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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】3D印刷可能バイオゲルおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/78 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
C07K14/78
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019514192
(86)(22)【出願日】2017-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 US2017034582
(87)【国際公開番号】W WO2017205695
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】62/341,960
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518419264
【氏名又は名称】ティーディービーティー アイピー インコーポレイティド
【住所又は居所原語表記】51-36 35TH STREET LONG ISLAND CITY,NY 11101 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エル.コーエン
(72)【発明者】
【氏名】クリス ペルティエ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第01856272(EP,B1)
【文献】ACS Appl. Mater. Interfaces, 2016, Vol.8, p.6905-6916
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/78
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオゲル組成物であって、以下:
全バイオゲル組成物のmg/mL~60mg/mLの量のコラーゲン材料;および
弱酸溶液;を含み、ここで前記バイオゲル組成物は、以下:
25℃~37℃の温度にて3分未満でゲル化を受け;
15Pa~100Paの剪断応力下で液体であり;そして
30Pa~120Paの静水圧下でのゲル化の間、固体を維持する
ことを特徴とするものであり、
ここで前記バイオゲル組成物は、以下:
弱酸溶液中に前記コラーゲン材料を含有する第一容器を供給し;
キャリヤーを含有する第二容器を供給し;そして
前記第一容器の弱酸溶液中の前記コラーゲン材料を前記第二容器の前記キャリヤーと接触させて、前記バイオゲル組成物を得ること
を含む方法によって得られるものであり、ここで前記接触させることが、前記バイオゲル組成物が50%~99.9%の均質性を有するまで前記弱酸溶液中の前記コラーゲン材料と前記キャリヤーとを攪拌して、前記バイオゲル組成物を形成することを含む、
バイオゲル組成物。
【請求項2】
前記コラーゲン材料がI型コラーゲンを含み、前記I型コラーゲンはウシ、ブタ、ネズミまたはその組み合わせより選択された哺乳類源から採取される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記弱酸溶液が、前記弱酸溶液の0.01%~3%の量で弱酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記弱酸溶液が、ギ酸、プロパン酸、酢酸、クエン酸、ブタン酸、サリチル酸、グルコン酸、ヘプトン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硝酸、次亜塩素酸、塩酸またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、リボース、リボフラビンまたはそれらの組み合わせからなる群より選択された架橋剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のバイオゲル組成物であって、前記コラーゲン材料が、
(a)コラーゲンベース材料を処理して生体材料粒子を得;
(b)前記生体材料粒子を弱酸溶液と接触させてコラーゲン含有溶液を得;
(c)前記コラーゲン含有溶液を分離して抽出されたコラーゲン溶液を得;
(d)前記抽出されたコラーゲン溶液を塩溶液と接触させてコラーゲン沈殿物を得;
(e)前記コラーゲン沈殿物を弱酸溶液中に再懸濁してコラーゲン再懸濁液を得;
(f)前記コラーゲン再懸濁液を脱塩し;
(g)前記コラーゲン再懸濁液を乾燥してコラーゲン材料を得;そして
(h)前記コラーゲン材料を滅菌する
ことを含むコラーゲン材料の採取方法により得られる、バイオゲル組成物。
【請求項7】
前記コラーゲンベース材料がI型コラーゲンを含む、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項8】
前記コラーゲン材料の採取方法が24時間~2週間の期間に渡り前記生体材料粒子を弱酸溶液と接触させることを含む、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項9】
前記分離が、5,000G~10,000Gの力で60分~120分間の期間に渡り前記コラーゲン含有溶液を遠心分離することを含む、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項10】
少なくとも95%純度のコラーゲン沈殿物が得られるまで前記抽出コラーゲン溶液と塩溶液との接触が繰り返される、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項11】
前記コラーゲン材料の採取方法が前記コラーゲン再懸濁液を2.8~4.5のpHに調整することを更に含む、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項12】
前記脱塩が0.01%~20%弱酸溶液に対する透析を含む、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項13】
前記コラーゲン再懸濁液を乾燥してコラーゲン材料を得る工程が、超臨界流体乾燥、循環式加圧乾燥、不活性媒体乾燥、噴霧乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥または脱水により実施される、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項14】
前記コラーゲン材料の滅菌が、ガンマ線照射、過酸とのインキュベーション、または超臨界流体処置を含む、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項15】
三次元構造体を生産する方法であって、以下:
0℃~12℃の温度で請求項1に記載のバイオゲル組成物をモジュール生産システムに供給し、ここで前記バイオゲル組成物が5mg/mLを超える量のコラーゲン材料と弱酸溶液とを含み;
前記バイオゲル組成物を0℃~12℃の温度に維持し;
前記バイオゲル組成物を堆積させて三次元構造体を成形し、そこで前記三次元構造体がゲル化を受け;そして
前記三次元構造体を硬化させる
ことを含む方法。
【請求項16】
前記三次元構造体が25℃~37℃の温度で3分間未満のゲル化を受ける、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記硬化が、緩衝液中で34℃~37℃の温度で実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
生存細胞をさらに含む、請求項1に記載のバイオゲル組成物。
【請求項19】
前記コラーゲン材料の採取方法が、前記コラーゲン再懸濁液のウイルスとプリオンの不活化を実施することをさらに含む、請求項に記載のバイオゲル組成物。
【請求項20】
前記接触させることが、前記バイオゲル組成物の均質性が少なくとも90%になるまで前記弱酸溶液中の前記コラーゲン材料と前記キャリヤーとを攪拌して、前記バイオゲル組成物を形成することを含む、請求項1に記載のバイオゲル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願へのクロス・リファレンス
本出願は、2016年5月26日出願の米国仮出願第62/341,960号の利益と優先権を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は一般的に3D印刷可能バイオゲルに関する。より詳しくは、本技術は、三次元構造体を構築するのに用いられる、コラーゲンを含む3D印刷可能バイオゲルの組成物と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
広範囲な用途を考えると、コラーゲンベースの材料は3D印刷技術への使用に有利な基材であると証明できたと言える。コラーゲンの構造、機能および性質により、コラーゲンは多種多様な組織工学の目的に重要な材料になっている。現在利用可能なコラーゲンはそれの多様な性能を反映しているが、まだ、現在利用可能なコラーゲン加工処理法は望ましくない性質(例えばゲル化速度、強度、弾性およびレオロジー)を有する製剤を提供する。ある種の3D製造方法、例えば積層造形は、迅速なゲル化特性を有する生体材料を必要とし、それはバイオ素材において達成するのが難しい。
【0004】
本技術はそれらのおよび他の欠点を克服することに向けられる。
【発明の概要】
【0005】
本技術の一観点は、コラーゲンを採取する方法に関する。該方法は、コラーゲンベースの生体材料を加工処理して生体材料粒子を得ることを含む。ある態様では、コラーゲンベース生体材料は哺乳類源由来のI型コラーゲンである。ある態様では、該方法は生体材料粒子を弱酸溶液と接触させてコラーゲン含有溶液を得ることを含む。ある態様では、該方法はコラーゲン含有溶液を分離することを含む。ある態様では、前記分離が遠心分離を含む。ある態様では、該方法はコラーゲン含有溶液を塩溶液と接触させてコラーゲン沈殿物を得ることを含む。ある態様では、該方法は、コラーゲン沈殿物を再懸濁させてコラーゲン再懸濁液を得ることを含む。ある態様では、該方法が、コラーゲン再懸濁液のウイルスとプリオンの不活化を行うことを含む。ある態様では、該方法がコラーゲン再懸濁液を脱塩することを含む。ある態様では、該方法がコラーゲン再懸濁液を乾燥してコラーゲン材料を得ることを含む。ある態様では、該方法がコラーゲン材料を滅菌することを含む。
【0006】
別の観点では、本技術はバイオゲル組成物を提供する。バイオゲル組成物は、上述したように採取されたコラーゲン材料を含む。ある態様では、バイオゲル組成物は弱酸溶液中のコラーゲン材料を含んでもよい。ある態様では、バイオゲル組成物は適当な量のコラーゲン材料を使って調製してもよい。ある態様では、バイオゲル組成物が5mg/mLを超える量のコラーゲン材料を含むことができる。ある態様では、バイオゲル組成物は室温またはそれより高温での急速ゲル化を受けることができる。ある態様では、本発明のバイオゲル組成物は、ゲル化前に15Pa~100Paの剪断応力下で液体であり、そしてゲル化中は約30Pa~約120Paの静水圧下で固体状態を維持する。ある態様では、バイオゲル組成物はキャリヤーおよび非天然型添加剤、例えば架橋剤を含む。
【0007】
別の観点では、本発明は、本明細書に記載のバイオゲル組成物から三次元構造体を作製する方法を提供する。ある態様では、該方法は、バイオゲル組成物をモジュール生産システムに提供することを含む。ある態様では、モジュール生産システムが3D印刷装置である。ある態様では、該方法がバイオゲル組成物を約0℃~約12℃の温度に維持することを含む。ある態様では、該方法が堆積、バイオゲル組成物を堆積させて三次元構造を形成することを含み、ここで該三次元構造体はゲル化する。ある態様では、該方法が三次元構造体を硬化させることを含む。
【0008】
更に別の観点では、本発明は三次元構造体作製用のバイオゲル組成物を調製する方法も提供する。ある態様では、該方法が、弱酸溶液中にコラーゲン材料を有する第一容器を提供することを含み、ここでコラーゲン材料は本明細書に記載の方法を使って採取される。
ある態様では、該方法はキャリヤーを有する第二容器を供給することを含む。ある態様では、該方法は生存細胞を含む第三容器を供給することを更に含んでもよい。ある態様では、該方法は、第一容器の弱酸溶液中のコラーゲン材料を第二容器の担体と接触させ、約50%~約99.9%の均質性を有するバイオゲル組成物を得ることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、コラーゲンを採取するための本発明の典型的方法を描写したフローチャートである。
【0010】
図2図2は、本発明のバイオゲル組成物から三次元構造体を作製する典型的方法を描写したフローチャートである。
【0011】
図3図3は、本発明のバイオゲル組成物を調製して三次元構造体を生産する典型的方法を描写したフローチャートである。
【0012】
図4図4は、本発明の未硬化バイオゲル組成物についての非ニュートン流体挙動測定のグラフ描写である。
【0013】
図5図5は、本発明のバイオゲル組成物についての熱硬化中の貯蔵弾性率と損失弾性率プロファイルのグラフ描写である。
【0014】
