(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】車椅子収容装置が搭載された車両
(51)【国際特許分類】
A61G 3/06 20060101AFI20230726BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20230726BHJP
B60P 1/44 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A61G3/06 712
B60P3/00 A
B60P1/44 A
(21)【出願番号】P 2020024852
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津村 亮
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202264(JP,A)
【文献】特開2005-34565(JP,A)
【文献】特開2017-406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00-5/14
B60P 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子収容装置が搭載された車両であって、
前記車椅子収容装置は、
車両上方向から見て回転可能に荷室の中に取付けられたベースと、
前記ベースの回転中心からオフセットするように前記ベースに取付けられて車両上方向から見て回転するよう配置された回転アームと、
前記回転アームの先端部に回転自在に取付けられたローラにガイドされ、前記回転アームに対して長手方向にスライド可能、且つ、車両立面内で回転可能に支持され、先端部に折り畳んだ車椅子の側面を保持する車椅子保持機構が取付けられた車椅子保持アームと、
前記回転アームに取付けられて前記車椅子保持アームを前記回転アームに対して駆動する駆動機構と、を備え、
前記回転アームは、車両上方方向から見て基端部が車両前後方向に対して車両幅方向の一方側に傾斜し、先端部が前記荷室から突出する引き込み方向と、先端部が前記荷室の中の他方側となる収容方向との間で回転し、
前記ベースの前記回転中心は、前記回転アームが前記引き込み方向となった際に、前記回転アームよりも車両幅方向外側となるように配置されていること、
を特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記車椅子保持機構は、
前記車椅子の大車輪を保持する大車輪保持部と、
前記車椅子の横フレームを保持するフレーム保持部と、を有し、
前記車椅子の大車輪の外周とキャスタの外周との接線の方向が、車両上下方向から所定の角度だけ傾斜するように前記車椅子を保持すること、
を特徴とする車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両であって、
前記引き込み方向は、車両上方方向から見て基端部が車両前後方向に対して前記一方側に5度から15度傾斜しており、
前記車椅子保持機構は、前記車椅子の大車輪の外周と前記キャスタの外周との接線の方向が、車両上下方向から30度から45度傾斜するように前記車椅子を保持すること、
を特徴とする車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両であって、
前記車椅子収容装置の前記駆動機構は、
前記回転アームの中間部と前記車椅子保持アームの基端部とにそれぞれ回転可能に接続されるリンクアームと、
前記回転アームに取付けられて前記リンクアームの前記回転アームの側を回転駆動する駆動部と、で構成されること、
を特徴とする車両。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両であって、
前記車椅子収容装置の前記駆動機構は、
前記回転アームの中間部と前記車椅子保持アームの基端部とにそれぞれ回転可能に接続されるリンクアームと、
前記回転アームの基端部に取付けられてワイヤの巻き取り、開放を行うワイヤ巻き取り機構と、
前記回転アームの先端部に設けられた第1プーリと、前記車椅子保持アームの先端部に設けられた第2プーリとに巻きかけられて、前記ワイヤ巻き取り機構と前記回転アームの先端部に設けられたワイヤ固定部とを接続するワイヤと、で構成されること、
