(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20230726BHJP
G01S 3/48 20060101ALI20230726BHJP
H04W 8/24 20090101ALI20230726BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20230726BHJP
H04B 7/06 20060101ALN20230726BHJP
H04B 7/08 20060101ALN20230726BHJP
【FI】
H04W24/02
G01S3/48
H04W8/24
H04W16/28
H04B7/06 040
H04B7/08
(21)【出願番号】P 2019152930
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】山下 誠
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-034815(JP,A)
【文献】特開2009-212771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0084386(US,A1)
【文献】国際公開第2019/009020(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/022180(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0219371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
G01S 3/48
H04B 7/06
H04B 7/08
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファームウェアに関連する信号を送信する第1無線通信装置と、
前記第1無線通信装置から送信される電波に基づいて、第1無線通信装置からの送信角度を演算し、演算した送信角度が所定の角度である場合に、前記ファームウェアのアップデートを実行する第2無線通信装置と、
を備え、
前記第1無線通信装置は、
複数のアンテナを有する第1アンテナ部と、
前記複数のアンテナそれぞれから電波を送信する第1通信部と、
を有し、
前記第2無線通信装置は、
前記複数のアンテナそれぞれから送信される前記各電波の位相差に基づき、前記送信角度を演算する角度演算部と、
を有し、
前記角度演算部は、前記第1無線通信装置からの前記ファームウェアの受信終了後に、前記複数のアンテナから送信される前記電波の位相差に基づき前記送信角度を再演算し、
前記第2無線通信装置は、
前記再演算した角度が所定の送信角度である場合に、前記ファームウェアのアップデートを実行するファームウェア処理部を、更に有する、無線通信システム。
【請求項2】
トリガ信号を含む電波信号を受信するアンテナ部と、
トリガ信号を受信したことを判定する信号処理部と、
ファームウェアを格納するファームウェア格納部と、
前記信号処理部が前記トリガ信号を受信した場合に、
前記ファームウェアを送信した無線通信装置の複数のアンテナそれぞれから送信される複数の電波間の位相差に基づいて、送信元からの送信角度を演算する角度演算部と、
前記演算した角度が所定の送信角度である場合に、送信元からの受信情報に基づき前記ファームウェアをファームウェア格納部に格納するファームウェア処理部と、
を備え、
前記角度演算部は、前記ファームウェアの受信終了後に、前記複数のアンテナ
それぞれから送信される各電波の位相差に基づき前記送信角度を再演算し、
前記ファームウェア処理部は、前記再演算した角度が所定の送信角度である場合に、前記ファームウェアのアップデートを実行する、無線通信装置。
【請求項3】
電波に基づき演算した送信角度が所定の角度であるか否かを判定する第1工程と、
前記送信角度が所定の角度である場合に、前記送信角度で送信されたファームウェアをファームウェア格納部に格納する第2工程と、
前記ファームウェアの受信終了後に、
前記ファームウェアを送信した無線通信装置の複数のアンテナ
それぞれから送信される各電波の位相差に基づき前記送信角度を再演算する第3工程
と、
前記再演算した角度が所定の送信角度である場合に、前記ファームウェアのアップデートを実行する第4工程と、