図6A図6Aは、比較用の市販コラーゲンバイオゲルに対する本発明のバイオゲル組成物の貯蔵弾性率の増加を表すグラフ描写である。
【0015】
図6B図6Bは、市販のコラーゲンバイオゲルと比較した本発明の硬化バイオゲル組成物の三次元構造比較である。
【0016】
図7図7は、一軸圧縮試験により測定したコラーゲンサンプルの弾性率に対する過酸滅菌の効果を表すグラフ表示である。
【0017】
図8図8は、本発明のバイオゲル組成物の硬化した三次元構造体についての一軸圧縮強度のグラフ描写である。
【0018】
図9図9は、架橋剤含有または不含有のバイオゲル組成物の硬化した三次元構造体の一軸圧縮強度のグラフ描写である。
【0019】
図10図10は、本発明のバイオゲル組成物と市販のコラーゲンバイオゲル組成物の硬化した三次元構造体の一軸圧縮強度の比較を示すグラフ描写である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
具体的説明
様々な態様を以下に説明する。特定の態様は、排他的説明としてまたは本明細書に記載するより広範な観点への限定として意図するものではないことに注意すべきである。特定の態様に関連して記載される1つの観点は、その態様に必ずしも限定されず、他の任意の態様で実施することができる。
【0021】
次の用語が本明細書全体で使われ、下記に定義される。
【0022】
本明細書中および請求の範囲に用いる場合、要素を記載する上での(特に請求の範囲との関連で)「a」と「an」と「the」といった単数形の冠詞および同様な指示語は、本明細書中異なって指摘されない限りまたは明確に否定されない限り、単数と複数の両方を包含するものと解釈すべきである。本明細書中の数値の範囲の記述は、本明細書中異なって指摘されない限り、単に、その範囲内に入る各々の個別値に対して個々に参照する簡略方法として機能するものである。本明細書中に記載の全ての方法は、異なって指摘されない限りまたは明確に否定されない限り、任意の適当な順序で実施することができる。任意のまたは全ての例の使用、または本明細書中に与えられる典型的な語(例えば「~などの」)は、単に、本発明の態様の理解を容易にするためのものであり、特に断らない限り、請求の範囲に対する限定を与えない。明細書中のどの語も、請求項に係わらない任意要素を不可欠なものとして指摘していると解釈すべきでない。
【0023】
本明細書中に例示的に記載される態様は、具体的に開示されない任意の1または複数の要素、1または複数の限定の非存在下で、適切に実施することができる。よって、例えば、用語「含んでなる」、「含む」、「含有する」等は、広くかつ限定せずに解釈されるだろう。更に、本明細書中で使用する用語と表現は、説明の表現としてかつ限定の表現としてでなく用いられており、記載される特徴またはその部分の任意同等物を排除するそのような用語と表現の使用の意図ではなく、また本発明の技術の範囲内で様々な変更が可能であることが理解される。その上、「本質的に~から成る」というフレーズは、具体的に言及されたそれらの要素の他に、本発明技術の基本的かつ新規な特徴に対し実質的に影響を及ぼさない追加の要素も包含するものと解釈されるだろう。「含む」という表現は、「含むが限定されない」ことを意味する。よって、他の言及されない物質、添加物、キャリヤーまたは工程が存在してもよい。異なって指摘されない限り、「a」または「an」は1または複数を意味する。
【0024】
異なって指摘されない限り、明細書および請求の範囲で用いられる性質、パラメーター、条件等の量を表現する全ての数は、いかなる場合でも用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。従って、それに反して指摘されない限り、明細書と請求の範囲に示される数的パラメーターは、近似値である。各数的パラメーターは、少なくとも、一般的な「(数字の)丸め」法を適用することによりそして報告された有効数字を考慮して解釈すべきである。範囲を含む数値的記述、例えば温度、時間、量および濃度の前に用いるときの用語「約」は、プラスマイナス(±)10%、5%または1%異なることができる近似値を示す。
【0025】
当業者に理解される通り、任意のおよび全ての目的で、特に書面を提供する形で、本明細書に開示される全ての範囲は、任意のおよび全ての可能な部分的範囲およびその部分的範囲の組み合わせを包含する。いずれの列挙した範囲も、その範囲を十分に記載しておりかつその範囲を少なくとも半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1等に均等分割することができると容易に理解される。非限定例として、本明細書に記載の各範囲は、下部3分の1、中部3分の1および上部3分の1等に容易に分割することができる。当業者により理解されるように、「~まで」、「少なくとも」、「~より多く」、「~未満」等といった全ての語は、言及した数を包含し、かつ上述したように部分範囲にその後分割することができる範囲を指す。最後に、当業者により理解されるように、ある範囲は個々のメンバーを包含する。
【0026】
ある態様では、用語「ゲル」とは、非限定的に、非ニュートン流体(non-Newtonian fluids)およびビンガム塑性体(Bingham plastics)を包含する。
【0027】
本明細書中で用いるとき、「剪断応力」または「剪断減粘性」という語は、流体様または非流体様挙動および流動に関連する材料のレオロジー粘弾特性を言う。剪断応力および剪断減粘性は、粘性材料のビンガム流動、塑性流動、偽塑性流動性、ダイラタンシー(dilatancy)、チキソトロピー(thixotropy)、レオペクシー(rheopexy)等に関連する性質または他の応力および/またはひずみ特性を包含する。更に、「剪断減粘性」は、見かけの粘度(剪断応力と剪断率の比)の減少を指し、増加を伴う(偽塑性)、時間依存性(チキソトロピック)または流動が始まる前に越えなければならない応力として定義される降伏応力に関連するもの(ビンガム塑性体および汎用ビンガム塑性体)を包含する。一般的にHarris, J. & Wilkinson, W.L., “Non-Newtonian Fluid”, 856-858頁, Parker, S.P.編,McGraw-Hill Encyclopedia of Physics, 第二版, McGraw-Hill, New York, 1993を参照のこと。本発明の適当な粘性範囲は、静止固体として10,000センチポアズ(cps)から約30,000cpsまで、または液体として3,000cpsから約10,000cpsまでを包含するが、それに限定されない。
【0028】
本明細書中で用いる「粘性」という語は、ある物質の剪断応力または引張応力による緩やかな変形に対する抵抗力を言う。
【0029】
本明細書中で用いる「過酸」という語は、カルボキシル基または無機オキソ酸のOH成分がOOH成分により置き換わった酸を指す。そのような過カルボン酸の例としては、非限定的に、過ギ酸と過酢酸が挙げられる。
【0030】
本明細書中で用いる「コラーゲン」という語は、高い引張応力を有しかつ大部分の多細胞生物に認められる結合組織の主要タンパク質を言う。コラーゲンは主要な線維性タンパク質であり、それは基底膜では非線維性タンパク質でもある。それは豊富なグリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリジンを含有する。コラーゲンは体全体に見つかり、少なくとも12の型(I型~XII型)のものがある。
【0031】
用語「生体材料」とは、天然源または合成源から誘導された材料を指す。
【0032】
本明細書中で用いる「容器」という語は、本明細書に開示されるように本発明技術を準備し使用するための任意材料を収容および保管することができる標準系をいう。材料としては、非限定的に、コラーゲン材料、弱酸溶液、キャリヤー、添加剤、溶剤、生存細胞、培地等またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、適当な容器には、非限定的に、シリンジ、漏斗、ビーカー、ミキサー、ドラム、ボトル、バイアル等がある。
【0033】
コラーゲンベース材料は、3D構造体を製造する際にバイオゲルとして使用するのに有意な基材である。多様な観点において、バイオゲル組成物用のコラーゲンを採取する方法、バイオゲル組成物、バイオゲル組成物を使って3D構造体を生産する方法、および3D印刷システム用のバイオゲル組成物の調製方法が提供される。
【0034】
一観点では、コラーゲンの採取方法であって、コラーゲンベース材料を加工処理して生体材料粒子を得;該生体材料粒子を弱酸溶液と接触させてコラーゲン含有溶液を得;前記コラーゲン含有溶液を分離し;前記コラーゲン含有溶液を塩溶液と接触させてコラーゲン沈殿物を得;前記コラーゲン沈殿物を再懸濁してコラーゲン再懸濁液を得;そして任意に、前記コラーゲン再懸濁液のウイルスとプリオン不活化を行い;前記コラーゲン再懸濁液を脱塩し;前記コラーゲン再懸濁液を乾燥してコラーゲン材料を得;そして前記コラーゲン材料を滅菌することを含む。
【0035】
コラーゲンベース材料は、脊椎動物コラーゲン源のような源由来のものであることができる。ある態様では、脊椎動物コラーゲン源としては、非限定的に、哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類等が挙げられる。ある態様では、起源は限定されないがウマ、イヌ、ブタ、ウシ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ネズミまたはヒトをはじめとする哺乳類である。ある態様では、哺乳類源はブタ、ウシ、ネズミまたはそれの組み合わせである。
【0036】
本発明の別の態様では、コラーゲンベース生体材料は人工源由来のものである。ある態様では、人工源としては非限定的に、細胞培養物、人工的に工作された細胞、細菌細胞培養物、哺乳類細胞培養物等またはそれの組み合わせにおける組換え発現タンパク質からのコラーゲンである。ある態様では、人工源が工作された細胞源である、適当な工作された細胞源としては、非限定的に、酵母細胞、昆虫分泌細胞当およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
コラーゲンベース生体材料中のコラーゲンは、種々の源から入手することができ、例えば非限定的に、腱、皮膚、靭帯、骨、歯、軟骨、結合組織、椎間板、角膜等およびそれらの組み合わせから入手することができる。ある態様では、コラーゲンベース生体材料は皮膚、骨、腱、またはそれらの組み合わせである。ある態様では、皮膚、骨または腱は哺乳類源、例えば非限定的に、ウシ、ブタ、ネズミまたはその組み合わせを含む源に由来することができる。起源が腱である場合、それは総指伸筋腱、横伸筋腱、深屈筋等またはそれの組み合わせを含むことができるが、それに限定されない。
【0038】
コラーゲンベース生体材料はそれ自体で使用でき、または品質判別にかけてもよい。この判別は、当業界で既知の様々な手法を使って実施でき、例えば非限定的に、非空白表面特性を含む領域を同定する手動外観検査、またはカラーと強度をピクセル値で読みそして閾値を超える領域が棄却されるコンピュータービジョン技術を使う方法が挙げられる。それらの閾値は、1:1:1比から約1%、約5%、約10%、約20%、約50%または約80%外れるRGB値を含むことができ;そして個々のチャンネル値は約99%、約95%、約90%、約80%、約50%、約30%であることができる。ある態様では、判別は、約5%未満の浸潤性を有するコラーゲンベース生体材料を選択することを含む。
【0039】
コラーゲンベース生体材料中のコラーゲンは任意の型のものであることができる。ある態様では、コラーゲンベース生体材料がI型コラーゲンを含んでもよい。I型コラーゲンは、大部分の結合組織に認められ、生物体において最も豊富なコラーゲン型であり、そして腱、真皮、骨に認められる。体内のコラーゲンの90%超がI型である。ある態様では、I型コラーゲンは不溶性コラーゲン、コラーゲン線維、可溶性コラーゲン、および酸可溶性コラーゲンを含む。ある態様では、I型コラーゲンは可溶性コラーゲン、酸可溶性コラーゲンまたはその組み合わせを含む。ある態様では、I型コラーゲンはアテロコラーゲンを含まない。
【0040】
ある態様では、本発明方法は、機械的作用を使ってコラーゲンベース生体材料を処理し、生体材料粒子を得ることを含む。適当な機械的作用としては、非限定的に、凍結、スライス、細断、ミンチ(刻む)、ミル(圧搾)、粉砕、それらの組み合わせが挙げられる。ある態様では、該方法はコラーゲンベース生体材料を細かい鎖に切断し、適当なサイズの生体材料粒子を得ることを含む。ある態様では、コラーゲンベース生体材料を縦方向にスライスすることができる。別の態様では、スライスが交差-縦方向でありうる。更に別の態様では、スライスが縦方向と交差-縦方向の両方である。ある態様では、スライスする前にコラーゲンベース生体材料を凍結せずにスライスを実施することができる。別の態様では、スライスを容易にするためにコラーゲン生体材料を凍結させてもよい。ある態様では、コラーゲンベース材料が、約100μm~約1cmのサイズを有する生体材料粒子へと機械的に処理される。適当な生体材料粒子径は、非限定的に、約100μm~約50mm、約100μm~約1mm、約100μm~約500μm、約100μm~約250μm、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を包含する。
【0041】
