(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】コンクリート穿孔方法
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20230726BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B28D1/14
E04G21/32 Z
(21)【出願番号】P 2019010449
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】西宮 幸洋
(72)【発明者】
【氏名】黒石 真一
(72)【発明者】
【氏名】里見 賢
(72)【発明者】
【氏名】福田 真輔
(72)【発明者】
【氏名】多田 優希
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第98/056552(JP,A1)
【文献】特開平08-155944(JP,A)
【文献】特開平07-314434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
E04G 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを
上下に貫通する貫通孔をコア抜きにより形成するコンクリート穿孔方法であって、
貫通孔を形成するコア抜き作業を行う前に、板面がコア抜き予定箇所の
コア抜き到達面から離れた位置において当該コア抜き到達面と対向するように、当該コア抜き予定箇所のコア抜き到達面の近傍のコンクリートの面に、コア抜きされるコアの貫通孔からの落下を防止するコア落下防止板を固定
するとともに、当該コア落下防止板の下方に、コア抜き作業時に使用する水を受ける水受手段を設置し、
コア落下防止板は、一端側がコンクリートの下面にアンカーで固定された固定端となり、コア抜きされるコアを受ける他端側が自由端となるように設けられたことを特徴とするコンクリート穿孔方法。
【請求項2】
水受手段は、コア抜き予定箇所の下面と対向する水受板と、水受板の周縁よりコンクリートの下面に向けて立ち上がるように設けられた壁部とを備えたことを特徴とする請求項
1に記載のコンクリート穿孔方法。
【請求項3】
水受手段は、壁部がコンクリートの下面にアンカーによって固定されたことを特徴とする請求項
2に記載のコンクリート穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを貫通する貫通孔をコア抜きにより形成するコンクリート穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを貫通する貫通孔をコア抜きにより形成するコンクリート穿孔方法が知られている(特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭64-58508号公報
【文献】特開平05-162121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2では、コアを吊るしてコアの落下を防止できるコア落下防止機能を備えた特殊なコアドリルを用いてコア抜き作業を行うことが開示されている。
しかしながら、この場合、コア落下防止機能を備えた特殊で高価なコアドリルを用いなければならず、一般的で安価なコアドリルを用いる場合と比べてコスト高となる問題があった。
また、特許文献1では、コンクリートの下面に止水板を取付けて、コア抜き作業で使用する水が止水板上に溜まるように構成され、この止水板上に溜まった水を排出ホースを経由して排水することが開示されている。
しかしながら、一般的なコアドリルを用いる場合、止水板では、コア抜き作業でくり貫かれるコアの重量を支えきれず、コアが止水板を突き抜けて貫通孔から落下する可能性があり、安全性の面で問題があった。