を備える無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、OTA(Over The Air)と呼ばれる無線通信方法を用いて、機器内部のファームウェアの書き換えを行うことが可能な電子機器が増えている。ところが、そのファームウェアのアップデートを行うに際して、第三者により故意に、或いはユーザ自身が誤って、目的としないファームウェアが書き込まれる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明が解決しようとする課題は、目的としないファームウェアが書き込まれることを抑制可能な無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態によれば、無線通信システムであって、第1無線通信装置と、第2無線通信装置と、を備える。第1無線通信装置は、ファームウェアに関連する信号を送信する。第2無線通信装置は、第1無線通信装置から送信される電波に基づいて、第1無線通信装置からの送信角度を演算し、演算した送信角度が所定の角度である場合に、ファームウェアのアップデートを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態による無線通信システムの概略構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態による第1無線通信装置の詳細な構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態による第1無線通信装置のアンテナ部の構成例を示す図。
【
図4】実施形態による第2無線通信装置の詳細な構成を示すブロック図。
【
図5】特定の2基のアンテナと受信アンテナとの配置例を示す図。
【
図6】本実施形態の第2無線通信装置の判定部の判定処理の一例を説明するための図。
【
図7】ファームウェアがアップデートされる側のフローチャート。
【
図8】ファームウェアをアップデートする側のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態に係る無線通信システム、無線通信装置、及び無線通信方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0008】
(一実施形態)
図1は、無線通信システム1の構成を示すブロック図である。無線通信システム1は、第1無線通信装置100と、第2無線通信装置200とを、備える。無線通信システム1は、第1無線通信装置100から第2無線通信装置200への無線通信を用いて、第2無線通信装置200におけるファームウェアのアップデートを行うことが可能なシステムである。尚、
図1の紙面に鉛直な方向をZ方向、このZ方向に対し垂直で互いに垂直な方向をX方向およびY方向と定義する。
【0009】
第1無線通信装置100は、例えば4基のアンテナを備え、これらアンテナを切り替えながら2.4ギガヘルツ帯の電波を送信する。この第1無線通信装置100は、ファームウェアの更新(書き換え(含む新規)、バージョンアップ等)と、送信角度の演算に必要とされる情報を含む信号を送信する。より詳細な構成は後述する。
【0010】
第2無線通信装置200は、例えば、前記第1無線通信装置100の4基のアンテナから送信される電波毎の位相を測定し、それらの位相差に基づき送信角度(Angle of Detection:AoD)θを演算する。この第2無線通信装置200は、送信角度θが所定の角度である場合に、受信したファームウェアに基づき、ファームウェアのアップデートを実行する。より詳細な構成は後述する。なお、本実施形態では、ファームウェアを新規に格納又は記憶すること、及び、既存のファームウェアをより新しいものに書き換えること(バージョンアップを含む)の少なくとも一つを、アップデートと呼ぶこととする。
【0011】
図2は、第1無線通信装置100の詳細な構成を示すブロック図である。第1無線通信装置100は、アップデートするファームウェアを送信する側の電子機器であり、第1記憶部102と、第1制御部104と、第1ファームウェア(FW)格納部106と、第1通信部108と、第1アンテナ部110とを、備える。
【0012】
第1記憶部102は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリにより構成される。第1記憶部102は、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。また、第1記憶部102は、第1制御部104を制御するためのファームウェア、及びプログラムを記憶する。
【0013】
第1制御部104は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成され、第1信号生成部104aと、第1信号処理部104bとを、有する。第1制御部104は、第1記憶部102に記憶されたファームウェア、及びプログラムを実行することにより第1無線通信装置100全体を制御する。
【0014】