ある態様では、コラーゲンベース生体材料は、機械的作用の前に溶剤中に浸漬することを更に含む。適当な溶剤としては、非限定的に、脱イオン水、アルコールまたはその組み合わせが挙げられる。適当なアルコールには、非限定的に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等およびその組み合わせがある。ある態様では、加工処理が生体材料粒子を洗浄することを更に含む。洗浄は生体材料粒子を緩衝液に添加することを含む。適当な緩衝液としては、非限定的に、リン酸塩緩衝生理食塩水、塩化ナトリウム溶液、リン酸溶液、水およびリン酸緩衝液が挙げられる。
【0042】
生体材料粒子を得るための本発明のある態様では、本発明方法は該生体材料粒子を弱酸溶液と接触させ、コラーゲン含有溶液を得ることを含む。
【0043】
ある態様では、弱酸溶液は、該弱酸溶液の約0.01%~約20.0%の量で弱酸を含む。弱酸溶液中の弱酸の量としては、非限定的に、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約3%、約0.1%~約3%、約0.3%~約8%、約0.5%~約5%、約1%~約3%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を包含する。適当な弱酸溶液は、該弱酸溶液の約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、約10.0%、約12.5%、約15.0%、約20%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲である量において弱酸を含む。
【0044】
本発明のある態様では、生体材料粒子と接触させる弱酸溶液の量は、非限定的に、生体材料粒子1グラムあたり約25mL~約250mLの弱酸溶液を含む。生体材料粒子と接触させる弱酸溶液の適当量は、非限定的に、約25mL/g~約250mL/g、約25mL/g~約200mL/g、約25mL/g~約150mL/g、約25mL/g~約100mL/g、約25mL/g~約75mL/g、約25mL/g~約50mL/gを含む。あるいは、適当量は約50mL/g~約250mL/g、約100mL/g~約250mL/g、約150mL/g~約250mL/g、約200mL/g~約250mL/gを包含することができる。生体材料粒子と接触させる弱酸の量は、非限定的に、約100mL/g、約150mL/g、約200mL/g、約250mL/g、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。
【0045】
生体材料粒子と弱酸溶液との接触は、酸溶液中への生体材料粒子の最大の溶解または分散を保証する適当な方法を使って実施できる。ある態様では、そのような接触は、生体材料粒子を弱酸溶液と一緒に混合または攪拌してコラーゲン含有溶液を得ることを含んでよい。特定の態様では、接触は生体材料粒子と弱酸溶液との混合を含む。適当な接触は、手動の混合またはシェーカー(例えば軌道シェーカー)、ローテーター、タンブラー、大型タンクミキサー、オーバーヘッドスターラー等のような適当な混合装置を使った混合を含む。ある態様では、接触は軌道シェーカーを使って実施される。一態様では、軌道シェーカーを使った接触は、少なくとも約100RPM~約250RPM、約120RPM~約230RPM、約150RPM~約220RPM、約100RPM~約200RPM、約150RPM~約200RPM並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より小さい範囲の速度を含む。一態様では、軌道シェーカーを使った接触は、少なくとも約100RPM、約110RPM、約120RPM、約130RPM、約140RPM、約150RPM、約160RPM、約170RPM、約180RPM、約190RPM、約200RPM、約210RPM、約220RPM、約230RPM、約240RPM、約250RPM並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より小さい範囲の速度を含む。一態様では、軌道シェーカーの速度は約100RPM~約200RPMである。別の態様では、軌道シェーカーの速度は約100RPM~約150RPMである。更に別の態様では、軌道シェーカーの速度は約150RPM~約200RPMである。
【0046】
ある態様では、接触は生体材料粒子を弱酸溶液と共に攪拌することを含む。適当な攪拌は手動攪拌、オーバーヘッドスターラー、マグネティックスターラーを使った攪拌を含むことができる。ある態様では、生体材料粒子と弱酸溶液との接触が、約24時間から約2週間の期間であることができる。適当な期間は、非限定的に、約24時間から約10日間、約24時間から約7日間、約24時間から約5日間、約48時間から約14日間、約72時間から約9日間、約5日間から約14日間、約5日間から約7日間、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を包含することができる。該期間は、非限定的に、少なくとも約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、約84時間、約96時間、約5日間、約6日間、約7日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。一態様では、生体材料粒子と弱酸溶液との接触は、約2日間から約14日間の期間を含む。別の態様では、該接触は約3日間から約9日間の期間を含む。更に別の態様では、該接触は約5日間から約7日間の期間を含む。
【0047】
適当な弱酸溶液としては、非限定的に、約2.8~約4.0の間のpHを維持するのに適当な弱酸溶液を挙げることができる。ある態様では、弱酸溶液は約2.8~約4、約2.8~約3.5、約2.8~約3.3、約3.0~約4.0、約3.3~約4.0、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲のpHを維持する。ある態様では、適当な弱酸溶液としては、非限定的に、約3~約7のpKaを有する溶液を挙げることができる。適当なpKa値は、約3~約7、約3~約6、約3~約5、約3.5~約7、約4~約7、約4.5~約7、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を包含する。適当な弱酸溶液としては、非限定的に、ギ酸、プロパン酸、酢酸、クエン酸、ブタン酸、サリチル酸、グルコン酸、へプトン酸、炭酸、フッ化水素酸、硝酸、次亜塩素酸、塩酸等、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0048】
生体材料粒子の酸溶液が得られたら、抽出したコラーゲンを分離させるのに適当な処理にかけることができる。本発明技術のある態様では、コラーゲン含有溶液から抽出コラーゲンを分離させる処理としては、非限定的に、遠心分離、サイズ排除ろ過、篩ろ過等またはそれらの組み合わせが挙げられる。ある態様では、コラーゲン含有溶液の遠心分離は、約5,000G~約25,000Gの力での遠心分離を含む。ある態様では、該遠心分離は約5,000G~約20,000G、約5,000G~約15,000G、約5,000G~約12,000G、約5,000G~約10,000Gの力での遠心分離を含む。別の態様では、該遠心分離は少なくとも約5,000G、約6,000G、約7,000G、約8,000G、約9,000G、約10,000G、約11,000G、約12,000G、約15,000G、約20,000G、約25,000G、~約15,000G、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の力での遠心分離を含む。
【0049】
ある態様では、該遠心分離は、非限定的に、約10分~約120分の期間に渡る遠心分離を含む。ある態様では、該期間は、非限定的に、10分~約120分、約30分~約110分、約60分~約100分、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。適当な期間は約10分、約30分、約60分、約90分、約100分、約110分、約120分、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。一態様では、前記分離は、約10分~約90分または約80分~約110分の期間に渡りコラーゲン含有溶液を遠心分離することを含む。ある態様では、前記分離は遠心分離後に精製した上澄液を回収することを含んでもよい。
【0050】
次いで、抽出コラーゲンを含有する上澄液を、適当に処理して該溶液からコラーゲン材料を分離することができる。本発明のある態様では、コラーゲン含有溶液を分離した後、抽出コラーゲン溶液と塩溶液とを接触させる工程を、少なくとも約95%~約99.9%純度のコラーゲン沈殿物が得られるまで繰り返すことができる。ある態様では、該接触は約0.55M~約5M濃度の塩溶液との接触を包含する。ある態様では、塩濃度は非限定的に、約0.55M~約4M、約0.55M~約3M、約0.55M~約2M、約1M~約4M、約1M~約2.5M、約1M~約1.5M、約1.5M~約2.5M、約1M~約1.5M、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。適当な溶液濃度は、約0.55M、約0.75M、約1M、約1.5M、約2M、約2.5M、約3M、約3.5M、約4M、約4.5M、約5M、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。一態様では、抽出コラーゲン溶液と塩溶液との接触が、約0.55M~約3Mの塩溶液濃度を含むことができる。別の態様では、塩溶液濃度が約0.55M~約2Mの濃度を含むことができる。更に別の態様では、塩溶液濃度が約0.55M~約1.5Mの濃度を含むことができる。特定の態様では、塩溶液濃度が約1.5M未満の濃度を含むことができる。
【0051】
前記塩溶液は、コラーゲン材料の最大沈殿を確保するのに適当な速度で上清(すなわち抽出コラーゲン溶液)に添加することができる。ある態様では、該方法は、少なくとも約10mL/分~約20mL/分の速度で前記塩溶液を添加することを含む。ある態様では、該速度は、非限定的に、10mL/分~約22mL/分、約10mL/分~約18mL/分、約10mL/分~約15mL/分、約12mL/分~約25mL/分、約15mL/分~約22mL/分、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。塩溶液を添加する適当な速度は、非限定的に、少なくとも約10mL/分、約12mL/分、約15mL/分、約18mL/分、約20mL/分、約22mL/分、約25mL/分並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。ある態様では、塩溶液は約1:1~約2:1の塩溶液対コラーゲン含有溶液の重量比で添加することができる。
【0052】
ある態様では、前記塩溶液処理に続いて、得られた溶液を30分間から1週間の期間に渡りインキュベートする。ある態様では、該インキュベーションが約30分間~約6日間、約30分間~約5日間、約1時間~約4日間、約2時間~約1日間、約3時間~約12時間、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲であることができる。適当なインキュベーション期間は、少なくとも約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約6時間、約12時間、約1日間、約3日間、約4日間、約5日間、約1週間並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。
【0053】
ある態様では、該インキュベーションに続いて、得られたコラーゲン沈殿混合物の遠心分離を行う。該遠心分離は、インキュベートした溶液を約5,000G~約25,000Gの力で遠心分離することを含む。適当な遠心力は、非限定的に、約5,000G~約20,000G、約5,000G~約15,000G、約5,000G~約12,000G、約5,000G~約10,000Gを包含することができる。ある態様では、該遠心分離は、非限定的に、約5分~約60分の期間に渡る遠心分離を含む。適当な遠心分離期間は、非限定的に、約5分~約60分、約10分~約50分、約15分~約40分、約20分~約40分、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。あるいは、適当な遠心分離時間は非限定的に、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。一態様では、前記遠心分離は、インキュベーションなしで塩溶液処理を行った後、直接実施することができる。
【0054】
