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  • 特許-耐熱ホース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】耐熱ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20230726BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20230726BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20230726BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230726BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20230726BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20230726BHJP
   B32B 1/08 20060101ALN20230726BHJP
   B32B 25/00 20060101ALN20230726BHJP
【FI】
F16L11/04
C08L27/12
C08L23/08
C08K3/04
C08K5/14
C08K5/3492
B32B1/08 B
B32B25/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019031072
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020133841
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇貴
(72)【発明者】
【氏名】野田 将司
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070332(JP,A)
【文献】特開2004-150457(JP,A)
【文献】特開2007-230225(JP,A)
【文献】特開2005-240853(JP,A)
【文献】特開2001-012660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/04
C08L 27/12
C08L 23/08
C08K 3/04
C08K 5/14
C08K 5/3492
B32B 1/08
B32B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の内層と、上記内層の外周面に接して設けられた外層とを備えた耐熱ホースであって、上記内層が、下記(A)成分を主成分とするゴム組成物であって、(A)成分の含有量が上記ゴム組成物全体の40重量%以上であり、下記(B)~(D)成分を含有するとともに、(A)成分100重量部に対し(C)成分を0.3~5重量部の割合で含有するゴム組成物からなり、上記外層が、下記(a)成分を主成分とするゴム組成物であって、(a)成分の含有量が上記ゴム組成物全体の40重量%以上であり、下記(b)~(e)成分を含有するとともに、(a)成分100重量部に対し(c)成分を0.5~10重量部の割合で含有するゴム組成物からなることを特徴とする耐熱ホース。
(A)フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ。
(B)過酸化物架橋剤。
(C)トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートから選ばれた少なくとも一つの多官能シアヌレートモノマー。
(D)カーボンブラック。
(a)アクリル系ゴム。
(b)過酸化物架橋剤。
(c)トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートから選ばれた少なくとも一つの多官能トリメチロールモノマー。
(d)イミダゾール系架橋剤。
(e)カーボンブラック。
【請求項2】
上記内層に含まれる多官能シアヌレートモノマー(C)が、トリアリルイソシアヌレートである、請求項1記載の耐熱ホース。
【請求項3】
上記外層に含まれる多官能トリメチロールモノマー(c)が、トリメチロールプロパントリメタクリレートである、請求項1または2記載の耐熱ホース。
【請求項4】
上記外層に含まれるカーボンブラック(e)が、ISAF級カーボンブラックおよびFEF級カーボンブラックからなり、その重量比が、ISAF級カーボンブラック:FEF級カーボンブラック=1:9~9:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐熱ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業機械等の分野において使用される耐熱ホースに関するものであり、詳しくは、自動車用過給配管(インタークーラーホース、EGRホース等)として有用な、耐熱ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用に用いられる耐熱ホースとして、従来、最内層材料にフッ素ゴムを用い、さらに、コス卜の高いフッ素ゴムの使用量を抑えるため、最内層であるフッ素ゴム層の外周に、耐熱性に優れるアクリル系ゴム層を設けた積層ホースが各種提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
