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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/209 20210101AFI20230726BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230726BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230726BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/204 201
H01G11/12
H01G2/10 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020175797
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067209
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 渉
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063840(JP,A)
【文献】特開2011-249309(JP,A)
【文献】特表2018-510465(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0379018(US,A1)
【文献】特開2013-191422(JP,A)
【文献】特開2012-248482(JP,A)
【文献】特開2020-126853(JP,A)
【文献】特開2018-092699(JP,A)
【文献】特開2020-135920(JP,A)
【文献】特開2013-089449(JP,A)
【文献】特開2008-282625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01G 11/12
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールを収納する内部空間を有するケースとを備え、
前記ケースは、前記複数の蓄電セルの電極端子側に開口を有する本体と、前記開口上に設けられる蓋と、前記開口から前記本体の奥側に向かって前記内部空間の幅を狭くするテーパ部と、前記内部空間に収納された前記蓄電モジュールを前記複数の蓄電セルの積層方向に沿って支持する支持部とを含み、前記複数の蓄電セルの積層方向に沿って前記テーパ部と非テーパ部とが交互に形成され、
前記複数の蓄電セルは角型の筐体を各々含み、
前記テーパ部の底部が前記筐体の底面角部に当接し、
前記非テーパ部において、前記蓄電モジュールの幅方向両側に位置する前記本体の底面に凹部が形成された、蓄電装置。
【請求項2】
前記テーパ部は、前記蓄電モジュールの幅方向両側に設けられる、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記テーパ部は、前記開口から前記本体の底面に至る前記本体の高さ方向の全体にわたって形成される、請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記複数の蓄電セルはリチウムイオン電池セルである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置の一例として電池パックが挙げられる。従来の電池パック構造として、たとえば、特開2010-272378号公報(特許文献1)、特開2009-134901号公報(特許文献2)、国際公開第2012/133708号(特許文献3)、特表2015-520480号公報(特許文献4)、および特開2012-28321号公報(特許文献5)に記載のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-272378号公報
【文献】特開2009-134901号公報
【文献】国際公開第2012/133708号
【文献】特表2015-520480号公報
【文献】特開2012-28321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電池セルを拘束する構造を簡略化して小型化、軽量化を図りたいという要請がある。他方、拘束構造を簡略化したとき、各々の電池セルの変形のばらつき等に起因して、複数の電池セルの位置決め精度が低下し、電池セルの端子の位置ずれが生じる。
【0005】