を特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子収容装置が搭載された車両の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
折り畳んだ車椅子を車両の荷室に収容するための装置が提案されている。例えば、特許文献1には、折り畳んだ車椅子の大車輪とキャスタ部とを保持し、車椅子を立てた状態で前方が車室内に入るまで車椅子を荷室内に引き上げた後、車椅子の前後方向が車両の幅方向となるように車椅子を回転させて車椅子を立てた状態で荷室に収容する車椅子収容装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された車椅子収容装置は、車椅子を立てた状態で荷室内に収容するので、荷室の開口高さが高い車両に搭載した場合には車椅子を荷室に収容することができるが、荷室の高さが低い車両に搭載した場合には車椅子を収容することができない場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、荷室の開口高さが低くても車椅子収容装置を用いて車椅子の搭載を行うことができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両は、車椅子収容装置が搭載された車両であって、前記車椅子収容装置は、車両上方向から見て回転可能に荷室の中に取付けられたベースと、前記ベースの回転中心からオフセットするように前記ベースに取付けられて車両上方向から見て回転するよう配置された回転アームと、前記回転アームの先端部に回転自在に取付けられたローラにガイドされ、前記回転アームに対して長手方向にスライド可能、且つ、車両立面内で回転可能に支持され、先端部に折り畳んだ車椅子の側面を保持する車椅子保持機構が取付けられた車椅子保持アームと、前記回転アームに取付けられて前記車椅子保持アームを前記回転アームに対して駆動する駆動機構と、を備え、前記回転アームは、車両上方方向から見て基端部が車両前後方向に対して車両幅方向の一方側に傾斜し、先端部が前記荷室から突出する引き込み方向と、先端部が前記荷室の中の他方側となる収容方向との間で回転し、前記ベースの前記回転中心は、前記回転アームが前記引き込み方向となった際に、前記回転アームよりも車両幅方向外側となるように配置されていること、を特徴とする。
【0007】
このように、回転アームが車両上方方向から見て基端部が車両前後方向に対して車両幅方向の一方側に傾斜し、先端部が荷室から突出する引き込み方向と、先端部が荷室の中の他方側となる収容方向との間で回転し、ベースの回転中心を回転アームが引き込み方向となった際に、回転アームよりも車両幅方向外側となるように配置するように構成したので、車椅子保持機構に側面が保持された車椅子を寝かせた状態で荷室の開口の一方側に寄せて荷室の開口に引き込こんだ後、車椅子が荷室の他方側にぶつからないように水平に回転させて荷室の中に収容することができる。このため、荷室の開口の高さが低くても車椅子収容装置を用いて車椅子の搭載を行うことができる。
【0008】
本発明の車両において、前記車椅子保持機構は、前記車椅子の大車輪を保持する大車輪保持部と、前記車椅子の横フレームを保持するフレーム保持部と、を有し、前記車椅子の大車輪の外周とキャスタの外周との接線の方向が、車両上下方向から所定の角度だけ傾斜するように前記車椅子を保持してもよい。ここで、前記引き込み方向は、車両上方方向から見て基端部が車両前後方向に対して前記一方側に5度から15度傾斜しており、前記車椅子保持機構は、前記車椅子の大車輪の外周と前記キャスタの外周との接線の方向が、車両上下方向から30度から45度傾斜するように前記車椅子を保持してもよい。
【0009】
このように車椅子を傾斜して保持することにより、荷室の幅方向の車椅子の長さを短くできるので、荷室の開口幅が短い車両であっても車椅子収容装置を用いて車椅子の搭載を行うことができる。
【0010】
本発明の車両において、前記車椅子収容装置の前記駆動機構は、前記回転アームの中間部と前記車椅子保持アームの基端部とにそれぞれ回転可能に接続されるリンクアームと、前記回転アームに取付けられて前記リンクアームの前記回転アームの側を回転駆動する駆動部と、で構成されてもよい。
【0011】