コラーゲン沈殿物を得るための上記工程は、コラーゲン沈殿物の最大回収を得るのに適当な程度繰り返すことができる。ある態様では、該方法は、少なくとも約95%純度のコラーゲン沈殿物が得られるまで、前記接触、塩処理、インキュベーションおよび分離の操作を1回または複数回繰り返すことを含む。適当な純度は、非限定的に、約95%~約99.9%、約96%~約99.9%、約97%~約99.9%、約98%~約99.9%、約99%~約99.9%、約99.5%~約99.9%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を包含することができる。ある態様では、コラーゲン材料は少なくとも約50%~約99.9%、約60%~約99.9%、約75%~約99.9%、約80%~約99.9%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。ある態様では、コラーゲン沈殿物純度が少なくとも約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約95.5%、約96%、約96.5%、約97%、約97.5%、約98%、約98.5%、約99%、約99.5%、約99.9%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。ある態様では、少なくとも約95%純度のコラーゲン沈殿物が得られるまで1回または複数回前記工程が繰り返される。別の態様では、約99.9%純度のコラーゲン沈殿物が得られるまで1回または複数回前記工程が繰り返される。コラーゲン沈殿物の純度は標準法により測定することができる。
【0055】
任意の適当な塩を上述の方法に使用することができる。典型的な塩としては、非限定的に、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム等またはそれらの組み合わせが挙げられる。塩溶液には水性塩溶液が含まれる。
【0056】
コラーゲン沈殿物を溶液中に再懸濁し、コラーゲン再懸濁液を得る。ある態様では、この再懸濁工程は、コラーゲン沈殿物を弱酸溶液と接触させることを含みうる。適当な弱酸溶液としては、非限定的に、約2.8~約4のpHを維持する溶液が挙げられる。適当なpH値は、いずれかの態様において上記に挙げたものを包含する。ある態様では、弱酸溶液は約3~約7のpKaを有する溶液を含む。弱酸溶液の適当なpKa値は、いずれかの態様において上記に開示したものを含むが、それに限定されない。ある態様では、弱酸は非限定的に、該弱酸溶液の約0.01%~約20.0%の量で存在する。適当な弱酸はいずれかの態様において上記に開示したものを包含する。
【0057】
所望の用途に基づいて、コラーゲン再懸濁液は、純度を向上させるためまたは有害物質を除去するために更なる処理にかけることができる。本発明のある態様では、該方法は任意にウイルスとプリオン不活化工程を実施することを包含する。そのようなウイルスおよびプリオン不活化は、様々な方法を使って実施することができ、例えば塩基性溶液中でのインキュベーション、ガンマ線照射、UV照射、エチレンオキシド処理、CO処理、またはそれらの組み合わせが挙げられるがそれに限定されない。ある態様では、ウイルスとプリオン不活化が塩基性溶液中でのインキュベーションを含む。適当な塩溶液は、非限定的に、金属のおよびアンモニアの水酸化物、酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、硫酸塩およびそれらの組み合わせが挙げられる。ある態様では、前記金属は非限定的にアルカリおよびアルカリ土類金属を包含する。適当なアルカリおよびアルカリ土類金属の塩基性溶液は、非限定的に、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの水酸化物、酢酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、硫酸塩およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
ある態様では、前記インキュベーションは、塩基性溶液中で前記コラーゲン再懸濁液を適当な期間、例えば非限定的に、約5分間、約10分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約60分間、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の期間インキュベートすることができる。あるいは、適当な期間は、約5分間~約1時間、約10分間~約1時間、約30分間~約1時間、約45分間~約1時間、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。ある態様では、水酸化ナトリウムとのインキュベーション期間は、約15分間から約45分間の暴露時間を含むことができる。別の態様では、該期間が約30分間から約1時間の暴露時間を含む。
【0059】
ある態様では、前記インキュベーションが、約4Mまでの塩溶液濃度を包含する。適当な塩濃度は、非限定的に、約0.01M~約4M、約0.1M~約2M、約0.25M~約1.5M、約0.5M~約1M、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。ある態様では、前記ウイルスとプリオン不活化が、コラーゲン再懸濁液のpHを約2.8~約4のpHに調整することを更に含む。ある態様では、該pHが約2.8~約3、約3~約4、約3.2~約4、約3.5~約4並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲に調整される。ある態様では、該方法が、インキュベーション後にコラーゲン再懸濁液のpHを、約0.01%~約20%の弱酸溶液で約2.8~約4のpHに調整することを包含することができる。
【0060】
前記塩溶液処理の結果として、コラーゲン再懸濁液は残留塩を含みうるが、それは適当な脱塩法を使って除去することができる。適当な脱塩法としては、非限定的に、緩衝液交換ろ過濃縮、透析、接線流ろ過、イオン交換膜法等またはそれの組み合わせが挙げられる。ある態様では、コラーゲン再懸濁液の脱塩が透析を含むことができる。該透析は、コラーゲン再懸濁液を酸溶液に対して透析することを含む。透析に使用される適当な酸は、非限定的に、いずれかの態様において上記に開示したような弱酸を含む。ある態様では、透析がコラーゲン再懸濁液を約0.01%~約20%の弱酸溶液に対して透析することを含みうる。ある態様では、前記透析が約2週間までの期間に渡り実施される。該透析期間は、非限定的に、約12時間~約2週間、約18時間~約12時間、約1日間~約1週間、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。適当な期間は、非限定的に、約2時間、約6時間、約12時間、約18時間、約1日、約3日間、約5日間、約7日間、約9日間、約12日間、約14日間時間、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。前記溶液のpHを維持するために透析中に適当な緩衝液を使用することができる。使用する場合、緩衝液は透析工程の間に新鮮な緩衝液と交換することができる。ある態様では、前記透析が約0.01%~約20%の弱酸溶液に対して約12時間~約5日間に渡り実施され、そして該透析緩衝液を約24時間後に交換することを含んでもよい。
【0061】
ある態様では、脱塩後に、コラーゲン再懸濁液を乾燥処理にかけてコラーゲン材料を得ることができる。適当な乾燥法としては非限定的に、臨界流体乾燥、噴霧乾燥、循環式加圧乾燥、不活性媒体乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、脱水等またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
ある態様では、当該方法が更に、コラーゲン材料を滅菌することを含む。コラーゲン材料の適当な滅菌方法としては、非限定的に、ガンマ線照射、過酸とのインキュベーション、超臨界流体処理等またはそれらの組み合わせが挙げられる。ある態様では、前記滅菌がガンマ線照射を含む。ある態様では、該方法がコラーゲン材料を約0.01Mrad~約5Mradのガンマ線に暴露することを含む。適当なガンマ線照射量は、約0.01Mrad~約5Mrad、約0.1Mrad~約4.5Mrad、約0.5Mrad~約3.5Mrad、約1Mrad~約3Mrad並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。ガンマ線照射工程は、照射前にコラーゲン材料に追加の添加剤またはミネラル(無機物)を配合することを更に含む。
【0063】
ある態様では、前記滅菌が過酸とのインキュベーションを含む。ある態様では、過酸インキュベーションが蒸気インキュベーションによって行われる。過酸は約0.01%~約5%の量で存在する。適当な量は、非限定的に、約0.01%~約5%、約0.01%~約3%、約0.01%~約1%、約0.05%~約3%、約0.05%~約1%、約0.05%~約0.5%、約0.1%~約1%、約0.5%~約1%、約0.5%~約3%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。ある態様では、蒸気インキュベーションが約20L/分~約120L/分の流速で実施される。適当な流速は非限定的に、約20L/分~約100L/分、約40L/分~約90L/分、または約80L/分~約90L/分である。ある態様では、蒸気インキュベーションが約15秒~約1時間の期間実施される。適当な蒸気インキュベーション期間は、非限定的に、約30秒間~約45分間、約1分間~約30分間、約5分間~約15分間、約10分間~約25分間並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。
【0064】
ある態様では、前記滅菌が、超臨界流体処理(SCF)を含む。ある態様では、超臨界流体が、非限定的に、超臨界二酸化炭素、亜酸化窒素、水、アルコール、アセトン等またはそれらの組み合わせを包含する。ある態様では、超臨界流体処理が、約27℃~約55℃の温度で実施される。適当な温度は約27℃~約55℃、約30℃~約45℃、約35℃~約40℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。ある態様では、超臨界流体処理が、約75バール~約525バール、約100バール~約475バール、約250バール~約400バール、約300バール~約375バール並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の圧力で実施される。図7に示されるように、滅菌済コラーゲン材料(例えば過酸滅菌)は、バイオゲル組成物に使用した時、非滅菌コラーゲン材料に比較して機能上全く分解を示さない。
【0065】
本発明のコラーゲン材料は、本明細書に記載の通りに弱酸溶液中に滅菌済コラーゲン材料を溶解することを含んでもよい。ある態様では、弱酸溶液は約0.01%~約3%弱酸溶液である。滅菌済コラーゲン材料は任意の濃度で弱酸溶液に溶解することができる。適当な濃度は、非限定的に、約5mg/mL~約200mg/mL、約5mg/mL~約60mg/mL、約20mg/mL~約150mg/mL、約40mg/mL~約100mg/mL、または約60mg/mL~約90mg/mLを包含する。
【0066】
本発明のある態様では、当該方法は約22℃までの温度で該方法の1または複数の工程を実施することを含む。ある態様では、該温度は非限定的に、約0℃~約22℃、約0℃~約20℃、約0℃~約12℃、約0℃~約6℃、約2℃~約6℃、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。
【0067】
本発明のある態様では、当該方法は、例えば、米国食品医薬品局(FDA)により公布された無菌調製または無菌処理のための「製造管理および品質管理に関する基準(GMP)」ガイドラインに従って該方法の1または複数の工程を実施することを含む。一態様では、滅菌済みコラーゲン材料がGMPガイドライン準拠である。少なくとも1態様では、本発明の方法は図1に例示された工程に従った方法である。
【0068】
ある態様では、本発明の方法は、コラーゲンベース生体材料を加工処理して約100μM~約1cmの生体材料粒子を得、そして任意にコラーゲンベース生体材料をアルコール中に浸漬しそして該生体材料粒子を緩衝液中で洗浄し;該生体材料粒子を約0.01%~約20%の弱酸溶液と接触させ、コラーゲン含有溶液を得;該コラーゲン含有溶液を分離してコラーゲン抽出液を得;コラーゲン抽出液を、少なくとも約95%純度のコラーゲン沈殿物が得られるまで塩溶液と接触させ;該コラーゲン沈殿物を約0.01%~約20%の弱酸溶液中に再懸濁してコラーゲン再懸濁液を得;場合により、コラーゲン再懸濁液をウイルスとプリオン不活化にかけ;前記コラーゲン再懸濁液を脱塩し;前記コラーゲン再懸濁液を乾燥してコラーゲン材料を得;そして前記コラーゲン材料を過酸との蒸気インキュベーションにより滅菌し、そして任意に、滅菌済コラーゲン材料を約0.01%~約3%の弱酸溶液中に懸濁させることを含むことができる。
【0069】
本発明の別の観点では、バイオゲル組成物が提供され、ここで該組成物は、本発明のコラーゲン採取方法を使って得られたコラーゲン材料を含有することを特徴とする。
【0070】
本発明の別の観点では、バイオゲル組成物が提供され、該組成物はいずれかの態様において上述したコラーゲン材料を含有する。バイオゲル組成物は弱酸溶液中にコラーゲン材料を含むことができる。前記バイオゲル組成物は、適当な量のコラーゲン材料を使って調製することができる。ある態様では、バイオゲル組成物は5mg/mLより多い量でコラーゲン材料を含有することができる。バイオゲル組成物中のコラーゲン材料の適当な量は、限定されないが、約5mg/mL~約200mg/mLを包含する。バイオゲル組成物は室温での急速ゲル化にかけることができる。ある態様では、バイオゲル組成物は、約25℃~約37℃の温度で、約10分未満、約8分未満、約5分未満、約3分未満、約2分未満、約1分未満、約30秒未満並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の時間、ゲル化を受けることができる。本発明のバイオゲル組成物は、ゲル化前は15Pa~100Paの剪断応力下で液体であってよくそしてゲル化中は約30Pa~約120Paの静水圧下で固体を維持することができる。
