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特許7319768インク供給部、印刷装置、錠剤印刷装置、およびインクパウチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】インク供給部、印刷装置、錠剤印刷装置、およびインクパウチ
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20230726BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230726BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B41J2/01 109
B41J2/175 143
B41J2/175 153
B41J2/175 503
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018177665
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020044290
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】中野 信行
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 侑弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 尚充
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-151056(JP,A)
【文献】特開2000-141687(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0404632(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B41J 2/01
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の表面にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置に備えられるインク供給部であって、
インク滴を吐出する複数のインクノズルが配列された吐出面を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに接続可能であるとともに、前記記録ヘッドに供給するインクを軟包材に封入したインクパウチを保持可能なインクパウチ保持部と、
を備え、
前記吐出面の鉛直方向における位置と、前記インクパウチ内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置との差である水頭差が、各前記インクノズル内で適正なメニスカスを保持することが可能な程度の水頭差となるように、前記記録ヘッドと、前記インクパウチ保持部とが、位置決めされて配置され、
前記水頭差によって生じるインクの水圧により、前記インクパウチから前記記録ヘッドの前記インクノズルにインクが供給され、
前記インクパウチ保持部は、インクが消費されるにつれて前記インクパウチの水平方向の厚みが次第に薄くなるように、インクパウチを保持し、
前記インクパウチ保持部は、
前記インクパウチを下方から受ける載置底面と、
前記インクパウチ内のインクを前記記録ヘッドに向けて排出する排出口と、
を備え、
前記載置底面は、前記排出口に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜平面状であり、
前記インクパウチは、前記インクパウチ保持部に取り付けられた状態において、鉛直下方側の辺が鉛直下方に傾斜状に下がるものであり下方に先細りの形状を有する、インク供給部。
【請求項2】
請求項1に記載のインク供給部であって、
前記インクパウチ保持部は、前記載置底面から鉛直上方に延びる1対の側面を有し、
前記インクパウチは前記1対の側面により両側から挟まれる、インク供給部。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインク供給部であって、
前記載置底面の傾斜角度は、水平方向に対して5°以上かつ15°以下である、インク供給部。
【請求項4】
請求項3に記載のインク供給部であって、
前記載置底面の傾斜角度は、水平方向に対して8°以上かつ12°以下である、インク供給部。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のインク供給部であって、
前記インクパウチ保持部には、異なる容量の前記インクパウチを、選択的に取付け可能である、インク供給部。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のインク供給部であって、
一端部に前記記録ヘッドが支持されるとともに、他端部に前記インクパウチ保持部が支持される、支持部材をさらに備える、インク供給部。
【請求項7】
請求項6に記載のインク供給部であって、
前記インクパウチ内のインクを前記記録ヘッドへと供給する配管
をさらに備える、インク供給部。
【請求項8】
請求項7に記載のインク供給部であって、