また、上記最内層とアクリル系ゴム層との間の層間接着性を高めるため、上記最内層のポリマーをフッ素ゴムとアクリル系ゴムとのアロイとしたり、上記最内層とアクリル系ゴム層の架橋剤や共架橋剤を同じ種類のものに揃えたりする、といったことも、本出願人により既に検討されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-79828号公報
【文献】特許第4081711号公報
【文献】特開2016-70332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、自動車用耐熱ホース内を流れる流体によるホース内圧の上昇に伴い、ホース締結部のシール性(ホース端部に挿入されたホース口金に対するシール性)の向上がより一層求められている。上記のようなホース締結部のシール性の向上を図るための対処方法としては、例えばホースの外層に硬度の高い層を設けてホースの緊縛力を高めることが検討されるが、このようにした場合、ホースの柔軟性が損なわれ、ホースに脈動が発生する。このような脈動は、ホースの寿命を縮める他、ホース内を流れる流体の均一輸送が損なわれたり、上記シール性の経時による低下を招いたりすることが懸念される。また、耐熱ホースは、熱環境下での長期間使用が要求されるが、熱老化によりホースの柔軟性が損なわれると、上記のような問題とともに、劣化によるクラックが発生するといった問題も生じる。
以上のような事情により、耐熱ホースにおけるホース締結部のシール性と、ホースの柔軟性とを両立させるのは難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ホース締結部のシール性とホースの柔軟性とを両立させることができる耐熱ホースの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[4]を、その要旨とする。
[1]管状の内層と、上記内層の外周面に接して設けられた外層とを備えた耐熱ホースであって、上記内層が、下記(A)成分を主成分とし下記(B)~(D)成分を含有するとともに、(A)成分100重量部に対し(C)成分を0.3~5重量部の割合で含有するゴム組成物からなり、上記外層が、下記(a)成分を主成分とし下記(b)~(e)成分を含有するとともに、(a)成分100重量部に対し(c)成分を0.5~10重量部の割合で含有するゴム組成物からなることを特徴とする耐熱ホース。
(A)フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ。
(B)過酸化物架橋剤。
(C)多官能シアヌレートモノマー。
(D)カーボンブラック。
(a)アクリル系ゴム。
(b)過酸化物架橋剤。
(c)多官能トリメチロールモノマー。
(d)イミダゾール系架橋剤。
(e)カーボンブラック。
[2]上記内層に含まれる多官能シアヌレートモノマー(C)が、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートから選ばれた少なくとも一つである、[1]に記載の耐熱ホース。
[3]上記外層に含まれる多官能トリメチロールモノマー(c)が、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートから選ばれた少なくとも一つである、[1]または[2]に記載の耐熱ホース。
[4]上記外層に含まれるカーボンブラック(e)が、ISAF級カーボンブラックおよびFEF級カーボンブラックからなり、その重量比が、ISAF級カーボンブラック:FEF級カーボンブラック=1:9~9:1である、[1]~[3]のいずれかに記載の耐熱ホース。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本出願人により提案された前記特許文献3に係る耐熱ホースの開発過程では検討されなかった、耐熱ホース用途におけるホース締結部のシール性とホースの柔軟性との両立を中心に、本発明者らは各種実験を重ねた。その結果、内層材料を、フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ(A)と、過酸化物架橋剤(B)と、共架橋剤成分である特定量の多官能シアヌレートモノマー(C)と、カーボンブラック(D)とを含有するゴム組成物とし、外層材料を、アクリル系ゴム(a)と、過酸化物架橋剤(b)と、共架橋剤成分である特定量の多官能トリメチロールモノマー(c)と、イミダゾール系架橋剤(d)と、カーボンブラック(e)とを含有するゴム組成物としたところ、ホース端部にホース口金を挿入したときの追従性が高く、また、ホース全体の緊縛力が高くなったことから、ホース締結部のシール性向上が認められ、しかも、熱老化後であってもホースの柔軟性が充分確保されることが認められたことから、所期の目的が達成できることを見いだした。
