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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】空中線抽出システム及び空中線抽出方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20230726BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G06T7/60 200G
G01B11/24 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019184232
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021060776
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴志子
(72)【発明者】
【氏名】木村 宣隆
(72)【発明者】
【氏名】中野 定樹
【審査官】片岡 利延
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-001901(JP,A)
【文献】特開2015-078849(JP,A)
【文献】五藤幸弘,外3名,ММSを用いた支線抽出技術,電子情報通信学会2018年総合大会講演論文集,2018年03月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に電柱を介して設置された空中線と樹木を含む3次元形状の3次元点群データから、前記電柱の座標を基準として前記空中線の点群データが存在すると想定される領域を対象エリアとして切り出す対象エリア切り出し部と、
前記対象エリア内の前記3次元点群データの中から、前記空中線の候補点群データを抽出する空中線候補抽出部と、
抽出された前記空中線の候補点群データに基づいて、前記空中線のモデルを推定する空中線モデル推定部と、を有し、
前記空中線候補抽出部は、
前記対象エリア内の前記3次元点群データを一定間隔のスライス面で分割し、
前記スライス面で分割された領域をクラスタリングして複数のクラスタを生成し、
複数の前記クラスタを所定のサイズで分類して、前記空中線の候補点群データを抽出することを特徴とする空中線抽出システム。
【請求項2】
前記空中線候補抽出部は、
地面に垂直でかつ一対の前記電柱の間を結ぶ線に垂直な前記スライス面で前記対象エリア内の前記3次元点群データを分割し、
前記スライス面で分割された前記領域として直方体領域を距離でクラスタリングして複数の前記クラスタを生成し、
複数の前記クラスタを前記所定のサイズとして外接矩形サイズで分類して、前記空中線の候補点群データを抽出することを特徴とする請求項1に記載の空中線抽出システム。
【請求項3】
前記空中線候補抽出部は、
前記外接矩形サイズが、予め定められた寸法範囲に入るかどうかを判定し、
前記判定の結果、前記予め定められた寸法範囲に入る場合には、前記空中線の候補点群データと判定し、
前記判定の結果、前記予め定められた寸法範囲に入らない場合には、前記空中線の候補点群データ以外の点群データと判定することを特徴とする請求項2に記載の空中線抽出システム。
【請求項4】
前記空中線候補抽出部は、
前記判定の結果、前記予め定められた寸法範囲に入らない場合には、前記空中線の候補点群データ以外の前記点群データを前記樹木の点群データと判定し、前記樹木の点群データを前記対象エリア内の前記3次元点群データからノイズとして除去することを特徴とする請求項3に記載の空中線抽出システム。
【請求項5】
前記空中線モデル推定部で推定された前記空中線のモデルを表示する表示装置を更に有することを特徴とする請求項1に記載の空中線抽出システム。
【請求項6】
空中に電柱を介して設置された空中線と樹木を含む3次元形状の3次元点群データを取得する3次元点群データ取得工程と、
前記3次元点群データから、前記電柱の座標を基準として前記空中線の点群データが存在すると想定される領域を対象エリアとして切り出す対象エリア切り出し工程と、
前記対象エリア内の前記3次元点群データの中から、前記空中線の候補点群データを抽出する空中線候補抽出工程と、
抽出された前記空中線の候補点群データに基づいて、前記空中線のモデルを推定する空中線モデル推定工程と、を有し、
前記空中線候補抽出工程は、
前記対象エリア内の前記3次元点群データを一定間隔のスライス面で分割し、
前記スライス面で分割された領域をクラスタリングして複数のクラスタを生成し、
複数の前記クラスタを所定のサイズで分類して、前記空中線の候補点群データを抽出することを特徴とする空中線抽出方法。
【請求項7】
前記空中線候補抽出工程は、
地面に垂直でかつ一対の前記電柱の間を結ぶ線に垂直な前記スライス面で前記対象エリア内の前記3次元点群データを分割し、
前記スライス面で分割された前記領域として直方体領域を距離でクラスタリングして複数の前記クラスタを生成し、
