(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】排水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20230726BHJP
B01D 21/00 20060101ALI20230726BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20230726BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C02F3/12 A
B01D21/00 B
B01D21/02 F
B01D21/02 J
B01D21/24 D
(21)【出願番号】P 2019098268
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 進
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-188382(JP,A)
【文献】特開平04-197494(JP,A)
【文献】特開2007-326030(JP,A)
【文献】特開昭58-101793(JP,A)
【文献】実開平04-131484(JP,U)
【文献】米国特許第04634526(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00 - 3/34
B01D 21/00 - 21/34
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水流入部及び処理水導出部を備えるとともに循環流発生手段及び酸素供給手段を備え、前記酸素供給手段の下流側に好気域を、該好気域の終端と前記酸素供給手段との間の無酸素域をそれぞれ形成した無終端水路と、前記処理水導出部から導出した循環水の固液分離を行う固液分離手段とを備えた排水処理装置において、前記無終端水路内を循環する循環水の流れ方向の上流側、下流側及び両側面の4面が水密状態で連続した区画壁と、該区画壁内に設けられて前記循環水に含まれる活性汚泥の沈降を促進させて活性汚泥濃度を低減する活性汚泥沈降促進手段と、該活性汚泥沈降促進手段で活性汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水を前記無終端水路の外に導出する低減水導出部と、該低減水導出部から導出した汚泥濃度低減水を前記固液分離手段に導入する汚泥濃度低減水経路とを備え、前記原水流入部からの原水流入量に関係なく、あらかじめ設定された量の汚泥濃度低減水を前記汚泥濃度低減水経路に導出する汚泥濃度低減水導出器を、前記無終端水路における前記循環水の水面部に設け
、
前記汚泥濃度低減水導出器は、少なくとも、前記循環水の流れ方向上流側先端が流線形状に形成されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記汚泥濃度低減水導出器は、該汚泥濃度低減水導出器の外側面と前記無終端水路の内側面との間に、100~1000mmの循環水流路が形成されていることを特徴とする請求項
1記載の排水処理装置。
【請求項3】
原水流入部及び処理水導出部を備えるとともに循環流発生手段及び酸素供給手段を備え、前記酸素供給手段の下流側に好気域を、該好気域の終端と前記酸素供給手段との間の無酸素域をそれぞれ形成した無終端水路と、前記処理水導出部から導出した循環水の固液分離を行う固液分離手段とを備えた排水処理装置において、前記無終端水路内を循環する循環水の流れ方向の上流側、下流側及び両側面の4面が水密状態で連続した区画壁と、該区画壁内に設けられて前記循環水に含まれる活性汚泥の沈降を促進させて活性汚泥濃度を低減する活性汚泥沈降促進手段と、該活性汚泥沈降促進手段で活性汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水を前記無終端水路の外に導出する低減水導出部と、該低減水導出部から導出した汚泥濃度低減水を前記固液分離手段に導入する汚泥濃度低減水経路とを備え、前記原水流入部からの原水流入量に関係なく、あらかじめ設定された量の汚泥濃度低減水を前記汚泥濃度低減水経路に導出する汚泥濃度低減水導出器を、前記無終端水路における前記循環水の水面部に設け、
前記汚泥濃度低減水導出器は、該汚泥濃度低減水導出器の外側面と前記無終端水路の内側面との間に、100~1000mmの循環水流路が形成されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
