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  • 特許-電子写真機器用導電性ロール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電子写真機器用導電性ロール
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20230726BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20230726BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20230726BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G15/02 101
G03G15/08 235
F16C13/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019228126
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021096377
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁宏
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-129481(JP,A)
【文献】特開2014-164226(JP,A)
【文献】特開2010-282140(JP,A)
【文献】特開2017-67931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/08
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、
前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、ハロゲン原子を含む成分を含有し、
前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、NH基を有するポリマーを含有し、
前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有することを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
【請求項2】
前記イオン交換体のメジアン径が、0.05~1.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項3】
前記イオン交換体が、ジルコニウムおよびビスマスの両方を金属成分として含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項4】
前記イオン交換体が、ジルコニウムを金属成分として含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項5】
前記NH基を有するポリマーが、ポリアミド樹脂およびメラミン樹脂の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項6】
前記ハロゲン原子を含む成分が、ヒドリンゴムであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項7】
前記弾性体層および前記表層の両方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項8】
前記イオン交換体が、両イオン交換体を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項9】
前記弾性体層および前記表層の一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含む陽イオン交換体を含有し、前記弾性体層および前記表層の他方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含む陰イオン交換体を含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項10】
前記弾性体層が、ハロゲン原子を含む成分を含有し、前記表層が、NH基を有するポリマーを含有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【請求項11】
前記弾性体層が、ヒドリンゴムを含有し、前記表層が、ポリアミド樹脂およびメラミン樹脂の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において、感光ドラムの周囲には、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールが配設されている。導電性ロールとしては、軸体と、軸体の外周面上に形成された弾性体層と、弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備えたものが知られている。例えば特許文献1には、芯金上にエピクロルヒドリン系ゴム基材からなる弾性体層を具備する導電性ロールが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-191960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性ロールでは、耐久時において、ロール表面(表層)にクラックが発生する問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐久時のロール表面におけるクラックの発生が抑えられる電子写真機器用導電性ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、弾性体層および表層のいずれかに塩素イオンを発生させる成分が含まれ、弾性体層および表層のいずれかにアンモニウムイオンを発生させる成分が含まれるときに、耐久時のロール表面にクラックが発生しやすいことを突き止めた。そして、その原因は、発生した塩素イオンとアンモニウムイオンが結合してクロラミンの結晶が生成され、脆い性質のクロラミンの結晶が感光体などの接触部材から受ける圧力によって割れるときに表層も一緒に割れるためであると考え、本発明を構成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、軸体と、前記軸体の外周面上に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周面上に形成された表層と、を備え、前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、ハロゲン原子を含む成分を含有し、前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、NH基を有するポリマーを含有し、前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有することを要旨とするものである。
【0008】
前記イオン交換体のメジアン径は、0.05~1.0μmの範囲内であることが好ましい。前記イオン交換体は、ジルコニウムおよびビスマスの両方を金属成分として含むことが好ましい。前記イオン交換体は、ジルコニウムを金属成分として含むことが好ましい。前記NH基を有するポリマーは、ポリアミド樹脂およびメラミン樹脂の少なくとも一方であることが好ましい。前記ハロゲン原子を含む成分は、ヒドリンゴムであることが好ましい。前記弾性体層および前記表層の両方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有することが好ましい。前記イオン交換体は、両イオン交換体を含むことが好ましい。前記弾性体層および前記表層の一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含む陽イオン交換体を含有し、前記弾性体層および前記表層の他方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含む陰イオン交換体を含有することが好ましい。前記弾性体層が、ハロゲン原子を含む成分を含有し、前記表層が、NH基を有するポリマーを含有することが好ましい。前記弾性体層が、ヒドリンゴムを含有し、前記表層が、ポリアミド樹脂およびメラミン樹脂の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロールによれば、前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、ハロゲン原子を含む成分を含有し、前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、NH基を有するポリマーを含有し、前記弾性体層および前記表層の少なくとも一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有することから、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方が捕捉され、クロラミンの発生が抑えられるため、耐久時のロール表面におけるクラックの発生が抑えられる。
【0010】
前記イオン交換体のメジアン径が0.05~1.0μmの範囲内であると、前記イオン交換体のメジアン径が小さく、前記イオン交換体の単位質量当たりの表面積が大きいため、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能が向上する。
【0011】
前記イオン交換体がジルコニウムおよびビスマスの両方を金属成分として含むと、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能が向上する。
【0012】
前記イオン交換体がジルコニウムを金属成分として含むと、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能が向上する。
【0013】
前記弾性体層および前記表層の両方がジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有すると、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能が向上する。
【0014】
前記イオン交換体が両イオン交換体を含むと、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの両方が捕捉されるため、クロラミンの発生を抑える効果が向上する。
【0015】
前記弾性体層および前記表層の一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含む陽イオン交換体を含有し、前記弾性体層および前記表層の他方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含む陰イオン交換体を含有すると、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの両方が捕捉されるため、クロラミンの発生を抑える効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る電子写真機器用導電性ロール(以下、単に導電性ロールということがある。)について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【0018】
導電性ロール10は、軸体12と、軸体12の外周面上に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周面上に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、導電性ロール10のベースとなる層(基層)である。表層16は、導電性ロール10の表面に現れる層となっている。また、特に図示しないが、必要に応じて、抵抗調整層等の中間層が、弾性体層14と表層16の間に形成されていてもよい。
【0019】
導電性ロール10において、弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、ハロゲン原子を含む成分を含有し、弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、NH基を有するポリマーを含有し、弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有する。
【0020】
