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特許7319781水平配置用の中空ファイバフィルタモジュールを有する血液処理装置と中空ファイバフィルタモジュール並びにその利用法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】水平配置用の中空ファイバフィルタモジュールを有する血液処理装置と中空ファイバフィルタモジュール並びにその利用法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/18 20060101AFI20230726BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A61M1/18 510
A61M1/36 111
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019003373
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2019122770
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】10 2018 100 568.7
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517289480
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・アヴィトゥム・アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
【住所又は居所原語表記】SCHWARZENBERGER WEG 73‐79, 34212 MELSUNGEN, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】カイ‐ウーヴェ・リッター
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529482(JP,A)
【文献】特開2016-171994(JP,A)
【文献】特開平05-161836(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050468(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/18
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処理を行うための体外血液処理装置であって、その上に中空ファイバフィルタモジュールが水平位置に配置される装置フロントを有し、
前記中空ファイバフィルタモジュールは、
実質的に筒状のハウジングと、
血液流入ノズルと血液流出ノズルとを備える血液チャンバと、
前記中空ファイバフィルタモジュールの長手方向を横断して延出する溶液流入ノズルと、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記長手方向を横断して延出する溶液流出ノズルとを備える溶液チャンバとを有し、当該溶液チャンバは、少なくともそのいくつかの部分において、前記血液チャンバと半透過的に連通されているものにおいて、
前記中空ファイバフィルタモジュールの水平位置において、前記溶液流入ノズルと前記溶液流出ノズルとの間に高さポテンシャルが設けられ、これにより、前記二つの溶液ノズルの一方を介して溶液の排出が可能とされ、これら二つの溶液ノズルの他方を介して、気泡の排気が可能とされ
前記溶液流入ノズルと前記溶液流出ノズルとのそれぞれは、前記筒状のハウジングに対して接線方向に延出するように配置され、かつ、前記溶液流入ノズルと前記溶液流出ノズルとは、これらノズルが、追加のチューブを回避しながら、前記体外血液処理装置の前記装置フロントに直接に接続可能となるように、同じ方向に向く体外血液処理装置。
【請求項2】
前記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルとのそれぞれは、前記中空ファイバフィルタモジュールにおいて、当該中空ファイバフィルタモジュールの前記長手方向を横断して延出するように配置されている請求項1に記載の体外血液処理装置。
【請求項3】
前記中空ファイバフィルタモジュールの水平位置において、前記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルとの間に高さポテンシャルが設けられ、これにより、前記二つの血液ノズルの一方を介して血液の排出が可能とされ、前記二つの血液ノズルの他方を介して気泡の排気が可能とされる請求項2に記載の体外血液処理装置。