第1信号生成部104aは、システム信号としてのトリガ信号を生成し、第1通信部108を介して送信する。また、第1信号生成部104aは、第1記憶部102に記憶される情報に基づき、送信角度を演算するために必要となる情報を生成し、第1通信部108を介して送信する。送信角度を演算するために必要な情報としては、アンテナ番号、各アンテナの間隔などの位置関係情報、アンテナ方向、アンテナの傾斜角度、送信電波の波長などの情報が含まれる。さらにまた、第1信号生成部104aは、送信角度を測定するための信号として、アンテナ別の計測信号を生成する。この計測信号は、例えば搬送波である。搬送波は、例えば2.4ギガヘルツ帯であり、80メガヘルツの帯域である。
【0015】
なお、第1信号生成部104aは、Bluetooth(登録商標)、特に規格5.1に準拠する送信を行う場合には、IQ(In-Phase and Quadrature)サンプリングを用いて、各アンテナから送信される電波の位相を計測し、その計測した値を含むCTE(Constant Tone Extension)という方位推定用のパケットを生成することも可能である。
尚、Bluetooth(登録商標)5.1は、方向探知機能を有する無線通信方式である。
【0016】
第1信号処理部104bは、第1通信部108を介して信号の送受信についての処理を行う。第1信号処理部104bは、例えば、第2無線通信装置200から受信した信号に、ファームウェア送信許可の情報が含まれている場合に、第1通信部108を介して第1ファームウェア格納部106内のファームウェアの情報を第2無線通信装置200に対して送信する。第2無線通信装置200では、第1無線通信装置100から受信した情報に従い、例えば、ファームウェアのアップデートを行う。
【0017】
第1ファームウェア格納部106は、フラッシュROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリにより構成される。第1ファームウェア格納部106は、第2無線通信装置200のファームウェアをアップデートするための各種のファームウェア及び必要情報を記憶する。第1ファームウェア格納部106は、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。
【0018】
第1通信部108は、第2無線通信装置に対する無線通信インタフェースとして、無線通信の制御を行う。例えば、第1通信部108は、Bluetooth規格、特にバージョン5.1に準拠した通信を行うことが可能である。この第1通信部108は第1アンテナ部110を制御して、無線通信のための無線信号の送受信を行う。
【0019】
第1アンテナ部110は、複数のアンテナから構成される。なお、本実施形態に係る第1アンテナ部110は、4本のアンテナを有するがこれに限定されない。
【0020】
図3は、第1アンテナ部110の構成例を示す図である。YZ平面上に配置され、Y方向もしくはZ方向に隣接する第1アンテナ部110の特定の2基のアンテナが、例えば距離d=λ/4の間隔で配置される。λは、第1アンテナ部110から送信される搬送波の波長である。搬送波が2.4ギガヘルツである場合、λは約12センチメートルであるので、dは約3センチメートルである。これら4基のアンテナは、例えば円偏波指向性アンテナである。すなわち、特定の2基のアンテナから送信される搬送波の位相差は、送信角度θが0から180度の範囲である場合に、基準とするアンテナにより、-π/2からπ/2、又はπ/2から-π/2の範囲で変化する。
【0021】
図4は、第2無線通信装置200の詳細な構成を示すブロック図である。第2無線通信装置200は、ファームウェアがアップデートされる側の電子機器であり、第2記憶部202と、第2制御部204と、第2ファームウェア格納部206と、第2通信部208と、第2アンテナ部210とを、備える。第2無線通信装置200は、例えばスマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、プリンタ、デジタルカメラ、携帯電話機、ゲーム機などである。
【0022】
第2記憶部202は、ROM、RAM、フラッシュメモリ等のメモリにより構成される。第2記憶部202は、第2制御部204のファームウェア、及びプログラムを記憶する。ファームウェアは、例えばフラッシュメモリなどに書き換え可能に記憶される。
【0023】
第2制御部204は、CPU、MPU等のプロセッサを含んで構成され、第2信号処理部204aと、角度演算部204bと、判定部204cと、ファームウェア(FW)処理部204dとを、有する。第2制御部204は、第2記憶部202に記憶されたファームウェア、及びプログラムを実行することにより第2無線通信装置200全体を制御する。第2制御部204の詳細は後述する。
【0024】
第2ファームウェア(FW)格納部206は、ROM、RAM等のメモリにより構成される。第2ファームウェア格納部206は、ファームウェアを格納する。例えば、第2ファームウェア格納部206は、後述する判定部204cの判定により、角度演算部204bが演算した送信角度が所定の角度である場合に、第1無線通信装置100から送信されたファームウェアを格納する。
