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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】流体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20230726BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
F16F13/10 J
F16F13/10 K
B60K5/12 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020012725
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021116920
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】水川 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】古町 直基
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-206587(JP,A)
【文献】特開2010-078017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に非圧縮性流体が封入された主液室と副液室を備える流体封入式防振装置であって、
前記主液室と前記副液室を仕切る仕切部材に可動部材が配されて、該可動部材の両面に該主液室と該副液室の液圧が及ぼされていると共に、
該可動部材は部分的に薄肉部が設けられており、
該仕切部材には該薄肉部に対向する当接部が設けられて、
液圧による該可動部材の変位によって該可動部材と該仕切部材が当接する際に、該可動部材の該薄肉部が該仕切部材の該当接部に最初に当接するものであり、且つ、
該可動部材の該薄肉部が環状とされていると共に、該薄肉部よりも厚さ寸法が大きくされた厚肉部が、該可動部材における該薄肉部の内周側および外周側に設けられている流体封入式防振装置。
【請求項2】
前記仕切部材における前記厚肉部と対応する部分には、前記主液室または前記副液室に連通される連通孔が形成されている請求項に記載の流体封入式防振装置。
【請求項3】
前記可動部材が前記仕切部材によって支持される支持部を備えた可動膜とされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項4】
前記可動部材が前記仕切部材に設けられた収容領域に対して板厚方向に全体が変位可能な状態で収容された可動板とされている請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
【請求項5】
前記当接部が前記薄肉部に向けて突出する凸形状とされている請求項1~の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウントなどに用いられる流体封入式防振装置であって、液圧吸収機構を構成する可動部材を備える流体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンマウントなどに用いられる防振装置の一種として流体封入式防振装置が知られており、例えば特開2006-057675号公報(特許文献1)に液封入式防振装置として示されている。特許文献1の液封入式防振装置は、内部に非圧縮性流体が封入された第1液室と第2液室を備えており、それら第1液室と第2液室の間において流体が流動するなどして、目的とする防振効果が発揮される。
【0003】
ところで、特許文献1の液封入式防振装置は、第1液室と第2液室を仕切る仕切部材に対して、弾性仕切り膜等の可動部材が配されている。特許文献1において、弾性仕切り膜は、両面に第1液室の液圧と第2液室の液圧の各一方が及ぼされており、振動入力によって第1液室と第2液室の間に相対的な内圧変動が生じることによって変位する。そして、弾性仕切り膜の変位によって、第1液室と第2液室の間で相対的な内圧差を低減するように液圧が伝達されて、液室の内圧上昇による高動ばね化が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-057675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可動部材を備えた流体封入式防振装置では、可動部材が変位によって仕切部材に当接する際に、打ち当たりによる打音が発生するおそれがある。そこで、特許文献1では、弾性仕切り膜の内周部分に第1及び第2リブが設けられて、弾性仕切り膜がリブにおいて仕切部材(オリフィス部材と板部材)に予め当接していることにより変位時の打音の低減が図られているが、特許文献1とは別の構造によって打音の低減を図ることも求められる。
【0006】
