(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】センサパネル上におけるペンの位置を導出するシステムで実行される方法、及び、ペン
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20230726BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20230726BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20230726BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20230726BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G06F3/03 400Z
G06F3/041 522
G06F3/044 Z
G02F1/133 530
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2019023183
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】山本 定雄
(72)【発明者】
【氏名】久野 晴彦
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514008(JP,A)
【文献】特開2019-012505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/041
G06F 3/044
G02F 1/133
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンのペン先電極とセンサパネルとの静電結合を介して信号の送受信を行うことで、前記センサパネル上における前記ペンの位置を導出するシステムで実行される方法であって、
1つのフレーム期間内
に設定される複数の
時間スロットのすべてにおいてペン検出動作を行う
第1のモードにエントリしているセンサコントローラが、前記センサパネルを介して、1つのフレーム期間の基準時刻を示す第1の信号を送信するステップと、
前記第1の信号を検出した前記ペンが、検出した前記第1の信号によって示される前記フレーム期間内の前記
複数の時間スロットの
すべてにおいて、前記ペンの操作状態を示すデータ信号を含まないバースト信号を送信するステップと、
を含
み、
前記ペンは、前記フレーム期間のうち前記複数の時間スロット以外の時間には、前記データ信号及び前記バースト信号のいずれも送信しない、
方法。
【請求項2】
前記バースト信号は、前記センサコントローラがペン検出のために用いる波形の繰り返しにより構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バースト信号は、単一周波数の信号である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つのフレーム期間には2以上の前記
時間スロットが含まれる、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ペンは、前記
複数の時間
スロットのそれぞれにおいて、同一の初期位相で前記バースト信号を送信する、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記センサコントローラが、前記バースト信号を検出した場合に、
前記第1のモードとは異なる第2のモードにエントリするとともに、1つのフレーム期間の基準時刻を示し、かつ、前記第1の信号とは内容の異なる第2の信号を送信するステップと、
前記第2の信号を検出した前記ペンが、
検出した前記第2の信号によって示される前記フレーム期間内の前記複数の時間スロットの一部において前記バースト信号を送信する一方、検出した前記第2の信号によって示される前記フレーム期間内
に設定される複数の時間スロットの他の一部におい
て前記データ信号を送信するステップと、
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つのフレーム期間内
に設定される複数の時間
スロットのすべてにおいてペン検出動作を行う
第1のモードにエントリしているセンサコントローラとの間で、ペン先電極とセンサパネルとの静電結合を介して信号の送受信を行うペンであって、
前記センサコントローラから、1つのフレーム期間の基準時刻を示す第1の信号を受信するステップと、
受信した前記第1の信号によって示される前記フレーム期間内の前記
複数の時間スロットの
すべてにおいて、前記ペンの操作状態を示すデータ信号を含まないバースト信号を送信するステップと、
を実行
し、
前記フレーム期間のうち前記複数の時間スロット以外の時間には、前記データ信号及び前記バースト信号のいずれも送信しない、
ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサパネル上におけるペンの位置を導出するシステムで実行される方法、ペン、及びセンサコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