本発明は、一般的で安価なコアドリルを使用できるとともに、コア抜き作業でくり貫かれるコアの貫通孔からの落下を防止できる、経済的でかつ安全性の高いコンクリート穿孔方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコンクリート穿孔方法は、コンクリートを上下に貫通する貫通孔をコア抜きにより形成するコンクリート穿孔方法であって、貫通孔を形成するコア抜き作業を行う前に、板面がコア抜き予定箇所のコア抜き到達面から離れた位置において当該コア抜き到達面と対向するように、当該コア抜き予定箇所のコア抜き到達面の近傍のコンクリートの面に、コア抜きされるコアの貫通孔からの落下を防止するコア落下防止板を固定するとともに、当該コア落下防止板の下方に、コア抜き作業時に使用する水を受ける水受手段を設置し、コア落下防止板は、一端側がコンクリートの下面にアンカーで固定された固定端となり、コア抜きされるコアを受ける他端側が自由端となるように設けられたので、コア落下防止機能を備えた特殊で高価なコアドリルを用いることなく、一般的で安価なコアドリルを使用できるとともに、コア抜き作業でくり貫かれるコアがコア落下防止板により支持されるので、コア抜き作業でくり貫かれるコアの貫通孔からの落下を防止できる、経済的でかつ安全性の高いコンクリート穿孔方法を提供できる。さらに、アンカーによるコア落下防止板の固定作業にかかる作業時間を短くでき、工期短縮を実現できる。また、コア抜き作業に使用するコアドリルが、コア抜き後に、コア落下防止板の板面に接触してコア落下防止板を傷付けてしまうことを防止できる。また、湿式のコアドリルによるコア抜き作業で使用された削孔用の水が、水受手段で受け止められるので、削孔用の水がコンクリートの下方の空間の床等に飛散してしまうことを防止できる。
また、水受手段は、コア抜き予定箇所の下面と対向する水受板と、水受板の周縁よりコンクリートの下面に向けて立ち上がるように設けられた壁部とを備えたので、貫通孔から流れ落ちる削孔用の水が水受板で受け止められ、かつ、削孔用の水が水受手段の外側に飛び散ってしまうようなことを壁部により防止できるようになる。
また、水受手段は、壁部がコンクリートの下面にアンカーによって固定されたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】コア抜き予定箇所の下方に設けられたコア落下防止板を示す図(実施形態1)。
【
図2】コア落下防止板をコンクリートの下方側から見た図(実施形態1)。
【
図3】コアがコア落下防止板により支持された状態を示す図(実施形態1)。
【
図4】複数のコア抜き予定箇所の下方にコア落下防止板が設けられた構成をコンクリートの下方側から見た図(実施形態2)。
【
図5】コア抜き予定箇所の下方に設けられたコア落下防止板及び水受手段を示す図(実施形態3)。
【
図6】コア落下防止板及び水受手段をコンクリートの下方側から見た図(実施形態3)。
【
図7】コア落下防止板及び水受手段をコンクリートの下方側から見た図(実施形態5)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係るコンクリート穿孔方法は、
図3に示すように、コンクリート1を貫通する貫通孔2をコア抜きにより形成するコンクリート穿孔方法であって、貫通孔2を形成するコア抜き作業を行う前に、
図1に示すように、上面51となる板面がコア抜き予定箇所20のコア抜き到達面となる下面21と対向するように、当該コア抜き予定箇所20の下面21の近傍のコンクリート1の下面11に、コア抜きされるコア30(
図3参照)の貫通孔2からの落下を防止するコア落下防止板5を固定したことにより、コア抜き作業でくり貫かれるコア30の落下を防止するようにした。
【0008】
コンクリート1は、例えば、建築物や土木構造物の床、天井、屋根、あるいは、梁等の横架材、道路や鉄道の床版、ボックスカルバートの頂版や床版等を形成するコンクリートである。
【0009】
コンクリート1からコア抜きされるコア30は、例えば、重量が十数kg~数十kgあり、コア落下防止板5は、当該コア30を受け止めることができるように構成される。
具体的には、コア落下防止板5は、例えば、厚さ数mm程度(例えば厚さ1.2mm程度)の鉄板を用いて、コア抜き予定箇所20の下面21と対向する上面51が、コア抜き予定箇所20の下面21から離れた位置に設けられる。