本発明の解決課題は、簡単な構造によって、可動部材の仕切部材への打ち当たりによって生じる打音を低減することができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、内部に非圧縮性流体が封入された主液室と副液室を備える流体封入式防振装置であって、前記主液室と前記副液室を仕切る仕切部材に可動部材が配されて、該可動部材の両面に該主液室と該副液室の液圧が及ぼされていると共に、該可動部材は部分的に薄肉部が設けられており、該仕切部材には該薄肉部に対向する当接部が設けられて、液圧による該可動部材の変位によって該可動部材と該仕切部材が当接する際に、該可動部材の該薄肉部が該仕切部材の該当接部に最初に当接するものであり、且つ、該可動部材の該薄肉部が環状とされていると共に、該薄肉部よりも厚さ寸法が大きくされた厚肉部が、該可動部材における該薄肉部の内周側および外周側に設けられているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、液圧の作用によって変位した可動部材が仕切部材に当接する際に、可動部材の薄肉部が仕切部材に最初に当接するように、仕切部材に薄肉部と対向する当接部が設けられている。これにより、可動部材において仕切部材に最初に当接する部分が薄肉とされて質量が小さく、可動部材が打ち当たることによって仕切部材に及ぼされる衝撃力が抑えられる。それ故、可動部材の仕切部材への打ち当たりによって生じる打音が低減される。
【0010】
また、上記の如き打音の低減は、可動部材に部分的な薄肉部が設けられると共に、仕切部材に薄肉部と対向する当接部が設けられることによって実現されることから、部品点数の増加を要することなく簡単な構造によって打音の低減が図られる。
【0012】
加えて、本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、薄肉部の内周側と外周側に厚肉部が設けられることにより、可動部材の変形剛性が厚肉部によって確保される。それ故、例えば、可動部材の変位による液圧吸収作用等が期待される振動の入力に際して、可動部材の過剰な変位が防止されて、可動部材の仕切部材への不必要な接触が防止される。
【0013】
の態様は、第の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記仕切部材における前記厚肉部と対応する部分には、前記主液室または前記副液室に連通される連通孔が形成されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、液圧の作用による可動部材の変位に際して、厚肉部が仕切部材に当接し難くなって、薄肉部を厚肉部よりも先に仕切部材の当接部に当接させやすい。また、厚肉部は薄肉部に比して変形剛性が大きく、厚肉部が連通孔を塞ぐように仕切部材に当接することによって、連通孔を有効に遮断することができる。
【0015】
の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動部材が前記仕切部材によって支持される支持部を備えた可動膜とされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、液圧の可動膜への作用に際して、可動膜の変形による部分的な変位によって、液圧伝達作用が発揮される。しかも、可動膜に薄肉部が設けられていることにより、可動膜の弾性変形の共振周波数を薄肉部の大きさ、配置、数などによってチューニングすることができ、要求される防振特性を大きな自由度で実現することができる。
【0017】
の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記可動部材が前記仕切部材に設けられた収容領域に対して板厚方向に全体が変位可能な状態で収容された可動板とされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、全体が変位して仕切部材に当接することから打音が問題となり易い可動板において、薄肉部が他の部分に先んじて仕切部材の当接部に当接する構造とすることにより、打音を効果的に防止することができる。
【0019】
の態様は、第一~第の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記当接部が前記薄肉部に向けて突出する凸形状とされているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、仕切部材の当接部が凸形状とされて薄肉部に向けて突出していることにより、可動部材において薄肉部を他の部分よりも先に仕切部材の当接部に当接させ易くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡単な構造によって、可動部材の仕切部材への打ち当たりによって生じる打音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図
図2図1に示すエンジンマウントを構成する仕切部材の斜視図
図3図2に示す仕切部材の分解斜視図
図4図2に示す仕切部材の平面図
図5図2に示す仕切部材の底面図
図6図2に示す仕切部材の正面図
図7図4に示す仕切部材の拡大断面図であって、図4のVII-VII断面に相当する図
図8図1に示すエンジンマウントにおける可動膜の変形態様の解析図であって、(a)が振動の非入力状態を、(b)が薄肉部が仕切部材へ当接した状態を、(c)が薄肉部に加えて厚肉部も仕切部材へ当接した状態を、それぞれ示す。
図9】本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図
図10図9に示すエンジンマウントを構成する仕切部材を拡大して示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって連結された構造を有している。以下の説明において、上下方向とは、原則として、マウント中心軸方向である図1中の上下方向を言う。
【0025】
