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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ムスク様組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20230726BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20230726BHJP
   D06M 13/228 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C11B9/00 X
C11D3/50
A61K8/49
A61K8/00
A61Q13/00 101
A61K8/33
D06M13/228
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020512264
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014653
(87)【国際公開番号】W WO2019194186
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2018070661
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中澤 有紀
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 省治
(72)【発明者】
【氏名】沢口 未怜
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531468(JP,A)
【文献】特表2014-520103(JP,A)
【文献】WITKOWSKA-BANASZCZAK, E. et al.,Identification of the components of the essential oil from Trollius europaeus flowers,Acta Physiol Plant,(2013), Vol.35,pp.1421-1425
【文献】RASTOGI, S. C. et al.,Fragrances and other materials in deodorants : search for potentially sensitizing molecules using combined GC-MS and structure activity relationship(SAR) analysis,Contact Dermatitis,(1998), Vol.39,pp.293-303
【文献】WANG, C. et al.,Efficient and Selective Formation of Macrocyclic Disubstituted Z Alkenes by Ring-Closing Metathesis(RCM) Reactions Catalyzed by Mo- or W-Based Monoaryloxide Pyrrolide(MAP) Complexes. Applications to Total Syntheses of Epilachnene, Yuzu Lactone, Ambrettolide, Epothilone C and Nakadomarin A,Chemistry,(2013), Vol.19, No.8,pp.2726-2740,DOI: 10.1002/chem.201204045
【文献】SANZ, V. et al.,Synthesis of Ambrettolide from Phloionolic Acid,Journal of Chemical Society, Perkin Transaction 1,(1982),pp.1837-1839
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化合物を含む組成物であって、前記一般式(I)で表される化合物のE体と前記一般式(I)で表される化合物のZ体の比率がE体/Z体=3/7以上7/3以下である組成物。
【化7】
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物のE体と前記一般式(I)で表される化合物のZ体の比率が、E体/Z体=5/5以上7/3以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一般式(I)で表される化合物以外の香料を含有し、前記一般式(I)で表される化合物の含有量が、0.01質量%以上25質量%以下である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物以外の香料が、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、エステル類、カーボネート類、化合物(I)を除くラクトン類、カルボン酸類、ニトリル類、シッフ塩基類、天然精油および天然抽出物のうち1種以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4いずれか一項記載の組成物を含有する洗浄剤。
【請求項6】
請求項1~4いずれか一項記載の組成物を含有する化粧料。
【請求項7】
請求項1~4いずれか一項記載の組成物を含有する繊維処理剤。
【請求項8】
請求項1~4いずれか一項記載の組成物を賦香成分として使用する方法。
【請求項9】
請求項1~4いずれか一項記載の組成物を賦香成分として香り全体を強める方法。
【請求項10】
請求項1~4いずれか一項記載の組成物を賦香成分としてムスクの柔らかさを足す方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムスク様組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
香りは製品等の嗜好性や高級感、安心感、効果への期待感などを演出する重要な要素である。さらに特徴ある香は製品を識別する効果、および顧客を吸引する力を与える。特にムスクの香調は石けんや化粧品をはじめ様々な調合香料に使用される。
【0003】
オキサシクロヘプタデク-10-エン-2-オンや、オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オン等がムスクの香調を与える香料素材として知られている。
【0004】
特許文献1にはE体:Z体の比率が85:15のオキサシクロヘプタデク―10―エン-2-オン(イソアンブレットライド)の製造が開示されている。
【0005】
また、特許文献2にはZ体の含有率が99.5%以上のオキサシクロヘプタデク―10―エン-2-オンの製造が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、オキサシクロヘプタデク―10―エン-2-オンの製造が開示されている。
【0007】