例えば、
図1に示すように、コア落下防止板5は、上面51が、コア抜き予定箇所20の下面21と所定の間隔xを隔てて対向するように、コア抜き予定箇所20近傍のコア抜き予定箇所20以外のコンクリート1の下面11に、アンカー52(例えば金属拡張アンカー)等の固定具によって固定される。
尚、コア落下防止板5の上面51とコア抜き予定箇所20の下面21との間の間隔xは、コア抜き作業に使用する図外のコアドリルが、コア抜き後に、コア落下防止板5に接触してコア落下防止板5を傷付けてしまうことを防止する目的を、効果的に達成できるように、例えば数mm~数十mm程度(例えば5.0mm)に設定される。
【0010】
また、
図1,
図2に示すように、コア落下防止板5は、一端53側がコア抜き予定箇所20の下面21近傍に位置される当該下面21ではないコンクリート1の下面11にアンカー52等の固定具で固定された固定端となり、他端54側が自由端となるように設けられている。即ち、コア落下防止板5は、片端支持となるように設けられている。
尚、コア落下防止板5は、一端53側の1か所をアンカー52でコンクリート1の下面11に固定するようにしても良いが、コア落下防止板5がアンカー52を回転中心として回転しないように、例えば、コア落下防止板5の一端53側の2か所をアンカー52でコンクリート1の下面11に固定することが好ましい(
図2参照)。
また、コア落下防止板5の上面51とコア抜き予定箇所20の下面21との間の間隔xは、例えば、コア落下防止板5の上面51とコンクリート1の下面11との間にワッシャー55等を介挿することにより形成できる。
【0011】
また、
図2に示すように、コア落下防止板5は、例えば、一辺の長さがコア抜き予定箇所20の下面21の直径の寸法よりも大きい正方形の板面を有した板により構成され、コンクリート1の下方から見て1つのコア抜き予定箇所20の下面21を覆い隠すように設置される。
【0012】
実施形態1に係るコンクリート穿孔方法では、特許文献1,2等に開示されたコア落下防止機能を備えない一般的で安価なコアドリル用いて、コンクリート1の上面12側からコア抜き予定箇所20を削孔する。そして、コアドリルがコア抜き予定箇所20のコア抜き到達面となる下面21に到達した場合に、
図3に示すように、コンクリート1のコア抜き予定箇所20からコア30がくり貫かれてコンクリート1に貫通孔2が形成される。
図3に示すように、くり貫かれたコア30は、コア30の下面31がコア落下防止板5の上面51上に落ちて、コア落下防止板5により支持される。
【0013】
実施形態1に係るコンクリート穿孔方法によれば、貫通孔2を形成するコア抜き作業を行う前に、上面51となる板面がコア抜き予定箇所20のコア抜き到達面となる下面21と対向するように、当該コア抜き予定箇所20の下面21の近傍のコンクリート1の下面11に、コア抜きされるコア30の貫通孔2からの落下を防止するコア落下防止板5を固定したので、特許文献1,2等に開示されたようなコア落下防止機能を備えた特殊で高価なコアドリルを用いることなく、一般的で安価なコアドリルを使用できるとともに、コア抜き作業でくり貫かれるコア30がコア落下防止板5により支持されるので、コア抜き作業でくり貫かれるコア30の貫通孔2からの落下を防止できる。即ち、経済的でかつ安全性の高いコンクリート穿孔方法を提供できる。
【0014】
また、実施形態1によれば、コア落下防止板5は、一端53側が1つ又は複数のアンカー52によりコンクリート1の下面11に固定された構成とした。即ち、コア落下防止板5は、一端53側がコンクリート1の下面11に固定された固定端となり、コア抜きされるコア30を受け止めるコア落下防止板5の他端54側が自由端となるように設けられたので、アンカー52等の固定具によるコア落下防止板5の固定作業にかかる作業時間を短くでき、工期短縮を実現できる。
【0015】
