(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】静電型トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
H04R 19/00 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
H04R19/00
(21)【出願番号】P 2019110028
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田原 新也
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】那須 将樹
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160739(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107558(WO,A1)
【文献】特開2013-157897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/00-19/04
H04R 17/00
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域または駆動領域としての少なくとも1つの対象領域を含むように配置される絶縁体シートと、
導電性フィラーを含むエラストマーにより形成され、かつ、前記絶縁体シートに積層され
た電極シートであり、少なくとも、前記1つの対象領域を構成
する1つの電極シート本体、および、前記1つの電極シート本体の縁における異なる位置に配置される複数の端子部を備える
前記電極シートと、
一端が前記複数の端子部のそれぞれに
接続されかつ電気的に接続され、他端が相互に
接続されかつ電気的に接続される複数の端子接続配線部と、
前記複数の端子接続配線部の他端同士の接続位置から1つの入出力端を構成する結合配線部と、
を備える、静電型トランスデューサ。
【請求項2】
前記電極シート
本体は、長尺状に形成され、
前記複数の端子部
は、
前記電極シート本体における長手方向の異なる位置にそれぞれ配置された第一端子部および第二端子部を備え、
前記第一端子部は、前記電極シート
本体の長手方向の第一端側に配置され、
前記第二端子部は、前記電極シート
本体の長手方向の第二端側に配置され、
前記複数の端子接続配線部
は、前記第一端子部に
接続されかつ電気的に接続される第一端子接続配線部、および、前記第二端子部に
接続されかつ電気的に接続される第二端子接続配線部を備える、請求項1に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項3】
前記第一端子部は、前記電極シート
本体の長手方向の第一端側であって、前記電極シート
本体の長手方向の第一端側の縁から距離を有する位置に配置され、
前記第二端子部は、前記電極シート
本体の長手方向の第二端側であって、前記電極シート
本体の長手方向の第二端側の縁から距離を有する位置に配置される、請求項2に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項4】
前記電極シート
本体を長手方向にN個(Nは偶数)の分割領域に等しく分割したとき、前記電極シート
本体は、隣り合う前記分割領域の分割位置を(N-1)個有しており、
前記複数の端子部は、両端の2個の前記分割位置を含み、前記分割位置を1個飛ばしで配置され、N/2個配置され、
前記複数の端子接続配線部は、N/2個配置される、請求項3に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項5】
前記電極シート
本体を長手方向に4個の分割領域に等しく分割したとき、前記電極シート
本体は、隣り合う前記分割領域の分割位置を3個有しており、
前記複数の端子部としての前記第一端子部は、連続する3個の前記分割位置のうちの第一端側の前記分割位置に配置され、
前記複数の端子部としての前記第二端子部は、連続する3個の前記分割位置のうちの第二端側の前記分割位置に配置される、請求項4に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項6】
前記第一端子部は、前記電極シート
本体の長手方向の第一端側の縁に配置され、
前記第二端子部は、前記電極シート
本体の長手方向の第二端側の縁に配置される、請求項2に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項7】
前記静電型トランスデューサは、さらに、
導電性フィラーを含むエラストマーにより形成され、かつ、前記絶縁体シートにおける前記電極シートとは反対面に積層され
た反対面電極シートであり、
少なくとも、前記1つの対象領域を構成
する1つの反対面電極シート本体、および、前記1つの反対面電極シート本体の縁における異なる位置に配置される複数の
反対面端子部を備える
前記反対面電極シートと、
一端
が前記複数の
反対面端子部のそれぞれに
接続されかつ電気的に接続され、他端が相互に
接続されかつ電気的に接続される複数の反対面端子接続配線部と、
前記複数の反対面端子接続配線部の他端同士の接続位置から1つの入出力端を構成する反対面結合配線部と、
を備える、請求項1-
6の何れか1項に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項8】
検出領域または駆動領域としての少なくとも1つの対象領域を含むように配置される絶縁体シートと、