また、オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンのZ体は、CAS番号123-69-3のもと、登録されている。このオキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンのZ体は、植物性天然香料「Ambrette seed oil」中に10%前後存在する天然物であることが知られている。
【0008】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2017-517477号公報
【文献】特開平11-293284号公報
【文献】特開2016-124868号公報
【文献】WO2016/5361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ムスクは幅広く使用される重要な香料素材であるが、動物性香料であることから、アニマリック感も強い。特にトイレタリー製品などは、清潔感のあるみずみずしい香調が好まれる。そのため、調香の自由度を上げるために、アニマリック感を低減し、調合香料中で他の香調とも調和しやすく、くせのないムスク香調を有する香料組成物が望まれていた。
【0011】
そこで、本発明は、他の様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することが可能なムスク様組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
下記一般式(I)で表される化合物を含む組成物であって、前記一般式(I)で表される化合物のE体と前記一般式(I)で表される化合物のZ体の比率がE体/Z体=3/7以上7/3以下である。
【0013】
【化2】
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、他の様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することが可能という利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、一般式(I)で表される化合物は、他の様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出する観点から、E体とZ体の比率が、E体/Z体=3/7以上7/3以下であり、好ましくは4/6以上7/3以下であり、より好ましくは5/5以上7/3以下、より好ましくは5/5超7/3以下である。
【0016】
一般式(I)で表される化合物を含む本発明の組成物は、例えば、E体とZ体の比率がE体/Z体=3/7以上7/3以下になるように一般式(I)で表される化合物(以下、「式(I)の化合物」または「化合物(I)」と呼ぶことがある)のE体とZ体とを混合することにより、得ることができる。
【0017】
式(I)の化合物のE体は、従来公知の方法により得ることができる。そのような方法としては、例えば、Facile synthesis of (E)-7-hexadecen-1,16-olide, J. In. Chem. Soc. Vol. 83, 1179-1180, 2006 に記載のものが挙げられる。
【0018】
式(I)の化合物のZ体は、例えば、9-デセニル-7-オクテノアートをZ選択的触媒を使用したメタセシス反応により閉環することにより得ることができる(Highly Active Ruthenium Metathesis Catalysts Exhibiting Unprecedented Activity and Z-Selectivity, J. Am.Chem.Soc. 135, 1276-1279, 2013)。
【0019】
本発明の組成物は、一般式(I)で表される化合物以外の香料を含有することが好ましい。本発明において、他の様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することが可能な観点から、式(I)で表される化合物の含有量が、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1質量%以上、であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下であるのが好ましい。
【0020】
本発明の組成物は、一般式(I)で表される化合物を含み、一般式(I)で表される化合物のE体と一般式(I)で表される化合物のZ体の比率がE体/Z体=3/7以上7/3以下であるため、他の様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することが可能である。また、本発明の組成物は、化合物(I)以外の香料として、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料を含むことができる。化合物(I)以外の香料を含むことにより、例えば、フローラル調、ブーケ調、ヒヤシンス調、ゼラニウム調、ローズ調、ベルガモット調、ラン調、スズラン調(ミューゲ)の香気を本発明の組成物に付与することができる。すなわち、本発明の組成物は、一般式(I)の化合物以外の香料を更に含有するのが好ましい。
【0021】
本発明の組成物において、化合物(I)と組み合わせて用いることができる他の香料としては、アルコール類、炭化水素類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、カルボン酸、化合物(I)を除くラクトン類、ニトリル類、シッフ塩基類、天然精油や天然抽出物等の香料成分が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、アルコール類、エステル類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、カーボネート類、ラクトン類、天然精油や天然抽出物が好ましい。
【0023】
本明細書中、各香料の「類」には単一の化合物、あるいは2つ以上の化合物の混合物を意味する。
【0024】
アルコール類としては、脂肪族アルコール、テルペン系アルコール、芳香族アルコール、その他のアルコール等が挙げられる。これらの中でも脂肪族アルコールが好ましい。
【0025】
テルペン系アルコールとしては、リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、α-ターピネオール、ジヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、メントール、ボルネオール、α-テルピネオール(p-メント-1-エン-8-オール)等が挙げられる。
【0026】
芳香族アルコールとしては、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール、アンブリノール(1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-ナフタレン-2-オール)、アンブリノール20T(高砂香料工業株式会社商品名、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-ナフタレン-2-オール)、インドレン50BB(IFF社商品名、7,7-ビス(1H-インドール-3-イル)-1,1,5-トリメチル-1-ヘプタノール)等が挙げられる。
