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特許7320049グリシジル含有ポリマー、それらを含むポリマー組成物、およびそれらの電気化学セルでの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】グリシジル含有ポリマー、それらを含むポリマー組成物、およびそれらの電気化学セルでの使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/121 20210101AFI20230726BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20230726BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20230726BHJP
   H01M 50/109 20210101ALI20230726BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230726BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230726BHJP
   C08F 220/32 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H01M50/121
H01M50/103
H01M50/105
H01M50/109
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/66 A
C08F220/32
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021500227
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 CA2019050928
(87)【国際公開番号】W WO2020006642
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】62/694,675
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダイグル, ジャン-クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】浅川 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145874(WO,A1)
【文献】特表2013-501119(JP,A)
【文献】特開2015-005496(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119750(WO,A1)
【文献】YAMAMOTO S. et al.,Effective Fixation of Carbon Dioxide into Poly(glycidyl methacrylate) in the Presence of Pyrrolidone Polymers,JOURNAL OF POLYMERSCIENCE: PART A: POLYMER CHEMISTRY,2005年,Vol. 43, No. 19,p. 4578-4585,DOI:10.1002/pola.20943
【文献】ZHANG Y. et al.,Synthesis of an Amphiphilic Brush Copolymer by a Highly Efficient "Grafting onto" Approach via CO2 Chemistry,MACROMOLECULAR RAPID COMMUNICATIONS,2015年,Vol. 36, No. 9,p. 852-857,DOI:10.1002/marc.201400718
【文献】PITIOS C. et al.,Low-Loss Passive Optical Waveguides Based on Photosensitive Poly(pentafluorostyrene-co-glycidyl methacrylate),MACROMOLECULES, AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1999年,Vol. 32, No. 9,p. 2903-2909,DOI:10.1021/MA981057X
【文献】CHAKRAVARTHY S. GUDIPATI et al.,Synthesis of poly(glycidylmethacrylate)-block Poly(pentafluorostyrene) by RAFT,MACROMOLECULAR RAPID COMMUNICATIONS,2008年,Vol. 29, No. 23,p. 1902-1907,DOI:10.1002/MARC.200800515
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00;301/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H01M 4/00-4/84
H01M 50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルであって、
溶媒、二酸化炭素付加環化反応のための触媒、および式I
【化15】

(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはCHであり
は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換COアルキルから選択され、ならびに
nおよびmは整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーを含む、ポリマー組成物
を含む電気化学セル
【請求項2】
がCH である、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】

(i)置換アリールあるか;あるいは
(ii)Hまたは置換もしくは非置換アルキルから選択されか;あるいは
iii)置換または非置換COアルキルであ、請求項1または2に記載の電気化学セル
【請求項4】
前記置換アリールが、フッ素置換アリールである、請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記フッ素置換アリールが、過フッ素化アリールである、請求項4に記載の電気化学セル。
【請求項6】
がHである、請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記置換または非置換CO アルキルが、非置換CO 1-4 アルキルまたはアルコキシ基、トリアルキルシリル基、およびトリアルコキシシリル基から選択される基で置換されたCO 1-4 アルキルである、請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項8】
が、CO メチル、CO ブチル、CO CH CH OCH またはCO CH CH CH Si(OCH である、請求項7に記載の電気化学セル。
【請求項9】
前記溶媒が固体溶媒である、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気化学セル
【請求項10】
前記二酸化炭素付加環化反応のための触媒が無機触媒または有機触媒であ、請求項1からのいずれか一項に記載の電気化学セル
【請求項11】
前記ポリマー組成物が、電気化学セルの構成要素の内面上にコーティングを形成する、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項12】
前記電気化学セルの構成要素が、集電体、薄膜不活性挿入物、および電気化学セルのシェルから選択される、請求項11に記載の電気化学セル。
【請求項13】
電極材料であって、
電気化学的に活性な材料および式I(a)のポリマー:
【化16】

(式中、nおよびmは整数であり、n>0、およびmは≧0である。)
を含む、電極材料。
【請求項14】
前記電気化学的に活性な材料が、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子、およびリチウム化金属リン酸塩粒子からなる群から選択される、請求項13に記載の電極材料。
【請求項15】
ポリマーバインダー、電子伝導性材料、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項13または14に記載の電極材料。
【請求項16】
請求項13に記載のポリマーが、バインダー添加剤である、請求項15に記載の電極材料。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか一項で定義される前記電極材料を集電体上に含む電極であって、前記電極が正極または負極である、電極。
【請求項18】
負極、正極、および電解質を含む、電気化学セルであって、前記正極および前記負極の少なくとも1つは、請求項17で定義された通りであるか、または前記正極および前記負極の少なくとも1つは、請求項13~16のいずれか一項で定義されている通りの電極材料を含む、電気化学セル。
【請求項19】
(i)請求項1~12のいずれか一項で定義される少なくとも1つの電気化学セル;または
(ii)請求項18で定義される少なくとも1つの電気化学セル
を含む、バッテリー
【請求項20】
バッテリーまたは電気化学セルで生成されたCOをトラップするための方法であって、前記COを式I
【化17】