【0025】
第2通信部208は、無線通信インタフェースとして、無線通信の制御を行う。例えば、第2通信部208も、Bluetooth規格、特にバージョン5.1に準拠した通信を行うことが可能である。この第2通信部208は第2アンテナ部210が、無線通信のために無線信号の送受信を行うのを制御する。
【0026】
第2アンテナ部210は、例えば1基のアンテナから構成される。なお、本実施形態に係る第2アンテナ部210は、1基のアンテナを有するがこれに限定されない。
【0027】
ここで、第2制御部204の詳細を説明する。
第2信号処理部204aは、第2アンテナ部を介して受信した信号を処理し、目的とする情報が信号に含まれるか否かを判定する。例えば、第2信号処理部204aは、受信した信号を処理し、第1無線通信装置100からファームウェアのアップデートのトリガ信号を受信したか否かを判定する。第2信号処理部204aは、トリガ信号が受信されたと判定すると、角度演算部204bに送信角度θの演算を開始させる指示を行う。また、第2信号処理部204aは、受信した信号を処理し、受信した信号にファームウェアが含まれるか否かを判定する。第2信号処理部204aは、ファームウェアが受信されたと判定すると、第2ファームウェア格納部206にファームウェアの格納を開始させる。
【0028】
図5は、第1アンテナ部110における水平方向に配置される特定の2基のアンテナとアンテナ210部のアンテナの配置例を示す図である。
図5に基づき、角度演算部204bの演算処理の一例を説明する。ここでは、第1アンテナ部110の特定の2基のアンテナが、
図3で示すようにY方向に距離d=λ/4だけ離れて配置される場合について説明する。
【0029】
角度演算部204bは、第1アンテナ部110の複数のアンテナから送信される電波の位相差に基づき送信角度を演算する。より具体的には、角度演算部204bは、Lメートル離れた2基のアンテナの角度をαとし、(1)式を演算する。上述のように電波は搬送波である。
【数1】
ΔLは、(2)式で示すように、第1アンテナ部110の特定の2基のアンテナと第2アンテナ部210の単一アンテナとの伝搬路長の差である。ΔPは、特定の2基のアンテナ間で搬送波の位相差である。d=λ/4であるので、ΔL/d=2ΔP/πとなる。そして、角度演算部204は、弧度法で演算した角度αを(3)式に従い、度数法の送信角度θに変換する。このように、d=λ/4波長、離れた2基のアンテナの搬送波の位相差により送信角度θを演算可能である。なお、4基のアンテナ内の特定の2基の位相差を組合せて、位相誤差の低減処理などを行うことも可能である。
【数2】
【数3】
【0030】
なお、角度演算部204bは、Bluetooth規格、特にバージョン5.1に準拠した送信角度演算を行うことが可能である。この場合、角度演算部204は、第1無線通信装置100から送信されたCTEを含むパケットを受信して計算を行う事が可能である。
【0031】
判定部204cは、第1無線通信装置100が目的とするファームウェアのアップデートを行う機器であるか否かを判定する。より具体的には、角度演算部204bが演算した送信角度θが、予め設定した所定の角度βである場合に、目的とするファームウェアのアップデートを行う機器であると判定する。一方で、角度演算部204bが演算した送信角度θが、予め設定した所定の角度βで無い場合に、目的外のファームウェアのアップデートを行う機器であると判定する。なお、判定部204cは、送信角度θが、例えばβ度±γ度以内であるか否かを判定しても良い。例えばβは90度であり、γは2度である。このように判定に±γ度の冗長性を持たせてもよい。なお、目的外のファームウェアのアップデートを行う機器には、不正にファームウェアのアップデートを行う機器が含まれる場合がある。
【0032】
判定部204cは、目的とするファームウェアのアップデートを行う機器であると判定する場合に、ファームウェア送信許可の情報を含むファームウェア送信許可信号を第1無線通信装置100に送信する。すなわち、ファームウェア送信許可信号は、第1アンテナ部110から送信される計測信号に基づき演算された送信角度θが、所定の角度である場合に送信される信号である。
【0033】
また、判定部204cは、複数回の判定を行ってもよい。例えば、ファームウェアの受信が終了した際の搬送波に基づき、角度演算部204bに送信角度演算を再度行わせ、再判定を行ってもよい。これにより、偶発的に第1無線通信装置100と、第2無線通信装置200が所定角度になる場合に、ファームウェアがアップデートされることを抑制できる。例えば、不正目的の第1無線通信装置100が瞬間的に所定角度に配置された場合に、不正にファームウェアがアップデートされることを抑制可能となる。