ハロゲン原子を含む成分は、弾性体層14と表層16のどちらか一方に含まれていてもよいし、弾性体層14と表層16の両方に含まれていてもよい。ハロゲン原子を含む成分としては、ハロゲン含有ポリマー、ハロゲン含有イオン導電剤などが挙げられる。ハロゲン含有ポリマーとしては、ヒドリンゴムなどが挙げられる。ハロゲン含有イオン導電剤としては、陰イオンがハロゲンアニオンのイオン導電剤、陰イオンが過ハロゲン酸イオンのイオン導電剤などが挙げられる。過ハロゲン酸イオンとは、過塩素酸イオン、過臭素酸イオンなどである。陰イオンがハロゲンアニオンあるいは過ハロゲン酸イオンのイオン導電剤の陽イオンとしては、第4級アンモニウムカチオン、第4級ホスホニウムカチオンなどが挙げられる。弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、ハロゲン原子を含む成分を含有する、具体的構成としては、弾性体層14のベースポリマーがハロゲン含有ポリマーである、表層16のバインダーポリマーがハロゲン含有ポリマーである、弾性体層14のイオン導電剤がハロゲン含有イオン導電剤である、表層16のイオン導電剤がハロゲン含有イオン導電剤である、などの構成が挙げられる。
【0021】
NH基を有するポリマーは、弾性体層14と表層16のどちらか一方に含まれていてもよいし、弾性体層14と表層16の両方に含まれていてもよい。NH基を有するポリマーとしては、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、NH基を有するポリマーを含有する、具体的構成としては、弾性体層14のベースポリマーがNH基を有するポリマーである、表層16のバインダーポリマーがNH基を有するポリマーである、などの構成が挙げられる。
【0022】
弾性体層14と表層16の組み合わせとしては、特に限定されるものではないが、弾性体層14がハロゲン原子を含む成分を含有し、表層16がNH基を有するポリマーを含有する構成などが好適である。より具体的には、弾性体層14がヒドリンゴムを含有し、表層16がポリアミド樹脂およびメラミン樹脂の少なくとも一方を含有する構成などが好適である。
【0023】
上記イオン交換体は、弾性体層14と表層16のどちらか一方に含まれていてもよいし、弾性体層14と表層16の両方に含まれていてもよい。弾性体層14と表層16のどちらか一方よりも両方に上記イオン交換体が含まれている構成のほうが、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能により優れる。
【0024】
イオン交換体としては、陽イオン交換体、陰イオン交換体、両イオン交換体が挙げられる。上記イオン交換体は、陽イオン交換体のみで構成されていてもよいし、陰イオン交換体のみで構成されていてもよいし、両イオン交換体のみで構成されていてもよいし、陽イオン交換体、陰イオン交換体、両イオン交換体のうちのいずれか2種の組み合わせで構成されていてもよい。陽イオン交換体、陰イオン交換体、両イオン交換体のうちのいずれか2種の組み合わせの場合には、2種が同じ層に含まれないようにするとよい。例えば、陽イオン交換体と陰イオン交換体を併用する場合、弾性体層14と表層16の一方に陽イオン交換体を用い、弾性体層14と表層16の他方に陰イオン交換体を用いるとよい。
【0025】
上記イオン交換体は、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体である。上記イオン交換体は、ジルコニウムおよびビスマスの両方を金属成分として含むものであってもよいし、ジルコニウムを金属成分として含みビスマスを金属成分として含まないものであってもよいし、ビスマスを金属成分として含みジルコニウムを金属成分として含まないものであってもよい。
【0026】
上記イオン交換体がジルコニウムおよびビスマスの両方を金属成分として含むと、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能が向上する。ジルコニウムおよびビスマスの両方を金属成分として含むとは、ジルコニウムを金属成分として含みビスマスを金属成分として含まないイオン交換体と、ビスマスを金属成分として含みジルコニウムを金属成分として含まないイオン交換体と、を併用する場合や、ジルコニウムおよびビスマスの両方を金属成分として含むイオン交換体を用いる場合などである。
【0027】
また、上記イオン交換体は、ジルコニウムを金属成分として含むとよい。上記イオン交換体がジルコニウムを金属成分として含むと、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能が向上する。ジルコニウムを金属成分として含むとは、少なくともジルコニウムを金属成分として含んでいればよく、金属成分がジルコニウムのみである構成、金属成分がジルコニウムと他の金属(ビスマス、アンチモン、その他の金属)である構成などである。金属成分がジルコニウムと他の金属である構成とは、ジルコニウムを金属成分として含み他の金属を金属成分として含まないイオン交換体と、他の金属を金属成分として含みジルコニウムを金属成分として含まないイオン交換体と、を併用する場合や、ジルコニウムおよび他の金属の両方を金属成分として含むイオン交換体を用いる場合などである。
【0028】
上記イオン交換体のメジアン径は、イオン交換体の凝集防止などの観点から、0.05μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.20μm以上である。また、上記イオン交換体のメジアン径は、単位当たりの表面積が大きく、イオンを捕捉する機能が向上するなどの観点から、1.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.80μm以下である。上記イオン交換体のメジアン径が0.05~1.0μmの範囲内であると、上記イオン交換体のメジアン径が小さく、上記イオン交換体の単位質量当たりの表面積が大きいため、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方を捕捉する機能が向上する。
【0029】
上記イオン交換体としては、東亞合成製IXEシリーズ、東亞合成製IXEPLASシリーズなどを挙げることができる。陽イオン交換体としては、IXE-100などを挙げることができる。陰イオン交換体としては、IXE-500、IXE-550、IXE-800などを挙げることができる。両イオン交換体としては、IXE-600、IXEPLAS-A1、IXEPLAS-A2、IXEPLAS-B1などを挙げることができる。
【0030】
弾性体層14に含まれる上記イオン交換体の含有量は、イオンの捕捉量を十分に確保するなどの観点から、弾性体層14のベースポリマー100質量部に対し、1.0質量部以上であることが好ましい。より好ましくは2.0質量部以上、さらに好ましくは3.0質量部以上である。また、ロール硬度上昇変化抑制などの観点から、弾性体層14のベースポリマー100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましい。より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは5.0質量部以下である。