なお、従来の技術常識では、架橋条件を揃えたり、層間接着性を発現させたりする意味でも、内層材料と外層材料とで、共架橋剤成分を同じ種類のものに揃えるのが一般的である。しかしながら、本発明の耐熱ホースは、耐熱ホース用途におけるホース締結部のシール性向上(緊縛力の向上を含む)とホースの柔軟性との両立を達成するため、上記のように、内層用ゴム組成物と外層用ゴム組成物とで、それぞれ異なる特定の共架橋剤成分を、特定の割合で用いている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の耐熱ホースは、フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ(A)と、過酸化物架橋剤(B)と、特定量の多官能シアヌレートモノマー(C)と、カーボンブラック(D)とを含有するゴム組成物からなる管状の内層と、上記内層の外周面に接して設けられた、アクリル系ゴム(a)と、過酸化物架橋剤(b)と、特定量の多官能トリメチロールモノマー(c)と、イミダゾール系架橋剤(d)と、カーボンブラック(e)とを含有するゴム組成物からなる外層とを備えている。そのため、耐熱ホース用途におけるホース締結部のシール性とホースの柔軟性とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の耐熱ホースの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0012】
本発明の耐熱ホースは、例えば、図1に示すように、内層1の外周面に外層2が積層されたホースである。そして、上記内層1は、先に述べたように、フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ(A)を主成分とし、過酸化物架橋剤(B)、特定量の多官能シアヌレートモノマー(C)、カーボンブラック(D)を含有するゴム組成物からなる層であり、上記外層2は、アクリル系ゴム(a)を主成分とし、過酸化物架橋剤(b)、特定量の多官能トリメチロールモノマー(c)、イミダゾール系架橋剤(d)、カーボンブラック(e)を含有するゴム組成物からなる層である。
なお、上記内層1と外層2との層間には接着剤を使用してもよいが、両層間の接着性が高いため、接着剤を使用しなくともよい。
また、本発明において、各層の材料であるゴム組成物における「主成分」とは、その組成物全体の特性に大きな影響を与えるもののことであり、本発明においては、ゴム組成物全体の40重量%以上を意味する。
【0013】
つぎに、各層の形成材料について説明する。
【0014】
《内層用ゴム組成物》
まず、本発明の耐熱ホースの内層1用材料となるゴム組成物(内層用ゴム組成物)について説明する。
上記ゴム組成物は、先に述べたように、フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ(A)を主成分とし、過酸化物架橋剤(B)、特定量の多官能シアヌレートモノマー(C)、カーボンブラック(D)を含有する。
【0015】
《フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ(A)》
上記アロイにおけるフッ素ゴムとしては、過酸化物架橋するものが好ましく、例えば、ビニリデンフルオライド(VdF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系,VdF-テトラフルオロエチレン(TFE)-HFP系,VdF-クロロトリフルオロエチレン(CTFE)系等のVdF系フッ素ゴムや、TFE-プロピレン(Pr)系、HFP-エチレン系、VdF-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)系、TFE-PAVE系、フルオロシリコーンゴム、フルオロホスファゼンゴム、含フッ素熱可塑性エラストマー等があげられる。
【0016】
一方、上記アロイにおけるエチレンアクリルゴム(AEM)は、(メタ)アクリルモノマーの一種または二種以上を主成分とし、これにエチレンモノマーを導入したものである。なお、本発明において、(メタ)アクリルモノマーとは、アクリルモノマーあるいはメタクリルモノマーを意味する。
【0017】
上記アクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート,エチルアクリレート,プロピルアクリレート,n-ブチルアクリレート,n-オクチルアクリレート,メトキシメチルアクリレート,メトキシエチルアクリレート,エトキシエチルアクリレート等のアクリレートがあげられる。また、上記メタクリルモノマーとしては、上記アクリルモノマーに対応するメタクリレートがあげられる。
