(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】臓器保持装置とそのシステム、およびそれらの腹腔鏡手術への適用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
A61B17/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019004746
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-12-17
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519015542
【氏名又は名称】マリナー エンドサージャリー インク.
【氏名又は名称原語表記】Mariner Endosurgery Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】デイビット アラン ラングロイス
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/028931(WO,A1)
【文献】特表2010-537733(JP,A)
【文献】特開2011-156379(JP,A)
【文献】特表2010-534490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0137877(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器保持装置であって、
1つ以上の臓器を拘束するように構成された生物学的適合性を有する柔軟性バリアと、
柔軟性バリアの第1の連結領域から延びている第1のアンカーストリングと、
柔軟性バリアの第2の連結領域から延びている第2のアンカーストリングと、
少なくとも1つの拡張要素であって、第1の連結領域と第2の連結領域とが張力を受けて離れて保持され、柔軟性バリアを、その軸に対してほぼ垂直に拡張するように構成したときに、および複数の連結領域間の軸から離間した領域で柔軟性バリアと結合する少なくとも1つの拡張要素と、を
備え、
前記柔軟性バリアがネットを備え、
少なくとも1つの前記拡張要素が、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域間の前記軸から離間した前記柔軟性バリアの加重周辺領域に沿った補助加重を備え、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域とが張力を受けて離れた状態で保持されたときに、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域間の軸から、前記加重周辺領域が垂下するように構成されている、
臓器保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の臓器保持装置であって、前記第1のアンカーストリングが前記柔軟性バリアから遠位の第1のループを有し、前記第2のアンカーストリングが前記柔軟性バリアから遠位の第2のループを有する臓器保持装置。
【請求項3】
請求項1に記載の臓器保持装置であって、前記補助加重が、前記加重周辺領域に固定された加重材料を備える臓器保持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の臓器保持装置であって、前記加重材料がシリコーンを備える臓器保持装置。
【請求項5】
請求項4に記載の臓器保持装置であって、前記補助加重が、前記柔軟性バリアの前記加重周辺領域に沿って固定されたシリコーンビーズを備える臓器保持装置。
【請求項6】
請求項1に記載の臓器保持装置であって、前記ネットの柔軟性を減少させる前記柔軟性バリアの補強構造をさらに備える臓器保持装置。
【請求項7】
請求項6に記載の臓器保持装置であって、前記補強構造が前記ネットに固定されたシリコーンビーズを備える臓器保持装置。
【請求項8】
請求項7に記載の臓器保持装置であって、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域とが張力を受け離れて保持されるときに、前記シリコーンビーズが、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域間の軸とほぼ非平行な線に沿って適用される臓器保持装置。
【請求項9】
請求項1に記載の臓器保持装置であって、少なくとも1つの前記拡張要素は、
柔軟性バリアの第3の連結領域から延びる第3のアンカーストリングと、柔軟性バリアの第4の連結領域から延びる第4のアンカーストリングとを備える臓器保持装置。
【請求項10】
請求項9に記載の臓器保持装置であって、
柔軟性バリアの第5の連結領域から延びる第5のアンカーストリングと、第1、第2、第3、および第4の連結領域によって画定される柔軟性バリアの中央領域内に配置される第5の連結領域とをさらに備える臓器保持装置。
【請求項11】
請求項10に記載の臓器保持装置であって、第3のアンカーストリングが、柔軟性バリアから遠位の第3のループを備え、第4のアンカーストリングが、柔軟性バリアから遠位の第4のループを備え、第5のアンカーストリングが柔軟性バリアから遠位の第5のループを備える臓器保持装置。
【請求項12】
請求項10に記載の臓器保持装置であって、柔軟性バリアがほぼ長方形であり、第1、第2、第3、および第4の連結領域の各々が、柔軟性バリアの個々の頂点に近接する臓器保持装置。
【請求項13】
請求項1に記載の臓器保持装置であって、配向を表示するネット上の標識をさらに備える臓器保持装置。
【請求項14】
