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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】光パルス試験器
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
G01M11/00 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021072645
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022167096
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 明
(72)【発明者】
【氏名】青木 省一
(72)【発明者】
【氏名】太田 克志
(72)【発明者】
【氏名】内山 晴義
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-007618(JP,A)
【文献】特開2011-013136(JP,A)
【文献】特開平04-274724(JP,A)
【文献】実開平05-014882(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0141457(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0136036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
H04B 10/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに光パルスを入射させて得られる戻り光に基づいて、前記光ファイバの特性を試験する光パルス試験器において、
前記戻り光を第1分岐光と第2分岐光とに分岐する光分岐器と、
前記第1分岐光を受光して第1受光信号を出力する第1受光部と、
前記第2分岐光を受光して第2受光信号を出力する第2受光部と、
前記光分岐器の分岐比と前記第1受光部及び前記第2受光部の受光感度とを示す情報を記憶しており、当該情報に基づいて前記第1受光信号及び前記第2受光信号のレベル変換を行い、レベル変換を行った前記第1受光信号と前記第2受光信号とを合成して、前記光ファイバの長手方向における前記戻り光の強度分布を示す波形を得る信号処理部と、
を備える光パルス試験器。
【請求項2】
前記光分岐器は、異なる分岐比で前記戻り光を前記第1分岐光と前記第2分岐光とに分岐する、請求項1記載の光パルス試験器。
【請求項3】
前記第1受光部と前記第2受光部とは、受光感度が異なる、請求項1又は請求項2記載の光パルス試験器。
【請求項4】
前記第1受光部は、前記第1分岐光を受光する第1受光素子と、前記第1受光素子から出力される受光信号を増幅して前記第1受光信号として出力する第1増幅器と、を備え、
前記第2受光部は、前記第2分岐光を受光する第2受光素子と、前記第2受光素子から出力される受光信号を増幅して前記第2受光信号として出力する第2増幅器と、を備える、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光パルス試験器。
【請求項5】
前記第1受光素子と前記第2受光素子とは、受光特性が異なる、請求項4記載の光パルス試験器。
【請求項6】
前記第1増幅器と前記第2増幅器とは、受光信号の増幅率が異なる、請求項4又は請求項5記載の光パルス試験器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パルス試験器に関する。
【背景技術】
【0002】
光パルス試験器は、光パルスを試験対象である光ファイバに入射させ、光ファイバから得られる戻り光に基づいて光ファイバの特性を試験又は測定する装置である。この光パルス試験器の一種に、光ファイバ内で生ずるレイリー散乱光やフレネル反射光に基づいて光ファイバの伝送損失や障害点までの距離等を測定するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer:光時間領域反射率計)がある。
【0003】
