化ジルコニアは正方晶単相組織もしくは正方晶と立方晶の二相組織からなり、正方晶型の結晶構造において、格子定数の軸比(c/a)が、1.005以上1.025以下であった。
【0024】
図4は、本発明の一比較例を示す、<101>付近の擬へき開破壊『▲』における代表的な応力-ひずみ応答とマイクロピラーの電子顕微鏡写真である。<101>方位付近では、『▲』で示すような擬へき開破壊を伴う脆性的な挙動を示した。
【0025】
図5は、本発明の一比較例を示す、<001>付近の不安定塑性変形『■』における代表的な応力-ひずみ応答とマイクロピラーの電子顕微鏡写真である。<001>方位付近では、『■』で示すような不安定塑性変形を示した。図5では、公称ひずみ5%から46%までひずみバーストが生じている。
これらの結果から、<111>方位が荷重軸となるピラーにおいて、エネルギー吸収能力が最大となることが明らかであり、本方位に優先成長させたコラムからなるTBCが、耐衝撃性に優れることが示された。
【0026】
即ち、<111>方位付近に成長させたYSZコラムは、直径が1μmのとき、室温において、0.2%耐力を計測すると5GPa程度であり、垂直応力およそ5GPaで降伏し、最大10GPaまで加工硬化を示すと同時に、亀裂進展に対する抑止効果を示すことでFODに対しての良好な耐久性を発現する。
ここで、<111>方位付近とは、図3に示すイットリア安定化ジルコニアの優先成長させた柱状組織の<001>、<101>、<111>の3方位に囲まれた結晶方位図において、<111>、<212>、<113>の3方位に囲まれた結晶方位範囲に含まれる方位である。
また、<111>方位付近は、イットリア安定化ジルコニアの優先成長させた柱状組織の<111>から15度以内に含まれる方位であってもよい。
【0027】
図6は、本発明の一実施例を示す、イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)マイクロピラーの電子顕微鏡写真で、ナノ双晶を表している。本明細書において、ナノ双晶とは、双晶境界に囲まれた厚さ1000nm以下のドメインを構成単位とした微細組織を指す。図6の電子顕微鏡写真では、ナノ双晶として厚さ50~200nmのドメインを構成単位とした微細組織が表れている。
【0028】
イットリア安定化ジルコニアであるZrO-Y系において、熱遮蔽コーティングとして実用的に使われるのは、Yの質量濃度が7~8質量%の範囲である。ミクロ組織としては、正方晶相であり、ナノ双晶が含まれればよい。そこで、ナノ双晶が得られ得る組成範囲としては、Yの質量濃度が6~16質量%の範囲にまで適用できる。理想的なマトリックス組織は、上述の化学組成で、正方晶単相組織を有している。正方晶単相組織は、プラズマ溶射法や電子ビーム物理気相蒸着法(EB-PVD)等の急冷プロセスで生じる。
これに対してZrO-Y系における平衡相は、上述の組成範囲では正方晶+立方晶の二相組織を有している。二相組織は、製造プロセス中の熱の影響で不可避的に表れる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の熱遮蔽コーティングによれば、外的環境からの異物衝突が生じた際のセラミックス層における脆性破壊を抑制し、強靭化されて信頼性を向上させているので、タービン用ブレード部材や、航空機用ジェットエンジン又は発電用ガスタービンに用いて好適である。
【符号の説明】
【0030】
10 母材(ニッケル基耐熱超合金)
20 ボンドコート
22 熱成長酸化物層
24 トップコート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7