(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20230726BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20230726BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20230726BHJP
【FI】
G02B7/02 Z
G02B7/02 E
G02B7/08 B
G02B7/04 C
(21)【出願番号】P 2019172630
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】加々見 諒
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-045551(JP,A)
【文献】特開2009-282394(JP,A)
【文献】特開2004-118023(JP,A)
【文献】特開平08-166529(JP,A)
【文献】特開2009-282395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド溝が形成された筒体と、前記ガイド溝に入り込むように立設されたカムフォロアを有する移動体とを備え、前記筒体に対して前記移動体を軸方向に移動させてレンズを駆動させるレンズ鏡筒であって、
前記ガイド溝の一方の縁に沿って設けられた第1の導電部材と、
前記ガイド溝の他方の縁に沿って設けられた第2の導電部材と、
前記第1の導電部材に取り付けられた第1の摩擦部材と、
前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材に対する電流の印加状態を切り替える切替手段と、
を備えている、
ことを特徴とする、レンズ鏡筒。
【請求項2】
さらに、前記ガイド溝の他方の縁に沿って設けられた第2の摩擦部材を備え、
前記第2の導電部材は、前記第2の摩擦部材に取り付けられている、
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材は、それぞれ、前記第1の摩擦部材及び前記第2の摩擦部材の半径方向内側面に取り付けられている、
請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材は、それぞれ、前記第1の摩擦部材及び前記第2の摩擦部材の幅方向外面に取り付けられている、
請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記筒体には、前記ガイド溝の一方の縁に沿うように形成された一方の切り欠き部が形成されており、
前記第1の摩擦部材は前記一方の切り欠き部に配置されている、
請求項1~4の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
ガイド溝が形成された筒体と、前記ガイド溝に入り込むように立設されたカムフォロアを有する移動体とを備え、前記筒体に対して前記移動体を軸方向に移動させてレンズを駆動させるレンズ鏡筒であって、
前記ガイド溝の一方の縁に沿って設けられた第1の摩擦部材と、
前記第1の摩擦部材に沿うように、かつ、前記第1の摩擦部材に幅方向に並ぶように取り付けられた第1の導電部材及び第2の導電部材と、
前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材に対する電流の印加状態を切り替える切替手段と、
を備えている、
ことを特徴とする、レンズ鏡筒。
【請求項7】
さらに、前記ガイド溝の他方の縁に沿って設けられた第2の摩擦部材と、
前記第2の摩擦部材に沿うように、かつ、前記第2の摩擦部材に幅方向に並ぶように取り付けられた第3の導電部材及び第4の導電部材と、を備え、
前記切替手段は、前記第3の導電部材及び前記第4の導電部材に対する電圧の印加状態を切り替えることができる、
請求項6に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材は、それぞれ、前記第1の摩擦部材の半径方向内側面に取り付けられている、
前記第3の導電部材及び前記第4の導電部材は、それぞれ、前記第2の摩擦部材の半径方向内側面に取り付けられている、
請求項7に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記筒体には、前記ガイド溝の一方の縁に沿うように形成された一方の切り欠き部が形成されており、
前記第1の摩擦部材は前記一方の切り欠き部に配置されている、
請求項6~8の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
撮像装置本体と、
前記撮像装置本体に取り付けられた、請求項1~9の何れか1項に記載のレンズ鏡筒と、を有する、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどのレンズ鏡筒のズーミング又はフォーカシングするための構成として、筒体にカム溝を形成し、レンズを保持するレンズ枠にカムフォロアを立設しておき、カムフォロアをカム溝に沿って移動させることにより筒体に対してレンズ枠を移動させる構成が知られている。このような構成のレンズ鏡筒では、例えば、夜空を撮影するためにレンズ鏡筒を上方に向けたり、地上の草花等を撮影するためにレンズ鏡筒を下方に向けたりすると、レンズ等の自重によりレンズ枠が筒体に対して移動してしまう。
【0003】
これに対して、従来は、筒体と操作環の間に摩擦部材を配置し、筒体と操作環の間に生じる摩擦力を大きくすることにより、自重によるレンズの移動を防止している。また、例えば、特許文献1には、カムフォロアに付勢部材を設けておき、付勢部材によりカムフォロアをカム溝の壁面に押圧する構成が開示されている。特許文献1に記載されているような構成によっても、カム溝とカムフォロアの摩擦が大きくなるため、自重によるレンズの移動を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように摩擦力を大きくしてしまうと操作トルクが重くなり、ズーミング又はフォーカシング操作に負担となってしまう。このため、ズーミング又はフォーカシング操作時における操作トルクを大きくすることなく、自重によるレンズの移動を防止できるレンズ鏡筒が望まれている。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、ズーミング又はフォーカシング操作時における操作トルクを大きくすることなく、自重によるレンズの移動を防止できるレンズ鏡筒を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレンズ鏡筒は、ガイド溝が形成された筒体と、ガイド溝に入り込むように立設されたカムフォロアを有する移動体とを備え、筒体に対して移動体を軸方向に移動させてレンズを駆動させるレンズ鏡筒であって、ガイド溝の一方の縁に沿って設けられた第1の導電部材と、ガイド溝の他方の縁に沿って設けられた第2の導電部材と、前記第1の導電部材に取り付けられた第1の摩擦部材と、第1の導電部材及び第2の導電部材に対する電流の印加状態を切り替える切替手段と、を備えている、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成の本発明によれば、第1の導電部材及び第2の導電部材に電流を流すことにより、第1の導電部材及び第2の導電部材を近接又は離間させて、第1の摩擦部材とカムフォロアとの間の摩擦力が大きい状態と、摩擦力がない又は小さい状態とを切り替えることができる。これにより、撮影者の操作時にはカムフォロアと第1の摩擦部材との間の摩擦力がない又は小さい状態とすることにより、操作トルクが小さくなり、スムーズな操作が可能になる。また、ズーム状態(又はフォーカス状態)を固定する場合にはカムフォロアと第1の摩擦部材との間の摩擦力が大きい状態とすることにより、操作トルクを大きくして、移動体の移動範囲の任意の位置において自重によるレンズの移動を防止できる。