原水流入部及び処理水導出部を備えるとともに循環流発生手段及び酸素供給手段を備え、前記酸素供給手段の下流側に好気域を、該好気域の終端と前記酸素供給手段との間の無酸素域をそれぞれ形成した無終端水路と、前記処理水導出部から導出した循環水の固液分離を行う固液分離手段とを備えた排水処理装置において、前記無終端水路内を循環する循環水の流れ方向の上流側、下流側及び両側面の4面が水密状態で連続した区画壁と、該区画壁内に設けられて前記循環水に含まれる活性汚泥の沈降を促進させて活性汚泥濃度を低減する活性汚泥沈降促進手段と、該活性汚泥沈降促進手段で活性汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水を前記無終端水路の外に導出する低減水導出部と、該低減水導出部から導出した汚泥濃度低減水を前記固液分離手段に導入する汚泥濃度低減水経路とを備え、前記原水流入部からの原水流入量に関係なく、あらかじめ設定された量の汚泥濃度低減水を前記汚泥濃度低減水経路に導出する汚泥濃度低減水導出器を、前記無終端水路における前記循環水の水面部に設け、
前記低減水導出部は、区画壁内の汚泥濃度低減水を越流させる越流トラフを備え、
前記越流トラフは、前記活性汚泥沈降促進手段を一体的に備えていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
前記汚泥濃度低減水導出器は、少なくとも、前記循環水の流れ方向上流側先端が流線形状に形成されていることを特徴とする請求項
4記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記汚泥濃度低減水導出器は、該汚泥濃度低減水導出器の外側面と前記無終端水路の内側面との間に、100~1000mmの循環水流路が形成されていることを特徴とする請求項
4又は5記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記汚泥濃度低減水導出器は、あらかじめ設定された越流トラフにおける時間ごとの越
流水量設定値に基づいて上下位置が調節されることを特徴とする請求項
4乃至6のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記汚泥濃度低減水導出器は、前記越流トラフにおける越流水深レベルがあらかじめ設定されたレベルになる高さ位置に上下位置が調節されることを特徴とする請求項
4乃至6のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記汚泥濃度低減水導出器は、前記無終端水路を遮蔽する断面積が流路断面積に対して1/2以下に設定されていることを特徴とする請求項
1乃至8のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項10】
前記汚泥濃度低減水導出器は、前記無終端水路における前記酸素供給手段の下流側で、かつ、前記固液分離手段で分離した返送汚泥の流入部及び前記原水流入部より上流側に設けられていることを特徴とする請求項
1乃至9のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項11】
前記汚泥濃度低減水導出器は、前記無終端水路に設けられた支持手段によって上下動可能に保持されていることを特徴とする請求項
1乃至10のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項12】
前記汚泥濃度低減水導出器は、該汚泥濃度低減水導出器に浮力を与えるための浮子を備えていることを特徴とする請求項
1乃至11のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項13】
前記汚泥濃度低減水導出器は、高さ位置調節手段を備えていることを特徴とする請求項
1乃至12のいずれか1項記載の排水処理装置。
【請求項14】
前記活性汚泥沈降促進手段は、整流板、傾斜管、傾斜板、渦流を発生させるチャンネル・フィンの少なくともいずれか1種からなることを特徴とする請求項
