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  • 特許-鋼板のガス切断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】鋼板のガス切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 7/00 20060101AFI20230726BHJP
   B23K 37/02 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B23K7/00 501C
B23K37/02 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019236816
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104533
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000159618
【氏名又は名称】吉川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 恭典
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 大介
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-033479(JP,U)
【文献】特開平01-095872(JP,A)
【文献】特開平04-279276(JP,A)
【文献】特開平05-319366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 7/00
B23K 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断鋼板をガス切断する鋼板のガス切断装置であって、
被切断鋼板の幅方向に沿うように被切断鋼板の上方に配置され、被切断鋼板の長手方向に沿う方向(以下「走行方向」という。)に配置されたレールに沿って走行可能な走行フレームと、
前記走行フレームの長手方向に沿う方向(以下「横行方向」という。)に移動可能なガストーチとを備え、
前記走行フレームは、前記レールに沿って走行する走行ユニットを含み、
前記走行ユニットは、走行ユニット本体と、前記走行ユニット本体の走行方向一側に配置され、前記レールの両側面に対向するサイドローラーセット(以下「一側サイドローラーセット」という。)と、前記走行ユニット本体の走行方向他側に配置され、前記レールの両側面に対向するサイドローラーセット(以下「他側サイドローラーセット」という。)とを含み、
前記一側サイドローラーセットは、前記レールの一方の側面に対向するサイドローラー(以下「第1サイドローラー」という。)と、前記レールの他方の側面に対向するサイドローラー(以下「第2サイドローラー」という。)とを含み、
前記他側サイドローラーセットは、前記レールの一方の側面に対向するサイドローラー(以下「第3サイドローラー」という。)と、前記レールの他方の側面に対向するサイドローラー(以下「第4サイドローラー」という。)とを含み、
前記走行体ユニット本体には、第1距離センサと第2距離センサとが設置され、
前記第1距離センサと前記第2距離センサの設置パターンは次の(1)から(4)のいずれかであり、
(1)前記第1距離センサ:前記第1サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第2サイドローラーの近傍に設置
(2)前記第1距離センサ:前記第3サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第4サイドローラーの近傍に設置
(3)前記第1距離センサ:前記第1サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第3サイドローラーの近傍に設置
(4)前記第1距離センサ:前記第2サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第4サイドローラーの近傍に設置
前記第1距離センサと前記第2距離センサは、それぞれ前記レールの側面までの距離を連続的に計測し、
前記第1距離センサと前記第2距離センサがそれぞれ連続的に計測する距離の差分を連続的に求める演算手段を備える、鋼板のガス切断装置。
【請求項2】
前記差分が所定値以上となったときに警報を発する警報手段を更に備える、請求項1に記載の鋼板のガス切断装置。
【請求項3】
被切断鋼板を横行方向にガス切断するクロスカッターである、請求項1又は2に記載の鋼板のガス切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断鋼板をガス切断する鋼板のガス切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板のガス切断装置として、被切断鋼板の幅方向に沿うように被切断鋼板の上方に配置され、被切断鋼板の長手方向に沿う方向、すなわち走行方向に配置されたレールに沿って走行可能な走行フレームと、この走行フレームの長手方向に沿う方向、すなわち横行方向に移動可能なガストーチとを備えるものが知られている(例えば特許文献1)。
ところが、このような鋼板のガス切断装置では、どうしても時間の経過と共に、走行フレームとレールとの間の隙間が大きくなる。走行フレームとレールとの間の隙間が大きくなりすぎると、被切断鋼板の長手方向に対する走行フレームの長手方向の直角度が低下する。その結果、被切断鋼板を横行方向に切断する際に、その切断方向の被切断鋼板の長手方向に対する直角度が低下し、被切断鋼板の横行方向の切断精度が低下する。また、走行フレームとレールとの間の隙間が大きくなりすぎると、走行フレームの走行安定性も低下するため、被切断鋼板の走行方向の切断精度も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-231175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、鋼板のガス切断装置において走行フレームとレールとの間の隙間が大きくなりすぎると、被切断鋼板の切断精度が低下する。したがって、被切断鋼板の切断精度を維持するには、走行フレームとレールとの間の隙間を管理する必要がある。
そこで本発明が解決しようとする課題は、走行フレームとレールとの間の隙間を管理することのできる鋼板のガス切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、次の1から3の鋼板のガス切断が提供される。
1.
