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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】アクティブ配電網の安全性評価方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230726BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 120
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022505619
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2021106988
(87)【国際公開番号】W WO2022022307
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】202010736523.8
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522036543
【氏名又は名称】南京郵電大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岳 東
(72)【発明者】
【氏名】張 智俊
(72)【発明者】
【氏名】竇 春霞
(72)【発明者】
【氏名】丁 孝華
(72)【発明者】
【氏名】張 騰飛
(72)【発明者】
【氏名】李 延満
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-123593(JP,A)
【文献】特開2004-064941(JP,A)
【文献】特開2012-254007(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079554(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110807172(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108510162(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
G06Q 10/00 -10/30
G06Q 30/00 -30/08
G06Q 50/00 -50/20
G06Q 50/26 -99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ配電網が不安定になる確率を計算するステップと、
アクティブ配電網の時空間モデルを構築するステップと、
アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価するステップと、を含
アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価する方法は具体的に、
回折指標の行列R を、
【数1】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数2】
であり、
【数3】
であり、
式中、
【数4】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
【数5】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、
【数6】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードmに影響を与える確率であり、p (f)とp (f)はそれぞれ、ノードlとノードmの状態変化に起因する系統周波数変化の確率密度であり、
スパッタリング指標の行列R を、
【数7】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数8】
であり、
【数9】
であり、
式中、
【数10】
は、第j時点のノードlが複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードl以外の他の第i時点のノードがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
フォーカス指標の行列R を、
【数11】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数12】
であり、
【数13】
であり、
式中、
【数14】
は、第j時点のノードが全て複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードlがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
グローバル指標の行列R を、
【数15】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数16】
であり、そして、
上記4つの指標により、複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の安全安定運転状態を総合的に評価する、ということを含む、ことを特徴とするアクティブ配電網の安全性評価方法。
【請求項2】
アクティブ配電網が不安定になる確率を計算する方法は具体的に、
複数の不確実性の影響下において、アクティブ配電網のノードの慣性が全て
【数17】
の範囲内にあると、アクティブ配電網は安定とされ、アクティブ配電網の各ノードの慣性が
【数18】
の範囲内にある確率は、該ノードの周波数変化率が
【数19】
の範囲内にある確率となり、それでアクティブ配電網が安定する確率PMIを、
【数20】
とし、
式中、
【数21】
はアクティブ配電網の周波数変化率の上限であり、
【数22】
はアクティブ配電網の周波数変化率の下限であり、p(f)はアクティブ配電網の周波数変化の確率密度であり、
【数23】
はアクティブ配電網の慣性の上限であり、
【数24】
はアクティブ配電網の慣性の下限であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてPMIを求め、