【0018】
また、上記エチレンアクリルゴム(AEM)は、上記モノマー組成を有し、架橋席モノマーと乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知の方法で共重合させたものである。上記架橋席モノマーの種類およびモル比は限定されないが、例えば2-クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル等の活性塩素系、ブテンジオン酸モノアルキルエステル、詳しくはマレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシル系、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル等のエポキシ系のモノマーがあげられ、0.5~2重量%となるような比率で共重合させることができる。
【0019】
そして、上記アロイ(A)は、フッ素ゴムと、エチレンアクリルゴム(AEM)とを、所定の割合で配合し、これらをニーダー,ロール,バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。ここで、耐熱性等の観点から、上記アロイ(A)における、フッ素ゴムとAEMとの割合は、重量比で、フッ素ゴム/AEM=50/50~85/15の範囲であることが好ましく、より好ましくは、フッ素ゴム/AEM=65/35~80/20の範囲である。すなわち、フッ素ゴムの割合が少なすぎる(AEMの割合が多すぎる)と、アロイ自体の耐熱老化性が劣るからであり、フッ素ゴムの割合が多すぎる(AEMの割合が少なすぎる)と、外層のアクリル系ゴムとの接着性が不充分となるからである。
【0020】
《過酸化物架橋剤(B)》
内層用ゴム組成物に用いられる過酸化物架橋剤(B)としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0021】
上記過酸化物架橋剤(B)の含有量(原体の配合部数)は、前記アロイ(A)100重量部に対して、0.8~2.3重量部が好ましく、特に好ましくは1.1~1.9重量部である。このような量で含有することにより、ホースの柔軟性が損なわれることなく、充分な架橋がなされるようになる。
【0022】
《多官能シアヌレートモノマー(C)》
内層用ゴム組成物に用いられる多官能シアヌレートモノマー(C)としては、例えば、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルトリシアヌレート等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、本発明の作用効果の観点から、TACおよびTAICが好ましく、より好ましくはTAICである。
【0023】
そして、本発明の作用効果の観点から、上記多官能シアヌレートモノマー(C)の含有量(原体の配合部数)は、前記アロイ(A)100重量部に対して、0.3~5重量部とする必要がある。好ましくは、上記多官能シアヌレートモノマー(C)の含有量(原体の配合部数)は、前記アロイ(A)100重量部に対して、0.5~4重量部の範囲であり、より好ましくは0.7~2重量部の範囲である。すなわち、上記多官能シアヌレートモノマー(C)の含有量が少なすぎると、所望の緊縛力が得られず、上記多官能シアヌレートモノマー(C)の含有量が多すぎると、耐熱性が損なわれるからである。
【0024】
《カーボンブラック(D)》
内層用ゴム組成物に用いられるカーボンブラック(D)としては、例えば、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等のものがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、柔軟性と強度の観点から、MAF級カーボンブラックが好ましく用いられる。
【0025】
上記カーボンブラック(D)の含有量は、前記アロイ(A)100重量部に対して、10~50重量部が好ましく、特に好ましくは20~40重量部である。このような量で含有することにより、所望の柔軟性と強度を得ることができるようになる。
【0026】
本発明で使用する内層用ゴム組成物には、フッ素ゴムとエチレンアクリルゴムとのアロイ(A)、過酸化物架橋剤(B)、多官能シアヌレートモノマー(C)、カーボンブラック(D)に加えて、加工助剤、老化防止剤等を、必要に応じて配合しても差し支えない。なお、上記内層用ゴム組成物において、共架橋剤成分は、上記多官能シアヌレートモノマー(C)のみであることが望ましい。すなわち、他の共架橋剤成分を内層用ゴム組成物に用いた場合、圧縮永久歪みが大きくなり、所望の緊縛力を得ることができないからである。
【0027】