前記記録ヘッドと、前記インクパウチ保持部と、前記支持部材と、前記配管とを含むユニットが、前記印刷装置のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である、インク供給部。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のインク供給部を備える、印刷装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のインク供給部を備え、前記記録媒体としての錠剤の表面にインクジェット方式で印刷を行う錠剤印刷装置。
【請求項11】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のインク供給部の前記インクパウチ保持部に取り付けられるインクパウチであって、
鉛直下方側の端部に、内部のインクを注出するパウチ口を備え、
前記インクパウチは、前記インクパウチ保持部に取り付けられた状態において、前記インクパウチの鉛直下方側の辺が前記パウチ口に近づくにつれて次第に鉛直下方に傾斜状に下がるものであり下方に先細りの形状を有する、インクパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給部、印刷装置、錠剤印刷装置、およびインクパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク滴を吐出する複数のインクノズルが配列された吐出面を有する記録ヘッドと、記録ヘッドに供給するインクを貯留するインクタンクとを、同じキャリッジ上に搭載して、記録ヘッドとインクタンクとを一体的に移動させながら印刷を行う方式の印刷装置が、オンキャリッジ式の印刷装置として広く知られている。このようなオンキャリッジ式の印刷装置は、構造がシンプルであり、しかもインクノズルが外乱の影響を受け難い点で、有利である。
【0003】
しかしながら、インク滴を高精度に吐出させて綺麗に印刷するためには、各インクノズル内におけるメニスカスを適正に保持することが必要であり、そのためには、吐出面の鉛直方向における位置と、インクタンクのインクの液面の鉛直方向における位置と、の差(以下、「水頭差」と称する場合がある。)を所定の範囲に保つ必要がある。そのために、従来は、インクタンク内のインクの液面の高さとして許容される範囲が予め設定され、インクの液面が下限の位置を下回ったら、上限の位置までインクを補充する等の措置が取られていた。それ故に、インクの補充のために印刷処理が中断されてしまうことが多くあり、連続的に印刷を行うことは困難であった。
【0004】
斯かる問題に対処するために、特許文献2のような印刷装置が考案されている。特許文献2に記載の印刷装置は、インクジェットヘッド(記録ヘッド)と、インクタンクと、移動装置とを備える。特許文献2に記載の移動装置は、インクタンク内におけるインクの液面の高さとノズルが形成されるノズル形成面(吐出面)との水頭差を、予め設定された値に維持するように、予め把握されているインクの使用量を基にインクタンクの高さを変化させる、としている。
【0005】
特許文献2に記載の印刷装置によれば、インクタンクの高さを変化させることで、長期にわたって、水頭差を許容範囲に維持することができ、インクの補充等のために印刷処理が中断されてしまう頻度を少なく抑えることが可能であると考えられる。しかしながら、特許文献2に記載の印刷装置では、移動装置を有するために、装置が大掛かりになってしまう点で不利であり、また、インクノズルにおける外乱の影響が大きい点でも不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/159096号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その潜在的な目的は、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度を少なく抑えて、連続的に印刷を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
本願の第1の観点では、記録媒体の表面にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置に備えられるインク供給部であって、記録ヘッドと、インクパウチ保持部と、を備えるインク供給部が提供される。前記記録ヘッドは、インク滴を吐出する複数のインクノズルが配列された吐出面を有する。前記インクパウチ保持部は、前記記録ヘッドに接続可能であるとともに、前記記録ヘッドに供給するインクを軟包材に封入したインクパウチを保持可能である。このインク供給部においては、前記吐出面の鉛直方向における位置と、前記インクパウチ内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置との差である水頭差が、各前記インクノズル内で適正なメニスカスを保持することが可能な程度の水頭差となるように、前記記録ヘッドと、前記インクパウチ保持部とが、位置決めされて配置され、前記水頭差によって生じるインクの水圧により、前記インクパウチから前記記録ヘッドの前記インクノズルにインクが供給され、前記インクパウチ保持部は、インクが消費されるにつれて前記インクパウチの水平方向の厚みが次第に薄くなるように、インクパウチを保持し、前記インクパウチ保持部は、前記インクパウチを下方から受ける載置底面と、前記インクパウチ内のインクを前記記録ヘッドに向けて排出する排出口と、を備え、前記載置底面は、前記排出口に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜平面状であり、前記インクパウチは、前記インクパウチ保持部に取り付けられた状態において、鉛直下方側の辺が鉛直下方に下がるものであり下方に先細りの形状を有する。
