(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電磁鋼板製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20230726BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20230726BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230726BHJP
B32B 37/08 20060101ALI20230726BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230726BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H01F41/02 B
C23C26/00 A
B32B15/08 P
B32B15/08 G
B32B37/08
B32B7/12
H01F1/147 175
(21)【出願番号】P 2021517636
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 KR2019012408
(87)【国際公開番号】W WO2020067703
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0116301
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ボン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドン-ギュ
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540901(JP,A)
【文献】特開2001-338824(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117750(WO,A1)
【文献】特開2003-100523(JP,A)
【文献】特開2005-129767(JP,A)
【文献】特開平02-253943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
C23C 26/00
B32B 15/08
B32B 37/08
B32B 7/12
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着コーティング組成物を準備する段階、
前記接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面に塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階、
前記接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して熱融着層を形成する段階、
および前記熱融着された電磁鋼板を0.05~20℃/分の冷却速度で冷却させる段階を含み、
前記熱融着された電磁鋼板を0.05~20℃/分の冷却速度で冷却させる段階で、
維持加圧力は1000N/mm
2以下であ
り、
前記接着コーティング組成物は、
有機樹脂および有機樹脂に置換された無機ナノ粒子を含む有/無機複合体、および無機物を含み、
前記有機樹脂は、水溶性エポキシ樹脂であり、
前記水溶性エポキシ樹脂は、エポキシ基が3個以上である多官能性であり、重量平均分子量が1000~50000であり、軟化点(Tg)が70~120℃であり、固体分率が10~50重量%含まれ、
前記無機ナノ粒子は、SiO
2
、TiO
2
、ZnO、Al
2
O
3
、MgO、CaO、およびZrO
2
のうちの1種以上を含み、
前記無機物は、リン酸(H
3
PO
4
)または水酸化ナトリウム(NaOH)であることを特徴とする電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項2】
前記維持加圧力は500N/mm
2以下であり、冷却速度は0.05~1℃/分であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項3】
前記熱融着された電磁鋼板を0.05~20℃/分の冷却速度で冷却させる段階で、
冷却終了温度は10~100℃であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項4】
前記有機樹脂は、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびエチレン系樹脂の中から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項
1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項5】
前記無機ナノ粒子は、前記有/無機複合体内に、有機樹脂100重量部に対して1~60重量部置換されたことを特徴とする請求項
1乃至請求項
4のいずれか一項に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項6】
前記無機物は、有/無機複合体の固形分100重量部に対して1~70重量部を含むことを特徴とする請求項
1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項7】
前記接着コーティング層を形成する段階は、