【0071】
ある態様では、バイオゲル組成物中のコラーゲン材料は哺乳類源由来のコラーゲンを含む。適当な哺乳類源としては、非限定的に、ウマ、イヌ、ブタ、ウシ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ネズミまたはヒトが挙げられる。ある態様では、哺乳類源がブタ、ウシまたはその組み合わせである。コラーゲン材料中のコラーゲンは、任意の型のものであってよくかつ種々の源から得ることができ、例えば非限定的に、腱、皮膚、靭帯、骨、歯、軟骨、結合組織、椎間板、角膜等およびそれらの組み合わせから得ることができる。ある態様では、コラーゲン材料は腱、皮膚、骨またはその組み合わせから選択される。ある態様では、コラーゲン材料はウシ、ブタ、ネズミまたはその組み合わせをはじめとする哺乳類源に由来することができるがそれに限定されない。起源が腱である場合、それは総指伸筋腱、横伸筋腱、深屈筋等またはそれの組み合わせを含むことができるが、それに限定されない。本発明のある態様では、コラーゲン材料はI型コラーゲンを含むことができる。ある態様では、I型コラーゲンは不溶性コラーゲン、コラーゲン線維、可溶性コラーゲン、酸可溶性コラーゲンを含む。ある態様では、I型コラーゲンが可溶性コラーゲン、酸可溶性コラーゲンまたはそれの組み合わせである。ある態様では、I型コラーゲンがアテロコラーゲンを含まない。
【0072】
本発明のある態様では、バイオゲル組成物は、弱酸溶液中に約5mg/mL~約200mg/mLの量でコラーゲン材料を含むことができる。ある態様では、バイオゲル組成物中のコラーゲン材料の量は、非限定的に、約5mg/mL~約200mg/mL、約10mg/mL~約100mg/mL、約15mg/mL~約80mg/mL、約20mg/mL~約70mg/mL、約25mg/mL~約50mg/mL、約5mg/mL~約60mg/mL、約5mg/mL~約40mg/mL並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。別の態様では、バイオゲル組成物中のコラーゲン材料の量は約5mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL、約100mg/mL並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含みうる。
【0073】
本発明のある態様では、コラーゲン材料は弱酸溶液中に溶解される。弱酸溶液は、該弱酸溶液の約0.01%~約20.0%の範囲の量で弱酸を含むことができる。弱酸溶液中の弱酸の量は、非限定的に、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約3%、約0.1%~約3%、約0.3%~約8%、約0.5%~約5%、約1%~約3%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。適当な弱酸溶液は、該弱酸溶液の約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、約10.0%、約12.5%、約15.0%、約20%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲である量で弱酸を含有する。ある態様では、該弱酸溶液は約0.01%~約3%弱酸溶液である。適当な弱酸としては、非限定的に、いずれかの態様において上述したような弱酸が挙げられる。
【0074】
前記バイオゲル組成物は、キャリヤーまたは非天然型添加剤を適当に含むことができる。適当なキャリヤーとしては、非限定的に、水、水性イオン塩溶液(例えば水酸化ナトリウム)、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、培地、ウシ胎児血清(FBS)、ダルベッコ最少必須培地(DMEM)、線維芽細胞増殖因子(bFGF)等またはそれらの組み合わせが挙げられる。適当な非天然型添加剤は限定されないが架橋剤を含む。適当な架橋剤としては、限定されないが、リボフラビン、リボース、ポリエチレングリコール(PEG)、グルタルアルデヒド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ゲニピン、キトサン等またはそれらの組み合わせが挙げられる。一態様では、該バイオゲル組成物はリボースを含む。別の態様では、バイオゲル組成物はリボフラビンを含む。
【0075】
ある態様では、バイオゲル組成物は、約0.01%~約5%(w/v)の量でデコリンを含有することができる。デコリンの適当量は限定されないが、約0.01%~約3%(w/v)、約0.01%~約2%(w/v)、約0.1%~約5%(w/v)、約0.1%~約3%(w/v)、約0.1%~約2%(w/v)、約0.3%~約5%(w/v)、約0.3%~約3%(w/v)、約0.3%~約2%(w/v)、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。デコリンは、平均して約90~約140kDa(キロダルトン)の分子量である小さな細胞または細胞周囲マトリックスのプロテオグリカンである。デコリンのグリコサミノグリカン鎖は、コンドロイチン硫酸またはデルマタン硫酸を含有する。
【0076】
ある態様では、バイオゲル組成物は生存細胞を更に含むことができる。ある態様では、生存細胞としては、表皮細胞、軟骨細胞および軟骨を形成している他の細胞、マクロファージ、脂肪細胞、真皮細胞、筋細胞、毛包、線維芽細胞、臓器細胞、骨芽細胞、骨細胞および骨を形成している他の細胞、内皮細胞、粘膜細胞、胸膜細胞、外耳道細胞、鼓膜細胞、腹膜細胞、シュワン細胞、角膜細胞、歯肉細胞、中枢神経系の神経幹細胞、または気道上皮細胞が挙げられる。一態様では、バイオゲル組成物は軟骨細胞を含む。ある態様では、バイオゲル組成物は生存細胞を含み、生理学的pHで維持される。ある態様では、バイオゲル組成物は約7.4のpHを有する。
【0077】
本発明のある態様では、バイオゲル組成物は更に、ゲル化前に約0℃~約12℃の温度で該組成物を維持することを更に含んでもよい。その温度は限定されないが、約0℃~約12℃、約0℃~約10℃、約2℃~約10℃、約2℃~約6℃、約3℃~約8℃、約3℃~約6℃、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。ある態様では、前記維持は、非限定的に、約0℃、約2℃、約4℃、約6℃、約8℃、約10℃、約12℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。
【0078】
ある態様では、前記バイオゲル組成物は、約15Paより大きい剪断応力下で液体であることができる。ある態様では、該バイオゲル組成物は約15Pa~約100Paの量の剪断圧力下で液体になる。適当な剪断圧力の量は、非限定的に、約15Pa~約100Pa、約20Pa~約100Pa、約25Pa~約90Pa、約30Pa~約90Pa、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。ある態様では、バイオゲル組成物は約15Pa、約20Pa、約25Pa、約30Pa、約40Pa、約50Pa、約60Pa、約70Pa、約80Pa、約90Pa、約100Paの剪断応力下で液体になる。
【0079】
本発明のバイオゲル組成物は、静止時および剪断応力不在の下では、ゲル化中それの自重下で固体状態を維持する。ある態様では、バイオゲル組成物は約30Pa~約120Paの静水圧下で固体状態を維持する。適当な静水圧は、非限定的に、約30Pa~約120Pa、約50Pa~約120Pa、約60Pa~約120Pa、約80Pa~約120Pa、約30Pa~約90Pa、約30Pa~約80Pa、約30Pa~約60Pa並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。
【0080】
バイオゲル組成物は、二次元または三次元構造体に適当に造形または成形することができる。ある態様では、バイオゲル組成物はゲル化前の三次元構造体の形状を保持することができる。ある態様では、バイオゲル組成物の三次元構造体はモジュール生産システムを使って造形または成形することができる。適当なモジュール生産システムとしては、非限定的に、射出成形、回転成形、ポジティブ型モールド、ネガティブ型モールド、減法混色(substractive manufacturing)、フライス加工および機械加工、並びに3D印刷装置が挙げられる。
【0081】
一態様では、モジュール生産システムが3D印刷装置である。適当な3D印刷装置としては、非限定的に、非無菌または無菌三次元構造体製作を行うことができる3D印刷装置が挙げられる。ある態様では、そのような3D印刷装置は、GMPガイドラインに準拠した無菌3D印刷装置である。ある態様では、2017年5月27日に出願されそして代理人書類番号113066-0105を有する“ASEPTIC PRINTER SYSTEM INCLUDING DUAL-ARM MECHANISM”という発明の名称の米国特許出願第62/511,292号明細書(その全内容がその中に記載された背景情報と方法のための参考として本明細書に組み込まれる)に記載されたような3D印刷システムにおいて、本明細書に記載のバイオゲルを使って、3D構造体を製作することができる。
【0082】
本発明のある態様では、バイオゲル組成物は約10分未満の間、約25℃~約37℃の温度でのゲル化を受ける。ある態様では、バイオゲル組成物は約30秒~約10分未満、約1分~約5分未満、約30秒~約3分未満、約30秒~約2分未満並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲のゲル化を受けることができる。一態様では、該バイオゲル組成物は約50秒未満、約40秒未満、約30秒未満のゲル化を受ける。別の態様では、ゲル化は約30秒、約60秒、約70秒、約80秒、約90秒、100秒、約110秒、約120秒、約130秒、約140秒、約150秒、約180秒並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の間起こる。一態様では、バイオゲル組成物は30秒未満のゲル化を受ける。
【0083】
本発明のある態様では、バイオゲル組成物は約25℃~約37℃の温度でのゲル化を受けることができる。ある態様では、ゲル化温度は非限定的に、約25℃~約37℃、約27℃~約35℃、約30℃~約33℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。適当なゲル化温度は非限定的に、約25℃、約27℃、約30℃、約32℃、約35℃、約37℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。一態様では、バイオゲル組成物は約30℃~約37℃の温度でのゲル化を受ける。一態様では、バイオゲル組成物は約25℃~約37℃の温度での30秒未満の間ゲル化を受ける。
【0084】
本発明の幾つかの態様では、バイオゲル組成物は開始剤への暴露によって誘導される架橋を受けることもできる。適当な架橋開始剤は、限定されないが、紫外線(UV)照射、ガンマ線照射、脱水熱処理(DHT)を含むことができる。ある態様では、架橋開始剤がUV照射である。ある態様では、該開始剤は、架橋剤の非存在下でも本明細書に記載のバイオゲル組成物の架橋を誘導する。ある態様では、前記開始剤がバイオゲル組成物中の架橋剤の架橋を誘発する。ある態様では、前記架橋剤は本明細書に記載のような架橋剤を含む。ある態様では、該架橋剤がリボフラビン、リボース等またはそれの組み合わせである。
【0085】
ある態様では、バイオゲル組成物は、ゲル化後に重力下で固体状態を保持するおよび/またはその形状を維持する三次元構造に成形することができる。本発明のバイオゲル組成物により成形された構造体は、他の標準的なバイオゲル材料に比較して、減少した弛みと増加した弾性を示す。ある態様では、バイオゲルを含む三次元構造体は、重力下でその高さの約1%~約30%より少ない程度たるむ。該三次元構造は重力下でその高さの約1%~約30%、約2%~約25%、約3%~約20%、約4%~約15%、約5%~約10%より少ない程度並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲だけ弛む。ある態様では、該三次元構造体は重力下でその高さの約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%より少ない程度並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲だけたるむ。
【0086】