それでアクティブ配電網が不安定になる確率Pは、P=1-PMIとする、ということを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【請求項3】
複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の慣性の計算式を、
【数25】
とし、
式中、Hsysはアクティブ配電網の慣性であり、fはアクティブ配電網の定格電力であり、Rf,sysはアクティブ配電網の周波数変化率であり、ΔPは複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の電力変化量である、ことを特徴とする請求項2に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【請求項4】
アクティブ配電網の時空間モデルを構築する方法は具体的に、
アクティブ配電網の全てのノードが異なる時空間で互いに影響し合う確率行列A、即ち時空間モデルを、
【数26】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素Ai,jはゼロ行列であり、
アクティブ配電網にn個のノードが含まれると、
【数27】
となり、
【数28】
となり、
ここで、
【数29】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、Ai,jは、全体時間Tにおいて、第i時点のノードが第j時点のノードによる影響を受ける確率であり、
各pl,m|i,jは互いに独立し、且つ異なる確率分布に従っており、
ノードmとノードlが結合していない場合、
【数30】
となり、
複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化は、その閾値よりも大きくなる場合、pl,m|i,j≠0且つ
【数31】
となり、
ここで、xm|j→xm|iは、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化であり、
【数32】
は、ノードmの状態の閾値であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてpl,m|i,jを求め、そして
ノードの状態の閾値式を、
【数33】
とし、
式中、H(x)はノードの状態と周波数変化率の関係であり、x∈Φはノード状態の条件式である、ということを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【請求項5】
アクティブ配電網の各ノードの閾値を取得する方法は具体的に、
スウォームサイズN、各パーティクルの位置x及び速度vについてパーティクルスウォームを初期化するステップS1と、
各パーティクルの適合度値H(x)を計算するステップS2と、
各パーティクルの適合度値H(x)を個体の極値pbest(i)と比較し、H(x)>pbest(i)であると、H(x)でpbest(i)を代替するステップS3と、
各パーティクルの適合度値H(x)をグローバル極値gbest(i)と比較し、H(x)>gbest(i)であると、H(x)でgbest(i)を代替するステップS4と、

【数34】
によってパーティクルの位置xと速度vを更新するステップS5であって、
式中、
【数35】
はt回目の反復におけるパーティクルiの飛行速度ベクトルであり、
【数36】
はt回目の反復におけるパーティクルiの位置ベクトルであり、cとcは学習係数であり、rとrは[0,1]の範囲内の一様乱数であり、wは慣性質量であり、pbestとgbestはそれぞれ、パーティクルと集団が経験した最良の位置であるステップS5と、
【数37】
又はサイクル数が最大サイクル数Ncに達すると、S2に戻るステップS6と、を含む、ことを特徴とする請求項4に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電網評価の技術分野に関し、具体的にはアクティブ配電網の安全性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アクティブ配電網は、再生可能エネルギーと負荷を一体化した運転を実現する手段として、各国において研究の焦点となっている。また、電気自動車の充電パイルも徐々にアクティブ配電網の重要な構成部分となっている。しかし、再生可能エネルギーは風、光などの自然条件から影響を受けており、その出力には大きな不確実性が存在するほか、電気自動車による不規則な充電挙動もアクティブ配電網の安全安定運転に新たな挑戦をもたらしている。また、アクティブ配電網の物理系統と情報系統の結合にもリスクがあり、異なるネットワーク攻撃によるアクティブ配電網の損害も多岐にわたっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の問題を解決し、アクティブ配電網の安全性状態に対する正確な判断と早期警報を実現し、アクティブ配電網の安全安定運転を確保するアクティブ配電網の安全性評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0005】
本発明は、
アクティブ配電網が不安定になる確率を計算するステップと、
アクティブ配電網の時空間モデルを構築するステップと、
アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価するステップと、を含む、アクティブ配電網の安全性評価方法を提供する。
【0006】
さらに、アクティブ配電網が不安定になる確率を計算する方法は具体的に、
複数の不確実性の影響下において、アクティブ配電網のノードの慣性が全て
【数1】
の範囲内にあると、アクティブ配電網は安定とされ、アクティブ配電網の各ノードの慣性が
【数2】
の範囲内にある確率は、該ノードの周波数変化率が
【数3】
の範囲内にある確率となり、それでアクティブ配電網が安定する確率PMIを、
【数4】
とし、
式中、
【数5】
はアクティブ配電網の周波数変化率の上限であり、
【数6】
はアクティブ配電網の周波数変化率の下限であり、p(f)はアクティブ配電網の周波数変化の確率密度であり、
【数7】
はアクティブ配電網の慣性の上限であり、
【数8】
