(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ニコチンアミドリボースの有機酸塩、その組成物及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20230726BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230726BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20230726BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230726BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C07H19/048
A61K31/706
A61K47/12
A61K9/14
A61K47/22
A61K47/36
A61K47/28
A61P35/00
A61P3/00
(21)【出願番号】P 2022559562
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2020089566
(87)【国際公開番号】W WO2021196349
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】202010258334.4
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522383528
【氏名又は名称】深▲せん▼市迪克曼科技開発有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN DIECKMANN TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building F, 4th Floor, First Branch Of Zhongcheng Life Science Compass, Kengzi Zhongxin Road No. 14, Pingshan New District Shenzhen, Guangdong 518172, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楊 超文
(72)【発明者】
【氏名】王 蕾
(72)【発明者】
【氏名】宋 家良
(72)【発明者】
【氏名】符 定良
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/226755(WO,A1)
【文献】特表2017-518306(JP,A)
【文献】特表2016-538271(JP,A)
【文献】特表2016-530248(JP,A)
【文献】特表2017-516833(JP,A)
【文献】国際公開第2019/210607(WO,A1)
【文献】GOULD, Philip L.,Salt selection for basic drugs,International Journal of Pharmaceutics,1986年,Vol. 33,pp. 201-217,ISSN 0378-5173, 特にp. 202, TABLE 1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/048
A61K 31/706
A61K 47/12
A61K 9/14
A61K 47/22
A61K 47/36
A61K 47/28
A61P 35/00
A61P 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩であって、
前記有機酸は、リンゴ酸又はクエン酸であり、
前記ニコチンアミドリボースと有機酸とのモル比は1:2であることを特徴とする、ニコチンアミドリボースの有機酸塩。
【請求項2】
請求項1に記載のニコチンアミドリボースの有機酸塩の製造方法であって、
窒素ガスの保護下で、ニコチンアミドリボースをメタノールに溶解し、有機酸を加え、撹拌した後、メチルtert-ブチルエーテル又は酢酸エチルを加え、引き続き撹拌し、濾過、洗浄、乾燥により製品が得られることを特徴とする、製造方法。
【請求項3】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩の組成物であって、
ニコチンアミドリボースの有機酸塩及び担体を含み、
前記担体は、微結晶セルロースであり、
前記有機酸塩は、請求項1に記載の有機酸塩であることを特徴とする、組成物。
【請求項4】
請求項
3に記載の組成物の製造方法であって、
窒素ガスの保護下で、ニコチンアミドリボースの有機酸塩と担体を粉砕して混合することにより得られることを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、具体的には、ニコチンアミドリボースの有機酸塩、その組成物及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドリボース(NR)は、ビタミンB3(ニコチン酸とも呼ばれる)の誘導体である。多くの研究により、NRは生体の新陳代謝を促進し、幹細胞の老化を防止し、幹細胞の機能を維持するなどの作用を有することが示されている。肝がんの研究では、食事によるNRの補給は、マウスの肝がんの進行を阻止し、腫瘍の退行を誘発することができ、かつ高用量でも副作用が発見されなかった。また、β-ニコチンアミドリボース(β-NR)をリン酸化して得られたβ-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、生体内の補酵素Iの合成基質であり、β-NMNは、老化を防止し、インスリン分泌を調節し、mRNAの発現レベルに影響を与える活性を有することが研究により示されている。そのため、β-NR及びβ-NMNは、医薬品開発、再生医療、スキンケアの分野で注目の化合物となっており、巨大な市場需要が見込まれている。