200~600℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項1乃至請求項
6のいずれか一項に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項8】
前記接着コーティング層を形成する段階で、
前記接着コーティング層内の有機物に対する無機物の比率が0.05~0.6であることを特徴とする請求項1乃至請求項
7のいずれか一項に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【請求項9】
前記熱融着層を形成する段階は、
加圧力が1~1000N/mm
2であり、加圧時間が5~180分であり、加圧温度が120~300℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項
8のいずれか一項に記載の電磁鋼板製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板製品の製造方法に係り、より詳しくは、電磁鋼板表面に塗布されている接着溶液によって複数の電磁鋼板を互いに接着する電磁鋼板製品の製造方法に関する。また、接着溶液の熱融着および製品製造方法の冷却条件によって電磁鋼板間の接着力が向上した電磁鋼板製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、圧延板上の全方向に磁気的性質が均一な鋼板である。これはモータ、発電機の鉄心、電動機、小型変圧機などに広く使用されている。無方向性電磁鋼板は、打抜加工後に磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA、Stress Relief Annealing)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍(SRA)による磁気的特性効果よりも熱処理による経費損失が大きい場合にSRAを省略するもの、の2つの形態に分けられる。この2つの形態は、駆動モーター、家電、大型モータの需要先で区分して使用されている。
一方、絶縁被膜の形成は、製品の仕上げ製造工程に該当する過程である。絶縁被膜に要求される物性は多様である。通常は渦電流の発生を抑制させる電気的特性が要求される。これ以外に、鋼板を所定の形状に打抜加工後、多数を積層して鉄心で作る時に、金型の摩耗を抑制する連続打抜加工性が要求される。
また、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍(SRA)過程後に鉄心鋼板間に密着しない耐密着性および表面密着性などが要求される。このような基本的な特性以外に、製造会社的な側面ではコーティング溶液の優れた塗布作業性と配合後に長時間使用が可能な溶液安定性なども要求される。
前記で説明したように、無方向性絶縁被膜は、積層される鉄板間の層間絶縁を主な目的としている。しかし、小型電動機器の使用が拡大することに伴い、絶縁性だけでなく、加工性、溶接性、耐食性に有利な被膜性能が主な物性として評価されるようになった。加えて、最近では、表面の特性によってモータコアの加工およびモータの効率に影響を与える接着コーティング溶液のような機能性を有するものが脚光を浴びている。
【0003】
現在まで無方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、大きく有機系、無機系、有-無機系複合被膜組成物の3種類があり、無機コーティング溶液(リン酸塩、クロム酸塩)を先に塗布した後、有機コーティング溶液をコーティングする方法も研究されている。無機系コーティング溶液は、リン酸塩などのような無機物を主成分とし、耐熱性、溶接性、積層性などに優れた被膜を形成することができるため、EIコア用として使用されている。しかし、無機系コーティング溶液を利用した絶縁被膜は硬度が高いため、打抜時に金型の損傷が有機物含有コーティングの場合よりも早い。したがって、無機系コーティング溶液は、打抜加工性には有利でない絶縁被膜溶液である。有機系コーティング溶液は、有機物が主要成分として構成されているため、打抜性の面で非常に優れている。また、膜の厚さを厚くしても密着性が良好であるため、層間絶縁性が高く要求される大型鉄心に多く使用される。しかし、有機被膜は、溶接時に樹脂分解ガスが発生して溶接性の面で良好な特性を示すことができないだけでなく、応力除去焼鈍(SRA)後に表面で密着性が良くないという短所がある。このような理由のため、耐熱性、絶縁性などを重視したリン酸塩、クロム酸塩などの無機質系の打抜加工性の欠点を補完した有機質と無機質を同時に使用する有/無機複合コーティング溶液の開発が活発に進められている。
【0004】
前記で言及したように、環境にやさしい自動車駆動モータ用の最高級無方向性電磁鋼板は、現在、政府の低炭素政策に従って高級化の波に乗っており、高級化へ進むほど無方向性電磁鋼板表面は高機能性が要求されている。特にモータコアの締結工程によって発生し得る渦電流損(Eddy Current Loss)を最小化するために、表面コーティング層によって締結が可能な無方向性電磁鋼板製品が開発されている。
接着コーティングの一種類である耐火エナメル(Stoving Enamel、常温でのベーキングを必要とするエナメルまたはコーティング組成物)は、コーティング後にホットプレシング(Hot Pressing)によって個別の電磁鋼板を結合させた電気機器(変圧機、発電機およびモータ)に適用されるだけでなく、表面絶縁性を付与するために使用されている。しかし、耐火エナメルは相対的に低い再軟化(Resoftening)温度によって使用が制限されている。電気機器分野で、より応用範囲を広げるためには接着溶液に高い再軟化温度を付与しなければならない。そのためには、優れた耐熱特性を有する耐火エナメルの新規開発が切実に必要な課題である。また、より高い絶縁性、機械的応力に対する耐久性および結合強度のような表面特性の改善も必要な課題である。