導電性フィラーを含むエラストマーにより形成され、前記絶縁体シートに積層され
た電極シートであり、
少なくとも、独立して配置された複数の分割電極シート、および、
前記複数の分割電極シートのそれぞれの縁に少なくとも1つずつ配置される複数の端子部を備える
前記電極シートと、
一端が前記複数の端子部のそれぞれに
接続されかつ電気的に接続され、他端が相互に
接続されかつ電気的に接続される複数の端子接続配線部と、
前記複数の端子接続配線部の他端同士の接続位置から1つの入出力端を構成する結合配線部と、
を備え
、
前記対象領域は、長尺状に形成され、
前記複数の分割電極シートは、前記対象領域の長手方向に並んで配置され、
前記対象領域を構成する前記複数の分割電極シートのそれぞれは、前記対象領域の長手方向と同一方向に長手方向となる長尺状に形成され、
前記複数の分割電極シートのそれぞれの縁に配置される前記端子部は、前記複数の分割電極シートのそれぞれの長手方向の中央部に配置される、静電型トランスデューサ。
【請求項9】
前記電極シートは、前記電極シート自身の融着により前記絶縁体シートに固着されてい
る、請求項1-
8の何れか1項に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項10】
前記絶縁体シートは、エラストマーにより形成され、
前記電極シートは、前記電極シート自身の融着および前記絶縁体シートの融着により前記絶縁体シートに固着されている、請求項
9に記載の静電型トランスデューサ。
【請求項11】
前記静電型トランスデューサは、静電型センサである、請求項1-10の何れか1項に記載の静電型トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型トランスデューサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人体の心拍数や呼吸数を計測する装置に用いられ、導電性布と誘電体とを備える静電型センサが記載されている。特許文献2には、ステアリングホイールに適用された運転者の手放し状態を検出する静電型センサが記載されている。また、特許文献3には、圧電フィルムの両面に設ける電極をメッシュ状とし、メッシュの度合を変えることにより、出力電圧を制御する圧電型センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-315831号公報
【文献】特開2014-190856号公報
【文献】特開平5-172839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、静電型トランスデューサ(センサおよびアクチュエータを含む)の取付対象の形状が、三次元形状(三次元曲面、複合平面を含む)である場合などにおいて、取付性の観点から、静電型トランスデューサに柔軟性が求められる。つまり、静電型トランスデューサを変形させながら取付対象に取り付けることができることが求められる。
【0005】
近年においては、導電性フィラーを含むエラストマーにより形成された電極シートが開発されている。しかし、導電性フィラーを含むエラストマーにおいて、導電性フィラーの配合割合を高くすると硬くなり、導電性フィラーの配合割合を低くすると柔らかくなるが電気抵抗率が大きくなる。
【0006】
そこで、上記要請を満たすためには、導電性フィラーを含むエラストマーを電極シートとして用いる場合において、所望の柔軟性を有しつつ所望の電気抵抗率を有する導電性フィラーの配合割合とすることが必要となる。
【0007】
しかしながら、導電性フィラーを含むエラストマーを電極シートに用いる静電型センサにおいて、1つの検出領域が広い場合には、電極シートの電気抵抗の影響により検出領域内の位置によっては計測精度が低下する。同様に、静電型アクチュエータにおいて、1つの駆動領域が広い場合には、電極シートの電気抵抗の影響により1つの駆動領域の位置によっては駆動精度が低下する。
【0008】
本発明は、柔軟性を有しつつ、検出精度または駆動精度を向上させることができる静電型トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
検出領域または駆動領域としての少なくとも1つの対象領域を含むように配置される絶縁体シートと、
導電性フィラーを含むエラストマーにより形成され、かつ、前記絶縁体シートに積層された電極シートであり、少なくとも、前記1つの対象領域を構成する1つの電極シート本体、および、前記1つの電極シート本体の縁における異なる位置に配置される複数の端子部を備える前記電極シートと、
一端が前記複数の端子部のそれぞれに接続されかつ電気的に接続され、他端が相互に接続されかつ電気的に接続される複数の端子接続配線部と、
前記複数の端子接続配線部の他端同士の接続位置から1つの入出力端を構成する結合配線部と、
を備える、静電型トランスデューサにある。
本発明の他の態様は、検出領域または駆動領域としての少なくとも1つの対象領域を含むように配置される絶縁体シートと、
導電性フィラーを含むエラストマーにより形成され、前記絶縁体シートに積層された電極シートであり、少なくとも、独立して配置された複数の分割電極シート、および、前記複数の分割電極シートのそれぞれの縁に少なくとも1つずつ配置される複数の端子部を備える前記電極シートと、
一端が前記複数の端子部のそれぞれに接続されかつ電気的に接続され、他端が相互に接続されかつ電気的に接続される複数の端子接続配線部と、
前記複数の端子接続配線部の他端同士の接続位置から1つの入出力端を構成する結合配線部と、
を備え、
前記対象領域は、長尺状に形成され、
前記複数の分割電極シートは、前記対象領域の長手方向に並んで配置され、