【0034】
ファームウェア処理部204dは、ファームウェアが第2ファームウェア格納部206内に記憶されると、第2記憶部202内のファームウェアを、第2ファームウェア格納部206に格納されたファームウェアにアップデートする。この場合、ファームウェア処理部204dは、判定部204cの再判定を待って、ファームウェアをアップデートしてもよい。
【0035】
以上が、無線通信システム1の構成の説明であるが、
図6乃至
図8に基づき、無線通信システム1の処理例を説明する。
図6は、判定部204cの判定処理の一例を示す図である。
図6に示すように、ファームウェアのアップデートを行う側の第1無線通信装置100a、100bが2台と、ファームウェアがアップデートされる側の第2無線通信装置200が1台の場合の例である。ここで、設定された送信角度θを90度±2度以内とする。
【0036】
第1無線通信装置100aは、目的とするファームウェアのアップデートを試みている機器である。一方、第1無線通信装置100bは、別のファームウェアのアップデートを試みている機器である。例えば、第2無線通信装置200は、工場内の搬送ラインを流れる電子機器である。第2無線通信装置200は、複数のファームウェアを第1無線通信装置100a、第1無線通信装置100bから順に受信し、受信した順にアップデートを試みる。
【0037】
第1無線通信装置100aから送信される搬送波に基づき角度演算部204bが演算した送信角θ1は90度である。一方で、第1無線通信装置100bから送信される搬送波に基づき角度演算部204bが演算した送信角θ2は40度である。
【0038】
判定部204cは、θ1=90度が90度±2度以内であるので、第1無線通信装置100aは正当な機器であると判定する。これにより、判定部204cは、ファームウェアの送信許可信号を第1無線通信装置100aに送信する。続けて、第2ファームウェア格納部206は、第1無線通信装置100aから送信されたファームウェアを格納する。一方で、判定部204cは、θ2=40度が90度±2度以内にないので、第1無線通信装置100bは、目的外の機器であると判定する。判定部204cは、ファームウェアの送信許可信号を第1無線通信装置100bに送信しない。また、判定部204cは、ファームウェアが第1無線通信装置100bから送信されても第2ファームウェア格納部206への格納を拒否する。
【0039】
第2無線通信装置200が搬送ラインを矢印200dの方向に移動し、θ2=90度±2度以内となると、判定部204cは、θ2が90度±2度以内であるので、第1無線通信装置100bは目的の機器であると判定する。これにより、判定部204cは、ファームウェアの送信許可信号を第1無線通信装置100bに送信する。続けて、第2ファームウェア格納部206は、第1無線通信装置100bから送信されたファームウェアを格納する。一方で、判定部204cは、θ1は90度±2度以内にないので、第1無線通信装置100aは、目的外の機器であると判定する。判定部204cは、ファームウェアの送信許可信号を第1無線通信装置100aに送信しない。判定部204cは、ファームウェアが第1無線通信装置100aから送信されても第2ファームウェア格納部206への格納を拒否する。このように、設定された送信角度に基づき、複数のファームウェアを順にアップデートすることが可能である。
【0040】
搬送ラインにより搬送される第2無線通信装置200のファームウェアを順にアップデートする場合、設定角度β度±γ度のγ度をファームウェアの送信時間、搬送ラインの速度、及び第1無線通信装置100a、100bと第2無線通信装置200との距離に応じて設定する。これにより、移動中の第2無線通信装置200のアップデートをより高精度に行うことが可能である。
【0041】
図7はファームウェアのアップデートが行われる第2無線通信装置200におけるファームウェアのアップデート処理例を示すフローチャートである。ここでは、判定部204cが2回の判定処理を行う場合について説明する。
【0042】
まず、第2信号処理部204aは、受信した信号の処理を行う(ステップS100)。続けて、第2信号処理部204aは、第1無線通信装置100からファームウェアップデートのトリガ信号を受信したか否かを判定する(ステップS102)。第2信号処理部204aがトリガ信号を受信したと判定した場合(ステップS102のYES)、角度演算部204bは、受信した電波に基づき、送信角度θを演算する(ステップS104)。一方で、第2信号処理部204aがトリガ信号を受信したと判定しない場合(ステップS104のNO)、ステップS100からの処理を繰り返す。
【0043】