【0005】
従来技術にはジシアンジアミド(Dicyandiamide:C2H4N4)および表面活性化を含有する安定した水性エポキシ樹脂分散液に関するものがある。前記分散液は、非常に多様な種類の素材をコーティングすることに適合している。しかし、水性エポキシ樹脂分散液は、電気モータおよび変圧機に使用するために必要な程度の高い水準の特性、例えば高い耐腐食性および高い再軟化(Resoftening)温度を必要とする鉄心コアに対しては一般的に有用ではない。
また他の従来技術には、レゾール(硬化剤なしでも架橋して所望する物性を有する熱硬化性プラスチック)型の特定のフェノール系樹脂を架橋剤として含有するだけでなく、ジシアンジイミドを含有する水性エポキシ樹脂系を電磁鋼板表面にコーティングしてモータコア積層物を製造する方法がある。架橋はエポキシとフェノール系樹脂の重縮合によって行われる。
また他の従来技術には、粒子、例えばシリカまたはアルミナコロイド粒子を含有する電磁鋼板コーティング用エナメル(Enamel)に関するものがある。前記組成物は、良好な耐スクラッチ性、耐ブロック性、耐薬品性、耐腐食性および高い表面絶縁性のような特性を有するコーティングを生成する。しかし、このようなコーティングは、ボンディング(Bonding)作用がなく、鉄心コアを形成するために追加的な結合手段(溶接、クランピング、インターロッキング、アルミニウムダイカスティングまたはリベッティング)を必要とする。
また他の従来技術には、ガラス(Glass)転移温度(Tg)60℃以上の熱可塑性アクリルエマルジョン(Emulsion)、エポキシエマルジョンなどを主成分とする組成物を塗布および乾燥後に得られた鋼板を積層し、打抜中に金型機器内で加熱加圧して接着積層鉄心を製造する方法がある。この方法は、コーティング工程において、電磁鋼板表面に接着剤を塗布する工程と熱融着工程を省略できるだけでなく、コイルで巻く場合に発生し得るブロッキング(Blocking)が発生しないという利点がある。しかし、前記方法で製造される電磁鋼板は、加熱加圧して得られた実際の積層鉄心においては接着が不完全な部分が存在し、ある場合には接着不良による層間剥離を起こすという虞がある。特に鉄心コアが大きい場合には、下記のような接着不良の問題がより深刻に発生する可能性がある。
また他の従来技術には、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、シリコン系などの樹脂を単独または2種以上で接着性樹脂を混合物として利用し、アミン系硬化剤、シリカなどの添加物を添加してガラス転移温度または軟化温度が60℃以上である場合で、良好な接着強度とコイル状態で巻き取る場合に、板の間にスティッキング(Sticking)現象が発生しないという方法がある。しかし、前記技術は、自動車駆動モーターが要求する高温接着性と高温耐油性が劣位にあるという短所を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、電磁鋼板製品の製造方法を提供することにある。より詳しくは、電磁鋼板表面に塗布されている接着溶液の熱融着によって複数の電磁鋼板を互いに接着する電磁鋼板製品の製造方法を提供することにある。また、接着溶液の熱融着および製品製造方法の冷却条件によって電磁鋼板間の接着力が向上した電磁鋼板製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁鋼板製品の製造方法は、接着コーティング組成物を準備する段階、接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面に塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階、接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して熱融着層を形成する段階、および熱融着された電磁鋼板を0.05~20℃/分の冷却速度で冷却させる段階を含むことを特徴とする。
【0008】
冷却させる段階で、維持加圧力は1000N/mm2以下にできる。
冷却させる段階で、維持加圧力は500N/mm2以下であり、冷却速度は0.05~1℃/分にできる。
冷却させる段階で、冷却終了温度は10~100℃にできる。
前記接着コーティング組成物は、有機樹脂および有機樹脂に置換された無機ナノ粒子を含む有/無機複合体、および無機物を含むことができる。
【0009】
有機樹脂は、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびエチレン系樹脂の中から選択される1種以上を含むことができる。
より詳しくは、有機樹脂は、水溶性エポキシ樹脂であり、さらに詳しくは、前記水溶性エポキシ樹脂は、エポキシ基が3個以上である多官能性であり、重量平均分子量が1000~50000であり、軟化点(Tg)が70~120℃であり、固体分率が10~50重量%含まれることができる。
無機ナノ粒子は、SiO2、TiO2、ZnO、Al2O3、MgO、CaO、およびZrO2のうちの1種以上を含むことができる。
無機ナノ粒子は、有/無機複合体内に、有機樹脂100重量部に対して1~60重量部置換されることができる。