第一の取付部材12は、略円柱形状を有する取付部18を備えている。取付部18は、上面に開口して上下方向に延びるねじ穴20を備えている。取付部18の下部には、取付部18から外周へ向けて突出するフランジ状部22が一体形成されている。第一の取付部材12における取付部18の下方には、下方へ向けて小径となるテーパ状の外周面を有した固着部24が突出している。
【0026】
第二の取付部材14は、第一の取付部材12に比して大径の筒状とされている。本実施形態の第二の取付部材14は、段付き円筒形状とされて、中間部分の段差に対して上側が下側よりも大径とされている。
【0027】
第一の取付部材12が第二の取付部材14の上方に配されて、それら第一の取付部材12と第二の取付部材14が本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、略円錐台形状とされており、小径側の端部である上端部に第一の取付部材12の固着部24が埋め入れられた状態で加硫接着されていると共に、大径側の端部である下端部に第二の取付部材14が加硫接着されている。本体ゴム弾性体16は、第一の取付部材12と第二の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0028】
本体ゴム弾性体16は、大径側の端面に開口する凹所26を備えている。凹所26は、周壁内面が上方に向けて次第に小径となるテーパ形状とされている。凹所26が設けられることによって、第一の取付部材12と第二の取付部材14の連結方向に延びる本体ゴム弾性体16の縦断面の左右両側部分において断面中心をつなげた弾性中心軸が、外周へ向けて下傾する傾斜方向に延びている。
【0029】
本体ゴム弾性体16には、凹所26の開口周縁部から下方へ向けて延び出す筒状のシールゴム層28が一体形成されている。シールゴム層28は、外周面が第二の取付部材14の下部の内周面に固着されて、第二の取付部材14の下部内周面を覆っている。
【0030】
本体ゴム弾性体16に固着された第二の取付部材14には、可撓性膜30が取り付けられている。可撓性膜30は、薄肉円板状のゴム膜であって、中央部分が弛みをもって下方に膨らんでおり、外周端部には環状の固定部材32が固着されている。そして、固定部材32がシールゴム層28で覆われた第二の取付部材14の下部の内周へ挿入されて、第二の取付部材14に縮径加工が施されることにより、固定部材32がシールゴム層28を介して第二の取付部材14に嵌着される。なお、固定部材32と第二の取付部材14の間は、シールゴム層28によって流体密に封止されている。
【0031】
固定部材32が第二の取付部材14に取り付けられることにより、可撓性膜30が第二の取付部材14の下側の開口部を塞ぐように配される。これにより、本体ゴム弾性体16と可撓性膜30の上下方向の対向面間には、外部空間から流体密に隔てられた流体室34が画成される。
【0032】
流体室34には、非圧縮性流体が封入されている。非圧縮性流体の種類は、特に限定されないが、例えば、水やエチレングリコール等が好適に用いられる。後述する流体の流動作用に基づいた防振効果を効率的に得るために、流体室34に封入される非圧縮性流体は、0.1Pa・s以下の低粘性流体であることが望ましい。
【0033】
流体室34には、仕切部材36が配されている。仕切部材36は、図2~6に示すように、全体として略円板形状とされている。図7に示すように、仕切部材36は、第一部材38と第二部材40が組み合わされて構成されている。
【0034】
第一部材38は、略円板形状とされている。第一部材38は、上端部から外周へ向けて突出するフランジ状の固定片42を備えており、固定片42には上下方向に貫通するボルト穴44が周方向の複数箇所に形成されている。第一部材38の径方向の中央部分には、連通孔としての第一内孔46が円形断面をもって上下方向に貫通して形成されている。また、第一部材38における第一内孔46よりも外周側には、周方向に延びる連通孔としての第一外孔48が上下方向に貫通して形成されている。
【0035】
第一外孔48よりも内周側が環状の第一内周部分50とされていると共に、第一外孔48よりも外周側が環状の第一外周部分52とされており、それら第一内周部分50と第一外周部分52が周方向の複数箇所において第一連結部54によって連結されている。第一連結部54は、第一外孔48の上側を周方向で部分的に覆うように跨いで設けられており、内周端部が第一内周部分50に一体で連続していると共に、外周端部が第一外周部分52に一体で連続している。本実施形態では、図3に示すように、4つの第一連結部54,54,54,54が周方向において等間隔に設けられているが、第一連結部54の数や配置は適宜に変更され得る。
【0036】
第二部材40は、図7に示すように、全体として略円板形状とされている。第二部材40の外周端部は、上方へ突出して厚肉とされた固定部56とされており、第二部材40が浅底カップ状に凹形とされた縦断面形状を有している。固定部56には、上面に開口する複数のねじ穴58が形成されている。また、固定部56には、外周面に開口して一周に満たない長さで周方向に延びる周溝60が形成されている。周溝60の一方の端部には、図3に示すように、周溝60から上向きに延びて第二部材40の上面に開口する第一連通口62が形成されている。周溝60の他方の端部には、図4に示すように、周溝60から下向きに延びて第二部材40の下面に開口する第二連通口64が形成されている。
【0037】
第二部材40の径方向の中央部分には、連通孔としての第二内孔66が円形断面をもって上下方向に貫通して形成されている。また、第二部材40における第二内孔66よりも外周側には、周方向に延びる連通孔としての第二外孔68が上下方向に貫通して形成されている。