はアクティブ配電網の慣性の下限であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてPMIを求め、
それでアクティブ配電網が不安定になる確率Pは、P=1-PMIとする、ということを含む。
【0007】
さらに、複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の慣性の計算式を、
【数9】
とし、
式中、Hsysはアクティブ配電網の慣性であり、fはアクティブ配電網の定格電力であり、Rf,sysはアクティブ配電網の周波数変化率であり、ΔPは複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の電力変化量である。
【0008】
さらに、アクティブ配電網の時空間モデルを構築する方法は具体的に、
アクティブ配電網の全てのノードが異なる時空間で互いに影響し合う確率行列A、即ち時空間モデルを、
【数10】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素Ai,jはゼロ行列であり、
アクティブ配電網にn個のノードが含まれると、
【数11】
となり、
【数12】
となり、
ここで、
【数13】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、Ai,jは、全体時間Tにおいて、第i時点のノードが第j時点のノードによる影響を受ける確率であり、
各pl,m|i,jは互いに独立し、且つ異なる確率分布に従っており、
ノードmとノードlが結合していない場合、
【数14】
となり、
複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化は、その閾値よりも大きくなる場合、pl,m|i,j≠0且つ
【数15】
となり、
ここで、xm|j→xm|iは、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化であり、
【数16】
は、ノードmの状態の閾値であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてpl,m|i,jを求め、そして
ノードの状態の閾値式を、
【数17】
とし、
式中、H(x)はノードの状態と周波数変化率の関係であり、x∈Φはノード状態の条件式である、ということを含む。
【0009】
さらに、アクティブ配電網の各ノードの閾値を取得する方法は具体的に、
スウォームサイズN、各パーティクルの位置x及び速度vについてパーティクルスウォームを初期化するステップS1と、
各パーティクルの適合度値H(x)を計算するステップS2と、
各パーティクルの適合度値H(x)を個体の極値pbest(i)と比較し、H(x)>pbest(i)であると、H(x)でpbest(i)を代替するステップS3と、
各パーティクルの適合度値H(x)をグローバル極値gbest(i)と比較し、H(x)>gbest(i)であると、H(x)でgbest(i)を代替するステップS4と、

【数18】
によってパーティクルの位置xと速度vを更新するステップS5であって、
式中、
【数19】
はt回目の反復におけるパーティクルiの飛行速度ベクトルであり、
【数20】
はt回目の反復におけるパーティクルiの位置ベクトルであり、cとcは学習係数であり、rとrは[0,1]の範囲内の一様乱数であり、wは慣性質量であり、pbestとgbestはそれぞれ、パーティクルと集団が経験した最良の位置であるステップS5と、
【数21】
又はサイクル数が最大サイクル数Ncに達すると、S2に戻るステップS6と、を含む。
【0010】
さらに、アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価する方法は具体的に、
回折指標の行列Rを、
【数22】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数23】
であり、
【数24】
であり、
式中、
【数25】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
【数26】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、
【数27】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードmに影響を与える確率であり、p(f)とp(f)はそれぞれ、ノードlとノードmの状態変化に起因する系統周波数変化の確率密度であり、
スパッタリング指標の行列Rを、
【数28】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数29】
であり、
【数30】
であり、
式中、
【数31】
は、第j時点のノードlが複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードl以外の他の第i時点のノードがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
フォーカス指標の行列Rを、
【数32】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数33】
であり、
【数34】
であり、
式中、
【数35】
は、第j時点のノードが全て複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードlがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
グローバル指標の行列Rを、
【数36】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数37】
であり、そして
上記4つの指標により、複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の安全安定運転状態を総合的に評価する、ということを含む。
【発明の効果】
