(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】フェノールおよびキシレンを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 37/48 20060101AFI20230726BHJP
C07C 6/12 20060101ALI20230726BHJP
C07C 39/04 20060101ALI20230726BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20230726BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230726BHJP
【FI】
C07C37/48
C07C6/12
C07C39/04
C07C15/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021540302
(86)(22)【出願日】2019-02-04
(86)【国際出願番号】 US2019016536
(87)【国際公開番号】W WO2020162877
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502212040
【氏名又は名称】チャイナ・ペトロリアム・アンド・ケミカル・コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,シュウグワーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ルボ
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第7025443(JP,B2)
【文献】特表2014-500859(JP,A)
【文献】特表2017-521413(JP,A)
【文献】国際公開第2016/012103(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225287(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールおよびキシレンのうちの1つまたは複数を生成するためのプロセスであって、
フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンに導入するステップ;
フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンにおいて
分離して、フェノールを含むフェノールストリームと、アルキルフェノールを含むアルキルフェノールストリームと
を得るステップ;
アルキルフェノールストリーム、およびベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む反応物質ストリームを、トランスアルキル化反応ゾーンにおいてトランスアルキル化反応条件下でトランスアルキル化して、フェノール類およびアルキルベンゼンを含むトランスアルキル化流出物ストリームを生成するステップ;
トランスアルキル化流出物ストリームをフェノール分離ゾーンにおいて、フェノール類を含むフェノール再循環ストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質アルキルベンゼンを含む芳香族ストリームとに分離するステップ;
芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくとも、ベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む再循環ストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームとに分離するステップ;
混合キシレンストリームをキシレン分離ゾーンにおいて、o-キシレンおよびm-キシレンを含む第2のキシレンストリームと、p-キシレンを含むp-キシレンストリームとに分離するステップ;
第2のキシレンストリームを異性化反応ゾーンにおいて異性化反応条件下で異性化して、混合キシレンを含む異性化流出物ストリームを形成するステップ;および
フェノールストリームおよびp-キシレンストリームのうちの1つまたは複数を回収するステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくともベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む再循環ストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームとに分離するステップが、芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくとも、ベンゼンを含むベンゼンストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームと、トルエンを含むトルエンストリームとに分離するステップを含み、
トルエンストリームを不均化反応ゾーンにおいて不均化反応条件下で不均化して、キシレンを含む不均化流出物ストリームを形成し、不均化流出物ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ;または
トルエンストリームをトランスアルキル化反応ゾーンに再循環するステップ
のうちの1つまたは複数を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
重質アルキルベンゼンストリームを脱アルキル化反応ゾーンにおいて脱アルキル化反応条件下で脱アルキル化して、ベンゼン、トルエン、キシレン、重質芳香族化合物、水素および軽質炭化水素を含む脱アルキル化流出物ストリームを形成するステップを更に含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
脱アルキル化流出物ストリームを脱アルキル化分離ゾーンにおいて、水素および軽質炭化水素を含む軽質ガスストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質アルキルベンゼンを含む第2の芳香族ストリームとに分離するステップ;および