1乃至13のいずれか1項記載の排水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置に関し、詳しくは、無終端水路(ディッチ)を用いた生物学的排水処理方法によって排水の浄化処理を行う排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的な排水処理を行う方法として、オキシデーションディッチ法が広く知られている。このオキシデーションディッチ法は、無端状に形成したディッチと固液分離を行う固液分離手段としての最終沈殿池とを組み合わせ、ディッチ内の水を循環させながら一部で曝気することにより、ディッチ内に好気域と無酸素域とを形成し、有機物の分解だけでなく、好気域での硝化反応と無酸素域での脱窒反応とによって窒素分も除去するようにしている。また、最終沈殿池では、ディッチから抜き出した一部の循環水の固液分離を行って処理水と活性汚泥とを分離し、分離した処理水は放流し、活性汚泥はディッチへ返送している。
【0003】
このようなオキシデーションディッチ法は、大規模処理場に比べて日間変動が大きい小規模処理場に適しているが、日間変動によってディッチ内における負荷が大きく変動する。すなわち、原水流入量が多い場合には、最終沈殿池の負荷が増大するため、沈殿槽の容量を大きくしたり、沈殿槽を増設したりする必要が生じる。しかし、設備の面積には限界があるため、沈殿槽の大型化や増設は、実施不可能なことが多い。このようなことから、ディッチ内に固液分離装置を設けて活性汚泥を分離沈降させ、分離水を最終沈殿池に導入したり、分離水を、最終沈殿池を介さずに排出したりすることで、最終沈殿池の負荷を軽減することが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。一方、好気域の上流側と下流側との適当な位置に溶存酸素計(DO計)をそれぞれ設置し、各DO計の測定値(DO値)に基づいて循環水の流速及び酸素の供給量をそれぞれ調節することにより、いわゆる二点DO制御によって好気域と無酸素域とのバランスを負荷に応じて調節することが行われている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-188382号公報
【文献】特開2004-25063号公報
【文献】特開2005-52804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1,2に記載された固液分離装置を設けることにより、最終沈殿池の負荷を軽減することができ、前記特許文献3に記載された処理を適用することにより、負荷変動があっても常に一定の好気域及び無酸素域を形成して被処理水中のアンモニア濃度や硝酸態窒素濃度を最小とすることができる。しかし、いずれの場合でも、オキシデーションディッチ法を適用した下水処理場では、標準活性汚泥法に比べて小さな規模であり、処理量が1000~5000m3/日程度であるから、原水流入量が多い場合には、ディッチの後段に設けられている最終沈殿池の負荷が増大するため、沈殿槽の容量を大きくしたり、沈殿槽を増設したりする必要が生じる。しかし、設備の面積には限界があるため、沈殿槽の大型化や増設は、実施不可能なことが多い。また、最終沈殿池を介さずに排出する場合は、汚泥を十分に分離できなかった処理水が排出されることになる。
【0006】
そこで本発明は、原水流入量に大きな増減がある場合も、最終沈殿池の負荷の軽減、平均化を図ることができ、オキシデーションディッチ法において安定した排水処理を行うことができる排水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の排水処理装置は、原水流入部及び処理水導出部を備えるとともに循環流発生手段及び酸素供給手段を備え、前記酸素供給手段の下流側に好気域を、該好気域の終端と前記酸素供給手段との間の無酸素域をそれぞれ形成した無終端水路と、前記処理水導出部から導出した循環水の固液分離を行う固液分離手段とを備えた排水処理装置において、前記無終端水路内を循環する循環水の流れ方向の上流側、下流側及び両側面の4面が水密状態で連続した区画壁と、該区画壁内に設けられて前記循環水に含まれる活性汚泥の沈降を促進させて活性汚泥濃度を低減する活性汚泥沈降促進手段と、該活性汚泥沈降促進手段で活性汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水を前記無終端水路外に導出する低減水導出部と、該低減水導出部から導出した汚泥濃度低減水を前記固液分離手段に導入する汚泥濃度低減水経路とを備え、前記原水流入部からの原水流入量に関係なく、あらかじめ設定された量の汚泥濃度低減水を前記汚泥濃度低減水経路に導出する汚泥濃度低減水