【0031】
表層16に含まれる上記イオン交換体の含有量は、イオンの捕捉量を十分に確保するなどの観点から、表層16のバインダポリマー100質量部に対し、1.0質量部以上であることが好ましい。より好ましくは2.0質量部以上、さらに好ましくは3.0質量部以上である。また、ロール硬度上昇変化抑制などの観点から、表層16のバインダーポリマー100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましい。より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは5.0質量部以下である。
【0032】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。
【0033】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。
【0034】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0035】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0036】
非極性ゴムとしては、シリコーンゴム(Q)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。非極性ゴムのうちでは、低硬度でへたりにくい(弾性回復性に優れる)などの観点から、シリコーンゴムがより好ましい。
【0037】
架橋剤としては、樹脂架橋剤、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0038】
樹脂架橋剤としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、アミノ樹脂、グアナキミン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの従来より公知の樹脂架橋剤を挙げることができる。
【0039】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0040】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0041】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0042】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部の範囲内、より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0043】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2-メルカプトベンゾチアゾール塩、2-メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0044】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0045】
弾性体層14には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c-TiO、c-ZnO、c-SnO(c-は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0046】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて10~1010Ω・cm、10~10Ω・cm、10~10Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。
【0047】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0048】
表層16は、バインダーポリマーを少なくとも含む。バインダーポリマーとしては、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB)、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物、シリコーン樹脂、シリコーングラフトアクリルポリマー、アクリルグラフトシリコーンポリマー、ニトリルゴム、ウレタンゴムなどを挙げることができる。
【0049】
表層16には、導電性付与のため、導電剤を配合することができる。導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤が挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物が挙げられる。導電性金属酸化物としては、導電性チタン酸化物、導電性亜鉛酸化物、導電性スズ酸化物などが挙げられる。イオン導電剤としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。表層16には、表面粗さを形成するため、粗さ形成用粒子を配合してもよい。また、表層16には、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、可塑剤、レベリング剤、充填剤、加硫促進剤、加工助剤、離型剤などを挙げることができる。
【0050】
表層16は、材料種、導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。表層16の体積抵抗率は、用途などに応じて10~1011Ω・cm、10~1010Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定することができる。
【0051】
表層16の厚さは、特に限定されるものではなく、0.1~20μmの範囲などに設定するとよい。表層16の厚さは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製「VK-9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、弾性体層14の表面から表層16の表面までの距離をそれぞれ測定し、その平均によって表すことができる。
