(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】サッシ
(51)【国際特許分類】
E05F 15/603 20150101AFI20230726BHJP
E05F 11/10 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
E05F15/603
E05F11/10
(21)【出願番号】P 2019177515
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 毅
(72)【発明者】
【氏名】太田 優作
(72)【発明者】
【氏名】増山 新作
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-256395(JP,A)
【文献】特開2017-227081(JP,A)
【文献】特開2008-231690(JP,A)
【文献】特開2013-091995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00 - 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に固定した窓枠と、窓枠に開閉自在に収めた障子と、障子の開閉機構と、開閉機構を手動で動かす手動操作部と、開閉機構を電動で動かすモータと、モータを支持するブラケットとを備え、
窓枠の室内側に開閉機構の台座を設けてあり、
台座は、窓枠に取付けた状態で手動操作部とモータの何れか一方を選択的に接続自在な接続部を有し、
ブラケットは、モータ固定部と
躯体取付部とを有し、
モータ固定部は、モータを台座の接続部に接続できる位置にモータを固定するものであり、
躯体取付部は、モータを台座の接続部に接続した状態で、左右方向または上下方向で台座と一部重ねて台座の隣に配置してあり、ネジ止めの邪魔にならない台座からずれた躯体取付部のネジ止め領域において躯体に
ネジ止めしてある
ことを特徴とするサッシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、すべり出し窓やルーバー窓等において、窓の室内側に手動ハンドルを設けた手動開閉式のものがあった。一方、特許文献1に示すように、高所用の窓等において、モータを内蔵したユニットを備える電動開閉式のものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こうした従来の窓において、手動開閉式のものと電動開閉式のものとでは構造が異なっており、手動開閉式の窓を電動開閉式に変更することは容易ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、障子の開閉を手動式にするか電動式にするか選択可能であって、その変更が容易なサッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、躯体に固定した窓枠と、窓枠に開閉自在に収めた障子と、障子の開閉機構と、開閉機構を手動で動かす手動操作部と、開閉機構を電動で動かすモータと、モータを支持するブラケットとを備え、窓枠の室内側に開閉機構の台座を設けてあり、台座は、窓枠に取付けた状態で手動操作部とモータの何れか一方を選択的に接続自在な接続部を有し、ブラケットは、モータ固定部と躯体取付部とを有し、モータ固定部は、モータを台座の接続部に接続できる位置にモータを固定するものであり、躯体取付部は、モータを台座の接続部に接続した状態で、左右方向または上下方向で台座と一部重ねて台座の隣に配置してあり、ネジ止めの邪魔にならない台座からずれた躯体取付部のネジ止め領域において躯体にネジ止めしてあることを特徴とするサッシである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、開閉機構に手動操作部とモータの何れかを選択して接続可能であり、且つ容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施の形態にかかるサッシであって、接続部にモータを接続した縦断面図である。
【
図3】
図1に示すサッシにおいて、接続部に手動操作部とモータの選択的な接続を説明する縦断面図である。
【
図4】第1実施の形態にかかるサッシであって、接続部に手動操作部を接続した状態を示す縦断面図である。
【
図5】第2実施の形態にかかるサッシであって、接続部にモータを接続した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明するが、まず、