第2の芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ
を更に含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
軽質ガスストリームをガス分離ゾーンにおいて、水素を含む水素ストリームと、C
2~C
4炭化水素を含む軽質炭化水素ガスストリームとに分離するステップ;および
水素ストリームを脱アルキル化反応ゾーンに再循環するステップ
を更に含む、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
新鮮な水素ストリームを脱アルキル化反応ゾーンに導入するステップ
を更に含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
再循環ストリームをトランスアルキル化反応ゾーンに再循環するステップ;または
異性化流出物ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ
のうちの1つまたは複数を更に含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
反応物質ストリームが、新鮮なベンゼン、再循環されたベンゼン、新鮮なトルエン、または再循環されたトルエンのうちの1つまたは複数を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
フェノール類含有供給原料ストリームを分離するステップが、フェノール類含有供給原料ストリームの第1の留分を抽出して、フェノールおよびアルキルフェノールを含む抽出済フェノールストリームと、炭化水素ストリームとにするステップを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
フェノール類含有供給原料ストリームを、第1の留分とナフトールを含む第2の留分とに分留するステップ;および
第2の留分からナフトールを回収するステップを更に含む、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
抽出されたフェノールストリームを
分留して、アルキルフェノールストリームとフェノールストリームと
を得るステップを更に含む、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
フェノールストリームを精製するステップを更に含む、請求項1から11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
フェノール類含有供給原料ストリームがコールタールを含む、請求項1から12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
フェノールおよびキシレンのうちの1つまたは複数を生成するためのプロセスであって、
フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンに導入するステップ;
フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンにおいて、少なくとも、フェノールを含むフェノールストリームと、アルキルフェノールを含むアルキルフェノールストリームとに分離するステップ;
アルキルフェノールストリーム、およびベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む反応物質ストリームをトランスアルキル化反応ゾーンにおいてトランスアルキル化反応条件下でトランスアルキル化して、フェノール類およびアルキルベンゼンを含むトランスアルキル化流出物ストリームを生成するステップ;
トランスアルキル化流出物ストリームをフェノール分離ゾーンにおいて、フェノールを含むフェノール再循環ストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質アルキルベンゼンを含む芳香族ストリームとに分離するステップ;
芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくともベンゼンを含む再循環ストリームと、トルエンを含むトルエンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームとに分離するステップ;
トルエンストリームを不均化反応ゾーンにおいて不均化反応条件下で不均化して、キシレンを含む不均化流出物ストリームを形成するステップ;
混合キシレンストリームをキシレン分離ゾーンにおいて、o-キシレンおよびm-キシレンを含む第2のキシレンストリームと、p-キシレンを含むp-キシレンストリームとに分離するステップ;
第2のキシレンストリームを異性化反応ゾーンにおいて異性化反応条件下で異性化して、混合キシレンを含む異性化流出物ストリームを形成するステップ;
重質アルキルベンゼンストリームを脱アルキル化反応ゾーンにおいて脱アルキル化反応条件下で脱アルキル化して、ベンゼン、トルエン、キシレン、重質芳香族化合物、水素および軽質炭化水素を含む脱アルキル化流出物ストリームを形成するステップ;および
フェノールストリームおよびp-キシレンストリームのうちの1つまたは複数を回収するステップ
を含む、プロセス。
【請求項15】
再循環ストリームをトランスアルキル化反応ゾーンに再循環するステップ;
不均化流出物ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ;または
異性化済キシレンストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ
のうちの1つまたは複数を更に含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
脱アルキル化流出物ストリームを脱アルキル化分離ゾーンにおいて、水素および軽質炭化水素を含む軽質ガスストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質芳香族化合物を含む第2の芳香族ストリームとに分離するステップ;および
