(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】造粒組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20230726BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230726BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230726BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230726BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230726BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/24
A61K47/08
A61K47/22
A61K47/04
A61K31/519
A61K38/13
(21)【出願番号】P 2020208264
(22)【出願日】2020-12-16
(62)【分割の表示】P 2019071948の分割
【原出願日】2019-04-04
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2018076957
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315001213
【氏名又は名称】三生医薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】清 俊介
(72)【発明者】
【氏名】峯田 三寿々
(72)【発明者】
【氏名】森実 主税
(72)【発明者】
【氏名】平澤 亙
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-292437(JP,A)
【文献】特開2012-001460(JP,A)
【文献】特開2009-107944(JP,A)
【文献】特開2003-160474(JP,A)
【文献】特開2004-137272(JP,A)
【文献】特開平7-25751(JP,A)
【文献】特開平5-309314(JP,A)
【文献】特開平7-258072(JP,A)
【文献】国際公開第2007/135470(WO,A1)
【文献】特開2004-250367(JP,A)
【文献】でん粉の顕微鏡写真, 三和澱粉工業株式会社ウェブページ[online],2023年02月22日,retrieved from the Internet<URL: https://www.sanwa-starch.co.jp/hyakka00/hyakka03/hyakka03_01/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子物質を含む結合液と、核粒子と、を含む造粒溶液を、被覆粒子を流動させた流動床に滴下して、液滴の表面に前記被覆粒子を付着させて造粒する、高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、を含む、造粒組成物の製造方法であって、
前記核粒
子が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下であ
り、
前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~30μmであり、
前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状である、製造方法。
【請求項2】
高分子物質を含む結合液と、核粒子と、を含む造粒溶液を、被覆粒子を流動させた流動床に滴下して、液滴の表面に前記被覆粒子を付着させて造粒する、高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、を含む、造粒組成物の製造方法であって、
前記核粒子及び/又は結合液が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下であり、
前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~30μmであり、
前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状であり、
ただし、前記造粒組成物が、脂溶性ビタミンおよび/またはカロチノイドを含む場合を除く、製造方法。
【請求項3】
前記核粒子が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記高分子物質が、ゼラチン、カラギーナン、寒天、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート及びポリビニルアセテートフタレートから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
高分子物質を含む結合液と、核粒子と、を含む造粒溶液を、被覆粒子を流動させた流動床に滴下して、液滴の表面に前記被覆粒子を付着させて造粒する、高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、を含む、造粒組成物の製造方法であって、
前記核粒子及び/又は結合液が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下であり、
前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~30μmであり、
前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状であり、
ただし、前記造粒組成物が、ゼラチンを含む場合を除く、製造方法。
【請求項6】
前記核粒子が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記高分子物質が、カラギーナン、寒天、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート及びポリビニルアセテートフタレートから選ばれる1種又は2種以上である、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記結合液が、ゲル化作用を有さない、又はゲル強度を発揮し得ないほど希薄な濃度の溶液又は分散液である、請求項
1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記被覆粒子が、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、ベントナイト、ゼオライト、二酸化ケイ素、カンテン末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、タルクから選ばれる1種又は2種以上の粉末である請求項
1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記核粒子が、前記被覆粒子と同じ粒子を含有する、請求項
1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記結合液が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、請求項
1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記結合液が、疎水性液体をさらに含む、請求項
11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記疎水性液体が、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、オクチルデシルトリグリセリド、オレイン酸、クエン酸トリエチル、ジメチルポリシロキサン、シンナムアルデヒド、中鎖モノ・ジグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、ピペロニルブトキシド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、ミリスチン酸オクチルドデシル、酪酸エチルから選ばれる1種又は2種以上である請求項
