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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】共通駆動電気光学位相変調器アレイ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20230726BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20230726BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G02F1/035
H01S3/067
H01S3/10 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020573117
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019040082
(87)【国際公開番号】W WO2020009972
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】62/693,083
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/298,618
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】グッドノ,グレゴリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】チェウン,エリク・シー
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー,マーク・イー
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05886807(US,A)
【文献】中国特許出願公開第1721919(CN,A)
【文献】特開2003-207668(JP,A)
【文献】米国特許第08426798(US,B2)
【文献】特開2009-229806(JP,A)
【文献】特開平09-054293(JP,A)
【文献】特開2011-043808(JP,A)
【文献】特開2000-075254(JP,A)
【文献】特表2017-525146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0290732(US,A1)
【文献】特表平05-501621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
H01S 3/00 - 3/02
H01S 3/04 - 3/0959
H01S 3/098 - 3/102
H01S 3/105 - 3/131
H01S 3/136 - 3/213
H01S 3/23 - 4/00
G02B 6/12 - 6/14
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学ビームを同時に変調するための光学ビーム変調システムであって、前記光学ビームの各々が異なる波長を有しており、当該光学ビーム変調システムが、
上部表面を有する共通基板と、前記上部表面の内部に形成される複数の3つ以上の並列の導波路とを含む電気光学変調器(EOM)アレイであって、各々の前記導波路は、前記光学ビームのうちの1つを異なる波長で受信し、前記EOMアレイは、前記上部表面に対して形成される電極構造をさらに含む、EOMアレイと、
前記導波路上で伝搬する前記光学ビームを変調する、前記電極構造に対するRF駆動信号を提供する単一のRF源と
を備える、光学ビーム変調システム。
【請求項2】
前記導波路は、U字形状の導波路である、請求項1に記載の変調システム。
【請求項3】
前記電極構造は、複数の並列ストリップライン電極を含む、請求項1に記載の変調システム。
【請求項4】
前記電極構造は、前記並列導波路の1つの側に設けられる第1の電極と、前記並列導波路の反対の側に設けられる第2の電極とを含む、請求項3に記載の変調システム。
【請求項5】
前記電極構造は、前記並列導波路の間に、および、前記並列導波路の上に設けられる複数の並列電極を含む、請求項3に記載の変調システム。
【請求項6】
前記RF源の1つの出力端子が、前記並列導波路の間の前記並列電極に電気的に結合され、前記RF源の別の出力端子が、前記並列導波路の上の前記並列電極に電気的に結合される、請求項5に記載の変調システム。