前記対象領域を構成する前記複数の分割電極シートのそれぞれは、前記対象領域の長手方向と同一方向に長手方向となる長尺状に形成され、
前記複数の分割電極シートのそれぞれの縁に配置される前記端子部は、前記複数の分割電極シートのそれぞれの長手方向の中央部に配置される、静電型トランスデューサにある。
【0010】
電極シートは、導電性フィラーを有するエラストマーにより形成されているため、金属シートや導電性布に比べて柔軟性を有する。従って、静電型トランスデューサを取付対象に取り付ける際に、取付性が良好となる。
【0011】
ただし、電極シートは、導電性フィラーを含むエラストマーにより形成されているため、金属シートや導電性布に比べると電気抵抗率が大きくなる。しかし、上述した静電型トランスデューサを構成する電極シートは、1つの対象領域を構成すると共に複数の端子部を備える。そして、複数の端子部は、対応する端子接続配線部のそれぞれに電気的に接続され、複数の端子接続配線部は、1つの入出力端を構成する結合配線部に電気的に接続されている。つまり、1つの対象領域を構成する電極シートは、複数の端子部および複数の端子接続配線部を介して、1つの結合配線部に電気的に接続されている。このように、1つの対象領域は、複数の経路によって、1つの結合配線部に接続されている。
【0012】
従って、任意の位置が、ある端子部から遠い位置であっても、他の端子部から近い位置に位置させることが可能となる。そして、当該任意の位置において、静電型センサとしての検出精度、および、静電型アクチュエータとしての駆動精度は、当該任意の位置と複数の端子部の何れかの端子部との間における電気抵抗に依存する。つまり、位置に応じた電気抵抗の差を小さくすることができる。結果として、検出精度および駆動精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】トランスデューサの全体構成を示す図である。
【
図2】第一例のトランスデューサにおける1つの対象領域に関する部分の構成図である。
【
図3】第一例のトランスデューサを構成する静電シートおよび基材の部分を示す縦断面図であって、
図2のIII-III断面図である。
【
図4】第二例のトランスデューサにおける1つの対象領域に関する部分の構成図である。
【
図5】第三例のトランスデューサにおける1つの対象領域に関する部分の構成図である。
【
図6】第四例の静電シートおよび基材の部分の縦断面図であって、
図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.適用対象)
静電型トランスデューサ(以下、「トランスデューサ」と称する)は、例えば、基材と、基材の取付面に取り付けられた静電シートとを備える。基材は、任意の部材であって、金属、樹脂、その他の材料により形成される。
【0015】
また、基材の取付面は、曲面、複合平面、平面と曲面の複合形状などの三次元形状に形成されてもよいし、基材の表面が単一平面形状に形成されてもよい。基材が可撓性を有する材料により形成されている場合に、当該基材の取付面に当該静電シートを取り付けることもできる。また、トランスデューサは、基材を備えることなく、当該静電シート単体として利用することもできる。
【0016】
静電シートは、一対の電極の間の静電容量の変化を利用して、振動や音などを発生させるアクチュエータとして機能させることができる。また、静電シートは、電極との間の静電容量の変化を利用して、外部からの押込力などを検出するセンサ、電位を有する導電体の接触または接近を検出するセンサとして機能させることができる。
【0017】
静電シートがアクチュエータとして機能する場合には、一対の電極に電圧が印加されることにより、一対の電極の間の電位に応じて絶縁体が変形し、絶縁体の変形に伴って振動が発生する。静電シートが押込力検出センサとして機能する場合には、外部からの押込力や振動や音などの入力に起因して絶縁体が変形することにより一対の電極の間の静電容量が変化し、一対の電極の間の静電容量に応じた電圧を検出することで、外部からの押込力などを検出する。
【0018】
また、静電シートが接触接近センサとして機能する場合には、電位を有する導電体の接触または接近により、電極と導電体との間の静電容量が変化し、変化した電極との間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触または接近を検出する。また、静電シートが接触接近センサとして機能する場合には、上記の他に、電位を有する導電体の接触または接近により、一対の電極の間の静電容量が変化し、変化した一対の電極の間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触または接近を検出することもできる。
【0019】
トランスデューサは、例えば、ポインティングデバイスであるマウスやジョイスティックの表面、車両部品の表面などに適用できる。車両部品としては、アームレスト、ドアノブ、シフトレバー、ステアリングホイール、ドアトリム、センタートリム、センターコンソール、天井などが含まれる。多くの場合、基材は、金属や硬質樹脂などの可撓性を有しない材料により形成されている。そして、トランスデューサは、対象者の状態の検出や対象者への振動などの付与を行うことができる。
【0020】
また、トランスデューサは、シート座面の表層側に配置されるようにしてもよい。この場合、トランスデューサは、樹脂フィルムなどの可撓性を有する材料により形成された基材に、静電シートを取り付けるように構成してもよい。また、トランスデューサは、基材を備えずに、静電シート単体により構成されるようにしてもよい。
【0021】