【0009】
本発明のレンズ鏡筒は、ガイド溝が形成された筒体と、ガイド溝に入り込むように立設されたカムフォロアを有する移動体とを備え、筒体に対して移動体を軸方向に移動させてレンズを駆動させるレンズ鏡筒であって、ガイド溝の一方の縁に沿って設けられた第1の摩擦部材と、第1の摩擦部材に沿うように、かつ、第1の摩擦部材に幅方向に並ぶように取り付けられた第1の導電部材及び第2の導電部材と、第1の導電部材及び第2の導電部材に対する電流の印加状態を切り替える切替手段と、を備えている、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成の本発明によれば、第1の導電部材及び第2の導電部材に電圧を印加することにより、第1の導電部材及び第2の導電部材が近接又は離間させて、第1の摩擦部材とカムフォロアとの間の摩擦力が大きい状態と、摩擦力がない又は小さい状態とを切り替えることができる。これにより、撮影者の操作時にはカムフォロアと第1の摩擦部材との間の摩擦力がない又は小さい状態とすることにより、操作トルクが小さくなり、スムーズな操作が可能になる。また、ズーム状態(又はフォーカス状態)を固定する場合にはカムフォロアと第1の摩擦部材との間の摩擦力が大きい状態とすることにより、操作トルクを大きくして、移動体の移動範囲の任意の位置において自重によるレンズの移動を防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ズーミング又はフォーカシング操作時における操作トルクを大きくすることなく、自重によるレンズの移動を防止できるレンズ鏡筒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒を有する撮像装置を示す構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構を示す分解斜視図である。
【
図5】
図3に示すレンズ鏡筒のレンズ駆動機構の導電部材アセンブリを示す斜視図である。
【
図6A】逆電流状態における第1の螺旋状導電部及び第2の螺旋状導電部に流れる電流と磁場を示す側面概略図である。
【
図6B】逆電流状態における第1の螺旋状導電部及び第2の螺旋状導電部に流れる電流と磁場を示す軸方向断面図である。
【
図7A】順電流状態における第1の螺旋状導電部及び第2の螺旋状導電部に流れる電流と磁場を示す側面概略図である。
【
図7B】順電流状態における第1の螺旋状導電部及び第2の螺旋状導電部に流れる電流と磁場を示す軸方向断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態によるレンズ鏡筒におけるレンズの駆動機構の
図4に対応する断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構の導電部材アセンブリを示す斜視図である。
【
図10】本発明の第3実施形態によるレンズ鏡筒におけるレンズの駆動機構の
図4に対応する断面図である。
【
図11A】本発明の第3実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構の導電部材アセンブリを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明のレンズ鏡筒の第1実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、ズーミングのためにレンズを駆動するための機構に本発明を適用した場合ついて説明するが、フォーカシングのためにレンズを駆動するための機構に本発明を適用することも可能である。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒を有する撮像装置を示す構成図である。撮像装置1は、例えば、カメラなどであり、撮像装置本体2と、撮像装置本体2に取り付けられたレンズ鏡筒4とを備える。撮像装置本体2は、内部にCMOSなどのイメージセンサを有し、レンズ鏡筒4を通じて入射した光を受光して撮像する。撮像装置本体2には、内部に電池などのバッテリー(電流印加装置)2Aと、撮影者が操作可能なスイッチ(切替手段)6と、が設けられている。
【0015】
図2は、本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構を示す斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構を示す分解斜視図である。また、
図4は、
図2におけるIV-IV断面図である。
図2~
図4に示すように、レンズ鏡筒4は、カム筒8と、縦溝筒7と、レンズ枠(移動体)10と、導電部材アセンブリ14と、摩擦部材アセンブリ16と、を備える。
【0016】
カム筒8は、円筒形状に形成されており、等角度間隔で3本のカム溝18が形成されている。各カム溝18は、カム筒8の後方から螺旋状に延びており、カム筒8の半径方向外面から半径方向内面まで貫通している。
図4に示すように、カム筒8の半径方向外面のカム溝18の両側にはカム溝18に沿うように切り欠き部24A、24Bが形成されている。切り欠き部24A、24Bは、幅方向断面において矩形状の断面形状を有する。
【0017】
縦溝筒7は、円筒状に形成されており、等角度間隔で3本の縦溝17が形成されている。各縦溝17は、縦溝筒7の後方から光軸に平行に直線状に延びており、縦溝筒7の半径方向外面から半径方向内面まで貫通している。縦溝筒7は、例えば、マウント等を介してカメラ本体に固定されている。縦溝筒7は、カム筒8内側に同軸に配置されており、カム筒8は縦溝筒7に対して回転可能である。
【0018】
レンズ枠10は、円環状の板材からなり、中心の孔にレンズが取り付けられている。レンズ枠10の半径方向外周面には当角度間隔で3つのカムフォロア12が立設されている。カムフォロア12は中心軸にそって貫通孔を備え、この貫通孔にビス12Cが挿入されてレンズ枠に固定されている。カムフォロア12は、カム筒8のカム溝18及び縦溝筒7の縦溝7を挿通して、レンズ枠10に取り付けられている。これにより、縦溝筒7に対してカム筒8が回転されることにより、カムフォロア12が縦溝筒7の縦溝17に沿ってガイドされて、レンズ枠10が光軸方向に移動する。
【0019】
図5は、
図3に示すレンズ鏡筒のレンズ駆動機構の導電部材アセンブリを示す斜視図である。