ペンがセンサコントローラに対して送信するダウンリンク信号は、バースト信号及びデータ信号を含んで構成される。バースト信号は、所定の波形(センサコントローラがペン検出のために用いる波形。例えば、所定周波数の正弦波形)の繰り返しにより構成される信号であり、センサコントローラによるペン検出のために利用される。データ信号は、ペンの内部で保持している各種データ(筆圧値、ペンIDなど)によって変調された信号であり、これらのデータをペンからセンサコントローラに供給するために利用される。
【0003】
特許文献1には、バースト信号に代えてロングバースト信号を送信する機能を有するペンの例が開示されている。ロングバースト信号は、センサコントローラからの指示に応じて送信される信号であり、指示の受信から所定時間にわたり連続的に送信される。ロングバースト信号の内容は、バースト信号と同様、所定の波形の繰り返しにより構成される。このロングバースト信号を用いれば、特許文献1に記載されているように、タッチ面内の広い範囲でバースト信号を検出できる状態を確保しつつ、センサコントローラによるバースト信号検出の失敗の可能性を低減することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、センサコントローラの構成によっては、所定時間にわたり連続的にロングバースト信号を送信することが好ましくない場合がある。以下、詳しく説明する。
【0006】
まず、センサコントローラが、ロングバースト信号の送信指示を行った後、連続的ではなく間欠的にダウンリンク信号を受信するように構成されている場合である。具体的な例を挙げると、例えばセンサコントローラがダウンリンク信号を受信するための電極と、ディスプレイの表示用電極(例えば、液晶ディスプレイの共通電極、有機ELディスプレイの負極など)とを共用する場合、センサコントローラは、ディスプレイの表示動作の空き時間(例えば、水平回帰時間及び垂直回帰時間)にのみダウンリンク信号を受信するように構成される。また、ペン検出の他にタッチ検出にも対応するセンサコントローラは、時分割で設定されるペン検出期間とタッチ検出期間のうちペン検出期間にのみダウンリンク信号を受信するように構成される。
【0007】
ディスプレイの表示動作やタッチ検出動作から見れば、ダウンリンク信号はノイズでしかない。したがって、ディスプレイの表示動作やタッチ検出動作が行われている間にはロングバースト信号の送信を停止することが望まれるが、従来、そのような停止は実現できておらず、ダウンリンク信号がノイズとなってしまっていた。
【0008】
次に、センサコントローラが時間スロットを利用する場合である。複数の時間スロットを含む所定時間長のフレームを設定し、各時間スロット内でのみダウンリンク信号を受信するように構成されるタイプのセンサコントローラにおいては、各時間スロットの開始タイミングでロングバースト信号の位相が略0になっていることが好ましい。
【0009】
しかしながら、所定時間にわたり連続的にロングバースト信号を送信するだけでは、各時間スロットの開始タイミングでロングバースト信号の位相が0から大きく離れた値になってしまう可能性があり、そうするとセンサコントローラによるロングバースト信号の検出が難しくなるので、改善が必要とされていた。
【0010】
したがって、本発明の目的の一つは、ロングバースト信号のメリットを享受しつつ、ロングバースト信号がノイズになることを防止するとともに、センサコントローラがロングバースト信号を容易に検出できるようにする方法、ペン、及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による方法は、ペンのペン先電極とセンサパネルとの静電結合を介して信号の送受信を行うことで、前記センサパネル上における前記ペンの位置を導出するシステムで実行される方法であって、1つのフレーム期間内の1以上の特定の時間に限りペン検出動作を行うセンサコントローラが、前記センサパネルを介して、1つのフレーム期間の基準時刻を示す第1の信号を送信するステップと、前記第1の信号を検出した前記ペンが、検出した前記第1の信号によって示される前記フレーム期間内の前記1以上の特定の時間のそれぞれにおいて、前記ペンの操作状態を示すデータ信号を含まないバースト信号を送信するステップと、を含む方法である。
【0012】
本発明によるペンは、1つのフレーム期間内の1以上の特定の時間に限りペン検出動作を行うセンサコントローラとの間で、ペン先電極とセンサパネルとの静電結合を介して信号の送受信を行うペンであって、前記センサコントローラから、1つのフレーム期間の基準時刻を示す第1の信号を受信するステップと、受信した前記第1の信号によって示される前記フレーム期間内の前記1以上の特定の時間のそれぞれにおいて、前記ペンの操作状態を示すデータ信号を含まないバースト信号を送信するステップと、を実行するペンである。
【0013】