また、トランスデューサの静電シートは、ヒータ機能を有する構成とすることもできる。この場合、トランスデューサは、対象者の状態の検出や対象者への振動などの付与に加えて、対象者への熱の付与を行うことができる。
【0022】
(2.トランスデューサの全体構成)
トランスデューサ1の一例の全体構成について、
図1を参照して説明する。トランスデューサ1は、少なくとも、静電シート10と、処理装置30と、配線部50とを備える。
図1においては、トランスデューサ1は、さらに、基材20を備える場合を例に挙げる。ただし、トランスデューサ1は、基材20を備えない構成とすることもできる。なお、以下において、静電シート10と基材20とのユニットを、トランスデューサ本体と称する。
【0023】
基材20は、
図1においては、長尺状に形成されている場合を例に挙げる。基材20の形状は、上述したように任意の形状とすることができる。基材20は、金属や樹脂などの任意の材料により形成されている。
【0024】
静電シート10は、基材20の取付面(表面)に配置されている。静電シート10は、全体として弾性変形可能であって、柔軟性を有する。静電シート10は、主として、エラストマーにより形成されている。そして、基材20の取付面が三次元曲面であっても、静電シート10は、基材20の曲面状の取付面に沿って取り付けることができる。特に、静電シート10を面方向に伸張させながら基材20の取付面に取り付けることで、静電シート10にしわが発生することを抑制することができる。
【0025】
静電シート10は、少なくとも1つの対象領域(10a,10b)を備える。静電シート10は、複数の対象領域(10a,10b)を備えるようにしてもよい。
図1においては、静電シート10は、2つの対象領域10a,10bを備える。ここで、第一の対象領域10aは、トランスデューサ1がセンサである場合には1つの検出領域として機能し、トランスデューサ1がアクチュエータである場合には1つの駆動領域として機能する。第二の対象領域10bも、第一の対象領域10aと同様である。
【0026】
静電シート10は、基材20に対応するように長尺状に形成されている。さらに、複数の対象領域10a,10bは、基材20の長手方向に並んで配置されている。また、それぞれの対象領域10a,10bの形状は、基材20の長手方向を長手方向とする長尺状に形成されている。なお、静電シート10は、基材20の幅方向(短手方向)に分割して配置してもよいし、基材20の長手方向および幅方向に分割して配置してもよい。静電シート10の形状は、適宜、任意の形状に形成することができる。
【0027】
処理装置30は、トランスデューサ1がセンサである場合には、静電シート10に電力を供給した場合に静電シート10から電圧または電流を取得し、取得した電圧または電流に基づいて対象動作の検出演算を行う。また、処理装置30は、トランスデューサ1がアクチュエータである場合には、静電シート10を駆動させるために供給する電力の演算を行い、演算した電力を静電シート10に供給する処理を行う。
【0028】
配線部50は、静電シート10と処理装置30とを電気的に接続する配線である。複数の対象領域10a,10bが存在する場合には、配線部50は、それぞれの対象領域10a,10bと処理装置30とを接続する。すなわち、
図1に示すように、配線部50は、第一の対象領域10aと処理装置30とを接続する第一の配線部50aと、第二の対象領域10bと処理装置30とを接続する第二の配線部50bとを備える。
【0029】
(3.第一例のトランスデューサ1の詳細構成)
第一例のトランスデューサ1の詳細構成について、
図2および
図3を参照して説明する。トランスデューサ1は、静電シート10と、基材20と、処理装置30と、配線部50とを備える。
【0030】
静電シート10は、少なくとも、絶縁体シート11と、第一電極シート12とを備える。
図2および
図3においては、静電シート10は、さらに、第二電極シート14を備える場合を例に挙げる。ただし、静電シート10は、第二電極シート14を備えない構成とすることもできる。
【0031】
絶縁体シート11は、エラストマーにより形成されている。従って、絶縁体シート11は、弾性変形可能である。絶縁体シート11は、例えば、熱可塑性エラストマーにより形成されている。絶縁体シート11は、熱可塑性エラストマー自身により形成されるようにしてもよいし、熱可塑性エラストマーを素材として加熱することによって架橋されたエラストマーにより形成されるようにしてもよい。
【0032】
ここで、絶縁体シート11は、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系などのエラストマーから、1種以上を選択可能である。例えば、スチレン系エラストマーとしては、SBS、SEBS、SEPSなどが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、EEA、EMA、EMMAなどの他、エチレンとαオレフィンとの共重合体(エチレン-オクテン共重合体)などが挙げられる。
【0033】
絶縁体シート11は、熱可塑性エラストマー以外のゴム、樹脂を含んでいてもよい。例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴムを含む場合には、絶縁体シート11の柔軟性が向上する。絶縁体シート11の柔軟性を向上させるという観点から、絶縁体シートに可塑剤などの柔軟性付与成分を含有させてもよい。
【0034】
第一電極シート12は、絶縁体シート11の表面(
図3の上面)側に積層されている。また、第一電極シート12は、導電性を有しつつ、柔軟性および面方向への伸縮性を有する。第一電極シート12は、導電性エラストマーにより形成されている。すなわち、第一電極シート12は、導電性フィラーを含むエラストマーにより形成されている。