【0027】
脂肪族アルコールとしては、シス-3-ヘキセノール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)-3-ヘキサノール、アンバーコア(花王株式会社商品名、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール)、サンダルマイソールコア(花王株式会社商品名、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール)、マグノール(花王株式会社商品名、エチルノルボニルシクロヘキサノールを主成分とする混合物)、ウンデカベルトール(Givaudan株式会社商品名、4-メチル-3-デセン-5-オール)、イソボルニルシクロヘキサノール、ポリメフロール(高砂香料工業株式会社商品名、1-(2-メチル-2-プロペニルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンタン-3-オール)等が挙げられる。
【0028】
その他のアルコールとしては、フロローサ(ジボダン社商品名、化学名:4-メチル-2-(2-メチルプロピル)テトラヒドロ-2H-4-ピラノール)、デセノール等が挙げられる。
【0029】
炭化水素類としては、リモネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセン、オシメン、アンブロテック(花王株式会社商品名、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン)、フロレックス(フィルメニヒ社商品名、6-エチリデンオクタハイドロ-5,8-メタノ-2H-1-ベンゾピラン)、ハバノリド(フィルメニヒ社商品名、シクロペンタデセノリド)等が挙げられる。
【0030】
フェノール類としては、グアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、チモール、パラクレゾール、バニリン、エチルバニリン等が挙げられる。
【0031】
エステル類としては、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、その他のカルボン酸エステルが挙げられる。
【0032】
脂肪族カルボン酸エステルを形成する脂肪族カルボン酸としては、炭素数1~18の直鎖及び分岐鎖カルボン酸が挙げられるが、中でもギ酸、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1~6のカルボン酸、特に酢酸が重要である。芳香族カルボン酸エステルを形成する芳香族カルボン酸としては、安息香酸、アニス酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、アントラニル酸等が挙げられる。脂肪族及び芳香族エステルを形成するアルコールとしては、炭素数1~5の直鎖及び分岐鎖脂肪族アルコール及び上記の香料成分アルコール類が挙げられる。
【0033】
ギ酸エステルとしては、リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート等が挙げられる。
【0034】
酢酸エステルとしては、ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、アセチルオイゲノール、アセチルイソオイゲノール、o-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート、パラクレジルフェニルアセテート等が挙げられる。
【0035】
プロピオン酸エステルとしては、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、スチラリルプロピオネート等が挙げられる。
【0036】
酪酸エステルとしては、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート等が挙げられる。
【0037】
吉草酸エステルとしては、メチルバレレート、エチルバレレート、ブチルバレレート、アミルバレレート、ベンジルバレレート、フェニルエチルバレレート等;ヘキサン酸エステルとしては、メチルヘキサノエート、エチルヘキサノエート、アリルヘキサノエート、リナリルヘキサノエート、シトロネリルヘキサノエート等が挙げられる。
【0038】
ヘプタン酸エステルとしては、メチルヘプタノエート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。
【0039】
ノネン酸エステルとしては、メチル2-ノネノエート、エチル2-ノネノエート、エチル3-ノネノエート等が挙げられる。
【0040】
安息香酸エステルとしては、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、3,6-ジメチルベンゾエート等が挙げられる。
【0041】
桂皮酸エステルとしては、メチルシンナメート、ベンジルシンナメート、フェニルエチルシンナメート等が挙げられる。
【0042】
サリチル酸エステルとしては、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ベンジルサリシレート等が挙げられる。
【0043】
さらに、ブラシル酸エステルとしては、エチレンブラシレート等が挙げられる。
【0044】
チグリン酸エステルとしては、ゲラニルチグレート、1-ヘキシルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート等が挙げられる。
【0045】
ジャスモン酸エステルとしては、メチルジャスモネート、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。
【0046】
グリシド酸エステルとしては、メチル2,4-ジヒドロキシ-エチルメチルフェニルグリシデート、4-メチルフェニルエチルグリシデート等が挙げられる。
【0047】
アンスラニル酸エステルとしては、メチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート、ジメチルアンスラニレート等が挙げられる。
【0048】
さらにその他のエステルとしては、エチルサフラネート(ジボダン社商品名、ジヒドロシクロゲラン酸エチル)、ポアレネート(花王株式会社商品名、エチル-2-シクロヘキシルプロピオネート)、フルテート(花王株式会社商品名、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン-2-カルボキシレート)、ジャスモン酸メチル、MDJ(花王株式会社商品名、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル (2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート)、シクロヘキシルサリシレート(花王株式会社商品名)、I.P.M(ミリスチン酸イソプロピル)等が挙げられる。
