(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】路面乾燥装置及び路面乾燥方法
(51)【国際特許分類】
F26B 23/02 20060101AFI20230726BHJP
F23D 14/38 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F26B23/02 Z
F23D14/38 Z
(21)【出願番号】P 2019088825
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 雅嘉
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-185492(JP,A)
【文献】特開昭58-024713(JP,A)
【文献】実開昭60-076738(JP,U)
【文献】特開昭60-064114(JP,A)
【文献】実開平01-117433(JP,U)
【文献】特開2003-236659(JP,A)
【文献】国際公開第2007/046598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 23/02
F23D 14/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状のパイプと、
前記パイプの一端部に取り付けられたグリップと、
前記パイプの他端部に取り付けられたバーナ本体と、
前記バーナ本体の周囲を覆う火口筒と、
前記バーナ本体の火炎噴出方向と劣角をもって交差するようにエアを噴出するエアノズルと、
前記バーナ本体に供給される可燃性ガスの流量を調整するガス流量調整機構と、
前記エアノズルに供給されるエアの流量を調整するエア流量調整機構と、
前記バーナ本体と前記ガス流量調整機構とを接続するガス導管と、
前記エアノズルと前記エア流量調整機構とを接続するエア導管と、
を備え、
前記ガス流量調整機構及び前記エア流量調整機構が、前記グリップに内蔵され、
前記ガス導管及び前記エア導管が、前記グリップ及び前記パイプに内蔵され、
前記エアノズルが、前記火口筒の
内周面に沿って配置された、
路面乾燥装置。
【請求項2】
前記パイプは、中間部が一方向に屈曲されている、
請求項1に記載の路面乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の路面乾燥装置を使用して、エアノズルから噴出されたエアによって水分を吹き飛ばしながら、バーナ本体から噴出された火炎によって路面の水分を蒸発させる、
路面乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濡れている路面を乾燥させる路面乾燥装置及び路面乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト舗装は、例えば、路面のひび割れや排水不良などによって舗装表面が劣化し、ポットホールと呼ばれる丸い穴ができてしまうことがある。ポットホールは、車両がハンドルをとられたり、歩行者がつまずいたりするおそれがあるので、迅速な措置が必要である。ポットホールの修繕方法として、ポットホールを清掃して乾燥させた後、アスファルト混合物をポットホールに流し込んで転圧する「パッチング」という工法が採用されている。ポットホールを乾燥させる際、特開2000-111013号公報(特許文献1)に記載されるようなガスバーナが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなガスバーナを使用する場合、火炎のみを使用して路面の水分を蒸発させて乾燥させているので、路面乾燥作業にある程度の時間が必要であった。路面乾燥作業が長引くと、例えば、路面補修工事を行っている区間の交通規制も長引き、円滑な交通を阻害するおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、路面乾燥作業に要する時間を短縮可能な路面乾燥装置及び路面乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