【0035】
第一電極シート12に用いられるエラストマーは、絶縁体シート11と主成分を同種とする材料により形成されるようにするとよい。すなわち、第一電極シート12は、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、エステル系、アミド系などのエラストマーから、1種以上を選択可能である。例えば、スチレン系エラストマーとしては、SBS、SEBS、SEPSなどが挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、EEA、EMA、EMMAなどの他、エチレンとαオレフィンとの共重合体(エチレン-オクテン共重合体)などが挙げられる。
【0036】
ただし、第一電極シート12は、絶縁体シート11よりも高い軟化点を有するようにされている。これは、絶縁体シート11自身の融着(熱融着)により絶縁体シート11に第一電極シート12を固着する際に、絶縁体シート11が第一電極シート12より先に軟化することができるようにするためである。
【0037】
1つの第一電極シート12は、
図1に示す1つの対象領域10aを構成する。なお、別の対象領域10bについては、別の第一電極シート12が構成する。第一電極シート12は、1つの第一電極シート本体12aと、複数の端子部12b,12dとを備える。第一電極シート本体12aが、1つの対象領域10aに一致する形状に形成されている。従って、第一電極シート本体12aは、長尺状に形成されている。
【0038】
複数の端子部12b,12dは、第一電極シート12の長手方向の異なる位置にそれぞれ配置されている。本例においては、1つの第一電極シート12は、2つの端子部(第一端子部12bおよび第二端子部12d)を備える場合を例に挙げるが、3つ以上の端子部を備えるようにしてもよい。
【0039】
図2に示すように、第一端子部12bは、第一電極シート12の長手方向の第一端(
図2の右端)側に配置されている。特に、第一端子部12bは、第一電極シート12の長手方向の第一端側の縁に配置されている。第二端子部12dは、第一電極シート12の長手方向の第二端(
図2の左端)側に配置されている。特に、第二端子部12dは、第一電極シート12の長手方向の第二端側の縁に配置されている。なお、第一電極シート12の長手方向の中央部に、さらに1以上の端子部を追加することもできる。
【0040】
ここで、
図2において、複数の端子部12b,12dは、第一電極シート本体12aから外側(幅方向外側)に突出した部位としたが、矩形に形成された第一電極シート本体12aの周縁とすることもできる。すなわち、第一電極シート12は、矩形に形成されるようにしてもよい。
【0041】
第一電極シート12は、絶縁体シート11自身の融着(熱融着)により絶縁体シート11に固着されている。さらには、第一電極シート12自身の融着(熱融着)により、第一電極シート12と絶縁体シート11とが固着されている。つまり、第一電極シート12と絶縁体シート11とは、相互の融着によって固着されている。
【0042】
第二電極シート14(反対面電極シート)は、絶縁体シート11の裏面(
図3の下面)側、すなわち絶縁体シート11における第一電極シート12とは反対面に積層されている。つまり、第二電極シート14は、絶縁体シート11と基材20との間に配置されている。第二電極シート14は、第一電極シート12と同様に形成されている。
【0043】
1つの第二電極シート14は、1つの第一電極シート12に全面に亘って対向配置されている。つまり、1つの第二電極シート14は、
図1に示す1つの対象領域10aを構成する。なお、別の対象領域10bについては、別の第二電極シート14が構成する。第二電極シート14は、1つの第二電極シート本体14aと、複数の端子部14b,14dとを備える。
【0044】
図2に示すように、第二電極シート14において、第一端子部14bは、第二電極シート14の長手方向の第一端(
図2の右端)側に配置されている。特に、第一端子部14bは、第二電極シート14の長手方向の第一端側の縁に配置されている。第二端子部14dは、第二電極シート14の長手方向の第二端(
図2の左端)側に配置されている。特に、第二端子部14dは、第二電極シート14の長手方向の第二端側の縁に配置されている。なお、第二電極シート14の長手方向の中央部に、さらに1以上の端子部を追加することもできる。
【0045】
配線部50を構成する第一の配線部50aは、対象領域10aを構成する第一電極シート12における複数の端子部12b,12dと処理装置30とを電気的に接続する配線である。第二の配線部50bは、第一の配線部50aと同様である。配線部50は、絶縁体シート11上に配置される配線と、絶縁体シート11の外部に設けられた配線とにより構成される。また、配線部50が絶縁体シート11の外部に設けられる配線である場合において、配線部50は、ケーブル配線により構成される場合と、回路基板内に形成される配線パターンである場合とを含む。
【0046】
配線部50は、第一電極シート12に接続される配線部として、複数の端子接続配線部51,52と、結合配線部53とを備える。端子接続配線部51,52の数は、第一電極シート12の端子部12b,12dの数と同数である。本例においては、第一電極シート12が2つの端子部12b,12dを備えるため、配線部50は、2つの端子接続配線部51,52を備える。
【0047】