請求項13に記載の臓器保持装置であって、標識がネット上のシリコーンビーズを備える臓器保持装置。
【請求項15】
腹腔鏡手術用の臓器保持装置であって、
請求項2に記載の臓器保持装置と、および、患者の腹壁を穿刺することによって腹腔内に進入するように構成された鋭利な遠位端を備えるストリング牽縮装置と、臓器保持装置のループのうちの1つを捕捉して、柔軟性バリアの該当する連結領域に固定するために、腹壁の内蔵を通じて補足したループを引き込むように構成された鋭利な遠位端に近接するフックとを備える腹腔鏡手術用の臓器保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術中に患者に偶発的に与える負傷を軽減するためのシステムに関し、より具体的には臓器保持装置とそのシステム、およびそれらの腹腔鏡手術への適用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手術と比較して、腹腔鏡手術は、手術に関連する疾病率の有意な減少を達成するための優れた手段である。しかしながら、これらの減少は、手術に実効的な過失がなく完璧に行われた場合にのみ達成される。残念ながら、一般的に過失のない腹腔鏡手術は保証できない。実際に、腹腔鏡手術に起因する術中および術後の合併症が非常に多く発生している。このため、腹腔鏡手術における患者の安全性を向上させ、そのような手術から利益を得る必要がある一方で、欠点を低減または排除する必要がある。
【0003】
腹腔鏡手術の最も深刻な欠点の1つは、意図した手術部位や領域に隣接している、場合によっては離れている患者組織構造に対して、故意でない、または不注意による損傷が発生することである。例えば、骨盤腔内では、腸、尿管、大きな臓器および血管は、腹腔鏡器具の熱または鋭利さにより直接傷つけられたり、隣接する組織を介した熱伝導によって間接的に火傷を受けたりする可能性がある。典型的には、そのような損傷は、特定の損傷部位が血液または患者の他組織によって隠されているので、手術時には認識されることはない。そのような医原性の損傷に付随するもう一つの欠点は、故意でない損傷に対する患者の反応が、多くの場合遅延することである。この反応遅延は、衝撃的ばかりでなく悲劇的になる可能性があり、時には一回以上の追加手術を招く可能性がある。これは、反応遅延がなければ不必要なことである。
【0004】
医学的観点と医学法的観点の両側からの意味合いは非常に大きい。明らかに、そのような損傷は否定的事象であり、避けられるべきである。それ故に、本発明はこれらの否定的事象の発生を抑え、深刻性を低減することを目的としている。提案の発明は患者の体内に挿入可能であって、少なくとも患者身体内の部位が手術器具を妨害しないように配置可能である。
【0005】
米国特許第9247932号明細書は、身体のトロカールポートを通過するファイバー牽縮制御部を含む牽縮システムを記載している。しかしながら、2つのトロカールシース間に保持されたファイバーの牽縮に依存するこの装置は、ツール挿入および移動のために2つの貴重なポートを占有し、そのため手順最適化の観点から外科医にとって面倒なものだと思われており、身体内の追加的切開を行うことを余儀なくしている。貴重な進入ポートを占有することなく臓器を引き込む能力は、手術中に手術チームが塞がれたポートにより邪魔されないようにするために必要である。
【0006】
米国特許第8852088号では、システムの展開時にトロカールを保存する前記手術用牽縮装置によってワークフロー問題を解決しようと試みている。非牽縮組織に選択的に展開可能なアンカーと、引き込むとする組織に展開且つ拡張可能な保持器と、を導入することによって、提案された発明は2つのトロカールへの依存性を排除している。一つの使用例では、保持器片は胆嚢を掴むことができ、アンカーは腹壁に固定することができるので、テザー線を用いて保持点をアンカー点に連結して、トロカールを通って外に出す。テザー線を引き戻すと、胆嚢と胆嚢の上に位置する肝臓を引き上げるレバーができる。しかしながら、テザー線は依然としてトロカールを突き出しているため、トロカールポートを通して提供される追加の手術用器具を完全に自由に動かすことはできない。特許第8852088号の他の欠点は、一度に1つの組織しか牽縮できないことである。下腹部の腹腔鏡手術において、特に肥満患者では、複数の臓器が同時に変形して動くことがある。
【0007】
米国特許第9247932号と第8852088号の両特許では、外科医の助手が開創器のファンまたはリフターを物理的に保持する必要性を排除しつつ、トロカールを利用可能状態にしようと試みている。しかしながら、手術室において臓器保持装置の有用性を最大化するには、トロカール部分への依存性や固定性なしに臓器を牽縮し、同時に複数の臓器を拘束できなければならない。これらの要因は、視野の遅延または閉塞なしに外科医が手術部位に注意を払うために重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、1つまたは複数の臓器を拘束するように構成された生物学的適合性を有する柔軟性バリアと、柔軟性バリアの第1の連結領域から延びる第1のアンカーストリングと、柔軟性バリアの第2の連結領域から延びる第2のアンカーストリングとを備える臓器保持装置が提供されており、第1の連結領域と第2の連結領域とが張力を受け離れて保持され、柔軟性バリアをその軸に対してほぼ垂直に拡張するように構成したときに、連結領域間の軸から離間した領域で少なくとも1つの拡張要素が柔軟性バリアと結合する。
【0009】
柔軟性バリアはネットを備え得る。
【0010】
第1のアンカーストリングは、柔軟性バリアから遠位の第1のループを有することができ、第2のアンカーストリングは、柔軟性バリアから遠位の第2のループを有することができる。