判定部204cは、演算した送信角度θが設定した角度か否かを判定する(ステップS106)。送信角度が設定した角度と判定する場合(ステップS106のYES)、判定部204cは、第1無線通信装置100が正しいファームウェアアップデートを行う機器であると判定し、ファームウェア送信許可信号を第1無線通信装置100に送信する(ステップS108)。
【0044】
第2号処理部204aは、受信した信号の処理を行う(ステップS110)。続けて、第2信号処理部204aは、受信した信号にファームウェアが含まれるか否かを判定する(ステップS112)。受信した信号にファームウェアが含まれると判定した場合(ステップS112のYES)、第2信号処理部204aは、第2ファームウェア格納部206にファームウェアの格納を開始させる指示を行い、第2ファームウェア格納部206は、ファームウェアを格納する(ステップS114)。一方で、受信した信号にファームウェアが含まれないと判定した場合(ステップS112のNO)、ステップS110からの処理を繰り返す。
【0045】
第2ファームウェア格納部206のファームウェア保存処理が終了すると、角度演算部204bは、受信した電波に基づき、送信角度を再演算する(ステップS116)。
【0046】
判定部204cは、再演算した送信角度が設定した角度か否かを判定する(ステップS118)。送信角度が設定した角度であると判定する場合(ステップS118のYES)、ファームウェア処理部204dは、第2記憶部202内のファームウェアを、第2ファームウェア格納部206に格納されたファームウェアにアップデートし(ステップS122)、全体処理を終了する。一方で、送信角度が設定した角度でないと判定する場合(ステップS118のNO)、判定部204cは、第2ファームウェア格納部206内に新たに格納したファームウェアの削除処理を行い(ステップS120)、ステップS100からの処理を繰り返す。
【0047】
このように、判定部204cが、送信角度が設定した角度であると判定すると、ファームウェアを第2ファームウェア格納部206に格納する。そして、判定部204cが、再演算した送信角度が設定した角度であると判定すると、第2記憶部202内のファームウェアを、第2ファームウェア格納部206に格納されたファームウェアにアップデートする。
【0048】
図8はファームウェアのアップデートを行う側の機器におけるファームウェア送信処理例を示すフローチャートである。
まず、第1信号生成部104aは、システム信号としてトリガ信号を生成し、送信する(ステップS200)。
【0049】
次に、第1信号処理部104bは、第2無線通信装置200から受信した信号の処理を行う(ステップS202)。続けて、第1信号処理部104bは、受信した信号に、ファームウェア送信許可の情報が含まれているか否かを判定し(ステップS202)、ファームウェア送信許可の情報が含まれている場合(ステップS202のYES)、第1通信部108は第1ファームウェア格納部106内のファームウェアの送信を行い(ステップS204)、全体処理を終了する。
【0050】
一方で、ファームウェア送信許可の情報が含まれていない場合(ステップS202のNO)、ステップS200からの処理を繰り返す。このように、第1通信部108は、トリガ信号に応答するファームウェア送信許可信号が受信されると、第1ファームウェア格納部106内のファームウェアの送信を行う。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1無線通信装置100が、ファームウェアを含む信号を送信し、第2無線通信装置200が、受信した電波に基づき演算した送信角度が所定の角度である場合に、ファームウェアのアップデートを実行することとした。これにより、予め設定した送信角度を有する第1無線通信装置100から送信されたファームウェアのアップデートしか実行されないので、設定した送信角度と異なる目的外の機器からのファームウェアのアップデートを抑制できる。
【0052】
上述した実施形態で説明した第1無線通信装置100、第2無線通信装置200の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、第1無線通信装置100、第2無線通信装置200の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0053】
また、第1無線通信装置100、第2無線通信装置200の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1:無線通信システム、100、100a、100b:第1無線通信装置、104:第1制御部、104a:第1信号生成部、104b:第1信号処理部、108:第1通信部、110:第1アンテナ部、200:第2無線通信装置、204:第2制御部、204a:第2信号処理部、204b:角度演算部、204c:判定部、204d:ファームウェア処理部、206:第2ファームウェア格納部。