12に記載の製造方法。
【請求項14】
高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、
前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、
を含む、造粒組成物であって、
前記核粒
子が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下であ
り、
前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~30μmであり、
前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状である、造粒組成物。
【請求項15】
高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、
前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、
を含む、造粒組成物であって、
前記核粒子及び/又は結合液乾燥物が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下であり、
前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~30μmであり、
前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状であり、
ただし、前記造粒組成物が、脂溶性ビタミンおよび/またはカロチノイドを含む場合を除く、造粒組成物。
【請求項16】
前記核粒子が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、請求項15に記載の造粒組成物。
【請求項17】
前記高分子物質が、ゼラチン、カラギーナン、寒天、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート及びポリビニルアセテートフタレートから選ばれる1種又は2種以上である、請求項14~16のいずれか1項に記載の造粒組成物。
【請求項18】
高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、
前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、
を含む、造粒組成物であって、
前記核粒子及び/又は結合液乾燥物が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下であり、
前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~30μmであり、
前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状であり、
ただし、前記造粒組成物が、ゼラチンを含む場合を除く、造粒組成物。
【請求項19】
前記核粒子が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、請求項18に記載の造粒組成物。
【請求項20】
前記高分子物質が、カラギーナン、寒天、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート及びポリビニルアセテートフタレートから選ばれる1種又は2種以上である、請求項18または19に記載の造粒組成物。
【請求項21】
上記被覆粒子が、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、ベントナイト、ゼオライト、二酸化ケイ素、カンテン末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、タルクから選ばれる1種又は2種以上の粉末である請求項
14~20のいずれか1項に記載の造粒組成物。
【請求項22】
前記核粒子が、前記被覆粒子と同じ粒子を含有する、請求項
14~21のいずれか1項に記載の造粒組成物。
【請求項23】
前記結合液乾燥物が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、請求項
14~22のいずれか1項に記載の造粒組成物。
【請求項24】
前記結合液乾燥物が、疎水性液体をさらに含む、請求項
23に記載の造粒組成物。
【請求項25】
前記疎水性液体が、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、オクチルデシルトリグリセリド、オレイン酸、クエン酸トリエチル、ジメチルポリシロキサン、シンナムアルデヒド、中鎖モノ・ジグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、ピペロニルブトキシド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、ミリスチン酸オクチルドデシル、酪酸エチルから選ばれる1種又は2種以上である請求項
24に記載の造粒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が粒子状の被覆剤で被覆された表面が平滑でない造粒組成物に関し、更に詳述すると、結合剤がゲル強度の低い希薄な溶液であっても均一な粒子に良好に造粒することができ、かつ異種粉体との混合時や貯蔵時に偏析や分離を引き起こしにくく含量均一性を確保しやすい造粒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬やサプリメントなどの補助食品の分野において、薬効成分やその他の生体機能性成分を含む溶液から粒子を成形して該薬効成分又は生体機能性成分を含む顆粒を製造し、これをそのまま顆粒剤とし、又はカプセルに充填してカプセル剤とし、或いはこの顆粒を打錠して錠剤を製することが行われている。
【0003】
ここで、特開2004-250367号公報(特許文献1)では、上記顆粒を得る造粒方法として、薬効成分又は生体機能性成分を含有する溶液を流動する被覆剤からなる流動床に滴下して、被覆剤で被覆された粒子とし、これを乾燥させて球状の被覆粒子を得る方法が提案されている。
【0004】
このような被覆粒子を造粒する場合、例えばゼラチンなどのゲル化作用を有する高分子物質を水に溶解したゲル化剤溶液(結合剤)に薬効成分や生体機能性成分を配合して造粒溶液を調製し、これを上記被覆剤の流動床に滴下して該液滴に被覆剤粒子を付着させると共に該液滴を乾燥させ、表面が被覆剤の粒子で覆われた造粒組成物を得ることが行われている。
【0005】
この場合、上記ゲル化剤溶液(結合剤)のゼラチン濃度を低く設定して希薄な溶液とすることができれば、造粒溶液を流動床に滴下するための噴霧装置又は吐出装置に、大きさが均一な液滴を噴出するための耐圧や性能が備わっていない場合でも、造粒溶液を良好に滴下して造粒組成物を得ることができる。また、ゲル化剤溶液(結合剤)が希薄な溶液であれば一定時間に滴下できる量が増えるため、造粒組成物の生産性の点でも有利である。しかしながら、上記ゲル化剤溶液(結合剤)のゲル化剤濃度が希薄でゲル強度が弱い場合や、そもそも結合剤がゲル強度を有さない場合には、被覆剤が付着する造粒物本体の強度が脆弱で形状を保持することが難しくなり、このため造粒物の本体が崩壊して目的とする造粒粒子が得られず、代わりに被覆剤だけが凝集した粗大な造粒塊となってしまう。
【0006】