(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはCHであり
は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換COアルキルから選択され、ならびに
nおよびmは整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーと接触させることを含む、方法。
【請求項21】
がCH である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】

(i)置換アリールあるか、あるいは
(ii)Hまたは置換もしくは非置換アルキルから選択されるか、あるいは
(iii)置換または非置換COアルキルである、
請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記置換アリールが、フッ素置換アリールである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記フッ素置換アリールが、過フッ素化アリールである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
がHである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記置換または非置換CO アルキルが、非置換CO 1-4 アルキルまたはアルコキシ基、トリアルキルシリル基、およびトリアルコキシシリル基から選択される基で置換されたCO 1-4 アルキルである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
がCO メチル、CO ブチル、CO CH CH OCH またはCO CH CH CH Si(OCH である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
バッテリーまたは電気化学セルの構成要素の表面上に前記ポリマーを含む組成物を適用するステップをさらに含み、前記組成物が溶媒および二酸化炭素付加環化反応のための触媒をさらに含、請求項20~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記バッテリーまたは電気化学セルの構成要素が、集電体、薄膜不活性挿入物、およびバッテリーまたは電気化学セルのシェル内面から選択される、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年7月6日に出願された米国仮出願第62/694,675号に適用法の下で優先権を主張し、その内容はすべての目的のためにその全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
技術分野は、一般に、グリシジル含有ポリマー、それらを含むポリマー組成物、それらの製造方法、および電気化学セルにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
サイクル中のガス発生は、高性能バッテリーに関する主要な問題の1つであり、マンガンベースの正極を使用するバッテリーの場合において特にそうである。ガスの発生は、バッテリーの寿命全体にわたって発生する電解質の分解によって引き起こされるが、主に形成サイクル中に引き起こされる。例えば、電解質の分解およびガスの発生は、主に、サイクル中の正極および/または負極の界面での電解質の望ましくない反応に起因する。例えば、電解質の分解は、正極および/または負極の界面での電解質の電気化学的分解によって、または追加の分解反応によって直接引き起こされ得る。これらの反応速度は、一般に、温度、電圧、ならびに過充電および過放電などの他のストレス要因とともに増加する。ポーチタイプのセルを実装する場合、ガスが形成されると膨張して変形するため、ガスの発生は深刻な問題になる。発生するガスは、主に二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、エチレン(C)、および水素(H)からなる。例えば、COおよびCOは、正極でのカーボネート電解質分解の結果として放出され得る(Michalak、B.et al.、Analytical Chemistry 2016、88(5)、2877-2883;およびMao、Z. et al.、Journal of the Electrochemical Society 2017、164(14)、A3469-A3483)。
したがって、セル内での形成時にCOを捕捉することができる材料、例えば、ポリマーバインダー添加剤、またはバッテリーの構成要素の内面のためのポリマーコーティングが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Michalak、B.et al.、Analytical Chemistry 2016、88(5)、2877-2883
【文献】Mao、Z. et al.、Journal of the Electrochemical Society 2017、164(14)、A3469-A3483
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
一局面によれば、本技術は、溶媒、触媒、および式I:
【化1】
(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはCHであり、
は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換COアルキルから選択され、ならびに
nおよびmは、整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーを含むポリマー組成物に関する。
【0006】
一実施形態において、Rは、置換アリール、好ましくはフッ素置換アリール、例えば、過フッ素化アリールである。別の例において、Rは、Hまたは置換もしくは非置換アルキルから選択される。さらなる例において、Rは、置換もしくは非置換COアルキル、例えば、非置換CO1-4アルキル(例えば、COメチルおよびCOブチル)またはアルコキシ(例えば、COCHCHOCH)、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリル(例えば、COCHCHCHSi(OCH)から選択される群で置換されたCO1-4アルキルである。
【0007】
別の実施形態において、溶媒は、固体溶媒、例えば、ポリマー溶媒である。例えば、固体溶媒は、ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)である。
【0008】
別の実施形態において、触媒は、CO付加環化反応のための触媒である。例えば、触媒は、無機触媒(例えば、臭化リチウム(LiBr))または有機触媒である。例えば、触媒は有機触媒であり、そのような有機触媒は、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、またはCO環状付加のための他の任意の公知の有機塩基触媒、好ましくは第四級アンモニウム塩を含み得る。一例において、第四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド(EtBnNCl))である。
【0009】
別の局面によれば、本技術は、内面上に、本明細書で定義されるポリマー組成物の層を含む、バッテリーまたは電気化学セルのシェルに関する。
【0010】
別の実施形態において、シェルは、ポーチ、円筒形、角柱形、またはボタン型のシェルである。例えば、シェルはポーチである。
【0011】
別の局面によれば、本技術は、式I(a):
【化2】
(式中、nおよびmは整数であり、ここでn>0、mは≧0である。)
のポリマーに関する。
【0012】
別の実施形態において、電気化学的に活性な材料は、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子、およびリチウム化金属リン酸塩粒子からなる群から選択される。
【0013】
別の局面によれば、式I(a)のポリマーおよび電気化学的に活性な材料を含む電極材料が、記載されている。一実施形態において、電極材料は、ポリマーバインダー、電子伝導性材料、またはそれらの組み合わせをさらに含む。例えば、ポリマーバインダーが存在し、フッ素含有ポリマー(例えば、PVdF、PTFEなど)、水溶性バインダー(例えば、SBR、NBR、HNBR、CHR、およびACM)、ならびに少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメント(例えば、ポリエーテルセグメント)および少なくとも1つの架橋可能なセグメントで構成されるコポリマーなどのイオン伝導性ポリマーバインダー(例えば、メチルメタクリレート単位を含む、PEOベースのポリマー)からなる群から選択される。例えば、ポリマーバインダーは、PVdFである。
【0014】
別の実施形態において、式I(a)のポリマーは、バインダー添加剤である。
【0015】
一実施形態において、電子伝導性材料が存在し、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
さらなる局面において、本明細書は、集電体上の電極材料を含む、正極または負極をさらに記載する。
【0017】
別の局面によれば、本技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルに関する、ここで、正極は本明細書で定義される通りであるか、負極は本明細書で定義される通りであるか、または正極および負極は本明細書で定義されている通りである。
【0018】
さらなる局面によれば、本技術は、負極、正極、および電解質を含む電気化学セルに関する、ここで、正極および負極の少なくとも1つの材料は、本明細書で定義される電極材料を含む。