路面乾燥装置は、長尺形状のパイプと、パイプの一端部に取り付けられたグリップと、パイプの他端部に取り付けられたバーナ本体と、バーナ本体の周囲を覆う火口筒と、バーナ本体の火炎噴出方向と劣角をもって交差するようにエアを噴出するエアノズルと、バーナ本体に供給される可燃性ガスの流量を調整するガス流量調整機構と、エアノズルに供給されるエアの流量を調整するエア流量調整機構と、バーナ本体とガス流量調整機構とを接続するガス導管と、エアノズルとエア流量調整機構とを接続するエア導管と、を備えている。ここで、ガス流量調整機構及びエア流量調整機構がグリップに内蔵され、ガス導管及びエア導管がグリップ及びパイプに内蔵され、エアノズルが火口筒の内周面に沿って配置されている。また、このような路面乾燥装置を使用して、エアノズルから噴出されたエアによって水分を吹き飛ばしながら、バーナ本体から噴出された火炎によって路面の水分を蒸発させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、路面乾燥作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】路面乾燥システムの一例を示すシステム構成図である。
【
図6】路面乾燥装置の第1変形例を示す側面図である。
【
図7】路面乾燥装置の第2変形例を示す側面図である。
【
図8】エアノズルの第1変形例を示す斜視図である。
【
図9】エアノズルの第2変形例を示す斜視図である。
【
図10】エアノズルの第3変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1は、路面乾燥作業で使用される路面乾燥システム100の一例を示している。
【0010】
路面乾燥システム100は、路面乾燥装置200と、路面乾燥装置200に可燃性ガスを供給するガスボンベGBと、路面乾燥装置200に所定圧力まで昇圧したエアを供給するエアコンプレッサACと、を含んで構成されている。ここで、可燃性ガスとしては、例えば、発熱量が比較的高いプロパンガスを使用することができる。また、エアコンプレッサACとしては、電動モータやエンジンで駆動される公知のコンプレッサを使用することができる。そして、路面乾燥装置200は、可撓性を有するガスホースGH及びエアホースAHを介して、ガスボンベGB及びエアコンプレッサACに夫々接続されている。
【0011】
路面乾燥装置200は、
図2及び
図3に示すように、長尺形状のパイプ210と、パイプ210の一端部に取り付けられたグリップ220と、パイプ210の他端部に取り付けられたバーナ本体230と、バーナ本体230の周囲を覆う火口筒240と、を備えている。パイプ210は、軽量かつ丈夫なアルミニウム合金などの丸パイプ又は角パイプからなり、路面乾燥作業に適した全長を有している。また、パイプ210の中間部、具体的には、その他端部に近接した部位が一方向に屈曲されている。従って、パイプ210は、全体で見ると、他端部に近接した部位が一方向に屈曲されたく字形状をなしている。なお、く字形状とは、一見してく字形状であると認識できる程度でよく、例えば、円弧をもって屈曲した形状であってもよい(以下、形状については同様)。
【0012】
グリップ220は、パイプ210の軸方向と平行に延びる第1の把持部220Aと、第1の把持部220Aから屈曲して延びるガングリップ形状の第2の把持部220Bと、を有するブーメラン形状に形成されている。第1の把持部220Aは、パイプ210の中心軸からその屈曲方向とは反対側に所定寸法だけオフセットして配置されている。そして、第1の把持部220Aの先端部から屈曲して、第2の把持部220Bがパイプ210の屈曲方向に向かって延設されている。従って、作業者がグリップ220を片手で持って路面乾燥作業を行うと、パイプ210の中間部が屈曲されていることと相俟って、バーナ本体230から噴出される火炎が自然と路面に向かうようになる。このため、作業者が火炎を路面に向ける労力が不要となり、作業者の疲労を軽減することができる。
【0013】
また、第1の把持部220Aがパイプ210の中心軸からオフセットされているので、作業者がグリップ220を持ったときの重量バランスが良くなり、路面乾燥作業が容易になることから長時間の作業でも疲れ難くなる。作業者は、ブーメラン形状のグリップ220の第1の把持部220A、第2の把持部220B、又は第1の把持部220Aと第2の把持部220Bとの間の屈曲部分のいずれかを持って路面乾燥作業を行うことができる。
【0014】
グリップ220の形状は、図示のようなブーメラン形状とすることが好ましいが、例えば、第1の把持部220Aがないガングリップ形状、パイプ210の上部に設けられる鎹形状、パイプ210の一端部に頂点が位置する三角環形状などの任意形状としてもよい。
【0015】