このようなOTDRは、例えば、光通信システムの通信媒体である光ファイバの敷設時における敷設工事作業の良否確認、又は敷設後の保守時における光ファイバの障害点の探索や損失の測定を行うために用いられる。以下の特許文献1には、周囲温度の変化に拘わらず後方散乱光を受光する受光部の受光感度を所望の受光感度にすることができるようにした従来のOTDRが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-286578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、OTDRでは、光ファイバの試験中に、後方散乱光を受光する受光部の増幅度を動的に変化させる場合がある。例えば、光ファイバの高反射地点の試験を行う場合には、戻り光の光強度が高すぎるため受光部の増幅度を低くし、光ファイバの損失が大きい地点の試験を行う場合には、戻り光の光強度が低すぎるため受光部の増幅度を高くすることが行われる。しかしながら、受光部の増幅度を動的に変化させてしまうと、光パルス試験器の性能劣化が引き起こされることがあるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来のような、受光部の増幅度を動的に変化させたときの性能劣化が引き起こされることのない高性能な光パルス試験器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による光パルス試験器は、光ファイバ(FUT)に光パルスを入射させて得られる戻り光(L0)に基づいて、前記光ファイバの特性を試験する光パルス試験器(1)において、前記戻り光を第1分岐光(L1)と第2分岐光(L2)とに分岐する光分岐器(23)と、前記第1分岐光を受光して第1受光信号(RS1)を出力する第1受光部(24)と、前記第2分岐光を受光して第2受光信号(RS2)を出力する第2受光部(25)と、前記光分岐器の分岐比と前記第1受光部及び前記第2受光部の受光感度とに基づいて前記第1受光信号及び前記第2受光信号のレベル変換を行い、レベル変換を行った前記第1受光信号と前記第2受光信号とを合成して、前記光ファイバの長手方向における前記戻り光の強度分布を示す波形を得る信号処理部(14)と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様による光パルス試験器は、前記光分岐器が、異なる分岐比で前記戻り光を前記第1分岐光と前記第2分岐光とに分岐する。
【0009】
また、本発明の一態様による光パルス試験器は、前記第1受光部と前記第2受光部とが、受光感度が異なる。
【0010】
また、本発明の一態様による光パルス試験器は、前記第1受光部が、前記第1分岐光を受光する第1受光素子(24a)と、前記第1受光素子から出力される受光信号を増幅して前記第1受光信号として出力する第1増幅器(24b)と、を備え、前記第2受光部が、前記第2分岐光を受光する第2受光素子(25a)と、前記第2受光素子から出力される受光信号を増幅して前記第2受光信号として出力する第2増幅器(25b)と、を備える。
【0011】
また、本発明の一態様による光パルス試験器は、前記第1受光素子と前記第2受光素子とは、受光特性が異なる。
【0012】
また、本発明の一態様による光パルス試験器は、前記第1増幅器と前記第2増幅器とは、受光信号の増幅率が異なる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のような、受光部の増幅度を動的に変化させたときの性能劣化が引き起こされることのない高性能な光パルス試験器を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態による光パルス試験器の要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態における双方向モジュールの具体的な構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態において信号処理部で行われる処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光パルス試験器について詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0016】
〔概要〕
本発明の実施形態は、従来のような、受光部の増幅度を動的に変化させたときの性能劣化が引き起こされることのない高性能な光パルス試験器を提供するものである。具体的には、受光部の増幅度を動的に変化させなくとも、光ファイバから得られる戻り光を適切に受光できるようにすることで、従来のような性能劣化が引き起こされることのない高性能な光パルス試験器を提供するものである。
【0017】
OTDRでは、例えば、光ファイバの高反射地点の試験を行う場合には、戻り光の光強度が高すぎるため受光部の増幅度を低くし、光ファイバの損失が大きい地点の試験を行う場合には、戻り光の光強度が低すぎるため受光部の増幅度を高くすることが行われる。このように、受光部の増幅度を動的に変化させてしまうと、以下の(1)~(3)に示す性能劣化が引き起こされる。
【0018】
(1)波形更新の遅延
増幅度を変更する度に光ファイバの試験が必要になることから、OTDR波形(光ファイバの長手方向における戻り光の強度分布を示す波形)の更新周期が長くなる。その結果として、OTDR波形の画面表示が遅くなってしまう。