【0038】
第二外孔68よりも内周側が環状の第二内周部分70とされていると共に、第二外孔68よりも外周側が環状の第二外周部分72とされており、それら第二内周部分70と第二外周部分72が周方向の複数箇所において第二連結部74によって連結されている。第二連結部74は、第二外孔68の下側を周方向で部分的に覆うように跨いで設けられており、内周端部が第二内周部分70に一体で連続していると共に、外周端部が第二外周部分72に一体で連続している。本実施形態では、図4に示すように、4つの第二連結部74,74,74,74が周方向において等間隔に設けられているが、第二連結部74の数や配置は適宜に変更され得る。なお、第二連結部74の数や配置は、第一連結部54の数や配置と異なっていてもよい。
【0039】
第一部材38と第二部材40は、図1に示すように、第一部材38の固定片42が第二部材40の固定部56に重ね合わされており、第一部材38のボルト穴44に挿通されたねじ76が第二部材40のねじ穴58に螺着されることにより、相互に固定されている。これにより、全体として略円板形状の仕切部材36が、第一部材38と第二部材40によって構成されている。
【0040】
仕切部材36の内部には、収容領域78が形成されている。収容領域78は、第一部材38と第二部材40の間に形成された空所であって、第一,第二外孔48,68よりも外周側まで広がっている。これにより、収容領域78には、第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68が連通されている。
【0041】
仕切部材36の収容領域78には、可動部材としての可動膜80が配されている。可動膜80は、図6,7に示すように、略円板形状とされており、ゴム弾性体によって形成されている。可動膜80は、外周端部が略円形断面を有して周方向に延びる環状の支持部82とされている。可動膜80における支持部82よりも内周側は、環状の薄肉部84と、薄肉部84の外周側に位置する第一厚肉部86と、薄肉部84の内周側に位置する第二厚肉部88とが、一体で設けられている。
【0042】
薄肉部84は、可動膜80の径方向の中間に部分的に設けられており、本実施形態では周方向の全周に亘って連続する環状とされている。薄肉部84における径方向の中央部分は、略一定の厚さで広がる平板状部90とされている。薄肉部84における径方向の両端部は、平板状部90から離れるに従って次第に厚肉となる厚さ変化部92とされている。厚さ変化部92は、径方向において平板状部90から離れるに従って次第に厚さ方向である上下方向の両外側へ傾斜する傾斜面94を有している。
【0043】
第一厚肉部86と第二厚肉部88は、何れも薄肉部84よりも厚さ寸法が大きくされており、略一定の厚さで広がっている。第一厚肉部86は、支持部82と薄肉部84の間に設けられており、周方向に全周に亘って連続する環状とされている。第一厚肉部86は、仕切部材36の第一,第二外孔48,68と対応する位置に配されており、径方向の幅寸法が第一,第二外孔48,68の幅寸法よりも大きくされている。第二厚肉部88は、薄肉部84よりも内周側に設けられており、略円板形状とされている。第二厚肉部88は、仕切部材36の第一,第二内孔46,66と対応する位置に配されており、外径寸法が第一,第二内孔46,66の内法寸法よりも径方向両側に大きくされている。本実施形態の第一厚肉部86と第二厚肉部88は、互いに略同じ厚さ寸法とされている。
【0044】
可動膜80は、第一部材38と第二部材40の間に配されて収容領域78に収容されている。可動膜80は、外周端部の支持部82が第一部材38と第二部材40の間において上下方向に挟み込まれて、必要に応じて圧縮状態で支持されている。可動膜80は、第一部材38と第二部材40による挟持部分を内周へ外れた部分が、第一部材38と第二部材40の少なくとも一方に対して上下方向に離れている。なお、第一厚肉部86は、支持部82につながる外周端部が、第一部材38と第二部材40によって上下方向に挟まれていてもよい。
【0045】
仕切部材36における可動膜80の薄肉部84と対向する部分には、当接部96が設けられている。当接部96は、収容領域78の上下方向の壁内面から薄肉部84に向けて突出する凸形状とされて、周方向の全周に亘って連続している。当接部96の突出先端面は、仕切部材36の径方向における中央部分が薄肉部84の平板状部90に対応する平面とされていると共に、仕切部材36の径方向における両端部が薄肉部84の傾斜面94に対応する傾斜面98とされている。当接部96は、可動膜80の薄肉部84に対して所定の隙間をもって対向している。当接部96と薄肉部84の上下方向の対向間距離は、可動膜80の第一,第二厚肉部86,88と収容領域78の上下方向の壁内面との対向間距離よりも小さくされている。このように、当接部96が収容領域78の壁内面から突出する凸形状とされていることにより、上下方向の厚さ寸法が小さく可動膜80の表面において凹状となる薄肉部84に当接部96を接近させて、薄肉部84と仕切部材36の隙間を小さく設定することができる。
【0046】
本実施形態では、仕切部材36の収容領域78における可動膜80の両面に対する対向内面は、上下で略等しくされている。そして、薄肉部84と収容領域78内面との対向面間距離は、厚肉部86,88と収容領域78内面との対向面間距離よりも小さくされている。また、薄肉部84と厚肉部86,88との間の厚さ変化部92では、収容領域78との対向面間距離が、薄肉部84から厚肉部86,88に向かって次第に大きくなるように変化している。