無機物は、リン酸(H3PO4)または水酸化ナトリウム(NaOH)であることができる。
無機物は、有/無機複合体の固形分100重量部に対して1~70重量部を含むことができる。
接着コーティング層を形成する段階は、200~600℃の温度範囲で行うことができる。
接着コーティング層を形成する段階で、コーティング層内の有機物に対する無機物の比率が0.05~0.6であることができる。
熱融着層を形成する段階は、加圧力が1~2000N/mm2であり、加圧時間が1~180分であり、加圧温度が100~300℃であることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、本発明の電磁鋼板製品の製造方法は、環境にやさしい自動車(HEV、EV)駆動モータの効率を極大化するために既存の締結方法(溶接、クランピング、インターロッキングなど)ではなく、電磁鋼板表面に塗布されている接着溶液の熱融着によって締結が可能である。既存の締結方法を省略することによって自動車用駆動モーターの効率を顕著に向上させることができるだけでなく、既存のモータが有している振動と騒音の問題を大幅に低減させることができる。
本発明によると、本発明の電磁鋼板製品の製造方法は、熱融着後の冷却条件によって、接着溶液組成物の常温接着力、高温接着力および高温耐油性に優れている。
本発明によると、本発明電磁鋼板製品の製造方法によって製造された製品は、接着力が非常に優れており、個別コアの界面の間(脆弱境界面)にオイルが侵入したり、接着コーティング層がオイルによって溶けないものである。
本発明によると、本発明の電磁鋼板製品の製造方法によって製造された製品は、優れた表面特性および加工特性(耐食性、密着性、耐候性、締結力、溶接性、耐熱性、耐スクラッチ性など)を有するだけでなく、打抜後の熱融着工程によって優れた高温接着性と高温耐油性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例による電磁鋼板製品製造方法のフローチャート(Flow Chart)である。
【
図2】表1でEpoxy(分子量約30000)-SiO
2(25nm、20重量部)複合体に無機物として水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれている組成物で製造した電磁鋼板コーティング層の断面をFIB(Focus Ion Beam)で加工した後にTEMで取った写真であって、接着コーティング層内のナノ粒子(SiO
2、TiO
2、ZnOのうちの1種)の分布を示す写真である。
【
図3】表1でEpoxy(分子量約30000)-SiO
2(25nm、20重量部)複合体に無機物として水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれている組成物で製造した電磁鋼板コーティング層の断面をFIB(Focus Ion Beam)で加工した後にTEMで取った写真であって、接着コーティング層内に溶解されている無機物(NaOH、H
3PO
4のうちの1種)の分布を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で、第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下に記載する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及されることができる。
本明細書で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外せず、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
本明細書で、使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
本明細書で、マーカッシュ形式の表現に含まれている「これらの組み合わせ」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
本明細書で、ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは他の部分の「直上に」にあるか、またはその間にまた他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「直上に」あると言及する場合、その間にまた他の部分が介されない。
異なって定義しなかったが、ここで使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0013】
本発明の一実施形態では、電磁鋼板製品の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態による電磁鋼板製品の製造方法は、接着コーティング組成物を準備する段階、接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面に塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階、接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して熱融着層を形成する段階、および熱融着された電磁鋼板を0.05~20℃/分の冷却速度で冷却させる段階を含む。本発明の一実施形態で電磁鋼板は、無方向性または方向性電磁鋼板であり、より詳しくは、無方向性電磁鋼板である。