【請求項4】
記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルとのそれぞれは、前記筒状のハウジングに対して接線方向に延出するように配置されている請求項1に記載の体外血液処理装置。
【請求項5】
前記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルとは、同じ方向に向く請求項に記載の体外血液処理装置。
【請求項6】
前記筒状のハウジングの形状は、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記水平位置が所定又はセンタリングされた状態で形成されることが可能となるように、前記装置フロントの形状、又は、少なくとも、透析装置ホルダの形状、に適合可能なように構成される請求項1に記載の体外血液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分による、透析治療を行うため等の体外血液処理装置と、更に、請求項9の前提部分による中空ファイバフィルタモジュールとに関する。更に、本発明は、前記中空ファイバフィルタモジュールの利用法にも関する。包括的な血液処理装置は、血液処理/浄化を行うことができるように使用される。
【背景技術】
【0002】
体外血液処理装置において血液処理・精製のための中空ファイバフィルタモジュールを使用することは広く標準的に行われている。最近では、ラインの長さが短くなるように、透析装置等の血液処理装置にコンパクトな配置で各中空ファイバフィルタモジュールを接続することに益々注目が集まっている。
【0003】
コンパクトな配置を得るためには、中空ファイバフィルタモジュールが様々な作動位置において前記装置に対してフレキシブルに固定可能であることが有用である。
【0004】
従来技術
最新の血液処理装置と中空ファイバフィルタモジュールは、ほとんどもっぱら、純粋に垂直な作動位置用に最適化されており、従って、その位置においてフレキシブルに調節可能/変化可能ではない。特許文献1(米国特許出願公開第2015/0238 676号明細書)は、請求項1の前提部分の血液処理装置を開示している。
【0005】
特許文献2(欧州特許第0 923 955号明細書)は、垂直配置用の透析装置を製造する方法を開示している。従って、(血液)浄化を効率的に行うことが可能な膜の透過性を最適化することが注目されている。
【0006】
透析機のその他の透析装置は、特許文献3(米国特許第7,776,219号明細書)と特許文献4(独国特許出願公開第27 33 280号明細書)とから知られている。
【0007】
更に別の従来技術は特許文献5(米国特許第4148 606号明細書)と特許文献6(米国特許第5480 565号明細書)とから知られている。
【0008】
本出願人によって行われたテストによって従来技術の欠点が明らかになった。従来から知られている中空ファイバフィルタモジュールは、透析装置における垂直配置用に提供され最適化されている。水平位置での使用においては、それらは部分的にかなりの問題を提示する。この位置において、例えば、気泡が中空ファイバフィルタモジュールの所謂血液チャンバおよび/又は溶液チャンバに堆積する可能性がある。排気されない気泡は中空ファイバフィルタモジュールの浄化能力を損なうので、回避されなければならない。更に、溶液の排出(たとえばプライミング後)を追加費用無しで行うことはできない。その結果、従来技術から知られている血液処理装置と中空ファイバフィルタモジュールは、血液処理装置全体の非常にコンパクトな設計を伴うフレキシブルな配置用には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2015/0238 676号明細書
【文献】欧州特許第0 923 955号明細書
【文献】米国特許第7,776,219号明細書
【文献】独国特許出願公開第27 33 280号明細書
【文献】米国特許第4148 606号明細書
【文献】米国特許第5480 565号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の簡単な説明