複数の前記クラスタを前記所定のサイズとして外接矩形サイズで分類して、前記空中線の候補点群データを抽出することを特徴とする請求項に記載の空中線抽出方法。
【請求項8】
前記空中線候補抽出工程は、
前記外接矩形サイズが、予め定められた寸法範囲に入るかどうかを判定し、
前記判定の結果、前記予め定められた寸法範囲に入る場合には、前記空中線の候補点群データと判定し、
前記判定の結果、前記予め定められた寸法範囲に入らない場合には、前記空中線の候補点群データ以外の点群データと判定することを特徴とする請求項に記載の空中線抽出方法。
【請求項9】
前記空中線候補抽出工程は、
前記判定の結果、前記予め定められた寸法範囲に入らない場合には、前記空中線の候補点群データ以外の前記点群データを前記樹木の点群データと判定し、前記樹木の点群データを前記対象エリア内の前記3次元点群データからノイズとして除去することを特徴とする請求項に記載の空中線抽出方法。
【請求項10】
前記空中線モデル推定工程で推定された前記空中線のモデルを表示する表示工程を更に有することを特徴とする請求項に記載の空中線抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中線抽出システム及び空中線抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査車両に3次元レーザスキャナ(レーザ測距計)、デジタルカメラ、GPS等の計測装置を搭載し、走行しながら道路周辺の地形や構造物等の3次元形状を3次元点群データという形で収集するモバイルマッピングシステム(Mobile Mapping System:MMS)が知られている。
【0003】
MMSは、道路周辺の広範囲の3次元点群データを効率的かつ高精度に取得することが可能であり、電柱や空中線(電線・通信線)等、道路周辺設備の状況把握への活用が期待されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、MMSにより取得した3次元点群データに基づいて設備の3次元モデルデータを生成し、この3次元モデルデータに基づいて、電柱(ポール)及び樹木の太さ、傾斜角及びたわみと、空中線(ケーブル)の最低地上高を算出する。また、上記3次元モデルデータを、デジタルカメラにより撮影された画像データ上にそれぞれの位置座標を合わせて重畳し、この3次元重畳画像に上記電柱、樹木及び空中線の構造を示すパラメータ情報を重ねて表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-195240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、電柱や空中線等の屋外設備の検出を目的として、3次元点群データに基づいて電柱、樹木及び空中線の3次元モデルデータを生成し、3次元モデルデータと画像データとを重畳させて可視化する方法が記載されている。
【0007】
特許文献1において、電柱と樹木は円を鉛直に重ねた3次元オブジェクトとしてモデル化し、空中線は懸垂曲線を連結させた3次元オブジェクトとしてモデル化している。この空中線を検出する処理では、不自然な懸垂曲線を除去することでノイズ除去が行われている。しかし、山間部等で樹木がノイズとなる場合には大量の懸垂曲線が空中線の候補となりノイズ除去が困難となる。
【0008】
本発明の目的は、空中線抽出システムにおいて、3次元点群データから空中線と樹木等のノイズを分離してからモデル推定を行うことにより、樹木がノイズとなる場合でも空中線の抽出を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の空中線抽出システムは、空中に電柱を介して設置された空中線と樹木を含む3次元形状の3次元点群データから、前記電柱の座標を基準として前記空中線の点群データが存在すると想定される領域を対象エリアとして切り出す対象エリア切り出し部と、前記対象エリア内の前記3次元点群データの中から、前記空中線の候補点群データを抽出する空中線候補抽出部と、抽出された前記空中線の候補点群データに基づいて、前記空中線のモデルを推定する空中線モデル推定部とを有し、前記空中線候補抽出部は、前記対象エリア内の前記3次元点群データを一定間隔のスライス面で分割し、前記スライス面で分割された領域をクラスタリングして複数のクラスタを生成し、複数の前記クラスタを所定のサイズで分類して、前記空中線の候補点群データを抽出することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様の空中線抽出システムは、空中に電柱を介して設置された空中線と樹木を含む3次元形状の3次元点群データから、前記電柱の座標を基準として前記空中線の点群データが存在すると想定される領域を対象エリアとして切り出す対象エリア切り出し部と、前記対象エリア内の前記3次元点群データの中から、前記空中線の候補点群データを抽出する空中線候補抽出部と、抽出された前記空中線の候補点群データに基づいて、前記空中線のモデルを推定する空中線モデル推定部とを有し、前記空中線候補抽出部は、前記対象エリア内の前記3次元点群データから前記樹木の点群データをノイズとして除去して、前記空中線の候補点群データを抽出することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様の空中線抽出方法は、空中に電柱を介して設置された空中線と樹木を含む3次元形状の3次元点群データを取得する3次元点群データ取得工程と、前記3次元点群データから、前記電柱の座標を基準として前記空中線の点群データが存在すると想定される領域を対象エリアとして切り出す対象エリア切り出し工程と、前記対象エリア内の前記3次元点群データの中から、前記空中線の候補点群データを抽出する空中線候補抽出工程と、抽出された前記空中線の候補点群データに基づいて、前記空中線のモデルを推定する空中線モデル推定工程とを有し、前記空中線候補抽出工程は、前記対象エリア内の前記3次元点群データを一定間隔のスライス面で分割し、前記スライス面で分割された領域をクラスタリングして複数のクラスタを生成し、複数の前記クラスタを所定のサイズで分類して、前記空中線の候補点群データを抽出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、空中線抽出システムにおいて、3次元点群データから空中線と樹木等のノイズを分離してからモデル推定を行うことにより、樹木がノイズとなる場合でも空中線の抽出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】レーザ測距器により3次元点群データを取得する例を説明する斜視図である。
図2】レーザ測距器により取得した3次元点群データを説明する概念図である。
図3】実施例1の空中線抽出システムの構成を示すブロック図である。
図4】実施例1の空中線抽出システムの処理の流れを示すフロー図である。
図5】対象エリアとローカル座標系の設定例を示す図である。
図6】空中線候補点群抽出の処理の流れを示すフロー図である。
図7】対象エリアを地面に垂直にスライスする例を説明する図である。
図8】実施例1に基づく効果の一例を示す図であり、(a)はスライス分割による空中線候補抽出結果の点群を示し、(b)は空中線モデル推定の結果を示す。
図9】実施例1を適用しない場合の結果を示す図であり、(a)は対象エリアを切り出した点群を示し、(b)は空中線モデル推定の結果を示す。
図10】実施例2の引込み線を含む3次元点群データの表示例を示す概念図である。
図11】実施例2の引込み線を含む3次元点群を上から見下ろした概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1を参照して、レーザ測距器により3次元点群データを取得する例を説明する。例えば、自動車101にレーザ測距器102を搭載し、自動車101の周辺を計測しながら走行させる。レーザ測距器102はレーザ光103を所定間隔で走査し、周囲の3次元形状の3次元点群データを収集する装置である。走行しながら収集した3次元点群データを統合すると、広範囲の3次元地図データを生成することができる。このような技術は、MMS(Mobile Mapping System:モバイルマッピングシステム)として知られている。
【0016】
3次元点群データには、道路104や電柱105あるいは建物や標識のような建築物のみならず、空中に電柱105を介して設置された電線又は通信線等の空中線106、樹木107のデータも含まれる。また、図1には示されていないが、空中線106には、電柱105から各家庭に配線される引込み線、電柱を支える支線等が含まれる。このような空中線106の配置情報は、電線、通信線等のメンテナンスを行なう際に有益である。
【0017】
図2を参照して、図1で取得した3次元点群データの例を説明する。3次元点群データは、道路の点群204、電柱の点群205、空中線の点群206、樹木の点群207を含む。
【0018】
図3を参照して、実施例1の空中線抽出システムの構成について説明する。実施例1の空中線抽出システムは、処理装置300を有する。処理装置300は、対象エリア切り出し部301、空中線候補抽出部302、空中線モデル推定部303を有する。また、処理装置300には、3次元点群データファイル304、設備データベース(設備DB)305、空中線モデルファイル306、表示装置としてのディスプレイ307、入力装置としてのキーボード・マウス308が接続されている。
【0019】
3次元点群データファイル304は、レーザ測距器102により取得した3次元点群データを格納する。図2に示したように、3次元点群データには、道路104の点群データ204、電柱105の点群データ205、空中線106の点群データ206、樹木107の点群データ207が含まれる。
【0020】