そして、本発明で使用する内層用ゴム組成物は、例えば、先に述べたようにして混練して調製した上記アロイ(A)に、カーボンブラック(D)等を配合し、さらにニーダー等で混練して、プレコンパウンドを調製した後、上記プレコンパウンドに、過酸化物架橋剤(B)、多官能シアヌレートモノマー(C)等を配合し、これらをロール,バンバリーミキサー等で混練することにより、調製することができる。
【0028】
《外層用ゴム組成物》
つぎに、本発明の耐熱ホースの外層2用材料となるゴム組成物(外層用ゴム組成物)について説明する。
上記ゴム組成物は、先に述べたように、アクリル系ゴム(a)を主成分とし、過酸化物架橋剤(b)、特定量の多官能トリメチロールモノマー(c)、イミダゾール系架橋剤(d)、カーボンブラック(e)を含有するゴム組成物からなる。なお、上記過酸化物架橋剤(b)は、内層用材料中の過酸化物架橋剤(B)と同じであっても、異なっていてもよい。
【0029】
《アクリル系ゴム(a)》
外層用ゴム組成物に用いられるアクリル系ゴム(a)としては、アクリル酸エステル含有量が70~100重量%、エチレン含有量が0~10重量%、酢酸ビニル含有量が0~20重量%であるものが、耐熱性の点から好ましい。
【0030】
上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルコキシアクリル等があげられる。
【0031】
なお、上記アクリル系ゴム(a)には、架橋席モノマーを0~5重量%共重合させても差し支えない。上記モノマーとしては、例えば、活性ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、ジエン基等を有するモノマー等があげられる。なかでも、グリシジルメタアクリレート等のエポキシ基、マレイン酸モノブチル等のカルボキシル基が好ましい。
【0032】
《過酸化物架橋剤(b)》
外層用ゴム組成物に用いられる過酸化物架橋剤(b)としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0033】
上記過酸化物架橋剤(b)の含有量(原体の配合部数)は、アクリル系ゴム(a)100重量部に対して、0.6~3.0重量部が好ましく、特に好ましくは1.0~2.0重量部である。このような量で含有することにより、柔軟性と強度を両立するようになる。
【0034】
《多官能トリメチロールモノマー(c)》
外層用ゴム組成物に用いられる多官能トリメチロールモノマー(c)としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、本発明の作用効果の観点から、トリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。
【0035】
そして、本発明の作用効果の観点から、上記多官能トリメチロールモノマー(c)の含有量(原体の配合部数)は、前記アクリル系ゴム(a)100重量部に対して、0.5~10重量部とする必要がある。好ましくは、上記多官能トリメチロールモノマー(c)の含有量(原体の配合部数)は、前記アクリル系ゴム(a)100重量部に対して、0.7~5重量部の範囲であり、より好ましくは1~3重量部の範囲である。すなわち、上記多官能トリメチロールモノマー(c)の含有量が少なすぎると、所望のシール性が得られず、上記多官能トリメチロールモノマー(c)の含有量が多すぎると、耐熱性が損なわれるからである。
【0036】
《イミダゾール系架橋剤(d)》
外層用ゴム組成物に用いられるイミダゾール系架橋剤(d)としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、N,N'-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4'-メチレンジアニリン、4,4'-オキシフェニルジフェニルアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-メチレンビス(o-クロロアニリン)、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-(m-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4'-(p-フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2'-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4'-ジアミノベンズアニリド、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン、1,3,5-ベンゼントリアミノメチル、ヘキサメチレンジアミン-シンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミン-ジベンゾエート塩等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0037】