グリップ220の第2の把持部220Bの先端部には、ガスホースGHをワンタッチで着脱可能なガスホース継手220Cが取り付けられている。ここで、ガスホース継手220Cとしては、ここに接続されるガスホースGHのねじれを解消する、スイベルジョイントであることが好ましい。グリップ220及びパイプ210の内部には、ガスボンベGBからガスホース継手220Cへと供給された可燃性ガスをバーナ本体230へと導く、ガス導管250が配設されている。ガス導管250は、可燃性ガスに腐食され難い材質のパイプとすることができるが、例えば、グリップ220を合成樹脂などで一体形成する場合には、グリップ220の内部に一体的に形成されたガス通路であってもよい。また、グリップ220の内部であってガス導管250の途上には、バーナ本体230に供給される可燃性ガスの流量を調整するガス流量調整機構260が配設されている。
【0016】
ガス流量調整機構260は、グリップ220の外部に突出する操作つまみ260Aを有しており、この操作つまみ260Aを回すことでバルブの開度が変化して可燃性ガスの流量が調整される。操作つまみ260Aは、第1の把持部220Aの下面から下方、即ち、パイプ210の屈曲方向に突出している。グリップ220には、第1の把持部220Aから下方に突出した操作つまみ260Aをガードすべく、操作つまみ260Aの下方において第1の把持部220Aから後方、即ち、第2の把持部220Bに向かって延びるガード部220Dが一体化されている。操作つまみ260Aが第1の把持部220Aとガード部220Dとの間に挟まれることで、路面乾燥作業中に作業者が不用意に操作つまみ260Aに触れてしまうことが抑制され、バーナ本体230に供給される可燃性ガスの流量が変化することを避けることができる。また、作業者が不用意に操作つまみ260Aに触れないようにすべく、操作つまみ260Aの外径をグリップ220の幅よりも小さくすることが好ましい。なお、ガス流量調整機構260及び操作つまみ260Aは、図示のようにグリップ220に設けることが好ましいが、グリップ220に近接したパイプ210など、グリップ220の近傍に設けるようにしてもよい。
【0017】
グリップ220の内部には、圧電素子とその打撃機構を含んだ発電装置270が更に配設されている。発電装置270は、グリップ220の上面に露出している着火ボタン270Aを押し下げることで打撃機構が作動し、高電圧を発生させる圧電素子が打撃される。圧電素子が打撃されると高電圧が発生し、パイプ210及びグリップ220の内部に配設された給電線270Bを介して、詳細を後述するバーナ本体230の着火電極290に高電圧が供給される。
【0018】
バーナ本体230は、
図4に示すように、パイプ210の他端部の内周に嵌合可能な円柱形状をなし、その基端部がパイプ210の他端部に嵌合して火口筒240の内部に突出している。バーナ本体230の基端部には、パイプ210に内蔵されたガス導管250と連通し、ガス導管250を介して供給された可燃性ガスを取り込むガス孔230Aが形成されている。本実施形態に係るガス導管250は、ガス圧力を高めるためにパイプ210とは別体の細管を使用しているが、パイプ210の内部をガス導管として使用してもよい。また、ガス導管250としては、パイプ210の外周にガス導管を這わせるなど、パイプ210に沿って可燃性ガスを導くようにしてもよい。但し、パイプ210にガス導管250が内蔵される方が、安全面で優れている。火口筒240の内部に突出したバーナ本体230には、ガス孔230Aに連通させて、ガス孔230Aよりも直径が大きい混合室230Bが形成されている。ガス孔230Aに供給された可燃性ガスは、ノズル230Cから混合室230Bに噴出する。混合室230Bの前方には、混合室230Bを通過した可燃性ガスを噴出するガス噴出孔230Dが開口している。
【0019】
混合室230Bの周壁には、混合室230Bから外周面まで貫通して空気を導入する、径方向に延びる空気孔230Eが形成されている。従って、混合室230Bを通過してガス噴出孔230Dから噴出する可燃性ガスの流れによって生じる負圧によって、空気孔230Eを介して周囲から空気が混合室230Bに吸引され、これが可燃性ガスを燃焼させる燃焼用空気として利用される。このようなバーナ本体230は、ブンゼンバーナとして公知である。なお、図示の例では、空気孔230Eが円周方向に等間隔で4つ形成されているが、その個数及び形成位置は任意であってもよい。
【0020】