図1~
図4を参照して本発明の第1実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態にかかるサッシ1は、すべり出しサッシであり、窓枠3と、障子5と、障子5の開閉機構7と、手動操作部9(
図4参照)と、モータ11と、ブラケット13とを備えている。尚、
図3に示すように、手動操作部9と、モータ11とは、何れか一方を選択して取り付けるものである。
【0010】
図1及び
図2に示すように、窓枠3は、上枠15と、下枠17と左右の縦枠19、19を四周枠組みしたものであって、建築物の躯体21の開口部に設けてある。
図1に示すように、下枠17は、アルミニウム製の室外側部材17aと、室外側部材17aの内周側で室内側端部に設けた樹脂製の室内側部材17bを備えている。室内側部材17bは、基材16と補助材18とで構成してあり、基材16に補助材18を嵌合して断熱空間を形成することで、断熱性を高めている。室内側部材17bの室外側には縦断面が略L字形状の補強材(ピース状の裏板)17cが設けてある。
上枠15にも、下枠17と同様に、アルミニウム製の室外側部材15aと、室外側部材15aの内周側で室内側端部に樹脂製の室内側部材15bが設けてあり、室内側部材15bは、基材16に補助材18を嵌合して断熱空間を形成している。また、
図2に示すように、左右の縦枠19、19にも同様に、アルミニウム製の室外側部材19aと、樹脂製の室内側部材19bが設けてある。
図1に示すように、窓枠3の室内側には、躯体21の開口部の内周側に内装材20が設けてある。第1実施の形態では、内装材20は額縁である。内装材20は、窓枠3の室内側で開口の上下左右の四周を囲んで設けてあり、内装材20の外周側には、躯体21が隣接して配置されている。躯体21は、木材である。
尚、
図1では、上側内装材の上側に配置されている躯体は省略している。
【0011】
障子5は、四周に組んだ框の内周にパネルを嵌め込んだものであって、
図2に示すように、窓枠3の左右の縦枠19、19に各々すべり出しアーム23により、連結されている。この障子5は、
図1を参照して説明すると、開くときには、障子5の下端5aを後述する開閉機構7により室外側に押出し、障子5の上端5bが縦枠19、19に沿って下方に移動しながら開くものである。
【0012】
図1及び
図2に示すように、開閉機構7は下枠17の室内側設けてあり、台座7aと、接続部7bとを有している。
台座7aは、略直方体形状を成しており、左右の室外側端部にそれぞれ左右方向に延出したネジ止め部25、25が設けてある。この台座7aは、上面27a、側面27b及びネジ止め部25、25を樹脂で一体に形成してあって、下側から下面27cとなる樹脂製の裏蓋を組み立てて、ネジ(図示せず)により固定した中空構造となっている。そして、ネジ止め部25を下枠17の室内側部材17bに補強材17cと共にネジ29で固定してある。
図1に示すように、台座7aは、下枠17の室内側部材17bから室内側に突出し、下面27cが内装材20との間に隙間Sを形成している。
【0013】
台座7aの上部には、室内側に向けて先端部が窓枠3の内周側になるように傾斜して突出した接続部7bが設けてある。
図3に示すように、この接続部7bには、手動操作部9及びモータ11のいずれも取り付けできる形状としてある。
接続部7bの室外側端は台座7a内にあり、台座7a内に設けた連結部材(図示を省略)に連結されている。連結部材は、台座7aから窓枠3を貫通して室外側に向けて延びていて、先端が障子5に連結されており、接続部7bが回転することで、連結部が伸縮して障子5を開閉する構成になっている。
【0014】
図3及び
図4に示すように、手動操作部9は、基部9aと把持部9bとを有し、基部9aを接続部7bに接続し、把持部9bを手動で回転操作することで接続部7bを回転して障子5を開閉する。
図3及び
図1に示すように、モータ11は、駆動軸部11aとモータ本体11bを有し、駆動軸部11aを接続部7bに接続して、電動により接続部7bを回転して、障子5を開閉する。
【0015】
ブラケット13は、一枚の板金を折り曲げて形成されており、取付部13aとモータ固定部13bとを備えている。
図1に示すように、取付部13aは、内装材20に上から重ねてあり、内装材20に躯体21と共にネジ31で取り付けてある。
図2に示すように、取付部13aは台座7aの下に位置する台座領域33aと内装材20にネジ31で固定するネジ止め領域33bとを有し、ネジ止め領域33bは、台座7aとずれた位置にある。本実施の形態では、ネジ止め領域33bは、平面視で台座7aの左右方向の一側で台座7aからずれている。