特許文献1~5に記載の構造は、上述の課題を解決する観点から、必ずしも十分なものではない。また、電池以外の蓄電装置においても、同様の課題が生じ得る。本開示の目的は、複数の蓄電セルの位置決めが正確に行われた蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る蓄電装置は、積層された複数の蓄電セルを含む蓄電モジュールと、蓄電モジュールを収納する内部空間を有するケースとを備える。ケースは、複数の蓄電セルの電極端子側に開口を有する本体と、開口上に設けられる蓋と、開口から本体の奥側に向かって内部空間の幅を狭くするテーパ部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の蓄電セルの位置決めが正確に行われた蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電池パックの構成を示す分解斜視図である。
図2】電池モジュールに含まれる電池セルを示す図である。
図3】電池パックのケース内部を示す断面図(その1)である。
図4】電池パックのケース内部を示す断面図(その2)である。
図5】電池パックのケース内部を示す斜視図である。
図6図5に示すテーパ部近傍の部分拡大図である。
図7】ケース内の電池セルの配置を示す図である。
図8】一例に係るケース内に電池モジュールを挿入する工程を示す図である。
図9】1つの変形例に係るケース内に電池モジュールを挿入する工程を示す図である。
図10】他の変形例に係るケース内に電池モジュールを挿入する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量等に言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量等に限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本開示にとって必ずしも必須のものではない。
【0010】
図1は、電池パック1の構成を示す分解斜視図である。電池パック1は、電池モジュール100と、ケース200と、熱伝導材300とを含む。
【0011】
電池モジュール100(蓄電モジュール)は、Y軸方向(積層方向)に沿って積層された複数の電池セル(蓄電セル)を含む。
【0012】
ケース200は、ケース本体210と、蓋部材220とを含む。ケース本体210は、ケース200の底面および側面を構成する。蓋部材220は、ケース200の上面を構成する。ケース本体210は、複数の電池セル110の上側(図2に示す電極端子111側)に開口を有する。蓋部材220は、ケース本体210の開口上に設けられる。
【0013】
ケース200は、電池モジュール100を収納する内部空間を有する。ケース本体210および蓋部材220は、たとえばアルミニウム、マグネシウムなどの金属材からなる鋳造部品(ダイキャスト材)であってもよいし、カーボン含有素材からなるプレス成型部品であってもよい。ケース200は上記の態様に限定されず、強度、放熱性、熱伝導性などの点において、所定の特性を満たすものであればよい。たとえば樹脂製のケース本体210および蓋部材220である場合もあり得る。
【0014】
ケース本体210と蓋部材220との接合部は、ゴム等のシール材、接着剤、およびホットメルト材などを用いて密閉されるか、超音波溶着、レーザ溶着などにより両者が接合されてもよい。これにより、ケース本体210および蓋部材220からなるケース200の内部に密閉空間が形成される。
【0015】
熱伝導材300は、電池モジュール100とケース200のケース本体210との間に設けられ、電池モジュール100において発生した熱のケース200への伝達を促進する。
【0016】
電池パック1は、車両に搭載され得る。電池パック1が車両に搭載されるとき、典型的には、ケース本体210に対して蓋部材220が上側に位置する。本件明細書では、Z軸方向を「上下方向」と称し、Z軸方向におけるケース本体210側を「下側」、蓋部材220側を「上側」と称する場合がある。
【0017】
図2は、電池モジュール100に含まれる電池セル110を示す図である。図2に示すように、電池セル110は、電極端子111と、収容ケース112(筐体)とを含む。電極端子111は、正極端子111Aと、負極端子111Bとを含む。電極端子111は、収容ケース112上に形成されている。収容ケース112には、図示しない電極体および電解液が収容されている。
【0018】
収容ケース112は、平坦面状の直方体形状に形成されている。すなわち、電池セル110は角型セルである。収容ケース112は、Y軸方向に直交するX-Z平面に沿って延びる主面112Aを有する。
【0019】
一例として、電池セル110は、リチウムイオン電池である。電池セル110はニッケル水素電池など他の電池であってもよい。また、本開示において「蓄電モジュール」は電池モジュール100に限定されず、電池セル110に代えて、たとえばキャパシタが「蓄電セル」として用いられてもよい。
【0020】
図3図4は、電池パックのケース内部を示す断面図である。図3図4は、いずれもX-Z平面方向の断面図であって、互いにY軸方向に異なる位置の断面を示すものである。