第2の芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ
を更に含む、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
軽質ガスストリームをガス分離ゾーンにおいて、水素を含む水素ストリームと、C
2~C
4炭化水素ストリームを含む軽質炭化水素ガスストリームとに分離するステップ;および
水素ストリームを脱アルキル化反応ゾーンに再循環するステップ
を更に含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
フェノール類含有供給原料ストリームを分離するステップが、フェノール類含有供給原料ストリームの第1の留分を抽出して、フェノールおよびアルキルフェノールを含む抽出済フェノールストリームと、炭化水素ストリームとにするステップを含む、請求項14から17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
フェノール類含有供給原料ストリームを、第1の留分と、ナフトールを含む第2の留分とに分留するステップ;および
第2の留分からナフトールを回収するステップ
を更に含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
抽出済フェノールストリームを、少なくとも、アルキルフェノールストリームとフェノールストリームとに分留するステップ
を更に含む、請求項18または19に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノールおよびキシレンを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの考えられる供給原料は、費用効果の高い方法で回収することが難しい可能性のある著しい量のフェノール類を含む。例えば、中低温のコールタールは通常、フェノール系化合物が豊富である。場合によっては、含有量がコールタールストリームの約40wt%に近い可能性がある。これらのフェノール類は、様々な方法、例えば水酸化ナトリウム水溶液での洗浄とそれに続く硫酸または二酸化炭素での中和、溶媒抽出、加圧結晶化などを用いてコールタールから抽出できる。しかし、得られる粗フェノール類の組成は非常に複雑である。例えば、1種の重質コールタールの沸点が170~240℃の範囲の留分から抽出されるフェノール類混合物は、60種類のフェノール類を含有し、そのほとんどは濃度が全コールタールの1wt%未満であり、それは、Wangらにより、「Extraction and GC/MS analysis of phenolic compounds in low temperature coal tar from Northern Shaanxi」、J.of China Coal Society、36(4)(2011)、664~669に報告されている通りである。これらのフェノール類の中には、非常に類似した沸点を有するものもある。このため、それらの分離および精製は、非常に困難である。加えて、ある特定のフェノール類、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、および場合によってはメチルナフトールのみが大量で広く使用されており、したがって経済的関心を集めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、費用効果の高い方法でコールタールおよび他のフェノール類含有供給原料を処理して、フェノールおよびキシレンを得る方法が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】図は、本発明によるプロセスの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
著しい量のフェノール類を含有する材料を処理して、フェノール類を回収する、および/またはキシレンを生成することができれば、望ましい。フェノール含有供給原料ストリームとは、製薬、化学、または石油処理からの任意の炭化水素系または水性ストリームを意味し、0.1~100wt%、または0.1~80%、または0.1~60%、または0.1~40%、または1~40%、または5~40%、または5~30%の範囲のフェノール類を含有する。適切なフェノール含有供給原料ストリームとしては、石炭、木材、植物油、および他のバイオマス材料のガス化および液化から生じるコールタール、軽油、バイオオイルのような生成物ストリームが挙げられるが、これに限定されない。
【0006】
粗フェノール類混合物中のアルキルフェノール、例えば先に言及したものは、フェノールおよび/またはナフトールに変換して、分離および使用を容易にすることができる。有益な生成物、例えばキシレンも生成される。
【0007】
直接的な脱アルキル化を採用してアルキルフェノールを変換することもできるが、プロセスに関連する多数の問題が存在する可能性がある。触媒を用いずに直接的な脱アルキル化を行う場合、プロセス温度は、700~900℃の範囲である。これは、高プロセス温度での熱分解によるフェノール類の脱アルキル化につながる可能性がある。それは、高プロセス温度のために、極めてエネルギー集約的である。加えて、ヒドロキシル基が失われるために、通常は選択的ではない。触媒脱アルキル化は、遙かに穏やかな条件で行うことができる。300~400℃の温度で、ZSM-5ゼオライト上でエチルフェノールおよびプロピルフェノールを脱アルキル化してフェノールおよびエチレン/プロピレンを生成することができる。しかし、深刻な触媒失活を防止するために、通常水を同時供給する必要がある。加えて、クレゾールの脱アルキル化は比較的困難であり、フェノールの選択性が懸念となる可能性がある。
【0008】