本発明の背景にある課題は、従来技術の欠点を無くす、又は、少なくとも軽減すること、特に、様々な配置、即ち、垂直配置、水平配置、およびこれら両配置の組み合わせ、の利点、を併せ持つ血液処理装置を開示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特に、本発明は、第一に、高効率な血液浄化、気泡の排気/逃がし、および透析液の排出を可能にし、第二に、血液処理装置に対する、チューブや中空ファイバフィルタモジュール(「消耗品」)の取り付けを容易にして、高度なコンパクト性とフレキシビリティ性を可能にする、中空ファイバフィルタモジュールを提供することに焦点を当てるものである。
【0012】
本発明は、同様に、最小の設置空間での確実な血液浄化と、装置フロントの直観的理解可能なレイアウトとを可能にする血液処理装置を開示する目的にも対応する。
【0013】
本発明に依れば、この課題は、請求項1の特徴構成を備えた血液処理装置と、請求項9の特徴構成を有する中空ファイバフィルタモジュールとによって達成される。更に、請求項10の使用法は上述した問題を解決する。好適な実施例が従属請求項の課題である。
【0014】
例えば、中空ファイバフィルタモジュールと血液処理装置との本発明によるこの構成から以下のその他の利点を引き出すことができる。
【0015】
-水平中空ファイバフィルタモジュール配置を有する最適化された装置フロントにより血液処理装置が占める設置空間が減り、しかもフレキシブルに適合することが可能である。
【0016】
-各コンポーネントの位置が明確に規定されることによって血液処理装置の取り付けをより迅速に行うことが可能である。
【0017】
-血液チューブと溶液チューブとを短くすることによって、第1に(同等に)血液処理装置の取り付けが容易になり、第2に、各チューブにおける温度損失が最小化される。
【0018】
-追加的に中空ファイバフィルタモジュールを揺動することなく、中空ファイバフィルタモジュールから溶液(又は血液)を空にすることができる。
【0019】
-血液チャンバと溶液チャンバとの両方に生じる(生じる可能性のある)気泡が(水平位置にあるにも拘らず)除去される。
【0020】
-水平位置によって効率的な血液浄化が補助される。
【0021】
従って、本発明は、血液処理、特に、透析処理、を行うための体外血液処理装置であって、これはその上に中空ファイバフィルタモジュール、特に、透析装置として構成されるもの、が水平位置に配置される装置フロントを有する。前記中空ファイバフィルタモジュールは、実質的に筒状のハウジングと、血液流入ノズルと血液流出ノズルとを備える血液チャンバと、前記中空ファイバフィルタモジュールの長手方向を横断して延出する溶液流入ノズルと、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記長手方向を横断して延出する溶液流出ノズルとを備える溶液チャンバとを有し、当該溶液チャンバは、所望の血液処理用に適合されるべく、少なくともそのいくつかの部分において、前記血液チャンバと半透過的に連通されている。
【0022】
本発明の範囲における前記中空ファイバフィルタモジュールの前記ハウジングという用語は、広く解釈されなければならない。それは、例えば、実質的に筒状の中央部分と、各端部に配置された二つのエンドキャップ/透析装置キャップ、とから成る複部分構造を有する。
【0023】
本発明の範囲における前記「横断する」という用語は、前記中空ファイバフィルタモジュールの横断面におけるすべての方向を指す。特に、この用語「横断する」は、径方向と接線方向の二つの方向、およびこれら両ベクトルの組み合わせ、を含む。
【0024】
本発明に依れば、前記中空ファイバフィルタモジュールの水平位置において、前記溶液流入ノズルと前記溶液流出ノズルとの間に高さポテンシャルが設けられ、これにより、前記二つの溶液ノズルの一方を介して(すなわち、前記溶液流入ノズルと前記溶液流出ノズルの両コンポーネントのいずれかを介して)処理の前又は処理の後に溶液の排出が可能とされ、これら二つの溶液ノズルの他方を介して、処理中に気泡の排気が可能とされる。好ましくは、前記溶液の排出は、前記溶液流入ノズルを介して実現され、前記気泡の排気は前記溶液流出ノズルを介して実現される。
【0025】
二つのポイント間における前記高さポテンシャルは、一方のポイントと他方のポイントとの間において、(水平位置において、そして部分的水平位置においてさえ)前記溶液の排出を可能にする位置エネルギが提供されるという利点を有する。このように、本発明は、現状においては互いに排他的である、処理中における気泡の効率的な排気と、処理前後における透析液排出との両方の効果を一体化するものである。
【0026】