本発明によるセンサコントローラは、ペンのペン先電極とセンサパネルとの静電結合を介して信号の送受信を行うことで、前記センサパネル上における前記ペンの位置を導出するセンサコントローラであって、1つのフレーム期間内の1以上の特定の時間に限りペン検出動作を行うよう構成され、さらに、前記センサパネルを介して、1つのフレーム期間の基準時刻を示す第1の信号を送信するステップと、前記第1の信号を検出した前記ペンが前記第1の信号によって示される前記フレーム期間内の前記1以上の特定の時間のそれぞれにおいて送信した、前記ペンの操作状態を示すデータ信号を含まないバースト信号に基づいて前記ペンの位置を導出するステップと、を実行するセンサコントローラである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1フレームにわたりバースト信号の送信が継続される一方、センサコントローラによるペン検出動作が行われる時間にのみバースト信号が送信されるので、ロングバースト信号のメリットを享受しつつ、ロングバースト信号がノイズになることを防止することができる。また、センサコントローラによるペン検出動作が開始されるタイミング(特定の時間の開始タイミング)と、バースト信号の送信開始タイミングとを一致させることができるので、センサコントローラがロングバースト信号を容易に検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態による電子機器1及びペン2を含むシステムを示す図である。
【
図2】
図1に示した制御部11及びセンサコントローラ12によって設定されるフレームの構造を示す図である。
【
図3】
図1に示した負極21の平面的な構造を模式的に示す図である。
【
図4】
図1に示したセンサコントローラ12及びペン2の動作を示すシーケンス図である。
【
図5】
図1に示したセンサコントローラ12及びペン2の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態による電子機器1及びペン2を含むシステムを示す図である。電子機器1は、例えばタブレット型のコンピュータであり、
図1に示すように、表示装置10、制御部11、及びセンサコントローラ12を有して構成される。また、ペン2は、例えばアクティブ静電方式に対応する電子ペン(アクティブペン)である。ペン2のペン先には、ペン先電極2aが設けられている。
【0018】
表示装置10としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーなど各種のディスプレイを使用可能であるが、
図1には、有機ELディスプレイを使用する例を示している。同図に示すように、この場合の表示装置10は、一方表面がタッチ面10aを構成するガラス基板20と、他のガラス基板24との間に、負極21、発光層22、正極23がこの順で積層された構造を有している。このうち発光層22及び正極23は、画素ごとに分かれて設けられている。制御部11は、負極21にグランド電位を供給した状態で、表示対象の画像データに基づいて各正極23に印加する電圧を制御することにより、表示装置10に画像データを表示させる。
【0019】
負極21は、ペン先電極2aとの静電結合を通じてペン2との間で信号の送受信を行うセンサパネルとしても機能する。つまり、電子機器1は、表示用の電極と位置検出用の電極とを共用する「インセル方式」の位置検出装置である。
【0020】
図2は、負極21の平面的な構造を模式的に示す図である。同図に示すように、負極21は、マトリクス状に配置された複数の電極30を有して構成される。なお、同図では各電極30が互いに大きく離れて配置されているが、実際には、より密に配置されている。各電極30は、引出配線31によって、制御部11及びセンサコントローラ12のそれぞれに接続される。
【0021】
表示装置10に画像データを表示させる場合においては、制御部11から、複数の電極30のすべてに同一のグランド電位が供給される。一方、ペン2に対して信号(後述するアップリンク信号US)を送信する場合には、センサコントローラ12から各電極30に同一内容の信号が供給される。これにより、タッチ面10aの全体からアップリンク信号USが送信されることになる。また、ペン2が送信した信号(後述するダウンリンク信号DS)を受信する場合には、センサコントローラ12により各電極30が1つずつ走査される。これにより、センサコントローラ12は、電極30ごとにダウンリンク信号DSを受信することが可能になる。
【0022】
制御部11は、プロセッサ及びメモリ(ともに図示せず)を有するコンピュータであり、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、図示した表示装置10及びセンサコントローラ12を含む電子機器1の各部の制御、描画用のアプリを含む各種のアプリの実行などの各種処理を行う。メモリには、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメインメモリと、フラッシュメモリなどの補助記憶装置とが含まれる。図示していないが、電子機器1は各種の通信規格(WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)など)に対応する通信装置を有しており、制御部11は、この通信装置を介して他の電子装置(ペン2を含む)との通信も実行可能に構成される。