一実施形態において、本プロセスは、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルをベンゼンまたはトルエンに移動させて、フェノール、およびアルキルベンゼン、例えばトルエン、キシレン、ならびに重質アルキルベンゼン、例えばエチルベンゼン、プロピルベンゼンおよびブチルベンゼンを形成するために、トランスアルキル化反応において粗アルキルフェノールをベンゼンまたはトルエンと反応させるステップを伴う。「重質アルキルベンゼン」とは、エチルベンゼン、およびキシレンよりも分子量が大きい他のアルキルベンゼンを意味する。アルキルフェノールが二重環を有している場合、ナフトールがトランスアルキル化後の生成物となる。芳香族化合物、例えばトルエンを用いたアルキルフェノールのトランスアルキル化は、非常に穏やかな条件(50~700℃、または200~540℃)で遂行することができる。
【0009】
トランスアルキル化反応の生成物ストリーム中のベンゼン、トルエン、およびキシレンが分離される。いくつかの実施形態において、ベンゼンとトルエンは一緒に取り出され、トランスアルキル化反応ゾーンに再循環される。あるいは、ベンゼンとトルエンは別々に取り出され、ベンゼンはトランスアルキル化反応ゾーンに再循環され、トルエンは、キシレンを製造するために不均化反応ゾーンに送られる。
【0010】
キシレンは、分離と異性化によって更に処理されて、p-キシレンを製造することができる。
トランスアルキル化ストリーム中の残りの芳香族生成物(重質アルキルベンゼン)は、脱アルキル化反応ゾーンに送られる。2つ以上の炭素原子を含有するアルキル基、例えばエチル、プロピルを有するアルキルベンゼンは、脱アルキル化されてベンゼンおよびオレフィンを形成するか、脱アルキル化中に水素化が発生する場合には、パラフィンを形成する。
【0011】
全体として、主な生成物は、フェノールおよび/またはナフトール、ならびにキシレン、特に、パラキシレンであり、副生成物として軽質オレフィンまたはパラフィンが含まれる。
【0012】
フェノール類含有供給原料ストリームは、プロセスを容易にするために、トランスアルキル化反応ゾーンの前に分離することができる。例えば、コールタールを分留し、ある特定の沸点範囲の一部をフェノール抽出に使用できる。処理(反応および分離)を容易にするために、全コールタールからの粗フェノール類を事前に単環フェノールと多環フェノール(2環以上)とに分離し、ベンゼンまたはトルエンと別々に反応させてもよい。
【0013】
本発明の一態様は、フェノールおよびキシレンのうちの1つまたは複数を生成するためのプロセスである。一実施形態において、プロセスは、フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンに導入するステップ;フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンにおいて、少なくとも、フェノールを含むフェノールストリームと、アルキルフェノールを含むアルキルフェノールストリームとに分離するステップ;アルキルフェノールストリーム、およびベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む反応物質ストリームを、トランスアルキル化反応ゾーンにおいてトランスアルキル化反応条件下でトランスアルキル化して、フェノール類およびアルキルベンゼンを含むトランスアルキル化流出物ストリームを生成するステップ;トランスアルキル化流出物ストリームをフェノール分離ゾーンにおいて、フェノール類を含むフェノール再循環ストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質アルキルベンゼンを含む芳香族ストリームとに分離するステップ;芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくとも、ベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む再循環ストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームとに分離するステップ;混合キシレンストリームをキシレン分離ゾーンにおいて、o-キシレンおよびm-キシレンを含む第2のキシレンストリームと、p-キシレンを含むp-キシレンストリームとに分離するステップ;第2のキシレンストリームを異性化反応ゾーンにおいて異性化反応条件下で異性化して、混合キシレンを含む異性化流出物ストリームを形成するステップ;およびフェノールストリームおよびp-キシレンストリームのうちの1つまたは複数を回収するステップを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくとも、ベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む再循環ストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームとに分離するステップは、芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくとも、ベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む再循環ストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームと、トルエンを含むトルエンストリームとに分離するステップを含み、トルエンストリームを不均化反応ゾーンにおいて不均化反応条件下で不均化して、キシレンを含む不均化流出物ストリームを形成し、不均化流出物ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ;またはトルエンストリームをトランスアルキル化反応ゾーンに再循環するステップのうちの1つまたは複数を更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、プロセスは、重質アルキルベンゼンストリームを脱アルキル化反応ゾーンにおいて脱アルキル化反応条件下で脱アルキル化して、ベンゼン、トルエン、キシレン、重質芳香族化合物、水素および軽質炭化水素を含む脱アルキル化流出物ストリームを形成するステップを更に含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、プロセスは、脱アルキル化流出物ストリームを脱アルキル化分離ゾーンにおいて、水素および軽質炭化水素を含む軽質ガスストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質アルキルベンゼンを含む第2の芳香族ストリームとに分離するステップ;および第2の芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップを更に含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、プロセスは、軽質ガスストリームをガス分離ゾーンにおいて、水素を含む水素ストリームと、C2~C4炭化水素を含む軽質炭化水素ガスストリームとに分離するステップ;および水素ストリームを脱アルキル化反応ゾーンに再循環するステップを更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、プロセスは、新鮮な水素ストリームを脱アルキル化反応ゾーンに導入するステップを更に含む。
いくつかの実施形態において、プロセスは、再循環ストリームをトランスアルキル化反応ゾーンに再循環するステップ;または異性化流出物ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップのうちの1つまたは複数を更に含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、反応物質ストリームは、新鮮なベンゼン、再循環されたベンゼン、新鮮なトルエン、または再循環されたトルエンのうちの1つまたは複数を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、フェノール類含有供給原料ストリームを分離するステップは、フェノール類含有供給原料ストリームの第1の留分を抽出して、フェノールおよびアルキルフェノールを含む抽出済フェノールストリームと、炭化水素ストリームとにするステップを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、プロセスは、フェノール類含有供給原料ストリームを、第1の留分と、ナフトールを含む第2の留分とに分留するステップ;および第2の留分からナフトールを回収するステップを更に含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、プロセスは、抽出済フェノールストリームを、少なくとも、アルキルフェノールストリームと、フェノールストリームとに分留するステップを更に含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、プロセスは、フェノールストリームを精製するステップを更に含む。
いくつかの実施形態において、フェノール類含有供給原料ストリームはコールタールを含む。
【0024】
本発明の別の態様は、フェノールおよびキシレンのうちの1つまたは複数を生成するためのプロセスである。一実施形態において、プロセスは、フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンに導入するステップ;フェノール類含有供給原料ストリームを供給原料分離ゾーンにおいて、少なくとも、フェノールを含むフェノールストリームと、アルキルフェノールを含むアルキルフェノールストリームとに分離するステップ;アルキルフェノールストリーム、およびベンゼンまたはトルエンのうちの1つまたは複数を含む反応物質ストリームを、トランスアルキル化反応ゾーンにおいてトランスアルキル化反応条件下でトランスアルキル化して、フェノール類およびアルキルベンゼンを含むトランスアルキル化流出物ストリームを生成するステップ;トランスアルキル化流出物ストリームをフェノール分離ゾーンにおいて、フェノールを含むフェノール再循環ストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質アルキルベンゼンを含む芳香族ストリームとに分離するステップ;芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンにおいて、少なくとも、ベンゼンを含む再循環ストリームと、トルエンを含むトルエンストリームと、混合キシレンを含む混合キシレンストリームと、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリームとに分離するステップ;トルエンストリームを不均化反応ゾーンにおいて不均化反応条件下で不均化して、キシレンを含む不均化流出物ストリームを形成するステップ;混合キシレンストリームをキシレン分離ゾーンにおいて、o-キシレンおよびm-キシレンを含む第2のキシレンストリームと、p-キシレンを含むp-キシレンストリームとに分離するステップ;第2のキシレンストリームを異性化反応ゾーンにおいて異性化反応条件下で異性化して、混合キシレンを含む異性化流出物ストリームを形成するステップ;重質アルキルベンゼンストリームを脱アルキル化反応ゾーンにおいて脱アルキル化反応条件下で脱アルキル化して、ベンゼン、トルエン、キシレン、重質芳香族化合物、水素および軽質炭化水素を含む脱アルキル化流出物ストリームを形成するステップ;およびフェノールストリームおよびp-キシレンストリームのうちの1つまたは複数を回収するステップを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、プロセスは、ベンゼンストリームをトランスアルキル化反応ゾーンに再循環するステップ;不均化流出物ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップ;または異性化済キシレンストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップのうちの1つまたは複数を更に含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、プロセスは、脱アルキル化流出物ストリームを脱アルキル化分離ゾーンにおいて、水素および軽質炭化水素を含む軽質ガスストリームと、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質芳香族化合物を含む第2の芳香族ストリームとに分離するステップ;および第