換言すると、本発明は、構造的には、血液処理装置の中空ファイバフィルタモジュールが、溶液流入ノズルの領域と溶液流出ノズルの領域とにおいて異なるというジオメトリ(すなわち、高さ能力を形成する)を有するものとして記載することができる。その結果、前記血液処理装置の前記中空ファイバフィルタモジュールは、その横断平面によって映した場合に非対称である。
【0027】
本発明は、更に、中空ファイバフィルタモジュールに関し、これは、実質的に筒状のハウジングと、血液流入ノズルと血液流出ノズルとを備える血液チャンバと、前記中空ファイバフィルタモジュールの長手方向を横断して延出する溶液流入ノズルと、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記長手方向を横断して延出する溶液流出ノズルとを備える溶液チャンバとを有し、当該溶液チャンバは、所望の血液処理用に適合されるべく、少なくともそのいくつかの部分において、前記血液チャンバと半透過的に連通されている。前記中空ファイバフィルタモジュールは、本発明による体外血液処理装置において水平位置に配置/取り付け可能である。
【0028】
本発明は、更に、血液処理装置における水平使用用の中空ファイバフィルタモジュールの利用法も含む。
【0029】
前記血液処理装置の好適実施例において、前記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルとのそれぞれは、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記長手方向に対して横断方向、例えば、径方向又は接線方向、に延出するように配置される。これは、前記血液処理装置の前記装置フロントにおける前記中空ファイバフィルタモジュールの必要(軸心方向の)空間を少なくするのに役立つ。同様に、前記実施例によれば、それらに接続されるチューブが捩じれることが防止されるので、前記中空ファイバフィルタモジュールの作動安全性が促進される。
【0030】
この実施例において、更に好ましくは、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記水平位置において、同様に、前記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルとの間にも高さポテンシャルが設けられ、これにより、これら二つの血液ノズルの一方を介して、血液又はプライミング流体を排出可能として、これら二つの血液ノズルの他方を介して、気泡を(処理中に)排気可能とするように構成することができる。特に、気泡が膜を介した半透過性交換から排除されるので、血液側での気泡排気は大きな改善をもたらす。その結果、本発明によって、(少なくとも部分的に)水平に延出する配置にも拘らず、溶液側と血液側との両方で気泡の排気/気泡排出が可能となる。
【0031】
更に好ましくは、上記実施例に対して追加的又は代替的に、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記溶液流入ノズルと前記溶液流出ノズルとのそれぞれは、前記(筒状)ハウジングに対して接線方向に延出するように配置される。これによって、洗浄能力を改善する旋回溶液流が発生する。外径側の接線方向流入によって更に、それを、高さポテンシャルの前記構成と合成的に組み合わせることが可能であるので、本発明の課題が更に促進される。
【0032】
更に別の好適実施例において、(前記溶液流入ノズルと溶液流出ノズルとほぼ同様に)前記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルのそれぞれは、前記筒状ハウジングに対して接線方向に延出するように配置される。これによって、透析装置キャップにおける均質な血液分配が確保され、低い流速を有する領域が防止される。そのうえ、血液チューブの捩じれのリスクは大幅に減少する。すべてのポートの接線方向配置は、前記中空ファイバフィルタモジュールのコンパクトな構成にも有利な作用をもたらす。
【0033】
特に好適には、前記溶液流入ノズルは、前記中空ファイバフィルタモジュールの周方向において、好ましくは、約180度、前記溶液流出ノズルに対して角回転され、前記二つの溶液ノズルのいずれか一方(前記溶液流入ノズル又は前記溶液流出ノズル)は前記中空ファイバフィルタモジュールの前記水平位置において下方に向く。これによって前記高さポテンシャルによって起こされる排出が促進される。
【0034】
別の又は追加の好適実施例において、前記血液流入ノズルは、前記中空ファイバフィルタモジュールの周方向において、好ましくは、約180度、前記血液流出ノズルに対して角回転され、前記二つの血液ノズルのいずれか一方(前記血液流入ノズル又は前記血液流出ノズル)は前記中空ファイバフィルタモジュールの前記水平位置において下方に向く。従って、前記溶液チャンバの利点(空気の漏出や流体の排出)を血液チャンバに付与することが可能となる。