【請求項7】
前記電極構造は、前記並列導波路の間に設けられる複数の並列電極を含む、請求項3に記載の変調システム。
【請求項8】
前記電極構造は、前記RF源と前記電極構造との間のインピーダンス整合を提供する終端抵抗器を含む、請求項1に記載の変調システム。
【請求項9】
前記共通基板は、LiNbO基板である、請求項1に記載の変調システム。
【請求項10】
前記導波路は、前記共通基板のチタン添加部分である、請求項9に記載の変調システム。
【請求項11】
前記変調システムは、スペクトルビーム合成(SBC)ファイバレーザ増幅器システムにおいてのシードビーム源の部分であり、前記光学ビームは、シードビームである、請求項1に記載の変調システム。
【請求項12】
前記シードビーム源は、複数の主発振器であって、その各々が別々のファイバ上において異なる波長の前記シードビームのうちの1つを提供する複数の主発振器を含み、
前記ファイバレーザ増幅器システムは、前記導波路の各々からの前記シードビームの各々を増幅する複数の別々のファイバ増幅器と、前記増幅されたビームを、発散する合成されないビームとして自由空間内へ向ける、前記増幅されたビームのすべてに応答的なエミッタアレイと、前記発散する合成されないビームを、コリメートされた合成されないビームとして集束させる、前記発散する合成されないビームに応答的なビームコリメーティング光学素子と、前記異なる波長で前記増幅されたビームのすべてが、出力ビームとして同じ方向に向けられるように、前記コリメートされた合成されないビームを空間的に合成する、前記コリメートされた合成されないビームに応答的なSBC格子と、を含む、請求項11に記載
の変調システム。
【請求項13】
前記複数の主発振器、前記EOMアレイ、および前記RF源は、前記ファイバレーザ増幅器システムにおいての第1のシードビーム源モジュールとして構成され、前記ファイバレーザ増幅器システムは、複数の主発振器、EOMアレイ、RF源を各々が有する複数のシードビーム源モジュールを含み、前記シードビーム源モジュールのすべてにおける前記主発振器のすべては、前記異なる波長において動作する、請求項12に記載の変調システム。
【請求項14】
各々が異なる波長を有する複数の光学ビームを変調するための電気光学位相変調器(EOM)アレイであって、上部表面を有する共通基板と、前記異なる波長の前記複数の光学ビームのうちの別々の1つを各々が受信する、前記上部表面の内部に形成される複数の3つ以上の並列導波路と、前記上部表面に対して形成される複数の並列ストリップライン電極と、を備え、
前記複数の並列ストリップライン電極は、前記3つ以上の並列導波路上で伝搬する前記複数の光学ビームを変調する単一のRF駆動信号に応答的である、EOMアレイ。
【請求項15】
前記複数の並列ストリップライン電極は、前記並列導波路の1つの側に設けられる第1の電極と、前記並列導波路の反対の側に設けられる第2の電極とを含む、請求項14に記載のEOMアレイ。
【請求項16】
前記複数の並列電極は、前記並列導波路の間に、および、前記並列導波路の上に設けられる複数の並列電極を含む、請求項14に記載のEOMアレイ。
【請求項17】
前記複数の並列電極は、前記並列導波路の間に設けられる複数の並列電極を含む、請求項14に記載のEOMアレイ。
【請求項18】
スペクトルビーム合成(SBC)ファイバレーザ増幅器システムであって、
シードビーム源であって、
複数の3つ以上の主発振器であって、その各々が別々のファイバ上において異なる波長の光学シードビームを提供する複数の3つ以上の主発振器と、
電気光学位相変調器(EOM)アレイであって、上部表面を有する共通基板と、前記上部表面の内部に形成される複数の3つ以上の並列導波路とを含み、各々の導波路は、前記光学シードビームのうちの1つを受信するために、前記ファイバのうちの1つに結合され、前記EOMアレイは、前記上部表面に対して形成される電極構造をさらに含む、EOMアレイと、
前記導波路上で伝搬する前記光学シードビームを変調する、前記電極構造に対するRF駆動信号を提供する単一のRF源と、
を含む、シードビーム源と、
前記導波路のうちの1つからの前記変調された光学シードビームを各々が増幅する、複数のファイバ増幅器と、
前記増幅されたビームを、発散する合成されないビームとして自由空間内へ向ける、前記増幅されたビームのすべてに応答的なエミッタアレイと、
前記発散する合成されないビームを、コリメートされた合成されないビームとして集束させる、前記発散する合成されないビームに応答的なビームコリメーティング光学素子と、