接着コーティング組成物は、有機樹脂および有機樹脂に置換された無機ナノ粒子を含む有/無機複合体、および無機物を含むものであることができる。
【0014】
まず、有機樹脂について説明する。
有機樹脂は、より詳しくは、熱硬化性接着樹脂であることができる。さらに詳しくは、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、およびエチレン系樹脂の中から選択される1種以上を含むことができる。さらに詳しくは、有機樹脂は、水溶性エポキシ樹脂であることができる。水溶性エポキシ樹脂は、Biphenyl A(BPA)とEpichlorohydrin(ECH)の比率を変化させて分子量を調節することができる。さらに詳しくは、水溶性エポキシ樹脂は、エポキシ基が3個以上である多官能性であることができる。これは耐熱接着性を向上させるためのものである。分子量が1000~50000g/molであり、軟化点(Tg)が70~120℃であり、固体分率が10~50重量%含まれるものであることができる。エポキシ分子量が過度に少ない場合には硬化性が劣り、強度のような塗膜物性が劣ることがあり、反対にエポキシ分子量が過度に大きい場合には、水分散樹脂内の相分離が起こることがあり、無機物ナノ粒子と相溶性が劣ることがある。より詳しくは、エポキシ樹脂の分子量は5000~40000g/molであり、さらに詳しくは分子量が5000~30000g/molでああることができる。そしてエポキシ樹脂は、ビスフェノールとエポキシドの組み合わせ形態で構成されているが、水分散状態で存在するために構造式の一部分を極性グループに置換するものであり得、水分散状態で析出、沈澱のような相分離がない安定した形態を有することができる。
【0015】
次に、無機ナノ粒子について説明する。無機ナノ粒子は、SiO2、TiO2、ZnO、Al2O3、MgO、CaO、およびZrO2のうちの1種以上を含むものであることができる。より詳しくは、無機ナノ粒子は、SiO2、TiO2またはZnOであることができる。前記で言及した熱可塑性樹脂に高温接着性と高温耐油性を確保するためにコロイダル状態のナノ粒子を置換させて有/無機複合体形態に改質させることができる。無機ナノ粒子がSiO2である場合には、粒子の平均粒径は3~50nmであることができる。また、SiO2の量は有機樹脂100重量部に対して1~40重量部であり得、より詳しくは、3~40重量部であることができる。無機ナノ粒子がTiO2である場合、粒子の平均粒径は20~100nmであることができる。また、TiO2の量は有機樹脂100重量部に対して5~30重量部であることができる。無機ナノ粒子がZnOである場合、粒子の平均粒径は3~100nmであり、より詳しくは、10~60nmであることができる。また、ZnOの量は有機樹脂100重量部に対して3~60重量部であることができる。もしコロイダル状態の無機ナノ粒子の平均粒径が過度に小さい場合には、複合体に改質させるのに長時間がかかるだけでなく、置換された複合体の価格が高価で非経済的である。反面、無機ナノ粒子の平均粒径が過度に大きい場合には、接着樹脂と互換性が劣位になるだけでなく、塗布された試片の界面に大きい粒子サイズによって脆弱境界層(WBL:Weak Boundary Layer)が発生し、この脆弱境界層を通じてオイルや水分が流入されて接着性が劣位になる。また、もし無機ナノ粒子の量が過度に少ない場合には、コーティング層内に接着樹脂の比率に比べてナノ粒子の比率が過度に低いため、耐熱性が劣位になり、結論的に高温接着性と耐油性が劣位になる。反面、無機ナノ粒子の量が過度に多い場合には、複合体の耐熱性は良くなるが、コーティング層内に有機樹脂の比率が低いため、むしろ高温接着性と耐油性が劣位になる傾向を示す。
【0016】
次に、無機物について説明する。無機物は、リン酸(H3PO4)または水酸化ナトリウム(NaOH)であることができる。前記で言及した有/無機複合体の高温接着性および高温耐油性を極大化するために、溶解性が良い無機物を有/無機複合体に溶解させることができる。溶解させた量は有/無機複合体の固形分100重量部に対して1~70重量部であることができる。特に、無機物がリン酸である場合には1~70重量部であり得、より詳しくは1~50重量部であることができる。また無機物が水酸化ナトリウムである場合には1~15重量部であり得、より詳しくは1~10重量部であることができる。もし無機物を過度に少なく溶解させた場合には、複合体内の無機物の比率が低いため、高温接着力および高温耐油性の向上を図ることができる。一方、無機物を過度に多く溶解させた場合には、無機物が複合体内で過溶解による析出現象が発生し、耐熱性は向上するが、相対的に接着樹脂の低い比率で高温接着力と耐油性が劣位になる傾向を示す。
【0017】
次に、接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面に塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階について説明する。前記のように無機ナノ粒子が置換され、無機物が溶解された有/無機複合体接着溶液を200~600℃温度範囲で5~40秒間加熱処理して、片面当たり0.5~10.0μmの厚さに塗布することができる。このような場合には、優れた表面特性(例えば絶縁性、耐食性および密着性)を有することができる。この時、無機ナノ粒子および無機物がコーティング層内に均一に分布されるように行われることができる。
【0018】