ある態様では、三次元構造体中のバイオゲル組成物は、約60秒~約120秒といった一定時間の間にその高さの約1%~約30%より少ない程度たるむ。その期間は、非限定的に、約5秒~約120秒、約20秒~約100秒、約30秒~約80秒、約45秒~約60秒、約60秒~約120秒並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。該構造体は、適当な時間にわたりその元の高さの約1%~約30%減分未満だけたるみ、その時間は非限定的に約5秒、約10秒、約20秒、約30秒、約40秒、約50秒、約60秒、約120秒並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。一態様では、三次元構造体のバイオゲル組成物は、60秒間に渡り重力下でその高さの約30%未満だけたるむ。
【0087】
本発明のバイオゲル組成物は、改善された貯蔵弾性率を有することができる。本発明の態様では、バイオゲル組成物はゲル化後約5000%までその貯蔵弾性率を増加させる。貯蔵弾性率は約10%~約5000%、約50%~約5000%、約100%~約5000%、約500%~約5000%、約1000%~約5000%、約2500%~約5000%まで、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲、増加する。ある態様では、バイオゲル組成物は非限定的に、約100%、約500%、約1000%、約2000%、約3000%、約4000%、約5000%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲まで、ゲル化後のその貯蔵弾性率を増加することを含む。ある態様では、バイオゲル組成物はその貯蔵弾性率を5000%増加させることを含みうる。ある態様では、バイオゲル組成物は約1分~約5分間でその貯蔵弾性率を増加することを含む。適当な期間は約1分~約5分、約1分~約3分、約1分~約2分並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を包含する。
【0088】
本発明のバイオゲル組成物は、改善された圧縮強度を有することができる。ある態様では、該バイオゲル組成物は、ゲル化後1kPaより大きい応力/ひずみ比を示す。応力/ひずみ比は約1kPa~約100kPa、約1kPa~約60kPa、約5kPa~約50kPa、約5kPa~約40kPa並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲のゲル化後応力/ひずみ比を示す。ある態様では、該バイオゲル組成物は約1kPa、約5kPa、約7kPa、約8kPa、約9kPa、約10kPa、約11kPa、約12kPa、約14kPa、約16kPa、約18kPa、約20kPa、約25kPa、約30kPa、約35kPa、約40kPa、約50kPa、約60kPa、約70kPa、約80kPa、約90kPa、約100kPa、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲のゲル化後応力/ひずみ比を示すことができる。
【0089】
ある態様では、バイオゲル組成物はいずれかの態様において明細書中に記載されるように採取されたI型コラーゲン材料を含むことができる。I型コラーゲン材料は約5mg/mL以上の量を含むことができる。該バイオゲル組成物は、約0.01%から約3%弱酸溶液中にコラーゲン材料を含む。本発明のバイオゲル組成物は、約25℃~約37℃の温度で約30秒未満の間のゲル化を施すことを含む。バイオゲル組成物は更に、約0.01%~約5%(w/v)デコリンを更に含有してもよい。所望により、バイオゲル組成物は更に生存細胞を含んでもよい。バイオゲル組成物は約15Pa~約100Paの剪断応力下で液体となることを含む。ある態様では、バイオゲル組成物は、ゲル化中に約30Pa~約120Paの静水圧下で固体を保持する。該バイオゲル組成物は3D印刷機を使って三次元構造体に造形することができる。バイオゲル組成物は、該バイオゲル組成物がゲル化を受けた後に重力下で固体の三次元構造形状を保持することを含む。ある態様では、該三次元構造体は、約60秒の期間に渡り重力下でその高さの約30%未満だけたるむ。該バイオゲル組成物は、ゲル化後にその貯蔵弾性率を約5000%まで増加することを含む。
【0090】
一態様では、バイオゲル組成物は、約0.01%~約3%弱酸溶液中に、いずれかの態様にて本明細書に記載されるような方法を使って採取されたコラーゲン材料約5mg/mL~約200mg/mL;デコリン0.1%~約5%(w/v);および任意に生存細胞を含有し、ここで前記バイオゲルは、約25℃~約37℃の温度で約30秒未満のゲル化を受けることができ;そして該バイオゲル組成物は、ゲル化前、約15Pa~約100Paの剪断応力下で液体であり、そして更に該バイオゲル組成物はゲル化後、約30Pa~約120Paの静水圧下で固体を保持し、そして更に、該バイオゲル組成物はゲル化後、貯蔵弾性率の約5000%までの増加を有することができかつ三次元形状を維持することができ、ここで該バイオゲル組成物は重力下で約60秒に渡りその高さの約1%~約30%より小さく弛むことを特徴とする。
【0091】
別の態様では、バイオゲル組成物は、約0.01%~約3%弱酸溶液中に、本明細書に記載されるようにウシ、ブタおよび/またはネズミ源から採取されたI型コラーゲン材料約5mg/mL~約60mg/mL;デコリン0.1%~約5%(w/v)、キャリヤー;リボフラビン、リボースまたはその組み合わせから選択された架橋剤;および任意にpH7.4での生存細胞を含有し、ここで前記バイオゲル組成物は約35℃の温度での約30秒未満の間ゲル化を受けることができ;ここで前記バイオゲル組成物は、ゲル化前、約15Pa~約100Paの剪断応力下で液体であり、そしてゲル化中、約30Pa~約120Paの静水圧下で固体を保持し;そして更に、該バイオゲル組成物はゲル化後、貯蔵弾性率の約5000%までの増加を有することができかつ三次元形状を維持することができ、ここで該バイオゲル組成物は重力下で約60秒に渡りその高さの約1%~約30%未満だけたるみ;そして該バイオゲル組成物はゲル化後1kPaより大きい応力/ひずみ比を示すことを特徴とする。
【0092】
本発明の更に別の態様では、本発明のバイオゲル組成物から三次元構造体を作製する方法が提供され、ここで該方法は、モジュール生産システムにバイオゲル組成物を供給し;バイオゲル組成物を約0℃~約12℃の温度に維持し;バイオゲル組成物を堆積させて三次元構造体を成形し、そこで該三次元構造体はゲル化を受け;そして前記三次元構造体を硬化させることを含む。三次元構造体を作製する方法で用いられる該バイオゲル組成物は、弱酸溶液中に5mg/mLより多い量で本発明のコラーゲン材料を含むことができる。
【0093】
本発明のある態様では、該方法は、いずれかの態様において上述したようなバイオゲル組成物を、モジュール生産システムに提供することを含む。適当なモジュール生産システムは、非限定的に、いずれかの態様において上述したシステムを包含する。ある態様では、該モジュール生産システムは3D印刷装置を包含する。ある態様では、3D印刷装置は、非無菌または無菌の装置であることができる。一態様では、3D印刷装置は本明細書中に成就したような無菌3D印刷装置である。
【0094】
当該方法は、本明細書に記載のようなバイオゲル組成物を提供することを含む。本発明技術のある態様では、該方法は、弱酸溶液中に5mg/mL以上の量でコラーゲン材料を含有するバイオゲル組成物を提供することを含む。ある態様では、該コラーゲン材料は特に限定されないがウシ、ブタおよび/またはネズミといった哺乳類源に由来することができる。ある態様では、コラーゲン材料がI型コラーゲンを含みうる。本発明のある態様では、コラーゲン材料が弱酸溶液中、例えば約0.01%~約3%弱酸溶液中に存在する。本発明のある態様では、該方法は、架橋剤、例えば約0.01%~約5%(w/v)デコリンを更に含有するバイオゲル組成物を提供することを含む。ある態様では、バイオゲル組成物は、いずれかの態様において記載したようなキャリヤーと非天然型添加剤を含む。ある態様では、バイオゲル組成物は生存細胞を含んでもよい。本発明のある態様では、該方法が約15Pa~約100Paの剪断応力下で液体であることができるバイオゲル組成物を提供することを含む。ある態様では、該バイオゲル組成物はゲル化中約30Pa~約120Paの静水圧下で固体状態を保持する。
【0095】
当該方法は、バイオゲル組成物をモジュール生産システムに供給した後、適当な温度で該バイオゲル組成物を維持することを含む。本発明のある態様では、該方法はゲル化前に約0℃~約12℃の温度でバイオゲル組成物を維持することを含む。該温度は、非限定的に、約0℃~約12℃、約0℃~約10℃、約2℃~約10℃、約2℃~約6℃、約3℃~約8℃、約3℃~約6℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。ある態様では、その維持は、非限定的に、約0℃、約2℃、約4℃、約6℃、約8℃、約10℃、約12℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の温度を含む。
【0096】
バイオゲル組成物は、適当な維持温度で二次元または三次元構造体に堆積される。ある態様では、該堆積は、該バイオゲル組成物を約30mm/秒~約80mm/秒の押出速度で堆積させることを含む。適当な押出速度は、非限定的に、約30mm/秒~約80mm/秒、約40mm/秒~約80mm/秒、約50mm/秒~約80mm/秒、約60mm/秒~約80mm/秒並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含むことができる。
【0097】
バイオゲル堆積工程の一部として、三次元構造体はゲル化を受けてもよい。ある態様では、三次元構造体へのバイオゲル組成物の堆積は、約25℃~約37℃の温度で約10分未満のゲル化を受けることを更に含む。ある態様では、三次元構造体は、約30秒~約10分未満、約1分~約5分未満、約30秒~約3分未満、約30秒~約2分未満並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の間ゲル化を受けることができる。ある態様では、バイオゲル組成物は約50秒未満、約40秒未満、約30秒未満のゲル化を受けることができる。ある態様では、ゲル化は約30秒、約60秒、約70秒、約80秒、約90秒、100秒、約110秒、約120秒、約130秒、約140秒、約150秒、約180秒未満並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の間起こる。一態様では、バイオゲル組成物は30秒未満の間ゲル化を受ける。
【0098】
本発明のある態様では、三次元構造は約25℃~約37℃の温度でゲル化を受けることを含む。ある態様では、ゲル化温度は非限定的に、約25℃~約37℃、約27℃~約35℃、約30℃~約33℃、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の温度を含む。適当なゲル化温度は、非限定的に、約25℃、約27℃、約30℃、約32℃、約35℃、約37℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲の温度を含む。ある態様では、三次元構造体は約30℃~約37℃の温度でのゲル化を受けることができる。一態様では、バイオゲル組成物は約25℃~約37℃の温度で約30秒未満の間ゲル化を受けることができる。
【0099】
本発明のある態様では、堆積工程は、連続的に、同時にまたは独立してゲル化して三次元構造を成形することを含む。ある態様では、ある態様では、バイオゲル組成物の堆積は、三次元構造体が成形された直後のバイオゲル組成物の連続的ゲル化を含むことができる。別の態様では、該堆積は、三次元構造体が成形されるのと同時の(すなわち同期のまたは重複する)バイオゲル組成物のゲル化を含む。別の態様では、該堆積は三次元構造体を成形するためのバイオゲル組成物の堆積から切り離してゲル化を含んでもよく、それは三次元構造体を成形した後、約5分~約24時間の期間の後のゲル化を含んでもよい。
【0100】
ある態様では、バイオゲル組成物は、ゲル化後に重力下で固体状態を維持するおよび/またはその形状を維持する三次元構造体を成形することができる。本発明のバイオゲル組成物により成形された構造体は、技術の現状で既知の他のバイオゲル材料に比較して、減少した弛みと増加した弾性を示す。ある態様では、バイオゲルを含む三次元構造体は、重力下でその高さの約1%~約30%より少なく弛む。該三次元構造体は重力下で約1%~約30%、約2%~約25%、約3%~約20%、約4%~約15%、約5%~約10%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少なく弛む。ある態様では、該三次元構造体は重力下でその高さの約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%未満並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少なく弛む。
【0101】
ある態様では、三次元構造体は約60秒~約120秒といった一定期間に渡りその高さの約1%~約30%未満だけ弛む。その期間は非限定的に、約5秒~約120秒、約20秒~約100秒、約30秒~約80秒、約45秒~約60秒、約60秒~約120秒並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値未満の範囲を含む。該構造体は適当な時間に渡りその元の高さの約1%~約30%減分少なく弛み、その時間は非限定的に、約5秒、約10秒、約20秒、約30秒、約40秒、約50秒、約60秒、約120秒並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲を含む。一態様では、三次元構造体は60秒の時間の間重力下でその高さの約30%少なく弛む。