【0011】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明により提供されるアクティブ配電網の安全性評価方法は、まずアクティブ配電網が不安定になる確率を計算し、次にアクティブ配電網の時空間モデルを構築し、最後にアクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価する。本発明は、複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の安全性評価という課題を解決し、アクティブ配電網の安全安定運転を確保することができるとともに、正確な評価が得られ、様々なタイプのアクティブ配電網の運転安全性評価に適し、良好な応用の将来性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例により提供されるアクティブ配電網の安全性評価方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例により提供されるアクティブ配電網の安全性評価方法において各ノードの閾値を求めるパーティクルスウォーム最適化アルゴリズムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的解決手段を明確且つ完全に説明し、当然ながら、説明される実施例が本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。当業者が本発明における実施例に基づいて創造的労動を行うことなく得た他の実施例は、全て本発明が保護する範囲に含まれるものとする。
【0014】
本発明の実施例により提供されるアクティブ配電網の安全性評価方法は、
アクティブ配電網が不安定になる確率を計算するステップと、
アクティブ配電網の時空間モデルを構築するステップと、
アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価するステップと、を含む。
【0015】
アクティブ配電網が不安定になる確率を計算する方法は具体的に以下を含む。
発電ユニットの慣性の計算式から、外乱が発生した場合のアクティブ配電網の周波数変化率の計算式は、
【数38】
と導出でき、
アクティブ配電網の周波数変化率の式から、アクティブ配電網の慣性の計算式は、
【数39】
と導出でき、
式中、Hsysはアクティブ配電網の慣性であり、ΔPは複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の電力変化量であり、その値は場合によって異なり、具体的な状況によって決定され、fはアクティブ配電網の定格周波数であり、Rf,sysはアクティブ配電網の周波数変化率であり、
アクティブ配電網は、安定している場合に、その慣性が一定の範囲内、即ち
【数40】
内にあり、ここで
【数41】
であり、
式中、
【数42】
はアクティブ配電網の慣性の上限であり、
【数43】
はアクティブ配電網の慣性の下限であり、
【数44】
はアクティブ配電網の周波数変化率の上限であり、
【数45】
はアクティブ配電網の周波数変化率の下限であり、
アクティブ配電網が複数の不確実性の影響を受け且つΔPが決定された場合、アクティブ配電網のノードの慣性が全て
【数46】
の範囲内に維持されていなければ、アクティブ配電網は安定せず、このような場合に、アクティブ配電網の各ノードの慣性が
【数47】
の範囲内に維持する確率は、該ノードの周波数変化率が
【数48】
の範囲内にある確率となり、
複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網が安定する確率の計算式を、
【数49】
とし、
式中、PMIはアクティブ配電網が安定する確率であり、p(f)は複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の周波数変化の確率密度であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてPMIを求め、そして
複数の不確実性の影響下において、アクティブ配電網が不安定になる確率の計算式を、
P=1-PMIとし、
式中、Pは、アクティブ配電網が不安定になる確率である。
【0016】
アクティブ配電網の時空間モデルを構築する方法は具体的に以下を含む。
アクティブ配電網の全てのノードが異なる時空間で互いに影響し合う確率行列A、即ち時空間モデルを、
【数50】
とし、
ここで、時間が不可逆であるため、枠で囲まれた要素Ai,jはゼロ行列であり、
アクティブ配電網にn個のノードが含まれると、
【数51】
となり、
【数52】
となり、
ここで、
【数53】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、Ai,jは、全体時間Tにおいて、第i時点のノードが第j時点のノードによる影響を受ける確率であり、
各pl,m|i,jは互いに独立し、且つ異なる確率分布に従っており、
ノードmとノードlが結合していない場合、
【数54】
となり、
複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化は、その閾値よりも大きくなる場合、pl,m|i,j≠0且つ
【数55】
となり、
ここで、xm|j→xm|iは、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化であり、それはアクティブ配電網の構造に関係し、
【数56】
は、ノードmの状態の閾値であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてpl,m|i,jを求め、そして
ノードの状態の閾値式を、
【数57】
とし、
式中、H(x)はノード状態と周波数変化率の関係であり、x∈Φはノード状態の条件式である。
【0017】
パーティクルスウォーム最適化アルゴリズムでアクティブ配電網の各ノードの閾値を取得してもよく、その方法としては具体的に、
スウォームサイズN、各パーティクルの位置x及び速度vについてパーティクルスウォームを初期化するステップS1と、
各パーティクルの適合度値H(x)を計算するステップS2と、
各パーティクルの適合度値H(x)を個体の極値pbest(i)と比較し、H(x)>pbest(i)であると、H(x)でpbest(i)を代替するステップS3と、