【0011】
本願の第の観点では、第の観点に係るインク供給部において、前記インクパウチ保持部は、前記載置底面から鉛直上方に延びる1対の側面を有する。前記インクパウチは前記1対の側面により両側から挟まれる。
【0013】
本願の第の観点では、第の観点または第2の観点に係るインク供給部において、前記載置底面の傾斜角度は、水平方向に対して5°以上かつ15°以下である。
【0014】
本願の第の観点では、第の観点に係るインク供給部において、前記載置底面の傾斜角度は、水平方向に対して8°以上かつ12°以下である。
【0015】
本願の第の観点では、第1の観点から第の観点までのいずれか1つに係るインク供給部において、前記インクパウチ保持部には、異なる容量の前記インクパウチを、選択的に取付け可能である。
【0016】
本願の第の観点では、第1の観点から第の観点までのいずれか1つに係るインク供給部において、一端部に前記記録ヘッドが支持されるとともに、他端部に前記インクパウチ保持部が支持される、支持部材をさらに備える。
【0017】
本願の第の観点では、第の観点に係るインク供給部において、前記インクパウチ内のインクを前記記録ヘッドへと供給する配管をさらに備える。
【0018】
本願の第の観点では、第の観点に係るインク供給部において、前記記録ヘッドと、前記インクパウチ保持部と、前記支持部材と、前記配管とを含むユニットが、前記印刷装置のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である。
【0019】
本願の第の観点では、第1の観点から第の観点までのいずれか1つに係るインク供給部を備える印刷装置が提供される。
【0020】
本願の第10の観点では、第1の観点から第の観点までのいずれか1つに係るインク供給部を備え、前記記録媒体としての錠剤の表面にインクジェット方式で印刷を行う錠剤印刷装置が提供される。
【0021】
本願の第11の観点では、第1の観点から第8の観点までのいずれか1つに係るインク供給部の前記インクパウチ保持部に取り付けられるインクパウチが提供される。このインクパウチは、鉛直下方側の端部に、内部のインクを注出するパウチ口を備える。前記インクパウチは、前記インクパウチ保持部に取り付けられた状態において、前記インクパウチの鉛直下方側の辺が前記パウチ口に近づくにつれて次第に鉛直下方に傾斜状に下がるものであり下方に先細りの形状状を有する。
【発明の効果】
【0022】
本願の第1の観点~第11の観点によれば、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度を少なく抑えて、連続的に印刷を行える。
【0023】
特に、本願の第1の観点によれば、印刷が行われることによりインクが消費されると、インクパウチの水平方向の厚みが次第に薄くなる。そのため、インクが消費されても、インクパウチ内のインクの液面位置は、大幅には変動しない。よって、印刷処理が進行しても、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面の鉛直方向における位置と、の差を、長期にわたって適正に保つことができる。その結果、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度を少なく抑えて、連続的に印刷を行うことが可能である。しかも、本構成のインク供給部は、オンキャリッジ式であるため、インクノズルにおける外乱の影響も少なく抑えることができる。
また、本願の第1の観点によれば、インクが消費されることに伴う、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置の下がり方が、より緩やかとなる。よって、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面の鉛直方向における位置と、の差を、より長期にわたって許容範囲内に保つことができる。その結果、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度をより少なく抑えることができ、連続的に印刷を行うことができる。また、インクパウチ内でのインクの排出口側への移動を促進できるので、インクパウチ内のインクが残り少なくなったときに、残存するインクが鉛直方向に分断されてしまうといった事態が生じ難くなる。
【0024】
特に、本願の第の観点によれば、インクパウチを載置底面で下方から受けるとともに、1対の側面で両側から挟むことにより、インクパウチの水平方向の厚みを、インクが消費されるにつれて徐々に薄くすることが容易となる。これにより、インクが消費されても、インクパウチ内のインクの液面位置があまり変動しなくなる。
【0026】
特に、本願の第の観点によれば、インクの必要量に応じて、適切な容量のインクパウチを取り付けて印刷を行うことができ、印刷装置の経済的な運用が可能となる。
【0027】
特に、本願の第の観点によれば、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面の鉛直方向における位置と、の差が、許容範囲内に保たれるように、予め位置決めされた状態に配置することが容易となる。
【0028】
特に、本願の第の観点によれば、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面の鉛直方向における位置と、の差が許容範囲内に保たれるので、配管の途中にポンプ等を設けなくても、水頭差を利用して、インクノズルへインクを供給することができる。
【0029】