バーナ本体230の周囲を覆う火口筒240は、パイプ210の他端部にボルトや溶接などで基端部が固定されたカウベル形状を有している。火口筒240の横断面形状は、長方形、楕円形又は長円形をなしており、その長軸が基端部から先端部開口に近づくにつれて徐々に長くなっている。また、火口筒240の横断面形状の短軸は、基端部から先端開口にかけて略一定か、又は徐々に短くなる形状とすることができる。そして、火口筒240は、パイプ210の中心軸を通ってパイプ210の屈曲方向と直角に延びる面上に、横断面形状の長軸が延びるように配置されている。火口筒240がこのような形状をなしていることによって、バーナ本体230から噴出された可燃性ガスによる火炎が横方向に延びる扇形状に広がる。このため、広範な路面に対する火炎による加熱が可能となって、路面乾燥作業の効率を向上させることができる。また、火口筒240を扁平形状としたことによって可燃性ガスの流速が高まり、例えば、火炎を遠方まで届かせることができる。
【0021】
また、火口筒240の内部には、バーナ本体230のガス噴出孔230Dと連通した内部火口筒280が配設されている。内部火口筒280は、テーパ形状の丸パイプの大径側端部を直径方向に押し潰してひょうたん形状、即ち、長円の中央部をくぼませた形状の開口280Aを形成した部材であって、丸パイプの小径側端部をバーナ本体230の外周に嵌合して固定されている。内部火口筒280の開口280Aの長軸は、火口筒240の長軸と平行に配置されており、この開口280Aから可燃性ガスを噴出することにより、火口筒240から噴出する火炎が扇形状で安定する。内部火口筒280の開口280Aは、安定した扇形状の火炎を得るためにひょうたん形状が好ましいが、楕円形又は長円形であってもよい。楕円形や長円形の開口280Aとする場合、開口280Aの前方に、楕円形や長円形の短軸相当部位に径方向内側に出っ張って隘路を形成する部品を更に配設し、ひょうたん形状と同様な効果を得ることが好ましい。
【0022】
このように、火口筒240の内部に内部火口筒280がある二重火口構造を採用し、火口筒240の開口から奥に内部火口筒280を配置したことにより、内部火口筒280の開口280Aから火口筒240の開口までの火口筒240の内部空間で可燃性ガスが燃焼するので、強風でも火炎が消え難くなる。この場合、内部火口筒280の開口280Aから火口筒240の開口までの距離が長すぎると、火口筒240の内部で可燃性ガスの燃料が促進されてその開口から噴出する火炎が逆に弱くなるので、火口筒240と内部火口筒280との距離は、この点を考慮して適宜設計すべきである。
【0023】
火口筒240の外周面であって、バーナ本体230の空気孔230Eの近傍には、火口筒240の内周面から外周面へと貫通する空気窓240Aが形成されている。この空気窓240Aは、可燃性ガスの流れによる負圧を利用して、火口筒240の内部に空気を取り入れるための開口として機能する。空気窓240Aから火口筒240の内部へと取り入れられた空気は、バーナ本体230の空気孔230Eを通過して混合室230Bへと導入される空気と、火口筒240の内部を開口に向かって流れる空気と、に二分割される。火口筒240の内部を開口に向かって流れる空気は、空気窓240Aから火口筒240の内部へと取り入れられて直ぐに、火口筒240とバーナ本体230及び内部火口筒280との間の間隙を通って、火口筒240の開口に向かうこととなる。この空気流によって、火口筒240の冷却効果が得られるので、可燃性ガスの燃焼中であっても、火口筒240の基端部側の2/3程度の範囲は、手で触れるほどの温度に保たれる。
【0024】
火口筒240の内部には、内部火口筒280の側方において、内部火口筒280から離間させて着火電極290が配設されている。着火電極290は、上述のように、発電装置270から高電圧を受けるので、その根元が碍子290Aで覆われており、この碍子290Aにおいて、火口筒240の内壁から立設されたブラケット290Bによって固定されている。そして、着火電極290は、発電装置270から高電圧を受けたことを契機として、放電して火花を発生させる。
【0025】
内部火口筒280において、着火電極290に対面する部位には、着火電極290で発生した火花を内部に導入して可燃性ガスを着火する、内面から外面へと貫通する着火孔280Bが形成されている。また、内部火口筒280の着火孔280Bの外方に、畳目形状の金網280Cが固定されている。この金網280Cは、可燃性ガスの流速を抑制することで、着火電極290の火花によって可燃性ガスを着火し易くする。
【0026】
また、路面乾燥装置200は、バーナ本体230の火炎噴出方向と劣角をもって交差するようにエアを噴出するエアノズル300と、エアノズル300に供給されるエアの流量を調整するエア流量調整機構310と、エアノズル300とエア流量調整機構310とを接続するエア導管320と、を更に備えている。
