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特許7319994自動障害復旧および/または障害回避ユニットを有する積層造形装置およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】自動障害復旧および/または障害回避ユニットを有する積層造形装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/35 20170101AFI20230726BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20230726BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230726BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230726BHJP
【FI】
B29C64/35
B29C64/129
B29C64/393
B33Y30/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020551297
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019059222
(87)【国際公開番号】W WO2019197521
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】PA201870215
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】517388853
【氏名又は名称】アディファブ アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】イェスン、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】セーレンセン、ピーター ルン
(72)【発明者】
【氏名】マドセン、 ヤン
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/165832(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0292862(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050389(US,A1)
【文献】特開2009-214305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト(380)を積層造形する積層造形装置(150)であって、
-床(105)を有し、少なくとも1つの造形材料(110)を受け入れる造形槽(100)と、
-積層造形中の、または積層造形された少なくとも1つのオブジェクト(380)を保持および/または支持するビルドサーフェス(115)を有するビルドプラットフォーム(120)と、
-前記ビルドプラットフォーム(120)を前記造形槽(100)の内外に移動させることを可能にする移動機構(500)と、
-前記造形槽(100)に収容された前記少なくとも1つの造形材料(110)の少なくとも一部を選択的に固化させるためにエネルギーを供給するエネルギー源(200)と、
-前記造形槽(100)から検出されたデブリを除去するデブリ除去システムを有する、検出されたデブリ(700)を前記造形槽(100)から除去するデブリ排除システムと、
を備え
前記デブリ排除システムは、前記造形槽(100)において、前記少なくとも1つの造形材料(110)内に位置する前記デブリ(700)に押し付けられたときに圧縮または変形することにより前記デブリ(700)が固定される、圧縮可能または変形可能な材料(140)を備える、積層造形装置(150)。
【請求項2】
前記造形槽(100)内のデブリ(700)の存在を検出するデブリ検出システムをさらに備える、
請求項1に記載の積層造形装置(150)。
【請求項3】
前記造形槽(100)に収容された前記少なくとも1つの造形材料(110)を通って、前記造形槽(100)の前記床(105)に向けておよび/または前記床(105)に前記圧縮可能または変形可能な材料(140)を移動させて、前記造形槽(100)の前記床(105)に向けておよび/または前記床(105)にデブリ(700)を押し付ける、
請求項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項4】
前記圧縮可能または変形可能な材料(140)が、
-圧縮可能または変形可能な材料(140)の別々のセクションを画定する、いくつかの間隔を空けた空洞または同様のものを含み、および/または、
-前記少なくとも1つの造形材料(110)の色と高いコントラストを有する色を有する、
請求項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項5】
前記積層造形装置(150)が、前記デブリ(700)を取り囲む前記造形材料(110)を固化するので、前記圧縮可能または変形可能な材料(140)が前記造形槽(100)の前記床(105)に向けてまたはその上に移動すると、前記デブリ(700)は前記圧縮可能または変形可能な材料(140)に接続する、
請求項またはに記載の積層造形装置(150)。
【請求項6】
前記デブリ検出システムは、
-前記造形槽(100)の下方に配置され、前記造形槽(100)の前記床(105)を通して下方から撮像する第1カメラまたは撮像装置(300)、および/または
-前記少なくとも1つの造形材料(110)が前記造形槽(100)内に収容されている場合に、前記造形槽(100)の前記床(105)の上面および/または前記少なくとも1つの造形材料(110)の表面を上方から撮像する、前記造形槽(100)の上方に配置された第2カメラまたは撮像装置(400)
を備える、
請求項2に記載の積層造形装置(150)。
【請求項7】
1以上の撮影画像を処理し、分析して、前記造形槽(100)内に前記デブリ(700)が存在するか否かを判定する、
請求項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項8】
前記造形槽(100)内で検出されたデブリ(700)の周囲またはデブリ(700)のある箇所で、前記少なくとも1つの造形材料(110)の少なくとも一部を選択的に固化させて前記デブリ(700)の除去を促進する、
請求項1からのいずれか一項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項9】
-造形槽(100)の底部または下側を下方から照明する1以上の光源(310、320)、および/または
-前記少なくとも1つの造形材料(110)が上方から造形槽(100)内に収容される場合に、前記造形槽(100)の前記床(105)の上面および/または前記少なくとも1つの造形材料(110)の表面を上方から照明する1以上の光源(350)
を備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの造形材料(110)は、透明または半透明であり、
前記積層造形装置(150)は、
下方および/または上方から1以上の光源(310、320、350)によって照明されたときに、前記造形槽(100)の前記床(105)を通して明るい領域および暗い領域のパターンを作り出す、前記造形槽(100)の下方に配置された、透明または半透明のコントラスト要素(375)をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項11】
前記造形槽(100)の前記床(105)は、光学的に透明または半透明である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項12】
前記造形槽(100)の前記床(105)は、前記エネルギー源(200)に対してエネルギー透過性がある、
請求項1から11のいずれか一項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの造形材料(110)が前記造形槽(100)内に収容されている場合に、前記造形槽(100)の前記床(105)の表面および/または前記少なくとも1つの造形材料(110)の表面を下方から撮像する、前記造形槽(100)の下方に配置された第1カメラまたは撮像装置(00)を備え、
前記造形槽(100)の前記床(105)は、変形可能であり、
前記第1カメラまたは撮像装置(00)は、前記床(105)が層引き離し機構(390)によって変形されて製造されたオブジェクト(380)の少なくとも一部を引き離す場合に、前記造形槽(100)の前記床(105)の1以上の画像を撮像する、
請求項1から12のいずれか一項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項14】
前記造形槽(100)の前記床(105)は、柔軟性があり、
前記積層造形装置(150)は、
漸進的かつ制御された剥離によって、前記柔軟性がある床(105)から製造されたオブジェクト(380)の最後に形成された層を引き離す、層引き離し機構(390)を備え、
カメラ(200、300、400)は、引き離しが実行中である、実行された、または部分的にもしくは完全に実行されなかった領域におけるコントラストおよび/または色の漸進的な変化の有無を含む剥離パターンを撮像する、
請求項1から13のいずれか一項に記載の積層造形装置(150)。
【請求項15】
前記撮像された剥離パターンを表すデータが、予想されるまたは以前に撮像された剥離パターンと比較され、分析されて、引き離し不良が生じたか、または生じた可能性がないかを判定する、