ここで、「ゲル化作用を有する」とは、良溶媒に完全溶解した当該高分子の溶液を、室温下かつ開放下で10分間静置したとき、流動性を示さないことが目視で観察される高分子およびその濃度のことを指し、「ゲル強度」とはこのゲル化作用の強さ又はゲル化の程度をいう。具体的には、例えば、ブルーム数200以上の豚または牛ゼラチンは、20質量%の水溶液20gを25℃に調節して100mLビーカーにて室温下かつ開放下で10分間静置したとき、ビーカーを傾けてもゼラチン水溶液が流動しないことから、ゲル作用を有すると判断できる。一方で、ヒドロキシプロピルセルロースを10質量%含むエタノール溶液は、その溶液20gを25℃に調節して100mLビーカーにて室温下かつ開放下で10分間静置しても、収容容器の動きに追従して溶液が流動するため、ゲル化作用を有さないと判定できる。また、上述のブルーム数200以上の豚または牛ゼラチンであっても、例えば10重量%を下回ると、上述の方法ではゲル化せず流動するため、このゼラチン濃度の水溶液は、ゲル強度を発揮し得ないほど希薄な濃度の高分子物質溶液であると判定できる。
【0007】
また、一般に顆粒粒子には、凹凸の少ない平滑で球状な形状であることや、他の混合粒子と粒子径を揃えることが求められる。即ち、顆粒をカプセルに充填してカプセル剤とし、或いはこの顆粒を打錠して錠剤を製する場合には、当該顆粒が他の賦形剤や薬効成分又は生体機能性成分と著しく粉体物性が異なると、均一な混合が困難となり、容易に分離してしまうことになる。このような粉体混合における不均一を偏析と呼び、偏析を引き起こしやすい粉体物性としては、混合する顆粒又は粉末の・粒子径が著しく異なること、・粒子表面の滑り性が異なること、・比重が異なること、・形状が著しく異なること、などが挙げられる。偏析したままカプセル剤や錠剤を製すると、当該顆粒、薬効成分又は生体機能性成分の含有量が1製剤単位ごとに異なってしまい、製品品質の均質性が損なわれて、ひいては公平で均一な薬剤治療又は生体機能向上効果が提供できない製剤となってしまう。このため、このような偏析を避けるため、混合する異種顆粒について、凹凸の少ない平滑な球状の形態にしたり、例えば直径200μm以下の範囲で粒子径を揃えたりすることが行われている。
【0008】
従って、結合剤がゲル強度の弱い希薄な溶液であっても崩壊せずに良好に形体を保持し得る、偏析しにくい粒状の造粒物本体が形成され、均一な粒子の造粒物を良好に製することができる造粒組成物が求められる。
なお、上記特許文献1以外の先行技術文献としては、下記特許文献2~5が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-250367号公報
【文献】特開2002-370968号公報
【文献】特許第4578124号公報
【文献】特開2017-178830号公報
【文献】特開2015-48315号公報
【文献】特開昭63-188621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、結合剤がゲル強度の弱い希薄な溶液であっても崩壊せずに良好に形体を保持し得る造粒物本体が形成され、この本体の周囲に被覆粒子を付着させて、偏析しにくい均一な粒子の造粒物を良好に製することができる造粒組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、結合剤と薬効成分又は生体機能性成分とを含む造粒溶液の液滴を被覆粒子の流動床に滴下して表面が被覆粒子で覆われた造粒物を得る場合に、上記造粒溶液に不溶な核粒子を上記液滴中に存在させることにより、上記結合剤のゲル強度が低い場合でも、該液滴が上記流動床において粒子状の形体を保持し得る造粒物本体となってその周囲に上記被覆粒子が付着した良好な造粒物を得ることができ、この造粒物本体を構成する上記核粒子及び/又は結合剤に薬効成分又は生体機能性成分を含有させて目的とする造粒組成物を得ることができること、更に驚くべきことに、上記被覆粒子の付着によって被覆粒子の大きさに相当する凹凸が造粒物本体の表面に形成されていることにより、偏析が生じ難くなることを見出した。そこで、粒子表面に形成される凹凸について更に検討を進めた結果、界面の展開面積比Sdrを100~700とすることが好適であることを見出し、本発明を完成したものである。
【0012】
従って、本発明は下記造粒組成物を提供するものである。
1. 核粒子と、被覆粒子と、前記核粒子同士及び前記核粒子と前記被覆粒子とを結合して粒状の形体を保持する結合剤とを具備し、前記核粒子と結合剤とからなる造粒物本体の周囲に前記被覆粒子が付着してなり、前記被覆粒子が前記結合剤に不溶なものであり、前記核粒子及び/又は結合剤に薬効成分又は生体機能性成分が含有され、かつ界面の展開面積比Sdrが100~700であることを特徴とする造粒組成物。
2. 上記被覆粒子のアスペクト比が11以下である1記載の造粒組成物。
3. 上記結合剤が、それのみでは粒状の形体を保持し得ないほどゲル強度が弱いか、又はゲル強度を発揮し得ないほど希薄な濃度の高分子物質溶液又は高分子物質分散液である1又は2記載の造粒組成物。
4. 上記核粒子として、粒子状の薬効成分又は生体機能性成分を含有する1~3のいずれかに記載の造粒組成物。
5. 上記薬効成分又は生体機能性成分が疎水性液体に溶解又は分散され、この疎水性液体の液滴が上記結合剤中に分散している1~3のいずれか1項に記載の造粒組成物。
6. 疎水性液体が、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、オクチルデシルトリグリセリド、オレイン酸、クエン酸トリエチル、ジメチルポリシロキサン、シンナムアルデヒド、中鎖モノ・ジグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、ピペロニルブトキシド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、ミリスチン酸オクチルドデシル、酪酸エチルから選ばれる1種又は2種以上である5記載の造粒組成物。
7. 上記造粒物本体に、上記核粒子として上記被覆粒子と同じ粒子を含有している1~6のいずれかに記載の造粒組成物。
8. 上記造粒物本体が、ゲル化作用を有さない高分子物質を水以外の溶媒に溶解した結合剤と、該溶媒に不溶な薬効成分又は生体機能性成分の粒子からなる核粒子とで形成されたものである1~4のいずれかに記載の造粒組成物。
9. 上記被覆粒子が、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、ベントナイト、ゼオライト、二酸化ケイ素、カンテン末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、タルクから選ばれる1種又は2種以上の粉末である1~8のいずれかに記載の造粒組成物。
10. 上記結合剤が、ゼラチン、カラギーナン、寒天、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート及びポリビニルアセテートフタレートから選ばれる1種又は2種以上の高分子物質を溶媒に溶解又は分散したものである1~9のいずれかに記載の造粒組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の造粒組成物によれば、結合剤がゲル強度の弱い希薄な溶液であっても、表面が被覆粒子で覆われた偏析し難い均一な造粒物を安定的に得ることができ、上記結合剤のゲル化剤濃度を低く設定して希薄な溶液とすることによって、造粒溶液を流動床に滴下するための噴霧装置又は吐出装置に過大な性能を要求することなく生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明にかかる造粒組成物の一態様を示す模式図である。
【
図2】本発明にかかる造粒組成物の他の態様を示す模式図である。
【
図3】本発明にかかる造粒組成物の更に他の態様を示す模式図である。
【
図4】実施例2で得られた造粒組成物の外観を示す写真であり、(A)は倍率100倍の写真、(B)は倍率400倍の写真である。
【
図5】実施例1,2,5で被覆粒子として使用したトウモロコシデンプンを示す顕微鏡写真であり、この写真に基づいて当該トウモロコシデンプンのアスペクト比を求めた。
【
図6】実施例3で被覆粒子として使用したエチルセルロース(製品名:エトセル100FP)を示す顕微鏡写真であり、この写真に基づいて当該エチルセルロースのアスペクト比を求めた。
【
図7】実施例4で被覆粒子として使用したタルク(商品名:タルクML115)を示す顕微鏡写真であり、この写真に基づいて当該タルクのアスペクト比を求めた。
【