本発明の車両において、前記車椅子収容装置の前記駆動機構は、前記回転アームの中間部と前記車椅子保持アームの基端部とにそれぞれ回転可能に接続されるリンクアームと、前記回転アームの基端部に取付けられてワイヤの巻き取り、開放を行うワイヤ巻き取り機構と、前記回転アームの先端部に設けられた第1プーリと、前記車椅子保持アームの先端部に設けられた第2プーリとに巻きかけられて、前記ワイヤ巻き取り機構と前記回転アームの先端部に設けられたワイヤ固定部とを接続するワイヤと、で構成されてもよい。
【0012】
これにより、簡便な構成で車椅子収容装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、荷室の開口高さが低くても車椅子収容装置を用いて車椅子の搭載を行うことができる車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態における車椅子収容装置が搭載された車両の後部構造を示す平面図である。
【
図2】実施形態の車両に搭載される車椅子収容装置の伸長状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態の車両に搭載される車椅子収容装置の格納状態を示す斜視図である。
【
図5】車椅子収容装置の動作を示す図で、回転アームと車椅子保持アームの長手方向を引き込み方向に回転させた状態を車両の側面から見た立面図である。
【
図6】車椅子収容装置の動作を示す図で、車保持アームに車椅子を保持させた状態を車両の側面から見た立面図である。
【
図7】
図6に示す状態を車両の後方から見た立面図である。
【
図8】車椅子収容装置の動作を示す図で、車椅子を荷室に引き込む状態を車両の側面から見た立面図である。
【
図9】車椅子収容装置の動作を示す図で、車椅子を荷室の後方領域に引き込んだ状態を車両の側面から見た立面図である。
【
図10】車椅子収容装置の動作を示す図で、車椅子を荷室の後方領域に引き込んだ状態を車両の上側から見た立面図である。
【
図11】車椅子収容装置の動作を示す図で、車椅子収容装置を収容位置まで回転させた状態を示す図である。
【
図12】他の実施形態の車両に搭載された他の車椅子収容装置の動作を示す図で、車椅子を荷室に引き込む状態を車両の側面から見た立面図である。
【
図13】
図12に示す状態を車両の後方から見た立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態の車両100について説明する。なお、各図に示す矢印RR、矢印UP、矢印RHは、車両の後方向(進行方向と反対方向)、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印RR、UP、RHの反対方向は、車両前方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0016】
図1に示すように、車両100は、ボデー13の後部の荷室10の中に車椅子60を収容する車椅子収容装置20が搭載されたものである。車椅子収容装置20は、ベース21と、回転アーム23と、車椅子保持アーム25と、駆動機構50とで構成されている。車椅子収容装置20は、駆動機構50によってリンクアーム51を回転駆動することで、
図1、
図3に示すように車椅子保持アーム25を格納した格納状態と、
図2に示すように車椅子保持アーム25を伸長した伸長状態との間で変形することができる。
【0017】
図1~3に示すように、ベース21は、荷室10の床12に固定された回転支承22の上に回転自在に取付けられている。回転支承22の回転中心21aは、荷室10の中で、車両前後方向に延びる車両100の幅方向の中心線18よりも一方側である車両右側によった位置に配置されている。ベース21は、車両上方向から見て、回転中心21aの周りに回転可能となっている。
【0018】
回転アーム23は、ベース21の回転中心21aからオフセットするようにベース21の上面に固定された長手部材である。従って、回転アーム23は、ベース21と一体になって車両上方向から見て回転中心21aの周りに回転可能となっている。また、
図2に示すように、回転アーム23の先端部23bには、ローラガイド24が設けられている。
【0019】
車椅子保持アーム25は、先端部25bに折り畳んだ車椅子60を保持する車椅子保持機構40が設けられた長手部材である。車椅子保持アーム25の下側の面は、回転アーム23のローラガイド24によって回転アーム23の長手方向にスライド可能で、且つ、ローラガイド24の回転軸の周りで、車両100の立面内で回転可能に支持されている。