【0011】
少なくとも1つの拡張要素は、第1の連結領域と第2の連結領域間の軸から離間した柔軟性バリアの加重周辺領域に沿って補助加重を備え得る。この補助加重は、第1の連結領域と第2の連結領域とが張力を受け離れた状態で保持されたとき、第1の連結領域と第2の連結領域間の軸から加重周辺領域を垂下させるように構成されている。
【0012】
補助加重は、加重周辺領域に固定された材料を備え得る。
【0013】
加重材料は、シリコーン、特に柔軟性バリアの加重周辺領域に沿って固定されたシリコーンビーズを備え得る。
【0014】
臓器保持装置は、ネットの柔軟性を低下させる柔軟性バリアの補強構造をさらに備え得る。補強構造は、ネットに固定されたシリコーンビーズを備え得る。シリコーンビーズは、第1の連結領域と第2の連結領域が張力を受けて離れて保持されているとき、第1の連結領域と第2の連結領域間の軸に対してほぼ非平行な線に沿って適用されることができる。
【0015】
少なくとも1つの拡張要素は、柔軟性バリアの第3の連結領域から延びる第3のアンカーストリングと、柔軟性バリアの第4の連結領域から延びる第4のアンカーストリングと、を備え得る。
【0016】
臓器保持装置は、柔軟性バリアの第5の連結領域から延びる第5のアンカーストリングをさらに備え得て、第5の連結領域は、第1、第2、第3、および第4の連結領域によって画定される柔軟性バリアの中央領域内に配置される。第3のアンカーストリングは、柔軟性バリアから遠位の第3のループを有することができ、第4のアンカーストリングは、柔軟性バリアから遠位の第4のループを有することができ、そして第5のアンカーストリングは、柔軟性バリアから遠位の第5のループを有することができる。
【0017】
柔軟性バリアは、ほぼ長方形であり、第1、第2、第3、および第4の連結領域の各々が、柔軟性バリアの個々の頂点に近接することができる。
【0018】
臓器保持装置は、ネット上に配向を示す標識をさらに備え得る。標識はネット上のシリコーンビーズを備え得る。
【0019】
他の態様では、上で定義した臓器保持装置の適用方法が提供されている。
【0020】
さらなる態様では、1つ以上の臓器を拘束するように構成された生物学的適合性を有するネットと、柔軟性バリアから遠位の第1のループから遠位で、ネットの第1の連結領域から延びる第1のアンカーストリングと、ネットの第2の連結領域から遠位で、柔軟性バリアから遠位の第2のループを有する第2のアンカーストリングと、を備える臓器保持システムを備える腹腔鏡手術用の臓器保持システムが提供され、少なくとも1つの拡張要素は、第1の連結領域と第2の連結領域とが張力を受け離れて保持され、ネットがその軸に対しほぼ垂直に拡張するように構成されたとき、複数の連結領域間の軸から離間した領域で、少なくとも1つの拡張要素は柔軟性バリアと結合する。また、アンカーストリング牽縮装置は、患者の腹壁を穿刺することによって、腹腔に入るように構成された鋭利な遠位端と、臓器保持装置のループのうちの1つを捕捉するように構成された鋭利な遠位端に近接したフックとを有しており、腹壁の内臓を通して捕捉したループを牽縮し、ネットの該当する連結領域に固定する。
【0021】
さらなる他の態様では、直前に定義したような臓器保持システムの使用方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書に記載の様々な実施形態をよりよく理解し、それらがどのように実施されるかをより明確に示すために、単なる例として添付の図面を参照する:
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に基づき患者の身体に適用する手術システムの上面透視図である。
【
図2】
図2は、体の一部が切り取られている
図1の患者の身体に適用する手術システムを示す。
【
図4】
図4は、一実施形態に基づく、
図3の一対の臓器保持装置、トロカール、およびループ開創器を示す。
【
図5】
図5は、発明の他の実施形態に基づく
図2~
図4のものと同様の臓器保持装置を示す。
【
図6】
図6は、仰向けになってトロカールを通過する
図5の臓器保持装置を示す。
【
図7】
図7は、
図1のものと同様の手術システムの一部として使用されており、さらなる実施形態に基づくネットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
説明を簡単かつ明瞭にするために、適切であると考えられる場合には、対応または類似の要素を示すための参照番号を図面間で反復することがある。さらに、本明細書に記載の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、この技術に精通した当業者は、本明細書に記載の実施形態はこれらの具体的な詳細なしで実施されてもよいことを理解し得るであろう。他の例では、本明細書で説明している実施形態を不明瞭にしないために、周知の方法、手順、および構成要素は詳細に説明していない。また、この説明は、本明細書に記載の実施形態の範囲を限定するものとは見なされない。
【0025】
本明細書を通して使用される様々な用語は、文脈が示さない限り、以下のように読み理解されたい:全体を通して使用される「または」は、「および/または」と書かれているのと同様に包括的である。全体を通して使用される単数形の冠詞および代名詞はそれらの複数形を含んでおり、またその逆も成立する。同様に、性別代名詞は、それらの対応する代名詞を含んでいるので、本明細書に記載されるものを使用、実装、実行するなどを、単一の性別によるものと限定するものとして、代名詞を理解すべきではない。「例示的」は、「実例的」または「典型的」として理解されるべきであり、他の実施形態よりも必ずしも「好ましい」と理解されるべきではない。用語のさらなる定義は本明細書において設定することができる;本明細書を読んで理解できるように、これらの用語は、以前および以後の事例に適用することができる。