【0019】
別の局面によれば、本明細書で定義されるような少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリーが、記載される。
【0020】
別の局面によれば、本明細書はまた、本明細書で定義されるようなポリマー組成物を含むバッテリーを記載している。一実施形態において、バッテリーは、本明細書で定義されるように、少なくとも1つの電気化学セルおよびポリマー組成物を両方とも含む。一実施形態において、ポリマー組成物は、バッテリーの構成要素の表面上にコーティングを形成する。例えば、前記バッテリーコーティングは、集電体の表面上、薄膜不活性挿入物上、またはバッテリーもしくは電気化学セルのシェル(例えば、固体包装または可撓性ポーチ)の内面にある。
【0021】
一実施形態において、バッテリーは、リチウムバッテリー、リチウム空気バッテリー、リチウム硫黄バッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、およびマグネシウムバッテリーから選択される。
【0022】
さらにさらなる局面によれば、本技術は、バッテリーまたは電気化学セルで生成されたCOをトラップする方法に関し、前記COを式I
【化3】
(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはCHであり、
は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換COアルキルから選択され、ならびに
nおよびmは整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーと接触させることを含む。
【0023】
一実施形態において、Rは、置換アリール、好ましくはフッ素置換アリール、例えば、過フッ素化アリールである。別の例において、Rは、Hまたは置換もしくは非置換アルキルから選択される。さらなる例において、Rは、置換もしくは非置換COアルキル、例えば、非置換CO1-4アルキル(例えば、COメチルおよびCOブチル)またはアルコキシ(例えば、COCHCHOCH)、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリル(例えば、COCHCHCHSi(OCH)から選択される群で置換されたCO1-4アルキルである。
【0024】
一実施形態において、本明細書に記載されているような方法は、バッテリーまたは電気化学セルの構成要素の表面上にポリマーを含む組成物を適用するステップをさらに含み、ここで前記組成物は、溶媒および触媒をさらに含む。
【0025】
別の実施形態において、溶媒は固体溶媒であり、例えば、ポリマー溶媒である。例えば、固体溶媒はポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)である。
【0026】
別の実施形態において、触媒は、CO付加環化反応のための触媒である。例えば、触媒は、無機触媒(例えば、臭化リチウム(LiBr))または有機触媒である。例えば、触媒は有機触媒である。例えば、有機触媒は、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、またはCO付加環化のための他の任意の公知の有機塩基触媒、好ましくは第四級アンモニウム塩を含む。一例において、第四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド(EtBnNCl))である。
【0027】
別の実施形態において、バッテリーまたは電気化学セルは、集電体、薄膜不活性挿入物、およびバッテリーまたは電気化学セルのシェル(例えば、固体包装または可撓性ポーチ)の内面から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施例1(b)で記載されるように、セル1(実線)およびセル2(点線)について、25℃の温度で0.2Cで実行された、3回の充電および放電サイクルを示す。
【0029】
図2図2は、実施例1(b)で記載されるように、セル1(水平レンガ充填パターン)およびセル2(対角線充填パターン)の容量結果を、異なる充電および放電速度(1C、2C、5C、および10C)で評価し、25℃の温度で記録した。
【0030】
図3図3は、実施例2(e)で記載されるように、プロセスの写真を示しており、(A)ポーチタイプのセルケース(つまり、セルのシェル)の内面、(B)ポーチシェルの内面に直接注がれた、実施例2(d)に記載されるようなグリシジル含有ポリマー組成物コーティング溶液(C)〈〈ドクターブレード〉〉法によって広げられ、乾燥された後のコーティング、(D)5~15mLのCOで加圧された、密封ポーチシェル、および(E)25℃、45℃または60℃の温度で12、24、48または72時間加熱した後の密封ポーチシェル、を示す。
【0031】
図4図4は、一実施形態によるコポリマーの関連するピーク割り当てを備えたFTIRスペクトルを示し、(A)ポリ(メチルアクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)コーティング、および(B)実施例2(g)に記載されるように45℃の温度で12時間加熱した後の同じコーティングを示している。
【0032】
図5図5は、実施例2(h)で記載されるように、関連するピーク割り当て(丸で囲んだ部分)を備えた固体状態13C核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示している。
【0033】
図6図6は、実施例2(i)に記載されるように、コポリマーでコーティングされたアルミ箔を含むポーチシェルの写真を示している。
【0034】
図7図7は、0.2Cで3回の充電および放電サイクルを実行した後のポーチセルの写真を示し、実施例2(j)に記載されるように(A)セル3、2つのコーティングされたアルミ箔を備えたポーチセル、および(B)セル4、コーティングされていないポーチセル、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
以下の詳細な説明および例は例示的なものであり、本発明の範囲をさらに限定するものとして解釈されるべきではない。
【0036】
本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語および表現は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ定義を有する。それにもかかわらず、本明細書で使用されるいくつかの用語および表現の定義は、明確にするために以下に提供される。
【0037】
用語「おおよそ(approximately)」またはその同等の用語「約(about)」が本明細書で使用される場合、それは、おおよそまたはその領域内、およびその周辺を意味する。数値に関連して用語「おおよそ」または「約」が使用されている場合、それはそれを変更する、例えば、10%の変動によってその公称値の上下を意味する場合がある。この用語は、数値の丸め、および実験測定でのランダムエラーの確率も考慮に入れる場合がある。
【0038】
より明確にするために、本明細書で使用される、表現「由来するモノマー単位」および同等の表現は、その重合後に重合可能なモノマーから生じる、ポリマー繰り返し単位を指す。
【0039】
本明細書に記載されている化学構造は、従来の基準に従って描かれている。また、描かれた炭素原子などの原子が、不完全な原子価を含んでいるように見える場合、必ずしも明示的に描かれていなくても、1つまたは複数の水素原子によって満たしていると見なされる。
【0040】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、直鎖または分岐アルキル基を含む、1から12個の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。アルキル基の例は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチルなどを含む。アルキル基が2つの官能基の間に位置する場合、用語「アルキル」は、メチレン、エチレン、プロピレンなどのアルキレン基も包含する。
【0041】
本明細書で使用される用語「アリール」は、6から14個の環原子、好ましくは6個からの環原子を含む、芳香族特性を有する環を含む官能基を指す。用語「アリール」は、共役単環式および多環式の両方の系に適用する。用語「アリール」は、非置換アリール基、およびアルキル置換アリール、部分的にフッ素化されたアリール、フルオロアルキル置換アリールなどの置換アリール基の両方にも適用する。アリール官能基は、直接結合されるか、またはC-Cアルキル基(アリールアルキルまたはアラルキルとも呼ばれる)を介して結合され得る。アリール基の例は、限定されないが、フェニル、ベンジル、フェネチル、1-フェニルエチル、トリル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、アズレニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニルなどを含む。
【0042】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、それに結合した酸素原子を有するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基は、1~約12個の炭素原子を有する基を含む。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ基などを含む。
【0043】