【0019】
(2)距離軸の波形ずれ
受光部の回路時定数が増幅度によって異なる場合において、受光部の増幅度を動的に変化させてしまうと、距離軸の波形ずれ(光ファイバの長手方向におけるOTDR波形の位置ずれ)が発生する。回路時定数の変化が小さな増幅度を選択すれば、距離軸の波形ずれを防止することができるが、増幅度の選択が制限されてしまう。
【0020】
(3)高反射地点の応答性の低下
光ファイバの高反射地点の試験を行う場合に、光強度が高すぎる戻り光が受光部で受光されると、受光部に設けられた増幅器の出力飽和が発生して応答速度が低下する。その結果として、光ファイバの高反射地点の近傍におけるOTDR波形の再現性が悪くなってしまう。
【0021】
本発明の実施形態は、光ファイバから得られる戻り光を光分岐器によって第1分岐光と第2分岐光とに分岐し、第1分岐光を第1受光部によって受光するとともに第2分岐光を第2受光部によって受光する。続いて、光分岐器の分岐比と第1,第2受光部の受光感度とに基づいて、第1,第2受光部からそれぞれ出力される第1,第2受光信号のレベル変換を行う。そして、レベル変換を行った第1,第2受光信号を合成して、光ファイバの長手方向における戻り光の強度分布を示す波形を得るようにしている。
【0022】
これにより、受光部の増幅度を動的に変化させなくとも、光ファイバから得られる戻り光を適切に受光できるようになる。その結果、従来のような、受光部の増幅度を動的に変化させたときの性能劣化が引き起こされることのない高性能な光パルス試験器を提供することができる。
【0023】
〔詳細〕
〈光パルス試験器〉
図1は、本発明の実施形態による光パルス試験器の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の光パルス試験器1は、レーザ駆動部11、双方向モジュール12、A/D変換部13a,13b、信号処理部14、表示部15、及び制御部16を備える。このような光パルス試験器1は、被測定ファイバFUT(光ファイバ)に光パルスを入射させて得られる戻り光L0に基づいて被測定ファイバFUTの特性を試験又は測定する。尚、光パルス試験器1は、OTDRとも呼ばれる。
【0024】
レーザ駆動部11は、制御部16の制御の下で、双方向モジュール12を駆動する駆動信号DSを出力する。つまり、レーザ駆動部11は、被測定ファイバFUTに入射させる光パルスを双方向モジュール12から出力させるための駆動信号DSを出力する。双方向モジュール12は、レーザ駆動部11から出力される駆動信号DSに基づいて、被測定ファイバFUTに入射させる光パルス(レーザ光)を出力するとともに、被測定ファイバFUTから得られる戻り光L0を受光して受光信号RS1(第1受光信号)及び受光信号RS2(第2受光信号)を出力する。
【0025】
双方向モジュール12は、光源部21、光方向性結合器22、光分岐器23、受光部24(第1受光部)、及び受光部25(第2受光部)を備える。光源部21は、例えば、半導体レーザを備えており、レーザ駆動部11から出力される駆動信号DSが入力されると光パルスを射出する。尚、光源部21から射出される光パルスの波長は、例えば、1.31μm帯、1.55μm帯、又は1.6μm帯であって良い。
【0026】
光方向性結合器22は、光源部21から射出される光パルスを被測定ファイバFUTの一端に結合させる。また、光方向性結合器22は、被測定ファイバFUTに光パルスを入射させて得られる戻り光L0(被測定ファイバFUTの一端から射出される戻り光L0)を光分岐器23に導く。この光方向性結合器22としては、例えば、ハーフミラーを用いることができる。
【0027】
光分岐器23は、光方向性結合器22によって導かれた戻り光L0を分岐光L1(第1分岐光)と分岐光L2(第2分岐光)とに分岐する。光分岐器23は、異なる分岐比(例えば、95:5)で戻り光L0を分岐光L1と分岐光L2とに分岐する。尚、光分岐器23の分岐比は、任意に設定可能であるが、例えば、受光部24,25の受光感度を考慮して設定される。
【0028】
受光部24は、光分岐器23によって分岐された分岐光L1を受光して受光信号RS1を出力する。受光部24は、受光素子24a(第1受光素子)と増幅器24b(第1増幅器)とを備える。受光素子24aは、例えば、アバランシェフォトダイオード(Avalanche Photo Diode:APD)を備えており、受光面に入射した分岐光L1を光電変換して受光信号を出力する。増幅器24bは、受光素子24aから出力される受光信号を、予め設定された増幅率で増幅して受光信号RS1として出力する。
【0029】