上記イミダゾール系架橋剤(d)の含有量は、耐熱性の観点から、前記アクリル系ゴム(a)100重量部に対して、0.1~5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.2~3.0重量部の範囲である。
【0038】
《カーボンブラック(e)》
外層用ゴム組成物に用いられるカーボンブラック(e)としては、例えば、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等のものがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、ホース強度と伸び(ホース端部にホース口金を挿入したときの追従性)の観点から、上記カーボンブラック(e)は、ISAF級カーボンブラックおよびFEF級カーボンブラックからなり、その重量比が、ISAF級カーボンブラック:FEF級カーボンブラック=1:9~9:1であるものが好ましく、より好ましくは、ISAF級カーボンブラックおよびFEF級カーボンブラックからなり、その重量比が、ISAF級カーボンブラック:FEF級カーボンブラック=6:4~4:6のものである。
【0039】
上記カーボンブラック(e)の含有量は、アクリル系ゴム(a)100重量部に対して、20~100重量部が好ましく、特に好ましくは40~80重量部である。このような量で含有することにより、所望の柔軟性と強度を得ることができるようになる。
【0040】
本発明で使用する外層用ゴム組成物には、アクリル系ゴム(a)、過酸化物架橋剤(b)、多官能トリメチロールモノマー(c)、イミダゾール系架橋剤(d)、カーボンブラック(e)に加えて、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤等を必要に応じて配合しても差し支えない。なお、上記外層用ゴム組成物において、共架橋剤成分は、上記多官能トリメチロールモノマー(c)のみであることが望ましい。すなわち、他の共架橋剤成分を外層用ゴム組成物に用いた場合、ホース端部にホース口金を挿入したときの追従性に劣ったり、ホース内を流れる流体の圧力によりホースが変形するのを抑制する効果が少なかったりするからである。
【0041】
上記加硫促進剤としては、例えば、チオウレア系,チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドイミダゾール系,グアニジン系等の加硫促進剤や、第4級アンモニウム塩があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、層間接着性の点で、チオウレア系加硫促進剤、第4級アンモニウム塩が好ましい。
【0042】
上記チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、N,N'-ジフェニルチオウレア、N,N'-ジエチルチオウレア、N,N'-ジブチルチオウレア、ジブチルチオウレア、ジラウリルチオウレア、トリメチルチオウレア、エチレンチオウレア、2-メルカプトイミダゾリン、2-イミダゾリン-2-チオール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、層間接着性の点で、トリメチルチオウレアが好ましい。
【0043】
上記第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、n-ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルピリジウムクロライド、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7-ベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジウムアイオダイド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、層間接着性の点で、テトラエチルアンモニウムブロマイドが好ましい。
【0044】
上記加硫促進剤の含有量は、アクリル系ゴム(a)100重量部に対して0.1~5.0重量部が好ましく、特に好ましくは0.2~3.0重量部である。上記加硫促進剤の含有量が少なすぎると、層間接着性の向上効果が得にくくなる傾向がみられ、上記加硫促進剤の含有量が多すぎると、スコーチする傾向がみられる。
【0045】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系,フェニレンジアミン系,フェノール系,ジフェニルアミン系,キノリン系等の老化防止剤や、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0046】
上記老化防止剤の含有量は、アクリル系ゴム(a)100重量部に対して、0.5~10重量部が好ましく、特に好ましくは1~4重量部である。
【0047】