前記基のいずれかに関連する場合、用語「置換された」は、1つまたは複数の位置で適切な置換基で置換された基を指す。置換基の例は、限定されないが、フッ素原子、トリフルオロメチル、低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、低級アルコキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ベンジル、アルコキシカルボニル、スルホニル、シリル、シラン、シロキサン、オキソなどを含む。上記の置換基のいずれかは、許容される場合、例えば、基がアルキル基、アルコキシ基、アリール基などを含む場合、さらに置換され得る。
【0044】
本技術は、二酸化炭素(CO)を捕捉するための新しい材料に関する。例えば、これらの材料は、COトラップ部分を含むポリマーである(North, M. et al., Angewandte Chemie International Edition 2009, 48 (16), 2946-2948;およびYamamoto, S. I. et al., Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 2005, 43 (19), 4578-4585を参照)。
【0045】
したがって、本技術は、COを捕捉するために使用することができる部分を含むポリマーを提案する。例えば、これらのポリマーは、ランダム、交互またはブロックコポリマーを含む、ホモポリマーまたはコポリマーであり得、エポキシド含有官能基などのCOをトラップするために使用され得る部分を含む、モノマー単位を含み得る。例えば、ポリマーは、COおよびエポキシド基の環状カーボネートへの触媒変換によって、COを捕捉することができる。
【0046】
本技術は、グリシジルアクリレートに由来するモノマー単位を含む、ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)に関する。例えば、そのようなポリマーは、電気化学セルでの使用を目的としている。例えば、そのようなポリマーは、それらの成功した適用に重要である、ポーチタイプのセルにおけるガス発生を最小化するために使用され得る。
【0047】
例えば、これらのポリマーは、バインダー添加剤として、または電気化学セルの内部構成要素上のポリマーコーティングとしての使用が企図されている。
【0048】
第1の局面によれば、本技術は、溶媒、触媒、および式I:
【化4】
(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはCHであり、
は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換COアルキルから選択され、ならびに
nおよびmは、ポリマー内で各モノマー単位の数を表す整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーを含む、ポリマー組成物に関する。
【0049】
一例において、Rは、置換アリール、好ましくはフッ素置換アリール、例えば、過フッ素化アリールである。別の例において、Rは、Hまたは置換もしくは非置換アルキルから選択される。さらなる例において、Rは、置換または非置換のCOアルキル、例えば、非置換CO1-4アルキル(例えば、COメチルおよびCOブチル)またはアルコキシ(例えば、COCHCHOCH)、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリル(例えば、COCHCHCHSi(OCH)から選択される基で置換されたCO1-4アルキルである。
【0050】
鎖末端は切断された結合として描かれ、メチル基を表すまたはメチル基と限定されると解釈されるべきではないことが理解される。ポリマー鎖末端は、水素原子、アルキル基、重合開始剤の残基などであり得る。したがって、これらの鎖末端は、本明細書で定義される、式I(およびI(a))のポリマーに含まれていなかった。
【0051】
一例において、触媒は、CO付加環化反応のための触媒である。例えば、触媒は、無機触媒(例えば、臭化リチウム(LiBr))または有機触媒である。例えば、触媒は有機触媒である。有機触媒の非限定的な例は、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、またはCO付加環化のための他の任意の公知の有機塩基触媒、好ましくは第四級アンモニウム塩を含む。一例において、第四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド(EtBnNCl))である。
【0052】
一例において、溶媒は固体溶媒である。例えば、固体溶媒は、COトラップ反応のために触媒を可溶化するその能力、およびエポキシ官能基に対するその低い反応性のために選択される。例えば、固体溶媒は、ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)などの非プロトン性極性固体溶媒である。
【0053】
例えば、式Iのポリマーは、式II:
【化5】
(式中、Rは本明細書で定義される通りである)
のグリシジルアクリレートに由来するモノマー単位を含むモノマーの反応から調製された、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれかである。
【0054】
一例において、Rはメチル基であり、式IIのグリシジルアクリレートは、グリシジルメタクリレート(GMA)である。
【0055】
一局面において、ポリマーは、式IIのモノマー単位および式III:
【化6】
(式中、RおよびRは、本明細書で定義される通りである)
の第2のモノマー単位を反応させることによって調製されるコポリマーである。
【0056】
式IIIの第2のモノマー単位の非限定的な例は、アクリレート含有モノマーおよびビニル含有モノマーを含む。
【0057】
一例において、ビニル含有モノマーは、ペンタフルオロスチレンまたはエチレンである。例えば、アクリレート含有モノマーは、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、および3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートから選択される。例えば、式IIIの第2のモノマー単位は、ペンタフルオロスチレン、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートまたはメチルアクリレートである。
【0058】
式IIIの第2のモノマー単位の例は、式III(a)、III(b)、III(c)、III(d)、III(e)またはIII(f):
【化7】
の化合物を含む。
【0059】
別の局面によれば、本技術は、本明細書で定義されるポリマーを製造するためのプロセスに関する。モノマーの重合は、任意の公知の手順によって達成することができる。例えば、重合はフリーラジカル重合(FRP)によって実施される。ポリマーがコポリマーである場合、重合は、例えば、スキーム1に示されるような重合プロセスによって、式IIに由来するモノマー単位と式IIIのモノマー単位との間で起こる。
【化8】
(式中、R、R、R、nおよびmは、本明細書で定義される通りである)。
【0060】
例えば、スキーム1のラジカル開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物であり得る。
【0061】
別の例によれば、式IIのグリシジルアクリレートに由来するモノマー単位および式IIIのビニル含有モノマー単位のフリーラジカル重合は、非プロトン性溶媒の存在下で実施することができる。例えば、非プロトン性溶媒はジオキサンであり得る。あるいは、式IIのグリシジルアクリレートに由来するモノマー単位および式IIIのアクリレート含有モノマー単位のフリーラジカル重合は、非プロトン性極性溶媒の存在下で実施され得る。例えば、非プロトン性極性溶媒はテトラヒドロフラン(THF)である。
【0062】
別の局面によれば、本技術は、電気化学セルで使用するための、本明細書に記載のポリマー組成物に関する。あるいは、本明細書に記載されるポリマー組成物は、例えば前記表面をポリマー組成物でコーティングすることによって、バッテリーの構成要素の内面の処理に使用するためのものである。
【0063】
一例において、ポリマー組成物は、少なくとも1つのバッテリーまたは電気化学セルの構成要素の表面上にコーティングを形成する。例えば、前記バッテリーコーティングは、集電体の表面上、薄膜不活性挿入物上、またはバッテリーもしくは電気化学セルのシェル(例えば、固体包装または可撓性ポーチ)の内面にある。例えば、バッテリーまたは電気化学セルのシェルは、ポーチタイプのシェルであるが、任意の他の公知のタイプのシェルであってもよい。例えば、薄膜不活性挿入物は、バッテリーまたは電気化学セルのシェルに挿入された、アルミ薄膜、銅薄膜、またはポリマー(例えば、ポリプロピレン)薄膜である。一例において、バッテリーまたは電気化学セルの構成要素は、バッテリーまたは電気化学セルのシェルに挿入されたアルミ薄膜であり、前記薄膜は、バッテリーまたは電気化学セルに重要でない重量を追加する。
【0064】
一例において、ポリマー組成物がバッテリーの構成要素の内面の処理における使用されるためである場合、式IIIの第2のモノマー単位は、固体溶媒とのその化学的適合性、電解質へのその低い溶解性、およびその可撓性のために選択される。一例において、固体溶媒はPVPであり、式IIIの第2のモノマー単位はアクリレート含有モノマーである。
【0065】