図8】実施例6で被覆粒子として使用したウォラストナイト(商品名:KGP-H65)を示す顕微鏡写真であり、この写真に基づいて当該ウォラストナイトのアスペクト比を求めた。
【
図9】比較例1で被覆粒子として使用した結晶セルロース(製品名:KCフロックW-200G)を示す顕微鏡写真であり、この写真に基づいて当該結晶セルロースのアスペクト比を求めた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の造粒組成物は、上記のとおり、核粒子と結合剤とからなる造粒物本体の周囲に被覆粒子が付着して当該被覆粒子の粒子形状に応じた凹凸を有する形態を有し、上記造粒物本体を形成する上記核粒子及び/又は結合剤に薬効成分又は機能性成分が含有されたものである。
【0016】
上記薬効成分又は生体機能性成分としては、特に制限はなく、後述する結合剤に分散又は溶解し得るものであればよい。例えば、薬効成分としては、クロルプロマジン、チオリダジン、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、ハロペリドール、ペルフェナジン、アリピプラゾール、パリペリドン、アモキサピン、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ネファゾドン、クロミプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、レボドパ、ドネペジル、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、メチルフェニデート、アトモキセチン、プレガバリン、ラコサミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、トピラマート、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、ゾニサミド、アルプラゾラム、ロラゼパム、オキサゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ハラゼパム、ゾルピデム、フェノバルビタール、エトクロルビノール、グルテチミド、ペントバルビタール、シルデナフィル、タダラフィル、シクロスポリン、マイコフェノレートモフェチル、シロリムス、タクロリムス、テラゾシンヒドロクロリド、ベナゼプリル、カプトプリル、クロニジンヒドロクロリド、エナラプリル、ヒドララジンヒドロクロリド、ロサルタンカリウム、メチルドペートヒドロクロリド、ミノキシジル、モエキシプリル、カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、グアナベンズアセテート、グアナドレルスルフェート、グアンファシンヒドロクロリド、レセルピン、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、メトプロロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、アムロジピン、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ベラパミル、フェノフィブラート、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、モサプリド、イトプリド、ドンペリドン、トリメブチン、メトクロプラミド、ビサコジル、ジフェノキシレートヒドロクロリド、ロペラミド、クロピドグレルビスルフェート、フィトナジオン、チクロピジン、ワルファリンナトリウム、リマプロスト、ベラプロスト、アルモトリプタン、エルゴタミン、フロバトリプタン、メチセルギド、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、アザチオプリン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、ペニシラミン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、アスピリン、ジクロフェナク、フェノプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、メロキシカム、ピロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、モルヒネ、オキシコドン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、トラマドール、タペンタドールイマチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、ラパチニブ、ゲフィチニブ、ダサチニブ、レナリドミド、クロファジミン、サイクロセリン、エチオナミド、リファブチン、アルベンダゾール、イベルメクチン、メベンダゾール、プラジクアンテル、バラシクロビル、バルガンシクロビル、インジナビル、ラミブジン、ネルフィナビルメシラート、ネビラピン、リトナビル、オセルタミビル、アモキシシリン、アモキシシリンセフロキシムナトリウム、セフロキシムアセチル、ペニシリン、セフィキシム、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、メトトレキサート、メルカプトプリン、ジゴキシン、ジソピラミド、フレカイニドアセテート、メキシレチンヒドロクロリド、モリシジンヒドロクロリド、プロカインアミドヒドロクロリド、プロパフェノンヒドロクロリド、キニジン、ソタロールヒドロクロリド、トカイニド、ランソプラゾール、オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、スクラルファート、アカルボース、メトホルミン、ナテグリニド、レパグリニド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、トラザミド、トルブタミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、アミロリドヒドロクロリド、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、ヒドロクロロチアジド、クロルタリドン、インダパミド、メトラゾン、ポリチアジド、キネタゾン、トリクロルメチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、アロプリノール、コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン、アルブテロールスルフェート、モンテルカストナトリウム、テオフィリン、ジレウトン、アザタジン、クロルフェニラミンマレエート、ジフェンヒドラミンヒドロクロリド、クレマスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ロラタジン、デスロラタジン、及びこれらの薬理学的に許容される塩類などを例示することができる。
【0017】
また、生体機能性成分とは、生体内に吸収されて生体に対して所定の作用を及ぼすものでサプリメント等の機能性食品などに用いられるものであり、例えば、コエンザイムQ10、ルテイン、クルクミノイド、シリマリン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、フコキサンチン、リコピン、セサミン、α-リポ酸、脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)及びその誘導体、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ノコギリヤシエキス(オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノール酸、パルミチン酸)、セントジョーンズワート(ヒペリシン)、ロイヤルゼリー(デセン酸)、ヘスペリジン、ノビレチン、ケルセチン、ケンフェロール、ミリシトリン、カテキン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステイン、ミリセチン、スチルベン、及びこれらの利用可能な誘導体などを例示することができる。