本発明で使用する外層用ゴム組成物は、例えば、アクリル系ゴム(a)に、カーボンブラック(e)等を配合し、ニーダー等で混練した後、過酸化物架橋剤(b)、多官能トリメチロールモノマー(c)、イミダゾール系架橋剤(d)等を配合し、これらをニーダー,ロール,バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0048】
つぎに、本発明の耐熱ホースの製法について具体的に説明する。すなわち、前述の方法に従い、内層用ゴム組成物、および外層用ゴム組成物をそれぞれ調製する。そして、これらを、マンドレル上に共押出成形し、所定の条件(例えば、160℃×45分)でスチーム加硫した後、所定の条件(例えば、150℃×8時間)でオーブンにて二次加硫する。これにより、内層1の外周面に外層2が積層形成され、接着剤レスで両層が接着してなる耐熱ホース(図1参照)を得ることができる。なお、本発明の耐熱ホースの製法においては、上記マンドレルは使用しなくても差し支えない。また、上記各層の形成を、各層ごとに行い、その層間に接着剤を塗布することにより、層間接着性を発現するようにしてもよい。
【0049】
本発明の耐熱ホースは、前記図1に示した構造に限定されるものではなく、外層2の外周面に、さらに、ゴム材料からなる補強用の最外層等を形成しても差し支えない。なお、上記最外層の形成材料は、外層用材料と同様のゴム組成物であっても差し支えない。この場合、外層と最外層とは接着剤レスで直接加硫接着することができる。また、本発明の耐熱ホースは、内層1/外層2/補強糸層/最外層の構造であってもよく、補強糸層に接着剤処理を施してもよい。
【0050】
本発明の耐熱ホースにおいて、ホース内径は3~100mmが好ましく、特に好ましくは5~70mmである。また、内層1の厚みは0.2~5.0mmが好ましく、特に好ましくは1.0~4.0mmであり、外層2の厚みは0.5~5.0mmが好ましく、特に好ましくは1.0~3.0mmである。
【実施例
【0051】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記のようにして、内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物を調製した。
【0053】
《内層用ゴム組成物A~Fの調製》
下記の表1に示すフッ素ゴム(FKM)およびエチレンアクリルゴム(AEM)を、同表に示す割合でニーダーに仕込み、混練した後、過酸化物架橋剤および共架橋剤を除く他の材料を同表に示す割合で配合し、さらに混練することにより、プレコンパウンドを調製した。つぎに、上記プレコンパウンドに、過酸化物架橋剤および共架橋剤を同表に示す割合で配合し、これらをロールで混練して、内層用ゴム組成物を調製した。なお、下記の表1に示す、過酸化物架橋剤および共架橋剤の配合部数は、原体の配合部数を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
なお、上記の表1に示す各材料は、以下の通りである。
【0056】
〔フッ素ゴム(FKM)〕
テクノフロンP-457、ソルベイ社製
【0057】
〔エチレンアクリルゴム(AEM)〕
VAMAC D-P、デュポン社製
【0058】
〔過酸化物架橋剤〕
ルペロックスF、アルケマ社製
【0059】
〔共架橋剤(i)〕
トリアリルイソシアヌレート(VULCOFAC TAIC-70、サフィック アルカン社製)
【0060】
〔共架橋剤(ii)〕
トリメチロールプロパントリメタクリレート(ハイクロスM、精工化学社製)
【0061】
〔カーボンブラック(CB-1)〕
MAF級カーボンブラック(シースト 116、東海カーボン社製)
【0062】
〔ステアリン酸〕
ルナック S-30、花王社製
【0063】
《外層用ゴム組成物a~iの調製》
下記の表2に示す割合で、アクリル系ゴムに対して、過酸化物架橋剤,イミダゾール系架橋剤および共架橋剤を除く他の材料を同表に示す割合で配合し、ニーダーを用いて混練した後、過酸化物架橋剤,イミダゾール系架橋剤および共架橋剤を同表に示す割合でロールを用いて混練し、外層用ゴム組成物を調製した。なお、下記の表2に示す、過酸化物架橋剤および共架橋剤の配合部数は、原体の配合部数を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
なお、上記表2に示す各材料は、以下の通りである。
【0066】
〔アクリル系ゴム〕
アクリル酸エチル/アクリル酸n-ブチル/グリシジルメタアクリレート=59.5/40/0.5(wt%)の共重合ゴム
【0067】
〔過酸化物架橋剤〕
パーブチルP、日油社製
【0068】
〔加硫促進剤(i)〕
トリメチルチオウレア、大内新興化学工業社製
【0069】
〔加硫促進剤(ii)〕
テトラエチルアンモニウムブロマイド、東京化成工業社製
【0070】
〔共架橋剤(i)〕
トリアリルイソシアヌレート(VULCOFAC TAIC-70、サフィック アルカン社製)
【0071】
〔共架橋剤(ii)〕
トリメチロールプロパントリメタクリレート(ハイクロスM、精工化学社製)
【0072】
〔イミダゾール系架橋剤〕
1,2-ジメチルイミダゾール、四国化成社製
【0073】