【0047】
仕切部材36の第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68は、可動膜80の第一,第二厚肉部86,88と対応する部分に開口している。従って、第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68は、可動膜80の薄肉部84を径方向に外れた位置に配されている。
【0048】
可動膜80が収容領域78に配された仕切部材36は、第二の取付部材14の下部の内周へ挿入されて、本体ゴム弾性体16と可撓性膜30の上下方向間に配される。仕切部材36の外周面は、例えば第二の取付部材14の縮径によって、第二の取付部材14の内周面に固着されたシールゴム層28に対して押し付けられている。これにより、第二の取付部材14の内周面と仕切部材36の外周面との間が、シールゴム層28によって流体密に封止されている。
【0049】
上記のごとく仕切部材36が配されることにより、流体室34が仕切部材36を挟んで上下方向に二分されている。即ち、仕切部材36よりも上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16によって構成された主液室としての受圧室100が設けられている。仕切部材36よりも下側には、壁部の一部が可撓性膜30によって構成された副液室としての平衡室102が設けられている。
【0050】
仕切部材36の外周面にシールゴム層28が押し付けられることによって、仕切部材36の外周端部を延びる周溝60の開口が、シールゴム層28によって流体密に覆われている。また、周溝60の両端部に連通された第一連通口62と第二連通口64が受圧室100と平衡室102に開放されている。これらにより、受圧室100と平衡室102を相互に連通するオリフィス通路104が構成されている。オリフィス通路104のチューニング周波数は、特に限定されないが、例えば、エンジンシェイクに相当する低周波にチューニングされる。
【0051】
可動膜80の上面には、第一内孔46および第一外孔48を通じて受圧室100の液圧が及ぼされている。可動膜80の下面には、第二内孔66および第二外孔68を通じて平衡室102の液圧が及ぼされている。そして、振動入力によって受圧室100と平衡室102の間に相対的な液圧差が生じると、液圧の作用によって可動膜80が上下方向に変位する。なお、可動膜80の外周端部が仕切部材36によって固定的に支持されていることから、可動膜80の変位は、可動膜80の弾性変形によって部分的に生じる。
【0052】
かくの如き構造とされたエンジンマウント10は、第一の取付部材12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付部材14が図示しない車両ボデーに取り付けられる。これにより、パワーユニットがエンジンマウント10を介して車両ボデーに取り付けられて支持されている。
【0053】
パワーユニットおよび車両ボデーに取り付けられた車両への装着状態において、エンジンマウント10には、上下方向の振動が入力される。入力振動がオリフィス通路104がチューニングされた低周波数域の振動である場合には、受圧室100と平衡室102の間においてオリフィス通路104を通じた流体流動が共振状態で積極的に生じる。その結果、流体の流動作用に基づいたオリフィス通路104による防振効果が発揮される。
【0054】
オリフィス通路104がチューニングされたエンジンシェイクのような低周波大振幅振動の入力に際して、可動膜80は、入力振動の振幅に追従しきれずに、収容領域78の上下方向の壁内面に当接する。これにより、可動膜80が収容領域78の壁内面によって実質的に拘束されて、可動膜80の変位による液圧伝達作用が有効に発揮されない。それ故、可動膜80の液圧伝達によって受圧室100と平衡室102の液圧差が低減されることがなく、オリフィス通路104を通じた流体流動が効率的に生じる。
【0055】
可動膜80が仕切部材36における収容領域78の上下方向の壁内面に当接する際に、図8に示すように、可動膜80の薄肉部84が仕切部材36に対して最初に当接する。即ち、図8(a)に示す振動が入力されていない初期状態において上下方向の大振幅振動が入力されると、受圧室100と平衡室102の圧力差によって可動膜80が上下方向に変位し、可動膜80が仕切部材36に当接する。その際に、図8(b)に示すように、第一,第二厚肉部86,88が仕切部材36における収容領域78の壁内面に当接するよりも先に、薄肉部84が仕切部材36の当接部96に当接する。より詳細には、例えば薄肉部84の平板状部90が当接部96に打ち当たるように当接した後、薄肉部84の厚さ変化部92が平板状部90に近い側から遠い側に向けて次第に当接部96の傾斜面98に当接していく。可動膜80の変位量が更に大きくなるに従って、図8(c)に示すように、薄肉部84の両側において第一,第二厚肉部86,88が仕切部材36に打ち当たるように当接する。これにより、可動膜80の変位が仕切部材36によって制限されて、可動膜80の変位による液圧伝達作用の発揮が阻止される。
【0056】
図8(b)に示すように、薄肉部84が第一,第二厚肉部86,88に先んじて仕切部材36に当接することにより、可動膜80の支持部82を外れた部分が仕切部材36と離れた状態から仕切部材36に当接する際に、衝撃が低減される。即ち、可動膜80が仕切部材36に対して変位して打ち当たる際に、第一,第二厚肉部86,88に比して比較的に質量が小さく且つ変形剛性が低い薄肉部84において最初に仕切部材36へ当接することにより、当接時の衝撃が比較的に小さくなる。その結果、可動膜80が仕切部材36に当接することによる打音が低減される。