【0035】
前記角回転の代わりに、更に別の実施例において、前記溶液流入ノズルと前記溶液流出ノズルとは、追加のチューブを回避しながら、前記血液処理装置の前記装置フロントに直接接続されることが可能となるように、同じ方向を向く(前記高さポテンシャルを維持しながら)ように付勢される(strived)。この同じ方向とは、前記二つのノズルが、その一方が、前記モジュールの前記長手方向に沿って延出する中央軸心の上方に位置し他方のノズルがその下方に位置する状態で、互いに平行にアラインメントされることを意味する。このように構成することで、本実施例に依れば、その内部で溶液が前記血液処理装置から前記中空ファイバフィルタモジュールへ、又は、その逆に、案内されるチューブを完全に無くすことが可能となる。この構成の利点は明白である。即ち、中空ファイバフィルタモジュールの接続は、この目的のためになんらチューブを必要とせず、透析装置を、前記装置フロントに取り付けるだけとなる。更に、材料の使用量も減少し、取り付けも時間的に改善される。最後に、フリー状態にぶら下がる溶液チューブが存在しないことによって事故のリスクも低減される。
【0036】
オプションとして、この実施例は、前記血液流入ノズルと前記血液流出ノズルとが、好ましくは、前記両溶液ノズルの方向に対して対向する(180度で)同じ方向を向くように構成される。これは、前記4つすべてのノズルが互いに対して平行に延出し、前記二つの溶液ノズルが一つの方向に向き(すなわち、その一つの方向に向けて開口し)、そして、前記二つの血液ノズルがその反対の方向に向く、ということを意味する。これによって、両溶液ポートを装置に直接に接続することが可能となるように、これら溶液ポートが装置に向き、両血液ポートがユーザに向き、これによってその長さを短くするとともに取り付けを容易にする。
【0037】
別構成として、前記両血液ポートも前記両溶液ポートと同じ方向に向く(すなわち、前記装置フロントに向く)ように構成することが可能である。これにより、ポートは外部からの衝撃から保護され、その結果、安全性が高まる。
【0038】
好ましくは、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記筒状ハウジングの形状は、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記水平位置を、所定の又は中心決めされたものとして形成することが可能となるように、前記装置フロントの形状、又は、少なくとも透析装置ホルダの形状と適合するように構成される。このことは、前記装置フロントと前記中空ファイバフィルタモジュールとが、ポカヨケ式に(poka-yoke principle)、前記中空ファイバフィルタモジュールが不適切に配置されることを防止するように、互いに構成される、ということを意味する。これによって、前記中空ファイバフィルタモジュールの前記装置フロントに対する水平接続が容易となり、本発明による前記所望の高さポテンシャルを適用することが補償される。従って、前記中空ファイバフィルタモジュールは、パトリックス-マトリックス接続(patrix-matrix connection)的に調節される。
【0039】
本発明に依れば、前記血液流入ノズルと血液流出ノズルとに接続される血液チューブを、これらノズルと前記血液流入ノズルと血液流出ノズルと一体に構成することが可能となる。これにより、本発明による血液処理装置には、透析装置、空気分離装置、と血液チューブ、のみを(使い捨て式に)取り付ければよいことになり、透析流体チューブは装置フロントと一体形成される。
【0040】
以後、本発明を、添付の図面を参照しながら、好適実施例を例にとって詳細に説明する。これら図面は略図的なものに過ぎず、本発明の理解のためのみに役立つものである。類似の部材には類似の参照番号が付与されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1a】第1実施例における本発明による中空ファイバフィルタモジュールを示した概略側面図である。
図1b図1aの中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図2a】第2実施例における前記中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図2b図2aの中空ファイバフィルタモジュールを示した概略側面図である。