複数の端子接続配線部51,52は、一端が複数の端子部12b,12dのそれぞれに電気的に接続され、他端が相互に電気的に接続される。つまり、第一端子接続配線部51の一端が、第一端子部12bに接続され、第二端子接続配線部52の一端が、第二端子部12dに接続される。そして、第一端子接続配線部51の他端と第二端子接続配線部52の他端とが、接続される。ここで、第一端子接続配線部51は、全部が絶縁体シート11上に配置される配線としてもよいし、一部が絶縁体シート11上に配置され、且つ、残りの一部が絶縁体シート11の外部に設けられた配線としてもよい。
【0048】
結合配線部53は、複数の端子接続配線部51,52の他端同士の接続位置から1つの入出力端を構成し、処理装置30に接続される。処理装置30が回路基板に形成される場合において、結合配線部53の全部が、処理装置30を含む回路基板の外部に設けられる配線としてもよい。また、結合配線部53の一部が、処理装置30を含む回路基板内に形成され、残りの一部が回路基板の外部に設けられる配線としてもよい。この場合、複数の端子接続配線部51,52の他端は、回路基板の外部で接続される。
【0049】
また、結合配線部53の全部が、処理装置30を含む回路基板内に形成される配線としてもよい。この場合、複数の端子接続配線部51,52の一部が、回路基板の外部に設けられ、残りの一部が、回路基板内に形成される。つまり、複数の端子接続配線部51,52の他端は、回路基板内にて接続される。
【0050】
また、配線部50は、第二電極シート14に接続する配線部として、複数の端子接続配線部56,57(反対面端子接続配線部)と、結合配線部58(反対面結合配線部)とを備える。端子接続配線部56,57の数は、第二電極シート14の端子部14b,14dの数と同数である。本例においては、第二電極シート14が2つの端子部14b,14dを備えるため、配線部50は、2つの端子接続配線部56,57を備える。
【0051】
複数の端子接続配線部56,57は、一端が複数の端子部14b,14dのそれぞれに電気的に接続され、他端が相互に電気的に接続される。つまり、第一端子接続配線部56の一端が、第一端子部14bに接続され、第二端子接続配線部57の一端が、第二端子部14dに接続される。そして、第一端子接続配線部56の他端と第二端子接続配線部57の他端とが、接続される。結合配線部58は、複数の端子接続配線部56,57の他端同士の接続位置から1つの入出力端を構成し、処理装置30に接続される。
【0052】
なお、複数の端子接続配線部56,57および結合配線部58は、複数の端子接続配線部51,52および結合配線部53と同様に、絶縁体シート11上に配置される配線である場合、ケーブル配線により構成される場合、回路基板内に形成される配線パターンである場合の何れかを含む。
【0053】
(4.第一例のトランスデューサ1による効果)
第一電極シート12は、導電性フィラーを有するエラストマーにより形成されているため、金属シートや導電性布に比べて柔軟性を有する。第二電極シート14も同様である。従って、トランスデューサ1を基材20に取付対象に取り付ける際に、取付性が良好となる。
【0054】
ただし、第一電極シート12は、導電性フィラーを含むエラストマーにより形成されているため、金属シートや導電性布に比べると電気抵抗率が大きくなる。ここで、第一電極シート12単体において、第一端子部12bと第一端子部12bに近い位置P1(
図2に示す)との間の電気抵抗は、小さい。しかし、第一電極シート12単体において、第一端子部12bと第一端子部12bから遠い位置P2(
図2に示す)との間の電気抵抗は、大きくなる。当然に、第一電極シート12単体において、第一端子部12bと第一電極シート12の長手方向の中間に位置する位置P3(
図2に示す)との間の電気抵抗は、中間程度となる。
【0055】
しかし、第一電極シート12は、1つの対象領域10aを構成すると共に複数の端子部12b,12dを備える。つまり、位置P2は、第一端子部12bからは遠いが、第二端子部12dからは近い。従って、第一電極シート12単体において、位置P2は、第一端子部12bとの間の電気抵抗は大きいが、第二端子部12dとの間の電気抵抗は小さくなる。
【0056】
そして、複数の端子部12b,12dは、対応する端子接続配線部51,52のそれぞれに電気的に接続され、複数の端子接続配線部51,52は、1つの入出力端を構成する結合配線部53に電気的に接続されている。つまり、1つの対象領域10aを構成する第一電極シート12は、複数の端子部12b,12dおよび複数の端子接続配線部51,52を介して、1つの結合配線部53に電気的に接続されている。このように、1つの対象領域10aは、複数の経路によって1つの結合配線部53に接続されている。
【0057】
つまり、結合配線部53には、第一端子接続配線部51に流れる電流と第二端子接続配線部52に流れる電流とが合成された電流が流れる。従って、処理装置30にとって、第一電極シート12における位置P1と位置P2とは、いずれも端子部12b,12dの近傍に位置するため、実質の電気抵抗はほぼ同一となる。第一端子部12bおよび第二端子部12dから電気抵抗が最も大きくなる位置が、位置P3となる。
【0058】
従って、位置P2が、第一端子部12bから遠い位置であっても、第二端子部12dから近い位置に位置させることが可能となる。そして、第一電極シート12における任意の位置P1,P2,P3において、静電型センサとしての検出精度、および、静電型アクチュエータとしての駆動精度は、当該任意の位置P1,P2,P3と複数の端子部12b,12dの何れかの端子部との間における電気抵抗に依存する。つまり、位置に応じた電気抵抗の差を小さくすることができる。結果として、検出精度および駆動精度を向上させることができる。
【0059】