【0026】
腹腔鏡手術中に臓器の保持を補助する装置が、手術システムの一部として本明細書に開示されている。本装置は、手術中の複雑で予測不可能な臓器の動きを制限するために、身体の腹腔内に挿入するためのものである。本装置は、1つ以上の臓器を拘束するように構成された、ネットなどの生物学的適合性を有する柔軟性バリアを含んでいる。第1および第2のアンカーストリングは、柔軟性バリアの連結領域から延びており、それぞれが柔軟性バリアから遠位のループを有する。本装置は、少なくとも1つの拡張要素を含み、少なくとも一つの拡張要素は、第1の連結領域と第2の連結領域とが張力を受けて離れて保持され、柔軟性バリアをその軸に対しほぼ垂直に拡張するように構成されたときに、複数の連結領域間の軸から離間した領域で柔軟性バリアと結合する。一部の実施形態では、拡張要素は、複数の連結領域に対し遠位の柔軟性バリアの加重周辺領域に沿った補充加重を含む。この加重は、加重周辺領域が、連結領域間の軸から垂れ下がるように重力を与えるように構成される。
【0027】
本装置は、しっかりと巻き取られてポートを通過し、身体内で展開され、針フックのような牽縮装置を介してアンカーストリングのループを患者の組織に引き込むことによって、臓器を横切って操縦および伸長され、患者の組織を通じて所定の位置に牽縮される。柔軟性バリアが所定の位置に固定された後、牽縮装置は取り除かれる。手術が完了すると、ループは切断され、柔軟性バリアは進入に使用されたポートを通過する。保持および/または牽縮を必要とする器官は、小腸、大腸、S状腸、肝臓、胆嚢、腎臓、子宮、胃および腹腔に典型的に見られる他の内臓を含むことがあるが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載したものは、ごくの僅かな例示的実施形態にすぎない。本発明の構成要素のサイズおよび形状、ならびに構成要素に使用される材料の種類を含むパラメータに精通している当事者は、本明細書に記載の本発明の範囲内に留まらず、牽縮を必要とする異なる種類および/またはサイズの臓器ならびに患者の解剖学的構造に適応するように変更し得るであろう。
【0028】
本明細書に用途を記載した臓器保持装置および方法は、メッシュネットなどの生物学的適合性を有する柔軟性バリアと、柔軟性バリアを保持部位に送達するための送達装置とを組み合わせて含む一つのシステムであって、柔軟性バリアを展開して、目的の臓器に対して所定の位置に保持することを可能にするものである。
【0029】
本発明の実施形態の患者の身体に適用する手術システム10を示す
図1および
図2を参照する。手術システム10は、プローブ12、腹腔鏡14、手術器具16、ディスプレイ17、器官保持装置18、コントローラ20、および追跡システム22を含んでおり、この追跡システムは図示の実施形態ではカメラシステムである。手術システム10は、腹腔鏡手術中に患者に与える損傷の発生率を低減するように構成されている。
【0030】
手術システム10は、最初に26で示した(
図1には患者26の部位のみが示されている)患者身体内の安全領域を決定するために使用され、患者26に負傷を与えることなく手術器具16は操縦され得る。安全領域を決定するには、プローブ12、特に腹腔鏡14が不可欠である。プローブ12は、プローブ本体28と、プローブ本体28に接続された体内部分30と、を含んでいる。体内部分30は、患者26の身体に形成された複数の開口部32のうちの1つを通して少なくとも部分的に患者26の身体に挿入できるように構成されている。したがって、体内部分30は、例えば適切なステンレス鋼のような、患者に害を及ぼさない材料から作られる。プローブ本体28は、使用中は患者26の体外にあるように構成される。
【0031】
プローブ12は、体内部分30に探針部分34をさらに含んでいる。探針部分34は、体内部分30の一部であり、手術領域(すなわち、手術を必要とする患者の特定の部位の近傍)内にある患者26の36(
図2)に示した体内部位上の点の位置を識別するために使用される。手術領域は
図2の38に示されている。探針部分34は、体内部分30の先端40にあっても良い。
【0032】
プローブ12の使用中に、コントローラ20が、選択された時間で探針部分34の位置を決定できることが望ましい。この目的のために、プローブマーカー42がプローブ本体28に設けられている。プローブマーカー42は、使用中に、カメラシステム22によって観察されるものであり、コントローラ20を用いてプローブ12を識別するために(すなわち、プローブ12を器具16などの他の物体と区別するために)使用される。追加的または代替的に、プローブマーカー42は、コントローラ20がプローブマーカー34の位置および配向を決定することができるように、十分な情報をコントローラ20に提供するよう構成されている。プローブマーカー34の位置および配向を決定すると、コントローラ20がプローブ12自体の位置および配向を決定することができるので、探針部分34の位置を決定することができる。探針部分34の位置の決定は、患者26の体内部位36がどこにあるかを決定する際に、コントローラ12によって使用され、次に安全領域24を決定する際にコントローラ20によって使用される。
【0033】