【0049】
カーボネート類としては、リファローム(IFF社商品名、シスー3-ヘキセニルメチルカーボネート)、ジャスマシクラット(花王株式会社商品名、メチル-シクロオクチルカーボネート)、フロラマット(花王株式会社商品名、エチル-2-t-ブチルシクロヘキシルカーボネート)等が挙げられる。
【0050】
アルデヒド類としては、n-オクタナール、n-ノナナール、n-デカナ-ル、n-ドデカナ-ル、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、トリプラール(IFF商品名、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド)、シクロベルタール(花王株式会社商品名、ジメチル-3-シクロヘキセニル-1-カルボキシアルデヒド)、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、ブルゲオナール(Givaudan社商品名、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール)、リラール(IFF社商品名、ヒドロキシマイラックアルデヒド)、ポレナールII(花王株式会社商品名、2-シクロヘキシルプロパナール)、リリアール(Givaudan社商品名、p-tert-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド)、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、フロラロゾン(IFF社商品名、3-(o-(およびp-)エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロピオンアルデヒド)、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール(IFF社商品名、アルファ-メチル-1,3-ベンゾジオキソール-5-プロパナール)等が挙げられる。
【0051】
ケトン類としては、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、3-オクタノン、ヘキシルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、ベルートン(フィルメニッヒ社商品名、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン)、ネクタリル(ジボダン社商品名、2-(2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル)シクロペンタノン)、イオノン、β-イオノン、メチルイオノン、メチルイオノン-G、γ-メチルイオノン、ダマスコン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、イソダマスコン(シムライズ社商品名、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキシル)-trans-2-ブタノン)、ダマセノン、ダイナスコン(フィルメニッヒ社商品名、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン)、イロン、カシュメラン(IFF社商品名、1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4H-インデン-4-オン)、イソ・イー・スーパー(IFF社商品名、1-(1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-エタン-1-オン)、カロン(フィルメニッヒ社商品名、7-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピン-3-オン)、カルボン、メントン、l-メントン、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、ラズベリーケトン、ベンゾフェノン、トナリド(PFW社商品名、6-アセチル-1,1,2,4,4,7-ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン)、β-メチルナフチルケトン、エチルマルトール、カンファー、ムスコン(3-メチルシクロペンタデカノン)、l-ムスコン((R)-3-メチルシクロペンタデカノン)、ムセノン(フィルメニッヒ社商品、3-メチル-5-シクロペンタデセン-1-オン)、シベトン、グロバノン(シムライズ社商品名、8-シクロヘキサデセノン)、メチルノニルケトン、cis-ジャスモン、フロラントンT(高砂香料工業株式会社商品名、1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフタレニル)エタノン)、ムスクTM-II(曽田香料株式会社商品名、5-シクロヘキサデセン-1-オン)、ムスクZ-4(IFF社商品名、(Z)-4-シクロペンタデセン-1-オン)、べルートン(フィルメニヒ社商品名、2,5,5-トリメチル-2-ペンチルシクロペンタノン)等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することでフローラルな甘さを強調する観点から、イオノン、ダマセノン、イソ・イー・スーパー、またはγ-メチルイオノンが好ましい。
【0052】
アセタール類としては、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールアセタール、ボアザンブレンフォルテ(花王株式会社商品名)、トロエナン(花王株式会社商品名)等が挙げられる。
【0053】
エーテル類としては、エチルリナロール、セドリルメチルエーテル、エストラゴール、アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、ネロールオキサイド、1,8-シネオール、ローズフラン、アンブロキサン(花王株式会社商品名、[3aR-(3aα,5aβ,9aα,9bβ)]ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン)、ハーバベール(花王株式会社商品名、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル)、ガラクソリド(IFF社商品名、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン)、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、ボアザンブレンフォルテ(花王株式会社商品名、エトキシメチルシクロドデシルエーテル)等が挙げられる。
【0054】
カルボン酸類としては、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、酪酸、2-ヘキセン酸等が挙げられる。
【0055】