なお、薬効成分又は生体機能性成分は、これらに限定されるものではなく、本発明の造粒組成物に適用可能なものであれば、いずれのものも使用することができる。
【0018】
上記被覆粒子としては、生体が受容可能で、特に薬学的又は食品衛生的に許容し得、かつ上記結合剤に不溶な粒子であればよく、医薬や機能性食品などの被覆粒子として公知のものを使用することができる。例えば、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、ベントナイト、ゼオライト、二酸化ケイ素、カンテン末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、タルクなどを例示することができ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
これら被覆粒子の粒径は、特に制限されるものではないが、d50=5~70μm、特にd50=10~30μmとすることが好ましく、粒径が大きすぎると、上記造粒物本体への付着性に劣り、また吸水性も不十分となる場合があり、一方粒径が小さすぎると、造粒操作において流動床を形成する際に飛散しやすくなる。また、この被覆粒子の粒径は、後述するSdr値にも影響する場合があり、Sdr値が本発明の範囲となるように考慮することが好ましい。更に、特に制限されるものではないが、この被覆粒子は安息角が60°以下、特に50°以下であることが好ましく、これにより得られた造粒組成物の流動性が向上して、当該造粒組成物を打錠する場合などの次工程における作業性や生産性をより向上させることができる。
【0020】
更に、この被覆粒子は、特に制限されるものではないが、アスペクト比が11以下、特に4以下であることが好ましく、被覆粒子のアスペクト比が11を超えると、後述するSdr値が大きくなり、また得られる造粒組成物がSdr値のばらつきが大きなものとなり易く、本発明のSdr値を安定的に達成できない場合がある。この点は、後述する。なお、アスペクト比の測定は、簡便には、被覆粒子を例えばシリコーンオイル等の不活性流体に均一に懸濁したあと、スライドガラスに封入して顕微鏡で撮像し、その撮像画像から無作為に選定した粒子の顕微鏡像における長径/短径比として容易に求めることができる。
【0021】
上記結合剤は、薬学的又は食品衛生的に許容し得るもので、上記核粒子同士及び該核粒子と上記被覆粒子とを結合して粒状の形体を保持することができるものであればよく、造粒操作に用いられる公知の結合剤を用いることができる。具体的には、例えば、ゼラチン、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレートなどを例示することができ、これらの1種又は2種以上の高分子物質を水やエタノールなどの溶媒に溶解したものを上記結合剤として用いることができる。なお、水以外の溶媒としては、エタノールの他に、酢酸、アセトン、t-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、2-プロパノール、メタノール、アンモニア、ヘキサン、ピリジン、ジクロロメタンなども例示することができる。
【0022】
次に、上記核粒子は、上記結合剤と共に造粒物本体を形成するものであり、該造粒物本体の核となり、この核粒子の存在により、結合剤がゲル強度の弱い希薄なものであっても造粒物本体の形体を良好に保持し得るものである。この核粒子としては、上記薬効成分及び/又は生体機能性成分が結合剤中で粒子の形体で存在し得るものであれば、これを核粒子とすることができる。また、薬効成分や生体機能性成分とは別途に核粒子を配合してもよく、この場合の核粒子としては、薬学的又は食品衛生的に許容し得るものであればよく、上記被覆粒子として例示したものと同様のものを例示することができる。
【0023】
本発明の造粒組成物は、上述のように、上記造粒物本体を形成する核粒子及び/又は結合剤に薬効成分又は生体機能性成分が含有されたものである。その形態としては、主に
図1~3に示した3種の形態が包含される。即ち、
図1,2は、例えば粒子状の薬効成分mを核粒子1とし、これと結合剤2とで形成された造粒物本体3の周囲に上記被覆粒子4が付着したものである。この場合、
図1は、例えばゼラチン等のゲル化作用を有する高分子物質を水等の溶媒に溶解した結合剤を用いたものであり、粒形状に保持された結合剤2の中心部分に1又は2以上(
図1では4粒)の核粒子1(薬効成分m)が存在する造粒物本体3の周囲に多数の上記被覆粒子4が付着したものである。一方、
図2は、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のゲル化作用を有さない高分子物質をエタノール等の水以外の溶媒に溶解した結合剤2を用いたものであり、この場合は結合剤2が粒状の形体に保持されることはないが、該結合剤2により核粒子1(薬効成分m)が互いに結合して結合剤2と核粒子1(薬効成分m)とで造粒物本体3が形成され、この造粒物本体3の周囲に多数の上記被覆粒子4が付着したものである。
【0024】
また、
図3は、例えばゼラチン等のゲル化作用を有する高分子物質を水等の溶媒に溶解した結合剤2を用いたものであり、例えばトウモロコシデンプン等を核粒子1として造粒物本体3を形成すると共に、薬効成分mをこの造粒物本体3を形成する上記結合剤2中に含有させたものである。この場合、薬効成分mは、
図3のように結合剤2中に分散した状態であっても、あるいは結合剤2に溶解した状態であってもよい。
【0025】
更に、上記
図3の形態にあっては、薬効成分や生体機能性成分を疎水性液体の液滴内に分散又は溶解し、この疎水性液体の液滴hが結合剤2中に分散した状態としてもよい。この場合、上記疎水性液体としては、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、オクチルデシルトリグリセリド、オレイン酸、クエン酸トリエチル、ジメチルポリシロキサン、シンナムアルデヒド、中鎖モノ・ジグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、ピペロニルブトキシド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、ミリスチン酸オクチルドデシル、酪酸エチルなどを例示することができ、これらの1種又は2種以上を好適に使用することができる。
【0026】
本発明の造粒組成物は、
図1~3に示されているように造粒物本体3の周囲に稠密に上記被覆粒子4が付着したものである。この場合、被覆粒子4は、上述のように結合剤2に不溶なものであるから、表面が溶解することなく、そのままの形態で造粒物本体3に付着し、造粒物本体3と被覆粒子4との間に明確な界面が存在する。また、被覆粒子4は隙間なく重複することなく造粒物本体3の表面を覆っており、被覆粒子同士の間隙の幅及び深さは、被覆粒子の形状および大きさに依存する。つまり、本発明の造粒組成物の表面粗さは、被覆粒子の形状および大きさによって決定される。ところで、物体表面のうねり、粗さ、小さな凹凸の評価方法は、国際規格「ISO 25178表面性状(面粗さ測定)」に定められている。そのうちの「界面の展開面積比Sdr」とは、特定の範囲(例えば50μm四方)に認められる凹凸を押し広げて平滑に展開した表面積が、当該範囲に凹凸が全く存在しなかった場合の完全な平滑表面に比べてどの程度増加したのか、百分率(%)で数値化したものである。界面の展開面積比Sdrは白色光干渉顕微鏡を用いて、対象物に白色光を表面に照射しながらレンズをZ方向に移動して得られる干渉縞から、対象物表面のうねり、粗さ、小さな凹凸の三次元情報を得て、測定することができる。
【0027】
ここで、造粒物の表面粗さが表面の滑り性や絡みやすさに影響を及ぼし、ひいては偏析を生じさせている場合、偏析の度合と界面の展開面積比Sdrとの間には相関関係が認められることになり、更に造粒物の表面粗さが被覆粒子の形状および大きさによって決定されていることから、本発明の造粒組成物において適切な被覆粒子と界面の展開面積比Sdrを選定することによってより、造粒物の偏析をより確実に防ぐことができる。
【0028】