式IIIの第2のモノマー単位はまた、ポリマーと、処理されるバッテリーまたは電気化学セルの構成要素の内面との間の接着を改善するように選択され得る。例えば、エチレンは、アルミニウム積層フィルムポーチシェルの内部ポリマー層の処理のための式IIIの第2のモノマー単位として使用され得る。あるいは、メチルアクリルレート、ブチルアクリルレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、および3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートは、バッテリーまたは電気化学シェルに挿入されたアルミ薄膜の処理のための、式IIIの第2のモノマー単位として使用され得る。
【0066】
例えば、式IIIの第2のモノマー単位として3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートを使用する場合、アルミ薄膜挿入物上の、本明細書に記載されるポリマーのコーティングは、スキーム2に示されるようなプロセスを含み得る。
【化9】
【0067】
別の局面によれば、本技術は、内面上に、本明細書で定義される、ポリマー組成物の層を含む、バッテリーまたは電気化学セルのシェルに関する。例えば、シェルはポーチ、円筒形、角柱状、コイン、またはボタン型のシェルである。一変形において、シェルはポーチタイプのシェルである。
【0068】
例えば、ポーチタイプのシェルは、多層材料で作られたアルミニウム積層フィルムである。本明細書で定義されるポリマー組成物の層は、前記多層材料の内面上にコーティングされる。例えば、多層材料は、外側から内側に、外部ポリマー層(例えば、ポリアミド)、接着剤層(例えば、ポリエステル-ポリウレタン)、アルミ箔、接着剤層(例えば、ウレタンを含まない接着剤)、内部ポリマー層(例えば、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレン)および本明細書で定義されるポリマー組成物の層を含み得る。例えば、式IIIの第2のモノマー単位は、その可撓性のため、電解質への溶解性を最小化するその能力のため、溶媒とのその適合性のため、および/または内部ポリマー層に接着するその能力のために選択される。例えば、内部ポリマー層はポリエチレン層であり、式Iのポリマーはポリ(エチレン-コ-グリシジルメタクリレート)である。
【0069】
別の局面によれば、本技術は、式I(a):
【化10】
(式中、nおよびmは、整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーに関する。
【0070】
別の局面によれば、本技術は、本明細書で定義される式I(a)のポリマーおよび電気化学的に活性な材料を含む電極材料に関する。
【0071】
一例において、電気化学的に活性な電極材料は、例えば、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)など、または該当する場合、それらの組み合わせからなる群から選択される、遷移金属の酸化物を含む。電気化学的に活性な材料の非限定的な例は、チタン酸塩およびチタン酸リチウム(例えば、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11、HTi、またはそれらの組み合わせ)、リチウム金属リン酸塩および金属リン酸塩(例えば、LiM’POおよびM’PO、ここでM’はFe、Ni、Mn、Co、またはそれらの組み合わせ)、酸化バナジウム(例えば、LiV、V、LiVなど)、および他のリチウムおよび金属酸化物、例えば、LiMn、LiM’’O(M’’はMn、Co、Ni、またはそれらの組み合わせ)、およびLi(NiM’’’)O(M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zrなど、またはそれらの組み合わせ)、または互換性がある場合、上記の材料のいずれかの組み合わせを含む。
【0072】
関心のある一変形において、電極材料は、正極材料である。例えば、正極材料は、上記のものなどのマンガン含有酸化物またはリン酸塩、例えば、リチウムマンガン酸化物であり、ここで、Mnは、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)などの第2の遷移金属によって部分的に置換され得る。あるいは、関心のある一変形において、活性材料は、上記のものなどのマンガン含有リチウム金属リン酸塩であり、例えば、マンガン含有リチウム金属リン酸塩は、リチウムマンガン鉄リン酸塩(LiMn1-xFePO、ここで、xは0.2から0.5の間である)である。
【0073】
一例において、電気化学的活性電極材料は、その電気化学的特性を最適化するために、少なくとも1つのドーピング要素をさらに含む。例えば、電気化学的に活性な電極材料は、遷移金属(例えば、Fe、Co、Ni、Mn、ZnおよびY)および/または非遷移金属(例えば、MgおよびAl)元素でわずかにドープされ得る。例えば、電気化学的に活性な電極材料はマグネシウムをドープしている。
【0074】
電気化学的に活性な材料は、新たに形成することができる粒子の形態、または微粒子もしくはナノ粒子などの商業的供給源の形態であり得、必要に応じて炭素コーティングなどのコーティングをさらに含む。
【0075】
一例において、本明細書に記載の電極材料は、ポリマーバインダー、電子伝導性材料、またはそれらの組み合わせをさらに含む。電極材料はまた、必要に応じて、塩、無機粒子、ガラスまたはセラミック粒子などのような追加の成分または添加剤を含み得る。
【0076】
電子伝導性材料の非限定的な例は、カーボンブラック(例えば、KetjenTMブラック)、アセチレンブラック(例えば、ShawiniganブラックおよびDenkaTMブラック)、グラファイト、グラフェン、炭素繊維(例えば、蒸気成長炭素繊維(VGCF))、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(NTC)、およびそれらの組み合わせを含む。例えば、電子伝導性材料は、アセチレンブラックまたはアセチレンブラックとVGCFとの組み合わせである。
【0077】
一例において、電極材料は、ポリマーバインダーを含む。ポリマーバインダーは、エポキシ官能基に対するその低い反応性のために選択される。ポリマーバインダーの非限定的な例は、フッ素含有ポリマー(例えば、PVdF、PTFEなど)、水溶性バインダー(例えば、SBR、NBR、HNBR、CHR、およびACM、および組み合わせ)、ならびにポリエーテルなどの少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメントおよび少なくとも1つの架橋可能なセグメントで構成されるコポリマーのようなイオン伝導性ポリマーバインダー(例えば、メチルメタクリレート単位を含むPEOベースのポリマー)を含む。例えば、ポリマーバインダーはポリフッ化ビニリデン(PVdF)である。
【0078】
例えば、本明細書に記載の式I(a)のポリマーは、バインダー添加剤として使用することができる。ペンタフルオロスチレン(PFS)に由来するモノマー単位は、ポリマーバインダー(PVdF)とのその化学的適合性、電解質へのその不溶性、およびその電気化学的安定性のために選択される。
【0079】
別の局面によれば、本技術は、集電体上に、本明細書に定義される電極材料を含む、正極または負極に関する。
【0080】
別の局面によれば、本技術はまた、本ポリマーまたは本ポリマー組成物を含む電気化学セルに関する。そのような電気化学セルは、負極、正極、および電解質を含む。一例において、正極、負極、または正極および負極の両方が、本明細書に定義される電極材料を含む。前記ポリマーまたはポリマー組成物の存在は、電気化学セルの電気化学的性能に悪影響を及ぼさない。
【0081】
より明確にするために、負極の電気化学的に活性な材料は、上記で定義された電気化学的に活性な材料(電極活性材料とのレドックス適合性のために選択される)、ならびにアルカリ金属フィルム、例えば、金属リチウムフィルムまたはその合金を含む、任意の公知の材料から選択され得る。一例において、負極材料は本ポリマーを含まず、むしろ、それは集電体上の金属材料または負極材料のフィルムからなる。例えば、負極材料は、リチウム金属またはリチウム挿入材料である。例えば、負極材料は、本明細書で定義されるような電気化学的に活性な材料、例えば、チタン酸リチウムを含む。
【0082】
別の局面によれば、本技術はまた、本明細書で定義されるような少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリーに関する。代替によれば、バッテリーは、本明細書で定義されるポリマー組成物を含む。あるいは、バッテリーは、本明細書で定義される少なくとも1つの電気化学セルおよび本明細書で定義されるポリマー組成物を含む。
【0083】
一例において、ポリマー組成物は、少なくとも1つのバッテリーまたは電気化学セルの構成要素の表面上にコーティングを形成する。例えば、前記バッテリーコーティングは、集電体の表面上、薄膜不活性挿入物上、またはバッテリーもしくは電気化学セルのシェル(例えば、固体包装または可撓性ポーチ)の内面にある。例えば、薄膜不活性挿入物は、バッテリーまたは電気化学セルのシェルに挿入された、アルミ薄膜、銅薄膜、またはポリマー(例えば、ポリプロピレン)薄膜である。一例において、バッテリーまたは電気化学セルの構成要素は、バッテリーまたは電気化学セルのシェルに挿入されたアルミ薄膜であり、前記薄膜は、バッテリーまたは電気化学セルに重要でない重量を追加する。
【0084】
例えば、バッテリーは、リチウムバッテリー、リチウム空気バッテリー、リチウム硫黄バッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、およびマグネシウムバッテリーからなる群から選択される。例えば、バッテリーはリチウムイオンバッテリー、例えば、LMFP-LTOバッテリーである。