【0020】
図2に示すように、車椅子保持機構40は、保持板41と、係合部42と、保持バー43と、フック44とで構成されている。保持板41は、車椅子60の大車輪61の側面を保持する平板上で両端が立ち上がった板部材である。係合部42は、保持板41の幅方向両端に取付けられて、大車輪61の車椅子保持アーム25の幅方向の移動を規制するU字型の部材である。保持バー43は、車椅子保持アーム25の中間部から上方向に突出するT字型部材である。フック44は、保持バー43の幅方向の先端に取付けられて、車椅子60の上側の横フレーム63aと下側の横フレーム63cを保持する部材である。保持板41と係合部42とは、大車輪保持部を構成し、保持バー43とフック44とはフレーム保持部を構成する。
【0021】
ここで、車椅子60は、
図4に示すように、大車輪61と、前方のキャスタ62と、前後二本の縦フレーム64a,64bと、二本の縦フレーム64a,64bを前後に接続する上下方向に3段に配置されている横フレーム63a,63b,63cと、ハンドル65とで構成されている。大車輪61は後方の縦フレーム64bと下段の横フレーム63cの交差する部位に回転自在に取付けられている。キャスタ62は、前方の縦フレーム64aの下端に取付けられている。折り畳まれた状態では、車椅子60は幅方向に折り畳まれており、ハンドル65は下側に倒された状態となっている。
【0022】
図6、7は、車椅子保持機構40が折り畳まれた車椅子60を保持した状態を示している。車椅子保持機構40の保持バー43の先端のフック44は、車椅子60の上側の横フレーム63aと下側の横フレーム63cとに係合する。また、保持板41は、大車輪61の側面を保持し、係合部42は大車輪61に係合して大車輪61の幅方向の移動を抑制する。
【0023】
図2に示すように、駆動機構50は、リンクアーム51と、駆動部54とで構成されている。リンクアーム51の一端53は、回転アーム23の中間部に設けられた支持部に回転自在に接続されている。また、リンクアーム51の他端52は、回転アーム23の基端部25aに回転自在に接続されている。駆動部54は、回転アーム23に取り付けられて、リンクアーム51の一端53を回転駆動する。
図3に示すように、駆動部54によってリンクアーム51の他端52が回転アーム23の基端部23aの近傍となるようにリンクアーム51を回転させると、車椅子保持アーム25の基端部25aが回転アーム23の基端部23aの近傍の位置まで引き込まれ、車椅子保持アーム25は回転アーム23の上に略重なった格納状態となる。
【0024】
一方、
図2に示すように、リンクアーム51の他端52が回転アーム23の先端部23bに向かうように、リンクアーム51の一端53を回転させると、車椅子保持アーム25は、先端部25bの側に繰り出されると共に、ローラガイド24の周りで車両100の立面内で先端部25bが下側になるように回転する。このように、駆動部54は、
図1、
図3に示すように車椅子保持アーム25を格納した格納状態と、
図2に示すように車椅子保持を伸長した伸長状態との間で変形することができる。
【0025】
図1に示すように、車椅子収容装置20は、ベース21の回転中心21aが荷室10の中で、車両前後方向に延びる車両100の幅方向の中心線18よりも一方側である車両右側によった位置となるように荷室10の床12に取付けられている。そして、回転アーム23は、車両上方方向から見て基端部23aが車両前後方向に対して車両幅方向の右側に向かって角度θ1だけ傾斜し、先端部23bが荷室10の開口11から車両後方に突出する引き込み方向Pと、先端部23bが荷室10の中の他方側である左側となる収容方向Qとの間で回転可能となっている。ここで、ベース21の回転中心21aは、回転アーム23が引き込み方向Pとなった際に、回転アーム23よりも車両幅方向右側となるように配置されている。ここで、角度θ1は、例えば、10度前後であってもよいし、車両100の構造に合わせて5~15度程度の範囲で選択してもよい。
【0026】
以上、説明した車両100において、車椅子収容装置20を用いて車椅子60を荷室10の中に収容する手順について説明する。
【0027】
初期状態では、車椅子収容装置20は、
図3に示す格納状態で、
図1に示すように回転アーム23の先端部23bが収容方向Qとなるように荷室10の中に搭載されている。最初に、
図5に示すように、バックドア14をあける。そして、手動、又は、図示しない回転駆動機構によって、ベース21を