化合物(I)を除くラクトン類としては、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘキサラクトン、γ-ジャスモラクトン、ウイスキーラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、11-オキサヘキサデカノリド、ブチリデンフタリド等が挙げられる。
【0056】
ニトリル類としては、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、ドデカンニトリル等が挙げられる。
【0057】
シッフ塩基類としては、オーランチオール、リガントラール等が挙げられる。
【0058】
天然精油や天然抽出物としては、オレンジ、レモン、ライム、ベルガモット、バニラ、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ロックローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチュリ、レモングラス、ラブダナム、グレープフルーツ、ユーカリ葉油、ガジャクウッド油等が挙げられる。
【0059】
これらのその他の香料の含有量は、調合香料の種類、目的とする香気の種類及び香気の強さ等により適宜選択することができるが、組成物中、その他の香料の含有量は、それぞれ、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、そして、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。また、その他の香料の含有量の合計は、組成物中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.95質量%以下である。
【0060】
本発明の組成物は、E体とZ体の比率が特定の割合である一般式(I)で表される化合物、及びその他の香料素材を含有させるベースとして、それ自身は匂いを持たない油剤を含有させることができる。このような油剤は、香料成分を均一に混合させ、製品に配合しやすく、適度な強度の香りを賦香しやすくすることができる。前記油剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル等のエステル、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤等が挙げられる。
【0061】
これらのなかでも、全ての香料成分の溶解性の観点から、前記油剤としては多価アルコールおよびエステルが好ましく、ジプロピレングリコールおよびミリスチン酸イソプロピルがより好ましい。かかる油剤の含有量は、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0062】
本発明は、本発明の組成物を含有する洗浄剤、本発明の組成物を含有する化粧料、および本発明の組成物を含有する繊維処理剤も提供する。
【0063】
本発明の洗浄剤としては、身体用洗浄剤、衣料用洗浄剤、硬質表面用洗浄剤が好ましく、身体用洗浄剤、衣料用洗浄剤がより好ましく、衣料用洗浄剤が更に好ましい。
【0064】
身体用洗浄剤の例としては、皮膚用洗浄剤、毛髪用洗浄剤、石鹸が挙げられ、皮膚用洗浄剤が好ましい。
【0065】
硬質表面用洗浄剤の例としては、多用途洗浄剤(All purpose Cleaner)、食器用洗浄剤が挙げられる。
【0066】
本発明の繊維処理剤としては、柔軟剤が好ましい。
【0067】
本発明の化粧料としては、香水、乳液、化粧水、日焼け止めが好ましく、香水がより好ましい。
【0068】
本発明の洗浄剤には、本発明の組成物以外に、陰イオン界面活性剤を含有することが好ましく、更に非イオン界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、溶媒、油剤、防腐剤、水等を配合することができる。
【0069】
本発明の繊維処理剤には、本発明の組成物以外に、陽イオン界面活性剤を含有することが好ましく、更にpH調整剤、溶媒、油剤、防腐剤、水等を配合することができる。
【0070】
本発明の香水には、本発明の組成物以外に、溶媒、水等を配合することができる。
【0071】
E体とZ体の比率が特定の割合である一般式(I)で表される化合物を含む本発明の組成物は、ムスク様組成物であって、前記のように、他の様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することができる。従って、本発明は、前記のように、前記組成物を賦香成分として使用する方法、具体的には、組成物、洗浄剤、化粧料又は繊維処理剤の賦香成分として使用する方法である。前記洗浄剤としては、身体用洗浄剤、衣料用洗浄剤、硬質表面用洗浄剤が好ましく、身体用洗浄剤、衣料用洗浄剤がより好ましく、衣料用洗浄剤が更に好ましい。前記身体用洗浄剤の例としては、皮膚用洗浄剤、毛髪用洗浄剤、石鹸が挙げられ、皮膚用洗浄剤が好ましい。前記硬質表面用洗浄剤の例としては、多用途洗浄剤(All purpose Cleaner)、食器用洗浄剤が挙げられる。前記化粧料としては、香水が好ましい。前記繊維処理剤としては、柔軟剤が好ましい。
【0072】
前記使用する方法において、前記組成物は、洗浄剤、化粧料又は柔軟剤に対して、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上そして、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下の量で使用する。この量で使用することにより、様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することが可能なムスクの香気を付与することができる。
【0073】
前記使用する方法において、前記組成物は、香水に対して、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で使用する。この量で使用することにより、様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することが可能なムスクの香気を付与することができる。
【0074】
前記使用する方法において、前記組成物を賦香成分として用いる組成物には、それ自身は匂いを持たない油剤を含有させてもよい。前記油剤については、前記組成物において説明したものと同様である。また、前記使用する方法において、前記組成物を賦香成分として用いる組成物には、前記組成物(すなわちE体とZ体の比率が特定の割合である一般式(I)で表される化合物を含む)以外に、その他の香料として、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料を含んでもよい。そのような、その他の香料としては、前記組成物において説明したものと同様である。
【0075】