【0085】
別の局面によれば、本技術はまた、バッテリーまたは電気化学セルで生成されたCOをトラップする方法に関し、前記COを、本明細書で定義される式Iのポリマーと接触させることを含む。
【0086】
一例において、前記方法は、バッテリーまたは電気化学セルの構成要素の表面上にポリマーを含む組成物を適用するステップをさらに含み、ここで前記組成物は、溶媒および触媒をさらに含む。
【0087】
一例において、溶媒は固体溶媒である。例えば、固体溶媒は、COトラップ反応のために触媒を可溶化するその能力、およびエポキシ官能基に対するその低い反応性のために選択される。例えば、固体溶媒は、非プロトン性極性固体溶媒、例えば、PVPなどのポリマー溶媒である。
【0088】
一例において、触媒は、CO付加環化反応において触媒として作用する。例えば、触媒は、無機触媒(例えば、臭化リチウム(LiBr))または有機触媒である。例えば、触媒は有機触媒である。有機触媒の非限定的な例は、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、またはCO付加環化のための他の任意の公知の有機塩基触媒、好ましくは第四級アンモニウム塩を含む。一例において、第四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムハライド(例えば、EtBnNCl)である。
【0089】
一局面において、二酸化炭素は、エポキシドへのCOの付加環化を介した5員環状カーボネートの生成によってトラップされる。一例によれば、COの化学的トラッピングは、式IIのグリシジルアクリレートに由来するポリマーのモノマー単位のエポキシド官能基で起こる。例えば、グリシジルメタクリレート(GMA)は、COの固定によるエポキシド基の環状カーボネートへのその効率的な変換のために選択される。実際、GMAは、CO挿入率が高い(>64%)触媒の存在下で、COと容易に反応し、化学的に適合性があり、電解質(例えば、液体電解質)によって高度に湿潤性の部分を形成する。
【0090】
グリシジルメタクリレートに由来するポリマーのモノマー単位のエポキシド官能基によるCOの化学的トラッピングは、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレートに由来するモノマー単位を生成する。
【0091】
一例において、エポキシドによるCOのトラップ、および5員環カーボネートの形成後、本明細書で定義される、ポリマーまたはポリマー組成物は、電解質組成物、例えば、液体電解質中に不溶性になる。
【実施例
【0092】
以下の非限定的な実施例は、例示的な実施形態であり、本発明の範囲をさらに限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図を参照することでよりよく理解できる。
【0093】
実施例1:バインダー添加剤として使用されるグリシジル含有ポリマー
この実施例は、バインダー添加剤としてのグリシジル含有ポリマーの使用を示している。この実施例において、PVdFをポリマーバインダーとして使用し、PVdFと適合性があり、電解質に不溶性になるように、グリシジル含有ポリマー添加剤を開発した。この実施例において、式IIに由来するモノマー単位は、触媒の存在下でCOをトラップするためのグリシジルメタクリレート(GMA)であり、それによって非水電解質と適合性があり、非水電解質によって高度に湿潤性の部分を形成する。PVdFとのその適合性およびその優れた電気化学的安定性のために、この場合に選択されたため、式IIIの2番目のモノマー単位はペンタフルオロスチレンであった。
【0094】
(a)グリシジルメタクリレートおよびペンタフルオロスチレンのラジカル条件下での重合
【化11】
この実施例は、グリシジルメタクリレート(GMA)およびペンタフルオロスチレン(PFS)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)によって開始されるフリーラジカル重合を示す。
【0095】
GMAおよびPFSを、最初に塩基性酸化アルミニウム(アルミナ、Al)に通した。重合を75mLのジオキサン、2.2gのGMA、および3.0gのPFSを100mLの丸底フラスコ中に導入することによって達成した。次に、溶液を磁気バーで30分間撹拌し、窒素(N)でバブリングした。次に、60mgのAIBNを得られた溶液に加えた。次に、凝縮装置を丸底フラスコに取り付け、反応混合物をN下、80℃で12時間加熱した。次に、得られた溶液を室温まで冷却し、10容量のジエチルエーテルに注いだ。上澄みを沈殿したポリマーから分離し、次に真空下、60℃で12時間乾燥した。
【0096】
実施例1(a)に記載の手順を使用して得られた標準的な生産物を、約40mol%またはより多くのGMA取り込みのレベルで得る。
【0097】
(b)バインダー添加剤としてグリシジル含有ポリマーを使用した細胞の電気化学的特性
実施例1(a)に記載のポリマーを、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチルメチル(EMC)および炭酸ジメチル(DMC)(PC/EMC/DMC(4/3/3))を含む炭酸溶媒混合物中、1Mヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)からなる液体電解質を有するLiMn0.75Fe0.20Mg0.05PO-チタン酸リチウム(LiTi12、LTO)セルにおける電極バインダー添加剤として使用した。
表1.セル構成物
【表1-1】

【表1-2】
【0098】
電気化学的試験の前に、セルを、25℃で0.2Cで3回の充電および放電サイクルにかけた。図1は、セル1で得られた初期容量が、約2.47mAhであり、対照セル(セル2)と同等であることを示す。
【0099】
図2は、セル1および対照セル(セル2)の両方について、異なる充電および放電速度(1C、2C、5C、および10C)で評価された電気化学的性能を示す。2C、5C、および10Cでのセル1で得られた容量は、対照セル(セル2)と比較して改善した。
【0100】
実施例2:バッテリーの構成要素の内面の処理に使用するためのグリシジル含有ポリマー
この実施例は、例えば、バッテリーの構成要素の表面(例えば、固体包装または可撓性ポーチの内面)上のコーティングとしてのグリシジル含有ポリマーの使用を示している。例えば、バッテリーの構成要素は、アルミ箔、ビニール袋、または銅箔である。この実施例において、コポリマーを、バッテリーの構成要素の表面上へのコポリマーの接着を強化し、COトラップを改善するように設計する。例えば、式IIIの第2のモノマー単位を、接着性を高めるために選択し得る。
【0101】
(a)グリシジルメタクリレートおよびメチルアクリレートの重合
【化12】
この実施例は、グリシジルメタクリレート(GMA)およびメチルアクリレート(MA)のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)によって開始されるフリーラジカル重合を示す。
【0102】
GMAおよびMAを、使用前に塩基性酸化アルミニウム(アルミナ、Al)に通した。50mLのテトラヒドロフラン(THF)、5.79gのGMA、および3.5gのMAを100mLの丸底フラスコに導入した。次に、溶液を磁気バーで室温、30分間撹拌し、窒素(N)でバブリングした。次に、88mgのAIBNを得られた溶液に加えた。次に、凝縮装置を丸底フラスコに取り付け、反応混合物をN下、65℃で12時間加熱した。次に、得られた溶液を室温まで冷却し、10容量のジエチルエーテルに注ぎ、ポリマーを沈殿した。次に、上澄みを除去し、ポリマーを真空下、60℃で12時間乾燥した。
【0103】
実施例1(b)に記載の手順を使用して得られた標準的な生成収率は、6.9gのコポリマー、プロトン核磁気共鳴(H NMR)によって決定された%MA=43mol%、数平均分子量(Mn)=28900g/molおよび多分散性指数(PDI)=1.9であった。
【0104】
(b)グリシジルメタクリレートおよびブチルアクリレートの重合
【化13】
GMAおよびブチルアクリレート(BA)を、使用前に塩基性酸化アルミニウム(アルミナ、Al)に通した。次に、50mLのTHF、5.79gのGMA、および2.0gのBAを100mLの丸底フラスコに導入した。次に、溶液を磁気バーで室温、30分間撹拌し、窒素(N)でバブリングした。次に、得られた溶液に80mgのAIBNを加えた。丸底フラスコに凝縮装置を取り付け、反応混合物をN下、65℃で12時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、10容量のジエチルエーテルに注いで沈殿した。次に、上澄みをデカントし、ポリマーを真空下、60℃で12時間乾燥した。
【0105】
実施例1(c)に記載の手順を使用して得られた標準的な生成収率は、5.8gのコポリマー、H NMRによって決定された%BA=42mol%、Mn=30900g/molおよびPDI=1.8であった。
【0106】
(c)グリシジルメタクリレートおよび3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートの重合
【化14】
GMAおよび3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートを、使用前に塩基性酸化アルミニウム(アルミナ、Al)に通した。40mLのTHF、6.0gのGMA、および3.0gの3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートを100mLの丸底フラスコに導入した。次に、溶液を磁気バーで室温、30分間撹拌し、窒素(N)でバブリングした。得られた溶液に89mgのAIBNを加えた。次に、丸底フラスコに凝縮装置を備え、反応混合物をN下、65℃で48時間加熱した。次に、得られた溶液を室温まで冷却し、10容量のジエチルエーテルに注ぎ、ポリマーを沈殿した。次に、上澄みを分離し、得られたポリマーを真空下、60℃で12時間乾燥した。