図1上で反時計周りとなるように回転中心21aの周りに回転させ、先端部23bの方向を引き込み方向Pとする。この状態では、
図1に示すように、回転アーム23は車両上方向から見て基端部23aが車両前後方向に対して車両幅方向の右側に向かって角度θ1だけ傾斜し、
図5に示すように、先端部23bが荷室10の開口11から車両後方に突出している。
【0028】
そして、駆動部54によりリンクアーム51の一端53を
図5上で時計周りに回転させていく。すると、
図6に示すように、車椅子保持アーム25の先端部25bは車両100の後方に向かって繰り出されると共に、矢印95に示すように車両100の立面内で先端部25bが下方向となるように回転していく。そして、
図6に示すように、車椅子保持アーム25の先端部25bが地上近傍の位置となったら駆動部54を停止する。
【0029】
次に、折り畳んだ車椅子60の側面を車椅子保持アーム25の車椅子保持機構40に保持させる。
図7に示すように、車椅子保持機構40の保持バー43の先端のフック44を車椅子60の上側の横フレーム63aと下側の横フレーム63cとに係合させる。また、保持板41の上に大車輪61の側面を載せ、係合部42を大車輪61に係合させる。この際、車椅子保持機構40の保持バー43とフック44とは、車椅子60の大車輪61の外周とキャスタ62の外周との接線15の方向が、車両上下方向19から角度θ2だけ傾斜するように車椅子60を保持する。このように、車椅子60を保持すると、車椅子60の大車輪61の外周とキャスタ62の外周との接線15の方向は地面に対して角度90-θ2だけ傾斜する。ここで、角度θ2は、30度程度としてもよい。この場合、車椅子60の大車輪61の外周とキャスタ62の外周との接線15の方向は地面に対して60度程度となる。このように、車椅子60を車椅子保持機構40に保持させることにより、荷室10の開口11の幅方向の車椅子60の幅を小さくでき、荷室10の開口11が狭い場合でも、車椅子60を荷室10の中に引き込むことができる。なお、角度θ2は車椅子60の構成によって変更可能であり、荷室10の開口11の幅方向の車椅子60の幅を小さくできる所定の角度であれば、30~45度程度にしてもよい。この場合、車椅子60の大車輪61の外周とキャスタ62の外周との接線15の方向は地面に対して45~60度程度となる。
【0030】
次に、
図8の矢印96に示すように、駆動部54によってリンクアーム51を先ほどと反対方向の
図8上で反時計周りの方向に回転させる。これにより、車椅子保持アーム25は、回転アーム23の上に引き上げられる。そして、
図9に示すように、車椅子保持アーム25の基端部25aが回転アーム23の基端部23aの近傍となるまでリンクアーム51を回転させると、車椅子保持アーム25は回転アーム23の上に重なる格納状態となる。
【0031】
図9に示すように、リンクアーム51が回転すると、車椅子保持アーム25は、
図10の引き込み方向Pに沿って車両100の前方に向かって引き込まれていく。この際、引き込み方向Pに直角方向で引き込み方向Pから一番右側のハンドル65と、一番左側のキャスタ62とは、それぞれ引き込み方向Pと平行な矢印91、92の軌跡をたどって荷室10の中の車両右側によった位置に引き込まれていく。このように、引き込み方向Pが車両上方向から見て回転アーム23の基端部23a及び車椅子保持アーム25の基端部25aが車両前後方向に対して右側に向かって角度θ1だけ傾斜しているので、車椅子60を荷室10の中の車両右側によった位置に引き込むことができる。このため、引き込みが終わった状態で、車椅子60と荷室10の左側とのクリアランスdを大きくすることができる。
【0032】
次に、
図11に示すように、手動、又は図示しない回転駆動装置によってベース21を回転中心21aの周りに回転させて回転アーム23の方向が収容方向Qとなるまで回転させる。この際、車椅子60の先端のA点は、
図11の矢印93に示すような軌跡をたどって収容方向Qの点Bまで移動する。先に述べたように、引き込みが終わった状態で、車椅子60と荷室10の左側とのクリアランスdが大きくなっていること、及び、ベース21の回転中心21aが荷室10の右側によって配置されていることから、車椅子60は、荷室10の左側の内面に干渉せずに収容方向Qまで回転移動することができる。
【0033】