【0102】
本発明のある態様では、三次元構造体の貯蔵弾性率はゲル化後約5000%まで増加することができる。貯蔵弾性率は約10%~約5000%、約50%~約5000%、約100%~約5000%、約500%~約5000%、約1000%~約5000%、約2500%~約5000%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲まで増加することができる。ある態様では、バイオゲル組成物は非限定的に、約100%、約500%、約1000%、約2000%、約3000%、約4000%、約5000%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲まで、ゲル化後のその貯蔵弾性率を増加することを含む。ある態様では、バイオゲル組成物はその貯蔵弾性率を5000%増加することを含む。ある態様では、バイオゲル組成物は約1分~約5分間の間にその貯蔵弾性率を増加することを含む。適当な期間は、約1分~約5分、約1分~約3分、約1分~約2分並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲を包含する。ある態様では、三次元構造体はゲル化後に1kPaより大きい応力/ひずみ比を示す。応力/ひずみ比は、約1kPa~約100kPa、約1kPa~約60kPa、約5kPa~約50kPa、約5kPa~約40kPa並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲であることができる。
【0103】
バイオゲル組成物から堆積された三次元構造体は、ゲル化後に硬化工程を受ける。ある態様では、前記方法が、約34℃~約37℃の温度で三次元構造体を硬化させることを含む。適当な硬化温度は、非限定的に、約34℃~約37℃、約35℃~約37℃、約36℃~約37℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲を含む。三次元構造体は硬化工程の間緩衝液中に置くこともできる。ある態様では、適当な緩衝液としては、非限定的に、リン酸塩緩衝生理食塩水、塩化ナトリウム溶液、リン酸塩、およびリン酸緩衝溶液が挙げられる。ある態様では、該方法が三次元構造体を緩衝液と培地中で硬化させることを含む。適当な培地としては、血清、無血清培地、HEPES、DMEM、bFGF、FBS等およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それに限定されない。
【0104】
ある態様では、本発明の方法は更に、本明細書に記載のような架橋開始剤への暴露により、バイオゲル組成物から成形された三次元構造体を硬化することを含んでもよい。ある態様では、硬化は、UV照射に三次元構造体を暴露することも含む。UV照射の持続期間は具体的に限定されず、三次元構造体のサイズ、形状、高さ、厚さ等並びにUV光源の距離をはじめとする非限定的に様々な因子に依存して決定される。ある態様では、バイオゲルから成形される三次元構造体は、いずれかの態様にて本明細書中に記載された架橋剤を含む。ある態様では、該架橋剤がリボース、リボフラビンまたはその組み合わせを含む。
【0105】
本発明のある態様では、該方法が、ウシ、ブタ、ネズミ源に由来するI型コラーゲン材料を含むバイオゲル組成物を3D印刷装置に供給することを含む。前記バイオゲル組成物は0.01%~約3%弱酸溶液中のコラーゲン材料を含みかつ約0.01%~約5%(w/v)デコリンを含有する。該バイオゲル組成物は架橋剤または生存細胞を更に含んでよく、そして約7.4のpHを有する。該バイオゲル組成物は約15Pa~約100Paの剪断応力下で液体であり、そしてゲル化の間約30Pa~約120Paの静水圧下で固体状態を保持する。該方法は、約0℃~約12℃の温度でバイオゲル組成物を維持することを含む。該方法は、バイオゲル組成物を約0℃~約12℃に維持しながら、該バイオゲル組成物を堆積させて三次元構造体を成形することを含む。該方法は、約30秒未満の期間に渡り約25℃~約37℃の温度でのゲル化と同時に、バイオゲル組成物を堆積させて三次元構造体に成形することを含む。この三次元構造体は、該三次元構造体がゲル化後約60秒の時間その高さの約1%~約30%より少なく弛むように重力下で固体状態を維持することを含む。三次元構造体は、ゲル化後、約5000%までの貯蔵弾性率の増加を含むことができる。ある態様では、三次元構造体がゲル化後1kPaより大きい応力/ひずみ比を示す。ある態様では、当該方法は、三次元構造体を約34℃~約37℃の温度で緩衝液中で硬化させることを含む。少なくとも1つの態様では、本発明の方法は図2に例示された工程に従った方法である。
【0106】
本発明の一態様では、該方法はウシ、ブタおよび/またはネズミ源に由来するI型コラーゲン材料を、約0.01%~約3%弱酸溶液中に含み、かつ0.1%~約5%(w/v)デコリン、および場合により架橋剤と生存細胞を更に含んでよい、本明細書に記載のバイオゲル組成物を無菌3D印刷装置に供給し;該バイオゲル組成物を約0℃~約12℃の温度に維持し;該バイオゲル組成物を約30mm/秒~約80mm/秒の押出速度で堆積させて三次元構造体を成形し、ここで該三次元構造体が約25℃~約37℃で約30秒未満の間ゲル化を受け;そして前記三次元構造体をリン酸緩衝溶液中で約34℃~約37℃にて硬化させることを含む。
【0107】
別の観点では、三次元構造体生産用のバイオゲル組成物の調製方法であって、該方法は弱酸溶液中のコラーゲン材料を含む第一容器を供給し;キャリヤーを含む第二容器を供給し;そして第一容器の弱酸溶液中コラーゲン材料を、第二容器のキャリヤーと接触させ、約50%~約99.9%の均質性を有するバイオゲル組成物を得ることを含む。
【0108】
当該方法は、本明細書に記載の方法により採取されたコラーゲン材料を有する第一容器を供給する。本発明のある態様では、該方法は、弱酸溶液中に5mg/mLまたはそれ以上の量でコラーゲン材料を含む。一態様では、第一容器は約5mg/mL~約200mg/mLの量でコラーゲン材料を含むことができる。ある態様では、該コラーゲン材料が、限定されないがウシまたはブタ起源のような天然源からの腱に由来することができる。ある態様では、コラーゲン材料がI型コラーゲンを含む。本発明のいくつかの態様では、コラーゲン材料が約0.01%~約5%(w/v)デコリンを更に含んでもよい。
【0109】
本発明のある態様では、弱酸溶液中の弱酸は、弱酸溶液の約0.01%~約20.0%の量で存在することができる。弱酸溶液中の弱酸の量は、非限定的に、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約3%、約0.1%~約3%、約0.3%~約8%、約0.5%~約5%、約1%~約3%、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲を包含する。適当な弱酸溶液は、該弱酸溶液の約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、約10.0%、約12.5%、約15.0%、約20%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲の量で弱酸を含有する。ある態様では、弱酸溶液は約0.01%~約3%弱酸溶液である。ある態様では、弱酸溶液は非限定的に、約2.8~約4のpHを有する弱酸溶液を含む。適当な弱酸としては、いずれかの態様において上述したような弱酸が挙げられる。
【0110】
該方法は更に、キャリヤーおよび任意にいずれかの態様において上述したような架橋剤を含有する第二容器を供給する。適当な担体としては、非限定的に、水、水性水酸化ナトリウム、PBS、DMEM等またはそれらの組み合わせが挙げられる。適当な架橋剤としては、非限定的に、リボフラビン、リボース等またはその組み合わせが挙げられる。
【0111】
当該方法は、場合により生存細胞の第三容器を供給することを含んでよい。適当な生存細胞は、非限定的に、表皮細胞、軟骨細胞および軟骨を形成している他の細胞、筋肉細胞、毛包、線維芽細胞、並びに軟骨を形成している他の細胞、マクロファージ、脂肪細胞、真皮細胞、筋細胞、毛包、線維芽細胞、臓器細胞、骨芽細胞、骨細胞および骨を形成している他の細胞、内皮細胞、粘膜細胞、胸膜細胞、外耳道細胞、鼓膜細胞、腹膜細胞、シュワン細胞、角膜細胞、歯肉細胞、中枢神経系の神経幹細胞、または気道上皮細胞が挙げられる。一態様では、第三容器が軟骨細胞を含む。ある態様では、生存細胞が培地中生理的pHに維持される。ある態様では、第三容器中の生存細胞が約7.4のpHに維持される。適当な培地は本明細書中に記載のものを含む。
【0112】
第一容器中のコラーゲン材料と第二容器中の弱酸溶液とを接触させ、十分な均質性を有するバイオゲル組成物を得る。本発明のある態様では、該接触は非限定的に、混合、攪拌、揺動、振動等またはそれらの組み合わせであることができる。ある態様では、接触は手動振動または自動化振動のような振動を含む。一態様では、接触は手動振動を含む。別の態様では、接触は手動または自動のような混合を含む。第一、第二、および任意に第三容器中の材料は、適当な順番で連続的にまたは同時に放出させることができる。ある態様では、接触が約50%~約99.9%均質性を有するバイオゲル組成物を生成する。適当な均質性は、非限定的に、約50%~約99.9%、約60%~約99.9%、約70%~約99.9%、約80%~約99.9%、約90%~約99.9%、約95%~約99.9%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲を含む。ある態様では、均質性は約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約99.9%並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲の量である。本発明のある態様では、該方法が更に、場合により第三容器の生存細胞をコラーゲン材料と弱酸溶液と接触させ、約50%~約99.9%均質性を有するバイオゲル組成物を得ることを含む。均質性は標準法を使って評価される。
【0113】
コラーゲン材料と弱酸溶液とを接触させた後に得られるバイオゲル組成物は、任意に、適当な温度で維持することができる。ある態様では、バイオゲル組成物の維持は、ゲル化前約0℃~約12℃の温度であることができる。その温度は、非限定的に、約0℃~約12℃、約0℃~約10℃、約2℃~約10℃、約2℃~約10℃、約2℃~約6℃、約3℃~約8℃、約3℃~約6℃並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲を含むことができる。ある態様では、そのような維持は非限定的に、約0℃、約2℃、約4℃、約6℃、約8℃、約10℃、約12℃、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲の量を含む。
【0114】
三次元構造体は、バイオゲル組成物から製作することができる。ある態様では、該方法はバイオゲル組成物を使って三次元構造体を製作することを更に含む。ある態様では、加工は、コラーゲン材料と弱酸溶液とを接触させてバイオゲル組成物を得る工程に連続して、同時に、または別個であることができる。ある態様では、該方法は、接触工程に連続して、すなわち直後に、三次元構造体を加工することを含む。別の態様では、該方法は接触工程と同時に、すなわち同時にまたは重複して三次元構造体を生産することを含む。更に別の態様では、該方法は接触工程とは別個に三次元構造体を生産することを含み、例えばバイオゲル組成物を約0℃~約12℃の温度で、約6時間から約2週間の期間に渡り保管することを含んでもよい。ある態様では、バイオゲル組成物が、約2℃~約6℃にて約6時間~約2週間、約12時間~約1週間、約24時間~約6日間、約48時間~約5日間並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲の期間に渡り保管することを含む。
【0115】
ある態様では、該方法は、バイオゲル組成物を本明細書に記載のようなモジュール生産システムに供給することにより三次元構造体を生産することを含む。ある態様では、モジュール生産システムが3D印刷装置を含むことができる。一態様では、3D印刷装置が無菌的に清浄であり、GMPガイドライン準拠である。
【0116】
ある態様では、当該方法は、バイオゲル組成物を30mm/s~約80mm/sで堆積させることにより三次元構造体を生産することを含む。適当な押出速度は、非限定的に、約30mm/s~約80mm/s、約40mm/s~約80mm/s、約50mm/s~約80mm/s、約60mm/s~約80mm/s、並びにそれらの数値のうちの任意の2つの数値の間の範囲およびそれらの数値のいずれか1つの数値より少ない範囲を含むことができる。ある態様では、前記堆積は、上述したように約25℃~約37℃の温度で約3分間未満、三次元構造体をゲル化することを含む。本発明のある態様では、前記生産は、ゲル化が連続して、同時にまたは別個に起こり三次元構造体を成形するバイオゲル組成物の堆積を含むことができる。