図2c図2aの中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図3a】第3実施例における中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図3b図3aの中空ファイバフィルタモジュールを示した概略側面図である。
図3c図3aの中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図4a】第4実施例における中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図4b図4aの中空ファイバフィルタモジュールを示した概略側面図である。
図4c図4aの中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図5a】第5実施例における中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図5b図5aの中空ファイバフィルタモジュールを示した概略側面図である。
図5c図5aの中空ファイバフィルタモジュールの長手軸心に沿った図である。
図6】水平配置された中空ファイバフィルタモジュールを有する血液処理装置を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1aは、図6に関連して図示される血液処理装置2上での水平配置用に構成された透析装置として構成された中空ファイバフィルタモジュール1を図示している。前記透析装置は、血液チャンバと、当該血液チャンバと少なくともいつくかの部分において半透過的に連通する溶液チャンバを、取り囲む/包囲する/包含する、実質的に筒状のハウジング3を有する。血液流入ノズル4を介して、血液が前記透析装置(矢印B1を参照)に供給され、この血液は(浄化された状態で)、当該透析装置によって、血液流出ノズル5を介して戻されて排出される(矢印B2を参照)。溶液流入ノズル6と溶液流出ノズル7とは、前記溶液又は透析流体を、前記透析装置へと又は当該透析装置から案内/通過させる(矢印DF1,DF2を参照)。
【0043】
前記溶液流入ノズル6と前記溶液流出ノズル7との間には高さポテンシャル8’が設けられている。第1に、これによって、前記溶液流入および流出ノズル6, 7間の前記透析装置の水平配置における当該透析装置の位置を追加変化させることなく、前記溶液流入ノズル6を介して排出することを前記透析装置に可能にする高さの差が形成される。その結果、透析装置を排出させるためには、単にチューブセットを当該透析装置から取り外す(たとえば、ハンセン接続によって接続されている)のみでよく、透析装置を回転させることなどは不要である。これによって、取扱いが容易になり、同時に、透析装置は一度だけ、即ち、最初に、触れるだけでよいので、感染のリスクも低減する。第2に、前記高さポテンシャル8’によって、作動中に、前記溶液流出ノズル7を介して溶液チャンバから気泡9が漏れ出ることが可能となる。従って、透析装置によって行われる血液浄化は極めて効率的に行われ、従来の透析装置を水平位置で使用された場合に発生する溶液チャンバ内に気泡がたまる問題が解決される。
【0044】
前記溶液流入および流出ノズル6,7は、図1aの実施例においては互いに対向して配置されている。これらは、共に、前記ハウジング3に対して径方向に延出するとともに、周方向において、互いに対して180度角オフセットされている。前記水平作動位置において、前記溶液流入口6は、下方に向くように配置され、前記溶液流出口7は上方に向くように配置される。このようにして、溶液チャンバからの気泡の同時排気と改善された排出性の上述した作用効果が高められる。
【0045】
前記両ノズル6,7が配置される前記(実質的)筒状部分とは別に、前記ハウジング3は、更に、その二つの端面のそれぞれに透析器キャップ11を有する。これら各透析器キャップ11が、このケースにおいては前記透析装置の軸心方向に延出している前記血液流入および血液流出ノズル4,5を形成している。好ましくは、前記透析器キャップ11は、前記血液チャンバ内の気泡10が、血液浄化を損なうことなく、それに付着、又は堆積することができるように構成される。前記溶液チャンバ内に存在する気泡9と違って、第1実施例の前記血液チャンバ内に存在する気泡10は、排気するのが困難で、その結果、前記ハウジング3の各端部領域、即ち、前記透析器キャップ11の領域、に付着する。
【0046】