【0003】
ニコチンアミドリボースの遊離形態は、陽イオン(構造I)の形で存在するため、実際には不安定であり、安定化のために陰イオンとイオン対(構造II)を形成する必要がある。
【0004】
【0005】
先行文献にはニコチンアミドリボースの塩化物塩が開示されているが、安定性が不十分で、水、光、温度に比較的敏感である。そこで、NRの使用を容易にし、用途範囲を拡大するために、NRのより安定した存在形態を研究する必要がある。
【0006】
また、従来のNRは、使用方式が比較的単一であり、他の化合物と補完的な役割を奏することができない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、安定して存在することができる新しいニコチンアミドリボースの有機酸塩を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、ニコチンアミドリボースの有機酸塩の調製方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、ニコチンアミドリボースの有機酸塩を含む組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、この組成物の調製方法を提供することである。
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を採用する。
【0012】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩において、前記有機酸は、リンゴ酸、タンニン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、コーヒー酸、trans-桂皮酸、trans-4-ヒドロキシ桂皮酸、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸、クロロゲン酸、グルコン酸、フェルラ酸、ローヤルゼリー酸、ネルボン酸、チコリン酸、ロスマリン酸、カルノシン酸、ニコチン酸、アジピン酸、ラウリン酸、サリチル酸、グリチルリチン酸一カリウム、葉酸、コンドロイチン硫酸、酒石酸水素カリウム、グルタミン酸、アスパラギン酸から選択される。
【0013】
上記の有機酸は、いずれも少なくとも1つの遊離カルボキシル基を有し、常温下で個体である有機酸又は有機酸塩である。
【0014】
さらに、前記ニコチンアミドリボースと有機酸とのモル比は1:2である。
【0015】
さらに、前記ニコチンアミドリボースと有機酸とのモル比は1:1である。
【0016】
さらに、前記有機酸はクエン酸、リンゴ酸、ローヤルゼリー酸である。
【0017】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩の調製方法は以下のとおりである。窒素ガスの保護下で、ニコチンアミドリボースをメタノールに溶解し、有機酸を加え、撹拌した後、メチルtert-ブチルエーテル又は酢酸エチルを加え、引き続き撹拌し、濾過、洗浄、乾燥により製品が得られる。
【0018】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩の組成物は、ニコチンアミドリボースの有機酸塩及び担体を含み、前記担体は、リンゴ酸、タンニン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、コーヒー酸、trans-桂皮酸、trans-4-ヒドロキシ桂皮酸、乳酸、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸、クロロゲン酸、グルコン酸、フェルラ酸、ローヤルゼリー酸、ネルボン酸、チコリン酸、ロスマリン酸、カルノシン酸、ニコチン酸、アジピン酸、ラウリン酸、グリチルリチン酸一カリウム、葉酸、コンドロイチン硫酸、酒石酸水素カリウム、サリチル酸、グリシン、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、シスチン、システイン、メチオニン、スレオニン、セリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸であり、前記有機酸塩は、上記のように、ニコチンアミドリボースと有機酸とのモル比が1:2又は1:1である。
【0019】
さらに、前記担体は、ニコチン酸、グルタミン酸、ローヤルゼリー酸、ネルボン酸である。
【0020】
さらに、前記有機酸塩は、ニコチンアミドリボースのリンゴ酸塩である。
【0021】
さらに、前記ニコチンアミドリボースの有機酸塩と担体とのモル比は1:1である。
【0022】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩の組成物は、ニコチンアミドリボースの有機酸塩及び担体を含み、前記担体は、微結晶セルロース又はリンゴ酢粉末であり、前記有機酸塩は、上記のように、ニコチンアミドリボースと有機酸とのモル比が1:2又は1:1である。