図5に示すように、導電部材アセンブリ14は、第1の導電部材20と、3つの第2の導電部材22とを備える。第1の導電部材20は、円環状の円環部20Aと、円環部20Aから半径方向外方に延びる突部20Bと、突部20Bの半径方向外端から対物側に螺旋状に延びる第1の螺旋状導電部20Cとを備える。円環部20Aは、内径がカム筒8の内径と略等しく、また、幅がカム筒8の厚さよりも小さくなるように形成されている。突部20Bは円環部20Aの外周から等角度間隔で突出しており、中心から半径方向外端までの距離が、カム筒8の中心から切り欠き部24A、24Bの底面までの距離と略等しくなっている。第1の螺旋状導電部20Cは、例えば、銅などの導電材料からなりカム溝18と同形状で同じ長さ延びている。
【0020】
第2の導電部材22は、それぞれ、円弧状に延びる円弧状部22Aと、円弧状部22Aの周方向一端部の半径方向外方の縁から対物側に螺旋状に延びる第2の螺旋状導電部22Bとを備える。円弧状部22Aは、外径がカム筒8の中心から切り欠き部24A、24Bの底面までの距離と略等しくなっている。第2の螺旋状導電部22Bは、カム溝18と同形状で同じ長さ延びている。第2の導電部材22は、円弧状部22Aが第1の導電部材20の隣接する突部20Bの間を周方向に延びるように配置されている。これにより、第1の導電部材20の第1の螺旋状導電部20Cと、第2の導電部材22の第2の螺旋状導電部22Bとは略平行に螺旋状に延びる。なお、第1の導電部材20と第2の導電部材22とは、例えば、第1の導電部材20の円環部20Aと、第2の導電部材22の円弧状部22Aとの間に絶縁部材を介在させることにより、絶縁状態が維持されている。
【0021】
図3に示すように。摩擦部材アセンブリ16は、3対の第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bにより構成されている。第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bは、例えば、ゴムなどの弾性部材により構成されている。第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bの幅は、それぞれ、第1の導電部材20の第1の螺旋状導電部20C及び第2の導電部材22の第2の螺旋状導電部22Bの幅と等しくなっている。
図4に示すように、第1の摩擦部材16Aは第1の導電部材20の第1の螺旋状導電部20Cの半径方向外面に取り付けられており、第2の摩擦部材16Bは第2の導電部材22の第2の螺旋状導電部22Bの半径方向外面に取り付けられている。
【0022】
図4に示すように、導電部材アセンブリ14は、第1の導電部材20の第1の螺旋状導電部20Cが第1の切り欠き部24Aの半径方向の底面に当接するとともに、第2の導電部材22の第2の螺旋状導電部22Bが第2の切り欠き部24Bの半径方向の底面に当接するように配置されている。そして、第1の導電部材20の第1の螺旋状導電部20C及び第1の摩擦部材16Aは、第1の切り欠き部24A内に収容されており、第2の導電部材22の第2の螺旋状導電部22B及び第2の摩擦部材16Bは第2の切り欠き部24B内に収容されている。なお、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bは、側面を第1の切り欠き部24A及び第2の切り欠き部24Bの側壁に取り付けるなどの方法により、第1の切り欠き部24A及び第2の切り欠き部24Bから離脱しないように保持されている。
【0023】
図4に示すように、カムフォロア12は、円筒状の軸部12Aと、軸部12Aよりも径が大きく軸部12Aの端部に接続された頭部12Bとを備える。上述の通り、カムフォロア12は、カム筒8のカム溝18及び縦溝筒7の縦溝7を挿通して、レンズ枠10に取り付けられている。カムフォロア12の軸部12Aは、第1の摩擦部材16Aと第2の摩擦部材16Bとの間に位置している。なお、カムフォロア12の形状は円形に限らず、矩形状などにしてもよい。
【0024】
レンズ鏡筒4を撮像装置本体2に取り付けた状態において、第1の導電部材20の第1の螺旋状導電部20Cと、第2の導電部材22の第2の螺旋状導電部22Bはそれぞれバッテリー2Aにスイッチ6を介して接続されている。また、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bの先端部は接地されている。そして、スイッチ6を操作することにより、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに電流が流れていない無通電状態と、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに同方向に電流が流れている順電流状態と、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに逆方向に電流が流れている逆電流状態と、のうち少なくとも2つの状態を切り替えることができる。
【0025】
以下、本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒4を有する撮像装置1の操作方法を説明する。ここではまず、順電流状態と逆電流状態とを切り替える操作方法を例に説明する。
ズーミング操作を行う場合には、撮影者はスイッチ6を操作して、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに逆方向に電流が流れている逆電流状態に切り替える。
図6A及び
図6Bは、逆電流状態における第1の螺旋状導電部及び第2の螺旋状導電部に流れる電流と磁場を示し、
図6Aは側面概略図であり、
図6Bは軸方向断面図である。
図6A及び
図6Bに示すように、逆電流状態では、第1の螺旋状導電部20Cと第2の螺旋状導電部22Bには逆方向の電流I
1、I
2がそれぞれ流れる。このように逆方向の電流I
1、I
2が流れると、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bの周りに磁場が発生し、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bには離間するような磁力(
図6Bに矢印で示す)が発生する。そして、このような離間するような磁力が発生すると、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bとともに、カムフォロア12の軸部12Aから離間する。これにより、撮影者は少ないトルクでズーミング操作を行うことができる。
【0026】
これに対して、ズームを固定したい場合には、撮影者はスイッチ6を操作して、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに同方向に電流が流れている順電流状態に切り替える。
図7A及び
図7Bは、順電流状態における第1の螺旋状導電部及び第2の螺旋状導電部に流れる電流と磁場を示し、
図7Aは側面概略図であり、
図7Bは軸方向断面図である。
図7A及び
図7Bに示すように、順電流状態では、第1の螺旋状導電部20Cと第2の螺旋状導電部22Bには同方向の電流I
1´、I
2´がそれぞれ流れる。このように同方向の電流I