設備DB305は、電柱105等の事前に登録されている管理データを格納する。電柱105の管理データには、例えば、管理番号、種別(型番、直径、高さ)、設置位置(住所、座標)等の情報が含まれる。
【0021】
対象エリア切り出し部301は、3次元点群データファイル304に格納された3次元点群データから、設備DB305に格納された電柱105の座標を基準として空中線106の点群206が存在すると想定される領域を対象エリアとし、対象エリア内の点群データを抽出する。
【0022】
空中線候補抽出部302は、対象エリア内の3次元点群データから樹木107等のノイズを除去し、空中線106の候補となる点群データを抽出する。
【0023】
空中線モデル推定部303は、空中線106の候補となる3次元点群データに基づき、懸垂曲線(又は懸垂曲線の2次曲線近似)によって表現される空中線モデルを推定し、空中線モデルファイル306に空中線モデルのパラメータを出力する。空中線モデル推定部303で行われるモデル推定は、例えば、RANSAC(Random Sample Consensus)等の一般的なモデル推定手法に基づく。
【0024】
ディスプレイ307は3次元点群データや空中線モデルを表示する表示装置であって、例えば、図8図9に示したような3次元点群データや空中線モデルを表示する。キーボード・マウス308は、入力装置の一例である。入力装置は、対象エリア切り出し部301にて電柱105等を指定する。
【0025】
図4を参照して、実施例1の空中線抽出システムの処理の流れについて説明する。空中線抽出システムは、一般的な情報処理装置がソフトウエアを処理することで実現する。
【0026】
ステップS401では、図1で説明した手法で取得した3次元点群データを3次元点群データファイル304から入力する。3次元点群データは、図2に示すような点群のデータであり、例えば直交座標系を採用する場合には、各点は(x,y,z)の座標で表される。座標の原点(0,0,0)やx軸、y軸、z軸は任意に定めることができるが、一般に(x,y)座標を地図と対応付けられる形で定義し、z軸を高さ方向にとることが多い。ここでは、入力の3次元点群データの座標系をワールド座標系、処理しやすいように座標変換した座標系をローカル座標系と呼ぶ。なお、直交座標系の代わりに球面座標系その他の座標系を用いても良い。
【0027】
ステップS402では、対象エリア切り出し部301が、3次元点群データから空中線の点群206が存在する可能性の高い部分を対象エリアとして切り出す。切り出し方法は特に限定する必要はないが、例えば、図5に示すように、2本の電柱座標を基準として対象エリア501を定義して切り出す。
【0028】
対象エリア切り出し部301は、電柱座標等を基準として対象エリア501を規定する座標を求める。その後、対象エリア切り出し部301は、3次元点群ファイル304に格納された3次元点群データから、対象エリア501内の点群を抽出する。
【0029】
図5を参照して、ステップS402の対象エリアの切り出し処理の概念について説明する。ここで、(a)は、図2の3次元点群データを上から見た模式図であり、(b)は、図2の3次元点群データを横から見た模式図である。説明のために、ローカル座標系を採用し、空中線の点群206の長手方向(延伸方向)をx、高さ方向(地面に対して垂直な方向)をz、xとzに垂直な方向をyとしている。
【0030】
対象エリア501として、例えば、一対の電柱座標(x,y)、(x,y)の間を結ぶ線に平行な直方体領域を設定する。ローカル座標系502においては、例えば、一対の電柱座標の間の中点を原点とし、一対の電柱座標の間を結ぶ方向をx軸、地面に平行でx軸と直交する方向をy軸、地面に対して垂直な方向をz軸として設定する。
【0031】
一対の電柱座標(x,y)、(x,y)を指定する方法は、例えば、設備DB305から検索した電柱105のデータリストを表示したディスプレイ307の画面で、ユーザがキーボード・マウス308で電柱105を2本選択する方法が存在する。あるいは、電柱105の設置位置を地図上に表示したディスプレイ307の画面で、ユーザがキーボード・マウス308で電柱105を2本選択する方法が存在する。さらに、設備DB305に登録されている電柱105の座標情報から、近傍の2本の組合せを総当りで選択する方法が存在する。
【0032】
図5に示すように、一対の電柱座標によって規定される対象エリア501は、道路の点群204や電柱の点群205等の点群は対象エリア501外として除去される可能性が高く、空中線の点群206あるいは樹木の点群207は対象エリア501内として残る可能性が高い。
【0033】
ステップS403では、対象エリア501を切り出し後、ワールド座標系を2本の電柱105がx軸上にあり、2本の電柱105の中心が原点(x、y)=(0,0)となるローカル座標系に変換する。
【0034】
なお、ステップS402の対象エリア切り出しとステップS403のローカル座標系への変換はこの順番に限定されるものではなく、処理の順番を入れ替えてもよい。
【0035】