例えば、複数の端子接続配線部51,52の電気抵抗が同一とした場合、結合配線部53と位置P1との間の電気抵抗と、結合配線部53と位置P2との間の電気抵抗とは、同一となる。つまり、位置P1における検出精度または駆動精度と、位置P2における検出精度または駆動精度とは、同等となる。
【0060】
さらに、位置P3は、第一端子部12bからの距離も、第二端子部12dからの距離も同一である。つまり、位置P3が、第一端子部12bおよび第二端子部12dの何れかから最も遠い位置に位置することになる。換言すると、第一電極シート12において、最大の電気抵抗が、第一端子部12bと位置P3との間のものとなる。従って、仮に、第一電極シート12が第二端子部12dを備えない場合と比較した場合には、本例における最大の電気抵抗が半分となる。
【0061】
なお、第一電極シート12が、長手方向の両端に端子部12b,12dを備え、さらに長手方向の中間に1以上の端子部を備える場合には、第一電極シート本体12aを等間隔に2以上に分割し、両端および各分割位置に端子部を配置するとよい。分割数をMとした場合には、端子部の数は、両端の2個と、中間のM-1個となる。つまり、合計の端子部の数は、M+1個となる。この場合、各端子部から電気抵抗が最も大きくなる位置までの長さは、第一電極シート本体12aを分割した1つ当たりの長さの半分となる。従って、検出精度または駆動精度がより向上する。また、上記において第一電極シート12について説明したが、第二電極シート14(反対面電極シート)についても、同様の効果を奏する。
【0062】
(5.第二例のトランスデューサ2)
第二例のトランスデューサ2について、
図4を参照して説明する。第二例のトランスデューサ2において、第一例のトランスデューサ1と同一構成については同一符号を付す。
【0063】
第二例のトランスデューサ2において、第一電極シート12は、第一電極シート本体12aと、複数の端子部12e,12fとを備える。複数の端子部12e,12fは、第一電極シート12の長手方向の異なる位置にそれぞれ配置されている。本例においては、1つの第一電極シート12は、2つの端子部(第一端子部12bおよび第二端子部12d)を備える場合を例に挙げるが、3つ以上の端子部を備えるようにしてもよい。
【0064】
本例においては、
図4に示すように、第一端子部12eは、第一電極シート12の長手方向の第一端(
図4の右端)側に配置されている。特に、第一端子部12eは、第一電極シート12の長手方向の第一端側の縁から距離を有する位置に配置されている。第二端子部12fは、第一電極シート12の長手方向の第二端(
図4の左端)側に配置されている。特に、第二端子部12fは、第一電極シート12の長手方向の第二端側の縁から距離を有する位置に配置されている。なお、第一電極シート12の長手方向の中央部に、さらに1以上の端子部を追加することもできる。
【0065】
本例においては、第一電極シート本体12aを長手方向に4個の分割領域に等しく分割する。そして、第一電極シート本体12aは、隣り合う分割領域の分割位置を3個有している。第一端子部12eは、連続する3個の分割位置のうち第一端側の分割位置に配置される。第二端子部12fは、連続する3個の分割位置のうち第二端側の分割位置に配置される。つまり、3個の分割位置のうち両端側の2箇所に、第一端子部12eと第二端子部12fが配置され、中央の分割位置には、端子部12e,12fが配置されていない。
【0066】
この場合、第一端子部12eおよび第二端子部12dから電気抵抗が最も大きくなる位置が、位置P1,P2,P3のそれぞれとなる。つまり、電気抵抗が最も大きくなる位置までの長さが、第一電極シート12を4分割したときの1つ当たりの長さとなる。従って、端子部12e,12fから最も大きくなる電気抵抗を小さくすることができるため、検出精度または駆動精度を向上させることができる。
【0067】
ここで、第一電極シート12が長手方向の両端の縁に端子部を備えない場合には、以下のようにしてもよい。第一電極シート本体12aを長手方向にN個(Nは偶数)の分割領域に等しく分割したとき、第一電極シート本体12aは、隣り合う分割領域の分割位置を(N-1)個有している。複数の端子部は、(N-1)個の分割位置のうち、両端の2個の分割位置を含み、分割位置を1個飛ばしで配置され、N/2個配置されるようにしてもよい。このとき、複数の端子接続配線部は、複数の端子部と同数のN/2個配置されることになる。この場合、各端子部から電気抵抗が最も大きくなる位置までの長さは、第一電極シート本体12aを分割した1つ当たりの長さとなる。第二電極シート14も同様である。
【0068】
(6.第三例のトランスデューサ3)
第三例のトランスデューサ3について、
図5を参照して説明する。第三例のトランスデューサ3において、第二例のトランスデューサ2と同一構成については同一符号を付す。
【0069】
第三例のトランスデューサ3は、第二例のトランスデューサ2において第一電極シート本体12aを長手方向に分割した場合に、端子部を配置しない分割位置にて、第一電極シート12を分断させた構成を有する。分断させる数は、適宜設定可能である。第二電極シート14についても同様である。
【0070】
すなわち、トランスデューサ3において、第一電極シート12は、1つの対象領域10aを構成すると共に独立して配置された複数の第一分割電極シート12g,12hを備える。そして、複数の端子部12e,12fのそれぞれは、複数の第一分割電極シート12g,12hのそれぞれに配置される。
【0071】
詳細には、第一電極シート12は、第一分割電極シート12gと第一端子部12eとを備えるシートと、第一分割電極シート12hと第二端子部12dとを備えるシートとにより構成される。第二電極シート14は、第二分割電極シート14gと第一端子部14eとを備えるシートと、第二分割電極シート14hと第二端子部14dとを備えるシートとにより構成される。