前記使用する方法において前記組成物を賦香成分として用いる洗浄剤、化粧料又は柔軟剤には、それ自身は匂いを持たない油剤を含有させてもよい。前記油剤については、前記組成物において説明したものと同様である。また、前記使用する方法において、前記組成物を賦香成分として用いる洗浄剤、化粧料又は柔軟剤には、E体とZ体の比率が特定の割合である一般式(I)で表される化合物以外に、その他の香料として、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料を含んでもよい。そのような、その他の香料としては、前記組成物において説明したものと同様である。
【0076】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物を開示する。
【0077】
<1> 一般式(I)で表される化合物を含む組成物であって、前記一般式(I)で表される化合物のE体と前記一般式(I)で表される化合物のZ体の比率がE体/Z体=3/7以上7/3以下である組成物。
【化3】
【0078】
<2> 前記一般式(I)で表される化合物のE体と前記一般式(I)で表される化合物のZ体の比率が、E体/Z体=5/5以上7/3以下である<1>に記載の組成物。
【0079】
<3> 一般式(I)で表される化合物以外の香料を含有し、前記一般式(I)で表される化合物の含有量が、0.01質量%以上25質量%以下である<1>又は<2>の組成物。
【0080】
<4> 前記一般式(I)で表される化合物以外の香料が、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、エステル類、カーボネート類、化合物(I)を除くラクトン類、カルボン酸類、ニトリル類、シッフ塩基類、天然精油および天然抽出物のうち1種以上を含有する、<3>に記載の組成物。
【0081】
<5> 一般式(I)で表される化合物と、前記一般式(I)で表される化合物以外の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/前記一般式(I)で表される化合物以外の香料〕が1/1000以上、より好ましくは5/1000以上、より好ましくは10/1000以上である<3>又は<4>記載の組成物。
【0082】
<6>一般式(I)で表される化合物と、前記一般式(I)で表される化合物以外の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/前記一般式(I)で表される化合物以外の香料〕が100/1000以下、より好ましくは50/1000以下、より好ましくは25/1000以下である<3>~<5>いずれか一項記載の組成物。
【0083】
<7> 前記一般式(I)で表される化合物以外の香料が、エステル類、より好ましくは、ジヒドロジャスモン酸メチルである<3>~<6>いずれか一項記載の組成物。
【0084】
<8> 一般式(I)で表される化合物と、前記エステル類の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/エステル類の香料〕が1/1000以上、より好ましくは10/1000以上、より好ましくは20/1000以上である<7>記載の組成物。
【0085】
<9> 一般式(I)で表される化合物と、前記エステル類の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/エステル類の香料〕が100/1000以下、より好ましくは50/1000以下、より好ましくは40/1000以下である<7>又は<8>記載の組成物。
【0086】
<10> 前記一般式(I)で表される化合物以外の香料が、エーテル類、より好ましくは、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピランである<3>又は<4>に記載の組成物。
【0087】
<11> 一般式(I)で表される化合物と、前記エーテル類の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/エーテル類の香料〕が1/1000以上、より好ましくは5/1000以上、より好ましくは10/1000以上である<10>記載の組成物。
【0088】
<12> 一般式(I)で表される化合物と、前記エーテル類の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/エーテル類の香料〕が100/1000以下、より好ましくは50/1000以下、より好ましくは25/1000以下である<10>又は<11>記載の組成物。
【0089】
<13> 前記一般式(I)で表される化合物以外の香料が、アルコール類、より好ましくは、芳香族アルコール、より好ましくはフェニルエチルアルコールである<3>又は<4>に記載の香料組成物。
【0090】
<14> 一般式(I)で表される化合物と、前記アルコール類の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/アルコール類の香料〕が1/1000以上、より好ましくは5/1000以上、より好ましくは10/1000以上である<13>記載の組成物。
【0091】
<15> 一般式(I)で表される化合物と、前記アルコール類の香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/アルコール類の香料〕が100/1000以下、より好ましくは50/1000以下、より好ましくは25/1000以下である<13>又は<14>記載の組成物。
【0092】
<16> 前記一般式(I)で表される化合物以外の香料が、化合物(I)以外のムスク系香料、より好ましくはガラクソリド(IFF社商品名、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン)、ハバノリド(フィルメニヒ社商品名、シクロペンタデセノリド)、l-ムスコン((R)-3-メチルシクロペンタデカノン)、ムスコン(3-メチルシクロペンタデカノン)、ムスクTM-II(曽田香料株式会社商品名、5-シクロヘキサデセン-1-オン)及びムスクZ-4(IFF社商品名、(Z)-4-シクロペンタデセン-1-オン)から選ばれる1種以上である<3>~<15>いずれか1項記載の組成物。
【0093】
<17> 一般式(I)で表される化合物と、前記ムスク系香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/ムスク系香料〕が1/1000以上、より好ましくは5/1000以上、より好ましくは10/1000以上である<16>記載の組成物。
【0094】
<18> 一般式(I)で表される化合物と、前記ムスク系香料の比率、〔一般式(I)で表される化合物/ムスク系香料〕が100/1000以下、より好ましくは50/1000以下、より好ましくは25/1000以下である<16>又は<17>記載の組成物。
【0095】
<19> <1>~<18>いずれか一項記載の組成物を含有する洗浄剤。
【0096】
<20> <1>~<18>いずれか一項記載の組成物を含有する化粧料。
【0097】
<21> <1>~<18>いずれか一項記載の組成物を含有する繊維処理剤。
【0098】
<22> <1>~<18>に記載の組成物を賦香成分として使用する方法。
【0099】