【0021】
図3に示す断面において、ケース本体210は、開口からケース本体210の奥側に向かって内部空間の幅を狭くするテーパ部211を含む。テーパ部211は、ケース本体210の開口から底面に至るケース本体210の高さ方向(Z軸方向)の全体にわたって形成されている。テーパ部211の底部211Aは、電池セル110の収容ケース112の底面角部に当接する。テーパ部211は、電池モジュール100の幅方向両側に設けられる。
【0022】
図3においては、図示および説明の便宜上、テーパ部211の傾斜角度(Z軸方向に対する傾き)は、若干誇張して、典型的な実施例よりも大きくなるように示されている。一例として、テーパ部211の傾斜角度は5°程度である。ただし、テーパ部211の傾斜確度は5°より大きくてもよいし、図3に示す角度よりも大きな傾斜確度が本開示の範囲から除外されるものではない。
【0023】
電池セル110とテーパ部211との間には、ケース本体210の奥側に向かって幅が狭くなる隙間が形成される。この隙間は、ケース200内の結露水400を一時的に逃がす空間として機能し得る。
【0024】
電池セル110の収容ケース112の底面角部をテーパ部211の底部211Aに当接させることにより、電池セル110のX軸方向の位置決めを精度よく行うことができる。Z軸方向の位置決めは、電池セル110の底面112Cとケース200の底面とが当接することにより精度よく行われる。X軸方向およびZ軸方向の位置決めが精度よく行われた結果、複数の電池セル110が積層された電池モジュール100の意図しない変形を抑制し、電池セル110の電極端子111の位置ずれを抑制することが可能となる。
【0025】
図3の例では、テーパ部211は直線状に形成されているが、テーパ部211の内面の一部または全部が曲線状に形成されてもよい。いずれにしても、テーパ部211の最狭部分により電池セル110のX軸方向の位置決めが行われる。
【0026】
図4に示す断面において、ケース本体210は、電池セル110の収容ケース112からX軸方向に離間した垂直部212を含む。垂直部212の内面は、ケース本体210の上下方向(Z軸方向)に沿って延びる。
【0027】
垂直部212においては、電池モジュール100の幅方向両側に位置するケース本体210の底面に凹部212Aが形成されている。凹部212Aは、ケース200内の結露水400を一時的に逃がす空間として機能し得る。
【0028】
図5は、電池パック1のケース200の内部を示す斜視図である。図6は、図5に示すテーパ部211近傍の部分拡大図である。図5および図6に示すように、ケース本体210においては、電池セル110の積層方向(Y軸方向)に沿ってテーパ部211と垂直部212(非テーパ部)とが交互に形成されている。ここで、ケース本体210の内面と電池セル110の収容ケース112の外面との間に、Z軸方向に相対移動ができる状態で互いに嵌合する部分を設けることにより、電池モジュール100のケース本体210への挿入を円滑に行い、かつ位置決めを正確に行うことも可能となる。
【0029】
なお、図3図4においては、電池セル110のX軸方向の両側にテーパ部211が設けられた構造を示したが、図5に示す例では、中央壁213によりケース本体210内の空間が2つの収容空間210Aに分割され、各々の収容空間210Aにおいては、電池モジュール100の幅方向片側にのみテーパ部211が設けられている。
【0030】
図5に示すように、ケース本体210は、支持部214を有する。支持部214は、ケース本体210のY軸方向の両端部に設けられる。支持部214は、電池モジュール100のY軸方向の両端部に位置する電池セル110の主面112Aに直接当接し、電池モジュール100をY軸方向に沿って支持する。
【0031】
支持部214は、それ自体が若干変形することにより、Y軸方向に沿って電池モジュール100を付勢可能である。支持部214を構成するケース本体210にたとえば空洞(図示せず)を設け、支持部214を薄肉化し、Y軸方向に変形させやすくしてもよい。
【0032】
電池モジュール100をケース本体210に挿入するとき、Y軸方向に沿って電池モジュール100に圧縮力が加えられる。このとき、たとえば各電池セル110間に圧縮可能な素材をセパレータとともに設けることなどにより、電池モジュール100が全体としてY軸方向に圧縮され得る。電池モジュール100がケース本体210に挿入された後、上記圧縮力が徐荷されると、圧縮された電池モジュール100のY軸方向の長さが元に戻り、この結果、電池モジュール100がケース本体210の内面をY軸方向に押圧する。この押圧力に対する反力が、ケース本体210が電池モジュール100を支持する支持力となる。
【0033】
電池モジュール100の使用時に、電池セル110の収容ケース112内における電解液のガス化等の要因により、収容ケース112が膨張することがある。この膨張に起因する電池モジュール100からケース本体210への押圧力、およびその反力も、ケース本体210による電池モジュール100の支持に寄与し得る。