導出器を、前記無終端水路における前記循環水の水面部に設けたことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の排水処理装置は、前記汚泥濃度低減水導出器の少なくとも前記循環水の流れ方向上流側先端が流線形状に形成されていること、前記汚泥濃度低減水導出器が前記無終端水路を遮蔽する断面積が流路断面積に対して1/2以下に設定されていること、前記汚泥濃度低減水導出器が、前記無終端水路における前記酸素供給手段の下流側で、かつ、前記固液分離手段で分離した返送汚泥の流入部及び前記原水流入部より上流側に設けられていること、前記汚泥濃度低減水導出器は、該汚泥濃度低減水導出器の外側面と前記無終端水路の内側面との間に、100~1000mmの循環水流路が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、前記汚泥濃度低減水導出器は、前記無終端水路に設けられた支持手段によって上下動可能に保持されていること、前記汚泥濃度低減水導出器は、該汚泥濃度低減水導出器に浮力を与えるための浮子を備えていること、前記汚泥濃度低減水導出器は、高さ位置調節手段を備えていること、前記活性汚泥沈降促進手段は、整流板、傾斜管、傾斜板、渦流を発生させるチャンネル・フィンの少なくともいずれか1種からなることを特徴としている。
【0010】
さらに、前記低減水導出部は、区画壁内の汚泥濃度低減水を越流させる越流トラフを備えていること、前記越流トラフは、前記活性汚泥沈降促進手段を一体的に備えていること、前記汚泥濃度低減水導出器は、あらかじめ設定された越流トラフにおける時間ごとの越流水量設定値に基づいて上下位置が調節されること、前記汚泥濃度低減水導出器は、前記越流トラフにおける越流水深レベルがあらかじめ設定されたレベルになる高さ位置に上下位置が調節されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排水処理装置によれば、循環水の水面部に設けた汚泥濃度低減水導出器で活性汚泥を低減した汚泥濃度低減水のあらかじめ設定された量を無終端水路から導出して固液分離手段に導入するので、無終端水路への原水流入量に大きな増減がある場合でも、固液分離手段の負荷の軽減、平均化を図ることができ、安定した排水処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の排水処理装置の一形態例を示す平面図である。
【
図3】汚泥濃度低減水導出器の第1形態例を示す断面正面図である。
【
図5】一日の流入水量の変動状態の一例を示す図である。
【
図6】汚泥濃度低減水導出器から一定量の循環水を導出したときのディッチ内水位の変動状態の一例を示す図である。
【
図7】汚泥濃度低減水導出器の第2形態例を示す断面正面図である。
【
図10】汚泥濃度低減水導出器の第3形態例を示す断面正面図である。
【
図11】第3形態例で使用した活性汚泥沈降促進手段の平面図である。
【
図12】排水処理装置の第4形態例における汚泥濃度低減水導出器に用いた活性汚泥沈降促進手段一体式越流トラフの一例を示す断面図である。
【
図13】排水処理装置の第5形態例における汚泥濃度低減水導出器に用いた活性汚泥沈降促進手段一体式越流トラフの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図4は、本発明の排水処理装置の第1形態例を示している。本形態例に示す排水処理装置は、仕切り壁11aで区画形成した無終端水路からなるディッチ11に一対のドラム式の循環流発生手段12と酸素供給手段である曝気装置13とを設け、ディッチ11内に矢印で示す方向の循環流を形成することにより、曝気装置13から所定の距離までを好気性水域14とし、この好気性水域14の終端から曝気装置13までを無酸素水域15としている。また、好気性水域14の下流部分には、処理水の一部を最終沈殿池16に向けて抜き出す処理水導出部17が設けられ、無酸素水域15の上流部分には、最終沈殿池16からの返送汚泥が導入される返送汚泥導入部18及び被処理水としての下排水が導入される原水流入部19がそれぞれ設けられている。
【0014】