ステップS404では、空中線候補抽出部302が空中線候補の点群の抽出を行う。空中線候補抽出部302は、対象エリア501内の3次元点群データの中から空中線106の候補点群データを抽出する。
【0036】
ステップS405では、空中線モデルの推定を行う。空中線モデル推定部303は、抽出された空中線106の候補点群データに基づいて、空中線106のモデルを推定する。ステップS406では、ワールド座標系への変換を行う。ステップS406では、ステップS403でローカル座標系に変換している場合には、ワールド座標系へ戻しておく。 ステップS407では、空中線モデルの出力を行う。具体的には、空中線モデル推定部303で推定された空中線106のモデルを空中線モデルファイル306に出力する。また、必要に応じて、空中線候補の点群等を表示したディスプレイ307に、推定結果の空中線モデルを重畳して表示する。
【0037】
図6を参照して、図4のステップS404の空中線候補点群抽出の処理の流れについて説明する。
ステップS601では、対象エリア501を地面に垂直にスライスする。
【0038】
図7を参照して、対象エリア501を地面に垂直にスライスする例について説明する。
ステップS601では、3次元点群データから空中線の点群206が存在する可能性が高い領域として切り出した対象エリア501を、地面に垂直でかつ一対の電柱の点群205の間を結ぶ線に垂直なスライス面701でスライスする。このように、対象エリア501内の3次元点群データを一定間隔のスライス面701で分割する。つまり、地面に垂直でかつ一対の電柱の点群205の間を結ぶ線に垂直なスライス面701で対象エリア501内の3次元点群データを分割する。スライス面701で分割された直方体領域(単にスライスと呼ぶ)は通常、同一形状かつ同一体積を持つ。
【0039】
ステップS602では、各スライスを距離でクラスタリングする。
クラスタリングは一般的なクラスタリング手法に基づく。例えば、同一クラスタと判定する距離の最大値を閾値パラメータとして設定し、最近傍点との距離が閾値以下となる場合には同一クラスタと判定する。
【0040】
ステップS603では、各クラスタを外接矩形サイズで分類する(ステップS6031)。具体的には、以下の数1を満たすかどうかを判定する。数1において、SegX、SegY、SegZは外接矩形サイズを表す。SegXはクラスタ内の点群の最大X座標と最小X座標の差、SegYは最大Y座標と最小Y座標の差、SegZは最大Z座標と最小Z座標の差をそれぞれ表す。MinSegX、MaxSegY、MaxSegZは、空中線抽出システムに設定する閾値パラメータである。
【0041】
【数1】
【0042】
判定の結果、上記数1を満たす場合には、空中線の点群206の候補とする(ステップS6032)。判定の結果、上記数1を満たさない場合には、空中線の点群206の候補以外の点群候補とする(ステップS6033)。
【0043】
このように、図4のステップS404の空中線候補点群抽出の処理においては、空中線候補抽出部302は、対象エリア501内の3次元点群データを一定間隔のスライス面701で分割し、スライス面701で分割された領域をクラスタリングして複数のクラスタを生成する。そして、複数のクラスタを所定のサイズで分類して空中線106の候補点群データを抽出する。
【0044】
具体的には、空中線候補抽出部302は、地面に垂直でかつ一対の電柱の点群205の間を結ぶ線に垂直なスライス面701で対象エリア501内の3次元点群データを分割し、スライス面701で分割された直方体領域を距離でクラスタリングして複数のクラスタを生成する。そして、複数のクラスタを外接矩形サイズで分類して、空中線106の候補点群データを抽出する。
【0045】
また、空中線候補抽出部302は、外接矩形サイズが予め定められた寸法範囲(上記数1で定められた寸法範囲)に入るかどうかを判定する。判定の結果、予め定められた寸法範囲に入る場合(上記数1を満たす場合)には、空中線106の候補点群データと判定する。判定の結果、予め定められた寸法範囲に入らない場合(上記数1を満たさない場合)には、空中線106の候補点群データ以外の点群データと判定する。例えば、判定の結果、予め定められた寸法範囲に入らない場合(上記数1を満たさない場合)には、空中線106の候補点群データ以外の点群データを樹木107の点群データと判定し、樹木107の点群データを対象エリア501内の3次元点群データからノイズとして除去する。
【0046】
このように、上記空中線候補点群抽出の処理において、図6に示すスライス処理(ステップS601)とクラスタリング処理(ステップS602)を行うことにより、樹木の点群207と空中線の点群206を高精度で分離することができる。
【0047】
図8は、実施例1に基づく効果の一例を示す概念図であり、(a)はスライス分割による空中線候補抽出結果の点群を示し、(b)は空中線モデル推定の結果を示す。
【0048】