【0052】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金や、カーボンファイバー樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂製の中実体、中空体などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行っても良い。
【0053】
導電性ロール10は、軸体12の外周面上に弾性体層14を形成し、弾性体層14の外周面上に表層16を形成することにより、製造することができる。
【0054】
弾性体層14は、例えば、次のようにして形成することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周面上に弾性体層14を形成する。
【0055】
表層16は、表層16の形成材料(表層用組成物)を用い、これを弾性体層14の外周面に塗工し、乾燥処理などを適宜行うことにより形成することができる。表層16の形成材料は、希釈溶媒を含んでもよい。希釈溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、イソプロピルアルコール(IPA),メタノール,エタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン,トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチルなどの酢酸系溶媒、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。
【0056】
以上の構成の導電性ロール10によれば、弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、ハロゲン原子を含む成分を含有し、弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、NH基を有するポリマーを含有する構成において、弾性体層14および表層16の少なくとも一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有することから、耐久時に発生するおそれのあるハロゲンイオンとアンモニウムイオンの少なくとも一方が捕捉され、クロラミンの発生が抑えられるため、耐久時のロール表面におけるクラックの発生が抑えられる。
【0057】
そして、発生したクロラミンは感光体にも転写するので、経時使用により感光体の帯電性が変化するおそれがあるが、クロラミンの発生が抑えられることで、感光体の帯電性の変化も抑えられる。また、上記イオン交換体によって捕捉されるハロゲンイオンやアンモニウムイオンは極性体であるため、ロール表面の局所に集中すると帯電ムラが生じるおそれがあるが、上記イオン交換体によってハロゲンイオンやアンモニウムイオンが捕捉されるため、導電性ロール10の帯電ムラも抑えられる。
【0058】
さらに、発生したハロゲンイオンは、金属製の軸体12に接触すると、金属製の軸体12に錆を発生させるおそれがあるが、上記イオン交換体により弾性体層14または表層16においてハロゲンイオンが捕捉されることで、金属製の軸体12までハロゲンイオンが到達しなくなり、金属製の軸体12に錆が発生するのを抑えられる。
【0059】
導電性ロール10が軸体12と弾性体層14の間に接着剤層を有する場合には、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体(上記イオン交換体)は、この接着剤層に含まれていてもよい。この場合、弾性体層14および表層16いずれにも上記イオン交換体が含まれていなくてもよい。この接着剤層に上記イオン交換体が含まれていると、上記イオン交換体によりこの接着剤層においてハロゲンイオンが捕捉されることで、金属製の軸体12までハロゲンイオンが到達しなくなり、金属製の軸体12に錆が発生するのを抑えられる。また、金属製の軸体12までハロゲンイオンが到達したとしても、ハロゲンイオンによる錆の発生は、上記イオン交換体によるハロゲンイオンの捕捉速度よりも遅いので、金属製の軸体12に錆が発生するのを抑えられる。
【0060】
導電性ロール10は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器の帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールとして好適であり、特に帯電ロールとして好適である。
【実施例
【0061】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0062】
(実施例1)
<弾性体層用組成物の調製>
ヒドリンゴム100質量部に対し、イオン導電剤(テトラn-ブチルアンモニウムパークロレート)を3.0質量部、Zrを金属成分として含有するイオン交換体<1>を4.0質量部、過酸化物架橋剤を1.0質量部、カーボンブラックを1.0質量部添加し、これらを攪拌機により撹拌、混合して弾性体層用組成物を調製した。
【0063】
<弾性体層の作製>
鉄製芯金にニッケルメッキを施した軸体(直径6mm)を成形金型(パイプ状)にセットし、上記の弾性体層用組成物を注入し、180℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に弾性体層(厚み5mm)を形成した。
【0064】
<表層用組成物の調製>
ポリアミド樹脂100質量部に対して、メラミン樹脂50質量部、ケッチェンブラックEC(ケッチェンブラックインターナショナル社製)15質量部を配合し、メタノール-トルエン混合溶液(メタノール:トルエン=7:3)500質量部に混合撹拌して、表層用組成物を調製した。
【0065】
<表層の作製>
調製した表層用組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層(厚み10μm)を形成した。これにより、導電性ロールを作製した。
【0066】
(実施例2~5)
弾性体層用組成物の調製において、イオン交換体を変更した以外は実施例1と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0067】
(実施例6)
弾性体層用組成物の調製において、イオン交換体を配合せず、表層用組成物の調製において、イオン交換体<4>を配合した以外は実施例1と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0068】
(実施例7)