原水流入部19からディッチ11に流入した原水は、循環流発生手段12で形成された循環流によって返送汚泥導入部18から流入した汚泥と共にディッチ11内を循環し、曝気装置13から供給される酸素を溶存させた好気性水域14と、溶存酸素が消費された後の無酸素水域15とでそれぞれ処理されることにより、有機物や窒素が除去された処理水となり、この処理水の一部が処理水導出部17から最終沈殿池16に導出される。最終沈殿池16で汚泥から分離した処理水は流出経路20から流出し、沈殿した汚泥は、一部が余剰汚泥として汚泥抜出経路21から抜き取られ、残部が返送汚泥導入部18を経てディッチ11に返送される。
【0015】
さらに、ディッチ11における前記曝気装置13の下流側で、かつ、前記返送汚泥導入部18及び原水流入部19の上流側には、汚泥濃度低減水導出器22が設けられており、前記好気性水域14の上流側と下流側とには、循環水中の溶存酸素濃度を測定する上流側溶存酸素計23と下流側溶存酸素計24とが設けられている。
【0016】
前記汚泥濃度低減水導出器22は、
図3及び
図4に示すように、ディッチ11内を循環する循環水の流れ方向に対して上流側、下流側及び両側面の4面が長短2枚ずつの側板25a,25bによって水密状態で連続する平面視矩形状の区画壁25と、該区画壁25内に設けられて前記循環水に含まれる活性汚泥の濃度を低減する活性汚泥沈降促進手段26と、該活性汚泥沈降促進手段26で汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水をディッチ11外に導出する低減水導出部となる複数の越流トラフ27と、該越流トラフ27の下部に設けられた連通路27aから導出した汚泥濃度低減水を前記最終沈殿池16に導入する汚泥濃度低減水経路28とを備えている。さらに、汚泥濃度低減水導出器22は、上流側及び下流側にそれぞれ設けられた一対の支柱29によって循環水の流れ方向に対して所定位置で上下動可能に保持されるとともに、区画壁25の上流側及び下流側には、汚泥濃度低減水導出器22に適度な浮上力を与えるための浮子30がそれぞれ設けられている。
【0017】
また、前記支柱29の上部には、汚泥濃度低減水導出器22の上限を規制する上限規制部29aが設けられ、下部には、下限を規制する下限規制部29bが設けられている。さらに、汚泥濃度低減水導出器22の上流側及び下流側には、循環水の流れを円滑にするための流線形状のカバー31がそれぞれ設けられ、各カバー31の先端部に支柱係合部31aが設けられている。
【0018】
さらに、ディッチ11内の循環水の流れを阻害しないように、汚泥濃度低減水導出器22の大きさは、ディッチ11を遮蔽する断面積が、ディッチ11の流路断面積に対して1/2以下に設定されるとともに、汚泥濃度低減水導出器22の側壁外面とディッチ11の側壁内面との間、汚泥濃度低減水導出器22の側壁外面と仕切り壁11aの外面との間には、100~1000mmの循環水流路を形成するようにしている。また、ディッチ11の水面積に対する汚泥濃度低減水導出器22の水面積は、5~30%の範囲とすることが好ましい。
【0019】
そして、上流側の支柱29の上端部には、ディッチ11内における汚泥濃度低減水導出器22の高さ位置を調節するための高さ位置調節手段32が設けられ、汚泥濃度低減水導出器22の上部には、越流トラフ27の越流水深を測定する水位測定手段33が設けられている。高さ位置調節手段32は、ロッドなどの連結手段32aを介して汚泥濃度低減水導出器22に連結されており、水位測定手段33によって測定した越流水深に応じて汚泥濃度低減水導出器22を上下動させ、越流トラフ27における越流水量が、あらかじめ設定された量になるようにしている。
【0020】
前記活性汚泥沈降促進手段26は、複数の整流板26aを、短辺側の区画壁25と同じ方向で、斜めに傾斜させて配列した斜板式と呼ばれるものであって、循環水の流れ方向に対して、整流板26aの上部が上流側に、下部が下流側に向かうように配置されている。整流板26aの角度や間隔は、循環水中の汚泥の状態などの条件に応じて設定されている。
【0021】
ディッチ11内で処理されている循環水の一部は、汚泥濃度低減水導出器22の下部から活性汚泥沈降促進手段26の整流板26a間に流入して上昇しながら整流板26aの作用で汚泥の沈降が促進されて分離される。活性汚泥沈降促進手段26で汚泥を沈降分離させて汚泥濃度を低減させた汚泥濃度低減水は、活性汚泥沈降促進手段26の上方に至り、前記越流トラフ27の側壁を越えてトラフ内に流入し、各越流トラフ27の下部に連通した状態で設けられた連通路27aを介して汚泥濃度低減水経路28から前記最終沈殿池16に導入される。
【0022】