【0057】
薄肉部84は、可動膜80において部分的に設けられていることから、可動膜80の仕切部材36に対する初期の当接面積が比較的に小さくされる。それ故、可動膜80が広範囲において略同時に当接する場合に比して、当接時の衝撃力が低減される。本実施形態では、薄肉部84の面積が第一,第二厚肉部86,88の面積の合計よりも小さくされており、薄肉部84が仕切部材36に当接する際の衝撃力が低減されている。
【0058】
薄肉部84が平板状部90と厚さ変化部92を有しており、薄肉部84から厚肉部86,88に向かって対向面間距離が次第に大きくされていることから、厚さ変化部92が仕切部材36の当接部96から離れた状態で平板状部90が当接部96に当接し、その後、厚さ変化部92の当接部96に対する当接面積が徐々に大きくなる。それ故、薄肉部84が当接部96に当接する際に、当接初期の衝撃力がより低減されて、打音が効果的に防止される。
【0059】
薄肉部84の外周側と内周側には、第一,第二厚肉部86,88が設けられている。そして、図8(c)に示すように、第一,第二厚肉部86,88が第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68の開口周縁部において仕切部材36に押し付けられる。これにより、第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68が、比較的に変形剛性が大きい第一,第二厚肉部86,88によって有効に遮断されて、第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68を通じた液圧の伝達が効果的に防止される。蓋し、可動膜80において、第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68を遮断する遮断部分の変形剛性が小さいと、第一,第二内孔46,66と第一,第二外孔48,68を通じた液圧の伝達が、遮断部分における可動膜80の変形によって許容されてしまうからである。
【0060】
入力振動がオリフィス通路104のチューニング周波数よりも高周波の小振幅振動である場合には、オリフィス通路104は、実質的な目詰まり状態となって、流体の流動による防振効果が発揮されない。一方、可動膜80は、仕切部材36に押し当てられることなく、厚さ方向に微小変位する。それ故、受圧室100と平衡室102の間において可動膜80の変位による液圧の伝達が生じ、オリフィス通路104の目詰まりによって受圧室100が実質的に密閉化されるのを防いで、低動ばね化による防振効果が発揮される。
【0061】
可動膜80は、外周端部の支持部82において仕切部材36に支持されており、支持部82よりも内周の薄肉部84と第一,第二厚肉部86,88が何れも仕切部材36に対して拘束されることなく上下方向の変位を許容されている。それ故、液圧の伝達作用が可動膜80の変位量に対して効率的に発揮されて、優れた防振性能を得ることができる。なお、仕切部材によって支持される支持部は、可動膜の外周端部に周方向で部分的に設けられていてもよいし、可動膜の径方向の中央や中間に突起状に設けられていてもよい。
【0062】
図9には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第二の実施形態として、自動車用のエンジンマウント110が示されている。エンジンマウント110は、図10にも示すように、仕切部材36の収容領域78に対して、可動部材としての可動板112が配された構造を有している。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
可動板112は、略円板形状とされており、薄肉部84と、薄肉部84の外周側に設けられる第一厚肉部86と、薄肉部84の外周側に設けられる第二厚肉部88とを、一体で備えている。可動板112は、仕切部材36の収容領域78に対して、全体が仕切部材36に拘束されることなく、板厚方向である上下方向に変位可能な状態で収容されている。要するに、可動板112の上下方向の厚さ寸法の最大値は、収容領域78の上下方向の壁内面の対向面間距離よりも小さくされており、可動板112の全体が収容領域78の壁内面から上下方向の少なくとも一方へ離れた状態とされている。
【0064】
可動板112の薄肉部84と仕切部材36の当接部96との上下方向の対向間距離は、可動板112の第一,第二厚肉部88と当接部96を外れた収容領域78の壁内面との上下方向の対向間距離よりも小さくされている。また、可動板112の外径寸法は、収容領域78の内径寸法よりも小さくされており、可動板112の外周面は仕切部材36によって拘束されていない。
【0065】
可動板112が配された仕切部材36は、図9に示すように、受圧室100と平衡室102の間に配される。これにより、可動板112には、上面に受圧室100の液圧が及ぼされていると共に、下面に平衡室102の液圧が及ぼされている。そして、振動入力によって受圧室100と平衡室102に相対的な液圧差が生じると、可動板112の全体が液圧の作用によって上下方向に変位するようになっている。
【0066】