受光部25は、光分岐器23によって分岐された分岐光L2を受光して受光信号RS2を出力する。受光部25は、受光素子25a(第2受光素子)と増幅器25b(第2増幅器)とを備える。受光素子25aは、例えば、アバランシェフォトダイオードを備えており、受光面に入射した分岐光L2を光電変換して受光信号を出力する。増幅器25bは、受光素子24aから出力される受光信号を、予め設定された増幅率で増幅して受光信号RS2として出力する。
【0030】
ここで、受光部24と受光部25とは、受光感度が異なっていても、受光感度が同じであっても良い。受光部24,25の受光感度は、光分岐器23の分岐比に応じて設定されていても良い。例えば、光分岐器23の分岐比が同じである場合には、受光部24,25の受光感度を異ならせ、光分岐器23の分岐比が異なる場合には、受光部24,25の受光感度を同じにしても良い。尚、本実施形態では、説明を簡単にするために、受光部24と受光部25とは、受光感度が同じであるとする。
【0031】
また、受光部24に設けられる受光素子24aと受光部25に設けられる受光素子25aとは、受光特性が同じものであっても、異なるものであっても良い。例えば、受光素子24aは、暗電流が低いものであり、受光素子25aは、暗電流が高いものであっても良い。また、受光部24に設けられる増幅器24bと受光部25に設けられる増幅器25bとは、増幅率が同じであっても、異なっていても良い。
【0032】
光分岐器23の分岐比、受光部24の受光感度(受光素子24aの特性、増幅器24bの増幅率)、及び受光部25の受光感度(受光素子25aの特性、増幅器25bの増幅率)は、光パルス試験器1の性能に応じて任意に設定可能である。尚、これらの情報は、信号処理部14に予め記憶されている。尚、双方向モジュール12の具体的な構成については後述する。
【0033】
A/D変換部13aは、制御部16の制御の下で、双方向モジュール12(受光部24)から出力される受光信号RS1をサンプリングする。A/D変換部13bは、制御部16の制御の下で、双方向モジュール12(受光部25)から出力される受光信号RS2をサンプリングする。
【0034】
信号処理部14は、A/D変換部13a,13bでサンプリングされた信号を用いて、被測定ファイバFUTの特性を求めるために必要となる演算を行う。具体的に、信号処理部14は、光分岐器23の分岐比と受光部24,25の受光感度とに基づいて、A/D変換部13a,13bでサンプリングされた信号のレベル変換を行う。また、信号処理部14は、レベル変換を行った信号を合成してOTDR波形(被測定ファイバFUTの長手方向における戻り光L0の強度分布を示す波形)を得る。
【0035】
表示部15は、例えば、液晶表示装置等の表示装置を備えており、信号処理部14の演算結果等を表示する。尚、信号処理部14の演算結果は、例えば、データファイルとして外部に出力されても良い。制御部16は、光パルス試験器1の動作を統括して制御する。例えば、制御部16は、レーザ駆動部11を制御してレーザ駆動部11から駆動信号DSを出力させ、A/D変換部13a,13bを制御して受光信号RS1,RS2をサンプリングさせ、表示部15を表示して、光パルス試験器1の状態を表示させる。
【0036】
〈双方向モジュール〉
図2は、本発明の実施形態における双方向モジュールの具体的な構成を示す図である。尚、図2においては、図1に示す構成に相当する構成については同一の符号を付してある。図2に示す通り、本実施形態における双方向モジュール12は、図1に示す光源部21、光方向性結合器22、光分岐器23、受光部24、及び受光部25に加えて、コリメートレンズ31a,31b、合波フィルタ32、集光レンズ33、全反射ミラー34、及び集光レンズ35a,35bを備える。
【0037】
図2に示す双方向モジュール12は、図1に示す光源部21として、2つの光源部21a,21bを備える。光源部21aは、図1に示すレーザ駆動部11から出力される駆動信号DSが入力されると、波長λ1の光パルス(以下、「第1光パルス」という場合がある)を射出する。光源部21bは、図1に示すレーザ駆動部11から出力される駆動信号DSが入力されると、波長λ2の光パルス(以下、「第2光パルス」という場合がある)を射出する。波長λ1は、例えば、1.31μm帯であり、波長λ2は、例えば、1.55μm帯である。尚、波長λ2は、例えば、1.6μm帯であっても良い。
【0038】
コリメートレンズ31aは、光源部21aから射出される第1光パルスを平行光に変換し、コリメートレンズ31bは、光源部21bから射出される第2光パルスを平行光に変換する。合波フィルタ32は、コリメートレンズ31a,31bで平行光に変換された第1光パルスと第2光パルスとを合波する。ここで、仮に、光源部21a,21bが同時に駆動される場合には、第1光パルスと第2パルスとが合波フィルタ32によって合波される。光源部21a,21bの何れか一方が駆動される場合には、第1光パルスと第2パルスとの何れか一方が、合波フィルタ32を介して光方向性結合器22に導かれる。この合波フィルタ32としては、例えば、第1光パルスを透過させ、第2光パルスを反射させるダイクロイックミラーや、ハーフミラーを用いることができる。