被切断鋼板をガス切断する鋼板のガス切断装置であって、
被切断鋼板の幅方向に沿うように被切断鋼板の上方に配置され、被切断鋼板の長手方向に沿う方向(以下「走行方向」という。)に配置されたレールに沿って走行可能な走行フレームと、
前記走行フレームの長手方向に沿う方向(以下「横行方向」という。)に移動可能なガストーチとを備え、
前記走行フレームは、前記レールに沿って走行する走行ユニットを含み、
前記走行ユニットは、走行ユニット本体と、前記走行ユニット本体の走行方向一側に配置され、前記レールの両側面に対向するサイドローラーセット(以下「一側サイドローラーセット」という。)と、前記走行ユニット本体の走行方向他側に配置され、前記レールの両側面に対向するサイドローラーセット(以下「他側サイドローラーセット」という。)とを含み、
前記一側サイドローラーセットは、前記レールの一方の側面に対向するサイドローラー(以下「第1サイドローラー」という。)と、前記レールの他方の側面に対向するサイドローラー(以下「第2サイドローラー」という。)とを含み、
前記他側サイドローラーセットは、前記レールの一方の側面に対向するサイドローラー(以下「第3サイドローラー」という。)と、前記レールの他方の側面に対向するサイドローラー(以下「第4サイドローラー」という。)とを含み、
前記走行体ユニット本体には、第1距離センサと第2距離センサとが設置され、
前記第1距離センサと前記第2距離センサの設置パターンは次の(1)から(4)のいずれかであり、
(1)前記第1距離センサ:前記第1サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第2サイドローラーの近傍に設置
(2)前記第1距離センサ:前記第3サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第4サイドローラーの近傍に設置
(3)前記第1距離センサ:前記第1サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第3サイドローラーの近傍に設置
(4)前記第1距離センサ:前記第2サイドローラーの近傍に設置
前記第2距離センサ:前記第4サイドローラーの近傍に設置
前記第1距離センサと前記第2距離センサは、それぞれ前記レールの側面までの距離を連続的に計測し、
前記第1距離センサと前記第2距離センサがそれぞれ連続的に計測する距離の差分を連続的に求める演算手段を備える、鋼板のガス切断装置。
2.
前記差分が所定値以上となったときに警報を発する警報手段を更に備える、前記1に記載の鋼板のガス切断装置。
3.
被切断鋼板を横行方向にガス切断するクロスカッターである、前記1又は2に記載の鋼板のガス切断装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、第1距離センサと第2距離センサがそれぞれ連続的に計測する距離の差分を連続的に求める。この差分は、走行フレームとレールとの間の隙間の大きさを示す指標となる。すなわち、この差分が大きいほど走行フレームとレールとの間の隙間が大きいということである。したがって本発明によれば、この差分を管理することにより、走行フレームとレールとの間の隙間を管理することができる。
そして、この差分が所定値以上となったときに警報を発するなどの対応を行うことにより、被切断鋼板の切断精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態であるクロスカッターを含むガス切断システムの概略平面図で、(a)は被切断鋼板を走行方向にガス切断している状態、(b)被切断鋼板を横行方向にガス切断しようとしている状態。
図2】走行ユニットを示し、(a)は概略平面図、(b)は(a)のI-I断面図。
図3】走行ユニットの傾斜角度θを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に、本発明の一実施形態であるクロスカッター100を含むガス切断システムAを示している。
このガス切断システムAは、被切断鋼板Sを横行方向にガス切断するクロスカッター100と、被切断鋼板Sを走行方向にガス切断するフレームプレーナー200とを備えている。
【0009】
クロスカッター100は、被切断鋼板Sの幅方向に沿うように被切断鋼板Sの上方に配置され、被切断鋼板Sの長手方向に沿う方向、すなわち走行方向に移動可能な走行フレームとして、門型フレーム10を備えている。具体的にはこの門型フレーム10は、被切断鋼板Sの幅方向を跨ぐ(架設する)ように配置され、走行方向に配置されたレール11a,11bに沿って走行可能である。また、この門型フレーム10は、詳細は後述するがレール11aに沿って走行する走行ユニット12を含む。なお、門型フレーム10を走行させるための駆動機構(モータ等)は図示を省略している。
【0010】
門型フレーム10には1つのガストーチ20が取り付けられている。具体的にはこのガストーチ20は、門型フレーム10の長手方向に沿う方向、すなわち横行方向に移動可能に取り付けられている。なお、この横行方向とは被切断鋼板Sの幅方向に沿う方向でもある。
【0011】
フレームプレーナー200も、クロスカッター100と同様に門型フレーム10Aを備え、この門型フレーム10Aには2つのガストーチ20Aがそれぞれ門型フレーム10Aの長手方向に沿う方向、すなわち横行方向に移動可能に取り付けられている。
【0012】
このガス切断システムAでは、図1(a)に示すようにフレームプレーナー200によって被切断鋼板Sの耳を切断する。耳切断後、製品を得るために図1(b)に示すように被切断鋼板Sを横行方向に2箇所(S1,S2)で切断する。