請求項14に記載の積層造形装置(150)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、製品を製造するための積層造形装置に関し、積層造形装置は、自動の積層造形を可能にする障害復旧および/または障害回避ユニットを備える。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティングとも呼ばれる積層造形法は、重要な製品開発手段となっている。3Dプリンタによって大幅に進歩している3つの領域としてラピッドプロトタイピング、反復設計(iterative design)、および概念検証(concept validation)が挙げられる。今日の市場においては数種類の3Dプリンティングプラットフォームが流通しており、それぞれのプラットフォームに重要な特性と利点を活用して、商品開発者はデザインモデル、デモンストレータ、機能プロトタイプおよび製品検証のための少バッチの部品を作成している。
【0003】
積層造形に関する多くの開発は、より品質の一貫した製品の大量生産に向けた能力の向上、製品あたりの製造コストの削減に向けた能力の向上などを目的としている。
【0004】
製品あたりの製造コストの削減を目指す1つのトレンドは、積層造形のユーザに提供される自動化のレベルを高めることである。自動化のレベルを高めることは、場合によっては、より低コストかつより高いレベルでのスタッフの活用を可能にするもので、作業効率の向上に寄与する。さらに、自動化は、品質保証の自動化を通じて、より堅牢なプロセスおよび向上したプロセス出力品質をサポートすることができる(例えば、その全体が本出願に組み込まれる国際公開第2016/177894号を参照)。
【0005】
自動エラー検出は、プリントジョブの終了前、またはプリント製品の引き離しの前に、欠陥のある出力を特定できる、積層造形の品質保証の自動化において重要な要素である。早期の特定により、障害のあるジョブを早期に中断できるため、材料および資源を節約し、コストのかかる製品のリコールを防ぐことができる。また、製造業者は、コストのかかるプロセス後の性能検証から離れて、代わりに処理中の品質保証を行うことができる。
【0006】
視覚制御および画像分析は、多くの自動エラー検出パラダイムにおいて重要な役割を果たし、業界全体で広く使用されている。積層造形の自動化の台頭により、他の産業で使用されている視覚制御概念の改作物を、積層造形システムで使用できるようになった。例えば、国際公開第2017/087451号は、光学画像解析を適用して、選択的レーザー焼結に基づく積層造形プロセスによって造形されたオブジェクトの個々の層におけるエラーを検出するシステムを開示している。米国特許出願公開第2015/0045928号は、エラーが検出された場合に積層造形プロセスを中断するために、コンピュータ分析と組み合わされた、より包括的な視覚ベースのアプローチを適用している。中断の後、同じジョブの2回目の試行が開始されてもよい。あるいは、(例えば、障害モード分析を可能にするために)ジョブはスキップされ、新しいジョブが開始されてもよい。
【0007】
他のほとんどの産業でそうであるように、先行技術文献によって開示されたエラー検出方法は、積層造形された製品の品質を仕様に準拠させることを目的としている。したがって、分析の対象は個々の造形物であり、その目的は、この個別の造形物を構成する構成要素内のエラーを特定し、時間と材料の浪費を回避するために、欠陥のある造形を可能な限り早期に中止できるようにすることである。
【0008】
しかし、このアプローチに関連する第1の未解決の課題は、所与の造形物の1以上の構成要素に現れないものの、造形プロセス問題を引き起こす可能性があるエラーが検出されない可能性があることである。例えば、(国際公開第2017/087451号に開示されているような)造形された構成要素の各層の検査に基づいたエラー検出方法は、層の外側に現れるエラーを検出することができない場合がある。そのようなエラーは例えば、造形の失敗から生じる、もろい構成要素の破片、または造形ゾーンにおけるデブリの漸進的な蓄積に関連し得る。同様の問題は、(米国特許出願公開第2015/0045928号に開示されているような)積層造形されたオブジェクトの画像の検査に基づいたエラー検出方法で見られ、特に、そのようなオブジェクトの撮像が造形ゾーンから離れて行われる場合に見られる。
【0009】
さらに、欠陥のある造形ジョブの検出およびその後の中断は、時間や材料の浪費、ならびに欠陥のある製品の引き離しを防ぐことはできても、欠陥を引き起こす問題を必ずしも解決するものではない。また、検出は、必ずしも、運転再開のための積層造形システムの準備をするわけではない。
【0010】
したがって、自動製造を意図したシステムでは、自動エラー検出とそれに続く自動エラー解決とを有することが有益である。積層造形のコンピュータ-物理的な性質は、有効なエラー解決がソフトウェアおよびハードウェアの適切な機能性の両方を含むことを求めることが多い。
【0011】
自動エラー解決を実行するためのソフトウェア機能は、幾つかの文献および先行技術文献に記載されている。例えば、国際公開第2017/087451号および米国特許出願公開第2015/0045928号の両方は、様々なタイプの自動の障害モード分析、機械学習、または同様のものを使用することで、所与の積層造形プロセスからの出力を反復的に改善するための様々な方法を記載している。これらの方法は通常、構成要素全体または個々の層が形成されるごとの目視検査を含み、プリントジョブ仕様への準拠を達成するために必要な反復回数を減らしながら、積層造形システムのパフォーマンスを継続的に改善することを目的としている。
【0012】
ある先行技術文献によって自動エラー解決のためのソフトウェアが開示されているが、自動的な物理的エラーの解決についてはあまり探求されていない。自動化の積層造形における物理的エラー解決に関連する第1の課題は、積層造形プロセスの技術的多様性である。現在、米国材料試験協会(ASTM)は、7つの異なる積層造形技術を識別している(ASTM F2792-12a参照)。しかしながら、1つのタイプの積層造形プロセスにおけるエラーを軽減するために実施され得る1つの手段は、異なるタイプの積層造形プロセスに適用しても役に立たない場合がある。例えば、米国特許出願公開第2015/0045928号は、新しいジョブのためにビルドサーフェスを準備するべく、ブレードによって、このビルドサーフェスから障害オブジェクトを取り除く、ブレード手段による自動パーツ除去について言及している。この手段は、造形ゾーンへの材料押出に基づく積層造形プロセスには有用であり得るが、槽光重合プロセスで生じるエラーを適切に解決することができない可能性がある。
【0013】
槽光重合法では、槽内の液体フォトポリマーが光活性化重合によって選択的に固化され、所望の構成要素を生成する。槽光重合プロセスにおけるエラーでは、通常、部分的にまたは完全に形成された欠陥のある構成要素をビルドサーフェスから除去する必要がある。
この課題は、材料押出システムのエラーに起因する課題と同様のものであり、場合によっては、同じ手段によって解決されるものである。
【0014】
しかし、エラーが発生すると、造形槽にデブリが残ることがよくある。このようなデブリは、障害造形物をビルドサーフェスから除去するために用いられる手段では除去されない可能性があり、槽光重合システムの自動運転をサポートするために自動的に解決されなければならない複数の問題を引き起こす可能性がある。
【0015】
第1の問題は、造形槽に残された最初の障害造形物からのデブリが1以上の後続の造形物を汚染するようになる可能性があることである。このような汚染は、特にデブリが小さい場合は、完成した造形物では検出が難しい場合があり、製品の性能や美的品質に悪影響を与える可能性がある。
【0016】
造形槽の下方に配置された光源を有するシステム(いわゆる、下部投射の光造形システム)に特有の第2の問題は、ビルドサーフェスを有するビルドプレーンが最初に造形槽底部(内側)の面から1層分の厚みだけ上の距離だけ下げられる場合、造形槽内に残されたデブリが造形槽底部の上面とビルドプレーンの下面との間に引っかかってしまう可能性があるということである。デブリが比較的大きい場合、ビルドプレーンが所望の初期位置まで下がるのを完全に妨げる可能性がある。しかし、ビルドプレーンを所望の初期位置まで下げるのに十分なほど小さいまたは圧縮可能なデブリであっても、重大な問題を引き起こす可能性はある。
【0017】
下部投射システムでは、造形槽は通常、固化後に造形槽の底部から重合層の分離を可能にする非粘着性ホイルまたは他の膜を備える。このような膜は、通常、表面の損傷に非常に敏感であり、(ピンセットやその他の手動ツールを使ってデブリを手動で除去した結果などの)わずかな損傷でさえ、膜の性能に大きな影響を与え得る。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも1以上を、少なくともある程度軽減することである。
【0019】
したがって、第1のデブリ除去目的は、少なくともいくつかの実施形態では、造形槽から大きなデブリを除去するのに、ピンセットまたは手で操作する他のオブジェクトまたはツールを使う必要をなくすことである。実質的な膜の損傷は、下降するビルドプレーンのビルドサーフェスによってそのような膜に押し込まれる小さなデブリからも生じ得るので、第2のデブリ除去目的は、少なくともいくつかの実施形態では、造形を開始する前に造形槽からわずかなデブリでさえも確実に除去することである。第3に、さらなるデブリ除去の目的は、少なくともいくつかの実施形態では、そもそものデブリの発生を容易に防ぐことである。
【0020】
本発明の一態様は、請求項1に定義される。
【0021】
したがって、本発明の一態様では、好ましくは下部投射である、オブジェクトを積層造形する積層造形装置であって、
-床を有し、少なくとも1つの造形材料(すなわち、積層造形によって製造されるオブジェクトを形成する材料)を受け入れる造形槽と、
-積層造形中の、または積層造形された少なくとも1つのオブジェクトを保持および/または支持するためのビルドサーフェスを有するビルドプラットフォームと、