本実施形態に係るエンジンマウント110においても、オリフィス通路104がチューニングされた低周波大振幅振動の入力に際して、上下方向に変位した可動板112は、薄肉部84において仕切部材36に当接する。それ故、可動板112が仕切部材36に打ち当たることによる衝撃が軽減されて、当接時の打音が抑制される。
【0067】
また、薄肉部84が当接した後、可動板112の変位量が更に大きくなることにより、第一,第二厚肉部86,88が、第一,第二外孔68の開口周縁部と第一,第二内孔46,66の開口周縁部とにおいて仕切部材36に当接する。これにより、第一,第二外孔48,68と第一,第二内孔46,66の開口部分において、可動板112の変位による圧力伝達作用の発揮が阻止される。
【0068】
このように、可動部材が収容領域78内において全体の変位を許容される可動板構造であっても、可動膜構造の可動部材を有する前記第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態の可動板112は、全体がゴム弾性体によって形成されて弾性変形を許容されることから、小振幅振動の入力に際して、全体の変位による液圧伝達作用だけでなく、弾性変形に伴う部分的な変位による液圧伝達作用に基づいた防振効果も期待できる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、薄肉部は、周方向の全周に亘って連続する環状に限定されない。具体的には、例えば、周方向において部分的に設けられる円弧状、径方向に延びる直線状や湾曲状、円形状などであってもよい。また、複数の薄肉部分が周方向で断続的に設けられることにより、それら薄肉部分が全体として環状の薄肉部を構成するようにしてもよい。
【0070】
可動部材において複数の薄肉部を設けることもできる。例えば、径寸法が異なる複数の環状の薄肉部を、可動部材に同心的に設けてもよいし、線状や円形等の各種形状の薄肉部を可動部材の複数箇所にスポット的に設けてもよい。このような場合には、仕切部材36において対応する各部位に当接部が設けられ得る。
【0071】
前記実施形態の薄肉部84は、厚さ寸法が一定の平板状部90を有していたが、例えば、薄肉部において部分的に厚さが変化していてもよい。また、前記実施形態では、厚肉部86,88は、全体が略一定の厚さとされていたが、厚肉部は、少なくとも一部において厚さが変化していてもよい。薄肉部84と厚肉部86,88との間において仕切部材36への当接面積が次第に増加するような厚さ変化部92も必須でない。
【0072】
前記実施形態では、可動部材80,112の両面において、流体圧作用に伴う変位に際して仕切部材36へ最初に当接する薄肉部84が設けられていたが、一方の面だけに設定してもよい。例えば受圧室100が増圧する荷重入力方向で可動部材80,112の仕切部材36への当接打音が問題になっているような場合では、可動部材80,112が副液室102側へ変位して可動部材80,112へ当接する側にだけ、流体圧作用に伴う変位に際して仕切部材36へ最初に当接する薄肉部84と当接部96を設けるようにしてもよい。
【0073】
前記実施形態では、仕切部材36において収容領域78内で可動部材80,112に向かって突出する形状の当接部96が設けられて、薄肉部84と可動部材80,112との対向面間距離が、厚肉部86,88と可動部材80,112との対向面間距離よりも小さくされていたが、かかる構成は本発明において必須でない。例えば仕切部材36との対向面間距離が薄肉部84と厚肉部86,88とで略同じに設定された場合でも、可動部材80,112に対する圧力作用に伴う変形量が厚肉部86,88よりも薄肉部84の方が大きいことを利用して、薄肉部84が厚肉部86,88よりも先に仕切部材36へ当接させることも可能である。なお、前記実施形態では、薄肉部84と厚肉部86,88を含む可動部材80,112の全体に亘って、厚さ方向の中心が略同一平面上に設定されており、厚肉部86,88に対して薄肉部84は上下両面から凹状に凹んだ形状となっていたが、可動部材80,112の全体に亘って厚さ方向の中心を同一平面上にそろえる必要はなく、例えば可動部材80,112の上下何れか一方の面において薄肉部84と厚肉部86,88を同一平面をもって形成してもよい。
【0074】
薄肉部84にシボ等の凹凸を設けることによって、仕切部材36への当接時の衝撃力を更に軽減して、打音の低減を図ることもできる。同様に、厚肉部86,88において仕切部材36への当接が想定される部分にシボなどの凹凸を設けて、厚肉部86,88が仕切部材36に当接する際の衝撃の低減を図ることもできる。また、このような薄肉部84や厚肉部86,88における凹凸に加えて又は代えて、当接する仕切部材36側にシボ状の凹凸などを設けることもできる。なお、前記実施形態からも判るように、厚肉部86,88は、それ自体の弾性特性によって変位量乃至は変形量が制限されることから、仕切部材36への当接面積は薄肉部84に比して必要ないことが多い。例えば厚さ変化部92の仕切部材36への当接によって想定入力荷重による厚肉部86,88の変位量が制限可能であれば厚肉部86,88の当接部を仕切部材36において積極的に設ける必要もない。
【0075】
前記実施形態において、第一厚肉部86と第二厚肉部88は同じ厚さとされていたが、第一厚肉部86と第二厚肉部88は、例えば、厚さ寸法が互いに異なっていてもよい。また、薄肉部84や厚肉部86,88の相対的な大きさや位置、形状、具体的厚さ寸法などは、要求される防振特性などに応じて適宜に設定され得る。また、前記実施形態では可動膜80の外周縁部が挟持される支持部82とされていたが、挟持される支持部の位置は限定されるものでなく、例えば可動膜80の外周縁部に加えて又は代えて径方向中間部分に環状の支持部を設定してもよい。