特に、本願の第の観点によれば、吐出面の位置と、インクパウチ保持部の位置と、の鉛直方向における相対関係が適正に設定された状態のインク供給部を、ユニット化して取り扱うことが可能となる。よって、例えば異なる種類のインクごとにこのようなユニットを予め準備しておくことで、ユニットを着脱して付け替えることで、複数種類のインクを使い分けて印刷することが容易となる。
【0030】
特に、本願の第11の観点では、インクが消費されることに伴う、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置の下がり方が、緩やかとなる。よって、インクパウチ内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面の鉛直方向における位置と、の差を、より長期にわたって許容範囲内に保つことができる。その結果、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度をより少なく抑えることができ、連続的に印刷を行うことができる。また、インクパウチ内でのインクの排出口側への移動を促進できるので、インクパウチ内のインクが残り少なくなったときに、残存するインクが鉛直方向に分断されてしまうといった事態が生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】錠剤印刷装置の概略構成を示した図である。
図2】錠剤搬送機構の部分斜視図である。
図3】ヘッドの下面図である。
図4】インク供給部の側面図である。
図5】インクパウチの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においては、複数の錠剤が搬送される方向を「搬送方向」と称し、搬送方向に対して垂直かつ水平な方向を「幅方向」と称する。
【0033】
<1.錠剤印刷装置の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤印刷装置(印刷装置)1の構成を示した図である。この錠剤印刷装置1は、医薬品である複数の錠剤9を搬送しながら、各錠剤9の表面に、製品名、製品コード、会社名、ロゴマーク等の画像を印刷する装置である。図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、錠剤搬送機構10、印刷部20、乾燥機構30、および制御部40を備えている。
【0034】
錠剤搬送機構10は、複数の錠剤9を保持しつつ搬送する機構である。錠剤搬送機構10は、一対のプーリ11と、一対のプーリ11の間に掛け渡された環状の搬送ベルト12とを有する。錠剤印刷装置1に投入された複数の錠剤9は、振動フィーダや搬送ドラム等により構成される搬入機構91によって、等間隔に整列されるとともに、搬送ベルト12の外周面に供給される。一対のプーリ11の一方は、搬送用モータ13から得られる動力により回転する。これにより、搬送ベルト12が、図1中の矢印の方向に回動する。このとき、一対のプーリ11の他方は、搬送ベルト12の回動に伴い従動回転する。
【0035】
図2は、錠剤搬送機構10の部分斜視図である。図2に示すように、搬送ベルト12には、複数の吸着孔14が設けられている。複数の吸着孔14は、搬送方向および幅方向に、等間隔に配列されている。また、図1に示すように、錠剤搬送機構10は、搬送ベルト12の内側の空間から気体を吸い出す吸引機構15を有する。吸引機構15を動作させると、搬送ベルト12の内側の空間が、大気圧よりも低い負圧となる。複数の錠剤9は、当該負圧によって、吸着孔14に吸着保持される。
【0036】
このように、錠剤搬送機構10は、複数の錠剤9を、複数の吸着孔14に一定の間隔で保持しつつ、搬送ベルト12の回動によって、複数の錠剤9を搬送する。後述する4つの記録ヘッド21の下方では、複数の錠剤9は、水平方向に搬送される。
【0037】
また、図1に示すように、錠剤搬送機構10は、搬送ベルト12の内側に、ブロー機構16を有する。ブロー機構16を動作させると、搬送ベルト12の複数の吸着孔14のうち、搬出機構92に対向する吸着孔14のみが、大気圧よりも高い陽圧となる。これにより、当該吸着孔14における錠剤9の吸着が解除され、搬送ベルト12から搬出機構92へ、錠剤9が受け渡される。搬出機構92は、搬送ベルト12から受け渡された錠剤9を、例えば他の搬送ベルトによって、錠剤印刷装置1の外部へ搬出する。
【0038】
印刷部20は、搬送ベルト12により搬送される錠剤9の表面に、インクジェット方式で画像を記録する部位である。図1に示すように、本実施形態の印刷部20は、4つの記録ヘッド21を有する。各記録ヘッド21は、後述するインク供給ユニット50に含まれる。4つの記録ヘッド21は、搬送ベルト12の上方に位置し、錠剤9の搬送方向に沿って、一列に配置されている。4つの記録ヘッド21は、錠剤9の表面に向けて、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色)のインク滴を吐出する。すると、これらの各色により形成される単色画像の重ね合わせによって、錠剤9の表面に、多色画像が記録される。なお、各記録ヘッド21から吐出されるインクには、日本薬局方、食品衛生法等で認可された原料により製造された可食性インクが使用される。
【0039】