【0107】
(d)バッテリーの構成要素の内面の処理に使用するためのグリシジル含有ポリマー組成物コーティング溶液の調製
固体溶媒としてのポリビニルピロリドン(0.15g、AcrosからのPVP 3500g/mol)および触媒としての50mgの塩化トリエチルベンジルアンモニウムを1gのエタノールと混合して、第1の溶液を得た。第2の溶液を、実施例2(a)、(b)または(c)で調製した0.50gのポリマーを約1.5から2.0gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に可溶化することによって調製した。次に、得られた第2の溶液を80℃の温度で撹拌した。次に、第1の溶液を第2の溶液に滴下して加え、得られた混合物を室温まで冷却した。
【0108】
(e)バッテリーの構成要素の内面の処理およびコーティングされたポーチセルの調製
コーティングされたポーチシェルを、図3に示すように調製した。図3(A)は、ポーチシェルの内側を示す。図3(B)に見られるように、次に、実施例2(a)、(b)または(c)で調製されたポリマーを使用する、実施例2(d)に記載のコーティング溶液を、ポーチシェルの内側に直接注いだ。次に、コーティング溶液を〈〈ドクターブレード〉〉法で広げ、コーティングを真空下、80℃で3~12時間乾燥した。(図3(C)を参照)。次に、ポーチセルシェルを密封した。
【0109】
(f)ポリマーのエポキシド基によるCOのトラップ
実施例2(e)に記載されているように密封されたポーチセルシェルを、5~15mLのCOで加圧した(図3(D)を参照)。最後に、密封されたポーチシェルを、25℃、45℃、または60℃の温度のオーブンで12、24、48、または72時間熱処理した。
【0110】
(g)フーリエ変換赤外(FTIR)分光法による特性評価
実施例2(f)のように処理された密封されたポーチからのエポキシ官能基の5員環状カーボネート基への変換を、FTIRによって特徴付けた。変換を、900-905cm-1(エポキシ基)でのシグナルの消失および、1800-1805cm-1での環状カーボネートに特徴的なC=Oシグナルの出現によって特徴付けることができる。この手法により、エポキシドシグナルと環状カーボネートシグナルを統合することにより、会話(conversation)を簡単に計算できる。
【0111】
図4は、(A)アルミ箔上、厚さ30μmのポリ(メチルアクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)コーティング(エタノールおよびNMPの混合物に溶媒和)、および(B)45℃の温度で12時間加熱後の同じコーティングのFTIRスペクトルを示す。エポキシ官能基の5員環状カーボネート基への変換を、FTIRによって計算し、(A)で約12%、(B)で約69%であった。
【0112】
表2および3は、異なる温度で72時間後、NMPにおいてそれぞれポリ(メチルアクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)およびポリ(ブチルアクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)組成物を使用して上記処理後に計算された変換結果を示す。
表2
【表2】
表3
【表3】
【0113】
(h)固体13C核磁気共鳴(NMR)の特性評価
図5に示すように、固体13C核磁気共鳴(NMR)でも、エポキシドおよびCOの環状カーボネートへの変換を実証した。実際、図5に存在するCO処理ポリ(メチルアクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)13CNMRスペクトルは、5員環状カーボネート基に存在するカルボニル炭素原子の特徴的な155.06ppmにピークを示す。175.42ppmの幅広いシグナルは、両方のモノマー単位のエステル部分のカルボニル基の炭素原子に関する。48.95および44.48ppmのシグナルは、残りの未反応エポキシドの炭素原子に対応する。
【0114】
(i)GMAおよび3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートのコポリマーを使用するCOのトラッピング
実施例2(e)に記載のプロセスを、実施例2(c)に記載のGMAおよび3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートのコポリマーを含むコーティング組成物を用いて実施した。GMAおよび3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートのコポリマーを含む溶液でコーティングされたアルミ箔を、45℃で24時間後に約11mLのCO/gのコポリマーをトラップできることを示した。このコポリマーを使用する利点は、得られるコーティングがバッテリーの電解質溶媒に不溶性になることを含む。
【0115】
(j)LiMn0.75Fe0.20Mg0.05PO-LiTi12ポーチセルのサイクルエージングの目視検査による特性評価
分解研究を、GMAおよび3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレートのコポリマーを含むコーティング溶液を使用して実施した。コーティング溶液を、実施例2(e)に記載されるように、予め形成されたポーチセルシェルの上部および下部の両方の内面に固定された2つのアルミ箔上にコーティングした。図6は、サイクル前に61mgのコポリマーコーティングでコーティングされた固定アルミ箔(5cm×5.5cm)を備えた予め成形されたポーチセルシェルの写真を示す。正極としてカーボンコーティングされたLiMn0.75Fe0.20Mg0.05POおよび負極としてカーボンコーティングされたLiTi12を備えた2Ahポーチタイプのリチウムイオンセルを、液体電解質(PC/EMC/DMC(4/3/3)中、1M LiPF)を備えた、予め成形されたポーチセルシェル中で組み立てた。本明細書で定義されるコポリマー(セル3)および比較目的の対照セル(セル4)を含むコーティング溶液を含むセルの例は、表4に詳述される重量比で調製した。
表4.セル構成物
【表4-1】

【表4-2】
【0116】
次に、ポーチセルを0.2C(25℃)で3回の充電および放電サイクルにかけた。図7は、これら3回の後、ポーチセルの写真が、(A)セル3、2つのコーティングされたアルミ箔を含むポーチセル、および(B)セル4、全くコーティングされていない対照ポーチセル、中に示すことを示す。(A)中の無傷のポーチセル(セル3)の目視検査は、COがコポリマーコーティングによってトラップされたことを示唆し、(B)中、COガスの発生によって引き起こされたサイクル後の対照セル(セル4)の明らかな膨張が、むしろ観察される。
【0117】
本発明の範囲から離れることなく、上記の実施形態のいずれかに多数の修正を加えることができる。本出願で言及される、任意の参考文献、特許または科学文献文書は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
溶媒、触媒、および式I
【化15】

(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはCHであり、
は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換COアルキルから選択され、ならびに
nおよびmは整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーを含む、ポリマー組成物。
(項目2)
がCHである、項目1に記載のポリマー組成物。
(項目3)
がHである、項目1または2に記載のポリマー組成物。
(項目4)
がCHである、項目1または2に記載のポリマー組成物。
(項目5)
が置換アリール、好ましくはフッ素置換アリール、例えば過フッ素化アリールである、項目1から4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(項目6)
がHまたは置換もしくは非置換アルキルから選択される、項目1から4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(項目7)
がHである、項目6に記載のポリマー組成物。
(項目8)
が置換または非置換COアルキルである、項目1から4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(項目9)
が非置換CO1-4アルキル(例えば、COメチルおよびCOブチル)である、項目8に記載のポリマー組成物。
(項目10)
が、アルコキシ(例えば、COCHCHOCH)、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリル(例えば、COCHCHCHSi(OCH)から選択される基で置換されたCO1-4アルキルである、項目8に記載のポリマー組成物。
(項目11)
前記溶媒が固体溶媒、例えば、ポリマー溶媒である、項目1から10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(項目12)
前記固体溶媒がポリ(N-ビニルピロリドン)である、項目11に記載のポリマー組成物。
(項目13)
前記触媒が無機触媒または有機触媒である、項目1から12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(項目14)