このように、実施形態の車両100は、車椅子保持機構40に側面が保持された車椅子60を寝かせた状態で荷室10の開口11の右側に寄せて荷室10の開口11に引き込こんだ後、車椅子60が荷室10の左側にぶつからないように水平に回転させて荷室10の中に収容することができる。このため、荷室10の開口11の高さが低くても車椅子収容装置20を用いて車椅子60の収容を行うことができる。
【0034】
以上説明した実施形態の車両100では、車椅子収容装置20は、荷室10の右側に車椅子60を引き込むこととして説明したが、これに限らず、ベース21の回転中心21aを荷室10の左側に配置し、引き込み方向Pを車両上方向から見て回転アーム23の基端部23a及び車椅子保持アーム25の基端部25aが車両前後方向に対して左側に向かって角度θ1だけ傾斜した方向とし、車椅子60を荷室10の中の車両左側によった位置に引き込み、引き込みが終わった状態で、車椅子60と荷室10の右側とのクリアランスdを大きくするようにしてもよい。
【0035】
以上の説明では、駆動機構50は、リンクアーム51と駆動部54とで構成されるものとして説明したがこれに限らない。例えば、
図12、13に示す車両200に搭載された車椅子収容装置70のように、駆動機構50をワイヤ71とワイヤ巻き取り機構72とリンクアーム51とで構成してもよい。
【0036】
以下、図面を参照しながら他の実施形態の車両200と車椅子収容装置70について説明する。先に、
図1~
図11を参照して説明した車両100と車椅子収容装置20と同一の部分には、統一の符号を付して説明は省略する。ここで、
図12は、
図6と同様、車椅子収容装置70の車椅子保持アーム25が伸長状態で、車椅子保持アーム25の先端部25bが車両200の後方に向かって繰り出されると共に、車両200の立面内で先端部25bが下方向となるように回転した状態を示している。
【0037】
図12に示すように、車椅子収容装置70の回転アーム23は、基端部23a側の台座23cの上側に先端部23bが車両後方に向かって少し斜め下向きになるように固定されている。台座23cは、ベース21の回転中心21aからオフセットするようにベース21の上面に固定されている。先に説明した車椅子収容装置20と同様、ベース21は、車両上方向から見て、回転中心21aの周りに回転可能となっている。従って、回転アーム23と台座23cとは、ベース21と一体になって車両上方向から見て回転中心21aの周りに回転可能となっている。
【0038】
台座23cの上面と回転アーム23の基端部23aとの間には、ワイヤ71の巻き取り、開放を行うワイヤ巻き取り機構72が取付けられている。回転アーム23の基端部23aには、ガイドプーリ73が設けられており、先端部23bには第1プーリ74が設けられている。また、車椅子保持アーム25の先端部25bに取付けられたプーリ保持板25cには第2プーリ75が取付けられている。ここで、第1プーリ74は、回転アーム23の先端部23bに設けられたローラガイド24と同軸に回転自在に配置されている。また、回転アーム23の先端部23bには、第1プーリ74と隣接してワイヤ固定部76が設けられている。
【0039】
ワイヤ71は、ワイヤ巻き取り機構72から、ガイドプーリ73と第1プーリ74に巻きかけられて回転アーム23に沿って先端部23bに向かって延びている。そして、ワイヤ71は、第1プーリ74と第2プーリ75とに巻きかけられて車椅子保持アーム25に沿って先端部25bに向かって延びている。更に、ワイヤ71は、第2プーリ75から車椅子保持アーム25に沿って先端部25bから基端部25aに向かって延び、先端が回転アーム23の先端部23bに設けられたワイヤ固定部76に接続されている。
【0040】
車椅子収容装置70は、リンクアーム51の一端53を回転駆動する駆動部54を備えておらず、ワイヤ巻き取り機構72によってワイヤ71の巻き取り、開放を行うことで車椅子保持アーム25を格納位置と伸長位置とに変化させる。
【0041】
図13に示すように、車椅子収容装置70の車椅子保持アーム25は、先に説明した車椅子収容装置20の車椅子保持アーム25よりも少し幅が広く、下保持バー45、上保持バー47が台座45a,47aを介して取付けられている。台座45a,47aは、それぞれ下保持バー45と上保持バー47を車椅子保持アーム25に対して直角方向に延びる支持位置と、支持位置よりも車椅子保持アーム25に沿った方向の格納位置との間で矢印98,99に示すように回転可能であり、かつ、支持位置と格納位置とに固定可能に支持している。台座45a,47aは、それぞれボルトで車椅子保持アーム25に固定されている。なお、