図8(a)において、801は、対象エリア501内の空中線候補の点群である。対象エリア501内の空中線候補の点群801の抽出は、図3の空中線候補抽出部302により、図4のS404のステップにより行われる。図8(a)に示すように、対象エリア501内では空中線候補の点群801が抽出され、樹木の点群207等のノイズは除去される。
【0049】
図8(b)において、802は、対象エリア501内の空中線候補の点群801に基づいて推定された空中線モデル推定の結果である。空中線モデル推定は、図3の空中線モデル推定部303により、図4のS405のステップにより行われる。図8(b)に示すように、空中線候補の点群801に対応する空中線モデル802が推定される。
【0050】
図9は、実施例1を適用しない場合の結果を示す概念図であり、(a)は対象エリアを切り出した点群を示し、(b)は空中線モデル推定の結果を示す。
【0051】
図9(a)に示すように、対象エリア501の点群901には、樹木の点群207と空中線の点群206とが混在している。
【0052】
この結果、図9(b)に示す空中線モデル推定の結果902においては、樹木の点群207と空中線の点群206とが分離されておらず、樹木の点群207と空中線の点群206の両方が空中線候補となる。このため、無数の空中線モデル902が推定される。これは、図8のように、対象エリア501内の空中線候補の点群801の抽出が、図3の空中線候補抽出部302により行われていないからである。
【0053】
実施例1によれば、空中線候補抽出部302は、対象エリア501内の3次元点群データから樹木107の点群データをノイズとして除去して、空中線106の候補点群データを抽出する。この結果、樹木の点群207と空中線の点群206を分離することができ、特に、山間部等で樹木107がノイズとなる場合でも空中線106の抽出が可能になる。
【実施例2】
【0054】
実施例2では、空中線の一例として引込み線及び支線を対象とした例を説明する。引込み線とは、電柱と各家庭を配線するケーブルであり、通常は電柱から各家庭の軒先等に取り付けられている引込み線取り付け点までをいう。支線は電柱を支えるためのワイヤーである。システム構成や処理フロー等の多くは実施例1と同様に構成することができる。以下では、実施例1と異なる部分について説明する。
【0055】
図10は、引込み線及び支線を含む3次元点群データの表示例である。
1001は、引込み線(電柱と各家庭を結ぶ)の点群である。1002は、支線(電柱205を支えるために設置)の点群である。1003は、建物の点群である。電柱205から引込み線の点群1001が建物の点群1003の引込み線取り付け点に接続されている。そのほか、例えば樹木の点群207等の点群データが含まれている。このような引込み線の点群1001を対象とした場合、図4のフローで示した実施例1の処理のうち、図4の対象エリアの切り出し処理ステップS402と、図6の対象エリアのスライス処理ステップS601を変更することにより対応が可能である。
【0056】
図11は、図10の引込み線の点群1001、支線の点群1002を含む3次元点群を上から見下ろした概念図である。引込み線及び支線は、図11に示すように、電柱を基点として放射線状に伸びる線である。
【0057】
スライス面1101は、電柱の点群205を中心とした同心円の円柱である。電柱の点群205から、引込み線の点群1001が、建物の点群1003に引き込まれている。実施例2では、図4に示す対象エリアの切り出し処理(S402)で、電柱の点群205を指定することにより、電柱の点群205を中心とした円柱を対象エリアとして定義する。
【0058】
図6に示す対象エリアのスライス処理S601では、対象エリアを同心円の円柱でスライスしてドーナッツ状の細分化エリアを得る。具体的には、地面に垂直かつ電柱を中心軸とした半径方向に等間隔な同心円の円柱面で分割する。その他の処理については、実施例1とほぼ同じなのでその説明は省略する。
【0059】
上記実施例2によれば、引込み線や支線を含む場合であっても、空中線の抽出が可能になる。
【符号の説明】
【0060】
101 自動車
102 レーザ測距器
103 レーザ光
104 道路
105 電柱
106 空中線
107 樹木
204 道路の点群
205 電柱の点群
206 空中線の点群
207 樹木の点群
300 処理装置
301 対象エリア切り出し部
302 空中線候補抽出部
303 空中線モデル推定部
304 3次元点群データファイル
305 設備DB
306 空中線モデルファイル
307 ディスプレイ
308 キーボード・マウス
501 対象エリア
502 ローカル座標系
701 スライス面
801 空中線候補の点群
802 空中線モデル推定の結果
901 対象エリアの点群
902 空中線モデル推定の結果
1001 引込み線の点群
1002 支線の点群
1003 建物の点群
1101 スライス面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11