【0027】
エアノズル300は、火口筒240の開口付近であって、パイプ210の屈曲方向とは反対側に位置する火口筒240の外周面に取り付けられている。エアノズル300のエア噴出方向は、
図5に示すように、バーナ本体230の火炎噴出方向に対して、火口筒240の開口から所定距離離れた位置において交差するように配置されている。火口筒240に対するエアノズル300の固定は、例えば、溶接、結束バンド、両面テープ、接着剤、公知のブラケットなどで行うことができる。ここで、エアノズル300は、火口筒240の開口から噴出された火炎に晒されることから、例えば、金属パイプを加工して構成することが好ましい。
【0028】
エア流量調整機構310は、ガス流量調整機構260とは異なり、グリップ220の第1の把持部220Aの一側面、例えば、作業者が路面乾燥装置200を持ったときに左側に位置する側面に取り付けられている。グリップ220の第1の把持部220Aに対するエア流量調整機構310の固定は、例えば、結束バンド、両面テープ、接着剤、公知のブラケットなどで行うことができる。
【0029】
エア流量調整機構310の下面、即ち、これをグリップ220の第1の把持部220Aに固定したときに下方に位置する下面から、作業者が指で操作することによって、エアノズル300に供給されるエアの流量を調整するトリガー310Aが突出している。ここで、エア流量調整機構310は、少なくとも、内部のバルブを全閉(開度0%)と全開(開度100%)とに制御可能であればよい。また、エア流量調整機構310の背面、即ち、これを持った作業者に面する部位には、エアコンプレッサACに接続されたエアホースAHをワンタッチで着脱可能なエアホース継手310Bが取り付けられている。エアホース継手310Bは、グリップ220に取り付けられたガスホース継手220Cと同様に、エアホースAHのねじれを解消するスイベルジョイントとすることが好ましい。そして、エアノズル300とエア流量調整機構310とは、エア導管320を介して接続されている。このエア導管320は、例えば、アルミニウム合金などの金属製のパイプからなり、外力によって簡単に変形しないように、できる限り路面乾燥装置200の外形に沿って配置されることが好ましい。なお、パイプ210、グリップ220及び火口筒240に対するエア導管320の固定は、例えば、結束バンド、両面テープ、接着剤、公知のステーなどで行うことができる。
【0030】
次に、かかる路面乾燥装置200を含んだ路面乾燥システムを使用して、例えば、ポットホールが形成された路面を修復する際に、その路面を乾燥させる路面乾燥作業について説明する。路面乾燥作業が完了した後には、アスファルト混合物をポットホールに流し込んで転圧する「パッチング」という工法が行われる。
【0031】
路面乾燥作業を行うにあたり、ガスホースGH及びエアホースAHを介して、路面乾燥装置200にガスボンベGB及びエアコンプレッサACを接続する。そして、ガスボンベGBのコックを開けて可燃性ガスの供給を開始すると共に、エアコンプレッサACを起動してエアの供給を開始する。この状態では、路面乾燥装置200のガス流量調整機構260の操作つまみ260A及びエア流量調整機構310のトリガー310Aが操作されていない限り、バーナ本体230から可燃性ガスが噴出せず、また、エアノズル300からエアが噴出しない。
【0032】
作業者がガス流量調整機構260の操作つまみ260Aを操作してバーナ本体230への可燃性ガスの供給を開始し、発電装置270の着火ボタン270Aを押し下げると、バーナ本体230から噴出される可燃性ガスが着火して火炎の噴射を開始する。この状態で、作業者がエア流量調整機構310のトリガー310Aを操作してエアノズル300へのエアの供給を開始すると、エアノズル300から火炎に向けてエアが噴出される。
【0033】
このとき、火炎の先に濡れた路面のポットホールがあれば、エアノズル300から噴出されたエアによってポットホールに溜まっている水分の大部分が吹き飛ばされて除去されつつ、残った水分がバーナ本体230から噴出される火炎によって蒸発されて除去される。従って、エアノズル300から噴出されるエアによって水分の大部分が除去されるため、ポットホールを乾燥させるのに必要な時間が大幅に短縮し、路面乾燥作業の効率を向上させることができる。このとき、ポットホールにシルトなどが溜まっていても、エアノズル300から噴出されるエアによってこれが吹き飛ばされるため、路面の清掃作業も容易にすることができる。また、エアノズル300から噴出されるエアによって火炎が路面に向けて押しつけられるため、バーナ本体230から噴出される火炎の熱量を有効に利用して、ポットホールに溜まっている水分を蒸発させることができる。