図3は、1つの記録ヘッド21の下面図である。図3には、搬送ベルト12と、搬送ベルト12に保持された複数の錠剤とが、二点鎖線で示されている。図3中に拡大して示したように、記録ヘッド21の下面である吐出面210には、インク滴を吐出可能な複数のインクノズル211が設けられている。本実施形態では、記録ヘッド21の下面に、複数のインクノズル211が、搬送方向および幅方向に二次元的に配列されている。各インクノズル211は、幅方向に位置をずらして配列されている。このように、複数のインクノズル211を二次元的に配置すれば、各インクノズル211の幅方向の位置を、互いに接近させることができる。ただし、複数のインクノズル211は、幅方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0040】
インクノズル211からのインク滴の吐出方式には、例えば、圧電素子であるピエゾ素子に電圧を加えて変形させることにより、インクノズル211内のインクを加圧して吐出する、いわゆるピエゾ方式が用いられる。ただし、インク滴の吐出方式は、ヒータに通電してインクノズル211内のインクを加熱膨張させることにより吐出する、いわゆるサーマル式であってもよい。
【0041】
乾燥機構30は、錠剤9の表面に付着したインクを乾燥させる機構である。乾燥機構30は、搬送ベルト12の周囲の、印刷部20よりも搬送方向下流側の位置に設けられている。乾燥機構30には、例えば、搬送ベルト12により搬送される錠剤9へ向けて、加熱された気体(熱風)を噴き付ける、熱風供給機構が用いられる。錠剤9の表面に付着したインクは、熱風により乾燥して、錠剤9の表面に定着する。
【0042】
制御部40は、錠剤印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。制御部40は、CPU等のプロセッサ、RAM等のメモリ、およびハードディスクドライブ等の記憶部を有するコンピュータにより構成される。制御部の記憶部内には、印刷処理を実行するためのコンピュータプログラムが、インストールされている。制御部40は、上述した搬送用モータ13、吸引機構15、ブロー機構16、4つの記録ヘッド21、乾燥機構30、搬入機構91、および搬出機構92と、それぞれ通信可能に接続されている。また、制御部40は、後述する上下移動機構62および水平移動機構64とも、通信可能に接続されている。制御部40は、上記の記憶部に記憶されたコンピュータプログラムやデータをメモリに一時的に読み出し、コンピュータプログラムに基づいて、プロセッサが演算処理を行うことにより、ハードウェアとソフトウェアの協働によって、上記の各部を動作制御する。これにより、複数の錠剤9に対する印刷処理が進行する。
【0043】
<2.印刷部の詳細について>
図4は、図1中の白抜き矢印Vの位置からみた印刷部20の側面図である。図4に示すように、この錠剤印刷装置1の内部空間は、印刷エリアA1とメンテナンスエリアA2とに分けられている。印刷エリアA1は、上述した錠剤搬送機構10により錠剤9を搬送しつつ、錠剤9に対して印刷を行うエリアである。メンテナンスエリアA2は、印刷前または印刷後に記録ヘッド21を待機させたり、記録ヘッド21の吐出面210を洗浄したり、後述するインク供給ユニット50を付け替えたりするエリアである。印刷エリアA1とメンテナンスエリアA2との間には、両エリアを仕切る隔壁95が設けられている。隔壁95は、錠剤9の搬送方向と平行かつ水平面に対して垂直に広がっている。
【0044】
上述の通り、印刷部20は、4つの記録ヘッド21を有する。また、図4に示すように、印刷部20は、記録ヘッド21ごとに、インク供給ユニット50を有する。なお、インク供給ユニット50には、記録ヘッド21自体も含まれる。また、印刷部20には、各記録ヘッド21(インク供給ユニット50)に対応するインク供給ユニット移動機構60と、各記録ヘッド21に対応する4つの洗浄ユニット71とを有する。
【0045】
<2-1.インク供給ユニットについて>
インク供給ユニット50は、印刷部20にインクを供給する。上述もしたように、インク供給ユニット50は、各記録ヘッド21について設けられる。インク供給ユニット50は、記録ヘッド21の他に、インクパウチ保持部51、継手部52、支持部材53、および配管54を有する。
【0046】
インクパウチ保持部51は、記録ヘッド21に供給するインクを軟包材に封入したインクパウチ110を保持可能なホルダーである。インクパウチ保持部51は、記録ヘッド21に接続可能である。詳細には、インクパウチ保持部51は、載置底面510と、1対の側面512,513と、排出口514とを主として有する。
【0047】
1対の側面512,513は、載置底面510から鉛直上方に延びる板状の部分である。1対の側面512,513は、搬送方向に対して垂直な平面をなすように、配置される。1対の側面512,513のうち、搬送方向上流側の側面512には、インクパウチ110の形状に沿う凹部512aが設けられる。一方、搬送方向下流側の側面513は、凹部512aを被覆することが可能な蓋状である。
【0048】
載置底面510は、上記の凹部512aの下方側の面をなす。載置底面510は、インクパウチ保持部51に収容されるインクパウチ110を、下方側から受ける板状の部分である。載置底面510は、後述する排出口514に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜平面状である。載置底面510の水平方向に対する傾斜角度は、好ましくは5°以上かつ15°以下、より好ましくは8°以上かつ12°以下、より一層好ましくは10°である。載置底面510は、搬送方向に薄い形状である。
【0049】
側面513は、ネジ等の締結部材により、側面512に対して着脱可能である。凹部512aにインクパウチ110を収容した状態で、側面512に対して側面513を取り付けることにより、インクパウチ110をインクパウチ保持部51内に保持可能である。