腹腔鏡14は腹腔鏡本体50と、腹腔鏡本体50に接続された体内部分52とを含んでいる。体内部分52は、開口部32のうちの1つを通して少なくとも部分的に患者26の体内に挿入されるように構成されている。プローブ12が挿入される特定の開口部32が32bに示されている。したがって、体内部分52は、例えば適切なステンレス鋼のような、患者に害を及ぼさない材料から作られる。腹腔鏡本体50は、使用中に患者26の体外にあるように構成されている。
【0034】
体内部分52は受像要素を含んでいる。受像要素54が手術領域内にある場合、使用中に、受像要素は、探針部分34の画像を見るために患者26の身体内の手術領域38に配置できる。受像要素54は、例えばレンズであリ得る。腹腔鏡14は、受信した画像をディスプレイ17に送信するための任意の適切な手段で構成される。例えば、腹腔鏡14は、受像要素54からの画像を受信するように配置された画像センサー(図示せず)を含んでおり、それらは、例えばCCDセンサーまたはCMOSセンサーであり得る。腹腔鏡14は、探針部分34の画像をディスプレイ17に(オプションで、コントローラ20などのコントローラを介して)送信するように構成されている。
【0035】
手術用器具16は、器具本体と、器具本体に接続された体内部分とを含んでいる。体内部分は、使用中に患者26の身体に少なくとも一部が挿入されるように構成されている。器具本体は、使用中に患者の体外にあるように構成されている。体内部分は機能要素を含み、この要素は患者に対し特定の機能を遂行するように構成されている。例えば、機能要素は、切断刃、鋏メカニズム、または例えば焼灼のための加熱要素であり得る。周知のように、機能要素が、患者26の手術領域38を囲んでいる体内部位36と偶然に接触すると、患者26に故意でない損傷を引き起こす可能性がある。
【0036】
手術用器具16の使用中に、コントローラ20が手術用器具16の先端にある機能要素の位置を実質的に連続決定できることが望ましい。この目的のために、器具マーカーが器具本体に設けられている。器具マーカーは、使用中にカメラシステム22によって観察されるものであって、手術器具16を識別するために、(すなわち、プローブ12のような他の物体と手術器具16を区別するため)コントローラ20によって使用される。器具マーカーは、コントローラ20が器具16の位置および配向を決定することができるように、追加的あるいは代替的に、十分な情報をコントローラ20に提供するように構成されている。器具マーカーの位置および配向を決定することによって、コントローラ20は、手術器具16自体の位置および配向を決定することができ、機能要素の位置を決定することができる。機能要素の位置の決定は、機能要素が安全ゾーン24内にあるか否かを決定する際にコントローラ12が使用する。
【0037】
カメラシステム22は、少なくとも1つのカメラ56を含み、より好ましくは手術室の周囲に取り付けた複数のカメラ56を含む。カメラ56は、プローブマーカー42および器具マーカー96の視界を遮る可能性を低減するために選択された位置に配置される。カメラ56は、プローブマーカー42の画像を受信し、その画像をコントローラ20に送信する。コントローラ20は、画像内でプローブマーカー42を探し出し、任意の適切な手段によってプローブ12の位置および配向、したがって探針部分34の位置を決定できるようにプログラムされている。これは、2つ以上のカメラ56からの画像を比較して、三角測量を使用することによって達成することができる。代わりに、立体カメラ56を使用すると、複数のカメラを使用しなくてもコントローラ20に送信した画像を介して三次元位置情報を提供することができる。代わりに、非立体画像をコントローラ20に送信する単一の非立体カメラ56を使用してもよい。コントローラ20は、画像の二次元平面内においてマーカー42の位置を容易に決定することができる。プローブマーカー42の深さ(すなわち、垂直な三次元軸に沿ったカメラから画像平面までの距離)は、画像中のマーカー42の外見上のサイズに基づいて決定することができる。
【0038】
2つ以上のカメラ56を設けることは、外科医の手や体が、カメラシステム22がプローブマーカー42の障害のない視野の受像を妨害する可能性を低減できるので、有利である。マーカー42の障害のない視野を得るために少なくとも2つのカメラ56を要求する実施形態では、カメラシステム22が3つ以上のカメラ56を含むことが好ましい。
【0039】
カメラの組み込みの代わりに、追跡システム22を用いると、プローブマーカーと器具マーカーの位置を感知するように構成された他のタイプの複数のシステム追跡センサーを代替的に組み込むことができる。例えば、追跡システムは、器具16とプローブ12の位置を感知するために、以下の例示的な技術のうちの1つまたはそれ以上を組み込むことができる:2次元または3次元超音波、MRI(磁気共鳴映像法)およびCAT(有線TV)スキャン画像、電磁気的検出、無線周波数(RF)検出。使用されるテクニックやテクノロジーを問わず、追跡システムで検出されるプローブと器具上のものは何であっても、それぞれをプローブマーカーと器具マーカーと見なすことができる。
【0040】
臓器保持装置18は、手術器具16が手術領域38で使用される際に、その領域において、少なくとも幾つかの体内部位36が、手術器具16を妨害しないように位置決めすることができる。
【0041】
ここで
図1~