【0072】
第三例のトランスデューサ3は、実質的に、第二例のトランスデューサ2と同様の効果を奏する。つまり、第一電極シート本体12aを長手方向にL個(Lは2以上の整数)に等しく分断した場合に、端子部は、分断された各領域の長手方向の中央部に配置することになる。第二電極シート14も同様である。
【0073】
(7.第四例のトランスデューサ4)
第四例のトランスデューサ4について、
図6を参照して説明する。
図6に示すように、トランスデューサ4は、静電シート10と、基材20と、静電シート10の裏面と基材20の表面との間に配置されたヒータシート40と、処理装置30とを備える。つまり、トランスデューサ4は、センサまたはアクチュエータの機能に加えて、ヒータ機能を有する。
【0074】
ここで、静電シート10は、上記トランスデューサ1,2,3における静電シート10を適用することができる。ただし、静電シート10を構成する絶縁体シート11は、ヒータシート40の熱を静電シート10の表面に伝達できるようにすることと、耐熱性を確保するために、以下の材料により形成するとよい。
【0075】
絶縁体シート11の熱伝導率は、0.3W/m・K以上である。好適な熱伝導率は、0.4W/m・K以上、さらには0.5W/m・K以上である。絶縁体シート11は、熱伝導率が比較的大きく、かつ絶縁性の無機フィラーを有することが望ましい。絶縁体シート11の熱伝導率を大きくするために用いる無機フィラー(熱伝導性フィラー)の好適な熱伝導率は、5W/m・K以上、好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。熱伝導率が比較的大きい無機フィラーとしては、金属系フィラー、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどが挙げられる。金属系フィラーの他に、窒化ホウ素、炭化ケイ素なども、熱伝導率が比較的大きい無機フィラーとして用いることができる。
【0076】
また、絶縁体シート11に難燃性を付与するという観点から、絶縁体シート11は、難燃性かつ絶縁性の無機フィラーを有することが好ましい。難燃性フィラーとしては、水酸化物フィラー、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。水酸化物フィラーの他に、窒化ホウ素なども、難燃性フィラーとして用いることができる。また、難燃性フィラーを、絶縁体シート11の熱伝導率を大きくするために用いる無機フィラー(熱伝導性フィラー)として兼用させることもできる。
【0077】
また、絶縁体シート11の絶縁性を確保するという観点から、絶縁体シート11の体積抵抗率は、1×1012Ω・cm以上である。好適な体積抵抗率は、1×1013Ω・cm以上である。
【0078】
ヒータシート40は、静電シート10の裏面側、すなわち、第二電極シート14の裏面側に配置されている。ヒータシート40は、ヒータ線41と、ヒータ線41を被覆するヒータ絶縁層42とを備える。ヒータ線41は、金属の合金系材料であり、例えば、ニッケルクロム、鉄クロムなどである。ヒータ線41は、シート状となるように、例えば、線材を往復に形成したり、渦巻き状に巻回したりして形成されている。
【0079】
ヒータ絶縁層42は、ヒータ線41を囲み、ヒータ線41が露出しないように配置されている。ヒータ絶縁層42は、絶縁体シート11と同様の材料により形成されるとよい。さらに、ヒータ絶縁層42の表面側の一部分が、自身の融着(熱融着)により、第二電極シート14の裏面に固着される。さらに、ヒータ絶縁層42の表面側は、絶縁体シート11の裏面露出面にも、自身の融着により固着される。また、ヒータ絶縁層42の裏面側の一部分が、自身の融着(熱融着)により、基材20の取付面に固着される。
【0080】
トランスデューサ4は、ヒータ機能を有することから、対象者の状態の検出や対象への振動などの付与に加えて、対象者への熱の付与を行うことができる。特に、絶縁体シート11およびヒータ絶縁層42の熱伝導率を上記のようにすることで、ヒータ線41の熱を、静電シート10の表面に伝達することができる。また、絶縁体シート11およびヒータ絶縁層42が難燃性フィラーを有することで、耐熱効果を向上させることができる。
【0081】
また、ヒータ線41に電力を供給することに伴って、ヒータ線41がノイズ発生源となるおそれがある。しかし、第二電極シート14は、ヒータ線41に対して高いシールド機能を発揮する。つまり、ヒータ線41に供給される電力によってノイズを発生したとしても、第二電極シート14がシールド機能を発揮することができる。その結果、トランスデューサ4は、センサとしての検出精度やアクチュエータとしての動作精度を良好とすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3、4:静電型トランスデューサ、10:静電シート、10a,10b:対象領域、11:絶縁体シート、12:第一電極シート、12a:第一電極シート本体、12b,12e:第一端子部、12d,12f:第二端子部、12g,12h:第一分割電極シート、14:第二電極シート、14a:第二電極シート本体、14b,14e:第一端子部、14d,14f:第二端子部、14g:第二分割電極シート、14h:第二分割電極シート、20:基材、30:処理装置、40:ヒータシート、41:ヒータ線、42:ヒータ絶縁層、50,50a,50b:配線部、51,56:第一端子接続配線部、52,57:第二端子接続配線部、53,58:結合配線部