【0076】
可動部材は、円形の外周形状に限定されず、長円形、多角形、異形などの外周形状を有していてもよい。また、第一の取付部材、第二の取付部材、本体ゴム弾性体、可撓性膜、仕切部材なども、何れも円形の外周形状に限定されない。
また、本発明は、もともと以下(i)~(vi)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 内部に非圧縮性流体が封入された主液室と副液室を備える流体封入式防振装置であって、前記主液室と前記副液室を仕切る仕切部材に可動部材が配されて、該可動部材の両面に該主液室と該副液室の液圧が及ぼされていると共に、該可動部材は部分的に薄肉部が設けられており、該仕切部材には該薄肉部に対向する当接部が設けられて、液圧による該可動部材の変位によって該可動部材と該仕切部材が当接する際に、該可動部材の該薄肉部が該仕切部材の該当接部に最初に当接する流体封入式防振装置、
(ii) 前記可動部材の前記薄肉部が環状とされていると共に、該薄肉部よりも厚さ寸法が大きくされた厚肉部が、該可動部材における該薄肉部の内周側および外周側に設けられている(i)に記載の流体封入式防振装置、
(iii) 前記仕切部材における前記厚肉部と対応する部分には、前記主液室または前記副液室に連通される連通孔が形成されている(ii)に記載の流体封入式防振装置、
(iv) 前記可動部材が前記仕切部材によって支持される支持部を備えた可動膜とされている(i)~(iii)の何れか一項に記載の流体封入式防振装置、
(v) 前記可動部材が前記仕切部材に設けられた収容領域に対して板厚方向に全体が変位可能な状態で収容された可動板とされている(i)~(iii)の何れか一項に記載の流体封入式防振装置、
(vi) 前記当接部が前記薄肉部に向けて突出する凸形状とされている(i)~(v)の何れか一項に記載の流体封入式防振装置、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、液圧の作用によって変位した可動部材が仕切部材に当接する際に、可動部材の薄肉部が仕切部材に最初に当接するように、仕切部材に薄肉部と対向する当接部が設けられている。これにより、可動部材において仕切部材に最初に当接する部分が薄肉とされて質量が小さく、可動部材が打ち当たることによって仕切部材に及ぼされる衝撃力が抑えられる。それ故、可動部材の仕切部材への打ち当たりによって生じる打音が低減される。また、上記の如き打音の低減は、可動部材に部分的な薄肉部が設けられると共に、仕切部材に薄肉部と対向する当接部が設けられることによって実現されることから、部品点数の増加を要することなく簡単な構造によって打音の低減が図られる。
上記(ii)に記載の発明では、薄肉部の内周側と外周側に厚肉部が設けられることにより、可動部材の変形剛性が厚肉部によって確保される。それ故、例えば、可動部材の変位による液圧吸収作用等が期待される振動の入力に際して、可動部材の過剰な変位が防止されて、可動部材の仕切部材への不必要な接触が防止される。
上記(iii)に記載の発明では、液圧の作用による可動部材の変位に際して、厚肉部が仕切部材に当接し難くなって、薄肉部を厚肉部よりも先に仕切部材の当接部に当接させやすい。また、厚肉部は薄肉部に比して変形剛性が大きく、厚肉部が連通孔を塞ぐように仕切部材に当接することによって、連通孔を有効に遮断することができる。
上記(iv)に記載の発明では、液圧の可動膜への作用に際して、可動膜の変形による部分的な変位によって、液圧伝達作用が発揮される。しかも、可動膜に薄肉部が設けられていることにより、可動膜の弾性変形の共振周波数を薄肉部の大きさ、配置、数などによってチューニングすることができ、要求される防振特性を大きな自由度で実現することができる。
上記(v)に記載の発明では、全体が変位して仕切部材に当接することから打音が問題となり易い可動板において、薄肉部が他の部分に先んじて仕切部材の当接部に当接する構造とすることにより、打音を効果的に防止することができる。
上記(vi)に記載の発明では、仕切部材の当接部が凸形状とされて薄肉部に向けて突出していることにより、可動部材において薄肉部を他の部分よりも先に仕切部材の当接部に当接させ易くなる。
【符号の説明】
【0077】
10 エンジンマウント(流体封入式防振装置)
12 第一の取付部材
14 第二の取付部材
16 本体ゴム弾性体
18 取付部
20 ねじ穴
22 フランジ状部
24 固着部
26 凹所
28 シールゴム層
30 可撓性膜
32 固定部材
34 流体室
36 仕切部材
38 第一部材
40 第二部材
42 固定片
44 ボルト穴
46 第一内孔
48 第一外孔
50 第一内周部分
52 第一外周部分
54 第一連結部
56 固定部
58 ねじ穴
60 周溝
62 第一連通口
64 第二連通口
66 第二内孔
68 第二外孔
70 第二内周部分
72 第二外周部分
74 第二連結部
76 ねじ
78 収容領域
80 可動膜(可動部材)
82 支持部
84 薄肉部
86 第一厚肉部
88 第二厚肉部
90 平板状部
92 厚さ変化部
94 傾斜面
96 当接部
98 傾斜面
100 受圧室(主液室)
102 平衡室(副液室)
104 オリフィス通路
110 エンジンマウント(流体封入式防振装置)
112 可動板(可動部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10