【0034】
本出願人らが所定条件下で路面乾燥作業に要する時間を計測したところ、少なくとも5倍程度の時間短縮が可能であることを確認できた。従って、路面乾燥作業が長引くことがなく、例えば、路面補修工事を行っている区間の交通規制も短時間で終了させることができる。また、既存のガスバーナに対して、エアノズル300、エア流量調整機構310及びエア導管320などを後付けすることで路面乾燥装置200が実現されるので、例えば、少ない費用で路面乾燥装置200を入手することもできる。
【0035】
エアノズル300とエア流量調整機構310とを接続するエア導管320は、
図6に示すように、可撓性を有するエアホースであってもよい。この場合、エアノズル300及びエア流量調整機構310には、可撓性を有するエアホースをワンタッチで着脱可能なエアホース継手を取り付ければよい。なお、このエア導管320は、例えば、結束バンド、両面テープ、接着剤、公知のプラケットなどでパイプ210、グリップ220及び火口筒240に固定することができる。
【0036】
また、エアノズル300、エア流量調整機構310及びエア導管320は、
図7に示すように、パイプ210、グリップ220及び火口筒240の内部に配置するようにしてもよい。この場合、グリップ220の内部には、ガス流量調整機構260と同様に、エア流量調整機構310及びエア導管320が配設されている。グリップ220の後端部には、ガスホースGHをワンタッチで接続するガスホース継手220Cに加え、エアホースAHをワンタッチで接続するエアホース継手220Eが取り付けられている。このエアホース継手220Eは、エアホースAHのねじれを解消するスイベルジョイントとすることが好ましい。そして、エアホース継手220Eには、エア導管320の一端部が接続されている。エア流量調整機構310のトリガー310Aは、グリップ220の第1の把持部220Aの下面から下方へと突出し、作業者が容易に操作できるようになっている。
【0037】
パイプ210の内部には、ガス流量調整機構260に接続されたガス導管250に加え、エア流量調整機構310に接続されたエア導管320が配設されている。また、エア導管320は、火口筒240の内面、具体的には、パイプ210の屈曲方向とは反対側に位置する火口筒240の内面において、その基端部から開口に向けて延びている。このエア導管320の先端部には、エアノズル300が接続され、ここから火炎に向けてエアを噴射できるようになっている。
【0038】
かかる路面乾燥装置200によれば、先の実施形態に加え、エアノズル300、エア流量調整機構310及びエア導管320が外部に露出しないので、例えば、外力によってこれらが変形するおそれが少ない。従って、堅牢な路面乾燥装置200を実現することができる。
【0039】
エアノズル300の先端開口は、
図8に示すような楕円形状や、
図9に示すような長円形状であってもよい。このようにすれば、広範囲にエアを噴出可能となるため、エア圧力が高ければ水分やシルトを除去する効率をさらに向上させることができる。また、エアノズル300は、1本に限らず、
図10に示すように、複数本であってもよい。このようにしても、広範囲にエアを噴出可能となるため、エア圧力が高ければ水分やシルトを除去する効率をさらに向上させることができる。なお、
図10の例では、エアノズル300が3本設けられているが、その数は2本以上の任意数とすることができる。
【0040】
上述した各実施形態の路面乾燥装置200は、パイプ210の中間部がく字形状に屈曲されていたが、その全体が一直線上に延びていてもよい。また、路面乾燥装置200は、路面のポットホールを乾燥させるだけでなく、例えば、平坦な路面を乾燥させることもできる。また、バーナ本体230は、ブンゼンバーナに限らず、公知のタイプのバーナであってもよい。さらに、ガス流量調整機構260及びエア流量調整機構310は、上記構成に限らず、少なくとも通路を開閉可能な公知のバルブであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
200 路面乾燥装置
210 パイプ
220 グリップ
230 バーナ本体
240 火口筒
250 ガス導管
260 ガス流量調整機構
300 エアノズル
310 エア流量調整機構
320 エア導管