汚泥濃度低減水導出器22によってディッチ11から抜き出す汚泥濃度低減水の導出量は、前記原水流入部19からの原水流入量の変動に関係なく、あらかじめ設定された量の範囲内になるようにしている。例えば、原水流入部19からの原水流入量の日間流入量の平均値を汚泥濃度低減水の導出量に設定している。
【0023】
例えば、規模が1500m
3/日で、計画水深が2.5mのディッチ11において、
図5は1日の原水流入水量[m
3/h]の変動状態の一例を示しており、このときの平均流入量は62.5m
3/hである。また、
図6は、汚泥濃度低減水導出器22から日間流入量の平均値である62.5m
3/hの循環水を連続して導出したときのディッチ内水位[m]の変動状態の一例を示すもので、計画水位の2.5mを0.00mとして水位の低下量を表している。
【0024】
図5及び
図6から、汚泥濃度低減水導出器22を設けていないときは、8時~10時の間は、時間当たり平均量の1.5~2.5倍の多大な流入水量に対応する循環水をそのまま処理水導出部17から最終沈殿池16に送ることになり、最終沈殿池16での汚泥界面の上昇など、重篤な固液分離障害を招くおそれがある。すなわち、ディッチ11における循環水導出高さ位置が固定されている従来のものでは、循環水の導出量が原水の流入量によって大きく変動するため、後段の最終沈殿池16における負荷変動が大きく、十分な固液分離が行えなくおそれがある。
【0025】
一方、汚泥濃度低減水導出器22から62.5m3/hの循環水を連続して導出したときには、7~8時の間で水位が最も低下して水深が2.136mになるが、この程度ならば、好気性水域14と無酸素水域15とに循環水を十分に循環させることができ、流入原水の処理を確実に行うことができる。そして、流入水量の大きな変動があっても、1日を通してディッチ11内の水位を2.136~2.5mの範囲としてディッチ11内で確実な処理を行いながら、最終沈殿池16には、安定した量の循環水を汚泥を低減した状態で送ることができる。これにより、最終沈殿池16における固液分離に悪影響を与えることがなく、ディッチ11及び最終沈殿池16による下排水の処理を安定した状態で確実に行うことができる。
【0026】
また、上流側溶存酸素計23及び下流側溶存酸素計24でそれぞれ測定した溶存酸素濃度と、あらかじめ設定されている各溶存酸素濃度基準値とに基づいて循環流発生手段12による循環水の流速や、曝気装置13における曝気量をあらかじめ設定された手順で調節することにより、流入水量の増減、ディッチ11内の水位、原水の性状などに応じた水処理をより確実に行うことができる。
【0027】
このように、ディッチ11内に、活性汚泥沈降促進手段26を備えた汚泥濃度低減水導出器22を設け、あらかじめ設定された量の循環水を、汚泥量を低減させた状態で最終沈殿池16に導出することにより、MLSS濃度を高めに設定したディッチ11内での処理状態を損なうことなく、最終沈殿池16における固液分離を安定して行うことができ、下排水の処理を効果的に、確実に行うことができる。
【0028】
図7乃至
図9は本発明の水処理設備における汚泥濃度低減水導出器の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した排水処理装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0029】
本形態例に示す汚泥濃度低減水導出器41は、ディッチ11の流路幅方向に設けた4本の越流トラフ42と、該越流トラフ42の下方に設けられた活性汚泥沈降促進手段43とを隔壁25内に配置したもので、越流トラフ42には、各越流トラフ42の下部中央に連通するように設けられた連通路42aと、該連通路42aの下部中央に連通した流出路42bとを備えており、流出路42bが前記汚泥濃度低減水経路28に接続されて最終沈殿池16に汚泥濃度低減水を送り出すようにしている。
【0030】
また、活性汚泥沈降促進手段43は、両端部を斜めにカットした多数の角パイプ43aを互いに平行に隣接させて配列した傾斜管式と呼ばれるもので、前記斜板式と同様に、上部が上流側を、下部が下流側を向く状態で設けられている。さらに、隔壁25の上流側には、前記同様の流線型のカバー31が取り付けられている。
【0031】
本形態例に示す汚泥濃度低減水導出器41においても、下方の傾斜管式の活性汚泥沈降促進手段43で循環水中の汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水を、あらかじめ設定された流量で越流トラフ42から導出して最終沈殿池16に送出することにより、前記第1形態例と同様に、原水流入量の変動が大きなディッチ11及び最終沈殿池16からなる排水処理装置においても、下排水の処理を効果的に、確実に行うことができる。