【0117】
本発明のある態様では、当該方法は、本明細書に記載のようなゲル化後の重力下で、固体のままであるまたはその形状を維持する三次元構造体を製作することを含む。ある態様では、三次元構造が約60秒の時間に渡り重力下でその高さの30%未満弛む。本明細書に記載の通り、三次元構造体は非常に強固でかつ貯蔵弾性率を改善することができる。ある態様では、三次元構造体はゲル化後、約5000%まで貯蔵弾性率を増加させることができる。ある態様では、三次元構造体はゲル化後、1kPaより大きい応力/ひずみ比を示す。ある態様では、応力/ひずみ比が約1kPa~約60kPaである。更に本明細書に記載の通り、当該方法は三次元構造体を硬化させることを更に含んでよい。ある態様では、その硬化は、約34℃~約37℃の温度でリン酸塩緩衝溶液中であることができる。ある態様では、三次元構造体の硬化は、本明細書に記載のような緩衝液と培地中であってもよい。
【0118】
ある態様では、いずれかの態様において本明細書に開示される方法と組成物はGMP準拠である。少なくとも1態様で、本発明の方法は図3に例示されるような工程に従った方法である。
【0119】
本発明の一態様では、当該方法は、ウシ、ブタおよび/またはネズミ源に由来するI型コラーゲン材料を、約5mg/mLより多い量において第一容器中の約0.01%~約3%弱酸溶液中に提供し;キャリヤー溶液および任意に水酸化ナトリウムと架橋剤を第二容器中に提供し、ここで前記キャリヤーはPBS、水および水性水酸化ナトリウムを包含しそして前記架橋剤はリボフラビン、リボースまたはその組み合わせを包含し;場合により、培地中に生存細胞を有する第三容器を提供し、ここで前記培地はDMEMであり;前記第一容器中の約0.01%~約3%弱酸中のI型コラーゲン材料を、第二容器中のキャリヤーと、および任意に第三容器の培地中の生存細胞と接触させ、約99%より大きい均質性を有するバイオゲル組成物を得;そして場合により、前記バイオゲル組成物を、無菌3D印刷装置を使って三次元構造体に製作することを含む。
【0120】
このように一般的に記載した本発明は、次の実施例を参照することによってより容易に理解されるであろう。この実施例は例示目的で提供され、本発明を限定するつもりではない。
【実施例
【0121】
実施例1:コラーゲンの採取方法
【0122】
本実施例は、図1に示されるように、哺乳類源、例えば皮膚、腱または骨から、例えばブタ、ウシまたはネズミ由来のコラーゲンから、コラーゲンを採取する方法を提供する。細胞外マトリックスおよび浸潤液をコラーゲンベース生体材料から回収した。得られたコラーゲンベース生体材料をアルコール中に浸漬した。次いでコラーゲンベース生体材料を、該材料の95%より多くが減量するまで1mm未満の生体材料粒子へと機械的に加工処理した。
【0123】
緩衝液に添加しそして攪拌することにより生体材料粒子を洗浄し、その後生体材料粒子を静置して緩衝液を捨てた。次いで該生体材料粒子を蒸留水(diHO)に添加し、攪拌した。生体材料粒子を静置し、diHOを捨てた。生体材料粒子を0.01%~20%弱酸溶液に添加し、攪拌した。その混合物を遠心分離し、ペレットを捨てて上清を回収した。
【0124】
上清を0.55M~5M塩溶液と混合し攪拌した。上清/塩溶液を遠心分離し、上清を捨てて得られたペレットを回収した。ペレット化した材料を0.1%~約20%弱酸溶液中に再懸濁した。
【0125】
再懸濁した材料を金属水酸化物溶液と混合し攪拌した。その直後に、混合物を酸性条件(pH3-4)に再調整した。次いで該混合物を0.01%~20%弱酸溶液に対して透析し、その後それを透析チューブから取り出し、乾燥した。得られたコラーゲン材料を、過酸を用いた蒸気インキュベーション、ガンマ線照射、エチレンオキシドまたは臨界CO処理により滅菌した。滅菌したコラーゲン材料を0.01%~3%弱酸溶液中に適当な濃度に懸濁し3~7日間まで貯蔵した。弱酸、緩衝液および塩溶液は本明細書中に記載のものを包含する。
【0126】
実施例2:バイオゲル組成物の調製
【0127】
本明細書に記載されるようなモールドおよび3D印刷装置のための印刷可能インクとしての使用に適したバイオゲル組成物を、実施例1に従って採取された滅菌済コラーゲンを使って、図3に示す通りに調製した。無細胞バイオゲル組成物A~Jを次の通り調製した:0.01~3%弱酸中の採取した滅菌済コラーゲン(実施例1)の原液を、キャリヤー溶液と混合した。その混合物を生理的pHに調整した。生じた混合物は、実施例1からの採取した滅菌済コラーゲンを5~60mg/mL含有するバイオゲル組成物を提供した。バイオゲルH、IおよびJは、架橋剤を含む硬化性バイオゲル組成物を表す。
【0128】
組成物A~Jについて記載した手順に従って、比較用バイオゲル組成物を調製した。市販の精製済製薬用コラーゲンX(ウシ真皮由来I型コラーゲン)、Y(ブタ組織由来I型コラーゲン)およびZ(ウシ真皮由来I型コラーゲン)は本明細書に記載の方法によって得たのではなく、本発明技術について記載された特性を持たない。
【0129】
細胞性バイオゲル組成物K~Rを次の通り調製した:0.01%~3%弱酸溶液中の採取された滅菌済コラーゲン(実施例1)の原液を、活栓(stopcock)装置を通してキャリヤー溶液に添加した。培地中の生存細胞を該混合物に添加し、中性pHに調整した。生じた混合物は、実施例1からの採取した滅菌済コラーゲンを5~60mg/mL含有する細胞性バイオゲル組成物を提供した。バイオゲル組成物QおよびRは、適当な架橋剤を含有する硬化性バイオゲル組成物を表す。
【0130】
実施例3:バイオゲル組成物のレオロジー特性の測定
【0131】
本実施例は、実施例2に記載のような無細胞バイオゲル組成物サンプルについての非ニュートン流体挙動を説明する。レオロジー測定は、TA Instruments Discovery Hybrid Rheometer(DHR-3)(40mmパラレルプレート、Peltierスチールプレート;1mmギャップ)を使って行った。サンプルプレートを2~6℃に維持した。バイオゲル組成物を下側のサンプルプレート上に堆積させスピンコーティングし、そして上側のサンプルプレートは前記サンプルバイオゲルをカバーするのに使用した。堆積したサンプルに関して、次のパラメーターに従って降伏応力測定を行った。
【0132】
方法:
スイープ1-振動振幅増加
温度:0~12℃
浸漬時間:60秒
周波数:1.0Hz
線形掃引:1.0Paから200.0Pa
スイープ2-振動振幅減少
温度:0~12℃
浸漬時間:0秒
周波数:1.0Hz
線形掃引:200.0Paから1.0Pa
【0133】
振動ひずみを弾性率に対してプロットした。図4は、サンプルバイオゲルについての貯蔵弾性率と損失弾性率の交差グラフを表し、ここではバイオゲルが液体として挙動する。振動スイープ1と2について、サンプルバイオゲルはそれぞれ55Paと47Paの剪断応力で液体としてふるまう。
【0134】
実施例4:バイオゲル組成物の硬化特性分析
【0135】
本実施例は、ゲル化前とゲル化後のバイオゲル組成物(組成物A~J)の熱硬化特性の測定を説明する。熱硬化測定は、TA Instruments DHR-3レオメーター(40mmパラレルプレート、Peltierスチールプレート;1mmギャップ高)を使って行った。サンプルバイオゲル組成物は実施例2に記載の通り調製した。サンプルバイオゲルの均一な被膜を、下側のサンプルプレート上にスピンコーティングし、そして上側のサンプルプレートは前記被覆したバイオゲルをカバーするために使用した。
【0136】
方法:
ラン1-振動時間:
温度:4℃
浸漬時間:0秒
周波数:1.0Hz
応力:150Pa
持続時間:120秒
ラン2-振動時間:
温度:37℃
浸漬時間:0秒
周波数:1.0Hz
応力:10Pa
持続時間:300秒
【0137】
図5は、本発明のバイオゲル組成物についての急速ゲル化および硬化を示し、ここでサンプルバイオゲルは、3分未満のうちにそれの貯蔵弾性率の16倍変化を示した。実施例2に記載した手順に従って、市販のコラーゲンを使って調製したバイオゲルについても硬化測定を実施した(図6A)。サンプルバイオゲルはその貯蔵弾性率の6.5倍超の増加を示したが、一方で市販のコラーゲンXとYのバイオゲルは測定可能な増加を示さず、コラーゲンZのものは1倍の増加を示した。
【0138】
コラーゲン材料(実施例1)並びに市販のコラーゲンXおよびYを含む硬化および未硬化バイオゲル組成物を、実施例2の手順に従って調製した。各サンプルを円錐型に射出することにより3D構造に造形した。未硬化サンプルバイオゲルは87Paまでの圧力下で固体を維持したが、市販のコラーゲンを含む未硬化3D構造は、それぞれ7Pa(市販のコラーゲンX)および41Pa(市販のコラーゲンY)より上の圧力下で固体を維持できなかった。硬化したバイオゲル組成物は緩衝液中で一晩硬化させたものである。図6Bにより立証されるように、本発明のサンプルバイオゲルの硬化三次元構造体はその形状を維持したが、一方で市販のコラーゲンXとYを使ったバイオゲル組成物から作製した構造体は固体構造を維持することができなかった。
【0139】
実施例5:三次元構造体の構造安定性測定
【0140】
本実施例は、実施例2に記載のようなバイオゲル組成物および市販のコラーゲンを含むバイオゲルから成形された硬化三次元構造体についての構造安定性測定を例証する。TA Instruments DMA Q800 Mechanical Thermalを使って動的機械分析(DMA)を実施した。各サンプルを丸型ディスク型に射出し、およそ高さ約5mmで直径10~14mmを計測する。硬化後バイオゲルサンプルをDMA Q800のサンプルプレート上にのせ、最初の高さ測定値を得た。1N/分のランプ力で3Nまで応力/ひずみプロットを得た。試験した典型的な組成物の各々についての応力/ひずみプロットを図8と9に与える。図10は、サンプルバイオゲル組成物と、市販のコラーゲン源(X)を用いたバイオゲル組成物についての、構造安定性測定の比較を提供する。
【0141】
組成物H、IおよびJは、UV光源(Henry Schein-Maxima RU1200)への暴露による追加の硬化に供した。暴露時間はサイズ、構造およびUV光源の距離に依存する。
【0142】
組成物A~Jの測定値を、応力(kPa)対ひずみの関数としてプロットした(図7および8;表1に応力/ひずみ比を与える)。各測定値は組成物A~Jの熱硬化後に取った。バイオゲル組成物中の採取された滅菌済コラーゲンの量が増加すると、応力/ひずみ比も増加することが観察された。図8は、バイオゲル組成物中のコラーゲン量を増加させることが硬化後バイオゲル組成物の圧縮強度を向上させることを証明する。リボースとリボフラビンを含有するバイオゲル組成物(組成物HとI)は、架橋を開始させるためUV照射にかけた。図9は、そのバイオゲル組成物HとIが、架橋剤を含まないバイオゲル組成物(組成物E)よりも高い応力/ひずみ比を示したことを証明する。
【0143】
組成物Aは13.8kPaの応力/ひずみ比を示し、一方で市販のコラーゲン(X)のバイオゲル組成物は約0.1kPaの応力/ひずみ比を示した。その結果は下表1に要約される:
【表1】
【0144】
実施例6:3D印刷装置を使ったバイオゲルからの3D構造体の生産
【0145】
本実施例は、本明細書に記載のバイオゲル組成物を使った3D印刷装置を用いた三次元構造体の生産方法を例証する。実施例2に従ってサンプルバイオゲル組成物を調製し、シリンジに装填し、ここで該シリンジの外枠を0℃~12℃に維持した。シリンジを印刷装置に連結し、そして0℃~12℃に温度制御された印刷装置に前記バイオゲル組成物を投入した。バイオゲル組成物は、印刷装置から58mm/秒の速度で射出され、25℃~37℃に維持された温度制御プレート上に堆積させた。解剖学的3D構造体が得られた。この解剖学的3D構造体をPBS中34℃~37℃にて一晩硬化させた。
【0146】
上記結果は、本発明のバイオゲル組成物が、造形、取り扱いおよび移植する時もそれらの形状を維持する高忠実度の3D構造体を生産可能にすることを証明する。更に、それらの結果は該3D構造物が優れた圧縮強度と弾性、並びに望ましいテクスチャ特性と美的特性も有することを証明する。
【0147】
いくつかの実施態様を説明し記載してきたが、当業者は、上記明細書を読むことによって本明細書に言及された本発明技術に対して改変、同等な置換および他の形の変更を行うことができる。
【0148】
本発明は、本明細書に記載される特定の観点において限定されるべきではなく、これは本発明の個々の観点の単純な説明として意図されるものである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく本明細書中に列挙されたものに加えて、本発明の様々な改良と変更を行うことができ、このことは上記記載から当業者にとって明白であろう。そのような改良と変更は添付の特許請求の範囲の中に含まれる。本発明が、特定の方法、試薬、化合物、組成物、標識化合物または生物学的系に限定されず、もちろん多様に異なることができることを理解すべきである。
【0149】
本発明を上記実施態様に併せて記載してきたが、それは上記説明と実施例が本発明を例示するためのものであり本発明の範囲を限定するものではない。他の観点、利点および本発明の範囲内での変更は、本発明が属する当業者にとって明白であろう。
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図5
図6A
図6B
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