【0039】
集光レンズ33は、光方向性結合器22を透過した光パルスを結合用光ファイバFBの一端に結合させる。尚、結合用光ファイバFBは、一端が双方向モジュール12に接続されて集光レンズ33と光学的に結合しており、他端が被測定ファイバFUTの一端に接続される。また、集光レンズ33は、被測定ファイバFUTから得られる戻り光L0を平行光に変換して光方向性結合器22に導く。
【0040】
全反射ミラー34は、光分岐器23で分岐された分岐光L2を集光レンズ35bに向けて反射する。集光レンズ35aは、光分岐器23で分岐された分岐光L1を、受光部24の受光面に結合させる。集光レンズ35bは、全反射ミラー34で反射された分岐光L2を、受光部25の受光面に結合させる。
【0041】
〈光パルス試験器の動作〉
光パルス試験器1の動作が開始されると、まず、図1に示す制御部16によってレーザ駆動部11が制御され、レーザ駆動部11から駆動信号DSが出力される。レーザ駆動部11から出力された駆動信号DSは、双方向モジュール12の光源部21a,21bの何れか一方に供給される。
【0042】
尚、第1光パルスを用いた被測定ファイバFUTの試験が行われる場合には、駆動信号DSは光源部21aに供給され、第2光パルスを用いた被測定ファイバFUTの試験が行われる場合には、駆動信号DSは光源部21bに供給される。ここでは、駆動信号DSは光源部21aに供給されるものとする。駆動信号DSが供給されると、光源部21aからは第1光パルスが射出される。
【0043】
光源部21aから射出された第1光パルスは、コリメートレンズ31aで平行光に変換され、合波フィルタ32、光方向性結合器22、集光レンズ33、及び結合用光ファイバFBを順に介した後に、被測定ファイバFUTに入射する。光パルスが、被測定ファイバFUTを伝播する従って、被測定ファイバFUT内ではレイリー散乱光やフレネル反射光が生ずる。これらは戻り光として、被測定ファイバFUTを逆方向(光パルスの伝播方向とは逆の方法)に伝播する。
【0044】
被測定ファイバFUTから出力された戻り光L0は、結合用光ファイバFB及び集光レンズ33を順に介した後に光方向性結合器22で反射されて光分岐器23に入射する。光分岐器23に入射した戻り光L0のうち、光分岐器23を透過したものは分岐光L1として分岐され、光分岐器23で反射されたものは分岐光L2として分岐される。
【0045】
分岐光L1は、集光レンズ35aによって集光された後に、受光部24で受光される。これにより、受光部24からは、受光信号RS1が出力される。これに対し、分岐光L2は、全反射ミラー34で反射されて集光レンズ35bによって集光された後に、受光部25で受光される。これにより、受光部25からは、受光信号RS2が出力される。尚、受光部24における分岐光L1の受光と、受光部25における分岐光L2の受光とは同時に行われる。
【0046】
受光部24から出力された受光信号RS1は、A/D変換部13aでサンプリングされた後に信号処理部14に入力され、受光部25から出力された受光信号RS2は、A/D変換部13bでサンプリングされた後に信号処理部14に入力される。信号処理部14では、A/D変換部13a,13bでサンプリングされた信号を用いて、被測定ファイバFUTの特性を求めるために必要となる演算が行われる。具体的には、光分岐器23の分岐比と受光部24,25の受光感度とに基づいて、A/D変換部13a,13bでサンプリングされた信号のレベル変換を行い、レベル変換を行った信号を合成してOTDR波形を得る処理が信号処理部14で行われる。
【0047】
図3は、本発明の実施形態において信号処理部で行われる処理を説明するための図である。図3(a)は、受光部24から出力される受光信号RS1から得られるOTDR波形を示す図であり、図3(b)は、受光部25から出力される受光信号RS2から得られるOTDR波形を示す図である。また、図3(c)は、信号処理部14の処理が行われることによって得られたOTDR波形を示す図である。尚、図3(a)~図3(c)に示すグラフは、被測定ファイバFUTの一端(光パルスが入射する端部)からの距離を横軸にとってあり、信号強度を縦軸にとってある。
【0048】
受光信号RS1は、光分岐器23で大きな分岐比をもって分岐された分岐光L1を受光部24で受光して得られたものである。このため、図3(a)に示すOTDR波形は、全体的に信号レベルが高くなっており、ピーク部分P1~P3が飽和したものになっている。これに対し、受光信号RS2は、光分岐器23で小さな分岐比をもって分岐された分岐光L2を受光部25で受光して得られたものである。このため、図3(b)に示すOTDR波形は、全体的に信号レベルが低くなっており、ピーク部分P1~P3が飽和せずに正しく現れたものになっている。