各パーティクルの適合度値H(x)をグローバル極値gbest(i)と比較し、H(x)>gbest(i)であると、H(x)でgbest(i)を代替するステップS4と、

【数58】
によってパーティクルの位置xと速度vを更新するステップS5であって、
式中、
【数59】
はt回目の反復におけるパーティクルiの飛行速度ベクトルであり、
【数60】
はt回目の反復におけるパーティクルiの位置ベクトルであり、cとcは学習係数であり、加速定数とも呼ばれ、rとrは[0,1]の範囲内の一様乱数であり、wは慣性質量であって、非負数であり、解空間を探索する範囲を調整するものであり、pbestとgbestはそれぞれ、パーティクルと集団が経験した最良の位置であるステップS5と、
【数61】
又はサイクル数が最大サイクル数Ncに達すると、S2に戻るステップS6と、を含む。
【0018】
アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価する的方法は具体的に以下を含む。
回折指標の行列Rを、
【数62】
とし、
ここで、行列Rは行列Aと同様に、枠で囲まれた要素がゼロ行列であり、
【数63】
であり、
【数64】
であり、
式中、
【数65】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
【数66】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、
【数67】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードmに影響を与える確率であり、p(f)とp(f)はそれぞれ、ノードlとノードmの状態変化に起因する系統周波数変化の確率密度であり、
スパッタリング指標の行列Rを、
【数68】
とし、
ここで、行列Rは行列Aと同様に、枠で囲まれた要素がゼロ行列であり、
【数69】
であり、
【数70】
であり、
式中、
【数71】
は、第j時点のノードlが複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードl以外の他の第i時点のノードがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
フォーカス指標の行列Rを、
【数72】
とし、
ここで、行列Rは行列Aと同様に、枠で囲まれた要素がゼロ行列であり、
【数73】
であり、
【数74】
であり、
式中、
【数75】
は、第j時点のノードが全て複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードlがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
グローバル指標の行列Rを、
【数76】
とし、
ここで、行列Rは行列Aと同様に、枠で囲まれた要素がゼロ行列であり、
【数77】
であり、そして
上記4つの指標により、複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の安全安定運転状態を総合的に評価する。
【0019】
本発明はアクティブ配電網の安全性評価方法を提供し、アクティブ配電網の安全性とアクティブ配電網における各ノードの慣性を組み合わせ、慣性とノードの周波数変化率を関連付け、安全性評価の課題を確率の課題として捉え、マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でアクティブ配電網が不安定になる確率を求め、アクティブ配電網のモデルを構築し、異なる時空間の条件でのノード同士が互いに影響し合う確率を判断し、最後にアクティブ配電網の各リスク指標を定義し、前記リスク指標を使用してアクティブ配電網の安全性を総合的に評価する。本発明は、複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の安全性評価という課題を解決し、アクティブ配電網の安全安定運転を確保することができるとともに、正確な評価が得られ、様々なタイプのアクティブ配電網の運転安全性評価に適し、良好な応用の将来性を有する。
【0020】
当業者にとって明らかなように、本発明は、上記の例示的な実施例の細部に限定されるものではなく、且つ、本発明の精神または基本的な特徴から逸脱しない限り、他の具体的な形態で本発明を実現することが可能である。したがって、どのような点から見ても、実施例は例示的で非限定的なものと見なされるべきであり、本発明の範囲は以上の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるため、請求項の同等物の意味と範囲内にあるあらゆる変化が本発明に含まれるように意図する。請求項におけるいかなる符号も、関連する請求項を制限するものと解釈されるべきではない。
【0021】
(付記)
(付記1)
アクティブ配電網が不安定になる確率を計算するステップと、
アクティブ配電網の時空間モデルを構築するステップと、
アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価するステップと、を含む、ことを特徴とするアクティブ配電網の安全性評価方法。
【0022】
(付記2)
アクティブ配電網が不安定になる確率を計算する方法は具体的に、
複数の不確実性の影響下において、アクティブ配電網のノードの慣性が全て
【数78】
の範囲内にあると、アクティブ配電網は安定とされ、アクティブ配電網の各ノードの慣性が
【数79】
の範囲内にある確率は、該ノードの周波数変化率が
【数80】
の範囲内にある確率となり、それでアクティブ配電網が安定する確率PMIを、
【数81】
とし、
式中、
【数82】
はアクティブ配電網の周波数変化率の上限であり、
【数83】
はアクティブ配電網の周波数変化率の下限であり、p(f)はアクティブ配電網の周波数変化の確率密度であり、
【数84】
はアクティブ配電網の慣性の上限であり、
【数85】
はアクティブ配電網の慣性の下限であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてPMIを求め、
それでアクティブ配電網が不安定になる確率Pは、P=1-PMIとする、ということを含む、ことを特徴とする付記1に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【0023】