【0023】
さらに、前記有機酸塩は、ニコチンアミドリボースのリンゴ酸塩又はクエン酸塩である。
【0024】
さらに、前記ニコチンアミドリボースの有機酸塩と担体との質量比は1:1である。
【0025】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩の組成物の調製方法では、窒素ガスの保護下で、ニコチンアミドリボースの有機酸塩と担体とを粉砕して混合することにより得られる。
【0026】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0027】
1、本発明のニコチンアミドリボースの有機酸塩は、酸性がより強い有機酸を使用する。これらの有機酸は遊離カルボキシル基を有し、孤立電子対を提供してニコチンアミドリボースの窒素陽イオンと緊密なイオン対を形成することができ、ある程度の疎水性を有し、ニコチンアミドリボースに対して非常に優れた安定化効果があるため、ニコチンアミドリボース有機酸塩の安定性を向上させる。
【0028】
2、ニコチンアミドリボースと有機酸がモル比1:2で存在する場合、1分子のNRは2分子の有機酸と安定して存在することができる。1分子の有機酸がNRとイオン対を形成した後、もう1分子の有機酸がNR中の塩基性を示すアミドと酸塩基作用により水素結合を形成し、酸塩基ペアリングを行い、これによって、ニコチンアミドリボース有機酸塩の安定性がさらに向上する。
【0029】
3、ニコチンアミドリボースの有機酸塩と微結晶セルロースとを配合することにより、微結晶セルロースが疎水性及び耐熱性を有するため、水分の混入を防止でき、水に対する有機酸塩の安定性を向上できる。
【0030】
4、ニコチンアミドリボースは、体内でプロトンを伝達可能な補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+;補酵素Iとも呼ばれる)に変換することができる。NAD+は、生体とエネルギーの代謝、ATP合成、DNA修復、細胞アポトーシスの阻害、タンパク質、炭水化物、脂肪などの化合物の分解などの多くの生理学的反応に関与している。本発明では、上記の代謝などの生理的活動に関与できる有機酸、リンゴ酢粉末を用いてニコチンアミドリボースと配合して複合栄養添加剤を調製することにより、各成分は互いに補完、協調し、相乗効果が得られる。実験により証明されたように、有機酸、リンゴ酢粉末を担体として加えることは、NR有機酸塩の安定性に大きな影響を与えることがなく、このような複合栄養添加剤は潜在的な使用価値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。本明細書において、「部」は重量部を指す。
【0032】
実施例1
ニコチンアミドリボースクエン酸塩(1:1)の調製
窒素ガスの保護下、温度-10~-5℃で、ニコチンアミドリボース(0.0220mol,1eq)を60mLのメタノールに溶解し、無水クエン酸(0.0264mol,1.2eq)を加え、2h撹拌して透明に溶解し、75mLの無水メチルtert-ブチルエーテルを加え、引き続き30min撹拌し、窒素ガスの保護下で濾過し、無水ジエチルエーテルで洗い流し、-5℃以下で乾燥させて製品(0.0123mol)を得た。製品NRX中のニコチンアミドリボース(NR)とクエン酸(X)とのモル比は1:1、収率は55.91%であった。
【0033】
特性データ
HNMR(400MHz,MeOD)δ9.72(s,1H),9.42-9.43(d,1H),9.01-9.03(d,1H),8.25-8.30(m,1H),6.18-6.19(d,1H),4.42-4.464(m,2H),4.30-4.32(t,1H),4.01-4.05(dd,1H),3.85-3.89(dd,1H),2.67-2.79(q,4H);
MS(ESI+):254.96[M-1],MS(ESI-):191.12[M-1];
IR(KBr)νmax3412,2940,2375,1692,1612,1516,1395,1232,1098,894,677,622cm-1。
【0034】
実施例2
ニコチンアミドリボースクエン酸塩(1:2)の調製
窒素ガスの保護下、温度-10~-5℃で、ニコチンアミドリボース(0.0220mol,1eq)を60mLのメタノールに溶解し、無水クエン酸(0.0495mol.2.25eq)を加え、2h撹拌して透明に溶解し、150mLの無水メチルtert-ブチルエーテルを加え、引き続き30min撹拌し、窒素ガスの保護下で濾過し、無水ジエチルエーテルで洗い流し、-5℃以下で乾燥させて製品(0.0125mol)を得た。製品NRX2中のニコチンアミドリボース(NR)とクエン酸(X)とのモル比は1:2、収率は56.82%であった。
【0035】
特性データ
HNMR(400MHz,MeOD):δ9.73(s,1H),9.43-9.45(d,1H),9.04-9.06(d,1H),8.27-8.32(m,1H),6.20-6.21(d,1H),4.43-4.45(m,2H),4.30-4.33(t,1H),4.02-4.05(d,1H),3.85-3.89(d,1H),2.74-2.86(q,8H);
MS(ESI+):254.97[M-1],MS(ESI-):191.16[M-1];