-ビルドプラットフォームを造形槽に出し入れすること(およびビルドプラットフォームを造形槽内に移動すること)を可能にする移動機構と、
-造形槽に収容された少なくとも1つの造形材料の少なくとも一部を選択的に固化するエネルギーを提供するエネルギー源と、
-造形槽から検出されたデブリを除去するデブリ除去システムを備える、検出されたデブリを造形槽から除去するデブリ排除システムと、
を備える積層造形装置を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、造形槽内のデブリの存在を検出するデブリ検出システムをさらに備える。
【0023】
このようにして、造形前、造形中、または造形後に造形槽からデブリを自動的に検出および/または除去することができ、それによって操作者の介在なしに継続的な操作を可能にする槽積層造形装置、特に槽光重合積層造形装置が提供される。
【0024】
デブリ検出システムのない実施形態では、オプションは、本明細書に開示されるようなデブリ除去システムを適切な時点で、ただ作動させることであり、それにより、存在する任意のデブリが、例えば、関連するオブジェクトを積層造形して取り出した後または他の時点において、ただ除去される。
【0025】
いくつかの実施形態はまた、デブリ排除システムまたはデブリ除去システムではなく、本明細書に開示されるようなデブリ検出システムを開示し得るが、それにより、手動動作をさせるデブリ検出のみをする。しかし、そのようなシステムは、その後、デブリ除去の自動処理を可能にしない。
【0026】
いくつかの実施形態では、積層造形装置がエネルギーの通過に対して透明な造形槽の床を有する造形槽を備える。実施形態のサブセットでは、非粘着性ホイルまたは膜が床の上面に配置され、積層造形されたオブジェクトが造形槽の床に付着することを防ぐ。実施形態の特定のサブセットでは、非粘着性ホイルは床に取り付けられるが、他の実施形態ではホイルは取り付けられない。いくつかの実施形態では、ホイルは支持床上に緩く置かれ、さらにいくつかの実施形態では、ホイルはドラムのように張力がかけられ、床によって支持されてもよい。さらに別のサブセットの実施形態では、膜は透過性であり、積層造形されたオブジェクトの床への付着を防ぐ物質の通過を可能にする。他の実施形態は、造形槽の床への部品の付着を防ぐための他の設備または要素を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、造形槽の床に垂直な向き(または側面、斜め上方、湾曲した向きなどの別の/他の向き)で造形槽内に下ろされ、造形槽から持ち上げられるビルドプラットフォームを含む。特定の実施形態は、真空補助されたビルドプラットフォームを含む。さらにより具体的な実施形態は、ビルドプレートの自動交替を可能にする、真空補助されたビルドプラットフォームを用いる。いくつかの実施形態では、ビルドプレートは、積層造形されたオブジェクトの付着を促進するように最適化された(例えば、粗さ、溝、窪み、真空補助等を有する)ビルドサーフェスを備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、造形槽内に配置されたエネルギー硬化性液体の選択的固化を促進するエネルギー源を含む。特定の一組の実施形態では、印加されるエネルギーは、紫外線(UV)光であり、液体はUV硬化性樹脂である。より特定の一組の実施形態では、エネルギー源は、UV-DLP(UVデジタル光プロセッサ)またはLCD(液晶ディスプレイ)プロジェクタであるが、他の実施形態では、単一光線レーザーに基づいている。特定の一組の実施形態では、エネルギー源は、造形槽の下方に配置される。
【0029】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、1以上のカメラを備えるデブリ検出システムを備える。実施形態の特定のサブセットでは、1以上のカメラが造形槽の上方に配置され、他の実施形態は、造形槽の下方に配置されたカメラを備える。さらに他の実施形態では、カメラは、造形槽の上下両方に配置される。いくつかの実施形態は、位置が固定されたカメラを用いるが、他の実施形態は、移動可能なカメラを用いる。実施形態の特定のサブセットは、移動可能なカメラおよび位置が固定されたカメラ両方を用いる。
【0030】
実施形態のより具体的なサブセットは、多色カメラを用いるが、他の実施形態は単色カメラを用いる。デブリ検出が、デブリを含む領域とデブリのない領域との間のエッジまたは境界の検出に基づく場合、単色カメラは、その高いコントラスト比のために特に有利である。特に有利な実施形態は、樹脂であるエネルギー硬化性液体を使用する場合に特に有利である、約530nmの目標波長に調整された単色カメラを用いる。他のタイプのエネルギー硬化性液体は、他のそれぞれの目標波長を有することができる。他の実施形態は、例えば、特定の色のエネルギー硬化性液体の検出を強化するために、他の目標波長に調整されるカメラを用いる。いくつかの実施形態では、フィルタを利用して、目標波長とは異なる波長の光の入りをさらに低減し、信号/ノイズ比をさらに改善してもよい。
【0031】
実施形態の特に有利なサブセットは、キャニー法および関連するアルゴリズムを用いて、エッジまたは境界の検出をさらに強化する。さらにより有利な実施形態は、空隙の存在が、デブリの存在と等しい場合、空隙(エッジまたは境界がなく、所定の閾値を超えるサイズを有する領域として定義される)の検出にキャニー法を用いる。いくつかの実施形態は、空隙の二項分類(閾値を超えるか超えないか)を用いるが、他の実施形態は、より詳細な分類を用いる。そのような分類は、いくつかの実施形態では、膜の健全性の監視をサポートするために、デブリ位置情報と組み合わせることができる。他の実施形態は、空隙の分類をオブジェクトの形状に関する情報と組み合わせて、統計分析、根本原因分析、障害モード分析、または他のタイプの分析をサポートする。
【0032】
いくつかの実施形態は、5メガピクセルの解像度を有するカメラを備えるが、他の実施形態は、より低い解像度またはより高い解像度を有するカメラを備える。より高い解像度は、非常に小さなデブリを検出することが目標である場合に特に有利である。
【0033】
高解像度は、デブリの形成を完全に回避することを目標とする場合にも有利であり得る。いくつかの実施形態では、そのようなデブリの回避は、層引き離しパターンの連続的な監視に基づくことができる。層は、層が固化され、ビルドプラットフォームが次の層の固化に備えて移動機構によって持ち上げられるときに引き離され、異なる積層造形装置は、異なる層引き離し機構を用いる。特に有利な層引き離し機構が、本明細書にその全体が組み込まれている国際公開第2016/177893号に開示されている。この機構は、造形槽の床の変形機構を用いて、造形槽の床の長さに沿った波または傾斜を発生させて、積層造形されたオブジェクトから床を引き剥がすことで、造形槽の床から積層造形されたオブジェクトを制御可能かつ再現可能な形で引き離す。
【0034】
いくつかの実施形態では、槽の底部は、柔軟性があるガラス板、剛性がある(しかし依然として柔軟性がある)ポリマー板、または同様のものに取り付けられたホイルである。いくつかの代替の実施形態では、ホイルは、造形材料を収容するための空洞を画定する槽の壁と壁の間で、ドラムのように張力をかけられる。空洞に含まれる造形材料の重さ(および積層造形中のオブジェクトの動き)は、ホイルを上下に動かす。ホイルの下には、ガラス板または同様のもの(例えば、柔軟性があるもの)が、例えば、約0.01mmといった短い間隔で配置される。ビルドプレートに固定されたオブジェクトは、ホイルをガラスプレートに向けて押して高いコントラストを得て、次の層を固化のためにオブジェクトを持ち上げると、コントラストが低下または消失する。いくつかのさらなる実施形態では、間隔は、例えば約0.5mmなど、より大きくてもよく、オブジェクトは、コントラストを提供するためにガラスプレートに向かって下降させられ、その後、再び上昇させられる。
【0035】
好ましい実施形態では、この剥離は、制御された漸進的な動きで起こり、引き離しが実行された領域におけるコントラストまたは色の漸進的な変化を含む剥離パターンとして、下部カメラ(槽の下方に配置されたカメラ)によって撮像され得る。剥離パターンのずれを体系的に監視することで、障害モードの検出と継続的な改善がサポートされ得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、所望または予想される剥離パターンからのずれは、エネルギー源からの不正確なエネルギー印加によって引き起こされ得る。このようなずれは、層または層の一部が造形槽の床に過度に付着し、その結果、個々のオブジェクトまたはオブジェクト群に過度および/または不均一な、層を引き離す力が加えられたことの表れである場合がある。そのような過度な力は次に、デブリの生成をもたらし得る。検出された場合は、エネルギー印加を調整することで修正することができ、これは、デブリが発生するリスクを最小限に抑える、またはなくすための役に立つものである。
【0037】
他の実施形態では、ずれは、摩耗または損傷した非粘着性の膜によって引き起こされ得る。さらに、他のずれは、不正確な変形速度から生じる可能性があるが、他の変形はエネルギー硬化性液体中の不具合によって生じる。これらのずれの各々は、過度な力がオブジェクトまたはオブジェクト群に加えられたことの表れである場合があるので、ずれの原因となる1以上の障害モードの検出および補正は、デブリの低減または排除に寄与することができる。特定の実施形態は、ずれを検出するために、統計的分析を用いて、所与の剥離パターンと以前の剥離パターンとを比較する。より具体的な実施形態は、機械学習または他の自動統計解析の適用による自動の連続的な改善をサポートするために、剥離パターンおよび剥離パターンのずれの履歴を構築するために使用され得るデータベースを備える。