【0034】
電池セル110の主面112Aをケース本体210に直接に当接させてY軸方向に拘束することで、エンドプレートおよび拘束部材を設けることなく複数の電池セル110をY軸方向に拘束することができる。この結果、電池パック1の小型化が図られる。
【0035】
さらに、ケース本体210の支持部214によって電池モジュール100を拘束することにより、各々の電池セル110のY軸方向の位置決めを精度よく行うことができる。
【0036】
図7は、ケース200内の電池セル110の配置を示す図である。図7に示すように、各々の電池セル110の積層方向(Y軸方向)の中心に対応する位置にテーパ部211が設けられる。これにより、各々の電池セル110のX軸方向の位置決めを精度よく行うことができる。
【0037】
図8は、ケース200内に電池モジュール100を挿入する工程を示す図である。図8に示すように、治具500により電池モジュール100がX軸方向に挟持された状態で、電池モジュール100はケース本体210に挿入される。治具500は、テーパ部211上に形成された隙間と、中央壁213上に形成された切り欠き部213Aとに挿入される。
【0038】
電池セル110をケース本体210に挿入するときに、電池セル110の収容ケース112の底面角部をテーパ部211に当接させる。電池セル110をケース本体210に完全に挿入したとき、収容ケース112の底面角部をテーパ部211の底部211Aに当接させる。これにより、電池セル110のX軸方向およびZ軸方向の位置決めを精度よく行うことができる。
【0039】
治具500により電池モジュール100を挟持した状態では電池モジュール100はケース本体210に完全には挿入されず、ケース本体210に蓋部材220を押しつけてケース200を閉塞するときに電池モジュール100を下方に押圧し、収容ケース112の底面角部をテーパ部211の底部211Aに当接させるようにしてもよい。
【0040】
図9は、1つの変形例に係るケース200内に電池モジュール100を挿入する工程を示す図である。図9に示すように、電池モジュールの幅方向(X軸方向)両側にテーパ部211が形成される場合にも、図8の場合と同様に、電池セル110をケース本体210に完全に挿入したときに、収容ケース112の底面角部をテーパ部211の底部211Aに当接させることにより、電池セル110のX軸方向およびZ軸方向の位置決めを精度よく行うことができる。
【0041】
図10は、他の変形例に係るケース200内に電池モジュール100を挿入する工程を示す図である。図10に示すように、テーパ部211は、ケース本体210の開口から底面に至るケース本体210の高さ方向(Z軸方向)の一部分に形成されてもよい。図10の例では、ケース本体210の高さ方向の中央部分にテーパ部211が形成され、テーパ部211を上下に挟むように、上方部分215および下方部分216が設けられている。上方部分215および下方部分216の内面は、Z軸方向に延びるように形成されている。
【0042】
図10の例においても、電池セル110の収容ケース112の底面角部をテーパ部211に当接させながら電池セル110をケース本体210に挿入する。電池セル110をケース本体210に完全に挿入したとき、収容ケース112の底面角部を下方部分216の底部に当接させる。これにより、電池セル110のX軸方向およびZ軸方向の位置決めを精度よく行うことができる。
【0043】
また、図10の構造では、ケース本体210の電池セル110を、テーパ部211の底部211Aのみならず、下方部分216により面的な広がりをもって支持することができるので、電池パック1に外部振動が作用した場合にも、より確実に電池モジュール100の支持および位置決めを行うことができる。
【0044】
このように、本実施の形態に係る電池パック1によれば、作業性を低下させることなく、電池セル110のX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の位置決めを精度よく行うことができる。
【0045】
以上、本開示の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
1 電池パック、100 電池モジュール、110 電池セル、111 電極端子、111A 正極端子、111B 負極端子、112 収容ケース、112A 主面、200 ケース、210 ケース本体、211 テーパ部、211A 底部、212 垂直部、212A 凹部、213 中央壁、214 支持部、214A 切り欠き部、215 上方部分、216 下方部分、220 蓋部材、300 熱伝導材、400 結露水、500 治具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10