【0050】
排出口514は、インクパウチ110内のインクを記録ヘッド21に向けて排出する円筒状の部位である。排出口514の一端は、凹部512aの鉛直下方側の端部であって、載置底面510が最も低くなる位置の近傍に接続される。排出口514の他端は、排出口514の一端よりも、記録ヘッド21に近い位置に配置される。
【0051】
継手部52は、排出口514の他端にその一端が接続される。継手部52の他端は、配管54に接続される。配管54は、継手部52の他端と、記録ヘッド21のインクノズル211とを接続するパイプである。これにより、配管54は、インクパウチ110内のインクを記録ヘッド21へと供給することが可能である。
【0052】
支持部材53は、搬送方向に垂直な板状であり、幅方向に長い形状を有する。支持部材53の幅方向における一端部には、記録ヘッド21が支持される。支持部材53の幅方向における他端部には、インクパウチ保持部51が支持される。詳細には、記録ヘッド21の吐出面210の鉛直方向における位置と、インクパウチ110内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置との差が、所定の許容範囲内となるように、記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51とが、位置決めされて支持部材53に固定されている。別の言い方をすれば、インクパウチ110がインクパウチ保持部51に取り付けられたときに、インクパウチ110内の液面位置と、吐出面210でのインクの液面位置と、の水頭差が、各インクノズル211内で適正なメニスカスを保持することが可能な程度の水頭差となるように、記録ヘッド21とインクパウチ保持部51との鉛直方向における相対位置が、支持部材53によって決められている。
【0053】
記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51と、継手部52と、支持部材53と、配管54とを合わせたものは、インク供給ユニット50としてユニット化されている。すなわち、インク供給ユニット50は、錠剤印刷装置1のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である。本実施形態では、異なる種類のインクごとにこのようなインク供給ユニット50を予め準備している。これにより、インク供給ユニット50を着脱して付け替えることで、複数種類のインクを使い分けて印刷できるようにしている。
【0054】
<2-2.インクパウチについて>
図5に示すインクパウチ110は、上述のインクパウチ保持部51に保持されるインク供給源である。すなわち、本発明においては、従来のインクタンクに代えて、インクパウチ110を、インク供給源として用いている。図5は、インクパウチ110の構成を示す側面図である。
【0055】
インクパウチ110は、軟包材にインクを封入したものである。インクパウチ110は、表面と裏面とが近接・離間する方向に容易に変形可能である。インクパウチ110がインクパウチ保持部51に取り付けられるときの姿勢でみたときに、インクパウチ110の鉛直下方側の端部には、内部のインクを注出(排出)するパウチ口111が設けられている。インクパウチ110は、搬送方向に薄い形状であり、搬送方向にみたときに台形状である。インクパウチ110の鉛直下方側の辺112は、パウチ口111に近づくにつれて次第に鉛直下方に下がる傾斜状である。
【0056】
<2-3.インク供給ユニットの移動機構について>
図4に戻る。インク供給ユニット移動機構60は、印刷エリアA1とメンテナンスエリアA2との間で、インク供給ユニット50を移動させる機構である。別の言い方をすれば、インク供給ユニット移動機構60は、記録ヘッド21をオンキャリッジ式で、印刷エリアA1からメンテナンスエリアA2にかけて移動させる機構である。本実施形態のインク供給ユニット移動機構60は、アーム61、上下移動機構62、移動ステージ63、および水平移動機構64を有する。アーム61は、幅方向に延びる部材である。記録ヘッド21は、アーム61の先端に固定されている。
【0057】
上下移動機構62は、制御部40からの指令に従って、アーム61を上下に移動させる。これにより、図4中の矢印D1のように、アーム61と、記録ヘッド21を含むインク供給ユニット50とが、一体として上下に移動する。これにより、印刷を行う錠剤9の厚みに応じて、吐出面210の鉛直方向における位置を調整できる。また、メンテナンスエリアA2において、上下移動機構62によって記録ヘッド21を下降させることにより、記録ヘッド21の吐出面210に洗浄ユニット71を作用させることも可能である。これにより、吐出面210を洗浄してメンテナンスを行うことができる。
【0058】
上下移動機構62は、移動ステージ63により支持されている。水平移動機構64は、移動ステージ63を、幅方向に移動させる。これにより、移動ステージ63、上下移動機構62、アーム61、およびインク供給ユニット50が、一体となって、図4中の矢印D2のように幅方向に移動する。水平移動機構64および上下移動機構62には、例えば、モータの回転運動を、ボールねじを介して直線運動に変換する機構が用いられる。ただし、水平移動機構64および上下移動機構62は、リニアモータやエアシリンダなどの他の機構によって実現されるものであってもよい。
【0059】