【0038】
一部の実施形態は、コントラストを高め、信号/ノイズ比を改善し、デブリの正確な検出をサポートするために、光源を用いる。これらの実施形態のいくつかでは、光源はLED光源であるが、他の実施形態では、他の種類の光源を用いる。実施形態の特定のサブセットでは、1以上のLED光源が造形槽の上方に配置され、他の実施形態では、LEDライトは造形槽の下方に配置される。いくつかの実施形態は、位置の固定された光源を用いるが、他の実施形態は、移動可能な光源を用いる。実施形態の特定のサブセットは、造形槽の上下両方に配置されるLEDライトを用いる。他の特定の実施形態は、特定の波長を有するLEDライトを用いる。いくつかの実施形態では、同一の波長を有する複数のLEDが使用されるが、他の実施形態では異なる波長を有する複数のLEDを用いる。いくつかの実施形態では、複数の多色LEDが用いられるが、他の実施形態では、複数の単色LEDが用いられる。さらに他の実施形態は、単色である複数のLEDおよび多色である複数のLEDの両方を用いる。
【0039】
実施形態のサブセットは、造形槽のリムの周りに移動可能にまたは固定して配置され、造形槽の上面および/または造形槽内のエネルギー硬化性液体を照明する1以上のLEDライトを有する。使用中、そのようなLEDライトは、造形槽の床および/または槽内のエネルギー硬化性液体の表面より上に上昇するオブジェクトの後ろに、1以上の影の生成を促進し得る。このような影は、カメラによって撮像され、デブリの存在を判定するためにエラー検出システムによって使用され得る。特定の実施形態では、例えば、最も適切なデブリ除去手段を決定するため、影のサイズが、所与のデブリのサイズを判定するために使用されてもよい。他の実施形態では、エラーの根本原因を判定するため、またはデブリ事象をもたらす複数のエラー間の類似性を検出するために、影の形状を入力として使用することができる。さらに他の実施形態は、所与の影の位置を使用して、影の原因となるデブリの位置を判定する。特定の一連の実施形態では、可動ライト(あるいは複数の固定ライト)は、デブリを円形または球形のスイープまたは複数の角度から連続照明することで、デブリのプロファイリングを可能にする。
【0040】
別のサブセットは、造形槽の上方または下方のいずれかに配置されたカメラのレンズの周囲に配置された1以上のLEDライトを有する。特に有利な実施形態は、造形槽の床の下方に配置された1以上のLEDライトを用いることであり、造形槽の上方に配置されたカメラと協働して、造形槽の床のデブリで覆われている部分と、覆われていない部分との間の反射の差を検出する。さらにより有利な実施形態は、部分的に透明なグリッドまたはマスク(コントラスト要素とも呼ばれる)を用いることであり、これは、造形槽の下方に配置され、LEDライトのうちの少なくとも1つの上方または下方のいずれかに配置されて、明るい領域および暗い領域のパターンを生成するものである。いくつかの実施形態では、パターンはラスタパターンである。他の実施形態は、格子パターンを用いる。他の実施形態では、パターンは座標系を画定する。特定の実施形態では、パターン要素のサイズが、個々のデブリの最小検出可能面積を決定する。より具体的な実施形態は、0.7mmのパターン要素サイズを用いる。他の実施形態は、上部カメラの解像度に適合するパターン要素サイズを用いる。
【0041】
使用時には、このようなグリッドまたはマスクが、造形槽の床の覆われた部分と覆われていない部分との間のコントラストを更に強め、デブリの検出を更に促進する。このような検出は、特に造形材料が透明なものである場合に特に有利である。
【0042】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、造形槽内のデブリの位置を判定するためのデブリ位置検出システムを備える。特定の実施形態は、造形槽の下方に配置され、デブリの位置を判定するために槽の底部を撮像するデジタルカメラを用いる。さらに特定の実施形態は、造形槽の下方(例えば、カメラレンズの周囲)に配置された1以上のLEDまたは同様の光源を用いて造形槽の底部をさらに照明する。
【0043】
このような配置は、造形槽の特定の領域が、不相応な量のデブリ事象を引き起こすかどうかを判定するために有利である。他の利点には、デブリの周囲でエネルギー硬化性液を選択的に固化させて除去を促進する、および/またはデブリが造形槽の様々な領域に位置する場合にデブリ除去のために使い捨て手段を複数回使用する選択肢が含まれる。
【0044】
いくつかの実施形態では、デブリ除去システムは、デブリ除去プラットフォームを備える。いくつかの実施形態が、ビルドプラットフォームと一体化されたデブリ除去プラットフォームを備えるのに対し、他の実施形態は、ビルドプラットフォームから分離されたデブリ除去プラットフォームを備える。いくつかの実施形態は、真空補助ビルドプラットフォームと協働して、ビルドプラットフォームとデブリ除去プラットフォームとの自動交替をサポートするデブリ除去プラットフォームを備える。これらの実施形態のいくつかでは、デブリ除去プラットフォームがデブリ除去プレートを含み、真空補助ビルドプラットフォームは、ビルドプレートまたはデブリ除去プレートのいずれかと動作接続する。
【0045】
特定の実施形態は、デブリ除去サーフェスを含むデブリ除去プラットフォームを有する。いくつかの実施形態では、デブリ除去サーフェスは、デブリに押し付けられたときに圧縮または変形する圧縮可能(例えば、スポンジ状)または変形可能な材料を含むか、またはそれによって構成される。このような圧縮可能または変形可能な材料の有利な実施形態は、0~200Nの範囲、あるいは0~7.5kPaの範囲、またはショアA型からOO型の0から65の範囲の圧縮力を有する。他の圧縮力の範囲もまた、特定の状況に適用することができる。容易に圧縮または変形されるが、伸長(elongate)または拡張(stretch)されない材料を有することが特に有利である。
【0046】
いくつかの実施形態は、200℃までの温度範囲でその圧縮性または変形性を保持する圧縮可能または変形可能な要素を含む。
【0047】
特定の実施形態は、予想される最大サイズのデブリの寸法に適合し得る厚さの圧縮可能または変形可能な材料を用いる。いくつかの実施形態は、予想されるデブリの最大サイズの2倍の厚さを有するが、他の厚さもまた、望ましい可能性がある。
【0048】
他の実施形態は、使用される造形材料の色に対する色コントラストを促進する色および/またはセル構造を有する圧縮可能または変形可能な材料を用いる。特定の実施形態は、黒または暗色の造形材料が使用される場合に、独立気泡構造を有する白色の圧縮可能または変形可能な材料を用いる。
【0049】
他の実施形態は、使用される造形材料の色に対して比較的高いコントラストを提供する色および/または表面構造を有する、滑らかで光沢または反射性がある表面/セル構造(例えば、光反射を促進する)を有する、圧縮可能または変形可能な材料を用いる。
【0050】
いくつかの実施形態は、造形槽の床全体または少なくともその連続的な(一部)長さを実質的に覆う、圧縮可能または変形可能な材料を備える。このような実施形態は、デブリの存在を検出するためにキャニー法に基づく空隙検出が使用される場合に特に有利である。このような実施形態では、圧縮可能または変形可能な材料が床に到達することをデブリが妨げる場合を除き、圧縮可能または変形可能な材料が、床に対して圧縮または変形することで、信号/ノイズ比を実質的に改善、および結果として生じる検出率を実質的に改善し、したがって床の均一な被覆を提供する。実施形態の特に有利なサブセットは、3mm以下の気泡サイズを有する独立気泡発泡体を含み、より小さい気泡サイズは、より良好なデブリ検出解像度をもたらす。実施形態の別のサブセットは、3mm以上の気泡サイズを有する連続気泡発泡体を含む。
【0051】
他の特定の実施形態は、所望の輪郭で切り欠かれているか、または開口部などを有する、圧縮可能または変形可能な材料を含む。より大きなデブリを除去するのに適した好都合な輪郭は、中央区域および/または1以上の隅部の1以上の柱にわたる切欠きを備える。
【0052】
他の実施形態は、圧縮可能または変形可能な材料を複数のセクションに分割する切れ目を含む。このようなセクショニングは、デブリと直接接触していないセクションが床と完全に接触できるのに対し、デブリと接触しているセクションは床と接触しないか、少なくとも床との接触が少ないため、有利な場合があり得る。いくつかの実施形態では、切れ目は平行である。他の実施形態は、正方形または他の形状を作るように交差する切れ目を含む。代替の実施形態は、特定のオブジェクトに適合するように調整され得るパターンの切れ目を含む。
【0053】
他の実施形態は、槽の床に平行でない圧縮可能または変形可能な材料の切断面を含む。楔形は、硬化した材料の容易な除去を確実にするのに特に有効である。圧縮または変形が最も少ない材料が槽の床から硬化した材料を最初に引き剥がすので、圧縮可能または変形可能な材料は、槽の床で圧縮または変形すると、楔形の一方の端が他端よりも圧縮または変形し、圧縮可能または変形可能な材料を引っ込める際の予測可能な層間剥離を確実にする。
【0054】
圧縮可能または変形可能な材料の使用は、デブリ検出とデブリ除去とが組み合わされる場合に特に有利である。この組み合わせを含んだ実施形態は、通常、造形プロセスの完了時に、組み合わされたデブリ検出とデブリ除去のルーチンを実施して、次の造形プロセスのために造形槽を準備するが、このルーチンの他のタイミングも想定される。
【0055】