1´、I
2´が流れると、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bの周りに磁場が発生し、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bには近接するような磁力(
図7Bに矢印で示す)が発生する。このような近接するような磁力が発生すると、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bとともに、カムフォロア12の軸部12Aに向かって近接し、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bがカムフォロア12の軸部12Aを両側から挟み込む。この状態でレンズ枠10(縦溝筒7)に対してカム筒8を回転させようとしても、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bと、カムフォロア12の軸部12Aの間に大きな摩擦力が発生する。このため、カム筒8に対してレンズ枠10を回転させるためのトルクが大きくなり、例えば、レンズ鏡筒4が傾いたとしても自重によりレンズ枠10がカム筒8に対して移動することがなくなる。
【0027】
なお、ズーム状態を保持する必要がなく、バッテリーの消費を抑える場合には、スイッチ6を操作することにより、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに電流が流れていない無通電状態にするとよい。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに電流を印加することにより、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bを近接又は離間させて、第1の摩擦部材16Aとカムフォロア12との間の摩擦が大きい状態(順電流状態)と、摩擦がない状態(逆電流状態)とを切り替えることができる。これにより、撮影者のズーミング操作時にはカムフォロア12と第1の摩擦部材16Aとの間の摩擦がない状態とすることにより、操作トルクが小さくなり、スムーズな操作が可能になる。また、ズーム状態を固定する場合にはカムフォロア12と第1の摩擦部材16Aとの間の摩擦が大きい状態とすることにより、操作トルクを大きくして、自重によるレンズの移動を防止できる。
【0029】
また、本実施形態によれば、カム溝18の他方の縁に沿って設けられた第2の摩擦部材16Bを備え、第2の螺旋状導電部22Bが第2の摩擦部材16Bに取り付けられている。これにより、順電流状態において第1の摩擦部材16Aと第2の摩擦部材16Bとによりカムフォロア12を挟み込み、より強固にズーム状態を固定することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bが、それぞれ、第1の摩擦部材16A及び前記第2の摩擦部材16Bの半径方向内側面に取り付けられている。これにより、例えば、第1の摩擦部材16A及び前記第2の摩擦部材16Bの周方向側面を切り欠き部24A、24Bの側壁に取り付けることが可能になる。
【0031】
また、本実施形態によれば、カム筒8には、カム溝18の一方の縁に沿うように形成された切り欠き部24A、24Bが形成されており、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bは切り欠き部24A、24Bに配置されている。これにより、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bがカム筒8の外部に突出することがない。
【0032】
なお、本実施形態では、カム溝18の両縁にそれぞれ第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bを設けているが、第2の摩擦部材16Bを省略し、第1の摩擦部材16Aのみをカムフォロア12の軸部12Aに当接した状態と、軸部12Aから離間した状態とを切り替えられる構成としてもよい。このような場合には、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bの通電状態を切り替えることにより、第1の摩擦部材16Aとカムフォロア12との摩擦力を変更することができる。
【0033】
また、本実施形態では、順電流状態において第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、カムフォロア12の軸部12Aに当接し、逆電流状態において第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、カムフォロア12の軸部12Aから離間する構成としたが本発明はこれに限られない。例えば、順電流状態において第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、カムフォロア12の軸部12Aに当接し、無通電状態において第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bがカムフォロア12の軸部12Aから離間する構成としてもよい(順電流状態と無通電状態との切り替え)。また、例えば、無通電状態において第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、カムフォロア12の軸部12Aに当接し、逆電流状態において第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bがカムフォロア12の軸部12Aから離間する構成としてもよい(無通電状態と逆電流状態との切り替え)。
【0034】
また、必ずしも、ズーム操作時に、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、カムフォロア12の軸部12Aから完全に離間する必要はなく、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bと軸部12Aとの摩擦力が小さい状態となればよい(本明細書では、近接(当接)した状態よりも摩擦力が小さい状態(完全には離間していない状態)も含めて「離間」と呼称する)。
換言すれば、本発明は、第1の螺旋状導電部20C及び第2の螺旋状導電部22Bに対する電流の印加状態を切り替えることにより、カムフォロア12に対する第1の摩擦部材16A(及び第2の摩擦部材16B)の付勢状態(近接状態と離間状態)を切り替える。これによって、上述の通り、操作トルクを大きくすることなく、自重によるレンズの移動を防止することができる。
【0035】
<第2実施形態>
以下、本発明のレンズ鏡筒の第2実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。第2実施形態のレンズ鏡筒は、第1の螺旋状部及び第2の螺旋状部の形状及び配置が第1実施形態と異なっている。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
図8は、本発明の第2実施形態によるレンズ鏡筒におけるレンズの駆動機構の
図4に対応する断面図である。