<23> <1>~<18>に記載の組成物を賦香成分としての使用。
【0100】
<24> <1>~<18>に記載の組成物を賦香成分として香り全体を強める方法。
【0101】
<25> <1>~<18>に記載の組成物を賦香成分として香り全体を強めるための使用。
【0102】
<26> <1>~<18>に記載の組成物を賦香成分としてムスクの柔らかさを足す方法。
【0103】
<27> <1>~<18>に記載の組成物を賦香成分としてムスクの柔らかさを足すための使用。
【0104】
[実施例]
以下の実施例及び比較例等において行った測定法の詳細を以下にまとめて示す。
【0105】
〔化合物の同定〕
以下の製造例で得られた各化合物は、1H-NMRおよびガスクロマトグラフ質量(GC-MS)分析計(島津製作所社製、型式:GC-2010)のスペクトル分析により得たデータと、公知文献等により開示された化合物データとが合致することにより化合物を同定した。
【0106】
〔香気評価〕
調香・香料評価業務経験者2名により、におい紙法により香調と強度を判定した。におい紙(幅6mm長さ150mmの香料試験紙)の先端約5mmを、試料に浸漬し、評価した。
【0107】
香気は、副次的に感じられる香り(副香気)を付記した。調合香料の評価は、本発明の組成物を含まないものをブランクとし、ブランクからの香調の変化を評価した。
【0108】
実施例で用いた化合物(I)のE体とZ体は、以下の製造例により製造した。
【0109】
なお、化合物(I)のE体は、(E)―オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンであり、化合物(I)のZ体は、(Z)―オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンである。
【0110】
[製造例1]
E体/Z体の比率が91/9である、オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オン混合物の合成方法
[製造例1]
(a)9-デセニル-7-オクテノアートの製造
フラスコに、9-デセン-1-オール(東京化成工業株式会社製、2.2g、14.0ミリモル)および7-オクテン酸(アルドリッチ社製、2.0g、14.0ミリモル)を仕込み、ジクロロメタン(30mL)に溶解させた。続いて前記フラスコ中に、1-エチル-3(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(3.2g、16.8ミリモル)とN,N'-ジメチルアミノピリジン(171mg、1.4ミリモル)を添加し、窒素気流下、室温で3時間反応させた。反応終了液に塩化アンモニウム水溶液を加えて攪拌後、静置分層して水層を抜き出し、油層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムを加えて脱水乾燥した。濾過した後に前記油層からジクロロメタンを留去し、9-デセニル-7-オクテノアート(3.9g、14.0ミリモル)を粗収率100%で得た。
【0111】
(b)(E)―オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンの製造
三口フラスコに、前記工程(a)において得られた9-デセニル-7-オクテノアート(3.3g、11.8ミリモル)、ジクロロメタン(3L)、および下記式に示すメタセシス触媒(商品名「Umicore M2」、ユミコアジャパン株式会社製、194mg、0.21ミリモル)を仕込み、窒素気流下24時間加熱還流(50℃)を行った後、下記式に示すメタセシス触媒を130mg(0.14ミリモル)追加添加し、更に5時間撹拌を続けた。反応終了液のガスクロマトグラフィー定量分析を行ったところ、オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンが2.0g(E/Z=70/30、7.9ミリモル、収率67%)含まれていた。
【0112】
【化4】
【0113】
この反応溶液からジクロロメタンを留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n-ヘキサン:酢酸エチル=95:5)で精製し、(E)―オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンを0.3g(E/Z=91/9)得た。
【0114】
[製造例2]
E体/Z体の比率が2/98であるオキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンの混合物の合成方法
三口フラスコに、製造例1(a)で得られた9-デセニル-7-オクテノアート(0.9g、3.2ミリモル)、ジクロロメタン(1.1L)、および下記式に示すメタセシス触媒(アルドリッチ社製、100mg、0.16ミリモル)を仕込み、窒素気流下24時間加熱還流(50℃)を行った後、下記式に示すメタセシス触媒を100mg(0.16ミリモル)追加添加し、更に24時間撹拌を続けた。反応終了液のガスクロマトグラフィー定量分析を行ったところ、(Z)―オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンが0.4g(E/Z=2/98、1.6ミリモル、収率49%)含まれていた。
【0115】
【化5】
【0116】
この反応溶液からジクロロメタンを留去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒は、n-ヘキサン:酢酸エチル=99:1)で精製し、(Z)―オキサシクロヘプタデク―8―エン-2-オンを0.3g(E/Z=2/98)得た。
【0117】
[実施例1~3および比較例1~4]
製造例1で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=91/9)と製造例2で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=2/98)を用いて、表1に示す組成の組成物を調製し、香気評価を行った。香気評価の結果も表1に示す。
【0118】
【化6】
【0119】
【表1】
【0120】
前記表1に示すように、比較例の組成物はやや甘さのあるムスクや、はっきりとした輪郭のあるしっとりとしたムスクの香気を有することが確認できた。一方、本発明の組成物は、比較例1および4と比べてしっとりとした香りが強く、アルデヒド様の甘さがあるムスクの香気を有することが確認できた。
【0121】
[実施例4~6及び比較例5~9]
製造例1で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=91/9)と製造例2で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=2/98)を用いて、表2に示す組成の香水を調製した。得られた香水の香気評価を行い、その香気評価の結果は表3に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