【0023】
センサコントローラ12は、プロセッサ及びメモリ(ともに図示せず)を有するICであり、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、以下で説明する各処理を実行するように構成される。センサコントローラ12が行う処理には、ペン2のペン先電極2aとセンサパネルとしての負極21との静電結合を介し、ペン2との間で信号の送受信を行うことで、センサパネル上におけるペン2の位置を導出するとともに、ペン2が送信したデータを取得する処理が含まれる。以下では、こうして送受信される信号のうち、センサコントローラ12からペン2に対して送信される信号をアップリンク信号USと称し、ペン2からセンサコントローラ12に対して送信される信号をダウンリンク信号DSと称する。
【0024】
センサコントローラ12は、制御部11によって設定される所定時間長のフレーム(1画面分の表示時間)の中に複数の時間スロットを設定し、各時間スロット内でのみダウンリンク信号DSを受信するように構成される。また、センサコントローラ12は、各フレームの先頭でのみアップリンク信号USを送信するように構成される。以下、これらの点について、
図3を参照しながら詳しく説明する。
【0025】
図3は、制御部11及びセンサコントローラ12によって設定されるフレームの構造を示す図である。制御部11は、所定時間長のフレームF(n)を設定し、センサコントローラ12と共有する。センサコントローラ12は、こうして制御部11により設定されたフレームF(n)の中に、1以上の時間スロット(図示した時間長T
DSの期間。特定の時間)を設定する。センサコントローラ12が負極21を使用できるのは、各フレームF(n)の開始から時間長T
USの期間と、各時間スロットとのみである。他の時間(図示した時間長T
Othersの期間)は、表示装置10の表示動作のために制御部11から負極21に対しグランド電位が供給されるため、センサコントローラ12は負極21を使用できない。
【0026】
センサコントローラ12は、各フレームF(n)の開始から時間長T
USの期間を用いて、アップリンク信号USを送信するよう構成される。こうして送信されるアップリンク信号USは、1つのフレーム期間の基準時刻をペン2に通知する役割を果たす。詳しくは
図4及び
図5を参照して説明するが、アップリンク信号USには、ロングバースト信号の送信を指示するものと、データ信号の送信を指示するものとが含まれる。
【0027】
ペン2は、ペン先電極2aと負極21との静電結合を介しアップリンク信号USを受信すると、まずセンサコントローラ12との間でフレーム同期を確立する。具体的には、アップリンク信号USの受信タイミングからフレームの開始タイミングを取得するとともに、そのフレーム内における各時間スロットの時間的な位置を取得する。なお、フレーム内における各時間スロットの時間的な位置は、センサコントローラ12とペン2との間で予め共有される。フレーム内における各時間スロットの時間的な位置に複数のパターンが存在することとしてもよく、その場合には、いずれかのパターンを特定する情報をアップリンク信号US内に配置することで、ペン2は、フレーム内における各時間スロットの時間的な位置を取得することができる。
【0028】
ペン2は、1以上の時間スロットのそれぞれにおいて、ダウンリンク信号DSを送信するよう構成される。ダウンリンク信号DSには、ペンの操作状態を示すデータ信号と、データ信号を含まないバースト信号とが含まれる。データ信号により送信されるデータには、ペン2が検出している筆圧(ペン先に加わる圧力)の値、ペン2が保持しているペンID、ペン2に設けられたスイッチのオンオフ状態などが含まれる。バースト信号は、具体的にはセンサコントローラがペン検出のために用いる波形の繰り返しにより構成され、より具体的には単一周波数の信号(すなわち、所定周波数の正弦波形)により構成される。
【0029】
センサコントローラ12は、未検出のペン2を検出するためのグローバルスキャンモードと、検出済のペン2の位置を更新するとともにペン2が送信したデータを受信するローカルスキャンモードとのいずれかで動作するように構成される。
【0030】
グローバルスキャンモードにおけるセンサコントローラ12は、フレームの先頭で、ロングバースト信号の送信を指示するアップリンク信号USを送信する。このアップリンク信号USを受けたペン2は、そのフレーム内の各スロットのそれぞれにおいて、バースト信号であるダウンリンク信号DSを送信する。センサコントローラ12は、こうして送信されたバースト信号を各電極30(
図2を参照)で受信し、各電極30における受信レベルに基づいて、タッチ面10a内におけるペン2の位置を導出する。
【0031】
ローカルスキャンモードにおけるセンサコントローラ12は、フレームの先頭で、データ信号の送信を指示するアップリンク信号USを送信する。このアップリンク信号USを受けたペン2は、そのフレーム内の各スロットのそれぞれにおいて、バースト信号又はデータ信号であるダウンリンク信号DSを送信する。センサコントローラ12は、直前に導出していたペン2の位置の近傍にある所定数の電極30(