図13は、下保持バー45、上保持バー47がそれぞれ支持位置にある状態を示している。
【0042】
下保持バー45の先端部には、車椅子60の大車輪61を保持するフック46が設けられている。また、上保持バー47の先端には、車椅子60の前側の縦フレーム64aと足置き67を支持する前端フレーム66とに係合するフック48が取付けられている。下保持バー45、上保持バー47と各フック46,48は、車椅子60の大車輪61の外周とキャスタ62の外周との接線の方向が、車両上下方向19から角度θ2だけ傾斜するように車椅子60を保持する。車椅子収容装置70は、角度θ2が約45度程度になるように車椅子60を保持する。このように、車椅子60を保持すると、車椅子60の大車輪61の外周とキャスタ62の外周との接線の方向は地面に対して約45度だけ傾斜する。ここで、下保持バー45、上保持バー47と各フック46,48とは車椅子保持機構40を構成する。
【0043】
先に説明した車椅子収容装置20と同様、このように、車椅子60を車椅子保持機構40に保持させることにより、車椅子収容装置70は、荷室10の開口11の幅方向の車椅子60の幅を小さくでき、荷室10の開口11が狭い場合でも、車椅子60を荷室10の中に引き込むことができる。
【0044】
次に車両200において、車椅子収容装置70を用いて車椅子60を荷室10の中に収容する手順について説明する。
【0045】
図12は、ワイヤ巻き取り機構72がワイヤ71を開放して車椅子保持アーム25を伸長位置とし、車椅子保持アーム25の先端部25bが下方向に向いた状態を示している。この状態からワイヤ巻き取り機構72によってワイヤ71を巻き上げると、車椅子保持アーム25の先端部25bが上方向に向かって引き上げられる。この際、車椅子保持アーム25の基端部25aは、回転アーム23の先端部23bに取付けられたローラガイド24とリンクアーム51とによって、
図8と同様に
図12の矢印97に示すように車両200の立面内で回転していく。そして、更に、ワイヤ71を巻き上げていくと、
図9と同様に車椅子保持アーム25は回転アーム23の上に重なる格納状態となる。
【0046】
この際、車椅子保持アーム25は、
図10を参照して説明したと同様、引き込み方向Pと平行な矢印91、92の軌跡をたどって荷室10の中の車両右側によった位置に引き込まれる。そして、
図11を参照して説明したと同様、手動、又は図示しない回転駆動装置によってベース21を回転中心21aの周りに回転させて回転アーム23の方向が収容方向Qとなるまで回転させる。先に
図10を参照して説明したと同様、引き込みが終わった状態で、車椅子60と荷室10の左側とのクリアランスdが大きくなっていること、及び、ベース21の回転中心21aが荷室10の右側によって配置されていることから、車椅子60は、荷室10の左側の内面に干渉せずに収容方向Qまで回転移動することができる。
【0047】
このように、実施形態の車両200は、実施形態の車両100と同様、車椅子保持機構40に側面が保持された車椅子60を寝かせた状態で荷室10の開口11の一方側に寄せて荷室10の開口11に引き込こんだ後、車椅子60が荷室10の他方側にぶつからないように水平に回転させて荷室10の中に収容することができる。このため、荷室10の開口11の高さが低くても車椅子収容装置70を用いて車椅子60の収容を行うことができる。
【符号の説明】
【0048】
10 荷室、11 開口、12 床、13 ボデー、14 バックドア、15 接線、18 中心線、19 車両上下方向、20,70 車椅子収容装置、21 ベース、21a 回転中心、22 回転支承、23 回転アーム、23a,25a 基端部、23b,25b 先端部、23c,45a,47a 台座、24 ローラガイド、25 車椅子保持アーム、25c プーリ保持板、40 車椅子保持機構、41 保持板、42 係合部、43 保持バー、44,46,48 フック、50 駆動機構、51 リンクアーム、52 他端、53 一端、54 駆動部、60 車椅子、61 大車輪、62 キャスタ、63a,63b,63c 横フレーム、64a,64b 縦フレーム、65 ハンドル、66 前端フレーム、67 足置き、71 ワイヤ、72 ワイヤ巻き取り機構、73 ガイドプーリ、74 第1プーリ、75 第2プーリ、76 ワイヤ固定部、100,200 車両。