図1bは、そこから前記両ノズル6,7の、互いに対する180度の構成が得られるその長手軸心に沿った図1aの透析装置を図示している。前記透析器キャップ11によって構成される前記血液流入ノズル4は、この図において、前記溶液流出ノズル7に対して前記溶液流入ノズル6を接続する仮想線に対して垂直である。
【0047】
第2の実施例が図2a~2cに図示されている。図2bは、当該実施例の透析装置の側面図を示し、これに対して図2aにおいては、それは、その長手軸心に沿って、視認者の視点において、その片側(左側)での斜視図が図示され、そして図2cにおいては、視認者の視点において、他方の側(右側)でのその斜視図が図示されている。この実施例の必須コンポーネントは、図1aとの関連で説明した実施例から知られるものであり、反復を避けるためにここでは詳細には図示されない。
【0048】
前記第2実施例の前記第1実施例からの相違点は、前記血液流出ノズル5と同様に血液流入ノズル4が、ハウジング3に対して径方向に(ここでは軸心方向にではなく)延出するように配置されていることにある。従って、前記溶液チャンバ内にある前記高さポテンシャル8’とは別に、血液チャンバにも高さポテンシャル8”が設けられている。これによって、軸心方向設置空間が節約され、各チューブの捩れのリスクが低減される。更に、溶液チャンバ内の気泡9の漏出/除去と全く同様に、血液チャンバ内の気泡10の漏出/除去がここでは可能である。
【0049】
図2aおよび2cから明らかなように、前記各血液流入および血液流出ノズル4,5は、周方向において、互いに180度、角度オフセットされている。前記溶液流入および溶液流出ノズル6,7は、(軸心方向ではなく、図2b参照)前記周方向におけるそれらの位置において、前記血液流入および血液流出ノズル4,5の位置に対応している。透析装置において一般的な向流原理に従って、前記溶液流入ノズル6と前記血液流出ノズル5とは、前記ハウジング3の端部領域に配置され、これに対して、前記溶液流出ノズル7と前記血液流入ノズル4とは他方の反対側端部領域に配置されている。これはここに開示されるすべての実施例に当てはまる。
【0050】
第3の実施例が図3a~3cに図示されている。図3bは、当該実施例の透析装置の側面図を示し、これに対して図3aにおいては、それは、その長手軸心に沿って、視認者の視点においてその片側(左側)での斜視図が図示され、そして図3cにおいては、視認者の視点において他方の側(右側)でのその斜視図が図示されている。この実施例の必須コンポーネントは、前の実施例から知られるものであり、反復を避けるためにここでは詳細には図示されない。
【0051】
この第3実施例の図1および2の実施例との違いは、すべてのノズル4,5,6,7が前記ハウジング3に対して接線方向に延出するように配置されていることにある。その結果、前記血液流入ノズル4は図3bの図においては見えない。図3bにおける前記血液流出ノズル5からの血液流出は、視点において投影面から飛び出ており、これに対して、前記溶液流入ノズル6への溶液の取込は前記投影面内へと延出している。
【0052】
前記接線方向の流入および流出は、流体流の旋回を促進し、透析装置の浄化速度に対してポジティブな影響を与える。好ましくは、前記接線方向は、前記透析装置の(外)周部を指す。ここで、例えば、図3aと3cとから、明らかなように、本発明の概念は、完全な外側ではなく半径のおよそ半分までに接線方向に配置された接線方向配置も含む。
【0053】
図3aおよび3cにおいては、すべてのノズル4,5,6,7が、前記透析装置の長手軸心に沿って各視認者の視点から見える。本実施例において、前記溶液ノズル6,7と全く同様に、前記血液ノズル4,5は、互いに対して対角状に対向配置されている。従って、前記高さポテンシャル8’,8”の他に、幅における流入位置と流出位置の差も得られる。
【0054】
前記透析装置の一端部において、前記両ノズル5および6は、一方向において(投影面から外れて)横断方向/接線方向に突出し、他方、前記透析装置の他端部において、前記両ノズル4および7は他方向において(投影面内へ)横断方向/接線方向に突出する。
【0055】
前記血液側高さポテンシャル8”の量は、前記溶液側高さポテンシャル8’の量を上回り、前記透析装置キャップ11は、前記ハウジング3の中央部分よりもさらに径方向に突出しているので前記両血液ノズル4,5は更に外側に配置可能である。逸脱は可能であり、それらは前記溶液ノズル6,7と、前記血液ノズル4,5の位置によって引き起こされ得る。
【0056】