【0049】
前述の通り、本実施形態では、説明を簡単にするために、受光部24と受光部25とは、受光感度が同じであるとしている。このため、信号処理部14では、例えば、図3(b)に示すOTDR波形のレベルを、光分岐器23の分岐比に応じた分だけ高める変換を行い、図3(c)に示すOTDR波形のレベルを、光分岐器23の分岐比に応じた分だけ低くする変換を行う。このようなレベル変換が行われたOTDR波形を合成すると、図3(c)に示すOTDR波形が得られる。このようにして得られたOTDR波形が表示部15に表示される。
【0050】
尚、信号処理部14では、例えば、光源部21光パルスが出力されてから、戻り光L0が受光部24,25で受光されるまでの時間に基づいて、例えば、光パルス試験器1から被測定ファイバFUTの障害点までの距離を求める演算が行われる。このようにして得られた信号処理部14の演算結果(例えば、被測定ファイバFUTの伝送損失や障害点までの距離等)も、表示部15に表示される。
【0051】
以上の通り、本実施形態では、被測定ファイバFUTから得られる戻り光L0を光分岐器23によって分岐光L1と分岐光L2とに分岐し、分岐光L1を受光部24によって受光するとともに分岐光L2を受光部25によって受光する。続いて、光分岐器23の分岐比と受光部24,25の受光感度とに基づいて、受光部24,25からそれぞれ出力される受光信号RS1,RS2のレベル変換を行う。そして、レベル変換を行った受光信号RS1,RS2を合成して、被測定ファイバFUTの長手方向における戻り光の強度分布を示す波形を得るようにしている。
【0052】
これにより、受光部24,25の増幅度を動的に変化させなくとも、被測定ファイバFUTから得られる戻り光L0を適切に受光できるようになる。その結果、従来のような、受光部の増幅度を動的に変化させたときの性能劣化が引き起こされることのない高性能な光パルス試験器1を提供することができる。
【0053】
具体的に、本実施形態の光パルス試験器1では、前述した(1)~(3)に示す性能劣化が引き起こされることがない。このため、従来の光パルス試験装置に比べて以下の、(1)~(3)に示す性能改善が得られる。
【0054】
(1)波形更新の高速化(リアルタイム表示)
本実施形態では、光分岐器23で分岐された分岐光L1,L2を受光部24,25で同時に受光することで、従来よりもダイナミックレンジを拡大することができる。これにより、受光部24,25の増幅度を動的に変化させる必要が無く、増幅度を変更する度に必要であった光ファイバの試験が不要になることから、波形更新の高速化を図ることができる。
【0055】
(2)距離軸の波形ずれの改善
本実施形態では、受光部24,25の増幅度を動的に変化させる必要が無いことから、受光部24,25の回路時定数の差を最小にすることができる。これにより、距離軸の波形ずれ(光ファイバの長手方向におけるOTDR波形の位置ずれ)を改善(防止)することができる。
【0056】
(3)高反射地点の応答性向上(デッドゾーン性能)
光ファイバの高反射地点の試験を行う場合に、光強度が高すぎる戻り光L0が得られたとしても、光分岐器23で小さな分岐比をもって分岐された分岐光L2が受光部25で受光される。これにより、受光部25に設けられた増幅器の出力飽和が発生せず、応答速度が低下しない。その結果として、光ファイバの高反射地点の近傍におけるOTDR波形の再現性を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態による光パルス試験器について説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態による光パルス試験器は2波長のうちの何れかの波長で測定が可能なものであったが、3波長以上の波長のうちの何れかの波長で測定が可能なものであっても良い。
【0058】
また、上述した実施形態による光パルス試験器1は、光方向性結合器22を透過した光パルスを被測定ファイバFUTに入射させ、被測定ファイバFUTからの戻り光を光方向性結合器22で反射する構成であった。しかしながら、光方向性結合器22で反射された光パルスを被測定ファイバFUTに入射させ、被測定ファイバFUTからの戻り光を、光方向性結合器22で透過させる構成であっても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 光パルス試験器
14 信号処理部
23 光分岐器
24,25 受光部
24a,25a 受光素子
24b,25b 増幅器
FUT 被測定ファイバ
L0 戻り光
L1,L2 分岐光
RS1,RS2 受光信号
図1
図2
図3