そこで、本発明の造粒組成物においては、この界面の展開面積比Sdrを100~700、好ましくは150~400とするものであり、Sdrが大きすぎると、上記造粒物本体と他の賦形剤や薬効成分又は生体機能性成分を混合する際に、造粒物同士の結着性、絡みやすさが強すぎて偏析が生じる場合があり、一方Sdrが小さすぎると、混合操作において均一な分散状態を維持できないほど粒子同士が滑って、やはり偏析しやすくなる。
【0029】
本発明の造粒組成物における界面の展開面積比Sdrは、上述したように上記被覆粒子の大きさや形状に大きく影響され、被覆粒子の大きさ及び形状を調整することにより、上記Sdr値を安定的に達成することができる。具体的には、上記被覆粒子の粒径やアスペクト比を上述の範囲に調整することにより、上記Sdr値を安定的に達成しやすくなる。この場合、被覆粒子の大きさと共にその形状もSdr値に大きく影響し、例えば後述する比較例1のように、アスペクト比が上述した好適範囲を超えた柱状乃至針状の被覆粒子を用いた場合、得られる造粒粒子のSdr値が大きくなるばかりでなく、そのSdr値のばらつきも非常に大きくなり、上記Sdr値を安定的に達成することが困難になりやすい。なお、本発明の造粒組成物では、上記範囲の界面の展開面積比Sdrが達成されていればよく、被覆粒子の大きさ(粒径)や形状(アスペクト比)に制限されるものではない。
【0030】
このような形態の本発明造粒組成物を得るには、上記結合剤及び上記薬効成分又は生体機能性成分(必要に応じて疎水性液体に分散又は溶解した状態としたもの)を水又はその他の溶媒に溶解又は分散し、更に必要に応じて別途上記核粒子を配合して造粒溶液を調製し、上記被覆粒子を流動させた流動床にこの造粒溶液を滴下し、その液滴の表面に上記被覆粒子を付着させて水やその他の溶媒を被覆粒子に吸収させることにより、粒状に造粒する方法を好適に採用することができる。
【0031】
この場合、本発明の造粒組成物によれば、上記造粒溶液を調製する際に上記結合剤を構成する上記高分子物質の濃度を低く設定することができる。そして、このようにゲル化剤(高分子物質)濃度が希薄でゲル強度が低い造粒溶液であっても、上記核粒子の存在により、液滴が上記流動床において粒子状の形体を保持し得る造粒物本体となってその周囲に上記被覆粒子が付着した良好な造粒物を得ることができるものである。
【0032】
なお、本発明の造粒組成物には、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、公知の添加剤を適宜配合することができ、例えば、必要に応じて甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、酸化防止剤、香料、酸味料、調味料、pH調整剤などを、上記造粒物本体内に配合することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をより具体的に示すが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、被覆粒子として用いた、下記実施例1,2,5の「トウモロコシデンプン」、実施例3の「エチルセルロース、製品名:エトセル100FP」、実施例4の「タルク、製品名:タルクML115」、実施例6の「ウォラストナイト、商品名:KGP-H65」及び比較例1の「結晶セルロース、製品名:KCフロックW-200G」については、顕微鏡で粒子を撮像して得た撮像画像上で粒子の形状を確認すると共に、前記撮像画像においてランダムに選択した3~5粒の粒子について当該撮像画像上でのアスペクト比を測定し、その平均を被覆粒子のアスペクト比とした。その際の顕微鏡写真を
図5~9に示す。
【0034】
[実施例1]
精製水40gにパラオキシ安息香酸ブチル10mgを加え、95℃の水浴上で加温してパラオキシ安息香酸ブチルを溶解させた。室温まで冷却後、ゼラチン5gを加え、55~65℃に加温して、ゼラチン水溶液(結合剤)を得た。
【0035】
上記ゼラチン水溶液を55~65℃で撹拌しながら薬効成分のメトトレキサート(粒径:d50=22μm)5gを加えて混合し、造粒溶液を得た。この造粒溶液は、パラオキシ安息香酸ブチルが完全に溶解したゼラチン水溶液中に、メトトレキサートが均一に分散されたものであった。
【0036】
この造粒溶液45.0gを、吐出ノズル径0.3mmを備えた液剤定量吐出装置に仕込み、吐出圧0.5MPa、間欠射出数1万rpmに設定した。また、吐出ノズルから下方70cmに開放パン型造粒機(パン口径300mm)を設置し、パンに日局トウモロコシデンプン(d50=21μm、形状:略球状、アスペクト比:1.18)500gを被覆剤(被覆粒子)として収容し、90rpmにて公転振動させて、トウモロコシデンプン粉末を転動流動させ流動床を形成した。この状態で、液剤定量吐出装置から上記造粒溶液をトウモロコシデンプン粉末の流動床に向けて上記条件で射出させ、上記造粒溶液の液滴を上記トウモロコシデンプン粉末からなる被覆粒子の流動床に投入した。
【0037】
上記造粒溶液45.0gを吐出後、被覆剤のトウモロコシデンプン粉を回収して目開き91μmの篩いにかけ、造粒粒子49.7gと未造粒トウモロコシデンプン492gを分級した。この造粒粒子は、
図1の模式図と同様に、複数のメトトレキサートの結晶の核粒子1(m)が上記結合剤2の粒の中心部に含まれた造粒物本体3の外側にトウモロコシデンプンが被覆粒子4として粉衣された形態となっていた。この造粒粒子の水分を乾燥減量試験法で求めたところ11.3%であった。造粒粒子中のパラオキシ安息香酸ブチル含量は191μg/gだったことから、造粒粒子は、造粒溶液の吐出液滴がトウモロコシデンプン中で水分約80%から約11%まで乾燥されたものに、造粒溶液の吐出液滴から水分を吸って約11%まで水分を抱えたトウモロコシデンプンが被覆粒子として付着して、これらが質量比でおおむね1:4の割合に構成されているものと推察された。
【0038】
得られた造粒粒子の粒度分布をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したところ、平均粒径はd50が343μmで、d10は190μm、d90は452μmであり、粒径の均一性が高いものであった。このように、結合剤のゼラチン濃度が希薄でゲル強度が低いものであっても、薬効成分の粒子を核粒子とすることにより、均一な粒子の造粒組成物を得ることができる。
【0039】
また、得られた造粒粒子の界面の展開面積比Sdrを下記方法で測定したところ、測定1回目:350、測定2回目:322、平均値:336であった。
[界面の展開面積比Sdrの測定法]
粒子を両面テープに固定して白金蒸着を行った試料を白色光干渉顕微鏡(Bruker Nano Inc. 製、Contour GT-K)で観察して、無作為に選択した2粒の粒子についてそれぞれ計測を行い、解析ソフトウェアVision64(Ver.5.41)によりStatic Filter処理(Type=Median、size=6)およびMask Data処理(0.05mm×0.05mm)を行って、Sdrを求めた。
【0040】
[実施例2]
精製水35gにゼラチン4gを加え、55~65℃に加温して、ゼラチン水溶液(結合剤)を得た。一方、クエン酸トリエチル3gにシクロスポリン(薬効成分)1gとパラオキシ安息香酸ブチル10mgを加え、55~65℃に加温してシクロスポリンとパラオキシ安息香酸ブチルを溶解させ、薬効成分溶液を得た。
【0041】
上記ゼラチン水溶液を55~65℃で攪拌しながら上記薬効成分溶液を徐々に加えて混合したあと、トウモロコシデンプン(d50=21μm、形状:略球状、アスペクト比:1.18)4gを徐々に加えて均一に混合し、造粒溶液を得た。この造粒溶液は、ゼラチン濃度が高々8.5%であることからゲル強度を発揮し得ないほど希薄な溶液であり、シクロスポリンとパラオキシ安息香酸ブチルが完全に溶解したクエン酸トリエチルの液滴とトウモロコシデンプンの粒子(核粒子)とが、ゼラチン水溶液(結合剤)中に均一に分散されたものであった。
【0042】
この造粒溶液45gを、実施例1と同様の造粒装置で同様にしてトウモロコシデンプン粉末の流動床に射出し、目開き91μmの篩いにかけ、造粒粒子44.1gと未造粒トウモロコシデンプン501gを分級した。この造粒粒子は、