以上のような構成の錠剤印刷装置1において、インク供給ユニット50は、記録ヘッド21および支持部材53がアーム61に取り付けられることにより、印刷部20に搭載される。そして、水平移動機構64によって、記録ヘッド21を搬送ベルト12の上方の位置から幅方向に最も離れる位置まで移動させた状態で、インクパウチ110のインクパウチ保持部51への取付けを行うことが可能である。これにより、オペレータが取付作業を行うスペースを、搬送ベルト12から幅方向に離れた位置において、十分に確保することができる。
【0060】
インクパウチ110のインクパウチ保持部51への取付けは、以下のようにして行われる。すなわち、まず初めに、オペレータは、締結部材を取り外すことにより、インクパウチ保持部51から側面513を取り外す。そして、オペレータは、インクパウチ110のパウチ口111を排出口514に接続した状態にしつつ、インクパウチ110を凹部512aに嵌め込む。このとき、インクパウチ110の鉛直下方側の辺112が、載置底面510により下方から受け止められる。この状態で、オペレータは、締結部材を再び締め付けることにより、側面513を側面512に対して取り付ける。これにより、インクパウチ110は、1対の側面512,513により両側から挟まれた状態となる。
【0061】
そうすると、インクパウチ110からの水圧によって、継手部52および配管54を介して、各インクノズル211にインクが供給される。この際、インク供給ユニット50においては、吐出面210の位置と、インクパウチ保持部51の位置との、鉛直方向における相対関係が適切に設定されているので、吐出面210からインク滴が滴り落ちてしまう虞が無い。すなわち、各インクノズル211では、適正なメニスカスが保持される。しかも、吐出面210の位置と、インクパウチ保持部51の位置との、鉛直方向における相対関係が適切に設定されているので、記録ヘッド21からインクパウチ110の方にインクが逆流してしまい、記録ヘッド21内にエアが入り込んでしまう、といった事態は生じ難くなっている。
【0062】
上記のような構成により、本実施形態の錠剤印刷装置1では、インクパウチ110内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面210の鉛直方向における位置と、の差が許容範囲に保たれるので、配管54の途中にポンプ等を設けなくても、水頭差を利用して、インクノズル211へインクを供給することができる。
【0063】
印刷を行う際には、水平移動機構64によって、記録ヘッド21を搬送ベルト12の上方の位置に配置した状態にして、制御部40からの指令に応じて上述のピエゾ素子に電圧を加えることにより、インクノズル211からインク滴を吐出させる。
【0064】
ここで、印刷が行われることにより、インクノズル211でインク滴が消費されると、インクパウチ110の水平方向の厚みが次第に薄くなる。詳述すると、インクパウチ110の上部において、軟包材の表面と裏面とが次第に近接した状態となることで、インクパウチ110の水平方向の厚みが、インクの消費量が増えるほど薄くなる。そのため、インクが消費されても、インクパウチ内のインクの液面位置は、大幅には変動しない。すなわち、仮にインク供給源として一般的なインクタンクを用いた場合、インクが消費されるに従ってインクタンク内のインクの液面位置はリニアに下降するが、本実施形態のようにインク供給源としてインクパウチ110を用いた場合には、インクの液面位置の下降の速度は緩やかとなる。よって、印刷処理が進行しても、インクパウチ110内のインクの液面と、吐出面210との水頭差を、長期にわたって許容範囲内に保つことができる。その結果、インクの補充等のために印刷処理を頻繁に中断しなくてもよく、効率的に印刷を行うことが可能である。
【0065】
特に、本実施形態のインクパウチ110の鉛直下方側の辺112は、パウチ口111に近づくにつれて鉛直下方側に下がる形状となっている。詳述すると、インクパウチ110は、下方に先細りの形状となっており、下部に向かうほど、貯留されるインクの量が少なくなる。そのため、下部が先細り形状でないインクパウチを用いた場合と比較して、インクの残存量が同じ場合のインクの液面位置が高くなる。したがって、インクの液面位置が、上述した水頭差が許容範囲内となる高さに維持される時間を、より長くすることができる。よって、印刷処理が進行しても、インクパウチ110内のインクの液面と、吐出面210との水頭差を長期にわたって適正に保つことができる。また、辺112および載置底面510の形状により、インクパウチ110内でのインクの排出口514側への移動を促進できる。図5中に、インクが移動する方向を白抜き矢印で示している。このため、インクパウチ110内のインクが残り少なくなったときに、残存するインクが鉛直方向に分断されてしまうといった事態が生じ難くなる。
【0066】
インクパウチ110内のインクの残量が少なくなったら、上述と同様の方法により、インクパウチ保持部51の側面513を着脱して新しいインクパウチ110に付け替えることが可能である。
【0067】
ところで、本実施形態の錠剤印刷装置1は、表面コーティングの素材が互いに異なる複数種類の錠剤9に印刷をするために用いることができる。表面コーティングの素材が異なる錠剤9に印刷する場合、印刷に用いるべきインクの種類も異なってくるのが一般的である。そのため、錠剤印刷装置1では、印刷対象の錠剤9の種類に応じて、複数種類のインクを使い分ける必要がある。この点、本実施形態の錠剤印刷装置1では、ある種類のインク用のインク供給ユニット50をアーム61から取り外して、別の種類のインク用のインク供給ユニット50をアーム61に新たに取り付けることにより、容易にインクの使い分けをすることができる。この際、インクの混ざりを防止するために、継手部52や配管54の中に洗浄液等を入れて洗浄する必要が無く、オペレータの手間・負担や、メンテナンスに掛かる時間・コストが大幅に抑えられる。