また、実施形態1によれば、コア落下防止板5の上面51とコア抜き予定箇所20の下面21との間に所定の間隔xを設けた。即ち、コア落下防止板5は、コア抜き予定箇所20の下面21と対向する板面となる上面51が、コア抜き予定箇所20の下面21から離れた位置に設けられたので、コア抜き作業に使用する図外のコアドリルが、コア抜き後に、コア落下防止板5の上面51に接触してコア落下防止板5を傷付けてしまうことを防止できるようになる。
【0016】
尚、実施形態1で用いるコア落下防止板5の板面の形状は、正方形以外の形状、例えば、長方形、三角形、円形等であってもよい。
【0017】
また、コア落下防止板5の上面51とコア抜き予定箇所20の下面21とが接触するように、コア落下防止板5を設置してもよい。
【0018】
また、コア落下防止板5は、一端53側と他端54側とを、コア抜き予定箇所20の下面21を挟んだ両側のコンクリート1の下面11,11に固定するようにしてもよい。
【0019】
実施形態2
実施形態1では、コンクリート1の下方から見て1つのコア抜き予定箇所20の下面21を覆い隠すことができる大きさの板面を備えて、1つのコアを受け止めることができるように構成されたコア落下防止板5を例示した。
一方、コンクリート1に貫通孔2を複数個形成する場合がある。例えば、コア抜きにより形成される貫通孔2,2…を隣り合って連続するように複数形成し、これら複数の貫通孔2,2…で囲まれて縁切りされる図外のコンクリートブロックを撤去することによって、コンクリート1に所望の大きさの開口部を形成する場合等がある。
実施形態2においては、上述したようにコンクリート1に所望の大きさの開口部を形成する場合において、複数のコア抜き予定箇所20,20…からくり貫かれる複数のコア30:30…を受け止めることができる大きさの板面を備えたコア落下防止板、即ち、
図4に示すように、複数のコア抜き予定箇所20,20…の下面21,21…に沿って延長するコア落下防止板5Aを、複数のコア抜き予定箇所20,20…の下面21,21…の近傍のコンクリート1の下面11に、アンカー52等の固定具を用いて固定した構成とした。
【0020】
実施形態2によれば、コンクリート1に、コア抜きにより形成される貫通孔2,2…を隣り合って連続するように複数形成し、これら複数の貫通孔2,2…で囲まれて縁切りされるコンクリートブロックを撤去することによって、コンクリート1に所望の大きさの開口部を形成する場合において、コア落下防止板5Aにより、複数のコア抜き予定箇所20,20…からコア抜きされる複数のコア30,30…の貫通孔2,2…からの落下を防止できる。また、この場合、コア抜き予定箇所20,20…の1つ1つに対応してコア落下防止板5,5…を設ける場合と比べて、コア落下防止板5Aの設置作業にかかる時間を短くでき、工期の短縮化が図れる。
【0021】
尚、実施形態1,2において、コア落下防止板5,5Aが取付けられるコンクリート1は、壁、梁、柱等であってもよい。即ち、壁、梁、柱等のコンクリートに貫通孔2を形成する場合において、板面がコア抜き予定箇所のコア抜き到達面(即ち、コアドリルで削孔を開始する側の面とは反対側の面)と対向するように、当該コア抜き予定箇所のコア抜き到達面の近傍のコンクリートの面に、コア抜きされるコアの貫通孔からの落下を防止するコア落下防止板を固定するようにしてもよい。
【0022】
実施形態3
実施形態1に係るコンクリート穿孔方法のように、コア抜き予定箇所20の下面21の近傍のコンクリート1の下面11に、コア抜きされるコア30の貫通孔2からの落下を防止するコア落下防止板5を固定した後、貫通孔2を形成するコア抜き作業を行う前に、コア落下防止板5の下方に、
図5,
図6に示すような、コア抜き作業時に使用する水を受ける水受手段60を設置するようにした。
【0023】
水受手段60は、コア落下防止板5の下方に配置されてコア抜き予定箇所20の下面21及びコア落下防止板5の板面と対向する水受面61を有した水受板62と、水受板62の周縁よりコンクリート1の下面11に向けて立ち上がるように設けられた壁部63とを備えている。
【0024】
水受板62は、例えば、一辺の長さが上述した正方形のコア落下防止板5の一辺の長さよりも大きい正方形又は長方形の板により構成され、コンクリート1の下方から見て1つのコア落下防止板5の板面を覆い隠すように設置される。
【0025】