図9は、本発明の第2実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構の導電部材アセンブリを示す斜視図である。
【0037】
図8及び
図9に示すように、第2実施形態によるレンズ鏡筒の導電部材アセンブリ114は、第1の導電部材120と、3つの第2の導電部材122とを備える。第1の導電部材120は、円環状の円環部120Aと、円環部120Aから半径方向外方に延びる突部120Bと、突部120Bの周方向の一側から対物側に螺旋状に延びる第1の螺旋状導電部120Cとを備える。円環部120Aは、内径がカム筒8の内径と略等しく、また、幅がカム筒8の厚さよりも小さくなるように形成されている。突部120Bは円環部120Aの外周から等角度間隔で突出している。第1の螺旋状導電部120Cは、例えば、銅などの導電材料からなり、カム溝18と同形状で同じ長さ延びている。
【0038】
第2の導電部材122は、それぞれ、円弧状に延びる円弧状部122Aと、円弧状部122Aの周方向一端から対物側に螺旋状に延びる第2の螺旋状導電部122Bとを備える。円弧状部122Aは、内径がカム筒8の中心から切り欠き部24A、24Bの底面までの距離と略等しくなっている。第2の螺旋状導電部122Bは、例えば、銅などの導電材料からなり、カム溝18と同形状で同じ長さ延びている。第2の導電部材122は、円弧状部122Aが第1の導電部材120の隣接する突部120Bの間を延びるように配置されている。これにより、第1の導電部材120の第1の螺旋状導電部120Cと、第2の導電部材122の第2の螺旋状導電部122Bとは略平行に螺旋状に延びる。なお、第1の導電部材120と第2の導電部材122とは、例えば、第1の導電部材120の円環部120Aと、第2の導電部材122の円弧状部122Aとの間に絶縁部材を介在させることにより、絶縁状態が維持されている。
【0039】
図8に示すように、本実施形態においても摩擦部材アセンブリ116は第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bを含む。第1の摩擦部材116Aは第1の導電部材120の第1の螺旋状導電部120Cの半径方向外面に取り付けられており、第2の摩擦部材116Bは第2の導電部材122の第2の螺旋状導電部122Bの半径方向外面に取り付けられている。
【0040】
導電部材アセンブリ114は、第1の導電部材120の第1の螺旋状導電部120Cが第1の切り欠き部24Aの周方向の側面に当接するとともに、第2の導電部材122の第2の螺旋状導電部122Bが第2の切り欠き部24Bの半径方向の底面に当接するように配置されている。そして、第1の導電部材120の第1の螺旋状導電部120C及び第1の摩擦部材116Aは、第1の切り欠き部24A内に収容されており、第2の導電部材122の第2の螺旋状導電部122B及び第2の摩擦部材116Bは第2の切り欠き部24B内に収容されている。なお、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bは、第1の切り欠き部24A及び第2の切り欠き部24Bから離脱しないように保持されている。
【0041】
図8に示すように、カムフォロア12は、円筒状の軸部12Aと、軸部12Aよりも径が大きく軸部12Aの端部に接続された頭部12Bとを備える。カムフォロア12は、カム筒8のカム溝18及び縦溝筒7の縦溝7を挿通して、レンズ枠10に取り付けられている。カムフォロア12の軸部12Aは、第1の摩擦部材116Aと第2の摩擦部材116Bとの間に位置するように配置されている。なお、カムフォロア12の形状は円形に限らず、矩形状などにしてもよい。
【0042】
以下、本発明の第2実施形態によるレンズ鏡筒4を有する撮像装置1の操作方法を説明する。ここではまず、順電流状態と逆電流状態とを切り替える操作方法を例に説明する。
ズーミング操作を行う場合には、撮影者はスイッチ6を操作して、第1の導電部材120の第1の螺旋状導電部120C及び第2の導電部材122の第2の螺旋状導電部122Bに逆方向に電流が流れている逆電流状態に切り替える。第1実施形態と同様に、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bに逆方向の電流I1、I2が流れると、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bの周りに磁場が発生し、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bには離間するような磁力が発生する。そして、このような離間するような磁力が発生すると、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bが、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bとともに、カムフォロア12の軸部12Aから離間する。これにより、撮影者は少ないトルクでズーミング操作を行うことができる。
【0043】
これに対して、ズームを固定したい場合には、撮影者はスイッチ6を操作して、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bに同方向に電流が流れている順電流状態に切り替える。第1実施形態と同様に、第1の螺旋状導電部120Cと、第2の螺旋状導電部122Bに同方向の電流I1´、I2´が流れると、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bの周りに磁場が発生し、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bには近接するような磁力が発生する。このような近接するような磁力が発生すると、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bが、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bとともに、カムフォロア12の軸部12Aに向かって近接し、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bがカムフォロア12の軸部12Aを両側から挟み込む。この状態でカム筒8に対してレンズ枠10を回転させようとしても、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bと、カムフォロア12の軸部12Aの間に大きな摩擦力が発生する。このため、レンズ枠10(縦溝筒7)に対してカム筒8を回転させるためのトルクが大きくなり、例えば、レンズ鏡筒4が傾いたとしても自重によりレンズ枠10がカム筒8に対して移動することがなくなる。
【0044】