別の実施例が図4a~4cに図示されている。図4bは、当該実施例の透析装置の側面図を示し、これに対して図4aにおいては、それは、視認者の視点でその片側(左側)で図示され、そして図4cにおいては、視認者の視点で他方の側(右側)で図示されている。この実施例の必須コンポーネントは、前の実施例から知られるものであり、反復を避けるためにここでは詳細には図示されない。
【0057】
図4の実施例の図3の実施例との違いは、すべての接線方向延出ノズル4,5,6,7が透析装置の同じ側に突出し、同時に互いに対して平行に延出していることにある。その結果、図4aおよび4cから推測することができるように、この実施例の透析装置は非常にコンパクトである。当該透析装置は、オプションとして、すべてのポートが装置フロント12に向くか(これによってチューブの長さが短くなる)、或いは、それから離間して向く(これは装置の設置を容易にする)ように、図6との関連で図示の装置フロント12に接続することができる。
【0058】
更に別の実施例が図5a~5cに図示されている。図5bは、この実施例の透析装置の側面図を示し、図5aにおいては、それは、その長手軸心に沿って、視認者の視点で片側(左側)に図示され、そして図5cにおいては、それは視認者の視点で他方側(右側)に図示されている。この実施例の必須コンポーネントは、前の実施例から知られるものであり、反復を避けるためにここでは詳細には図示されない。
【0059】
上述した実施例のもとの比較における図5の実施例の特徴の相違点は、両血液ノズル4,5が一方向に向けて配置され、両溶液ノズル6,7は他方向に向けて配置されていることにある。好ましくは、前記両溶液ノズル6,7は、前に既に説明したように、チューブの相互接続無しで、前記処理装置2に直接に接続されることが可能となるように、前記装置フロント12(図6を参照)に向けられている。
【0060】
図6は、血液処理装置2を概略図示している。前記装置フロント12は、前記中空ファイバフィルタモジュール1の前記水平配置によって大きく可能とされる空間に関して最適化されるように構成されている。患者から血液を採取する動脈チューブ13は、前記血液流入ノズル4に接続された時に、前記中空ファイバフィルタモジュール1へ浄化対象血液を供給する前に、先ず安全ユニット14(遮断クリップおよび/又は空気検出器等)、圧力ピックアップ15、更に、ポンプ16(好ましくは、ペリスタルティックポンプとして構成される)を通過する。
【0061】
浄化後(前記向流原理に基づく)、前記血液は前記血液流出ノズル5を出て静脈チューブ17に入り、このチューブは前記血液を(更なる検出器と空気分離装置18との後で)浄化された状態で前記患者に戻す。前記装置フロント12の中央領域19は、ヘパリンポンプを配置するため、例えば、種々のインターフェース(ポートおよびスイッチ)のためにフリー状態に維持される。
【0062】
前記中空ファイバフィルタモジュール1の前記水平配置によって、先ず第一に、前記血液チューブ13,17が馬蹄形状に延出することが可能となる。これにより、これらのチューブは、可能な限り短くなり、これは、材料と空間の節約に加えて、体外浄化における血液温度損失の低減に対するポジティブな作用を与える。更に、前記水平配置によって、前記溶液流入ノズル6と溶液流出ノズル7とを、前記高さポテンシャル8’を実現しながら、前記装置フロントに直接に接続することが可能となり、その結果、溶液/透析流体チューブを完全に無くすことが可能となる。
【0063】
最後に、前記血液チューブ(すべての実施例を通じて)は、例えば、ルアーロック(Luer locks)を介して、透析装置から取り外し可能に構成されるか、若しくは、消耗品の数を更に減らすために、前記透析装置キャップ11と一体構成、されることも銘記されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、透析治療を行うため等の体外血液処理装置と、中空ファイバフィルタモジュールと、に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 中空ファイバフィルタモジュール
2 血液処理装置
3 ハウジング
4 血液流入ノズル
5 血液流出ノズル
6 溶液流入ノズル
7 溶液流出ノズル
8’ 高さポテンシャル(溶液側)
8” 高さポテンシャル(血液側)
9 溶液チャンバ内の気泡
10 血液チャンバ内の気泡
11 透析器キャップ
12 装置フロント
13 動脈チューブ
14 安全ユニット
15 圧力ピックアップ
16 ポンプ
17 静脈チューブ
18 空気分離装置
19 中央領域
DF1 溶液流入
DF2 溶液流出
B1 血液流入
B2 血液流出
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6