IR(KBr)νmax3425,2929,2370,1697,1624,1516,1394,1219,1097,893,678,623cm-1。
【0036】
ニコチンアミドリボースと無水クエン酸とを1:3.3のモル比で投入して得られた製品の特性データは上記と同様であり、得られたのはニコチンアミドリボース(NR)とクエン酸(X)とのモル比が1:2の製品NRX2であることを示している。
【0037】
実施例3
ニコチンアミドリボースリンゴ酸塩(1:1)の調製
窒素ガスの保護下、温度-10~-5℃で、ニコチンアミドリボース(0.0195mol,1eq)を60mLのメタノールに溶解し、無水リンゴ酸(0.0234mol,1.2eq)を加え、2h撹拌して透明に溶解し、100mLの無水メチルtert-ブチルエーテルを加え、引き続き30min撹拌し、窒素ガスの保護下で濾過し、無水ジエチルエーテルで洗い流し、-5℃以下で乾燥させて製品(0.01334mol)を得た。製品NRX中のニコチンアミドリボース(NR)とリンゴ酸(X)とのモル比は1:1、収率は57%であった。
【0038】
特性データ
HNMR(400MHz,MeOD):δ9.72(s,1H),9.42-9.44(d,1H),9.02-9.04(d,1H),8.25-8.29(t,1H),6.18-6.19(d,1H),4.41-4.44(m,2H),4.26-4.30(m,2H),3.99-4.03(dd,1H),3.83-3.87(dd,1H),2.49-2.80(dd,2H);
MS(ESI+):254.96[M-1],MS(ESI-):133.04[M-1];
IR(KBr)νmax3379,2937,1691,591,1100,677,6cm-1。
【0039】
実施例4
ニコチンアミドリボースリンゴ酸塩(1:2)の調製
窒素ガスの保護下、温度-10~-5℃で、ニコチンアミドリボース(0.0195mol,1eq)を45mLのメタノールに溶解し、無水リンゴ酸(0.043875mol,2.25eq)を加え、2h撹拌して透明に溶解し、80mLの無水メチルtert-ブチルエーテルを加え、引き続き30min撹拌し、窒素ガスの保護下で濾過し、無水ジエチルエーテルで洗い流し、-5℃以下で乾燥させて製品(0.0118mol)を得た。製品NRX2中のニコチンアミドリボース(NR)とリンゴ酸(X)とのモル比は1:2、収率は60.51%であった。
【0040】
特性データ
HNMR(400MHz,MeOD):δ9.73(s,1H),9.43-9.45(d,1H),9.04-9.06(d,1H),8.27-8.31(m,1H),6.19-6.20(d,1H),4.43-4.45(m,2H),4.31-4.34(m,3H),4.01-4.05(dd,1H),3.85-3.89(dd,1H),2.53-2.83(dd,4H);
MS(ESI+):254.94[M-1],MS(ESI-):133.03[M-1];
IR(KBr)νmax3409,2940,1698,1580,1411,1293,1181,1098,1028,658cm-1。
【0041】
ニコチンアミドリボースと無水リンゴ酸とを1:3.3のモル比で投入して得られた製品の特性データは上記と同様であり、得られたのはニコチンアミドリボース(NR)とリンゴ酸(X)とのモル比が1:2の製品NRX2であることを示している。
【0042】
実施例5
ニコチンアミドリボースローヤルゼリー酸塩(1:2)の調製
窒素ガスの保護下、温度-10~-5℃で、ニコチンアミドリボース(0.0400mol,1eq)を60mLのメタノールに溶解し、ローヤルゼリー酸(0.0860mol,2.15eq)を加え、2h撹拌し、120mLの無水酢酸エチルをゆっくりと加え、引き続き30min撹拌し、窒素ガスの保護下で濾過し、無水ジエチルエーテルで洗い流し、-5℃以下で乾燥させて12.5g製品(0.02mol)を得た。製品NRX2中のニコチンアミドリボース(NR)とローヤルゼリー酸(X)とのモル比は1:2、収率は50%であった。
【0043】
特性データ
HNMR(400MHz,MeOD):δ9.73(s,1H),9.44(s,1H),9.04-9.05(d,1H),8.30(m,1H),6.58-6.66(m,2H),6.18(m,1H),5.81-5.85(d,2H),4.92(m,2H),4.31-4.43(t,1H),3.85-4.05(dd,2H),3.54-3.57(t,4H),2.13-2.18(m,4H),1.51-1.56(m,4H),1.45-1.49(m,4H),1.37(m,12H);
MS(ESI+):254.96[M-],MS(ESI-):185.23[M-1];
IR(KBr)νmax3384,2924,1705,1654,1555,1421,1389,1187,1098,1053,977,869,677cm-1。
【0044】
実施例6
ニコチン酸を担体とするニコチンアミドリボースリンゴ酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例4のニコチンアミドリボースリンゴ酸塩0.01molを0.01molのニコチン酸に加え、低温(約16℃、以下同じ)で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、6.4gのNRリンゴ酸ニコチン酸塩の混合物を得た。
【0045】
IR(KBr)νmax3409,2927,1695,1584,1398,1319,1101,1028,747,677,636cm-1。