なお、ズーム状態を保持する必要がなく、バッテリーの消費を抑える場合には、スイッチ6を操作することにより、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bに電流が流れていない無通電状態にするとよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bに電流を印加することにより、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bを近接又は離間させて、第1の摩擦部材116Aとカムフォロア12との間の摩擦力が大きい状態(順電流状態)と、摩擦力がない状態(逆電流状態)とを切り替えることができる。これにより、撮影者のズーミング操作時にはカムフォロア12と第1の摩擦部材116Aとの間の摩擦力がない状態とすることにより、操作トルクが小さくなり、スムーズな操作が可能になる。また、ズーム状態を固定する場合にはカムフォロア12と第1の摩擦部材116Aとの間の摩擦力が大きい状態とすることにより、操作トルクを大きくして、自重によるレンズの移動を防止できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、カム溝18の他方の縁に沿って設けられた第2の摩擦部材116Bを備え、第2の螺旋状導電部122Bが第2の摩擦部材116Bに取り付けられている。これにより、順電流状態において第1の摩擦部材116Aと第2の摩擦部材116Bとによりカムフォロア12を挟み込み、より強固にズーム状態を固定することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bが、それぞれ、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bの半径方向内側面に取り付けられている。これにより、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bとして弾性変形しにくい部材を採用した場合であっても、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bが、側方から第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bを押圧するため、確実に第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bをカムフォロア12に当接させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、カム筒8には、カム溝18の一方の縁に沿うように形成された切り欠き部24A、24Bが形成されており、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bは切り欠き部24A、24Bに配置されている。これにより、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bがカム筒8の外部に突出することがない。
【0049】
なお、本実施形態では、カム溝18の両縁にそれぞれ第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bを設けているが、第2の摩擦部材116Bを省略し、第1の摩擦部材116Aのみをカムフォロア12の軸部12Aに当接した状態と、軸部12Aから離間した状態とを切り替えられる構成としてもよい。このような場合には、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bの通電状態を切り替えることにより、第1の摩擦部材16Aとカムフォロア12との摩擦力を変更することができる。
【0050】
また、本実施形態では、順電流状態において第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bが、カムフォロア12の軸部12Aに当接し、逆電流状態において第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bが、カムフォロア12の軸部12Aから離間する構成としたが本発明はこれに限られない。例えば、順電流状態において第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bが、カムフォロア12の軸部12Aに当接し、無通電状態において第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bがカムフォロア12の軸部12Aから離間する構成としてもよい(順電流状態と無通電状態との切り替え)。また、例えば、無通電状態において第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bが、カムフォロア12の軸部12Aに当接し、逆電流状態において第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bがカムフォロア12の軸部12Aから離間する構成としてもよい(無通電状態と逆電流状態との切り替え)。
【0051】
また、必ずしも、ズーム操作時に、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bが、カムフォロア12の軸部12Aから完全に離間する必要はなく、第1の摩擦部材116A及び第2の摩擦部材116Bと軸部12Aとの摩擦力が小さい状態となればよい。(本明細書では、近接(当接)した状態よりも摩擦力が小さい状態(完全には離間していない状態)も含めて「離間」と呼称する)。
換言すれば、本発明は、第1の螺旋状導電部120C及び第2の螺旋状導電部122Bに対する電流の印加状態を切り替えることにより、カムフォロア12に対する第1の摩擦部材16A(及び第2の摩擦部材16B)の付勢状態(近接状態と離間状態)を切り替える。これによって、上述の通り、操作トルクを大きくすることなく、自重によるレンズの移動を防止することができる。
【0052】
<第3実施形態>
以下、本発明のレンズ鏡筒の第3実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。第3実施形態のレンズ鏡筒は、導電部材アセンブリの形状及び配置が第1実施形態と異なっている。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0053】
図10は、本発明の第3実施形態によるレンズ鏡筒におけるレンズの駆動機構の
図4に対応する断面図である。
図11Aは、本発明の第3実施形態によるレンズ鏡筒のレンズの駆動機構の導電部材アセンブリを示す斜視図であり、
図11Bは、
図11AのB部の拡大図である。
【0054】
図10A、
図10B及び
図11に示すように、第3実施形態によるレンズ鏡筒の導電部材アセンブリ214は、第1の導電部材220と、3つの第2の導電部材222とを備える。第1の導電部材220は、円環状の円環部220Aと、円環部220Aから半径方向外方に延びる突部220Bと、突部220Bの周方向の一側から対物側に螺旋状に延びる第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dと、を備える。円環部220Aは、内径がカム筒8の内径と略等しく、また、幅がカム筒8の厚さよりも小さくなるように形成されている。突部220Bは円環部220Aの外周から等角度間隔で突出している。第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dは、例えば、銅などの導電材料からなり、カム溝18と同形状で同じ長さ延びている。