【0013】
次に、図2を参照して走行ユニット12の構成を説明する。
走行ユニット12は、走行ユニット本体12aと、走行ユニット本体12aの走行方向一側に配置され、レール11aの両側面に対向する一側サイドローラーセット12bと、走行ユニット本体12aの走行方向他側に配置され、レール11aの両側面に対向する他側サイドローラーセット12cとを含む。
一側サイドローラーセット12bは、レール11aの一方の側面に対向する第1サイドローラー12b-1と、レール11aの他方の側面に対向する第2サイドローラー12b-2という。)とを含む。また、他側サイドローラーセット12cは、レール11aの一方の側面に対向する第3サイドローラー12c-3と、レール11aの他方の側面に対向する第4サイドローラー12c-4とを含む。
また、走行ユニット本体12aには、第1距離センサ13と第2距離センサ14とが設置されている。第1距離センサ13と第2距離センサ14は、それぞれレール11aの側面までの距離を連続的に計測する。
【0014】
このように走行ユニット12は4個のサイドローラーを含むことから、各サイドローラーとレール11aの側面との間には隙間a~dがあり、その隙間a~dのガタつきにより走行ユニット12は、例えば図3に示すように傾斜角度θで傾斜する。この傾斜角度θは、被切断鋼板の長手方向(レール11aの長手方向)に対する走行フレームの長手方向(横行切断方向)の直角度のズレを示しており、傾斜角度θ=tan-1((a-c)/L)、又は傾斜角度θ=tan-1((d-b)/L)で表される。ここで、Lは一側サイドローラーセット12bと他側サイドローラーセット12cとの間の間隔である。
すなわち傾斜角度θは、隙間aと隙間cの差分、又は隙間bと隙間dの差分が大きいほど大きくなる。また傾斜角度θは、隙間aと隙間bの差分、又は隙間cと隙間dの差分が大きいほど大きくなる。
【0015】
本実施形態では、隙間bと隙間dの差分の程度を計測するために、第1距離センサ13を第2サイドローラー12b-2の近傍に設置し、第2距離センサ14を第4サイドローラー12c-4の近傍に設置している(上述の設置パターン(4))。
第1距離センサ13と第2距離センサ14は上述のとおり、それぞれレール11aの側面までの距離を連続的に計測するが、本実施形態において第1距離センサ13が連続的に計測する距離xは隙間bに対応し、第2距離センサ14が連続的に計測する距離yは隙間dに対応する、そして本実施形態では、第1距離センサ13と第2距離センサ14がそれぞれ連続的に計測する距離の差分を連続的に求める演算手段(図示省略)を備えるところ、本実施形態において演算手段が求める差分は隙間bと隙間dの差分に対応し、ひいては走行フレーム10とレール11aとの間の隙間に対応する。すなわち、演算手段が求める差分が大きいほど走行フレーム10とレール11aとの間の隙間が大きいということである。したがって本実施形態によれば、この差分を管理することにより走行フレーム10とレール11aとの間の隙間を管理することができる。
なお、本実施形態において、上述の距離xと距離yを用いて図3に示す傾斜角度θを表すと傾斜角度θ=tan-1((y-x)/L’)となる。ここで、L’は第1距離センサ13と第2距離センサ14との間の間隔である。、
【0016】
本実施形態では、演算手段が求めた差分が所定値以上となったときに警報を発する警報手段を更に備えている。すなわち本実施形態では、この差分が所定値以上となったときに警報手段によって警報を発することにより、被切断鋼板の切断精度を維持することができる。
【0017】
本実施形態では、隙間bと隙間dの差分の程度を計測するために第1距離センサ13を第2サイドローラー12b-2の近傍に設置し、第2距離センサ14を第4サイドローラー12c-4の近傍に設置したが(上述の設置パターン(4))、隙間aと隙間bの差分の程度を計測するために第1距離センサ13を第1サイドローラー12b-1の近傍に設置し、第2距離センサ14を第2サイドローラー12b-2の近傍に設置してもよく(上述の設置パターン(1))、隙間cと隙間dの差分の程度を計測するために第1距離センサ13を第3サイドローラー12c-3の近傍に設置し、第2距離センサ14を第4サイドローラー12c-4の近傍に設置してもよく(上述の設置パターン(2))、隙間aと隙間cの差分の程度を計測するために第1距離センサ13を第1サイドローラー12b-1の近傍に設置し、第2距離センサ14を第3サイドローラー12c-3の近傍に設置してもよい(上述の設置パターン(3))。
いずれの設置パターンであっても、演算手段によって第1距離センサ13と第2距離センサ14がそれぞれ連続的に計測する距離の差分を連続的に求めることで、走行フレーム10とレール11aとの間の隙間を管理することができる。
【0018】
本実施形態ではクロスカッターに走行ユニット12を適用したが、フレームプレーナーに走行ユニット12を適用することもできる。
【符号の説明】
【0019】
A ガス切断システム
100 クロスカッター
200 フレームプレーナー
10,10A 門型フレーム(走行フレーム)
11a,11b レール
12 走行ユニット
12a 走行ユニット本体
12b 一側サイドローラーセット
12b-1 第1サイドローラー
12b-2 第2サイドローラー
12c 他側サイドローラーセット
12c-3 第3サイドローラー
12c-4 第4サイドローラー
13 第1距離センサ
14 第2距離センサ
20,20A ガストーチ
S 被切断鋼板
図1
図2
図3