壁部63は、正方形又は長方形の水受板62の各辺に沿ってそれぞれ個別に設けられる。
各壁部63,63…は、水受板62の一辺に沿って延長する断面矩形中空状の中間部材64と、水受板62の一辺に沿って中間部材64の幅方向両側に設けられた断面矩形中空状の各壁部材65,65と、各壁部材65,65の上面に設けられた水密維持部材66,66とを備えた構成である。
中間部材64及び壁部材65は、例えば、合成樹脂等により形成される。
水密維持部材66は、例えば、ウレタン樹脂、ウレタンゴム等により形成される。
【0026】
そして、各壁部63,63…の水密維持部材66の上面67とコンクリート1の下面11とが接触して水密性能が維持されるように、各壁部63,63…の各中間部材64,64…をコンクリート1の下面11にアンカー68(例えば金属拡張アンカー)等の固定具によって固定する。
水受手段60がコンクリート1の下面11に固定されたことにより、コンクリート1の下面11と各壁部63,63…と水受板62とで囲まれた密閉空間が構成され、貫通孔2から流れ落ちる削孔用の水が、当該密閉空間の底面となる水受面61で受け止められ、密閉空間の外に飛び散ることが防止される。
【0027】
実施形態3に係るコンクリート穿孔方法では、特許文献1,2等に開示されたコア落下防止機能を備えない一般的で安価な湿式のコアドリル用いて、コンクリート1の上面12側から、コア抜き予定箇所20に削孔用の水を供給しながら、当該コア抜き予定箇所20を削孔する。そして、コアドリルがコア抜き予定箇所20のコア抜き到達面となる下面21に到達した場合に、コンクリート1のコア抜き予定箇所20からコアがくり貫かれ、くり貫かれたコア30が、コア落下防止板5の上面51上に落ちてコア落下防止板5により支持される。
コア落下防止板5は、一端53側がアンカー52等の固定具によりコンクリート1の下面11に固定されて、他端54側が自由端となるように構成されていることにより、湿式のコアドリルによるコア抜き作業でコア抜きされたコア30がコア落下防止板5の上面51で受け止められた場合に、他端54(自由端)側が下方に撓むので、湿式のコアドリルによるコア抜き作業で使用された削孔用の水(コンクリート削孔屑が混在した水)が、コア抜きにより形成された貫通孔2からコア落下防止板5の上面51上に流れ落ち、コア落下防止板5の上面51の他端54から水受手段60の水受面61に流れ落ちる。
【0028】
尚、コア落下防止板5の上面51とコア抜き予定箇所20の下面21との間の間隔xは、コア抜き作業に使用する図外の湿式のコアドリルが、コア抜き後に、コア落下防止板5に接触してコア落下防止板5を傷付けてしまうことを防止する目的と、湿式のコアドリルによるコア抜き作業で使用される削孔用の水を排水する目的とを、効果的に達成できるように、例えば数mm~数十mm程度(例えば5.0mm)に設定される。
【0029】
実施形態3に係るコンクリート穿孔方法によれば、湿式のコアドリルによるコア抜き作業で使用された削孔用の水が、水受手段60で受け止められるので、削孔用の水がコンクリート1の下方の空間の床等に飛散してしまうことを防止できる。即ち、コンクリート1の下方の空間の床等に、削孔用の水(コンクリート削孔屑が混在した水)を飛散させたくない場合、コンクリート1の下方の空間の床等に、削孔用の水を飛散させることなく、湿式のコアドリルによるコア抜き作業を行うことが可能となる。
【0030】
また、実施形態3に係るコンクリート穿孔方法によれば、水受手段60として、コア落下防止板5の下方に配置されてコア抜き予定箇所20の下面21及びコア落下防止板5の板面と対向する水受面61を有した水受板62と、水受板62の周縁よりコンクリート1の下面11に向けて立ち上がるように設けられた壁部63とを備えた構成の水受手段60を用いたので、貫通孔2から流れ落ちる削孔用の水が、コンクリート1の下面11と各壁部63,63…と水受板62とで囲まれた密閉空間の底面となる水受面61で受け止められ、密閉空間の外に飛び散ることが防止される。
従って、削孔用の水がコンクリート1の下方の空間の床等に飛び散ってしまうようなことを確実に防止できる。
【0031】