次に、接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して熱融着層を形成する段階について説明する。コーティングされた試片を加工および積層して加圧力は1~1000N/mm2、時間は5~180分および温度は120~300℃で熱融着させることができる。
【0019】
次に、熱融着された電磁鋼板を0.05~20℃/分の冷却速度で冷却させる段階を説明する。この時、維持加圧力は1000N/mm2以下であり得、より具体的に維持加圧力は500N/mm2以下であることができる。また、冷却速度は0.05~1℃/分であることができる。一方、冷却終了温度は10~100℃であり、より詳しくは、に常温であることができる。このようなボンディングコア冷却方法は、接着組成物の締結力をより向上させるために行う。このような熱融着後に常温まで冷却させて製造したサンプルの常温接着力(引張、剥離)、高温(例えば150℃)での接着力および高温(例えば170℃)での耐油性を評価した時、接着力に非常に優れており、ATF(Automatic Transimission Fluid)オイルが個別コア(Core)の間の界面に侵入したり、接着コーティング層がオイルによって溶けない電磁鋼板製品を得ることができるという長所がある。
【0020】
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例】
【0021】
表1は、3種類の有/無機複合体(Epoxy-SiO2系、Epoxy-TiO2系、Epoxy-ZnO系)の高温接着性および高温耐油性を極大化するために、一定量の水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)を有/無機複合体に溶解させた。溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)は、有/無機複合体の固形分100重量部に対してそれぞれ1~10重量部、1~70重量部である。使用されたエポキシ接着樹脂の分子量は約3万であり、エポキシ接着樹脂に置換されたSiO2、TiO2およびZnOの平均粒径は、それぞれ25nm、20nmおよび10nmであり、粒子はエポキシ樹脂100重量部に対してそれぞれ20重量部、15重量部および30重量部である。コーティングの後に無方向性電磁鋼板の基本表面特性(絶縁性、耐食性、密着性など)は非常に優れており、また加工性(スリッティング(Slitting)性および打抜性)にも優れていた。表1から分かるように、溶液安定性は、水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)の溶解量が多いほど劣位になる傾向を示している。常温接着力は、置換された無機粒子の種類およびサイズに関係なく全般的に優れていたが、水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)の溶解量が増加するほど劣位になる傾向を示している。これはコーティング層内に接着樹脂の量がナノ粒子および無機物に比べて相対的に小さいためである。高温接着力と高温耐油性は、類似する特性を示しており、Epoxy-SiO2系複合体接着溶液の場合、溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)の量が1~15重量%である時、2つの特性の両方が優れていた。またEpoxy-TiO2系複合体とEpoxy-ZnO系複合体接着溶液の場合も同様に、溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)の量が適正水準である時、2つの特性の両方が優れていた。これは溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)だけでなく、置換させたナノ粒子のサイズおよび量とも関連があることが分かる。一般的に全体の置換および溶解させた無機物(ナノ粒子、無機物)の量が過度に小さいと接着溶液内に含まれている接着樹脂の比率が相対的に低いため、耐熱性が劣位になり、高温接着力と高温耐油性が劣位になる。一方、無機物(ナノ粒子、無機物)の量が過度に多ければ無機物によって耐熱性は良くなるが、接着溶液内に含まれている接着樹脂の比率が相対的に低いため、高温接着力と高温耐油性が劣位になる。したがって、本発明では有/無機複合体型接着溶液で無機/有機の比率が0.05~0.6である時、高温での接着特性に優れていた。
下記表1は、溶解させた水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H3PO4)量による溶液および接着特性を示す。
【0022】
【0023】
表1での記号は、物性判定を意味し、非常に優秀:◎、優秀:○、普通:△、劣位:Xの記号に該当する。
表1の実験に加えて、接着組成物の締結力をより向上させるために熱融着後に特定の冷却条件を有する冷却を行った。
【0024】
図1は、本発明の一実施例による電磁鋼板製品の製造方法をフローチャート(Flow Chart)で示したものである。電磁鋼板の接着力、特に常温での剥離接着力(T-Peel off)を向上させるための熱融着および冷却条件(維持加圧力、冷却速度)のフローチャートを示す。
【0025】