ネジ止め領域33bは、上から止めるネジ31で内装材20及び躯体21にネジ止めしてある。ネジ31は内外方向に並んで2つ設けてある。
【0016】
図1に示すように、ブラケット13のモータ固定部13bは、取付部13aの室内側端から上方に立ち上がった立ち上り部35の上端から室内側ほど上方に傾斜している。モータ固定部13bには下方から止めるネジ39でモータ本体11bを固定してある。
尚、ブラケット13は、一枚の板金で形成することに限らず、接続部7bとモータ11の駆動軸部11aとの接続位置を調整するために、その立ち上がり部35において、ブラケット13の取付部13a側とモータ固定部13b側とを分離して内周方向に摺動自在な2部材の構成として、これらの2部材をねじ等で固定するようにしても良い。
モータ固定部13bは、
図2に示すように、室外側端の巾W1よりも室内側端の巾W2を狭くした略台形形状を成しており、室外側端からネジ31側の縁13cを室内側程巾W2が狭まるように傾斜している。尚、室内側端の巾W2はモータ本体11bの巾と略等しい寸法である。
【0017】
次に、接続部7bに手動操作部9を取り付ける場合(障子の手動開閉)とモータ11を取付ける場合(障子の電動開閉)の取付け手順について説明するが、まず、モータ11を取付ける場合について説明する。
尚、
図3及び
図1に示すように、台座7aは下枠17の室内側部材17bに取付けた状態であり、接続部7bは、その先端を台座7aから室内側で窓枠3の内周側に向けて傾斜状態で突出してある。
工場の出荷時において、
図1及び
図3に示すように、ブラケット13のモータ固定部13bの上面にモータ本体11bを載置し、ブラケット13のモータ固定部13bに下から止めるネジ39でモータ本体11bを固定する。尚、ブラケット13にはモータ本体11bの側面や上面にも重なる部分を設けて、モータ本体11bをブラケット13の側面や上面からネジ止めする構成としても良い。
施工現場では、
図3及び
図1に示すように、モータ11の駆動軸部11aを台座7aから突出する接続部7bに接続して、ブラケット13の取付部13aを台座7aの下の隙間Sに挿入して、内装材20の上面(内周側面)に重ねて配置する。このとき、
図2に示すように、取付部13aでは、台座領域33aを台座7aの下に配置し、ネジ止め領域33bを台座7aから左右の一側(本実施の形態では
図2において左側)にずれた位置にする。この位置で、ブラケット13の取付部13aにおいて、ネジ止め領域33bに上からドライバー等の治具を操作して2本のネジ31を各々ネジ止めする。尚、ブラケット13は、施工現場での納まりの為に、現場の状態に応じて邪魔な部分を切除したり、曲げて変形しても良い。
本実施の形態では、工場の出荷時にブラケット13にモータを固定しておくことにより、施工現場での作業を軽減できるから、施工性が良い。
尚、
図4に示すように、接続部7bに手動操作部9が取り付けてある場合には、手動操作部9を接続部7bから外し、接続部7bを露出した状態にしてから、上述したモータ11を固定したブラケット13の取付け作業を行う。
【0018】
次に、接続部7bに手動操作部9を取付ける場合について説明する。
尚、
図3に示すように、接続部7bは、その先端を台座7aから室内側の上方に向けて傾斜状態で突出してあるから、手動操作部9は、その基部9aを接続部7bに接続して取付ける。
【0019】
接続部7bにモータ11が取付けてある場合には、モータ11及びブラケット13を外して接続部7bを露出させてから、手動操作部9を取付けることになる。
モータ11及びブラケット13を外す場合には、次の手順による。
まず、
図1に示すように、接続部7bにモータ11を接続した状態において、ブラケット13のモータ固定部13bにモータ本体11bを固定しているネジ39を外した後、モータ本体11bをブラケット13のモータ固定部13bに沿って斜め上方にスライドして接続部7bから駆動軸部11aを外す。その後、ブラケット13のモータ固定部13bからモータ11を取り外す。
次に、
図2に示すように、ブラケット13の取付部13aにおいて、台座7aからずれた位置にあるネジ止め領域33bにおいて、上からドライバー等の治具を操作してネジ31を外し、ブラケット13を取り外す。
尚、ブラケット13には、モータ11を覆ってモータの防音を図るカバーを設けても良い。
【0020】
次に、本実施の形態に係るサッシ1の作用、効果について説明する。
図3に示すように、本実施の形態によれば、開閉機構7の台座7aから突出する接続部7bに手動操作部9とモータ11のいずれかを選択して接続できるから、障子5の開閉を手動操作部9により手動式開閉にするかモータ11による電動式開閉にするかの選択が可能で且つ容易に変更できる。