尚、水受手段60の水受面61上に溜まった水は、コア抜き作業の終了後に吸引機に取付けた排水ホースなどを使用して排水したり、あるいは、水受面61に図外の排水口を設けてこの排水口に図外の排水ホースを繋げて自然排水させるようにしてもよい。
【0032】
また、実施形態3に係るコンクリート穿孔方法においては、各壁部63,63…の水密維持部材66の上面67とコンクリート1の下面11とが接触して水密性能が維持された密閉空間が形成される構成の水受手段60を用いた場合を例示したが、コア抜き予定箇所20の下面21及びコア落下防止板5の板面と対向する水受面を有した水受板と、水受板の周縁よりコンクリート1の下面11に向けて立ち上がるように設けられた壁部とを備え、壁部の上面とコンクリート1の下面11との水密性能が維持されていない構成の水受手段を用いてもよい。この場合でも、貫通孔2から流れ落ちる削孔用の水が水受板の水受面で受け止められ、かつ、削孔用の水が水受手段の外側に飛び散ってしまうようなことを壁部により防止できるようになる。
【0033】
実施形態4
実施形態4に係るコンクリート穿孔方法では、上述した水受手段60の水受板62に図外の排水口を形成するとともに、コンクリート1の下方の空間の床等に図外の水タンク等の集水部を設け、当該排水口と集水部とを図外の竪樋等の水路で接続した構成とした。
この場合、水受板62の水受面61は排水口に向けて傾斜して下る傾斜面となるように形成される。
【0034】
実施形態4に係るコンクリート穿孔方法では、湿式のコアドリルによるコア抜き作業で使用された削孔用の水が、水受手段60の水受面61から、排水口、水路を介して集水部に排水されるようになるので、吸引機に取付けた排水ホースなどを用いて排水する排水作業を省略できて、コンクリート1に貫通孔2を形成する作業を効率的に行えるようになる。
【0035】
実施形態3,4で用いる水受板の板面の形状は、正方形又は長方形以外の形状、例えば、三角形、円形等であってもよい。
そして、水受手段の壁部は、水受板の周縁よりコンクリート1の下面11に向けて立ち上がるように設けられた壁部であればよい。
【0036】
実施形態5
実施形態2のように、複数のコア抜き予定箇所20,20…の下面21,21…に沿った方向に長いコア落下防止板5Aを設けて、コンクリート1に、複数の貫通孔2,2…で囲まれて縁切りされる図外のコンクリートブロックを撤去して形成される開口部を形成する場合においては、
図7に示すように、複数のコア抜き予定箇所20,20…の下面21,21…及びコア落下防止板5Aの板面と対向する水受面61Aを有した水受板62Aを備えた水受手段60A、即ち、コア落下防止板5Aの長手方向に連続する長い水受面61Aを有した水受板62Aを備えた水受手段60Aを設けて、複数のコア抜き予定箇所20,20…でのコア抜き作業で使用される削孔用の水を当該水受面61Aで受け止める構成とすればよい。
当該水受手段60Aの各壁部63,63…は、水受板62Aの両側の長手方向に連続する側縁に沿って延長する断面矩形中空状の中間部材64と、水受板62の側縁に沿って中間部材64の幅方向両側に設けられた断面矩形中空状の各壁部材65,65と、各壁部材65,65の上面に設けられた水密維持部材66,66とを備えた構成とすればよい。
この場合、水受板62Aの水受面61Aが長手方向に沿って傾斜する傾斜面となるように形成され、当該傾斜面の下端側に排水口を設けるようにすればよい。
【0037】
実施形態5に係るコンクリート穿孔方法によれば、湿式のコアドリルによる複数のコア抜き予定箇所20,20…でのコア抜き作業で使用された削孔用の水が、水受手段の水受面、排水口、水路を介して集水部に排水されるようになるので、吸引機に取付けた排水ホースなどを用いて排水する排水作業を省略できて、コンクリート1に、複数の貫通孔2,2…で囲まれて縁切りされるコンクリートブロックを撤去して形成される開口部を形成する作業を効率的に行えるようになる。
【符号の説明】
【0038】
1 コンクリート、2 貫通孔、5,5A コア落下防止板、
20 コア抜き予定箇所、30 コア、60 水受手段、61 水受面、
62 水受板、63 壁部。