図2を参照)のそれぞれでバースト信号を受信し、ペン2の位置を更新する。また、直前に導出していたペン2の位置に最も近い1つの電極30(
図2を参照)でデータ信号を受信することにより、ペン2が送信したデータを取得する。
【0032】
センサコントローラ12は、以上のようにして導出したペン2の位置及び取得したデータを制御部11にレポートする。また、センサコントローラ12は、取得したデータに含まれる筆圧の値に基づき、ペン2がタッチ面に接触したことを示すペンダウン情報と、ペン2がタッチ面から離れたことを示すペンアップ情報との取得を行い、それぞれのタイミングで、制御部11にレポートするよう構成される。
【0033】
制御部11は、センサコントローラ12からペン2の位置が入力されたことを受けて、ポインタの表示及びインクデータの生成の少なくとも一方を行う。このうちポインタの表示は、表示装置10の表示領域上の入力された座標と対応する位置に、所定のポインタ画像を表示することによって行う。
【0034】
インクデータは、センサコントローラ12から順次供給される複数の位置のそれぞれによって構成される制御点と、各制御点の間を所定の補間曲線によって補間してなる曲線データとを含むデータである。制御部11は、ペンダウン情報が入力されたことを契機としてインクデータの生成を開始し、ペンアップ情報が入力されたことを契機としてインクデータの生成を終了する。なお、制御部11は、ペン2から受信される筆圧の値などに基づき、インクデータを構成する曲線データの幅及び/又は透明度の制御も行う。制御部11は、生成したインクデータのレンダリングを行って表示装置10に表示させるとともに、生成したインクデータを自身のメモリに記憶させる。
【0035】
以上が、本実施の形態によるシステムの概要である。次に、特許文献1に記載されたロングバースト信号のメリットを享受しつつ、ロングバースト信号がノイズになることを防止するとともに、センサコントローラ12がロングバースト信号を容易に検出できるようにするための具体的な構成について、
図4及び
図5を参照しながら、より詳しく説明する。
【0036】
図4及び
図5は、センサコントローラ12及びペン2の動作を示すシーケンス図である。
図4には、センサコントローラ12がグローバルスキャンモードにある場合を示し、
図5には、センサコントローラ12がローカルスキャンモードにある場合を示している。
【0037】
初めに
図4を参照すると、グローバルスキャンモードにエントリ(ステップS1)したセンサコントローラ12は、フレームの開始時期が到来したタイミングで(ステップS2)、センサパネルとしての負極21を介して、ロングバースト信号の送信指示を示すアップリンク信号US(第1の信号)を送信する(ステップS3)。
【0038】
ペン2は、こうして送信されたアップリンク信号USを受信すると、受信したアップリンク信号USによって示されるフレームに含まれる1以上の時間スロットの時間的な位置を取得する(ステップS4)。そして、時間スロットの開始タイミングが到来したか否かを判定し(ステップS5)、到来したと判定した場合にバースト信号を送信する(ステップS6)。ペン2は、このステップS5,S6の処理を、1つのフレームが終了するまで継続して実施する(ステップS7)。
【0039】
ここで、ステップS6においてバースト信号を送信する場合、ペン2は、各スロットのそれぞれにおいて、同一の初期位相でバースト信号を送信することが好ましい。こうすることで、センサコントローラ12によるペン検出動作が開始されるタイミング(時間スロットの開始タイミング)と、バースト信号の送信開始タイミングとを一致させることができるので、センサコントローラ12がバースト信号を容易に検出できるようになる。
【0040】
センサコントローラ12は、ペン2が各時間スロットのそれぞれにおいて送信したバースト信号を受信すると、受信したバースト信号に基づいてペン2の検出動作を実行する(ステップS8)。この検出動作には、
図2に示した複数の電極30のそれぞれにおけるバースト信号の受信レベルを取得し、取得した各受信レベルに基づいてタッチ面10a内におけるバースト信号の強度分布を取得し、その結果に基づいてペン2の位置を導出する処理が含まれる。なお、複数の電極30のそれぞれにおけるバースト信号の受信レベルの取得からペン2の位置導出までの一連の処理は、1時間スロット内で完結することとしてもよいし、複数の時間スロットに跨がって実行されることとしてもよい。
【0041】
センサコントローラ12は、バースト信号の受信とステップS8の検出動作とを1つのフレームが終了するまで繰り返し実行する(ステップS9)。そして、フレームが終了した後、ペン2を検出したか否かを判定し(ステップS10)、検出していないと判定した場合にはステップS2に戻ってグローバルスキャンモードの処理を繰り返す一方、検出したと判定した場合には、
図5に示すように、ローカルスキャンモードにエントリする(ステップS20)。
【0042】