表2は、有/無機複合体(Epoxy-SiO2系+H3PO4)を製造して無方向性電磁鋼板ストリップ(Strip)にコーティングおよび熱融着後、冷却条件(維持加圧力、冷却速度)による接着力を測定したものである。前記に使用されたエポキシ接着樹脂の分子量は約3万であり、エポキシ接着樹脂に置換されたSiO2の平均粒径は15nmであり、粒子はエポキシ樹脂100重量部に対して20重量部である。高温接着力を向上させるために有/無機複合体の固形分100重量部に対して5重量部のリン酸(H3PO4)を溶解してボンディング溶液を製造した。前記のようなナノ粒子と無機物が置換および溶解された有/無機複合体接着溶液を400℃で20秒間硬化して片面当たり5.0μmの厚さに塗布した後、コーティングされたサンプル(Sample)を一定の大きさに切断および積層して加圧力は500N/mm2、加圧時間は60分および加圧温度は200℃で熱融着し、維持加圧力を0、500N/mm2、1000N/mm2、1500N/mm2で維持した後、冷却速度(Cooling rate)を0.5℃/分~10℃/分および30℃/分で常温まで冷却させた後、接着力を測定した。表2から分かるように、冷却条件(維持加圧力、冷却速度)により接着力(剪断法、剥離法)は大きい差を示しており、維持加圧力が低いほど、冷却速度は遅いほど剪断法および剥離法によって測定された接着力が向上することが分かる。特に維持加圧力は500N/mm2以下であり、冷却速度が1℃/分以下で剪断法および剥離法によって測定された接着力が優れている。
下記表2は、冷却条件別の接着特性を示す。
【0026】
【0027】
表2での記号は、物性判定を意味し、非常に優秀:◎、優秀:○、普通:△、劣位:Xの記号に該当する。
【0028】
図2は、表1でEpoxy(分子量約30000)-SiO
2(25nm、20重量部)複合体に無機物として水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれている組成物で製造した電磁鋼板コーティング層の断面をFIB(Focus Ion Beam)で加工した後にTEMで取った写真であって、接着コーティング層内のナノ粒子(SiO
2、TiO
2、ZnOのうちの1種)の分布を示す写真である。この時、白い斑点はナノ粒子を意味する。
図2から分かるように、コーティング層内にナノ粒子(SiO
2、TiO
2、ZnOのうちの1種)が均一に分布しており、コーティング層内にナノ粒子がコーティング層内で結合(Cohesion)または凝集(Aggregation)現象なしにコーティング層全体にかけて一定に分布していることが分かる。
【0029】
また
図3は、表1でEpoxy(分子量約30000)-SiO
2(25nm、20重量部)複合体に無機物として水酸化ナトリウム(NaOH)が含まれている組成物で製造した電磁鋼板コーティング層の断面をFIB(Focus Ion Beam)で加工した後にTEMで取った写真であって、接着コーティング層内に溶解されている無機物(NaOH、H
3PO
4のうちの1種)の分布を示す写真である。この時、白い斑点は無機物を意味する。無機物内に含まれている成分(Na、P)も接着コーティング層内に均一に分布していることが分かる。前記で言及したナノ粒子と無機物の接着コーティング層内に均一な分布は接着樹脂の耐熱性(Heat Resistance)を顕著に向上させ、これによって接着溶液の高温接着力を環境にやさしい自動車(HEV、EV)駆動モータで要求する水準以上に向上させることができた。
【0030】
本発明で溶液安定性は、ナノ粒子が置換された有/無機複合体または無機物が溶解された有/無機複合体接着溶液を攪拌機(Agitator)によって30分間強く攪拌させた後、混合された溶液を30分間維持する。その後、被膜組成物内に沈澱やゲル(Gel)現象の有/無で判断した。
【0031】
常温および高温接着力は、片面当たり一定の厚さに塗布した試片を積層し、一定の条件下で熱融着をした後、常温および高温(150℃)で引張接着力を測定した。常温での測定した値が、接着力が6.0MPa以上である時は非常に優秀、3.0MPa以上である時は優秀、1.0MPa以上である時は普通、0.5MPa以下である時は劣位で表現した。反面、高温での接着力は、3.0MPa以上である時は非常に優秀、1.0MPa以上である時は優秀、0.5MPa以上である時は普通、0.5MPa以下である時は劣位で表現した。
【0032】
高温耐油性は、熱融着された試片を高温(170℃)のATF(AutomaticTransmission Fluid)オイルに3時間以上維持させた後、徐々に冷却させて常温での表面状態および引張接着力を測定した。表面状態を観察した時、オイルが個別コアの間の界面に侵入したり、接着コーティング層がATFオイル(Oil)によって溶けてはならない。本発明での耐油性の判断基準として、高温ATF Testを経た試片の接着力が3.0MPa以上である時は非常に優秀、1.0MPa以上である時は優秀、0.5MPa以上である時は普通、0.5MPa以下である時は劣位で表現した。
【0033】
剥離接着力は、コーティングされた試片を一定の大きさ(200mmx30mm)に切断し、準備した二枚の試片の長さ方向に150mmを接着した後、接着されなかった50mm部分を両側でT字に180°広げた後、上/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引きながら積層されたサンプルの引張力を測定した。この時、剥離時に測定される一定の力で最初と最終10%を除いた地点の平均値で測定した。常温剥離接着力値は、50N以上である時は非常に優秀、30N以上である時は優秀、10N以上である時は普通、10N以下である時は劣位で表現した。
【0034】
本発明は、前記実施形態に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施形態は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。