前記異なる波長で前記増幅されたビームのすべてが、出力ビームとして同じ方向に向けられるように、前記コリメートされた合成されないビームを空間的に合成する、前記コリメートされた合成されないビームに応答的なSBC格子と、
を備える、SBCファイバレーザ増幅器システム。
【請求項19】
前記電極構造は、前記並列導波路の1つの側に設けられる第1の電極と、前記並列導波路の反対の側に設けられる第2の電極と、を有する、複数の並列ストリップライン電極を含む、請求項18に記載のSBCファイバレーザ増幅器システム。
【請求項20】
前記電極構造は、前記並列導波路の間に、および、前記並列導波路の上に設けられる並
列電極を有する、複数の並列ストリップライン電極を含む、請求項18に記載のSBCファイバレーザ増幅器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2018年7月2日に出願され、Common Drive Electro-Optic Phase Modulator Array(共通駆動電気光学位相変調器アレイ)と題された、米国仮特許出願第62/693,083号の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
分野
[0002]本開示は、一般的には、複数の光学ビームを同時に変調する電気光学変調器(EOM)アレイに関し、より詳しくは、スペクトルビーム合成(SBC:spectral beam combining)ファイバレーザ増幅器システムに対するシードビーム源においての使用に対する用途を有するEOMアレイであって、シードビーム源は、異なる波長において光学シードビームを各々が提供する複数の主発振器を含み、EOMアレイは、共通基板と、シードビームのうちの1つを各々が受信する複数の並列導波路と、シードビームを、それらが導波路に沿って伝搬する際に変調する、RF駆動信号を受信する電極構造とを含む、EOMアレイに関する。
【背景技術】
【0003】
論考
[0003]高パワーレーザ増幅器は、工業、商業、軍事、その他を含む、多くの用途を有する。レーザ増幅器の設計者は、これらおよび他の用途に対するレーザ増幅器のパワーを増大するための手立てを継続的に研究している。1つの知られているタイプのレーザ増幅器は、シードビームと、シードビームを増幅するポンプビームとを受信し、高パワーレーザビームを生成する、添加ファイバを用いるファイバレーザ増幅器であり、ファイバは、約10~20μm以上の有効芯直径を有する。ファイバレーザ増幅器は、それらの高効率、高パワースケーラビリティ、および、優れたビーム品質のために、指向性エネルギー兵器に対するエネルギー源として有用である。
【0004】
[0004]ファイバレーザ増幅器設計においての改善が、ファイバ増幅器の出力パワーを、そのファイバ増幅器の現実的なパワーおよびビーム品質限界に近付くように増大した。出力パワーをさらに増大するために、一部のファイバレーザシステムは、増幅されたビームを何らかの方式で合成して、より高いパワーを生成する、多重ファイバレーザ増幅器を用いる。このタイプのファイバレーザ増幅器システムに対する設計難題は、複数のファイバ増幅器からのビームを合成することを、それらのビームが、ビーム直径にわたって一様な位相を有する単一ビーム出力を提供し、そのことによって、ビームが、小さい焦点スポットに集束させられ得るような様式で行うことである。合成されたビームを、長い距離(遠方界)において小さいスポットに集束させることが、ビームの品質を明確にする。
【0005】
[0005]スペクトルビーム合成(SBC)として知られている1つの多重ファイバレーザ増幅器設計において、複数の主発振器(MO)が、異なる波長において複数のファイバシードビームを生成し、各々のファイバシードビームは増幅される。増幅されたファイバシードビームは、次いで、異なる波長ファイバビームを単一出力ビームへと合成する、回折格子、または他の波長選択素子に向けられる。回折格子は、素子内へと形成される周期的構造を有し、そのことによって、わずかに異なる波長および角度方向を各々が有する個々のファイバビームが、周期的構造により方向を変えられるとき、ビームのすべてが、同じ方向において回折格子から回折する。しかしながら、基になるファイバレーザのスペクトル輝度に関する制限が、良好なビーム品質を伴って波長合成され得るシードビームの数を制限し、かくして、スペクトル的にビーム合成される出力レーザビームの出力パワーを制限する。
【0006】