図5に移り、ローカルスキャンモードにエントリ(ステップS20)したセンサコントローラ12は、フレームの開始時期が到来したタイミングで(ステップS21)、センサパネルとしての負極21を介して、データ信号の送信指示を示すアップリンク信号US(第1の信号とは内容の異なる第2の信号)を送信する(ステップS22)。このアップリンク信号USには、ペン2が送信すべきデータの内容(上述した筆圧の値、ペンID、スイッチのオンオフ状態など)を具体的に指定する情報(コマンド)を含めることが好ましい。
【0043】
ペン2は、こうして送信されたアップリンク信号USを受信すると、受信したアップリンク信号USによって示されるフレームに含まれる1以上の時間スロットの時間的な位置を取得する(ステップS23)。そして、時間スロットの開始タイミングが到来したか否かを判定し(ステップS24)、到来したと判定した場合にダウンリンク信号DSを送信する(ステップS25)。ここで送信するダウンリンク信号DSは、バースト信号と、アップリンク信号USにより要求されたデータにより搬送波を変調してなるデータ信号とを含む信号であることが好ましい。なお、送信するデータのサイズが大きい場合には、複数のスロットを利用して1つのデータ信号を送信することとしてもよい。ペン2は、ステップS24,S25の処理を、1つのフレームが終了するまで継続して実施する(ステップS26)。
【0044】
センサコントローラ12は、各時間スロットのそれぞれにおいて、まずダウンリンク信号DSを検出できたか否かを判定する(ステップS27)。その結果、検出できなかったと判定した場合には、ペン2が通信可能範囲外に離脱したと判定し、グローバルスキャンモードに戻る(
図4のステップS1)。なお、センサコントローラ12は、複数の時間スロットにわたって連続してダウンリンク信号DSを検出できなかった場合にのみ、グローバルスキャンモードに戻ることとしてもよい。
【0045】
一方、ステップS27において検出できたと判定した場合には、センサコントローラ12は、検出したダウンリンク信号DSに基づいてペン2の検出動作を実行する(ステップS28)。この検出動作には、ダウンリンク信号DS内のバースト信号部分に基づいてペン2の位置を導出する動作と、ダウンリンク信号DS内のデータ信号部分を復調することによりペン2が送信したデータを取得する動作とが含まれる。なお、位置を導出する動作においては、負極21を構成するすべての電極30ではなく、そのうち直前に導出済みのペン2の位置の近傍に位置する所定数の電極30のそれぞれのみにおけるバースト信号の受信レベルに基づいて、バースト信号の強度分布を取得することが好ましい。また、データを取得する動作においては、直前に導出済みのペン2の位置に最も近い1つの電極30により受信されたデータ信号を復調することが好ましい。
【0046】
センサコントローラ12は、ダウンリンク信号DSの受信とステップS28の検出動作とを1つのフレームが終了するまで繰り返し実行する(ステップS29)。そして、フレームが終了した後には、ステップS21に戻ってローカルスキャンモードの処理を継続する。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、1フレームにわたりバースト信号の送信が継続される一方、センサコントローラ12によるペン検出動作が行われる時間(=時間スロット)にのみバースト信号が送信されるので、特許文献1に記載されたロングバースト信号のメリットを享受しつつ、ロングバースト信号がノイズになることを防止することができる。また、センサコントローラ12によるペン検出動作が開始されるタイミング(時間スロットの開始タイミング)と、バースト信号の送信開始タイミングとを一致させることができるので、センサコントローラ12がロングバースト信号を容易に検出できるようになる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0049】
例えば、上記実施の形態では、有機ELディスプレイの負極をセンサパネルとして用いる例を説明したが、例えば液晶ディスプレイの場合であれば、共通電極をセンサパネルとして用いることが好適である。また、負極又は共通電極を、それぞれx方向(タッチ面10a内の方向)に延在し、y方向(タッチ面10a内でx方向と直交する方向)に等間隔で並べられた複数の第1の線状電極によって構成し、負極又は共通電極とは別に、それぞれy方向に延在し、x方向に等間隔で並べられた複数の第2の線状電極を設け、これら各複数の第1及び第2の線状電極によってセンサパネルを構成することとしてもよい。
【0050】
また、センサコントローラ12は、ペン2のみでなく指も検出可能に構成されてもよい。この場合、
図3に「Others」と表示した時間においては、表示装置10の表示動作の他に、指によるタッチを検出するためのタッチ検出動作も行われることとしてもよい。こうすることで、タッチ検出動作に対してロングバースト信号がノイズになることを防止可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 電子機器
2 ペン
2a ペン先電極
10 表示装置
10a タッチ面
11 制御部
12 センサコントローラ
20 ガラス基板
21 負極
22 発光層
23 正極
24 ガラス基板
30 電極
31 引出配線
DS ダウンリンク信号
US アップリンク信号