表層用組成物の調製において、イオン交換体<4>を配合した以外は実施例4と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0069】
(実施例8)
<弾性体層用組成物の調製>
ニトリルゴム100質量部に対し、イオン導電剤(テトラn-ブチルアンモニウムパークロレート)を3.0質量部、Zr,Biを金属成分として含有するイオン交換体<4>を4.0質量部、過酸化物架橋剤(日本油脂製「パーヘキサ25B」)を1.0質量部、カーボンブラック(東海カーボン製「シースト116」)を1.0質量部、添加し、これらを攪拌機により撹拌、混合して弾性体層用組成物を調製した。
【0070】
<弾性体層の作製>
鉄製芯金にニッケルメッキを施した軸体(直径6mm)を成形金型(パイプ状)にセットし、上記の弾性体層用組成物を注入し、170℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に弾性体層(厚み5mm)を形成した。
【0071】
<表層の作製>
実施例7と同様にして、弾性体層の外周に表層(厚み10μm)を形成した。これにより、導電性ロールを作製した。
【0072】
(実施例9)
表層用組成物の調製において、メラミン樹脂を配合しなかった以外は実施例7と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0073】
(実施例10)
表層用組成物の調製において、ポリアミド樹脂を配合しなかった以外は実施例7と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0074】
(実施例11)
弾性体層用組成物の調製において、イオン導電剤を配合しなかった以外は実施例7と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0075】
(比較例1)
弾性体層用組成物の調製において、イオン交換体を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0076】
(比較例2)
弾性体層用組成物の調製において、イオン交換体を変更した以外は実施例1と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0077】
弾性体層および表層の材料として用いた材料は以下の通りである。イオン交換体のメジアン径は、粒度分布計にて測定した。
・ヒドリンゴム(GECO):日本ゼオン製「Hydrin T3100」
・ニトリルゴム(NBR):日本ゼオン製「Nipol DN3335」
・ポリアミド樹脂(N-メトキシメチル化ナイロン):(帝国化学製「トレジンEF30T」)
・メラミン樹脂(トリメチロールメラミン):住友化学製「スミカフレックスM3」
・ウレタン樹脂:三井化学製「タケラックWS-400」
・イオン導電剤:テトラブチルアンモニウムパークロレート(TBAPc)
・イオン交換体<1>:IXE-100(Zr系陽イオン交換体)、メジアン径1.0μm
・イオン交換体<2>:IXE-800(Zr系陰イオン交換体)、メジアン径2.1μm
・イオン交換体<3>:IXE-550(Bi系陰イオン交換体)、メジアン径1.0μm
・イオン交換体<4>:IXEPLAS-B1(Zr,Bi系両イオン交換体)、メジアン径0.05μm
・イオン交換体<5>:IXE-600(Sb,Bi系両イオン交換体)、メジアン径0.8μm
・イオン交換体<6>:IXE-300(Sb系陰イオン交換体)、メジアン径0.5μm
・過酸化物架橋剤:日本油脂製「パーヘキサ25B」
・カーボンブラック:東海カーボン製「シースト116」
【0078】
作製した導電性ロールを帯電ロールとして用いてクラックの発生の有無を調べた。弾性体層および表層の材料配合組成(質量部)と評価結果を以下の表に示す。
【0079】
(耐久時のクラック発生)
作製した導電性ロールを帯電ロールとしてコニカミノルタ製複合機「bizhub C658」にセットし、15℃×10%RH環境下にて1%罫線画像を連続印刷した。印刷枚数が下記の所定枚数に達したときに、帯電ロールの表面を目視にて観察した。100万枚以上印刷してもクラックが入らない場合を「A」、60万枚以上100万枚未満の印刷でクラックが発生した場合を「B」、30万枚以上60万枚未満の印刷でクラックが発生した場合を「C」、30万枚の印刷までにクラックが発生した場合を「D」とした。
【0080】
【表1】
【0081】
比較例1,2では、弾性体層および表層のいずれにも、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有していない。比較例1,2では、弾性体層がハロゲン原子を含むヒドリンゴムおよびイオン導電剤を含有し、表層がNH基を有するポリアミド樹脂およびメラミン樹脂を含有する。比較例1,2によれば、耐久枚数が30万枚以下の早い段階で、ロール表面にクラックの発生が確認された。一方、実施例では、弾性体層および表層の少なくとも一方が、ジルコニウムおよびビスマスの少なくとも一方を金属成分として含むイオン交換体を含有している。実施例では、比較例1,2と同様、弾性体層がハロゲン原子を含むヒドリンゴムやイオン導電剤を含有し、表層がNH基を有するポリアミド樹脂やメラミン樹脂を含有する。実施例によれば、耐久枚数が60万枚以上でロール表面にクラックの発生が確認されるか、耐久枚数が100万枚以上でもロール表面にクラックの発生が確認されなかった。したがって、本発明によれば、耐久時のロール表面におけるクラックの発生が抑えられる。
【0082】
そして、実施例1,2から、上記イオン交換体のメジアン径が1.0μm以下であると、耐久時のロール表面におけるクラックの発生を抑える効果が向上することがわかる。また、実施例1~5から、上記イオン交換体が金属成分としてジルコニウムを含むと、耐久時のロール表面におけるクラックの発生を抑える効果が向上することがわかる。また、実施例1~5から、上記イオン交換体がジルコニウムとビスマスの両方を金属成分として含有すると、耐久時のロール表面におけるクラックの発生を抑える効果が向上することがわかる。また、実施例1,4から、上記イオン交換体が両性イオン交換体であると、耐久時のロール表面におけるクラックの発生を抑える効果が向上することがわかる。また、実施例4,7から、弾性体層と表層の両方に上記イオン交換体を含有すると、耐久時のロール表面におけるクラックの発生を抑える効果が向上することがわかる。
【0083】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 導電性ロール
12 軸体
14 弾性体層
16 表層
図1