【0055】
第2の導電部材222は、それぞれ、円弧状に延びる円弧状部222Aと、円弧状部222Aの周方向一端から対物側に螺旋状に延びる第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cとを備える。円弧状部222Aは、内径がカム筒8の中心から切り欠き部24A、24Bの底面までの距離と略等しくなっている。第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cは、カム溝18と同形状で同じ長さ延びている。第2の導電部材222は、円弧状部222Aが第1の導電部材220の隣接する突部220Bの間を延びるように配置されている。これにより、第2の導電部材222の第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dと、第2の導電部材222の第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cとは略平行に螺旋状に延びる。
【0056】
図10に示すように、本実施形態においても摩擦部材アセンブリ216は第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bを含む。第1の導電部材220の第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dは、第1の摩擦部材216Aの半径方向内側面の両縁にそれぞれ取り付けられている。また、第2の導電部材222の第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cは、第2の摩擦部材216Bの半径方向内側面の両縁にそれぞれ取り付けられている。
【0057】
第1の導電部材220の第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dと、第1の摩擦部材216Aは、第1の切り欠き部24A内に配置されている。第1の導電部材220の第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dは、第1の切り欠き部24Aの半径方向の底面に当接している。また、第1の摩擦部材216Aの周方向の側面が第1の切り欠き部24Aの周方向の側壁に例えば接着剤などにより取り付けられている。
【0058】
また、第2の導電部材222の第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cと、第2の摩擦部材216Bは、第2の切り欠き部24B内に配置されている。第2の導電部材222の第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cは、第2の切り欠き部24Bの半径方向の底面に当接している。また、第2の摩擦部材216Bの周方向の側面が第2の切り欠き部24Bの周方向の側壁に例えば接着剤などにより取り付けられている。
【0059】
図10に示すように、カムフォロア12は、円筒状の軸部12Aと、軸部12Aよりも径が大きく軸部12Aの端部に接続された頭部12Bとを備える。カムフォロア12は、カム筒8のカム溝18及び縦溝筒7の縦溝7を挿通して、レンズ枠10に取り付けられている。カムフォロア12の軸部12Aは、第1の摩擦部材216Aと第2の摩擦部材216Bとの間に位置するように配置されている。なお、カムフォロア12の形状は円形に限らず、矩形状などにしてもよい。後述するように、第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dと、第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cとに電流が印加されていない状態で、第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bは、カムフォロア12から離間している。
【0060】
以下、本発明の第3実施形態によるレンズ鏡筒4を有する撮像装置1の操作方法を説明する。
ズーミング操作を行う場合には、撮影者はスイッチ6を操作して、第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dと、第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cとに電流が流れていない無通電状態に切り替える。このような無通電状態では、第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bは変形することがなく、カムフォロア12から離間している。これにより、撮影者は少ないトルクでズーミング操作を行うことができる。
【0061】
これに対して、ズームを固定したい場合には、撮影者はスイッチ6を操作して、第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dに逆方向に電流が流れるとともに、第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cに逆方向に電流が流れる逆電流状態に切り替える。第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dに逆方向に電流が流れると、これら第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dが離間するため、第1の摩擦部材216Aが幅方向に広がり、第1の摩擦部材216Aの側面がカムフォロア12に当接する。また、第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cに逆方向に電流が流れると、これら第3の螺旋状導電部222B及び第4の螺旋状導電部222Cが離間するため、第2の摩擦部材216Bが幅方向に広がり、第2の摩擦部材216Bの側面がカムフォロア12に当接する。この状態でカム筒8に対してレンズ枠10を回転させようとしても、第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bと、カムフォロア12の軸部12Aの間に大きな摩擦力が発生する。このため、カム筒8に対してレンズ枠10を回転させるためのトルクが大きくなり、例えば、レンズ鏡筒4が傾いたとしても自重によりレンズ枠10がカム筒8に対して移動することがなくなる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、第1の導電部材220の第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dに電流を印加することにより、第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dを離間させて、第1の摩擦部材216Aとカムフォロア12との間の摩擦力が大きい状態(逆電流状態)と、摩擦力がない状態(無通電状態)とを切り替えることができる。これにより、撮影者のズーミング操作時にはカムフォロア12と第1の摩擦部材216Aとの間の摩擦力がない状態とすることにより、操作トルクが小さくなり、スムーズな操作が可能になる。