図3の模式図と同様に、トウモロコシデンプンを核粒子1とし、シクロスポリン(薬効成分)mを含むクエン酸トリエチルの液滴hが分散したゼラチン水溶液の乾燥物(結合剤)2からなる造粒物本体3の表面に、トウモロコシデンプン(被覆粒子)4が粉衣された形態となっていた。この造粒粒子の外観写真を
図4に示す。この造粒粒子は、上記実施例1と同様に、乾燥した造粒溶液と吸水したトウモロコシデンプンとで、質量比でおおむね1:4で構成されているものと推察された。
【0043】
得られた造粒粒子の粒度分布を、実施例1と同様に、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したところ、平均粒径はd50が299μmで、d10は159μm、d90は379μmであり、粒径の均一性が高いものであった。このように、結合剤のゼラチン濃度が希薄でゲル強度が低いものであっても、トウモロコシデンプンの粒子を核粒子とし、薬効成分を結合剤中に含有させることにより、均一な粒子の造粒組成物を得ることができる。
【0044】
[参考例]
クエン酸トリエチル及びシクロスポリンを配合せず、かつ核粒子のトウモロコシデンプンの配合量を1gに減量したこと以外は実施例2と同様にして造粒溶液を調製した。この造粒溶液を用い実施例2と同様にして造粒粒子を得、同様に粒度分布を測定したところ、平均粒径はd50が269μmで、d10は140μm、d90は435μmであり、粒径の均一性が高いものであった。このように、核粒子が少量で、かつ被覆粒子と同一材料であっても、均一な被覆粒子が得られることが確認された。
【0045】
[実施例3]
使用するゼラチンとメトトレキサートの質量をともに2.5gに減じて、造粒溶液に核粒子として2.5gのエチルセルロース(日新化成株式会社、製品名:エトセル100FP、d50=19μm、形状:鱗片状、アスペクト比:1.81)を加えたこと以外は実施例1と同様にして造粒溶液を得、また流動床にも核粒子と同じエチルセルロースを用いたこと以外は実施例1と同様にして造粒粒子を製した。この造粒粒子の粒度分布を測定したところ、平均粒径はd50が230μmで、d10は166μm、d90は294μmであり、粒径の均一性が高いものであった。また、得られた造粒粒子の界面の展開面積比Sdrを、実施例1と同様にして求めたところ、測定1回目:268、測定2回目:328、平均値:298であった。
【0046】
[実施例4]
核粒子として造粒溶液に2.5gのタルク(富士タルク工業株式会社、製品名:タルクML115、d50=6.3μm、形状:略球状乃至鱗片状、アスペクト比:1.3)を加えたこと以外は実施例3と同様にして造粒溶液を得、また流動床にも核粒子と同じタルクを用いたこと以外は実施例3と同様にして造粒粒子を製した。この造粒粒子の粒度分布を測定したところ、平均粒径はd50が248μmで、d10は202μm、d90は300μmであり、粒径の均一性が高いものであった。また、得られた造粒粒子の界面の展開面積比Sdrを、実施例1と同様にして求めたところ、測定1回目:186、測定2回目:240、平均値:213であった。
【0047】
[比較例1]
流動床に結晶セルロース(日本製紙株式会社、製品名:KCフロックW-200G、d50=13μm、形状:柱状乃至針状、アスペクト比:13.9)を用いたこと以外は実施例1と同様にして造粒粒子を得、粒度分布を測定したところ、平均粒径はd50が159μmで、d10は88μm、d90は296μmであり、粒径の均一性が高いものであった。また、得られた造粒粒子の界面の展開面積比Sdrを、実施例1と同様にして求めたところ、測定1回目:757、測定2回目:3500、平均値:2129であった。
【0048】
[比較例2]
造粒溶液に核粒子としてトウモロコシデンプンを加えないこと以外は実施例2と同様にして造粒溶液を得た。この造粒溶液のゼラチン濃度は9.3%であることからゲル強度を発揮し得ないほど希薄な溶液であった。この造粒溶液40gを、実施例2と同様にトウモロコシデンプン粉末の流動床に射出したところ、流動床のトウモロコシデンプン粉末が互いに結着し始めて様々な形状の約1cm大の無数の塊が形成された。これは、射出した液滴が実質的な粒子強度を持たなかったために不定形となって、流動床のトウモロコシデンプン粉末を単に湿潤させて、互いに結着させたものと推察された。
【0049】
従って、本発明の造粒組成物を得るためには、射出した液滴が実質的な粒子強度を持ち、粒状の形体を保持し得る造粒物本体となって周囲に結合剤(本例ではゼラチン水溶液)に溶解しない不溶粉末を被覆粒子として付着させることが必要であり、実質的な粒子強度を示すことが困難なほど希薄な高分子溶液を液滴として射出する場合は、この液滴中に不溶粒子を核粒子として存在させることが必要であることが明らかとなった。
【0050】
[実施例5]
エタノール40gに、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)4g及びパラオキシ安息香酸ブチル0.01gを加えて溶解させHPCエタノール溶液(結合剤)を得た。このHPCエタノール溶液に薬効成分としてメトトレキサート(粒径:d50=22μm)4gを加えて混合し、造粒溶液を得た。この造粒溶液は、パラオキシ安息香酸ブチル及びHPCが完全に溶解したHPCエタノール溶液中に、薬効成分のメトトレキサート粒子が均一に分散されたものであった。
【0051】
この造粒溶液を用い実施例1と同様にして造粒粒子を得た。得られた造粒粒子は、
図2の模式図と同様に、複数のメトトレキサートの結晶の核粒子1(m)が上記結合剤2で結合されてまとまった造粒物本体3の外側にトウモロコシデンプンが被覆粒子4として粉衣された形態となっていた。
【0052】
得られた造粒粒子の粒度分布をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で観察したところ、平均粒径はd50が176μmで、d10は131μm、d90は223μmであり、粒径の均一性が高いものであった。このように、ゲル化作用を有しない高分子物質(HPC)と、水以外の溶媒(エタノール)を用いた場合でも、その溶媒に溶けない核粒子(本例では薬効成分のメトトレキサート粒子)を用いることにより、均一な被覆粒子が得られることが確認された。また、得られた造粒粒子の界面の展開面積比Sdrを、実施例1と同様にして求めたところ、測定1回目:408、測定2回目:334、平均値:371であった。
【0053】
[実施例6]
核粒子として造粒溶液に2.5gのウォラストナイト(関西マテック株式会社、製品名:KGP-H65、d50=6.3μm、形状:針状、アスペクト比:10.6)を加えたこと以外は実施例3と同様にして造粒溶液を得、また流動床にも核粒子と同じウォラストナイトを用いたこと以外は実施例3と同様にして造粒粒子を製した。この造粒粒子の粒度分布を測定したところ、平均粒径はd50が382μmで、d10は252μm、d90は496μmであり、粒径の均一性が高いものであった。また、得られた造粒粒子の界面の展開面積比Sdrを、実施例1と同様にして求めたところ、測定1回目:690、測定2回目:557、平均値:624であった。
【0054】
[偏析の評価]
上記各実施例及び比較例で得られた造粒粒子を用い、下記評価条件に従って、錠剤に製剤する際に用いられる賦形剤と混合したときの粉末の分散性を目視により評価し、下記基準により造粒粒子が偏析を引き起こさないかを判定した。結果を表1に示す。
(評価基準)
◎:全体にわたって均一に分散しており偏析していない。
○:造粒粒子同士が隣接することなく分散しているが、分散の密度にはわずかにムラが認められる。
△:造粒粒子同士が凝集して局在している箇所が認められる。
×:複数の相に分離して偏析している。
【0055】
<評価条件>