図3を参照する。臓器保持装置18は、長方形ネット60の連結領域61から延びる生物学的適合性を有するアンカーストリング46を備える。アンカーストリング46は、ネットの一部材料を形成するか、何らかの適切な方法でそれに固定され得る。それらストリングは、ネット60が1つ以上の器官を保持できるように、適切なレベルの張力を受けることができる任意の種類の紐、糸、撚り糸、ワイヤなどであっても良い。ネット60は、保持および/または牽縮された器官を覆う材料の層からなる生物学的適合性を有する柔軟性バリアである。好ましくは、ネット60の開口のサイズは、それを通る器官が著しく突出するのを阻止するように十分に小さい。各連結領域61は、対応するアンカーストリング46がネット60に連結される点(複数可)によって定義される。したがって、各連結領域は点または領域であり得る。連結領域61は、長方形ネット60の上部周縁部65に沿って2つの隣接する頂点に近接している。一般に、2つの連結領域61は、連結領域61を通過し、上部周縁部65に対しほぼ平行であるA軸を定義する。各アンカーストリング46は、ネット60から遠位にあるループ62を有する。アンカーストリング46は、患者26の体内から、筋膜と腹壁を経て、針フックなどのループ62を通過して患者26の切除孔から引き出せるように構成されている。それ故に、アンカーストリング46は、ループ62を介してピンと引っ張ることができ、ループ62は支持フレーム上の適切な取り付け点に取り付けてもよい(図示せず)。臓器保持装置18は、それぞれが手術領域38の周囲の体内部位36に固定された、1つまたはそれ以上の個々のネットから構成されてもよい。
【0042】
ネット60は、加重周辺領域を提供するため、ネット60の底部周縁部63の近位側または底部周縁部63に加重周辺構造47を有する。加重周辺構造47は、ネット60の加重周辺領域に固定されたシリコーンビーズのような柔軟で生物適合性を有する形態の材料を介して補充的加重を提供する。すなわち、その位置でネット60を厚くしたり、追加の材料を固定したり、通常必要とされる長さを超えてその長さを延ばしたりすること等によって、追加の重量をネット60の周縁の近位側に加える。連結領域61がアンカーストリング46を介して張力を受け離れて保持されているとき、加重周辺構造47が、ネット60に対し拡張要素として作用して、ネット60を複数の連結領域61間のA軸に対してほぼ垂直に拡張させる。すなわち、ネット60を重力によって垂れ下げ、二次元に沿って拡張させる。
【0043】
他の実施形態では、周辺縁部63の領域でネット60を厚くし、その領域に材料を追加し、柔軟性フィラメントやステンレス鋼要素などの他の重量をその領域に固定することによって、加重周辺構造を提供することができる。加重周辺構造は、ネット60が標的器官を保持するためのバリアを提供するのに必要な長さよりも長いネット60の上部周縁領域に配置することができる。
【0044】
さらに、補強構造49は、ネット60を中心線に沿って上部周縁部65に対してほぼ垂直に拡張する。補強構造49は、中心線に沿ってネット60に固定されたシリコーンビーズを介して提供される。別の実施形態では、領域内のネット60を厚くしたり、その領域内に材料を追加したり、領域に柔軟性フィラメントを固定したりする等によって、補強構造を提供することができる。上記実施形態のように加重周辺構造が採用される場合、A軸に対し非平行な補強構造が、二次元に沿って剛性を与えるために提供されるのが好ましい。
【0045】
加重周辺構造47と補強構造49が、ネット60にある程度の剛性を与え、腹腔内で変形する器官の押し込み運動に対抗する。また、この実施形態における加重周辺構造47は補剛構造としても作用することを留意されたい。
【0046】
他の実施形態では、補強構造はネット60に沿って任意の形状をとることができる。また、たわみに対する抵抗をさらに提供するために、ネット60の異なる領域や異なる軸に沿って2つ以上の補強構造を設けることができる。
【0047】
ネット60、加重周辺構造47、補強構造49、ならびにアンカーストリング46およびループ62の全ては臓器保持装置18が動きを拘束する生体組織の解剖学的構造に順応するのに十分な柔軟性を持つ生体適合性材料から作られ、好ましくは患者26の解剖学的構造の断面積を被覆する。合成材料の使用は可能であり、その目的は手術視野の閉塞や、より悪い場合には、臓器移動による手術部位の閉塞に起因する不注意な損傷を防ぐために、牽縮する器官に被覆および補強を提供することである。これらの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートおよび/または延伸ポリテトラフルオロエチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、一緒に編まれても織られてもよく、柔軟な平面シートに配置してもよい。そのような材料の例としては、エチコン・エンドサージリ社のプロレンポリプロピレンメッシュおよびメルシレンポリエチレンテレフタレートメッシュ、ポリプロピレンから構成されたバード社のマーレックスメッシュがある。また、合成または合成生体吸収性ニット材料を、腸や他の組織の癒着を低減または防止する材料、または材料の化合物の内臓に面する側にコーティングしてもよい。これらの材料の例には、ヒアルロン酸ナトリウムおよびそれに由来する化合物があるが、これらに限定されるものではなく;カルボキシメチルセルロースとポリエチレングリコール;架橋オメガ3脂肪酸油;酸化再生セルロース;モノクリルフィルム、ポリジオキサノンフィルム、およびコラーゲン酸化フィルムの化合物を挙げることもできる。
【0048】
図4は、トロカール66に並んだ2つの臓器保持装置18を示しており、医療器具は、オブチュレータ67(金属製またはプラスチック製の鋭利な、または刃のない先端部であっても良い)、カニューレ68(基本的には中空管)、およびシール69からなる。トロカール66は、腹腔鏡手術中に患者の腹部を通して配置した後、グリッパー、ハサミ、ステープラなどの他の器具を配置するためのポータルとして機能する。
【0049】