[0006]SBCは、レーザ源を、例えば100kWレベルより大である兵器クラス輝度にスケーリングするための1つの方法である。述べられたように、SBCレーザ兵器システムは、典型的には、Yb添加ファイバ増幅器(YDFA)などの、多重高パワーレーザチャネルからのビームを合成する、回折格子などの分散光学素子を用いるが、任意のレーザ素子が使用され得る。レージング利得媒体の制限される利得帯域幅(例えば、YDFAに対する約40nmアクセス可能利得帯域幅)のため、レーザビーム源チャネルは、良好な合成されたビーム品質を維持しながら、SBCシステムを高パワーにスケーリングするために、高スペクトル輝度(kW/nm)を提供するように構成されなければならず、その合成されたビーム品質は、格子からの角度分散に起因して、チャネル線幅が相対的に狭くないならば悪化させられることになる。
【0007】
[0007]YDFAからの高スペクトル輝度を達成するために、低パワー、狭線幅光によって増幅器をシードすることが必要である。しかしながら、YDFAにおいての2つの非線形劣化が、シードビーム特性を制約する。第1に、誘導ブリルアン散乱(SBS)は、シードビーム線幅が、そのシードビームのコヒーレンス長さを減少し、かくして、SBSパワーしきい値を増大するように拡幅されるということを要する。第2に、カー非線形性は、シードビームが、YDFAにおいての自己位相変調(SPM)または相互位相変調(XPM)による、望まれない非線形スペクトル拡幅を防止するように、低い相対強度雑音(RIN)を呈するという要件を課す。
【0008】
[0008]これらの2つの非線形劣化は、典型的には、複数のチャネルを有するSBCシステムアーキテクチャを要し、各々のレーザチャネルは、低パワー主発振器フロントエンドアセンブリ(MOFEA:master oscillator front end assembly)と、高パワーYDFA(または、YDFAのチェーン)とを含み、そのYDFAの出力ビームが、ビーム合成光学素子を使用して、単一ビームへと合成される。各々のMOFEAは、電気光学変調器(EOM)により後に続かれる、典型的には単一縦モード分布帰還(DFB)ダイオードレーザ発振器である主発振器(MO)を含む。EOMは、付与される電圧に比例して、シードビームの位相を変化させる。高パワーを伴う無線周波数(RF)源をEOMに付与することにより、出力ビームは、入力シードビームと比較して相当に拡幅された、その出力ビームの線幅を有することになる。SBS劣化を伴わずにkWクラスYDFAをシードするのに適した線幅拡幅に対する典型的な値は、約10GHz/kWの程度である。線幅を拡幅されたシードビームは、その位相のみが変調され、その振幅は変調されないので、理想的にはゼロRINを呈することになる。このことは、YDFAにおいてのSPMまたはXPMを回避することにより、スペクトル拡幅を、および、合成されたSBCビームのビーム品質の、結果としての損失を防止する。
【0009】
[0009]特に空中および陸上プラットフォームに対して、ファイバレーザシステムのサイズ、重量、およびパワー(SWaP:size, weight and power)は、配備および使用を制限する主要な要因である。特に、MOFEAは、高部品総数、および、結果としての高コストという難点がある。構成要素の、よりコンパクトなパッケージングおよび経路設定に対する機会が確かに存するが、多重チャネルに対する並列高パワーRF源およびEOMに対する要件が、SWaP、および、MOFEAのコストの両方に対する重大な一因である。SWaP、および、SBCレーザビーム源に対して使用されるMOFEAのコストの低減を可能にすることになる、アーキテクチャ的および構成要素改善に対する必要性が存する。
【0010】
[0010]1つの知られているEOMにおいて、ビームは、LiNbOチップ内へと書き込まれる光学導波路内へとファイバ結合される。電極がチップ上に堆積させられ、そのことによって、フリンジング場が、導波路の大部分を通って広がり、そのことが、電気光学効果によって位相の変化を引き起こす。低周波数変調器に対して、電極は、単純に集中素子であり、すなわち、容量結合される。高周波数変調器に対して、電極は、光学導波路に対して速度整合される伝送線を形成するように設計される。線幅拡幅に対して選択されるRF変調体系に依存して、いずれかのタイプが、SBCシステムにおいて利用され得る。例えば、低周波数、GHzクラス雑音源を使用する拡幅は、伝送線構成の使用を要さないことがあり、一方で、高周波数(数十GHz)においての構造化されたデジタル擬似ランダムビットシーケンス(PRBS)を使用する拡幅は、速度整合される伝送線構成を要する。