賦形剤であるD-マンニトール(製品名:グラニュトールS、d50は83μm)又は乳糖水和物(製品名:ダイラクトーズR、d50は171μm)に、実施例1及び3~6並びに比較例1及び下記比較例3,4の造粒組成物を、5重量%又は15重量%加えて5分間振とう混合し、造粒粒子の分散度合を目視で評価し、判定した。試験方法をより具体的に説明すると、50mLの透明なポリプロピレン性ねじ付遠沈管に9.5g又は8.5gのD-マンニトール又は乳糖水和物を量りとり、さらに0.5g又は1.5gの造粒組成物を上方から重層してねじ付フタを締め、50mLチューブ用チューブローテーターに固定し、毎分20回転の速度で10分間回転させた。その際、比較例3としてレボフロキサシン細粒10%「DSEP」(第一三共株式会社、実施例1と同様にして測定した界面の展開面積比Sdrは測定1回目:21、測定2回目:50、平均値:36)、比較例4としてフトラフール腸溶顆粒50%(大鵬薬品株式会社、実施例1と同様にして測定した界面の展開面積比Sdrは測定1回目:4、測定2回目:5、平均値:5)を用いた。目視による分散度合は、実施例1及び3~6並びに比較例1についてはメトトレキサートに特徴的な黄色粒子の色味を指標に、比較例3については特徴的な淡黄色粒子の色味を指標に、比較例4については押出し造粒粒子に特徴的な粒子形状を指標に評価した。
【0056】
【0057】
表1のとおり、表面が粒子状の被覆剤で被覆され、かつSdr値が適正化された本発明の造粒組成物は、異種粉体との混合時や貯蔵時に偏析や分離を引き起こしにくいことが確認された。
【0058】
[被覆粒子の大きさ及び形状と得られる造粒粒子のSdr値との関係]
実施例1,3~6及び比較例1で製した造粒組成物につき、参考として、被覆粒子の大きさ(平均粒径d50)及び顕微鏡による撮像画像上での形状(アスペクト比)と造粒粒子のSdr値との関係を下記表2に示す。
【0059】
【0060】
表2に示されているとおり、被覆粒子の大きさと共に、形状(アスペクト比)が得られる造粒粒子のSdr値に比較的大きく影響し、被覆粒子のアスペクト比が大きくなると、Sdr値のばらつきが大きくなることが認められる。
【0061】
[口腔内崩壊錠を製したときの舌触りの評価]
上記参考例で得られた造粒粒子を用いて、下記方法により表3に示す組成の口腔内崩壊錠を製した。得られた口腔内崩壊錠について、水を服用せずに口腔内で崩壊させたときの舌触りを5人のパネリストにより官能評価し、本発明の造粒粒子が不快なザラザラ感を引き起こさないかを判定した。いずれのパネリストにおいても、この口腔内崩壊錠は口腔内で約50~65秒後に崩壊し、崩壊途中も崩壊後も、口腔内に固い粒の感触や不快なザラザラ感を感じなかった。
【0062】
(口腔内崩壊錠の作製)
表3に示した各成分を秤量し、40cm×70cmの透明ポリエチレン袋に入れて封をし、手で10分間転倒混合して打錠用混合末を調製し、ロータリー式打錠機(PICCOLA D8)で、円形扁平型(直径7mm、1錠あたりの重量120mg)の口腔内崩壊錠を製した。
【0063】
【符号の説明】
【0064】
1 核粒子
2 結合剤
3 造粒物本体
4 被覆粒子
m 薬効成分又は生体機能性成分
h 薬効成分又は生体機能性成分が分散又は溶解した疎水性液体の液滴
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]高分子物質を含む結合液と、核粒子と、を含む造粒溶液を、被覆粒子を流動させた流動床に滴下して、液滴の表面に前記被覆粒子を付着させて造粒する、高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、を含む、造粒組成物の製造方法であって、
前記核粒子及び/又は結合液が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下である、製造方法。
[2]前記結合液が、ゲル化作用を有さない、又はゲル強度を発揮し得ないほど希薄な濃度の溶液又は分散液である、上記[1]に記載の製造方法。
[3]前記被覆粒子が、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、ベントナイト、ゼオライト、二酸化ケイ素、カンテン末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、タルクから選ばれる1種又は2種以上の粉末である上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~70μmである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]前記高分子物質が、ゼラチン、カラギーナン、寒天、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート及びポリビニルアセテートフタレートから選ばれる1種又は2種以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記核粒子が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記核粒子が、前記被覆粒子と同じ粒子を含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記結合液が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記結合液が、疎水性液体をさらに含む、上記[9]に記載の製造方法。
[11]前記疎水性液体が、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、オクチルデシルトリグリセリド、オレイン酸、クエン酸トリエチル、ジメチルポリシロキサン、シンナムアルデヒド、中鎖モノ・ジグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、ピペロニルブトキシド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、ミリスチン酸オクチルドデシル、酪酸エチルから選ばれる1種又は2種以上である上記[10]に記載の製造方法。
[12]高分子物質を含む結合液乾燥物と、核粒子と、を含む造粒物本体と、
前記造粒物本体を被覆する被覆粒子と、
を含む、造粒組成物であって、
前記核粒子及び/又は結合液乾燥物が、薬効成分又は生体機能性成分を含み、
前記被覆粒子のアスペクト比が、11以下である、造粒組成物。
[13]上記被覆粒子が、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、ベントナイト、ゼオライト、二酸化ケイ素、カンテン末、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、タルクから選ばれる1種又は2種以上の粉末である上記[12]に記載の造粒組成物。
[14]前記被覆粒子の粒径(d
50
)が、5~70μmである、上記[12]または[13]に記載の造粒組成物。
[15]前記被覆粒子が、略球状及び/又は鱗片状である、上記[12]~[14]のいずれかに記載の造粒組成物。
[16]前記高分子物質が、ゼラチン、カラギーナン、寒天、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート及びポリビニルアセテートフタレートから選ばれる1種又は2種以上である、上記[12]~[15]のいずれかに記載の造粒組成物。
[17]前記核粒子が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、上記[12]~[16]のいずれかに記載の造粒組成物。
[18]前記核粒子が、前記被覆粒子と同じ粒子を含有する、上記[12]~[17]のいずれかに記載の造粒組成物。
[19]前記結合液乾燥物が、薬効成分又は生体機能性成分を含む、上記[12]~[18]のいずれかに記載の造粒組成物。
[20]前記結合液乾燥物が、疎水性液体をさらに含む、上記[19]に記載の造粒組成物。
[21]前記疎水性液体が、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、安息香酸ベンジル、オクチルデシルトリグリセリド、オレイン酸、クエン酸トリエチル、ジメチルポリシロキサン、シンナムアルデヒド、中鎖モノ・ジグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、ピペロニルブトキシド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、ミリスチン酸オクチルドデシル、酪酸エチルから選ばれる1種又は2種以上である上記[20]に記載の造粒組成物。