また、ズーム状態を固定する場合にはカムフォロア12と第1の摩擦部材216Aとの間の摩擦力が大きい状態とすることにより、操作トルクを大きくして、自重によるレンズの移動を防止できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、カム溝18の他方の縁に沿って設けられた第2の摩擦部材216Bを備え、第2の導電部材222の第3の螺旋状導電部222B及びが第4の螺旋状導電部222Cが第2の摩擦部材216Bに取り付けられている。これにより、逆電流状態において第1の摩擦部材216Aと第2の摩擦部材216Bとによりカムフォロア12を挟み込み、より強固にズーム状態を固定することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、カム筒8には、カム溝18の一方の縁に沿うように形成された切り欠き部24A、24Bが形成されており、第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bは切り欠き部24A、24Bに配置されている。これにより、第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bがカム筒8の外部に突出することがない。
【0065】
なお、本実施形態では、カム溝18の両縁にそれぞれ第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bを設けているが、第2の摩擦部材216Bを省略し、第1の摩擦部材216Aのみをカムフォロア12の軸部12Aに当接した状態と、軸部12Aから離間した状態とを切り替えられる構成としてもよい。このような場合には、第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220Dの通電状態を切り替えることにより、第1の摩擦部材16Aとカムフォロア12との摩擦力を変更することができる。
【0066】
また、本実施形態では、無通電状態において第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bが、カムフォロア12の軸部12Aから離間し、逆電流状態において第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bが、カムフォロア12の軸部12Aに当接する構成としたが本発明はこれに限られない。例えば、順電流状態において第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bが、カムフォロア12の軸部12Aから離間し、無通電状態において第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bがカムフォロア12の軸部12Aに当接する構成としてもよい(順電流状態と無通電状態との切り替え)。また、例えば、順電流状態において第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bが、カムフォロア12の軸部12Aから離間し、逆電流状態において第1の摩擦部材216A及び第2の摩擦部材216Bがカムフォロア12の軸部12Aに当接する構成としてもよい(無通電状態と逆電流状態との切り替え)。
【0067】
また、必ずしも、ズーム操作時に、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bが、カムフォロア12の軸部12Aから完全に離間する必要はなく、第1の摩擦部材16A及び第2の摩擦部材16Bと軸部12Aとの摩擦力が小さい状態となればよい(本明細書では、近接(当接)した状態よりも摩擦力が小さい状態(完全には離間していない状態)も含めて「離間」と呼称する)。
換言すれば、本発明は、第1の導電部材220の第1の螺旋状導電部220C及び第2の螺旋状導電部220D(及び、第2の導電部材222の第3の螺旋状導電部222B及びが第4の螺旋状導電部222C)に対する電流の印加状態を切り替えることにより、カムフォロア12に対する第1の摩擦部材16A(及び第2の摩擦部材16B)の付勢状態(近接状態と離間状態)を切り替える。これによって、上述の通り、操作トルクを大きくすることなく、自重によるレンズの移動を防止することができる。
【0068】
また、上記各実施形態では、カム筒8に螺旋状に形成されたカム溝18にカムフォロア12が入り込んだ構造に本発明を適用したが、これに限らず、縦溝筒7に光軸方向に延びるように形成された縦溝17や、周方向に延びるように形成された周方向溝にも本発明を適用できる。本発明では、これらカム溝18、縦溝17、及び周方向溝をガイド溝という。また、上記各実施形態では、カム筒8は縦溝筒7に対して光軸方向に移動しないが、カム筒8が縦溝筒7に対して光軸方向に移動する構成としてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、カム筒8に対してレンズ枠10が移動する構成に本発明を適用した場合について説明したが、固定筒に対してカム筒が移動する場合などであっても本発明を適用することができる。さらに、上記各実施形態では、本発明をレンズ枠10を光軸方向に移動させることによりズーミングを行う機構に適用した場合について説明したが、これに限らず、フォーカシングを行う機構に適用することも可能である。
【0070】
また、上記各実施形態では、切替手段として撮影者が操作可能なスイッチを設けているが、カメラ本体のディスプレイにON/OFF切替用UIを表示し、入力を受け付けてもよい。さらに、レンズ群の移動量やカム筒8の回転量を検知して、自重による落下を検知すると第1の摩擦部材16A(及び第2の摩擦部材16B)の付勢状態(近接状態と離間状態)を切り替えるような構成の切替手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 撮像装置
2 撮像装置本体
2A バッテリー
4 レンズ鏡筒
6 スイッチ
7 縦溝筒
8 カム筒
10 レンズ枠
12 カムフォロア
12A 軸部
12B 頭部
12C ビス
14 導電部材アセンブリ
16 摩擦部材アセンブリ
16A 第1の摩擦部材
16B 第2の摩擦部材
17 縦溝
18 カム溝
20 第1の導電部材
20A 円環部
20B 突部
20C 第1の螺旋状導電部
22 第2の導電部材
22A 円弧状部
22B 第2の螺旋状導電部
24A 第1の切り欠き部
24B 第2の切り欠き部
114 導電部材アセンブリ
116 摩擦部材アセンブリ
116A 第1の摩擦部材
116B 第2の摩擦部材
120 第1の導電部材
120A 円環部
120B 突部
120C 第1の螺旋状導電部
122 第2の導電部材
122A 円弧状部
122B 第2の螺旋状導電部
214 導電部材アセンブリ
216 摩擦部材アセンブリ
216A 第1の摩擦部材
216B 第2の摩擦部材
220 第1の導電部材
220A 円環部
220B 突部
220C 第1の螺旋状導電部
220D 第2の螺旋状導電部
222 第2の導電部材
222A 円弧状部
222B 第3の螺旋状導電部
222C 第4の螺旋状導電部