【0011】
[0011]EOMは、さらには、多重の独立した光学チャネルのアレイパッケージの形で商業的に生産されており、8つのチャネルが標準的であり、最高で16個のチャネルが実証されており、チャネルの数は、主としてファイバ結合により制限される。EOMにおいての各々の独立した光学チャネルは、同じ基板上へと集積され、ともにパッケージングされる、対応する電気的に独立したRF駆動入力および電極を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]本開示は、複数の光学ビームを同時に変調するEOMアレイを論考および説明する。EOMアレイは、SBCファイバレーザ増幅器システムに対するシードビーム源においての使用に対する個別の用途を有し、シードビーム源は、ファイバ上で異なる波長の光学シードビームを各々が提供する複数の主発振器を含む。EOMアレイは、共通基板と、複数の並列導波路と、電極構造とを有し、各々の導波路は、シードビームのうちの1つを受信するために、ファイバのうちの1つに結合される。RF源が、シードビームを変調する、電極構造に対するRF駆動信号を提供する。ファイバレーザ増幅器システムは、EOMアレイにより変調されたシードビームの各々を増幅する別々のファイバ増幅器と、増幅されたビームを、発散する合成されないビームとして自由空間内へ向ける、増幅されたビームのすべてに応答的なエミッタアレイと、発散する合成されないビームを、コリメートされた合成されないビームとして集束させる、発散する合成されないビームに応答的なビームコリメーティング光学素子と、異なる波長で増幅されたビームのすべてが、出力ビームとして同じ方向に向けられるように、コリメートされた合成されないビームを空間的に合成する、コリメートされた合成されないビームに応答的なSBC格子とを含む。
【0013】
[0013]本開示の追加的な特徴は、添付図面と連関して取り上げられて、後に続く説明、および、添付される特許請求の範囲から明らかになることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】複数の主発振器とEOMアレイとを有するシードビーム源を含むSBCファイバレーザ増幅システムの概略ブロック線図である。
図2図1において示されるEOMアレイに対して使用され得るEOMアレイの端面図であり、EOMアレイは、複数の導波路と、共通RF電極の1つのセットとを含む。
図3図1において示されるEOMアレイに対して使用され得るEOMアレイの端面図であり、アレイは、複数の導波路と、多重並列共通電極に分割され分布させられたRF電極構造とを含む。
図4図1において示されるEOMアレイに対して使用され得るEOMアレイの等角図であり、アレイは、複数の導波路と、多重並列共通電極に分割され分布させられ、インピーダンス整合抵抗器を含むRF電極構造とを含む。
図5図1においてのシードビーム源と同じ様式で、複数の主発振器とEOMアレイとを各々が有する、複数のモジュール化されたシードビーム源を含むSBCファイバレーザ増幅システムの概略ブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0019]複数の光学ビームを同時に変調する電気光学変調器(EOM)アレイであって、共通基板と、複数の並列導波路と、電極構造とを含む、EOMアレイに向けられた、本開示の実施形態の、後に続く論考は、本来はただ単に例示的なものであり、本開示、または、本開示の用途もしくは使用を限定することを決して意図されない。例えば、EOMアレイは、SBCファイバレーザ増幅器システムに対するシードビーム源においての個別の用途を有する。しかしながら、当業者により認識されることになるように、EOMアレイは、他の光学システムに対する用途を有し得る。
【0016】