前記無機触媒が臭化リチウム(LiBr)である、項目13に記載のポリマー組成物。(項目15)
前記有機触媒が、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、およびCO付加環化のための他の任意の公知の有機塩基触媒からなる群から選択される、項目13に記載のポリマー組成物。
(項目16)
前記第四級アンモニウム塩が、テトラアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド)である、項目15に記載のポリマー組成物。
(項目17)
電気化学セルで使用するための、項目1から16のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(項目18)
バッテリーまたは電気化学セルの構成要素の内面の処理に使用するための、項目1から16のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
(項目19)
項目1から16のいずれか一項で定義される前記ポリマー組成物の層を内面に含む、バッテリーまたは電気化学セルのシェル。
(項目20)
前記シェルがポーチである、項目19に記載のバッテリーまたは電気化学セルのシェル。
(項目21)
前記シェルが円筒形または角柱形である、項目19に記載のバッテリーまたは電気化学セルのシェル。
(項目22)
前記シェルがボタン型である、項目19に記載のバッテリーまたは電気化学セルのシェル。
(項目23)
式I(a)のポリマー:
【化16】

(式中、nおよびmは整数であり、n>0、およびmは≧0である。)。
(項目24)
項目23で定義されるポリマーおよび電気化学的に活性な材料を含む、電極材料。
(項目25)
前記電気化学的に活性な材料が、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子、およびリチウム化金属リン酸塩粒子からなる群から選択される、項目24に記載の電極材料。
(項目26)
前記金属が、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される遷移金属である、項目25に記載の電極材料。
(項目27)
前記電気化学的に活性な材料が、マンガン含有酸化物またはリン酸塩である、項目24から26のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目28)
前記電気化学的に活性な材料が、少なくとも1つのドーピング元素(例えば、マグネシウム)をさらに含む、項目24から27のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目29)
ポリマーバインダー、電子伝導性材料、またはそれらの組み合わせをさらに含む、項目24から28のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目30)
前記ポリマーバインダーが存在し、フッ素含有ポリマー(例えば、PVdF、PTFEなど)、水溶性バインダー(例えば、SBR、NBR、HNBR、CHR、およびACM)、ならびに少なくとも1つのリチウムイオン溶媒和セグメント(例えば、ポリエーテルセグメント)および少なくとも1つの架橋可能セグメントで構成されるコポリマーなどの、イオン伝導性ポリマーバインダー(例えば、メチルメタクリレート単位を含むPEOベースポリマー)からなる群から選択される、項目29に記載の電極材料。
(項目31)
前記ポリマーバインダーが、フッ素含有ポリマー(例えば、PVdF)である、項目30に記載の電極材料。
(項目32)
項目23で定義されるポリマーがバインダー添加剤である、項目29から31のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目33)
前記電子伝導性材料が存在し、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目29から31のいずれか一項に記載の電極材料。
(項目34)
前記電子伝導性材料がアセチレンブラックである、項目33に記載の電極材料。
(項目35)
前記電子伝導性材料が、アセチレンブラックおよび炭素繊維(例えば、蒸気成長炭素繊維(VGCF))の組み合わせである、項目33に記載の電極材料。
(項目36)
項目24から35のいずれか一項で定義される前記電極材料を集電体上に含む正極。
(項目37)
項目24から35のいずれか一項で定義される前記電極材料を集電体上に含む負極。
(項目38)
負極、正極、および電解質を含む、電気化学セルであって、前記正極は、項目36で定義された通りであるか、前記負極は、項目37で定義された通りであるか、または前記正極は、項目36で定義された通りであり、前記負極は、項目37で定義されている通りである、電気化学セル。
(項目39)
負極、正極、および電解質を含む電気化学セルであって、前記正極および負極の少なくとも1つは、項目24から35のいずれか一項で定義される電極材料を含む、電気化学セル。
(項目40)
項目38または39で定義される少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー。
(項目41)
項目1から16のいずれか一項で定義されるポリマー組成物を含むバッテリー。
(項目42)
項目38または39で定義される少なくとも1つの電気化学セル、および項目1から16のいずれか一項で定義されるポリマー組成物を含む、バッテリー。
(項目43)
前記ポリマー組成物が、バッテリーの構成要素の表面上にコーティングを形成する、項目41または42に記載のバッテリー。
(項目44)
前記バッテリーコーティングが、集電体の表面上、薄膜不活性挿入物上、またはバッテリーまたは電気化学セルのシェル(例えば、固体包装または可撓性ポーチ)の内面にある、項目43に記載のバッテリー。
(項目45)
前記バッテリーが、リチウムバッテリー、リチウム空気バッテリー、リチウム硫黄バッテリー、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムバッテリー、およびマグネシウムバッテリーから選択される、項目40から44のいずれか一項に記載のバッテリー。
(項目46)
バッテリーまたは電気化学セルで生成されたCOをトラップするための方法であって、前記COを式I
【化17】

(式中、RおよびRは、各々独立してHまたはCHであり、
は、H、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換COアルキルから選択され、ならびに
nおよびmは整数であり、ここでn>0、およびmは≧0である。)
のポリマーと接触させることを含む、方法。
(項目47)
がCHである、項目46に記載の方法。
(項目48)
がHである、項目46または47に記載の方法。
(項目49)
がCHである、項目46または47に記載の方法。
(項目50)
が置換アリール、好ましくはフッ素置換アリール、例えば、過フッ素化アリールである、項目46から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
がHまたは置換もしくは非置換アルキルから選択される、項目46から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
がHである、項目51に記載の方法。
(項目53)
が置換または非置換COアルキルである、項目46から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
が非置換CO1-4アルキル(例えば、COメチルおよびCOブチル)である、項目53に記載の方法。
(項目55)
が、アルコキシ(例えば、COCHCHOCH)、トリアルキルシリル、およびトリアルコキシシリル(例えば、COCHCHCHSi(OCH)から選択される基で置換されたCO1-4アルキルである、項目53に記載の方法。(項目56)
バッテリーまたは電気化学セルの構成要素の表面上に前記ポリマーを含む組成物を適用するステップをさらに含み、前記組成物が溶媒および触媒をさらに含む、項目46から55のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記溶媒が固体溶媒、例えば、ポリマー溶媒である、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記固体溶媒がポリ(N-ビニルピロリドン)である、項目57に記載の方法。
(項目59)
前記触媒が無機触媒または有機触媒である、項目56から58のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記無機触媒が臭化リチウム(LiBr)である、項目59に記載の方法。
(項目61)
前記有機触媒が、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、およびCO付加環化のための他の任意の公知の有機塩基触媒からなる群から選択される、項目59に記載の方法。
(項目62)
前記第四級アンモニウム塩がテトラアルキルアンモニウムハライド(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド)である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記バッテリーまたは電気化学セルの構成要素が、集電体、薄膜不活性挿入物、およびバッテリーまたは電気化学セルのシェル(例えば、固体包装または可撓性ポーチ)の内面から選択される、項目56から62のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7