また、臓器保持装置18のループ62を患者から引き出すために使用されるフック針ツール70の形状を持つアンカーストリング牽縮装置も示されている。フック針ツール70はグリップ71を有しており、そのグリップからフック付き針先73を備えた細長い剛性シャフト72が延びている。フック針ツール70のシャフト72は、生体適合性を有する剛性材料から構成されるのが好ましい。針を構成することができる材料のいくつかの例は、304Lステンレス鋼および他の鋼合金を含むがこれらに限定されるではない;ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66);ポリエチレン;ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレートおよび他のアクリルプラスチックを挙げることができる。
【0050】
臓器保持装置18を患者内に配置するためには、それをしっかりと巻き付け、患者の体内に配置されたトロカール66を介して腹壁を通して腹腔内に完全に挿入する。一旦患者の体内に配置すると、臓器保持装置18のネット60は、ループ62を露出するために従来の腹腔鏡器具を用いて展開される。加重周辺構造47は、展開されるべき一般的な配向を示すためにネット60上に標識を提供する。ネット60を拡張するには、加重周辺構造47を垂下させることが望ましいので、ネット60を底部周縁部の近接側に配置して、底部周縁部63の向かい側の頂部周縁部65を、臓器の保持に必要な上方位置に配置する必要がある。他の実施形態では、マーカーが上端または下端のものであるかを識別するため、ネット領域内の異なる色付き材料と、周辺端にあるマーカーや周辺に隣接するマーカーとを介すなどして、他の標識を追加的または代替的に提供することができる。
【0051】
フック針ツール70は、固定しようとする自由なアンカーストリング46のうちの特定の1つにより腹腔内の所望の位置に案内された後、そのループ62をフックする。対応するループ62を引っ掛けると、外科医は引っ掛けた針先73を入口の穿刺穴を通じて牽縮して、引っ掛かったループ62を引っ張ることができる。筋膜、皮膚、筋肉、脂肪および他の腹部組織との摩擦によって、ループ62を通じて引っ張り、所定の位置に保持することが可能になる。外科医が固定しようとする各ループ62に対してこの手順を繰り返し、患者の解剖学的構造および臓器の位置に応じて、ネット60をピンと引っ張ったり緩めたりすることができる。
【0052】
アンカーストリング46を牽縮するために。手術用掴み器具等のような他の種類のアンカーストリング牽縮装置を用いることができる。
【0053】
ネット60の弾力性は、その柔軟性により腸または他の器官をネット60に持ち上げることを可能にするが、器官が手術部位にこぼれ落ちるのを防ぐのに十分な剛性をそのまま維持する。完全に展開されたシステムは、臓器保持装置18を腹腔に対して垂直な平面形状になるようにする。
【0054】
臓器保持装置18を取り外しても、体内にプロテーゼや異物が残ることはない。従来の腹腔鏡手術器具を使用しても、アンカーストリング46を切断することにより、手術チームは取り外したループ62およびアンカーストリング46の一部を身体を通して引き抜くことができる。ネット60をコーナーで掴み、それをポートを通じて腹腔から直接引き出すことによって、ネット60を最大のトロカール66を介して引き出すことができる。従来の臓器保持装置とは異なり、助手が臓器保持装置18を取り扱う必要はなく、臓器保持装置18の展開中にどのようにしてもトロカール66は妨害されない。
【0055】
図5は、他の実施形態に基づいた臓器保持装置80を示す。臓器保持装置80は、
図2~
図4の臓器保持装置18と同様である。ただし、加重周辺構造47の他にも、臓器保持装置80は、ネット60の連結領域61から拡張し、それらの端部にループ62を有する追加のアンカーストリング46形態の追加の拡張要素を含んでいる。特に、
図2~
図4に示した実施形態では、2つの追加のアンカーストリング46が、2つの連結領域61aから遠位の長方形ネット60の頂点で連結領域61bから延びているが、それらの間にアンカーストリングが存在せず、連結領域61bがその軸から離れる方向に移動すると、ネットが拡張する。また、連結点61bから延びるアンカーストリング46は、ネット60が、連結領域61aによって画定されるA軸から離れて延びるように作用する。
【0056】
臓器保持装置80は、ネット60の頂点に近接して配置された4つの連結領域61a、61bによって画定されるネット60の中央領域にある連結領域から延びる別のアンカーストリング46を、さらに含んでいる。ネット60が臓器から圧力を受ける場合、または手術用器具がネット60の近くで操作されている場合など、いくつかの用途では、その中央領域に張力を加えることによってネット60の膨らみを制御することが望ましい。
【0057】
図6は、巻き上げられて、トロカール66を通じて挿入される臓器保持装置80を示す。加重周辺構造47および補強構造49を用いる場合でも、ネット60は、それを巻いてトロカール66を通過させることができるほど、十分に柔軟である。
【0058】
図7は、患者26の体内に配置された臓器保持装置80を示す。図示したように、アンカーストリング46はネット60の4つの頂点の各々から延びており、それらのループ62は、フック針ツールまたはループ62を身体から引き出すための他の適切なツールを使用して牽縮されている。また、加重周辺構造47は垂れ下がり、ネット60を上側の2つのアンカーストリング46の複数の連結領域間を延びるA軸からほぼ垂直に拡張している。
【0059】
加重周辺構造47および補強構造49の両方は、臓器と衝突する結果としての撓み/膨れに抵抗するため、ネット60を補強するように作用する。
【0060】