1)アンブロキサン(花王株式会社商品名、[3aR-(3aα,5aβ,9aα,9bβ)]ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン)
2)D.P.G:ジプロピレングリコール、
3)MDJ(花王株式会社商品名、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル (2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート)、
4)イソ・イー・スーパー(IFF社商品名、1-(1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)-エタン-1-オン)、
5)リファローム(IFF社商品名、cis-3-ヘキセニルメチルカーボネート)、
6)リリアール(Givaudan社商品名、p-tert-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド)、
7)ベルートン(フィルメニッヒ社商品名、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン)、
8)アンバーコア(花王株式会社商品名、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール)、サンダルマイソールコア(花王株式会社商品名、
9)フロローサ(ジボダン社商品名、化学名:4-メチル-2-(2-メチルプロピル)テトラヒドロ-2H-4-ピラノール)。
【0124】
【表3】
【0125】
表3に示すように、比較例の香水は、化合物(I)を含まないブランク(比較例5)よりムスクの甘さが足されたり、全体が調和することが確認できた。一方、本発明の香水は、化合物(I)を含まないブランク(比較例5)よりムスクの甘さが足され、全体が調和し、かつ、アルデヒド様の甘さにより香り全体が強くなることが確認できた。
【0126】
[実施例7~9及び比較例10~14]
製造例1で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=91/9)と製造例2で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=2/98)を用いて、表4に示す組成の香水を調製した。得られた香水の香気評価を行い、その香気評価の結果は表5に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
1)アンバーコア(花王株式会社商品名、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール)、
2)アンブリノール(商品名、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-ナフタレン-2-オール)、
3)アンブリノール20T(高砂香料工業株式会社商品名、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロ-2,5,5-トリメチル-ナフタレン-2-オール)、
4)アンブロテック(花王株式会社商品名、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン)、
5)アンブロキサン(花王株式会社商品名、[3aR-(3aα,5aβ,9aα,9bβ)]ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン)、
6)ボアザンブレンフォルテ(花王株式会社商品名、エトキシメチルシクロドデシルエーテル)、
7)D.P.G:ジプロピレングリコール、
8)フロラントンT(高砂香料工業株式会社商品名、1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-2-ナフタレニル)エタノン、
9)フロレックス(フィルメニヒ社商品名、6-エチリデンオクタハイドロ-5,8-メタノ-2H-1-ベンゾピラン)、
10)ガラクソリド(IFF社商品名、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン)、
11)グロバノン(シムライズ社商品名、8-シクロヘキサデセノン)、
12)ハバノリド(フィルメニヒ社商品名、シクロペンタデセノリド)、
13)インドレン50BB(IFF社商品名、7,7-ビス(1H-インドール-3-イル)-1,1,5-トリメチル-1-ヘプタノール、
14)l-ムスコン((R)-3-メチルシクロペンタデカノン)、
15)ムスコン(3-メチルシクロペンタデカノン)、
16)ムスクTM-II(曽田香料株式会社商品名、5-シクロヘキサデセン-1-オン)、
17)ムスクZ-4(IFF社商品名、(Z)-4-シクロペンタデセン-1-オン)、
18)ポリメフロール(高砂香料工業株式会社商品名、1-(2-メチル-2-プロペニルオキシ)-2,2,4-トリメチルペンタン-3-オール)
【0129】
【表5】
【0130】
表5に示すように、比較例の香水は、化合物(I)を含まないブランク(比較例10)よりムスクの甘さが足されることが確認できた。一方、本発明の香水は、化合物(I)を含まないブランク(比較例10)よりムスクの甘さが足され、全体が調和し、かつ、香りが立体的になり、清潔感が出ることが確認できた。
【0131】
[実施例10~12及び比較例15~19]
製造例1で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=91/9)と製造例2で得られた化合物(I)の混合物(ただしE体/Z体=2/98)を用いて、表6に示す組成の香水を調製した。得られた香水の香気評価を行い、その香気評価の結果は表7に示す。
【0132】
【表6】
【0133】
1)α-テルピネオール(2-(4-メチルシクロヘキサー-3-エニル)プロパン-2-オール)、
2)I.P.M(ミリスチン酸イソプロピル)、
3)MDJ(花王株式会社商品名、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル (2-ペンチル-3-オキソシクロペンチル)アセテート)、
4)トリプラール(IFF商品名、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド)
5)べルートン(フィルメニヒ社商品名、2,5,5-トリメチル-2-ペンチルシクロペンタノン)
【0134】
【表7】
【0135】
表7に示すように、比較例の香水は、化合物(I)を含まないブランク(比較例15)よりムスクの甘さが足されることが確認できた。一方、本発明の香水は、化合物(I)を含まないブランク(比較例15)よりムスクの甘さが足され、ローズの香りが柔らかく広がり、香り全体のボリューム感が強まることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の組成物は、香料として有用なムスク調の香気を有するため、香料素材として用いることができる。また、本発明の組成物は、他の様々な香料との調和性に優れ、調合することで特徴的な香りの効果を創出することが可能なため、賦香成分として使用できる。