【0046】
実施例7
グルタミン酸を担体とするニコチンアミドリボースリンゴ酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例4のニコチンアミドリボースリンゴ酸塩0.01molを0.01molのグルタミン酸に加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、6.65gのNRリンゴ酸グルタミン酸塩の混合物を得た。
【0047】
IR(KBr)νmax3415,2937,1692,1593,1404,1092,1028,670cm-1。
【0048】
実施例8
ローヤルゼリー酸を担体とするニコチンアミドリボースリンゴ酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例4のニコチンアミドリボースリンゴ酸塩0.01molを0.01molのローヤルゼリー酸に加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、7.05gのNRリンゴ酸ローヤルゼリー酸塩の混合物を得た。
【0049】
IR(KBr)νmax3437,2934,1698,1651,1401,1095,684cm-1。
【0050】
実施例9
ネルボン酸を担体とするニコチンアミドリボースリンゴ酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例4のニコチンアミドリボースリンゴ酸塩0.01molを0.01molのネルボン酸に加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、8.85gのNRリンゴ酸ネルボン酸塩の混合物を得た。
【0051】
IR(KBr)νmax3415,2924,1695,1465,1418,1290,1098,728,674cm-1。
【0052】
実施例10
微結晶セルロースを担体とするニコチンアミドリボースリンゴ酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例4のニコチンアミドリボースリンゴ酸塩1gを1gの微結晶セルロースに加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、2gのNRリンゴ酸塩微結晶セルロースの混合物を得た。
【0053】
IR(KBr)νmax3425,2930,1688,1644,1513,1395,1095,1018,667cm-1。
【0054】
実施例11
微結晶セルロースを担体とするニコチンアミドリボースリンゴ酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例3のニコチンアミドリボースリンゴ酸塩1gを1gの微結晶セルロースに加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、2gのNRリンゴ酸塩微結晶セルロースの混合物を得た。
【0055】
IR(KBr)νmax3365,2906,1695,1591,1396,1099,675cm-1。
【0056】
実施例12
微結晶セルロースを担体とするニコチンアミドリボースクエン酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例2のニコチンアミドリボースクエン酸塩1gを1gの微結晶セルロースに加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、2gのNRクエン酸塩微結晶セルロースの混合物を得た。
【0057】
IR(KBr)νmax3437,2927,2378,1740,1698,1641,,1513,1398,1111,897,671cm-1。
【0058】
実施例13
微結晶セルロースを担体とするニコチンアミドリボースクエン酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例1のニコチンアミドリボースクエン酸塩1gを1gの微結晶セルロースに加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、2gのNRクエン酸塩微結晶セルロースの混合物を得た。
【0059】
IR(KBr)νmax3415,2921,2368,1698,1625,1513,1401,1098,894,670,619cm-1。
【0060】
実施例14
リンゴ酢粉末を担体とするニコチンアミドリボースリンゴ酸塩の調製
窒素ガスの保護下で、実施例4のニコチンアミドリボースリンゴ酸塩1gを1gのリンゴ酢粉末(10%)に加え、低温で材料が約200メッシュとなるまで約10minかけて粉砕し、2gのNRリンゴ酸塩リンゴ酢粉末の混合物を得た。
【0061】
IR(KBr)νmax3406,2930,1692,1584,1408,1092,1028,674cm-1。
【0062】
比較例
ニコチンアミドリボース塩化物塩の調製
窒素ガスの保護下、温度-10~-5℃で、ニコチンアミドリボース(0.0220mol,1eq)を50mLのメタノールに溶解した後、17%の塩化水素メタノール溶液10gを滴下し、撹拌して透明に溶解し、1gの活性炭を加えて1h撹拌し、濾過し、濾液を150mLの無水メチルtert-ブチルエーテルに加え、30min撹拌し、窒素ガスの保護下で濾過し、無水ジエチルエーテルで洗い流し、-5℃以下で乾燥させて8g製品を得た。