手動式開閉と電動式開閉で、開閉機構7を共通して用い、開閉機構7を取り付けたまま手動操作部9とモータ11とを選択して開閉機構7の接続部7bに接続できるから、更に製造コストを安価にできる。
開閉機構7の台座7aを窓枠に取付けた状態で、手動操作部9と、モータ11(及びブラケット13)のいずれか一方を取付け及び取外しできるから施工性が良い。
図1に示すように、モータ11を固定したブラケット13は、内装材20と共に躯体21にネジ39で止めているので、強固に固定できる。
【0021】
図2に示すように、ブラケット13の取付部13aにおいて、ネジ39を止めるネジ止め領域33bは台座7aからずれた位置にあるから、台座7aが邪魔にならずに台座7aを下枠17に取付けたまま、ドライバー等の治具でネジ39の締め付けや取外し操作ができる。
【0022】
以下に本発明の他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では第1実施の形態と主に異なる点を説明する。
図5及び
図6を参照して本発明の第2実施の形態を説明する。第2実施の形態にかかるサッシ1は、左右の一方の縦枠19に開閉機構7の台座7aを取付けてあると共にその縦枠19の室内側に隣接する縦壁43の内装材20にブラケット13を取付けていることが第1実施の形態と異なっている。
また、
図5に示すように、第2実施の形態では、内装材20は室内に設けたクロス41a及びその下地材41bであることが、内装材20が額縁である第1実施の形態と異なっている。
【0023】
更に、この第2実施の形態では、開閉機構7の台座7aは、縦枠19の室内側部材19bと共に室外側部材19aに室内側から止めるネジ29aで縦枠19に取付けてあり、更に窓枠3の内周側から止めるネジ29bでも取付けてある。
図5及び
図6に示すように、開閉機構7の接続部7bは、台座7aから窓枠3の内周側で且つ室内側に向けて斜めに突設している。
図6に示すように、ブラケット13の取付部13aに設けているネジ止め領域34a(33a)、34b(33a)は、2つ離れて位置しており、一方のネジ止め領域34aは台座7aの上方にあり、他方のネジ止め領域34bは一方のネジ止め領域34aの下方で且つ台座7aの室内側に位置している。
ブラケット13のモータ固定部13bは、取付部13aの室内側に形成された上下方向の傾斜辺45から室内側で且つ窓枠3の内周側(
図6参照)に向けて延出している。モータ固定部13bは、モータ本体11bの底面形状に沿って略長方形形状を成している。
この第2実施の形態によれば、第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0024】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、第2実施の形態において、縦壁43には、躯体21の室内側面に下地材41b及びクロス41aからなる内装材20を設けたが、内装材20を設けないで、ブラケット13の取付部13aを躯体21に直接、ねじ31で固定しても良い。
第1及び第2実施の形態において、開閉機構7の接続部7bとモータ11の駆動軸部11aとの接続位置を調節する為に、内装材20とブラケット13との間にスペーサを介在しても良いし、上述のように第2実施の形態において、内装材20がない場合には、躯体21とブラケット13との間にスペーサを介在しても良い。
図2に示すように、第1実施の形態におけるネジ止め領域33bは、第2実施の形態に係るネジ止め領域34a、34b(
図6参照)のように離れた位置に設けても良いし、第2実施の形態における2箇所のネジ止め領域34a、34b(
図6参照)を第1実施の形態のように一箇所のネジ止め領域33bとしても良い。
ネジ止め領域33bに止めるネジ39の数は、2つに限らず、1つでも良いし、3つでも4つでも良いし、数は制限されない。
図1に示すように、第1実施の形態の内装材20は、額縁に代えて、
図5に示すように第2実施の形態にかかるクロス41a及びその下地材41bとしても良いし、第2実施の形態において内装材20(クロス41a及びその下地材41b)に代えて第1実施の形態の額縁としても良い。
サッシ1は、すべり出しサッシに限らず、内倒しサッシや、外倒しサッシ、突出しサッシ、ルーバーサッシ等の開閉するサッシであれば良い。
【符号の説明】
【0025】
1 サッシ
3 窓枠
5 障子
7 開閉機構
7a 台座
7b 接続部
9 手動操作部
11 モータ
13 ブラケット
13a 取付部
13b モータ固定部
20 内装材
21 躯体