(付記3)
複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の慣性の計算式を、
【数86】
とし、
式中、Hsysはアクティブ配電網の慣性であり、fはアクティブ配電網の定格電力であり、Rf,sysはアクティブ配電網の周波数変化率であり、ΔPは複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の電力変化量である、ことを特徴とする付記2に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【0024】
(付記4)
アクティブ配電網の時空間モデルを構築する方法は具体的に、
アクティブ配電網の全てのノードが異なる時空間で互いに影響し合う確率行列A、即ち時空間モデルを、
【数87】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素Ai,jはゼロ行列であり、
アクティブ配電網にn個のノードが含まれると、
【数88】
となり、
【数89】
となり、
ここで、
【数90】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、Ai,jは、全体時間Tにおいて、第i時点のノードが第j時点のノードによる影響を受ける確率であり、
各pl,m|i,jは互いに独立し、且つ異なる確率分布に従っており、
ノードmとノードlが結合していない場合、
【数91】
となり、
複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化は、その閾値よりも大きくなる場合、pl,m|i,j≠0且つ
【数92】
となり、
ここで、xm|j→xm|iは、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードmが第i時点のノードlの状態に及ぼす変化であり、
【数93】
は、ノードmの状態の閾値であり、
マルコフ連鎖モンテカルロシミュレーション法でサンプリングしてpl,m|i,jを求め、そして
ノードの状態の閾値式を、
【数94】
とし、
式中、H(x)はノードの状態と周波数変化率の関係であり、x∈Φはノード状態の条件式である、ということを含む、ことを特徴とする付記1に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【0025】
(付記5)
アクティブ配電網の各ノードの閾値を取得する方法は具体的に、
スウォームサイズN、各パーティクルの位置x及び速度vについてパーティクルスウォームを初期化するステップS1と、
各パーティクルの適合度値H(x)を計算するステップS2と、
各パーティクルの適合度値H(x)を個体の極値pbest(i)と比較し、H(x)>pbest(i)であると、H(x)でpbest(i)を代替するステップS3と、
各パーティクルの適合度値H(x)をグローバル極値gbest(i)と比較し、H(x)>gbest(i)であると、H(x)でgbest(i)を代替するステップS4と、

【数95】
によってパーティクルの位置xと速度vを更新するステップS5であって、
式中、
【数96】
はt回目の反復におけるパーティクルiの飛行速度ベクトルであり、
【数97】
はt回目の反復におけるパーティクルiの位置ベクトルであり、cとcは学習係数であり、rとrは[0,1]の範囲内の一様乱数であり、wは慣性質量であり、pbestとgbestはそれぞれ、パーティクルと集団が経験した最良の位置であるステップS5と、
【数98】
又はサイクル数が最大サイクル数Ncに達すると、S2に戻るステップS6と、を含む、ことを特徴とする付記4に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
【0026】
(付記6)
アクティブ配電網が不安定になる確率に基づいて、回折指標、フォーカス指標、スパッタリング指標及びグローバル指標を前記時空間モデルによって確立し、上記4つの指標に基づいてアクティブ配電網の安全性を評価する方法は具体的に、
回折指標の行列Rを、
【数99】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数100】
であり、
【数101】
であり、
式中、
【数102】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
【数103】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードlに影響を与える確率であり、
【数104】
は、複数の不確実性の影響を受けた第j時点のノードlが第i時点のノードmに影響を与える確率であり、p(f)とp(f)はそれぞれ、ノードlとノードmの状態変化に起因する系統周波数変化の確率密度であり、
スパッタリング指標の行列Rを、
【数105】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数106】
であり、
【数107】
であり、
式中、
【数108】
は、第j時点のノードlが複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードl以外の他の第i時点のノードがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
フォーカス指標の行列Rを、
【数109】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数110】
であり、
【数111】
であり、
式中、
【数112】
は、第j時点のノードが全て複数の不確実性の影響を受けた場合に、第i時点のノードlがアクティブ配電網を不安定にする指標であり、
グローバル指標の行列Rを、
【数113】
とし、
ここで、枠で囲まれた要素はゼロ行列であり、
【数114】
であり、そして
上記4つの指標により、複数の不確実性の影響下におけるアクティブ配電網の安全安定運転状態を総合的に評価する、ということを含む、ことを特徴とする付記1に記載のアクティブ配電網の安全性評価方法。
図1
図2