[0020]図1は、N個の波長チャネル12と、個別のチャネル12に対してファイバ18上で波長λを有する連続波単一周波数シードビームを各々が生成する、N個の主発振器(MO)16を含むシードビーム源14とを含む、SBCファイバレーザ増幅器システム10の概略ブロック線図であり、各々のシードビーム源14は、異なるビーム波長λ~λを生成する。1つの実施形態において、MO16は、単一縦モード分布帰還(DFB)ダイオードレーザ発振器であり得る。ファイバ18上のシードビームは、シードビームの位相を、増幅された無線周波数(RF)電気駆動信号によりRF源22から提供される、付与される電圧に比例するように変化させる、多重チャネルEOMアレイ20に送出される。EOMアレイ20は、白色雑音または擬似ランダムビットシーケンス(PRBS)などの周波数変調拡幅を提供し、そのことによって、ファイバ24上で提供される各々のチャネル12に対する変調されたシードビームは、ファイバ18上のシードビームと比較して相当に拡幅される線幅を有し、そのことは、下流の高パワーファイバ増幅器においての誘導ブリルアン散乱を抑制する。下記で論考されることになるように、EOMアレイ20は、多重の独立した導波路を含み、各々の導波路は、シードビームのうちの1つを受信し、導波路のすべてが、RF源22により駆動される。知られているSBCファイバレーザ増幅器システムにおいてのシードビーム源は、各々のチャネルに対して別々のEOMおよび駆動源を要した。
【0017】
[0021]ファイバ24上のシードビームの各々は、Yb添加ファイバ増幅器などのファイバ増幅器30に送出され、増幅器30は、典型的には、光学ポンプビーム(図示せず)を受信する、ファイバ24の添加増幅部分であることになる。増幅されたビームのすべては、発散する増幅されたビームのセットを自由空間内へと出力する光学エミッタアレイ32に向けられ、個々のビーム波長λ~λは、わずかに異なるエミッタ位置から伝搬している。発散するビームは、発散するビームをコリメートし、それらの発散するビームをSBC格子36上へ向ける、コリメーティング光学素子34に関して去るように反射させられ、そのことによって、個々のビームのすべてが、格子36に衝突し、同じフットプリント上に重なる。格子36は、個々のビーム波長λを空間的に回折させ、個々の増幅されたビームを、合成された出力ビーム38として同じ方向に向ける。
【0018】
[0022]図2は、EOMアレイ20として使用され得るEOMアレイ40の端面図である。アレイ40は、複数の並列導波路46が内へと形成される上部表面44を有する、LiNbO基板などの基板42を含み、各々の導波路46は、別々のファイバ18上のシードビームのうちの異なる1つをMO16から受信し、別々のEOMとして動作する。この非限定的な実施形態において、導波路46は、U字形状の、例えばチタン(Ti)によって、基板42の添加領域として形成され、そのことによって、導波路46は、基板42の残り部分より高い屈折率を有する。第1のストリップライン電極48が、導波路46の1つの側に近接して基板42の上部表面44上に堆積させられ、または形成され、第2のストリップライン電極50が、導波路46の反対の側に近接して基板42の上部表面44上に堆積させられ、または形成され、電極48および50は、RF駆動信号をRF源52から受信する。かくして、共通RF駆動源、具体的にはRF源52は、知られているファイバレーザ増幅器システムにおいて行われたように各々の導波路に対して別個の、および独立したRF入力を有することと比較して、アレイ40全体に対して使用される。導波路46は、共通RF入力を使用して各々の導波路46にわたって付与されるRF場から生起する光学位相シフトが、類似するが必ずしも同一ではないように構成される。
【0019】
[0023]図3は、さらにはEOMアレイ20として使用され得るEOMアレイ60の端面図であり、アレイ40に対する同類の要素は、同じ参照番号により識別される。この実施形態において、電極48および50は、導波路46の間に配置される多重並列ストリップライン電極62と、導波路46の上方に配置される多重並列ストリップライン電極64とを含む共通電極構造によって置き換えられる。示されるように、源52からのRF駆動信号は、分割され、電極62および64に分配され、源52の一方の出力端子は、電極62に電気的に結合され、源52の他方の出力端子は、電極64に電気的に結合される。この実施形態は、EOMアレイ60を、いわゆる「zカット」幾何学的配置で構成することにより、低減される駆動電圧に対して有利であり得る。電極および導波路の異なる幾何学的配置構成を伴う、ただし、各々の導波路チャネルの光学位相が、同じ共通RF入力源により動かされるという共通の特徴を共有する、数多くの他の実施形態が、さらには有用であり得る。
【0020】
[0024]一部のEOMアレイ実現形態に対して、EOMアレイ20がRF源22に対してインピーダンス整合されるということを確実にすることが重要であり得るものであり、そのことによって、そのEOMアレイ20は、RF源22を損傷すること、または、位相変調された光学シードビームの光学スペクトルを歪ませることのいずれかを行い得る、重大な電気的反射または共振をもたらさない。このことは、特に、RF源22が高周波数PRBS波形を提供するように構成されるときに重要であり、なぜならば、RFスペクトル成分は、導波路46を通して伝送されるシードビームの光学位相に正確に付けられなければならないからである。