【0032】
図10及び
図11は、本発明の水処理設備における汚泥濃度低減水導出器の第3形態例を示している。本形態例では、前記第1形態例と同様に形成された区画壁25の内方上部に前記同様の越流トラフ27を設けるとともに、該越流トラフ27の下方にフィン式の活性汚泥沈降促進手段51を配置している。
【0033】
フィン式の活性汚泥沈降促進手段51は、前記同様に形成された区画壁25の内部に、循環水の流れ方向に平行な方向の複数のフィン付き基板部材52を、隣接するフィン付き基板部材52同士のフィン52aが互い違いに対向するように配列している。
【0034】
このようなフィン式の活性汚泥沈降促進手段51を用いても、前記同様に循環水中の汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水を最終沈殿池16に送出でき、ディッチを使用した排水処理効率を向上させることができる。
【0035】
図12は、本発明の水処理設備における汚泥濃度低減水導出器の第4形態例を示している。
図12(A)は概略断面図、
図12Bは平面図であって、本形態例では、越流トラフ61に活性汚泥沈降促進手段62を一体的に設けた活性汚泥沈降促進手段一体式越流トラフ63を使用している。
【0036】
越流トラフ61の本体は断面U字状に形成されており、両側壁61aの外面に、活性汚泥沈降促進手段62として、先端が下方に傾斜した斜板62aを複数枚設けている。循環水と共に上昇する活性汚泥は、斜板62aの作用によって沈降が促進される。
【0037】
また、
図13は、本発明の水処理設備における汚泥濃度低減水導出器の第5形態例を示している。
図13(A)は概略断面図、
図13Bは平面図であって、本形態例では、越流トラフ65の両側壁の外面に、循環水の流れに直交する方向の抵抗板66aを複数枚設けて活性汚泥沈降促進手段66としている。この活性汚泥沈降促進手段一体式越流トラフ67では、抵抗板66a間で循環水が渦流を形成することによって活性汚泥の沈降が促進される。
【0038】
したがって、両形態例で示した活性汚泥沈降促進手段一体式越流トラフ63、67のいずれにおいても、活性汚泥を沈降分離した汚泥濃度低減水が越流トラフ61,65の側壁を越えて最終沈殿池16に向かって送り出される。これにより、前記各形態例で示した汚泥濃度低減水導出器と同様に、循環水中の汚泥濃度を低減した汚泥濃度低減水を最終沈殿池16に送出できるので、ディッチを使用した排水処理効率を向上させることができる。
【0039】
なお、汚泥濃度低減水導出器の形状や構造は任意であり、ディッチ11の規模などの条件に応じて最適な構成を採用することができる。また、汚泥濃度低減水導出器の位置(設置高さ)は、流入原水の変動を予測して単位時間ごとに設定した越流水量設定値に基づいて変化させることもでき、流入原水量が少ない時間帯には汚泥濃度低減水の導出量を少なめにしたりすることもできる。さらに、活性汚泥沈降促進手段も活性汚泥濃度などの条件に応じて選択することができ、複数種を併用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
11…ディッチ、11a…仕切り壁、12…循環流発生手段、13…曝気装置、14…好気性水域、15…無酸素水域、16…最終沈殿池、17…処理水導出部、18…返送汚泥導入部、19…原水流入部、20…流出経路、21…汚泥抜出経路、22…汚泥濃度低減水導出器、23…上流側溶存酸素計、24…下流側溶存酸素計、25…区画壁、26…活性汚泥沈降促進手段、26a…整流板、27…越流トラフ、27a…連通路、28…汚泥濃度低減水経路、29…支柱、29a…上限規制部、29b…下限規制部、30…浮子、31…カバー、31a…支柱係合部、32…高さ位置調節手段、32a…連結手段、33…水位測定手段、41…汚泥濃度低減水導出器、42…越流トラフ、42a…連通路、42b…流出路、43…活性汚泥沈降促進手段、43a…角パイプ、51…活性汚泥沈降促進手段、52…フィン付き基板部材、52a…フィン、61…越流トラフ、61a…側壁、62…活性汚泥沈降促進手段、62a…斜板、63…活性汚泥沈降促進手段一体式越流トラフ、65…越流トラフ、66…活性汚泥沈降促進手段、66a…抵抗板、67…活性汚泥沈降促進手段一体式越流トラフ