圧縮可能または変形可能な材料の使用は、透明な造形材料が使用される場合にも有利である。透明な材料の中の透明デブリの検出は、コントラスト要素を包めることで可能にされてきたが、影の分析に基づいてデブリの高さを確実に判定することができない場合がある。圧縮可能または変形可能な材料のサイズ制約を超えるデブリの高さを正確に判定できないと、圧縮可能または変形可能な材料がデブリに対して完全に圧縮または押圧/変形されきってしまい、下降するデブリ除去プラットフォームがデブリに直接圧力をかけ始めたときに、膜を損傷させる可能性がある。過度な抵抗があった場合にビルドプレーンまたはデブリ除去プレーンの下降を中止する安全装置が移動機構に組み込まれてもよいが、好ましい実施形態は、コントラストまたは反射の変化として造形槽の床の下向きの屈曲を検出するために下部カメラ(例えば、図における300を参照)を使用する。いくつかの実施形態では、カメラから離して配置された追加の光源が、変化したコントラストまたは反射の撮像を向上させ、造形槽または造形槽の床が損傷を受ける前に、移動機構の下降を中断し得る。
【0056】
使用中、圧縮可能または変形可能な材料を有するデブリ除去プラットフォームは、所望の下降位置が達成されるまで、デブリ検出システムによるデブリの検出に応答して、造形槽の床に向けて下降されてもよい。デブリがある領域では、圧縮可能または変形可能な材料は圧縮または変形され、造形槽の床への到達を妨げられる。圧縮または変形は、デブリにわずかな圧力を加えることになるが、適切な柔らかさを有する圧縮可能または変形可能な材料を選択することで、デブリが非粘着性のホイルまたは膜を損傷することを防ぐ。デブリがない領域では、圧縮可能または変形可能な材料は、圧縮または変形されずに造形槽の床と接触する。下降が完了すると、エネルギー源からのエネルギーを印加して、デブリを取り囲むエネルギー硬化性液体を固化させ、デブリを圧縮可能または変形可能な材料に付着させることができる。
【0057】
いくつかの実施形態は、ビルド領域全体の固化を用いるが、他の実施形態は、デブリを取り囲む領域の選択的な固化を用いる。このような選択的な固化は、材料の消費を低減しながらデブリの除去を行うことを可能にすることができ、また、圧縮可能または変形可能な材料を複数回のデブリ除去に使用することを可能にすることができ、デブリ位置検出システムが獲得した情報に基づくことができる。デブリ位置検出システムの特定の実施形態では、圧縮可能または変形可能な材料を有するデブリ除去プラットフォームを造形槽の床より上の所望の下降位置まで下げた後、造形槽の下方に配置されたカメラを使用してデブリの位置を検出することができる。このような検出は、圧縮可能または変形可能な材料が造形槽の床と接触した領域と、圧縮可能または変形可能な材料がデブリによって造形槽の床から離れて保持される領域との間での反射および/または色の差分を検出することを含んでもよい。いくつかの実施形態は、コントラストを増大させるために造形槽の底部を照明することで、デブリの検出をさらに補助することができるLED光源などの光源をさらに備える。
【0058】
さらに他の実施形態は、最初の造形が開始される前に膜の清浄度または無傷性をチェックするために、ドライデブリ除去ルーチンにおいて造形槽の床に移動させられた圧縮可能または変形可能な材料を用いる。
【0059】
デブリが圧縮可能または変形可能な材料に付着すると、デブリ除去プラットフォームを造形槽から移動させ、廃棄するか、別のデブリ除去手順で再利用するために保管してもよい。
【0060】
連続的かつ自動的な操作を容易にするために、いくつかの実施形態は、ビルドプラットフォームとデブリ除去プラットフォームとの交替を可能にするプラットフォーム交換器を備える。いくつかの実施形態は、標準的な工業用コネクタに基づいたプラットフォーム交換器を備える。特に有利な実施形態は、ビルドプラットフォームの移動を可能にする移動機構に取り付けられたチャックを有するエロワツールチェンジャモジュールを備える。チャックは、ビルドプラットフォームの簡単な係合および係合の解除を可能にする。ビルドプラットフォームに取り付けられたチャッキングスピゴットは、ビルドプラットフォームと移動機構とを動作と中断が可能に接続させることができるデブリ除去プラットフォームに取り付けられた同様のチャッキングスピゴットにより、デブリ除去プラットフォームと移動機構とを動作と中断が可能に接続させることができる。
【0061】
使用中、移動機構とビルドプラットフォームとの最初の動作接続をして、続いて造形槽の床の1層分の厚みだけ上にある、最初の下降位置に向けてビルドプラットフォームを下降させることで、造形を開始することができる。エネルギーの最初の選択的印加は、エネルギー硬化性液体の第1の層を部分的にまたは完全に固化し、この第1の層を、一般に知られているようにビルドプラットフォームに付着させることができ、また、ビルドプラットフォームを移動機構によって造形槽の床から移動させることで、未硬化の液体が硬化層の下の領域に流入できるようにすることができる。必要に応じて、その全体が本出願に組み込まれている国際公開第2016/177893号に開示されているような機構を使用して、固化した第1の層を造形槽の床から容易に引き離すことができる。追加の層は、エネルギーの印加およびビルドプラットフォームの上昇を連続的に繰り返して、ビルドプラットフォームに取り付けられた1以上のオブジェクトを造形することで形成されてもよい。
【0062】
デブリが造形手順の前、間、または後のいずれかで検出された場合、ビルドプラットフォームと移動機構との間の動作接続は中断され得る。部分的にまたは完全に形成されたオブジェクトの有無に関係なくビルドプラットフォームを支持するために、いくつかの実施形態は、移動機構との動作接続が中断されたときにビルドプラットフォームを受け入れて保持することができるツール固定具またはキャリアを有するツールホルダを備える。特に有利な実施形態では、ツールホルダは、第1の係合解除位置からツール固定具がビルドプラットフォームを受け入れることができる第2の係合位置まで移動可能である。さらに有利な実施形態では、ツールホルダはまた、1以上のデブリ除去プラットフォームを保持することができる1以上の追加のツール固定具またはキャリアを備え、これらのうちの少なくとも1つを、移動機構と連動させられる位置に移動させる。いくつかの実施形態では、ツールホルダのみが移動機構に対して移動可能であるのに対し、他の実施形態では、ツールホルダに対しても移動可能である移動機構を備える。
【0063】
移動機構とデブリ除去プラットフォームとが動作接続されると、デブリ除去プラットフォームは造形槽に向けて下降させられてもよく、デブリ除去手順が先に開示されたように実行されてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、ビルドプラットフォームおよびデブリ除去プラットフォームが単一のプラットフォームとして組み合わされる。これらの実施形態のいくつかは、1)ビルドサーフェスを有するビルドプレートと、2)いくつかの実施形態では圧縮可能または変形可能な要素であり得るデブリ除去サーフェスを有するデブリ除去プレートと、の交換を可能にするインタフェース要素を備える。特定の一組の実施形態では、このインタフェース要素は、真空吸引ユニットを備える。他の実施形態は、工業用コネクタシステム、クリックフィット、磁石、溝、レール、または同様のものを含むインタフェース要素を用いる。
【0065】
大きなデブリを除去するために(または交換することなく繰り返し適用するために)、特に有利である真空補助デブリ除去プラットフォームまたはプレートは、エネルギー硬化性液体の固化層の表面との動作と中断が可能に接続する真空吸引要素を備える。使用中、デブリは、デブリ検出システムの手段によって検出され、デブリを取り囲む液体の固化は、デブリを含んで固化したハンドリングプレート、ハンドリング層、またはハンドリング領域(以下、単にハンドリングプレートと呼ぶ)を生成する。この固化したハンドリングプレート等の領域は、ビルド領域(層)全体、またはデブリの除去を可能にする、より小さなハンドルセクションのいずれかを含み得る。固化の前、最中、または後に、ビルドプラットフォームは、上記で開示されたプラットフォーム交換器またはインタフェース要素の手段によって、真空補助デブリ除去プラットフォームまたはプレートと交換されてもよい。そして、真空補助デブリ除去プラットフォームまたはプレートは、真空吸引要素が、デブリを保持するハンドリングプレートの最隅部分またはハンドル部分と真空補助操作接続することができる点まで下降させられてもよい。その後、真空補助デブリ除去プラットフォームが上昇することで、デブリを含むハンドリングプレートまたはハンドルセクションを造形槽から除去することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、交換可能な光透過性のある先端を有する発光プローブを槽内に挿入することができ、プローブはデブリの近傍に配置されると光を放出するように設定されているので、デブリまたはデブリを捕捉し固化したハンドリングプレートをその先端で硬化させる。その後、先端は槽から引き上げられて、デブリを共に除去され得る。
【0067】
いくつかの実施形態は、造形プロセス中のデブリ除去を用いるが、他の実施形態は、造形が開始される前または造形が完了した後のいずれかのデブリ除去を用いる。
【0068】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、デブリを除去する前に造形槽から汚染されていない造形材料を除去するための材料回収システムを備える。
【0069】
積層造形装置のいくつかの実施形態は、データ記憶要素を備えており、1以上のカメラからデータを受信し、リアルタイムまたは後処理分析のためにこのデータを記憶する。実施形態の特定のサブセットは、パターンを識別し、デブリ発生のリスクを最小限に抑えるための手段の開発を支援する目的で、データ分析を実行するように構成され得るデータ処理要素を備える。実施形態の特に有利なサブセットは、機械学習要素、人工知能要素、または同様の要素を含み、潜在的な障害モードの予測モデリングおよび分析をサポートする。
【0070】
いくつかの実施形態では、槽内の樹脂の滴下を最小限に抑えるための滴下トレイが設けられており、さもなければ、造形槽内に気泡を引き起こして誤ったスポット検出につながる可能性がある。
【0071】