【0021】
[0025]図4は、さらにはEOMアレイ20として使用され得るEOMアレイ70の等角図であり、EOMアレイ40に対する同類の要素は、同じ参照番号により識別され、インピーダンス整合を確実にするために必要とされる電気的特徴が設けられる。源(ソース)52からのRF駆動信号のインピーダンスZは、示されるように、EOMアレイ70の出力端部において、等インピーダンス出力終端抵抗器72によって整合される。示されるように、源52の出力端子は、電極62の一方の端部に1つおきに結合され、終端抵抗器72の反対の両端部は、電極62の他方の端部に1つおきに電気的に結合される。M個の並列ストリップライン電極62の各々は、M*Zのインピーダンスを提供して、源52からのRF駆動信号のインピーダンスZおよび終端抵抗器72を整合するように設計される。典型的には、電極は、ストリップライン電極の間の長さ変動を、最も小さいRF駆動波長の、10%などの小さい割合に制約するように設計されることになり、そのことによって、数GHz源によって駆動することに対して、ストリップライン電極は、数mmの範囲内に対して長さ整合されることになる。
【0022】
[0026]共通駆動EOMアレイをSBCシードビーム源として使用することに関する1つの潜在的な懸念は、チャネルの間の相対光学分離またはクロストークである。1つのチャネルからの光学パワーの小さい割合でさえも、他のチャネルのいずれかへと結合するならば、そのことは、2つの波長の間の差周波数でのビートすなわち相対強度雑音(RIN)を引き起こすことになる。このRINは、次いで、主たる波長チャネルからのいくらかのパワーを、+/-差周波数の場所にある光学側波帯へと移すことになる、非線形自己位相変調(SPM)を生じさせることがある。2つのチャネルの間の周波数においての差(すなわち、波長においての差)が大きいならば、分散が、主たる波長からの大きい非線形パワー損失を防止することになるが、波長の間の差が小さい、例えば0.25nmであるならば、相当のパワーが、誤った波長へと移されることがある。この移されるパワーは、本質的にはSBC出力ビーム内で失われることになり、なぜならば、その移されるパワーは、主たるビームから遠く離れた角度内へと回折させられることになるからである。ゆえに、EOMアレイが、チャネルの間の低いクロストーク、例えば-40dB以下を呈するということが重要である。
【0023】
[0027]N個の増幅チャネルを伴うSBCファイバレーザ増幅器システムにおいて、M個の導波路チャネルを内包するEOMアレイを使用することにより、単一チャネルEOMsおよびRF源のN(M-1)/M個の重複セットが、結果としてのSWaPおよびコスト節約を伴って、システムから除かれ得る。かくして、シードビーム源を、各々M個のチャネルのN/M個の群へとモジュール化して、N個の高パワーチャネルのセットをシードすることが有益であり得る。シードビーム源をモジュール化することは、Nチャネルシステムに対する根本のチャネル総数からシード源構成要素パワーを切り離す。モジュールサイズMは、システムチャネル総数Nから独立して選択され得る。この柔軟性は、シードビーム源においてのより低いパワー構成要素の使用を可能にする。高チャネル総数N個のEOMアレイより、低チャネル総数M個のEOMアレイを製造することが、さらには容易である。
【0024】
[0028]図5は、上記で言及されたモジュール式シードビーム源手法を例解するSBCファイバレーザ増幅器システム80の概略ブロック線図であり、ファイバレーザ増幅器システム10に対する同類の要素は、同じ参照番号により識別される。システム80は、上記で論考されたように、異なる波長において動作するM個のMO16を各々が含む、N/M個の波長群モジュール82を含む。
【0025】
[0029]上述の論考は、本開示の単に例示的な実施形態を開示および説明するものである。当業者は、様々な変更、修正、および変形が、後に続く特許請求の範囲において定義されるような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらの実施形態においてなされ得るということを、そのような論考から、ならびに、添付図面および特許請求の範囲から、容易に認識することになる。
図1
図2
図3
図4
図5