【0068】
以上に示したように、本実施形態のインク供給ユニット(インク供給部)50は、記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51とを備える。そして、吐出面210の鉛直方向における位置と、インクパウチ110内に封入されたインクの鉛直方向における液面位置との差が、所定の許容範囲内となるように、記録ヘッド21と、インクパウチ保持部51とが、位置決めされて配置される。この構成のインク供給ユニット50において、印刷が行われることによりインクが消費されると、インクパウチ110の水平方向の厚みが次第に薄くなる。そのため、インクが消費されても、インクパウチ110内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面210の鉛直方向における位置と、の差を、長期にわたって適正に保つことができる。その結果、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度を少なく抑えて、連続的に印刷を行うことが可能である。
【0069】
また、本実施形態のインク供給ユニット50においては、インクパウチ110は、載置底面510により下方から受けられるとともに、一対の側面512,513により両側から挟まれる。これにより、インクパウチ110の水平方向の厚みを、インクが消費されるにつれて徐々に薄くすることが容易となる。これにより、インクが消費されても、インクパウチ内のインクの液面位置があまり変動しなくなる。
【0070】
また、本実施形態のインク供給ユニット50においては、載置底面510は、排出口514に近づくにつれて次第に鉛直方向に下がる傾斜平面状である。載置底面510の傾斜角度は、好ましくは水平方向に対して5°以上かつ15°以下であり、より好ましくは水平方向に対して8°以上かつ12°以下である。これにより、インクが消費されることに伴う、インクパウチ110内のインクの鉛直方向における液面位置の下がり方が、より緩やかとなる。よって、インクパウチ110内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面210の鉛直方向における位置と、の差を、より長期にわたって許容範囲内に保つことができる。その結果、インクの補充等のための印刷処理の中断の頻度をより少なく抑えることができ、連続的に印刷を行うことができる。また、インクパウチ110内でのインクの排出口514側への移動を促進できるので、インクパウチ110内のインクが残り少なくなったときに、残存するインクが鉛直方向に分断されてインクパウチ110の上部に取り残されてしまうといった事態が生じ難くなる。
【0071】
また、本実施形態のインク供給ユニット50においては、異なる容量のインクパウチ110を選択的に取付け可能である。これにより、インクの使用量に応じて、適切な容量のインクパウチ110を取り付けて印刷を行うことができ、印刷装置の経済的な運用が可能となる。
【0072】
また、本実施形態のインク供給ユニット50においては、支持部材53の一端部に記録ヘッド21が支持されるとともに、他端部にインクパウチ保持部51が支持される。これにより、インクパウチ110内のインクの鉛直方向における液面位置と、吐出面210の鉛直方向における位置と、の差が、許容範囲内に保たれるように、予め位置決めされた状態にレイアウトすることが容易となる。
【0073】
また、本実施形態のインク供給ユニット50は、錠剤印刷装置1のその他の構成に対して、一体的に着脱可能である。これにより、吐出面210の位置と、インクパウチ保持部51の位置と、の鉛直方向における相対関係が適正に設定された状態のインク供給ユニット50を、一体化して取り扱うことが可能となる。よって、例えば異なる種類のインクごとにこのようなインク供給ユニット50を予め準備しておき、インク供給ユニット50を着脱して付け替えることで、複数種類のインクを使い分けて印刷することが容易となる。
【0074】
<3.変形例について>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したものに対し種々の変更を行うことが可能である。
【0075】
上記の実施形態では、インクパウチ110は、搬送方向にみたときに台形状としたが、これに限るものではなく、例えば、搬送方向にみたときに矩形状としてもよい。その場合、インクパウチの矩形の長辺を、傾斜状の載置底面510の上に載せることにしてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、インクパウチ保持部51には、異なる容量のインクパウチ110を選択的に取付け可能であるものとしたが、これに限定されない。上記に代えて、インクパウチ保持部51に、一定容量のインクパウチ110のみが取付け可能であるものとしてもよい。
【0077】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 錠剤印刷装置(印刷装置)
9 錠剤(記録媒体)
21 記録ヘッド
50 インク供給ユニット(インク供給部)
51 インクパウチ保持部
110 インクパウチ
111 パウチ口
112 鉛直下方側の辺
210 吐出面
510 載置底面
512 側面
513 側面
514 排出口
53 支持部材
54 配管
図1
図2
図3
図4
図5