いくつかの実施形態では、デブリ排除システムは、造形槽内の少なくとも1つの造形材料内のデブリに押し付けられたときに圧縮または変形する、圧縮可能または変形可能な材料を備える。
【0072】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、圧縮可能または変形可能な材料を造形槽に収容された少なくとも1つの造形材料を通って造形槽の床に向けて、および/または造形槽の床に移動させて、デブリを造形槽の床に向けて、および/または造形槽の床に押し付ける。
【0073】
いくつかの実施形態では、圧縮可能または変形可能な材料は、
-圧縮可能または変形可能な材料の別々のセクションを画定する、いくつかの間隔を空けた空洞または同様のものを含み、および/または、
-少なくとも1つの造形材料の色と比較的高いコントラストを有する色を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、デブリを取り囲む造形材料を固化し、圧縮可能または変形可能な材料が造形槽の床に向けて、または床上に移動されると、デブリが圧縮可能または変形可能な材料に接続または付着する。いくつかの実施形態は、ビルド領域/層全体の固化を用いるが、他の実施形態は、デブリだけを取り囲む領域の選択的な固化を用いる。
【0075】
いくつかの実施形態では、デブリ検出システムは、
-造形槽の下方に配置され、造形槽および/または造形槽の床を通して撮像する第1カメラまたは撮像装置と、
-造形槽の上方に位置し、少なくとも1つの造形材料が造形槽内に収容されている場合に、造形槽の床の上面および/または少なくとも1つの造形材料の表面を上方から撮像する第2カメラまたは撮像装置と、を備える。
【0076】
いくつかの実施形態では、1以上の撮影画像を処理し、分析して、造形槽内にデブリが存在するか否かを判定する。
【0077】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、造形槽内で検出されたデブリの周囲またはデブリのある箇所で、少なくとも1つの造形材料の少なくとも一部を選択的に固化させてデブリの除去を促進する。
【0078】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、
-造形槽の底部または下側を、下方から照明する1以上の光源、および/または
-少なくとも1つの造形材料が上方から造形槽内に収容される場合に、造形槽の床の上面および/または少なくとも1つの造形材料の表面を上方から照明する1以上の光源、を備える。
【0079】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの造形材は透明または半透明であり、積層造形装置は、造形槽の下方に位置し、1以上の光源によって下方および/または上方から照明されたときに造形槽の床を通して明るい領域および暗い領域のパターンを作り出す、透明または半透明のコントラスト要素をさらに備える。
【0080】
いくつかの実施形態では、造形槽の床は、光学的に透明または半透明である。
【0081】
一部の実施形態では、造形槽の床は、エネルギー源に関してエネルギー透過性がある。
【0082】
いくつかの実施形態(例えば、積層造形装置が、造形槽の下方に位置する透明または半透明のコントラスト要素をさらに含む場合)では、積層造形装置は、造形槽の下方に位置し、少なくとも1つの造形材料が造形槽内に収容されている場合に、造形槽の床の表面および/または少なくとも1つの造形材料の表面を下方から撮像する(第1の)カメラまたは撮像装置を備え、造形槽の床は変形可能であり、(第1の)カメラまたは撮像装置は、層引き離し機構によって床が変形されて製造されたオブジェクトの少なくとも一部を引き離す場合に、造形槽の床の1以上の画像を撮像する。
【0083】
いくつかの実施形態では、造形槽の床は柔軟性があり、積層造形装置は、製造されたオブジェクトの最後に形成された層を、柔軟性がある床から漸進的かつ制御された剥離によって引き離す、層引き離し機構を備え、カメラ(例えば、本明細書で開示される下部カメラ)は、引き離しが実行中である、実行された、または部分的にもしくは完全に実行されなかった領域におけるコントラストおよび/または色の漸進的な変化の有無を含む剥離パターンを撮像する。
【0084】
いくつかの実施形態では、造形槽の床は、例えば、その全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2016/177893号に開示される実施形態のうちの1つによると柔軟性がある。国際公開第2016/177893号はまた、特に有利な層引き離し機構の実施形態を開示している。
【0085】
いくつかの実施形態では、撮像された剥離パターンを表すデータは、予想されるパターンまたは以前に撮像された剥離パターンと比較され、引き離しに失敗が生じていないか、または生じた可能性がないかを判定するために分析される。
<定義>
【0086】
すべての見出しおよび副見出しは、本明細書では便宜のためだけに使用され、いかなる形でも本発明を限定するものとして構成されるべきではない。
【0087】
本明細書で提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言葉の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図したものであり、特に主張しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中の如何なる言い回しも、本発明の実施に不可欠で請求範囲に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0088】
本発明には、適用法により認められている、本付属請求範囲に記載されている主題のすべての改変および同等物が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】本発明の一態様による、自動障害復旧を有する積層造形システムの実施形態を概略的に示す。
図2a図1の実施形態の様々な例示的な操作ステップまたはステージを概略的に示す。
図2b図1の実施形態の様々な例示的な操作ステップまたはステージを概略的に示す。
図2c図1の実施形態の様々な例示的な操作ステップまたはステージを概略的に示す。
図3】デブリ除去プラットフォームの例示的な実施形態を概略的に示す。
図4】デブリ除去プラットフォームの別の例示的な実施形態を概略的に示す。
図5】デブリ除去プラットフォームの別の例示的な実施形態を概略的に示す。
図6】自動障害復旧を有する積層造形システムの別の実施形態を概略的に示す。
図7a図6のシステムの側面図および上面図を概略的に示す。
図7b図6のシステムの側面図および上面図を概略的に示す。
図8a】槽の柔軟性がある床から積層造形されたオブジェクトを引き離す、層引き離し機構の側面図および詳細図を概略的に示す。
図8b】槽の柔軟性がある床から積層造形されたオブジェクトを引き離す、層引き離し機構の側面図および詳細図を概略的に示す。
図9a】参照引き離しパターンおよび異なる例示的引き離しパターンを概略的に示す。
図9b】参照引き離しパターンおよび異なる例示的引き離しパターンを概略的に示す。
図9c】参照引き離しパターンおよび異なる例示的引き離しパターンを概略的に示す。
図9d】参照引き離しパターンおよび異なる例示的引き離しパターンを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
ここで、積層造形装置およびそのためのシステムならびにデブリ除去システムの様々な態様および実施形態を、図面を参照して説明する。
【0091】
「上」と「下」、「右」と「左」、「水平」と「垂直」、「時計回り」と「反時計回り」などの相対的表現が以下の用語で使用されるとき/場合、これらは通常、添付の図面を指すものであって、必ずしも実際の使用状況を指さない。示されている図は概略図であり、そのため、様々な構造の構成とそれらの相対的な寸法は、説明のみを目的としている。
【0092】
異なる構成要素のいくつかは、本発明の単一の実施形態に関してのみ開示されるが、さらなる説明なしに他の実施形態に含まれることが意図される。
【0093】
図1は、本発明の一態様による、自動障害復旧を有する積層造形システムの実施形態を概略的に示す。
【0094】
図は、使用中には、エネルギー硬化性液体110(本明細書を通して造形材料とも呼ばれる)を含有する造形槽100を含む積層造形装置150を備える、自動障害復旧を有する積層造形システムの実施形態である。造形槽100は、床105を有する。少なくともいくつかの実施形態では、造形槽100の床105は、光学的に透明または半透明である。エネルギー源200は、造形槽100の下方に配置され、一般的に知られているように、エネルギー硬化性液体110を選択的に固化させる。少なくともいくつかの実施形態では、また図示のように、エロワスピゴット125または他の適切なコネクタを備えるビルドプラットフォーム120は、嵌合エロワチャック505または他の適切な嵌合コネクタを備える移動機構500または同様のものによって、造形槽の上方に移動可能に保持される。
【0095】
下部カメラ(第1のカメラとも呼ばれる)300は、この実施形態および同様の実施形態では、造形槽100の下方に配置され、造形槽100の光学的に透明または半透明の床105を通して撮像する。少なくともいくつかの実施形態では、また図示のように、下部カメラ300は、1以上のLED、ここでは2つのLED310および320、または他の好適な光源、例えば、本明細書で開示されるようなものを備え、これらは撮像を容易にするために、造形槽100の底または下側を下方から照明する。少なくともいくつかの実施形態では、また図示されるように、LED350は、造形槽100のリムに、その近くに、または隣接して配置され、造形槽の床105の上面および/またはエネルギー硬化性液体110の表面を上方から照明する。上部カメラ400は、造形槽100の上方に配置され、造形槽の床105の上面および/またはエネルギー硬化性液体110の表面を上方から撮像する。
【0096】
図1に示す自動障害復旧を有する積層造形システムの実施形態は、本発明の一態様によるデブリ除去プラットフォーム130の実施形態をさらに含む。デブリ除去プラットフォーム130は、本明細書に開示されるように、少なくともいくつかの実施形態では、圧縮可能または変形可能な材料140を含む1以上のデブリ除去サーフェス141を備える。いくつかの実施態様では、また図示されるように、デブリ除去プラットフォーム130は、ツールホルダ600等の一部であるか、またはツールホルダ600等に固定されたツール固定具605等によって移動可能に保持される。デブリ除去プラットフォーム130は、少なくとも実施形態では、また図示されるように、エロワスピゴット125、またはエロワチャック505と嵌合する他の適切なコネクタ、またはツール固定具605の他の適切に嵌合するコネクタを備える。
【0097】
積層造形装置150は、下部投射装置であることが好ましいが、本明細書に開示される方法および装置は、例えば、上部投射ベースの3Dプリンタシステム、下部投射ベースの3Dプリンタシステム、別のタイプの3Dプリントシステム、レーザー焼結システム、突出システム、押出ベースの3Dプリンタシステム、3Dバイオプリントまたはバイオプロッティングシステム、融合堆積モデリング(FDM)システム、または任意の他の適切な積層造形システムにおける障害管理にも適応することができる。
【0098】
図2a~図2cは、図1の実施形態の様々な例示的な動作ステップまたはステージを概略的に示す。
【0099】
図1に示されるものに対応する、自動障害復旧を有する積層造形システムの例示的な実施形態が(例えば、さらなる詳細を伴って)示される。図2a~図2cに関連して説明される動作ステップまたは動作ステージは、本明細書に開示した自動障害復旧を有する積層造形装置の他の実施形態にも対応して使用できることを理解されたい。
【0100】
いくつかの実施形態では、また図2a~図2cに示すように、造形槽100は、少なくともいくつかの実施形態では、エネルギー透過性がある「非粘着性」膜(図示せず)を含むエネルギー透過性(エネルギー源200に対してエネルギー透過性)がある床105を備える。少なくともいくつかの実施形態では、床105は、光学的に透明または半透明である。造形槽100は、少なくとも使用中に、床105および膜を通過するエネルギーによって選択的に固化され得るエネルギー硬化性液体110を含む。
【0101】
上述したように、ビルドプラットフォーム120は、移動機構500によって、または同様のもの、例えば、エロワチャッキングスピゴット125に動作接続されたエロワチャック505の手段によって、造形槽100の上方に移動可能に保持される。
【0102】
ビルドプラットフォーム120は使用中に、積層造形装置150による積層造形プロセスによって製造される少なくとも1つのオブジェクト(図示せず)を保持または支持するためのビルドサーフェス115を含む。積層造形プロセスでは、オブジェクトは、例えば、1以上のエネルギー源および/または光源を使用して製造することができる。
【0103】
造形プロセス中、槽の床の上(すなわち槽の内側)のエネルギー硬化性液体が1以上の適切なエネルギー源200からのエネルギーに露出すると、第1の新しい層が形成される。いくつかの実施形態では、エネルギー源200は、DLPまたはLCDプロジェクタまたは同様のものであり、エネルギーはUV光の形態で供給される。新しい層のパターンまたは形状は、例えば、一般に知られているように、製品定義ファイル、テンプレートまたはマスクなどによって定義することができる。
【0104】
露出の後、ビルドプラットフォーム120は、造形槽100の床105から、ある距離だけ上昇させられる。上昇は、新たな量のエネルギー硬化性液体110をビルドプラットフォーム120および新たに形成された層の下の領域に流入させるために、行われる。必要に応じて、例えば国際公開第2016/177893号に開示されている機構などといった層引き離し機構(図示せず)を使用して、容易に層を引き離すことができる。
【0105】
新たな量のエネルギー硬化性液体110がビルドプラットフォーム120および新たに形成された層の下の領域を満たすと、ビルドプラットフォーム120を再度配置し、さらなる層を固化するために露出を繰り返すことができる。次いで、プロセスを指定された回数繰り返して、1以上のオブジェクトを生成することができる。
【0106】
上述したように、デブリ(例えば、図2a~図2cの700を参照)は、造形プロセスから生じ得る。あるいは、積層造形装置の外部から造形槽内に持ち込まれてもよい。そのようなデブリは、積層造形プロセスの前、最中、または後に、本明細書に開示されるようにカメラ300またはカメラ400のいずれかによって検出され、本明細書に開示されるようにデブリ除去プロセスをトリガしてもよい。
【0107】
上述のように、図2a~2cは、図1の実施形態の様々な例示的な動作ステップまたはステージを概略的に示す。
【0108】
デブリ除去プロセスの一実施形態に係る例示的な操作ステップまたはステージは、図2aに示されており、上昇位置または除去位置へのビルドプラットフォーム120の最初の上昇または移動を含む。上昇位置または除去位置では、エロワチャッキングスピゴット125または同様の物が、ツール固定具(図示せず)によって、または別の方法で係合されてもよく、ビルドプラットフォーム120はエロワチャック505または移動機構500と同様の物から切り離される。ビルドプラットフォーム120は、例えば、ツールホルダ600等(図示のように、デブリ除去プラットフォーム130の背後にある)に適切に一時的に預けることができる。
【0109】
切り離しが行われている間(または切り離し後)、LED350は、エネルギー硬化性液体110の表面および/または造形槽100の床105を照明し、デブリ700の断片それぞれに対応する影710を生成する。次に、デブリ700の断片それぞれに対するこの影710の1以上の画像を、上部カメラ400によって撮像することができ、コンピュータなどの処理装置によって分析して、デブリ700の断片それぞれの高さを計算または推定することができる。高さは、例えば、造形槽100の床105上に投影された影710の長さLに基づいて判定または推定することができる。あるいは、またはさらに、影710および/またはデブリ700の1以上の他の特性を得ることができる。検出されたデブリ700が、好ましくはデブリ除去プラットフォーム130の圧縮可能または変形可能な材料140の1以上の特性に関して決定されたまたは課された、所定の高さ限界(または他のタイプの限界または基準)を超えない場合、ビルドプラットフォーム120の切り離し後、デブリ除去プラットフォーム130は、ツールホルダ600によって接続位置に移動され、次いで、デブリ除去プラットフォーム130のチャッキングスピゴット135等は、移動機構500のエロワチャック505などに接続される。なお、デブリ700のサイズは、図面を明確にするために誇張されたものである。
【0110】
状況に応じて、槽100は、例えば、エネルギー硬化性液体110を排出する、または空にされてもよく、またはエネルギー硬化性液体110は依然として、槽100内にあってもよい(図示のように;明確にするため、エネルギー硬化性液体110は充填されていない)。
【0111】
続いて、デブリ除去プラットフォーム130は、図2bに示されるように、デブリ700によって吊り下げられていない(not suspended)圧縮可能または変形可能な材料140の部分が槽100の床105に接触する下降位置まで下げられる。例えば、LED310および320を有する下部カメラ300を即座にかつ確実に使用して、圧縮可能または変形可能な材料によって画定された均一な背景に対して保持されたときに反射および/またはコントラストの差異として現れるデブリ700のそれぞれの位置を識別する。この形態でデブリ除去プラットフォームを動かすことで、デブリが存在する場合は、圧縮可能または変形可能な材料が槽100のエネルギー硬化性液体110の一部を吸収(および/または変位)する間、デブリは造形槽100の床105に向けて押される。
【0112】
デブリ700の位置が、下部カメラ300によって得られた1以上の画像の画像分析によって即座に識別された場合、エネルギー源200からのエネルギーを加えて、デブリ700の断片それぞれを取り囲んでいる、または、近傍のエネルギー硬化性液体110の一部または全体を固化させ、圧縮可能または変形可能な材料140に固化させた液体を付着させ、それにより、デブリ700の断片それぞれを圧縮可能または変形可能な材料140に固定する。次に、デブリ除去プラットフォーム130を、固定されたデブリ700と共に上昇位置まで上昇させて、図2cに示すようにツールホルダ600の手段によってビルドプラットフォームと交換することができる。これにより、槽100からデブリ700が効果的に除去される。
【0113】
デブリ除去プラットフォーム130は、本明細書に開示されるような圧縮可能または変形可能な材料140の様々な実施形態を含むことができ、いくつかの例示的なものは、図3図5に関連してさらに示され、説明される。
【0114】
図3は、デブリ除去プラットフォームの例示的な実施形態を概略的に示す。
【0115】
図は、本明細書に開示されるような圧縮可能または変形可能な材料140を備えるデブリ除去プラットフォーム130の一実施形態を示す。この特定の実施形態では、圧縮可能または変形可能な材料140は、圧縮可能または変形可能な材料140をいくつかの別個のセクションに画定する、いくつかの(この例では6つの)垂直な(図の向きでは)間隔を空けた切欠き/切り抜き、空洞、空間などを含み、それぞれのセクションは、除去サーフェス141(この例では7つの別々の除去サーフェス141)を有する。なお、セクションは、完全に分離される必要はない。切り抜き等は例えば、半円等であってもよく、または一般に、任意の他の適切な形または形状であってもよい。
【0116】
このようなセクショニングの利点は、例えば、デブリを捕捉しないセクションが層の床と完全に接触する一方で、デブリを捕捉するセクションが、特にデブリの存在によって槽の床と完全に接触しない、または少なくとも完全な接触が少ないことである。接触がある場合とない場合のセクション間のこのような接触の違いは、その後の画像分析を容易にする。
【0117】
デブリ除去プラットフォーム130は、一例として、チャッキングスピゴット135等を介してツールホルダ600等の一部であるか、またはツールホルダ600等に固定されたツール固定具605等に固定されて示されている。
【0118】
図4は、デブリ除去プラットフォームの別の例示的な実施形態を概略的に示す。
【0119】
図は、本明細書に開示されるような圧縮可能または変形可能な材料140を含むデブリ除去プラットフォーム130の別の例示的な実施形態を示し、圧縮可能または変形可能な材料140は、それぞれ左端および右端に配置された、それぞれがデブリ除去サーフェス141を有する2つのセクションを画定する、細長い(一般に水平方向に)中央の単一の切り抜きを含む。
【0120】
図5は、デブリ除去プラットフォームの別の例示的な実施形態を概略的に示す。
【0121】
図は、本明細書に開示されるような圧縮可能または変形可能な材料を備えるデブリ除去プラットフォーム130の別の例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、デブリ除去プラットフォーム130および圧縮可能または変形可能な材料は、圧縮可能または変形可能な材料の交換を必要とせずに、比較的大きなデブリの除去および/または繰り返しの適用に特に適した真空吸引要素145を備える。
【0122】
真空吸引要素145は、エネルギー硬化性液体の固化層の表面との動作と中断が可能に接続する。
【0123】
使用中、デブリは例えば、本明細書に開示されるように検出され、デブリを取り囲む液体の固化は、デブリを含んだ「ハンドリングプレート」を生成する。この固化したプレートの領域は、ビルド領域全体、またはデブリの除去を可能にする、より小さいハンドルセクションのいずれかを含み得る。すなわち、液体はデブリの周囲で固化され、液体は、デブリから真空吸引要素145が固化された液体と接続することができる位置までの経路に沿って固化される。これは、デブリを除去するために、最小量の液体だけを固化し、破棄することを可能にする。
【0124】
言及したように、圧縮可能または変形可能な材料140の他の形/形状/レイアウトなどが、例えば、本明細書に開示されるようなもの、または他のものを含めて、想定されてもよい。一例は例えば、本明細書に開示されるような楔形状である。
【0125】
図6は、自動障害復旧を有する積層造形システムの別の実施形態を概略的に示す。図6の例示的な実施形態は、図1に示される実施形態に対応するが、本明細書に開示されるように、造形槽100の床105の下方、エネルギー源200の上方、および光源310、320の少なくとも1つの上方に位置するコントラスト要素375が追加されている。
【0126】
本明細書に開示されるように、コントラスト要素375を包むことは、透明または半透明の造形材料110が使用される場合に、少なくともいくつかの実施形態において特に有用である。いくつかの実施形態では、コントラスト要素375は、その上面(槽100の床105に最も近い表面)を格子パターン(例えば、図7bの375参照)が覆う半透明プレートまたは同様の物を含む。少なくともいくつかの実施形態では、半透明プレートは、エネルギー源200の視野の外側の第1の係合されていない位置と、コントラスト要素375が造形槽の下方に配置される第2の係合位置との間で移動可能である。コントラスト要素375は、手動または自動で動かされてもよい。
【0127】
係合位置にあるとき、コントラスト要素375は、少なくとも1つのLED310、320、またはコントラスト要素の下方に配置された他の好適な光源によって下から照明され得る。このような照明は、格子パターンにおける明るい要素と暗い要素との間のコントラスト比を増加させ、図7bに例示されているように、デブリ700に覆われた領域と覆われていない領域との間の回折の差異の検出を容易にする。そのような差異は、図7aに図示されるように、デブリ700の存在および位置を検出するために、上部カメラ400によって撮像されてもよい。
【0128】
図7aおよび図7bは、それぞれ、図6のシステムの側面図および上面図を概略的に示す。
【0129】
図7aは、LED320または他の適切な光源によって下から照明されるコントラスト要素375の側面図を示す。さらに、透明な造形材料とデブリ700を含む槽100が示されている。
【0130】
図7bは、コントラスト要素375の上面図を示し、その上方には、デブリ700を有する槽100が配置されている。また、透明な造形材料とデブリ700との間のコントラストが示されており、デブリの確実な検出が可能になっている。
【0131】
図8aおよび図8bは、槽の柔軟性がある床から積層造形されたオブジェクトを引き離す層引き離し機構の側面図および詳細図を概略的に示す。
【0132】
図8aに概略的に示されているのは、本明細書に開示されているように、槽(図示せず)の柔軟性がある床105から製造されたオブジェクト380を引き離す(より具体的には、製造されたオブジェクト380の最後に形成された層を引き離す)層引き離し機構390である。製造されたオブジェクト380は、ビルドプラットフォーム120に取り付けられた状態で示されている。
【0133】
いくつかの実施形態において、および図示のように、層引き離し機構は、造形槽の床の変形機構またはデフォーマ390を用いて、造形槽の床の長さに沿った波または傾斜を発生させて、積層造形されたオブジェクトから床を引き剥がすことで、造形槽の床105から積層造形されたオブジェクト380を制御可能かつ再現可能に引き離す。
【0134】
したがって、この剥離は、制御された漸進的な動きで起こり、引き離しが実行された領域におけるコントラストまたは色の漸進的な変化を含む剥離パターンとして、下部カメラ(例えば、他の図では300参照)によって撮像され得る。例えば、参照パターンからの剥離パターンのずれを系統的に監視することは、障害モードの検出および継続的な改善を支援することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、(カメラによって得られるような)層引き離しパターンの分析を使用して、デブリの形成を低減または排除する。
【0136】
ビルドプラットフォームとデブリ除去プラットフォームとの間の交替を含むこのプロセス全体は、完全にまたは部分的に自動化されてもよい。プロセス全体またはその一部は、手動または半手動で実行されてもよい。
【0137】
図9a~図9dは、参照引き離しパターンおよび異なる例示的引き離しパターンを概略的に示す。
【0138】
図9aに示されているのは、デフォーマまたは層引き離し機構の端部を示す線396、およびデフォーマまたは層引き離し機構の進行方向を示す矢印とともに示される参照引き離しパターン395である。
【0139】
図9bは、不正確な(強すぎる)照明/エネルギーへの露出によって引き起こされる、過度の接着と引き離しの遅延とをもたらす引き離しパターン395の例を示している。図から分かるように、このパターンは、図9aの参照パターンとは異なるので、画像分析は障害を伝達することができ、障害の原因を特定することができる。
【0140】
図9cは、片側に沿って過度な接着をもたらす欠陥のある膜によって引き起こされる引き離しパターンの例を示す。この場合も、得られたパターンの画像を使用して、障害が発生したこと、また場合によっては、原因を示すことができる。
【0141】
図9dは、オブジェクト(の一部)の完全な分離を示す引き離しパターンの例を示し、そのオブジェクトは層引き離し機構を使用したにもかかわらず、例えば、ビルドプレーンの破損または意図しないビルドプレーンから引き離しによって、造形槽の床に取り付けられたままであるか、または造形槽の床の上に「立った」ままである。
【0142】
なお一般に、様々な図に示され、本明細書で説明される要素は、矢印によって示されるように移動する必要はなく、個々の要素が必ずしも同じ装置によって取り扱われる、および/または処理される必要はないので、異なる要素が異なるように移動されてもよい。
【0143】
なお、図示されたもの以外の他の装置が使用されてもよく、所与の用途に基づいて、図示された装置のうちの1以上を省略してもよい。装置の順序も交替することができる。
【0144】
いくつかの好ましい実施形態が上記で示されたが、本発明はこれらに限定されず、以下の特許請求の範囲で定義される主題の範囲内で他の方法で実施されてもよいことを強調すべきである。
【0145】
いくつかの特徴を列挙する特許請求の範囲において、これらの特徴のいくつかまたはすべては、1つの同じ要素、構成要素、またはアイテムによって具現化されてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているか、または異なる実施形態に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。
【0146】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)/備える(comprising)」という用語は、述べられた特徴、要素、ステップ、または構成要素の存在を指定するために使用されるが、1以上の他の特徴、要素、ステップ、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことを強調すべきである。

図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図9d