【0063】
実施例10の方法により微結晶セルロースを担体とするニコチンアミドリボース塩化物塩を調製した。
【0064】
特性データ
HNMR(400MHz,MeOD):9.72(s,1H),9.44-9.46(d,1H),9.05-9.07(d,1H),8.29-8.33(t,1H),6.22-6.23(d,1H),4.45-4.47(t,1H),4.41-4.43(q,1H),4.31-4.33(t,1H),3.99-4.03(d,1H),3.84-3.88(d,1H)。
IR(KBr)νmax3336,2935,1687,1616,1400,1100,675cm-1。
【0065】
安定性試験
【0066】
一、サンプル準備
1、実施例1~4、実施例10~13及び比較例の製品を50mg/バイアルで13個のバイアルに分注し、窒素ガスを注入した後、密閉した。先に1バイアル(初期サンプル)を測定し、残りの12バイアルを6バイアル/群で2群に分けて保存し、試験順番に従って1~6を番号付けた。その後、それぞれ2~8℃及び-20℃で保存し、毎月定期的に1つのサンプルを測定した。
【0067】
2、実施例6~9、実施例14の製品を50mg/バイアルで7つのバイアルに分注し、窒素ガスを注入した後、密閉した。先に1バイアル(初期サンプル)を測定し、残りの6バイアルに対して試験順番に従って1~6を番号付け、それぞれ2~8℃で保存し、毎月定期的に1つのサンプルを測定した。
【0068】
二、試験サンプル溶液の調製
毎回1バイアルのサンプルを取り、5mL又は10mLの容量フラスコで5mL又は10mLの溶液を調製し、濾過膜で濾過し、HPLCによりサンプルの純度を測定した。
【0069】
三、HPLC試験
移動相:イソクラティック溶出5%水(0.1%ギ酸)+95%メタノール(0.1%ギ酸)
波長:254nm
温湿度:23.0℃,54%RH
サンプル溶解:メタノール溶解
カラム:ODS-2,4.6*250mm,5μm,圧力は12-13Mpaに一定維持
流量:1.0mL/min
注入量:5μL
動作時間:≧15min
四、分解率=(初期サンプル純度-6番のサンプル純度)/初期サンプル純度×100%
【0070】
【0071】
【0072】
表1、表2から分かるように、温度が低いほど、ニコチンアミドリボースの塩安定性が良くなる。ニコチンアミドリボースのリンゴ酸塩及びクエン酸塩(モル比が1:1又は1:2に関係なく)は、いずれもニコチンアミドリボース塩化物塩(比較例)よりも優れている。これは、リンゴ酸、クエン酸がNRと緊密なイオン対を形成することができ、ある程度の疎水性を有することで安定性が向上するためである。
【0073】
実施例1と実施例2、実施例3と実施例4を比較した結果、NRと有機酸がモル比1:2で存在する場合は、NRと有機酸がモル比1:1の場合よりも安定することを見出した。NRと有機酸がモル比1:1で存在する場合、電子効果によれば、優先的にイオン対の形で存在する一方、NRと有機酸をモル比1:2で添加する場合、HNMRにより、1分子のNRと2分子の有機酸が安定して存在し、1分子の有機酸がNRとイオン対を形成した後、もう1分子の有機酸がNR中の塩基性を示すアミドと酸塩基作用により水素結合を形成し、酸塩基ペアリングを行い、塩の安定性の改善に有利であることを見出した。また、2分子の酸は、より強い酸性環境を提供することができ、酸性が強いほど、NRの安定性は良くなる。例えば、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は酸性がNRよりも強く、安定性がNRよりも遥かに高い。また、NRと有機酸がモル比1:2で存在する場合、NRの含有量が低く、分子間の遊離水酸基及びアミド官能基の影響が低減され、安定性が向上する。
【0074】
【0075】
ニコチンアミドリボースの有機酸塩と別の有機酸又はリンゴ酢粉末とを配合した後、安定性は低下するものの、許容範囲内である。したがって、有機酸又はリンゴ酢粉末を担体としてもNR有機酸塩の安定性に大きな影響を与えることがない。有機酸又はリンゴ酢粉末とニコチンアミドリボースとを配合して複合栄養添加剤を調製することにより、互いに補完、協調し、相乗効果が得られ、潜在的な使用価値を有する。
【0076】
【0077】
【0078】
ニコチンアミドリボースの有機酸と微結晶セルロースとを配合した微結晶セルロースを担体とするNR有機酸塩は、安定性がより高い(実施例10~13は実施例1~4よりも高い)。これは、微結晶セルロースが疎水性及び耐熱性を有することで水分の混入を防止できるためである。微結晶セルロースを加えたとしても、NRと有機酸がモル比1:2で存在する場合(実施例10、12)は、NRと有機酸がモル比1:1で存在する場合(実施例11、13)よりも安定し、NRのリンゴ酸塩又はクエン酸塩と微結晶セルロースとを配合したものの安定性もNRの塩化物塩と微結晶セルロースとを配合したもの(比較例)よりも高い。これは、上記の結合をさらに証明している。
【0079】
上記の説明は、本発明の具体的な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲はこれに限定されない。本発明に開示の技術範囲内において、当業者は変更及び置換を容易に想到することができるが、これらは全て本発明の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずるものとする。