(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えたデバイス
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20230726BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230726BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20230726BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20230726BHJP
H10K 50/10 20230101ALN20230726BHJP
【FI】
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
G09F9/30 348A
G09F9/30 338
G09F9/30 349A
G09F9/30 349C
G09F9/00 366Z
H05B33/12 E
H01L31/10 A
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2020567909
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 FR2019051306
(87)【国際公開番号】W WO2019234340
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513257535
【氏名又は名称】イソルグ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ボーティノン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】サラッコ,エメリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョイメル,ジェローム
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-005280(JP,A)
【文献】特開2010-153834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0331508(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0340363(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108962959(CN,A)
【文献】特開2012-164645(JP,A)
【文献】特開2009-135058(JP,A)
【文献】特開2010-224425(JP,A)
【文献】特開2010-010478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0036168(US,A1)
【文献】特開2016-038579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0154170(US,A1)
【文献】特開2008-242468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/30
G09F 9/00
H05B 33/12
H01L 31/10
H10K 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電子デバイ
スであって、
ディスプレイスクリーン及び画像センサを備えており、
前記ディスプレイスクリーンは、第1の
薄膜トランジス
タに接続された有機発光部
品のマトリクスを有しており、
前記画像センサは、第2の
薄膜トランジス
タに接続された有機光検出
器のマトリクスを有しており、
前記有機発光部品に関する前記光電子デバイスの解像度が300ppiより高く、
前記有機光検出器に関する前記光電子デバイスの解像度が300ppiより高く、
前記光電子デバイスの厚さ全体が2mm未満であ
り、
前記光電子デバイスは、第1の電気絶縁層及び第2の電気絶縁層と、前記有機発光部品毎及び前記有機光検出器毎に第1の電極とを更に備えており、
前記有機発光部品の第1の電極は、第1の導電性バイアによって前記第1の薄膜トランジスタに接続されており、前記有機光検出器の第1の電極は、第2の導電性バイアによって前記第2の薄膜トランジスタに接続されており、
前記第1の薄膜トランジスタ及び前記第2の薄膜トランジスタは、前記第1の電気絶縁層と接する半導体領域を有しており、全ての第1の電極が前記第2の電気絶縁層と接していることを特徴とする光電子デバイス。
【請求項2】
前記有機発光部
品の全て及び/又は前記有機光検出
器の全てに取り付けられた第2の電
極を更に備えていることを特徴とする請求項
1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記第2の電
極は前記有機発光部
品の全て及び前記有機光検出
器の全てと接していることを特徴とする請求項
2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記有機光検出
器を覆う第1の色フィル
タを更に備えていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記有機発光部
品を覆う第2の色フィル
タを更に備えていることを特徴とする請求項
4に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
前記第1の色フィル
タと前記第2の色フィル
タとの間に延びて、前記有機光検出
器によって検出される放射線を通さない
層を更に備えていることを特徴とする請求項
5に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
各有機光検出
器を覆う角度フィル
タを更に備えており、前記角度フィルタは、前記光電子デバイスの
面に直交する方向に対する入射角が閾値より大き
い放射線の光線を遮断して、前記面に直交する方向に対する入射角が前記閾値より小さ
い放射線の光線を通過させるように適合されていることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項8】
各有機発光部
品は、前記有機発光部品によって放射される放射線の大部分が放射される領域である第1のアクティブ領域を有しており、
各有機光検出
器は、前記有機光検出器によって検出される放射線の大部分が検出される領域である第2のアクティブ領
域を有していることを特徴とする請求項1~
7のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項9】
前記第1の
薄膜トランジス
タ及び前記第2の
薄膜トランジス
タは、ゲートを有する電界効果トランジスタであり、
前記光電子デバイスは、前記第1の
薄膜トランジス
タのゲートに取り付けられた第1の導電性トラッ
ク、及び前記第2の
薄膜トランジス
タのゲートに取り付けられた第2の導電性トラッ
クを更に備えており、
前記第1の導電性トラックの内の少なくとも1つは前記第2の
薄膜トランジスタの内の1つのゲートに更に取り付けられていることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項10】
前記有機発光部
品は、第1の放射線を放射するように適合された第1の有機発光部
品及び第2の放射線を放射するように適合された第2の有機発光部
品を少なくとも有しており、
前記第1の有機発光部品に接続された第1の
薄膜トランジス
タのゲートに取り付けられた前記第1の導電性トラッ
クは、前記第1の有機発光部品に隣り合う前記有機光検出
器に接続された第2の
薄膜トランジス
タのゲートに更に取り付けられていることを特徴とする請求項
9に記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記有機光検出
器を覆う赤外線フィル
タを更に備えていることを特徴とする請求項1~
10のいずれか1つに記載の光電子デバイス。
【請求項12】
ユーザの少なくとも1つの指紋を検出するための請求項1~
11のいずれか1つに記載の光電子デバイ
スの使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に光電子デバイスに関し、より具体的にはディスプレイスクリーン及び画像センサを備えたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのコンピュータ、タッチセンサ式タブレット、携帯電話、スマートウォッチは、タッチセンサ式又は非タッチセンサ式のディスプレイスクリーン及びカメラを備えている。指紋センサを備えたこのタイプの多くのデバイスが更にある。このような指紋センサは、一般にディスプレイスクリーンが占める表面の外側に配置されている。
【0003】
更に最近では、ディスプレイスクリーンの外周部に又はディスプレイスクリーンの下側でも使用され得る紋様画像センサが提供されている。このような画像センサの技術が、例えば仏国特許出願公開第2996933 号明細書及び国際公開第2015/0293661 号パンフレット(B12003)の文献に記載されている。
【0004】
この技術の出現によって、ディスプレイスクリーンの下側に画像センサの形態で形成された指紋センサを電子デバイスに一体化することが可能になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像センサ及びディスプレイスクリーンが一体化されたこのようなデバイスの製造を改良することが望ましい。
【0006】
一実施形態の1つの目的は、ディスプレイスクリーン及び画像センサを備えた既知の電子デバイスの欠点の全て又は一部に対処することである。
【0007】
一実施形態の別の目的は、画像センサが有機半導体材料で少なくとも部分的に形成されることである。
【0008】
一実施形態の別の目的は、既知の表示システムの製造より簡単な、ディスプレイスクリーン及び画像センサを備えた光電子デバイスを提供することである。
【0009】
別の目的は、光電子デバイスの厚さを減らすことである。
【0010】
一実施形態の別の目的は、ディスプレイスクリーン及び画像センサを備えたタッチセンサ式の表面を実現することである。
【0011】
一実施形態の別の目的は、印刷技術を使用して、例えばインクジェット、ヘリオグラフィ、シルクスクリーン、フレキソ印刷又はコーティングによって層を連続的に堆積させることにより、光電子デバイスの全て又は一部を形成し得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、一実施形態は、光電子デバイスであって、ディスプレイスクリーン及び画像センサを備えており、前記ディスプレイスクリーンは、第1のトランジスタに接続された有機発光部品のマトリクスを有しており、前記画像センサは、第2のトランジスタに接続された有機光検出器のマトリクスを有しており、前記有機発光部品に関する前記光電子デバイスの解像度が300ppiより高く、前記有機光検出器に関する前記光電子デバイスの解像度が300ppiより高く、前記光電子デバイスの厚さ全体が2mm未満であることを特徴とする光電子デバイスを提供する。
【0013】
一実施形態によれば、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタは、第1の電気絶縁層と接する半導体領域を有している。
【0014】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは第2の電気絶縁層を更に備えており、全ての第1の電極が前記第2の電気絶縁層と接している。
【0015】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記有機発光部品の全て及び/又は前記有機光検出器の全てに取り付けられた第2の電極を更に備えている。
【0016】
一実施形態によれば、前記第2の電極は前記有機発光部品の全て及び前記有機光検出器の全てと接している。
【0017】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは、基板と、前記基板を覆って、前記有機発光部品及び前記有機光検出器の全てを含む層の積層体とを備えており、前記有機光検出器は前記有機発光部品と前記基板との間に配置されているか、又は前記有機発光部品は前記有機光検出器と前記基板との間に配置されている。
【0018】
一実施形態によれば、前記有機光検出器は、前記有機光検出器の全てに共有されて開口部を有する少なくとも1つの導電層又は半導体層を有しており、前記有機発光部品は、前記開口部を貫通する導電素子を介して前記第1のトランジスタに接続されている。
【0019】
一実施形態によれば、前記第2の電極は前記有機発光部品の全てに取り付けられ、開口部を有しており、前記有機光検出器は、前記開口部を貫通する導電素子を介して前記第2のトランジスタに接続されている。
【0020】
一実施形態によれば、前記有機光検出器の少なくとも1つは2以上の有機発光部品を覆っている。
【0021】
一実施形態によれば、各有機光検出器は1つの有機発光部品を覆っている。
【0022】
一実施形態によれば、前記導電層又は半導体層は前記第2の電極に取り付けられている。
【0023】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記有機光検出器を覆う第1の色フィルタを更に備えている。
【0024】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記有機発光部品を覆う第2の色フィルタを更に備えている。
【0025】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記第1の色フィルタと前記第2の色フィルタとの間に延びて、前記有機光検出器によって検出される放射線を通さない層を更に備えている。
【0026】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは、各有機光検出器を覆う角度フィルタを更に備えており、前記角度フィルタは、前記光電子デバイスの面に直交する方向に対する入射角が閾値より大きい前記放射線の光線を遮断して、前記面に直交する方向に対する入射角が前記閾値より小さい前記放射線の光線を通過させるように適合されている。
【0027】
一実施形態によれば、各有機発光部品は、前記有機発光部品によって放射される放射線の大部分が放射される領域である第1のアクティブ領域を有しており、各有機光検出器は、前記有機光検出器によって検出される放射線の大部分が検出される領域である第2のアクティブ領域を有している。
【0028】
一実施形態によれば、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタは、ゲートを有する電界効果トランジスタであり、前記光電子デバイスは、前記第1のトランジスタのゲートに取り付けられた第1の導電性トラック、及び前記第2のトランジスタのゲートに取り付けられた第2の導電性トラックを更に備えており、前記第1の導電性トラックの内の少なくとも1つは前記第2のトランジスタの内の1つのゲートに更に取り付けられている。
【0029】
一実施形態によれば、前記有機発光部品は、第1の放射線を放射するように適合された第1の有機発光部品及び第2の放射線を放射するように適合された第2の有機発光部品を少なくとも有しており、前記第1の有機発光部品に接続された第1のトランジスタのゲートに取り付けられた前記第1の導電性トラックは、前記第1の有機発光部品に隣り合う前記有機光検出器に接続された第2のトランジスタのゲートに更に取り付けられている。
【0030】
一実施形態によれば、前記光電子デバイスは、前記有機光検出器を覆う赤外線フィルタを更に備えている。
【0031】
一実施形態は、ユーザの少なくとも1つの指紋を検出するための上記に定義されているような光電子デバイスの使用法を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0033】
【
図1】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの一実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図2】
図1の実施形態を示す別の部分的な概略断面図である。
【
図3】ディスプレイスクリーン及び画像センサの別の配置を示す、
図2と同様の部分的な概略断面図である。
【
図4】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図5】
図4に示されている光電子デバイスの部分的な概略平面図である。
【
図6】
図4に示されている光電子デバイスの別の部分的な概略平面図である。
【
図7】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図8】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図9】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図10】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図11】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図12】
図11に示されている光電子デバイスの角度フィルタの実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【
図13】
図11に示されている光電子デバイスの角度フィルタの実施形態を示す部分的な概略平面図である。
【
図14】画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用な動作及び要素のみが図示され、詳細に記載されている。特に、ディスプレイスクリーン及び画像センサの動作は略述されておらず、記載された実施形態は通常のスクリーン及びセンサと適合する。更に、ディスプレイスクリーン及び画像センサが一体化されている電子デバイスの他の部品も略述されておらず、記載された実施形態は、ディスプレイスクリーンを備えた電子デバイスの通常の他の部品と適合する。
【0035】
特に示されていない場合、共に取り付けられた2つの要素を参照するとき、これは、導体以外のいかなる中間要素も無しの直接取付を表し、共に接続又は連結された2つの要素を参照するとき、これは、これら2つの要素が直接接続され得るか、又は一若しくは複数の他の要素を介して接続され得ることを表す。
【0036】
以下の記載では、「程度」及び「実質的に」という表現は10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。
【0037】
更に、特に示されていない場合、「最上部」、「底部」などの用語の絶対位置の修飾語、又は「上方」、「下方」、「より高い」、「下側」などの用語の相対位置の修飾語を参照する場合、図面に示されている向きを指す。
【0038】
画像の画素は、ディスプレイスクリーンによって表示される画像の単位素子に相当する。ディスプレイスクリーンがカラー画像のディスプレイスクリーンであるとき、ディスプレイスクリーンは一般に、画像の各画素を表示するために発光する及び/又は光強度を調節するための少なくとも3つの要素を有している。これら3つの要素は表示サブ画素とも称され、夫々が実質的に単一色(例えば赤色、緑色及び青色)の光放射線を放射する。これら3つの表示サブ画素によって放射される光放射線を重ね合わせることにより、表示画像の画素に対応する色感覚が観察者に与えられる。この場合、画像の画素を表示するために使用される3つの表示サブ画素によって形成される集合体がディスプレイスクリーンの表示画素と称される。ディスプレイスクリーンがモノクロ画像のディスプレイスクリーンであるとき、ディスプレイスクリーンは一般に、画像の各画素を表示するための単一の光源を有している。
【0039】
表示サブ画素又は光検出器の光電子部品、特に発光部品のアクティブ領域は、光電子部品によって与えられる電磁放射線の大部分が放射される領域、又は光電子部品によって受ける電磁放射線の大部分が検出される領域を指す。本開示の残り部分では、光電子部品のアクティブ領域の大部分、好ましくは全てが少なくとも1つの有機材料又は有機材料の混合物から形成されているとき、この光電子部品は有機と称される。
【0040】
別の実施形態は、ディスプレイスクリーン及び画像センサを備えた光電子デバイスを提供する。ディスプレイスクリーンは、有機発光部品を夫々有する表示サブ画素のマトリクスを有しており、画像センサは有機光検出器のマトリクスを有している。一実施形態によれば、表示サブ画素の発光部品のアクティブ領域は、光検出器のアクティブ領域と実質的に同一の面に形成されている。一実施形態によれば、発光部品及び光検出器は共通の電極を有している。
【0041】
図1及び
図2は夫々、画像センサ及びディスプレイスクリーンを備えた光電子デバイス5の一実施形態を部分的且つ概略的に示す側断面図及び断面平面図である。
図2は、
図1の線II-IIに沿った断面図である。
【0042】
光電子デバイス5は、
図1の下から上に、
基板10と、
薄膜トランジスタT1, T2が形成されている積層体12と、
電極14, 15(電極14はトランジスタT1の内の1つに夫々接続されており、電極15はトランジスタT2の内の1つに夫々接続されている)と、
電極14の内の1つと夫々接している発光部品16、例えばOLEDとも称される有機発光ダイオード16、及び電極15の内の1つと夫々接している光検出器18、例えばOPD とも称される有機フォトダイオード18(有機発光ダイオード16及び有機フォトダイオード18は電気絶縁層20によって横方向に分離している)と、
全ての有機発光ダイオード16及び全ての有機フォトダイオード18と接している電極22と、
被覆体24と
を備えている。
【0043】
発光部品16に関する光電子デバイスの解像度が300ppiより高く、光検出器18に関する光電子デバイスの解像度が300ppiより高いことが好ましい。光電子デバイスの厚さ全体が2mm未満であることが好ましい。
【0044】
一実施形態によれば、各有機発光ダイオード16はアクティブ領域30を有しており、電極14, 22はアクティブ領域30と接している。
【0045】
一実施形態によれば、各有機フォトダイオード18は、
図1の下から上に、
電極15の内の1つと接する第1の界面層40と、
第1の界面層40と接するアクティブ領域42と、
アクティブ領域42と接する第2の界面層44と
を有しており、電極22は第2の界面層44と接している。
【0046】
実施形態によれば、積層体12は、
基板10上に載置されて、トランジスタT1, T2のゲート導体を形成している導電性トラック50と、
ゲート導体50及びゲート導体50間の基板10を覆って、トランジスタT1, T2のゲート絶縁体を形成している誘電体材料の誘電体層52と、
ゲート導体50に対向して誘電体層52上に載置されているアクティブ領域54と、
アクティブ領域54と接して、トランジスタT1, T2のドレインコンタクト及びソースコンタクトを形成している導電性トラック56と、
アクティブ領域54及び導電性トラック56を覆っている誘電体材料の層58と
を有しており、電極14は絶縁層58上に載置されて、絶縁層58を貫通する導電性バイア60を介して導電性トラック56の内の一部に取り付けられており、電極15は絶縁層58上に載置されて、絶縁層58を貫通する導電性バイア62を介して導電性トラック56の内の一部に取り付けられている。
【0047】
変形例として、トランジスタT1, T2はトップゲート型とすることができる。
【0048】
界面層40又は界面層44は電子注入層又は正孔注入層に相当し得る。界面層40又は界面層44の仕事関数は、この界面層がカソードの機能を果たすか又はアノードの機能を果たすかに応じて正孔及び/又は電子を遮断、収集又は注入するように適合されている。より具体的には、界面層40又は界面層44がアノードの機能を果たすとき、界面層40又は界面層44は、正孔を注入して電子を遮断する層に相当する。そのため、界面層40又は界面層44の仕事関数は4.5 eV以上であり、好ましくは5eV以上である。界面層40又は界面層44がカソードの機能を果たすとき、界面層40又は界面層44は電子を注入して正孔を遮断する層に相当する。そのため、界面層40又は界面層44の仕事関数は4.5 eV以下であり、好ましくは4.2 eV以下である。
【0049】
一実施形態によれば、電極14又は電極22は、有利には発光ダイオード16のための電子注入層又は正孔注入層としての機能を直接果たし、発光ダイオード16のために、アクティブ領域30を挟持して電子注入層又は正孔注入層としての機能を果たす界面層を設ける必要がない。別の実施形態によれば、電子注入層又は正孔注入層としての機能を果たす界面層が、アクティブ領域30と電極14, 15, 22との間に設けられ得る。
【0050】
基板10は剛性基板又は可撓性基板とすることができる。基板10は単層構造を有することができるか、又は少なくとも2層の積層体に相当し得る。剛性基板の例として、珪素、ゲルマニウム又はガラスで形成された基板が挙げられる。基板10は可撓性膜であることが好ましい。可撓性基板の例として、PEN (ポリエチレンナフタレート)、PET (ポリエチレンテレフタレート)、PI(ポリイミド)、CTA (セルローストリアセテート)、COP (シクロオレフィンコポリマー)又はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の膜が挙げられる。基板10の厚さは5μmと1000μmとの間とすることができる。一実施形態によれば、基板10は、10μm~300 μm、好ましくは75μm~250 μm、特に125 μm程度の厚さを有して可撓性の性質を有することができ、すなわち、基板10は外力の作用下で破壊する又は裂けることなく変形することができ、特に撓むことができる。基板10は、光電子デバイス5の有機層を保護するように実質的に酸素気密及び湿気気密な少なくとも1つの層を有し得る。基板10は、原子層堆積(ALD) 法によって堆積した一又は複数の層、例えばAl2O3で形成された層を含んでもよい。
【0051】
一実施形態によれば、電極14, 15及び電極22を形成する材料は、
透明導電性酸化物(TCO) 、特にITO 、酸化アルミニウム亜鉛(AZO) 、酸化ガリウム亜鉛(GZO) 、ITO/Ag/ITO合金、ITO/Mo/ITO合金、AZO/Ag/AZO合金又はZnO/Ag/ZnO合金、
金属又は金属合金、例えば銀(Ag)、金(Au)、鉛(Pb)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、タングステン(W) 、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、又はマグネシウム及び銀の合金(MgAg)、
炭素、銀及び銅のナノワイヤ、
グラフェン、並びに
これらの材料の少なくとも2つの混合物
を含む群から選択されている。
【0052】
電極22はMgAgで形成されており、電極14はAlで形成されており、電極15はITO 又はITO/Mo/ITOで形成されていることが好ましい。
【0053】
ディスプレイスクリーンによって放射される放射線が被覆体24を通って光電子デバイス5 から抜け出る場合、電極22及び被覆体24は、有機発光ダイオード16によって放射される電磁放射線及び有機フォトダイオード18によって検出される電磁放射線を少なくとも部分的に通す。電極22は、例えばMgAgで形成されている。そのため、電極22は、光放射を最大化するように光共振器の機能を果たすべく、例えば約50%の半透明であることが好ましい。そのため、電極14, 15及び基板10は、有機発光ダイオード16によって放射される電磁放射線及び有機フォトダイオード18によって検出される電磁放射線を通し得ない。ディスプレイスクリーンによって放射される放射線が基板10を通って光電子デバイス5 から抜け出る場合、電極14, 15及び基板10は、有機発光ダイオード16によって放射される電磁放射線及び有機フォトダイオード18によって検出される電磁放射線を少なくとも部分的に通す材料で形成されている。電極14, 15は、例えばTCO で形成されている。そのため、電極22は、有機発光ダイオード16によって放射される電磁放射線及び有機フォトダイオード18によって検出される電磁放射線を通し得ない。
【0054】
絶縁層20は単層又は多層構造を有して、窒化珪素(SiN) 、酸化珪素(SiO2)又はポリマー、特に樹脂で形成された少なくとも1つの層を有することができる。絶縁層20は、特にSiN 又はSiO2で形成された無機層及びポリマーで形成された少なくとも1つの層の積層体に相当し得る。
【0055】
被覆体24は可視光線を通すか又は部分的に通す。被覆体24は、好ましくは実質的に気密であり水密である。被覆体24を形成する材料はポリエポキシド又はポリアクリレートを含む群から選択されている。ポリエポキシドの内、被覆体24を形成する材料は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、特にビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE) 、ビスフェノールA及びテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂(ENR) 、特にフェノールノボラック型エポキシ(EPN) 樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ(ECN) 樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、グリシジル基を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシド、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、特にテトラグリシジルメチレンジアニリン(TGMDA) エーテル、並びにこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を含む群から選択され得る。ポリアクリレートの内、被覆体24を形成する材料は、アクリル酸、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA) 及びこれらの製品の誘導体を含む単量体から形成され得る。被覆体24は、例えばプラズマ化学蒸着法(PECVD) によって堆積したSiN の少なくとも1つの層、及び/又は例えばALD によって堆積した酸化アルミニウム(Al2O3) の層を有し得る。被覆体24は、SiN の2つの層間に有機層を有する多層構造を有することができ、有機層は吸湿層としての機能を果たす。
【0056】
被覆体24が少なくとも1つのポリエポキシド又はポリアクリレートを有するとき、被覆体24の厚さは1μm~50μmの範囲内であり、好ましくは5μm~40μmの範囲内であり、特には15μm程度である。被覆体24がSiN の層を有するとき、被覆体24の厚さは100 nm~300 nmの範囲内である。被覆体24がAl2O3の層を有するとき、被覆体24の厚さは1nm~50nmの範囲内である。
【0057】
発光ダイオード16のアクティブ領域30は、例えば発光材料で形成されている。発光材料は、M.T. Bernius、M. Inbasekaran、J. O'Brien及びW. Wu 著の「Progress with Light-Emitting Polymers」という題名の刊行物(Advanced Materials, 2000, Volume 12, Issue 23, p. 1737-1750)に記載されているような高分子発光材料、又は米国特許第5294869 号明細書に記載されているようなアルミニウムトリスキノリンのような低分子量の発光材料とすることができる。発光材料は、発光材料及び蛍光染料の混合物、又は発光材料及び蛍光染料の層構造を有することができる。発光ポリマーは、ポリフルオレン、ポリベンゾチアゾール、ポリトリアリールアミン、ポリフェニレンビニレン及びポリチオフェンを含んでいる。好ましい発光ポリマーは、9,9-di-n- オクチルフルオレン(F8)、N, N-bis(フェニル)-4-sec- ブチルフェニルアミン(TFB) 、ベンゾチアジアゾール(BT)、及びトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)でドープされた4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP) のホモポリマー及びコポリマーを含んでいる。アクティブ領域30の厚さは1nm~100 nmの範囲内である。
【0058】
界面層40又は界面層44が電子注入層の機能を果たす場合、界面層40又は界面層44を形成する材料は、
金属酸化物、特に酸化チタン又は酸化亜鉛、
分子ホスト/ドーパント系、特にNET-5/NDN-1 又はNET-8/MDN-26の商標名でNovaled 社によって市販されている製品、
ドープされた導電性ポリマー又は半導体ポリマー、例えばポリ(3,4)-エチレンジオキシチオフェン及びトシラートの混合物であるPEDOT:トシラートポリマー、
炭酸塩、例えばCsCO3 、
高分子電解質、例えばポリ[9,9-bis(3'-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン-alt-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)](PFN) 、ポリ[3-(6-トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン](P3TMAHT) 、又はポリ[9,9-bis(2-エチルヘキシル)フルオレン]-b-ポリ[3-(6-トリメチルアンモニウムヘキシル)チオフェン](PF2/6-b-P3TMAHT) 、
ポリエチレンイミン(PEI) ポリマー、又はエトキシ化ポリエチレンイミン(PEIE)ポリマー、プロポキシ化ポリエチレンイミンポリマー及び/若しくはブトキシ化ポリエチレンイミンポリマー、
MgAg、
トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(III) (Alq3)、
2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4- オキサジアゾール(Bu-PBD)、並びに
これらの材料の2以上の混合物
を含む群から選択されている。
【0059】
下側界面層40は電子注入層の機能を果たし、エトキシ化ポリエチレンイミンポリマーで形成されていることが好ましい。
【0060】
界面層40又は界面層44が正孔注入層の機能を果たす場合、界面層40又は界面層44を形成する材料は、
ドープされた導電性ポリマー又は半導体ポリマー、特にSigma-Aldrich という企業によってPlexcore OC RG-1100 又はPlexcore OC RG-1200 の商標名で市販されている材料、ポリ(3,4)-エチレンジオキシチオフェン及びポリスチレンスルホン酸ナトリウムの混合物であるPEDOT:PSS ポリマー、又はポリアニリン、
分子ホスト/ドーパント系、特にNHT-5/NDP-2 又はNHT-18/NDP-9の商標名でNovaled という企業によって市販されている製品、
高分子電解質、例えばナフィオン、
金属酸化物、特に酸化モリブデン、酸化バナジウム、ITO 又は酸化ニッケル、
Bis[(1-ナフチル)-N-フェニル]ベンジジン(NPB) 、
トリアリールアミン(TPD) 、並びに
これらの材料の2以上の混合物
を含む群から選択され得る。
【0061】
界面層40又は界面層44が正孔注入層の機能を果たす場合、界面層40又は界面層44を形成する材料は、ドープされた導電性ポリマー又は半導体ポリマーであることが好ましい。
【0062】
上側界面層44は正孔注入層の機能を果たし、PEDOT:PSS で形成されていることが好ましい。PEDOT:PSS の1つの利点は、PEDOT:PSS が印刷技術を使用して、例えばインクジェット、ヘリオグラフィ、シルクスクリーン又はコーティングによって容易に堆積し得るということである。
【0063】
下側界面層40の厚さは単層と10μmとの間の範囲内であり、好ましくは単層と60μmとの間の範囲内であり、特には10nm程度である。アクティブ領域42を覆う上側界面層44の厚さは10nm~20μmの範囲内であり、好ましくは50nm~500 nmの範囲内であり、特には100 nm程度である。
【0064】
アクティブ領域42は少なくとも1つの有機材料を含み、複数の有機材料の積層体又は混合物を含み得る。アクティブ領域42は、電子供与体ポリマー及び電子受容体分子の混合物を含み得る。アクティブ領域42の機能ゾーンは、下側界面層40及び上側界面層44の重なり部分により画定される。アクティブ領域42の機能ゾーンを通過する電流は数フェムトアンペアから数マイクロアンペアの範囲内とすることができる。下側界面層40を覆うアクティブ領域42の厚さは、50nm~5μmの範囲内とすることができ、好ましくは300 nm~2μmの範囲内とすることができ、例えば500 nm程度とすることができる。
【0065】
アクティブ領域42は小分子、オリゴマー又はポリマーを含むことができる。アクティブ領域42は有機材料又は無機材料を含むことができる。アクティブ領域42は両極性半導体材料を含むことができ、つまり、例えばバルクヘテロ接合を形成するようにナノメートルスケールで積層の形態又は均質な混合物の形態でN型半導体材料及びP型半導体材料の混合物を含むことができる。
【0066】
アクティブ領域42の形成に適したP型半導体材料の例として、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ[N-9'-ヘプタデカニル-2,7- カルバゾール-alt-5,5-(4,7-di-2-チエニル-2',1',3'-ベンゾチアジアゾール)](PCDTBT)、ポリ[(4,8-bis-(2-エチルヘキシルオキシ)-ベンゾ[1,2-b;4,5-b']ジチオフェン)-2,6-ジイル-alt-(4-(2-エチルヘキサノイル)-チエノ[3,4-b]チオフェン)-2,6-ジイル];4,5-b']ジチオフェン)-2,6-ジイル-alt-(5,5'-bis(2-チエニル)-4,4,-ジノニル-2,2'-ビチアゾール)-5',5''-ジイル](PBDTTT-C)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチル-ヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン-ビニレン](MEH-PPV)、又はポリ[2,6-(4,4-bis-(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b;3,4-b']ジチオフェン)-alt-4,7(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)](PCPDTBT) が挙げられる。
【0067】
アクティブ領域42の形成に適したN型半導体材料の例として、フラーレン、特にC60 、[6,6]-フェニル-C61-メチルブタノエート([60]PCBM)、[6,6]-フェニル-C71-メチルブタノエート([70]PCBM)、ペリレンジイミド、酸化亜鉛(ZnO) 、又は量子ドット若しくは小分子を形成し得るナノ結晶が挙げられる。
【0068】
下側界面層40、アクティブ領域42及び上側界面層44を含む積層体の厚さは500 nm~4μmの範囲内であり、好ましくは500 nm~1μmの範囲内である。
【0069】
導電性トラック50, 56は、電極14, 15及び/又は電極22の材料と同一の材料で形成され得る。
【0070】
アクティブ領域54は、多結晶シリコン、特に低温多結晶シリコン(LTPS)、アモルファスシリコン(aSi) 、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)若しくはポリマーで形成されることができ、又は有機薄膜トランジスタ(OTFT)を形成するために公知の方法で使用される小分子を含むことができる。
【0071】
一実施形態によれば、トランジスタT1, T2のアクティブ領域54は異なる材料で形成され得る。例として、フォトダイオードに接続されたトランジスタT2のアクティブ領域54はIGZO又はaSi で形成されることができ、発光ダイオードに接続されたトランジスタT1のアクティブ領域54はLTPSで形成され得る。
【0072】
絶縁層52はSiN 、SiO2又は有機ポリマーで形成され得る。絶縁層52の厚さは10nm~4μmの範囲内とすることができる。
【0073】
絶縁層52はSiN 、SiO2又は有機ポリマーで形成され得る。絶縁層52の厚さは10nm~4μmの範囲内とすることができる。
【0074】
絶縁層58はSiN 、SiO2又は有機ポリマーで形成され得る。絶縁層58の厚さは10nm~4μmの範囲内とすることができる。
【0075】
光電子デバイス5は、例えば被覆体24上に配置された偏光フィルタを更に備えることができる。光電子デバイス5は、光検出器18に達する放射線の波長を選択するために光検出器18に対向して色フィルタを更に備えることができる。
【0076】
図2に示されているように、発光ダイオード16及び光検出器18は行及び列に配置されており、発光ダイオード16は、光検出器18と交互に設けられるように配置されている。
【0077】
本実施形態では、
図2の断面図に発光ダイオード16のアクティブ領域30が正方形状に示されており、フォトダイオード18のアクティブ領域42が矩形状に示されている。しかしながら、アクティブ領域30, 42の形状は異なることができ、例えば多角形とすることができることは明らかである。
図2の断面では、フォトダイオード18のアクティブ領域42によって占める表面は、発光ダイオード16のアクティブ領域30の表面より小さい。しかしながら、発光ダイオード16のアクティブ領域30の表面及びフォトダイオード18のアクティブ領域42の表面が対象とする用途に応じて決められることは明らかである。
【0078】
一実施形態によれば、光電子デバイス5は、光検出器18のマトリクスに対する不図示の動作要素の位置を検出するように適合されている。特に、光電子デバイス5は、光検出器18のマトリクスの面と平行な面における動作要素の動き、及び動作要素と光検出器18のマトリクスとの距離Zの変化を検出するように適合され得る。
【0079】
一実施形態によれば、光電子デバイス5は、動作部材が光源とマトリクスとの間に位置するときにセンサのマトリクスへの動作部材の影の変化を検出して、検出された影の変化から動作要素の位置変化を表す情報を推定するように適合されている。光源は、周辺光、例えば太陽又は建物の部屋の屋内の電気照明であることが好ましい。
【0080】
別の実施形態によれば、光電子デバイス5は、動作要素によって少なくとも部分的に戻り得る放射線の放射源を更に備えている。光電子デバイス5は、光検出器のマトリクスに戻る放射線を検出して、検出された放射線から動作要素の位置変化を表す情報を推定するように適合されている。この放射線は、例えば可視光線又は赤外線である。この場合、光子センサにより確かめられる動作要素での可視光線又は赤外線の反射/拡散を利用して、動作要素の位置に関する情報を得ることが好ましい。
【0081】
表示サブ画素は、第1の波長の放射線を放射するように適合された第1の表示サブ画素、第2の波長の放射線を放射するように適合された第2の表示サブ画素、及び第3の波長の放射線を放射するように適合された第3の表示サブ画素に分配され得る。一実施形態によれば、第1の表示サブ画素、第2の表示サブ画素及び第3の表示サブ画素の発光ダイオードは、第1の波長の放射線、第2の波長の放射線及び第3の波長の放射線を夫々放射するように適合されている。別の実施形態によれば、第1の表示サブ画素、第2の表示サブ画素及び第3の表示サブ画素の発光ダイオードは第4の波長の放射線を放射するように適合されており、第1の表示サブ画素、第2の表示サブ画素及び第3の表示サブ画素は、第4の波長の放射線を第1の波長の放射線、第2の波長の放射線及び第3の波長の放射線に夫々変換するように適合された光輝性ブロックを有している。一実施形態によれば、第1の波長は青色の光に対応し、440 nm~490 nmの範囲内にある。一実施形態によれば、第2の波長は緑色の光に対応し、510 nm~570 nmの範囲内にある。一実施形態によれば、第3の波長は赤色の光に対応し、600 nm~720 nmの範囲内にある。
【0082】
図3は、フォトダイオード18が表示サブ画素の一部の近くのみ、例えば表示サブ画素の一部の周りにのみ設けられているフォトダイオード18の別の配置を示す
図2と同様の図である。一実施形態によれば、フォトダイオード18は、動作要素、例えばユーザの指によって反射する放射線を検出するように構成され得る。一実施形態によれば、画像センサを使用してユーザの指紋を検出することができる。特に画像センサによって取得した画像の処理アルゴリズムを実施するために、画像センサが、優先的には好ましい波長範囲、例えば緑色の画像を取得するように構成されることが有利であり得る。この場合、光検出器18は、好ましい波長範囲の光を放射する表示サブ画素、例えば緑色の光を放射する表示サブ画素のアクティブ領域30の周りにのみ配置されていることが好ましい。
【0083】
対象とする材料に応じて、画像センサの層及びディスプレイスクリーンの層を形成する方法は、例えば、特にはゾル-ゲル形態で所望の位置に有機層を形成する材料の直接印刷によるいわゆるアディティブ法、例えばインクジェット、ヘリオグラフィ、シルクスクリーン、フレキソ印刷、スプレーコーティング又はドロップキャストによるアディティブ法に相当し得る。対象とする材料に応じて、画像センサの層及びディスプレイスクリーンの層を形成する方法は、いわゆるサブトラクティブ法に相当してもよく、この方法では、有機層を形成する材料を構造全体に堆積させ、次に、例えばフォトリソグラフィ又はレーザアブレーションによって未使用部分を除去する。対象とする材料に応じて、構造全体の堆積を、例えば液相成長法、カソードスパッタリング法又は蒸着法によって行ってもよい。堆積法として、特にスピンコーティング、スプレーコーティング、ヘリオグラフィ、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、フレキソ印刷又はシルクスクリーンのような方法が含まれてもよい。層が金属製であるとき、金属を、例えば支持体全体に蒸着法又はカソードスパッタリング法によって堆積させ、金属層をエッチングによって画定する。
【0084】
画像センサの層及び/又はディスプレイスクリーンの層の少なくとも一部が印刷技術を使用して形成され得ることが有利である。前述したこれらの層の材料は、液体の形態で、例えば導電性インク又は半導体インクの形態でインクジェットプリンタを使用して堆積され得る。本明細書では「液体の形態の材料」は、印刷技術によって堆積され得るゲル形態の材料を更に指す。アニール工程は異なる層の堆積間に任意に行われるが、アニール温度は150 ℃を超えることができず、堆積処理及び任意のアニール処理は大気圧で行われ得る。
【0085】
一実施形態によれば、トランジスタT1のゲートを制御するための導電性トラック50は、トランジスタT2のゲートを制御するための導電性トラック50から離れている。一実施形態によれば、トランジスタT2の少なくとも一部のゲートを制御するための導電性トラック50は、トランジスタT1の少なくとも一部のゲートを制御するための導電性トラック50と共有されている。このため、光電子デバイスの空間要件を下げることが可能になることが有利である。例として、光電子デバイスが実質的に単一色(例えば赤色、緑色及び青色)で光放射線を夫々放射する複数タイプの表示サブ画素を備えている場合、これらの色の少なくとも1つで放射する発光ダイオード16に接続されたトランジスタT1のゲートを制御するための導電性トラック50は、これらの発光ダイオード16に隣り合う光検出器18に接続されたトランジスタT2のゲートを制御するための導電性トラック50と組み合わせられ得る。この場合、光検出器18によって検出される信号の読み取りは発光ダイオード16のアクティブ化と同時的である。
【0086】
図4は、光電子デバイス70の一実施形態の概略断面図である。光電子デバイス70は、光検出器18及び発光ダイオード16が基板10を覆う層の積層体の2つの異なるレベルに形成されている点を除いて、前述した光電子デバイス5の全ての要素を備えている。本実施形態では、基板10を覆う一組の層の内、光検出器18は、トランジスタT1, T2が形成されている層の積層体12と発光ダイオード16が形成されているレベルとの間に形成されている。特に、光検出器18は、トランジスタT1, T2を積層方向に覆うことができる、及び/又は発光ダイオード16の下側に積層方向に延びることができる。このため、特に、光検出器18によって占める表面を増大させ、ひいては入射放射線の吸光度を高めることが可能になる。
【0087】
一実施形態によれば、光電子デバイス70は、フォトダイオード18を覆う電気絶縁性材料の絶縁層71を備えており、発光ダイオード16に関連付けられた電極14は絶縁層71上に形成されている。発光ダイオード16は、絶縁層71上に載置された電気絶縁層72によって横方向に離れている。そのため、電極14をトランジスタT1に接続するバイア60が、連続的に絶縁層71, 20, 58を通って、任意に光検出器18の内の1つ及び関連付けられた電極15を通って延びている。
【0088】
一実施形態によれば、フォトダイオード18の界面層44は共有されており、絶縁層58に亘って延びている1つの界面層44を形成しており、この界面層44は発光ダイオード16に接続された導電性バイア60が貫通するための開口部73を有している。界面層44は光検出器18のための電極の機能を果たし得る。変形例として、界面層44は、絶縁層71, 72を貫通する不図示の少なくとも1つの導電性バイアを介して電極22に接続され得る。
【0089】
動作中、フォトダイオード18は、基本的に発光ダイオード16間に伝搬する入射光を検出する。
【0090】
図5及び
図6は、発光ダイオード16及びフォトダイオード18の2つの配置を概略的に示す平面図である。
【0091】
図5に示されている実施形態では、各フォトダイオード18は1つの発光ダイオード16の下側で延びており、発光ダイオード16に対して横方向に突出している。フォトダイオード18は、対応する発光ダイオード16を中心として配置され得る。
【0092】
図6に示されている実施形態では、各フォトダイオード18は、複数の発光ダイオード16、例えば4つの発光ダイオード、特に青色の光を放射する発光ダイオード、赤色の光を放射する発光ダイオード及び緑色の光を放射する2つの発光ダイオードの下側で延びている。
【0093】
図7は、光電子デバイス75の一実施形態の概略断面図である。光電子デバイス75は、光検出器18の位置及び発光ダイオード16の位置が置き換えられており、発光ダイオード16が、基板10を覆う層の積層体の内、トランジスタT1, T2と光検出器18との間に形成されている点を除いて、
図4に示されている光電子デバイス70の全ての要素を備えている。
【0094】
一実施形態によれば、光電子デバイス75は、発光ダイオード16を覆う電気絶縁性材料の絶縁層76を備えており、フォトダイオード18に関連付けられた電極15は絶縁層76上に形成されている。光検出器18は、絶縁層76上に載置された電気絶縁層77によって横方向に離れている。そのため、電極15をトランジスタT2に接続するバイア62が、連続的に絶縁層76, 20, 58を通って、任意に発光ダイオード16の内の1つ及び関連付けられた電極15を通って延びている。
【0095】
一実施形態によれば、電極22は、光検出器18に接続された導電性バイア62が貫通するための開口部78を有している。更に、一実施形態によれば、フォトダイオード18の界面層44は共有されており、絶縁層77に亘って延びている1つの界面層44を形成している。界面層44は光検出器18のための電極の機能を果たし得る。変形例として、界面層44は、絶縁層76, 77を貫通する不図示の少なくとも1つの導電性バイアを介して電極22に接続され得る。
【0096】
本実施形態により、発光ダイオード16の形成に関連付けられた一組の工程の後に、光検出器18の形成を行うことが可能になることが有利である。実際、発光ダイオード16の形成に関連付けられた工程は、光検出器18を製造するために使用される材料と適合しない場合がある150 ℃より高い温度に加熱する工程を含み得る。
【0097】
図8は、光電子デバイス79の一実施形態の概略断面図である。光電子デバイス79は、トランジスタT1及びトランジスタT2が基板10を覆う層の積層体の2つの異なるレベルに形成されている点を除いて、
図4に示されている光電子デバイス70の全ての要素を備えている。本実施形態では、トランジスタT1及び発光ダイオード16は基板10とトランジスタT2との間に形成されている。変形例として、トランジスタT2及び光検出器18は基板10とトランジスタT1との間に形成され得る。
【0098】
本実施形態により、トランジスタT1のアクティブ領域54をトランジスタT2のアクティブ領域54の材料とは異なる材料から容易に製造することが可能になることが有利である。一実施形態によれば、発光ダイオード16に接続されたトランジスタT1のアクティブ領域54がLTPSから形成され得るので、優れた閾値電圧安定性を有するトランジスタT1を得ることが可能になり、光検出器18に接続されたトランジスタT2のアクティブ領域54がIGZO又はaSi から形成され得るので、漏れ電流が10fA未満のトランジスタT2を得ることが可能になる。
【0099】
図9は、光電子デバイス80の一実施形態の概略断面図である。光電子デバイス80は、
図4に関連して前述した光電子デバイス70の全ての要素を備えており、被覆体24上に載置されて光電子デバイス80の積層方向にフォトダイオード18と整列した色フィルタ82をフォトダイオード18毎に更に備えている。色フィルタ82及び被覆体24を覆う密閉層84が図示されている。密閉層84は可視光線を通すか又は部分的に通す。色フィルタ82は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のような着色樹脂又は着色プラスチック材料から形成され得る。色フィルタ82によって、各フォトダイオード18に達する入射放射線をフィルタ処理することが可能になる。このため、優先的には所与の波長領域、例えば緑色の画像を取得することができるので、特に画像センサを使用してユーザの指紋を検出するときに有利になり得る。
【0100】
図10は、光電子デバイス90の一実施形態の概略断面図である。光電子デバイス90は、
図9に関連して前述した光電子デバイス80の全ての要素を備えており、被覆体24上に載置されて光電子デバイス90の積層方向に発光ダイオード16と整列した色フィルタ92を発光ダイオード16毎に更に備えている。可視光線を通さないマスク94が、特に光電子デバイス90の金属トラックと整列して、特に導電性トラック56と整列して、色フィルタ82, 92間に被覆体24に亘って延びることができる。本実施形態では、色フィルタ92の透過率が、下にある発光ダイオード16のアクティブ領域30の発光スペクトルに近い。これは、色フィルタ92が発光ダイオード16のアクティブ領域30によって放射される光を実質的に完全に通過させて、他の波長を遮断することを意味する。
【0101】
色フィルタ92及び不透明なマスク94は反射防止機能を果たす。そのため、密閉層84を覆って、例えば直線偏光子及び1/4波長板を有する防眩被覆体を設ける必要がない。
【0102】
発光ダイオード16のアクティブ領域30によって放射される放射線は、発光部品16を覆う色フィルタ92を通過する。色フィルタ92の透過率が発光ダイオード16の発光スペクトルに近いため、アクティブ領域30によって放射される放射線は色フィルタ92によって実質的に減衰しない。
【0103】
対象が密閉層84の前方に存在する場合、放射線は、不図示の対象、例えばユーザの指によって少なくとも部分的に反射する。反射放射線は、色フィルタ82を除いて不透明なマスク94に吸収され、色フィルタ82では反射放射線は光検出器18に達するまで進む。偏光子及び1/4波長板を有する防眩システムが設けられていないので、反射放射線が画像センサに進んでいる間、反射放射線の減衰は減少する。
【0104】
ディスプレイスクリーン及び画像センサを備えた従来の光電子デバイスのユーザによって感知する反射の大部分が、光電子デバイスの金属トラックに対する反射から生じる。本実施形態では、密閉層84に達する外部の放射線は、不透明なマスク94によって覆われた光電子デバイス90の金属トラックで反射せずに不透明なマスク94に吸収される。更に、色フィルタ82を通過する外部の放射線はほとんど反射しないか、又は全く反射しない。防眩機能がこのようにして得られる。色フィルタ92に達する外部の放射線は、特に電極14で反射することができる。しかしながら、この放射線が色フィルタ92によってフィルタ処理されるとすれば、観察者に向かって反射する放射線の強度は減少する。
【0105】
図11は、光電子デバイス100 の一実施形態の概略断面図である。光電子デバイス100 は、色フィルタ92が設けられておらず、色フィルタ82が角度フィルタ102 と取り替えられている点を除いて、
図10に関連して前述した光電子デバイス90の全ての要素を備えている。
【0106】
各角度フィルタ102 は、角度フィルタ102 の上面104 に対する放射線の入射角に基づき入射放射線をフィルタ処理するように夫々適合されているため、特に各光検出器18は、角度フィルタ102 の上面104 に垂直な軸芯に対する入射角が45°未満、好ましくは30°未満、より好ましくは20°未満、更により好ましくは10°未満の最大入射角より小さい光線のみを受ける。角度フィルタ102 は、角度フィルタ102 の上面104 に垂直な軸芯に対する入射角が最大入射角より大きい入射放射線の光線を遮断するように適合されている。
【0107】
一実施形態によれば、指紋を決定するための用途では、指と上面との接触ゾーンを通過する光線が強く伝送される一方、谷とも称される非接触ゾーンを通過する光線がより弱く伝送されるように、ユーザの指は光電子デバイスの上面と接して置かれる。接触ゾーンに対向して配置された光検出器18は、小さい入射角で拡散する光を集める一方、非接触ゾーンに対向して配置された光検出器18は、光の大部分が角度フィルタ102 によって遮断されるので光をほとんど集めない。
【0108】
別の実施形態によれば、光電子デバイスは、基板10を覆う層の積層体における2つの異なるレベルに形成された、
図10に関連して前述した色フィルタ82, 92並びに
図11に関連して前述した不透明なマスク94及び角度フィルタ102 を備えてもよい。別の実施形態によれば、
図10に関連して前述した色フィルタ82, 92並びに
図11に関連して前述した不透明なマスク94及び角度フィルタ102 は、基板10を覆う層の積層体における2つの異なるレベルに形成されており、色フィルタ82, 92は基板10に対して不透明なマスク94の上側又は下側に形成されている。
【0109】
図12及び
図13は夫々、角度フィルタ102 の一実施形態を部分的且つ概略的に示す断面図及び平面図である。
【0110】
本実施形態では、角度フィルタ102 は、例えば被覆体24によって形成された支持体と、支持体24上に載置されて孔108を画定している壁106 とを有している。「h」という参照符号は支持体24から測定された壁106 の高さを示す。壁106 は、光検出器18によって検出される放射線を通さず、例えば、光検出器18によって検出される放射線を吸収する及び/又は反射する。一実施形態によれば、壁106 は、可視光線及び/又は近赤外線及び/又は赤外線を吸収する。壁106 は不透明なマスク94の材料と同一の材料から形成され得る。
【0111】
図13には、孔108 が正方形の直線部分で示されている。一般に、平面図における孔108 の直線部分は、円形、楕円形又は多角形とすることができ、例えば三角形、正方形又は矩形とすることができる。
【0112】
一実施形態によれば、孔108 は行及び列に配置されている。孔108 の大きさは実質的に同一とすることができる。「w」という参照符号は、行方向又は列方向に沿って測定される孔108 の幅を示す。一実施形態によれば、孔108 は行及び列に均等に配置されている。「p」という参照符号は、孔108 の繰返しピッチ、つまり、行又は列の2つの連続する孔108 の中心間の平面視での距離を示す。
【0113】
図12及び
図13に示されている角度フィルタ102 は、支持体24に対する入射角が以下の式(1)によって定められる最大入射角αより小さい入射放射線の光線のみを通過させることができる。
tanα=w/h (1)
【0114】
w/hの比が小さければ小さい程、最大入射角αも小さくなる。角度フィルタ102 のゼロ入射角の透過率は、角度フィルタ102 の平面視での透明な表面積対吸収表面積の比に比例する。光レベルが低い用途では、画像センサによって集められる光の量を増加させるように透過率が最大であることが望ましい。光レベルが高い用途では、画像センサへの光を遮らないように透過率を減少させることができる。
【0115】
h/wの比は1~20の範囲内とすることができる。ピッチpは5μm~30μmの範囲内とすることができ、例えば約20μmとすることができる。高さhは1μm~1mmの範囲内とすることができ、好ましくは50μm~300 μmの範囲内とすることができ、例えば約100 μmとすることができる。幅wは2μm~30μmの範囲内とすることができ、例えば約10μmとすることができる。
【0116】
孔108 に空気が充填されることができ、又は光検出器18によって検出される放射線を少なくとも部分的に通す材料、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)が充填されることができる。変形例として、角度フィルタ102 によって角度的にフィルタ処理される光線を色彩的にフィルタ処理するように、部分的に吸収する材料が孔108 に充填されることができる。そのため、角度フィルタ102 は、
図9に関連して前述した色フィルタ82の機能を更に果たすことができる。このため、角度フィルタ102 とは異なる色フィルタが設けられている場合に対してシステムの厚さを減少させることが可能になる。部分的に吸収する充填材料は、PDMSのような着色樹脂又は着色プラスチック材料とすることができる。
【0117】
屈折率を角度フィルタ102 と接する上層と適合させるように、又は構造を堅くして角度フィルタ102 の機械保持を高めるように、孔108 の充填材料は適合され得る。
【0118】
図12及び
図13に示されている実施形態では、少なくとも波長を角度的にフィルタ処理するために壁106 全体が吸収材料で形成されている。壁106 は、着色樹脂、例えば着色又は黒色のSU-8樹脂から形成され得る。例として、壁106 は、可視域及び近赤外域の放射線を吸収する黒色樹脂から形成され得る。
【0119】
図12及び
図13に示されている角度フィルタ102 を製造する方法の一実施形態は、
厚さが実質的に高さhと等しい着色樹脂の層を支持体24上に堆積させる工程、
着色樹脂の層に壁106 のパターンをフォトリソグラフィによって印刷する工程、及び
壁106 のみを保持するように着色樹脂の層を現像する工程
を有する。
【0120】
図12及び
図13に示されている角度フィルタ102 を製造する方法の別の実施形態は、
壁106 の所望の形状に相補的な形状を有する型を、フォトリソグラフィ工程によって透明な樹脂から形成する工程、
壁106 を形成する材料を型に充填する工程、及び
得られた構造体を型から取り除く工程
を有する。
【0121】
図12及び
図13に示されている角度フィルタ102 を製造する方法の別の実施形態は、厚さhの着色膜、例えばPDMS、PMMA、PEC 、COP で形成された膜を穿孔する工程を有する。孔108 の所望の大きさ及びピッチを得るために、例えばマイクロニードルを有する微小穿孔ツールを使用して穿孔を行うことができる。
【0122】
変形例によれば、各壁106 は、画像センサによって検出される放射線を少なくとも部分的に通す第1の材料から形成されたコア108 を含むことができ、コア108 は、光検出器18によって検出される放射線を通さず、例えば、光検出器18によって検出される放射線を吸収する及び/又は反射する層によって覆われることができる。第1の材料は樹脂とすることができる。第2の材料は、金属、例えばアルミニウム(Al)若しくはクロム(Cr)、金属合金又は有機材料とすることができる。
【0123】
前述した変形例に係る角度フィルタを製造する方法の一実施形態は、
例えばスピンコーティング又はスロットダイコーティングによって、透明な樹脂の層を支持体上に堆積させる工程、
透明な樹脂の層に壁のパターンをフォトリソグラフィによって印刷する工程、
壁のコアのみを保持するように透明な樹脂の層を現像する工程、及び
特には選択的堆積により、例えばコア上にのみ第2の材料を蒸着させることにより、又はコア及びコア間の支持体上に第2の材料の層を堆積させて、支持体上に存在する第2の材料を除去することにより、コア上に不透明な層又は反射層を形成する工程
を有する。
【0124】
図14は、光電子デバイス110 の一実施形態の概略断面図である。光電子デバイス110 は、
図10に関連して前述した光電子デバイス90の全ての要素を備えており、色フィルタ82, 92及び密閉層84間に配置された赤外線フィルタ112 を更に備えている。赤外線フィルタ112 は、例えば波長が590 nm~1000nmの範囲内である放射線を遮断するように適合されている。赤外線フィルタ112 によって、画像センサへの日射をフィルタ処理することが可能になることが有利である。
【0125】
様々な実施形態が述べられている。様々な変更及び調整が当業者に想起される。異なる変形例を有する様々な実施形態が上述されている。当業者は、進歩性を示すことなくこれらの様々な実施形態及び変形例の様々な要素を組み合わせてもよいことに注目する。特に、
図14に示されている赤外線フィルタ112 は、
図9に示されている光電子デバイス80と共に使用され得る。
【0126】
本特許出願は、本開示の不可欠な部分とみなされる仏国特許出願第18/70644 号明細書の優先権を主張している。