〔カーボンブラック(CB-2)〕
FEF級カーボンブラック(PUREX HS45、ORION ENGINEERED CARBONS社製)
【0074】
〔カーボンブラック(CB-3)〕
ISAF級カーボンブラック(CORAX N220、ORION ENGINEERED CARBONS社製)
【0075】
〔ステアリン酸〕
ルナック S-30、花王社製
【0076】
〔可塑剤〕
アデカサイザーRS-735、ADEKA社製
【0077】
[実施例1]
内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物を、後記の表3に示す組み合わせで使用した耐熱ホースを作製した。すなわち、内層用ゴム組成物Aおよび外層用ゴム組成物aを、マンドレル上に共押出成形し、160℃×45分間のスチーム加硫を行った後、150℃で8時間オーブンにて二次加硫することにより、内層(厚み1.5mm)の外周面に外層(厚み1.0mm)が直接形成されてなる耐熱ホース(内径30mm、外径35mm)を作製した。
【0078】
[実施例2~8、比較例1~7]
内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物の組み合わせを、後記の表3および表4に示す組み合わせに変更する以外は、実施例1と同様にして耐熱ホースを作製した。
【0079】
このようにして得られた実施例および比較例の耐熱ホースを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。この結果を、後記の表3および表4に併せて示した。
【0080】
〔シール性〕
耐熱ホースにおけるホース内層とホース外層とから、それぞれ、スライスしてサンプルを採取した。そして、上記サンプルから、JIS K 6263 A法に準拠して、短冊2号形テストピースを打抜き、上記テストピースに対し、150℃雰囲気下での50%伸張試験を行った。すなわち、上記伸張試験直後のテストピースの応力(初期応力。ピーク応力とも言う。)、および上記伸張試験を1時間行った後のテストピースの応力(緩和後応力)を、JIS K 6263 A法に準拠して測定した。
緊縛力評価としては、ホース内層およびホース外層のテストピースが、共に、初期応力1.0MPa以上かつ緩和後応力0.8MPa以上を満たすものを「◎」、上記「◎」には該当しないものの、上記ホース内層およびホース外層のテストピースが、共に、初期応力0.7MPa以上かつ緩和後応力0.5MPa以上を満たすものを「○」、上記「◎」,「○」のいずれにも該当しなかったものを「×」と評価した。なお、上記緊縛力評価は、シール性の評価基準に含まれる。
【0081】
〔耐熱性〕
耐熱ホースの熱老化試験を、2つの条件(条件1:225℃雰囲気下で168時間。条件2:175℃雰囲気下で168時間。)で、それぞれ実施した。そして、条件1で熱老化させた後の耐熱ホースからはホース内層のサンプルを、条件2で熱老化させた後の耐熱ホースからはホース外層のサンプルを、それぞれスライスして採取し、上記サンプルからJIS5号ダンベルを打ち抜き、このダンベルを用い、JIS K6251に準拠して、破断時の伸び[Eb]を測定した。そして、この測定値からホース内層,ホース外層から得られたダンベルの伸び率(内層伸び率,外層伸び率)を計算した。
耐熱性評価としては、上記内層伸び率,外層伸び率が共に150%以上であったものを「◎」、上記「◎」には該当しないものの上記内層伸び率,外層伸び率が共に100%以上であったものを「○」、上記「◎」,「○」のいずれにも該当しなかったものを「×」と評価した。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
上記表3の結果より、実施例の耐熱ホースは、シール性評価および耐熱性評価が共に高く、ホース締結部のシール性向上と熱環境下でのホースの柔軟性向上との両立を図ることができるものと認められた。
【0085】
これに対して、上記表4に示されるように、比較例の耐熱ホースは、実施例の耐熱ホースにみられるように、シール性評価および耐熱性評価の双方の評価が高い結果となることはなかった。なお、比較例1,3のホースは、加硫時に外層のゴムが発泡し、ホースを成形することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の耐熱ホースは、耐熱性が要求されるホース全般に使用可能であるが、耐熱性が要求される自動車用過給配管(インタークーラーホース、EGRホース等)として有用である。また、本発明の耐熱ホースは、燃料ホース、バキュームブレーキホース、コモンレールディーゼル燃料ホース、DPF(ディーゼル・パーティキュレート・フィルター)センサーホース等の自動車用耐熱ホースとしても用いることができる。なお、本発明の耐熱ホースは、自動車用耐熱ホースに限らず、建機用、船舶用、航空機用耐熱ホースとしても使用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 内層
2 外層
図1