さらに、中央領域から延びるアンカーストリング46は、ピンと引っ張られた状態で示されている。
【0061】
上記の実施形態では、柔軟性バリアはネットであるが、他の種類の柔軟性バリアも使用することができる。例えば、ラテックスやナイロンシートが、1つ以上の器官を保持するために使用され得る。柔軟性バリアは、長方形でなくてもよく、他の形状で提供されてもよい。
【0062】
他の実施形態では、アンカーストリングは、ループの代わりに、結び目、または幅広い部分を掴むなど他の特徴を有してもよく、そのような特徴を有さなくてもよい。そのようなアンカーストリングは、手術用掴み器具などと共に使用することができる。
【0063】
上記の説明は本発明の複数の実施形態を構成するが、本発明は、添付の特許請求の範囲の公正な意味から逸脱することのないさらなる修正および変更が可能であることを理解されたい。
【0064】
本技術に精通した当業者であれば、さらに多くの代替の実装形態および可能な修正形態があり、上記の例は1つまたは複数の実装形態の例示にすぎないことを理解されよう。したがって、その範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
〔付記1〕
臓器保持装置であって、
1つ以上の臓器を拘束するように構成された生物学的適合性を有する柔軟性バリアと、柔軟性バリアの第1の連結領域から延びている第1のアンカーストリングと、柔軟性バリアの第2の連結領域から延びている第2のアンカーストリングと、少なくとも1つの拡張要素であって、第1の連結領域と第2の連結領域とが張力を受けて離れて保持され、柔軟性バリアを、その軸に対してほぼ垂直に拡張するように構成したときに、および複数の連結領域間の軸から離間した領域で柔軟性バリアと結合する少なくとも1つの拡張要素とを備える臓器保持装置。
〔付記2〕
付記1に記載の臓器保持装置であって、前記柔軟性バリアがネットを備える臓器保持装置。
〔付記3〕
付記2に記載の臓器保持装置であって、前記第1のアンカーストリングが前記柔軟性バリアから遠位の第1のループを有し、前記第2のアンカーストリングが前記柔軟性バリアから遠位の第2のループを有する臓器保持装置。
〔付記4〕
付記2に記載の臓器保持装置であって、少なくとも1つの前記拡張要素が、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域間の前記軸から離間した前記柔軟性バリアの加重周辺領域に沿った補助加重と、第1の連結領域と第2の連結領域とが張力を受けて離れた状態で保持されたときに、第1の連結領域と第2の連結領域間の軸から、加重周辺領域が垂下するように構成された補助加重とを備える臓器保持装置。
〔付記5〕
付記4に記載の臓器保持装置であって、前記補助加重が、前記加重周辺領域に固定された材料を備える臓器保持装置。
〔付記6〕
付記5に記載の臓器保持装置であって、前記加重材料がシリコーンを備える臓器保持装置。
〔付記7〕
付記6に記載の臓器保持装置であって、前記補助加重が、前記柔軟性バリアの前記加重周辺領域に沿って固定されたシリコーンビーズを備える臓器保持装置。
〔付記8〕
付記4に記載の臓器保持装置であって、前記ネットの柔軟性を減少させる前記柔軟性バリアの補強構造をさらに備える臓器保持装置。
〔付記9〕
付記8に記載の臓器保持装置であって、前記補強構造が前記ネットに固定されたシリコーンビーズを備える臓器保持装置。
〔付記10〕
付記9に記載の臓器保持装置であって、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域とが張力を受け離れて保持されるときに、前記シリコーンビーズが、前記第1の連結領域と前記第2の連結領域間の軸とほぼ非平行な線に沿って適用される臓器保持装置。
〔付記11〕
付記2に記載の臓器保持装置であって、少なくとも1つの前記拡張要素は、
柔軟性バリアの第3の連結領域から延びる第3のアンカーストリングと、柔軟性バリアの第4の連結領域から延びる第4のアンカーストリングとを備える臓器保持装置。
〔付記12〕
付記11に記載の臓器保持装置であって、
柔軟性バリアの第5の連結領域から延びる第5のアンカーストリングと、第1、第2、第3、および第4の連結領域によって画定される柔軟性バリアの中央領域内に配置される第5の連結領域とをさらに備える臓器保持装置。
〔付記13〕
付記12に記載の臓器保持装置であって、第3のアンカーストリングが、柔軟性バリアから遠位の第3のループを備え、第4のアンカーストリングが、柔軟性バリアから遠位の第4のループを備え、第5のアンカーストリングが柔軟性バリアから遠位の第5のループを備える臓器保持装置。
〔付記14〕
付記12に記載の臓器保持装置であって、柔軟性バリアがほぼ長方形であり、第1、第2、第3、および第4の連結領域の各々が、柔軟性バリアの個々の頂点に近接する臓器保持装置。
〔付記15〕
付記2に記載の臓器保持装置であって、配向を表示するネット上の標識をさらに備える臓器保持装置。
〔付記16〕
付記15に記載の臓器保持装置であって、標識がネット上のシリコーンビーズを備える臓器保持装置。
〔付記17〕
付記1~16のいずれかに記載の臓器保持装置の適用方法。
〔付記18〕
腹腔鏡手術用の臓器保持装置であって、
付記3に記載の臓器保持装置と、および、患者の腹壁を穿刺することによって腹腔内に進入するように構成された鋭利な遠位端を備えるストリング牽縮装置と、臓器保持装置のループのうちの1つを捕捉して、柔軟性バリアの該当する連結領域に固定するために、腹壁の内蔵を通じて補足したループを引き込むように構成された鋭利な遠位端に近接するフックとを備える腹腔鏡手術用の臓器保持装置。
〔付記19〕
付記18に記載の臓器保持システムの適用方法。