2の芳香族ストリームを芳香族分離ゾーンに再循環するステップを更に含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、プロセスは、軽質ガスストリームをガス分離ゾーンにおいて、水素を含む水素ストリームと、C2~C4炭化水素ストリームを含む軽質炭化水素ガスストリームとに分離するステップ;および水素ストリームを脱アルキル化反応ゾーンに再循環するステップを更に含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、フェノール類含有供給原料ストリームを分離するステップは、フェノール類含有供給原料ストリームの第1の留分を抽出して、フェノールおよびアルキルフェノールを含む抽出済みフェノールストリームと、炭化水素ストリームとにするステップを含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、プロセスは、フェノール類含有供給原料ストリームを、第1の留分と、ナフトールを含む第2の留分とに分留するステップ;および第2の留分からナフトールを回収するステップを更に含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、プロセスは、抽出済フェノールストリームを、少なくとも、アルキルフェノールストリームと、フェノールストリームとに分留するステップを更に含む。
【0031】
図は、プロセス100の一実施形態を示す。便宜上、プロセス100は、コールタール供給原料ストリーム105を使用して論じられる。当業者は認識することであるが、他のフェノール含有供給原料も使用できる。フェノール類を含有するコールタール供給原料ストリーム105は、供給原料分離ゾーン110に送られる。図に示される実施形態において、供給原料分離ゾーン110は、第1の分留ゾーン115、抽出ゾーン120、および第2の分留ゾーン125を含む。コールタール供給原料ストリーム105は、第1の分留ゾーン115において分留される。沸点が245℃より低い第1の留分130は、抽出ゾーン120に供給される一方、沸点が245℃より高い第2の留分135は、更なる処理のために送り出されてもよい。
【0032】
第1の留分130は、抽出ゾーン120において分離され、炭化水素ストリーム140と、抽出済フェノールストリーム145とになる。抽出済フェノールストリーム145は、フェノールおよびアルキルフェノールを含む。抽出済フェノールストリーム145は、第2の分留ゾーン125に送られ、そこで分離されて、少なくとも、アルキルフェノールを含むアルキルフェノールストリーム150と、フェノールを含むフェノールストリーム155とになる。
【0033】
アルキルフェノールストリーム150は、反応物質ストリーム170と共にトランスアルキル化反応ゾーン160に供給される。反応物質ストリーム170は、ベンゼンおよび/またはトルエンを含むことができる。反応物質ストリーム170は、新鮮なベンゼンおよび/もしくはトルエンを含む新鮮ストリーム175、ならびに/または再循環されたベンゼンを含む再循環ストリーム180を含むことができる。アルキルフェノールおよびベンゼンは、トランスアルキル化されて、フェノールおよびアルキルベンゼンを含むトランスアルキル化流出物ストリーム185を生成する。
【0034】
トランスアルキル化に触媒が使用される場合、温度は、典型的には50~700℃、または200~540℃の範囲である。トランスアルキル化ゾーンは、典型的には約100kPa(a)~6MPa(a)、または150kPa(a)~3MPa(a)の範囲の圧力で操作される。毎時重量空間速度(WHSV)は一般に、0.1~20hr-1、または0.2~10hr-1の範囲である。
【0035】
触媒は、典型的には高活性レベルで比較的高い安定性を有するように選択される。適切なトランスアルキル化触媒としては、当技術分野で公知のように、ゼオライト、酸性粘土、シリカアルミナ、酸性樹脂、混合金属酸化物などが挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
ベンゼン/トルエン対フェノールの比(モル比)は、0.1:1~20:1、または0.5:1~10:1、または1:1~5:1である。
トランスアルキル化流出物ストリーム185は、フェノール類分離ゾーン190に送られ、そこで分離されて、フェノール類を含むフェノール類再循環ストリーム195と、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび重質アルキルベンゼンを含む芳香族化合物ストリーム200とになる。フェノール類再循環ストリーム195は、供給原料分離ゾーン110に再循環され、そこで、第2の分留ゾーン125に送り込むことができる。フェノール類再循環ストリーム195は、第2の分留ゾーン125に直接送ることも、抽出済フェノールストリーム145と合流させ、合流させたストリームを第2の分留ゾーン125に送ることもできる。
【0037】
芳香族化合物ストリーム200は、芳香族分離ゾーン205に送られ、そこで分離されて、ベンゼンを含む再循環ベンゼンストリーム180と、任意選択でトルエンを含むトルエンストリーム210と、p-キシレン、o-キシレンおよびm-キシレンを含む混合キシレンストリーム215と、重質アルキルベンゼンを含む重質アルキルベンゼンストリーム220とになる。
【0038】
再循環ストリーム180は、トランスアルキル化反応ゾーン160に戻すことができる。
トルエンストリーム210は、水素ストリーム227と共に不均化反応ゾーン225に送られ、そこで、トルエンは不均化されて、キシレンおよびベンゼンを含む不均化流出物230を形成する。不均化プロセスゾーンにおいて採用される条件としては、通常、200~600℃、または350~575℃の温度が挙げられる。所望の変換度を維持するために必要な温度は、処理中に触媒が徐々に活性を失うにつれて上昇する。したがって通常の実行終了温度は、実行開始温度を65℃以上上回る場合がある。不均化ゾーンは一般に、0.1:1~約3.0:1、または1:1、または0.2:1~0.5:1の水素対炭化水素比で操作される。水素対炭化水素の比は、供給原料の炭化水素と比較した遊離水素のモル比に基づいて計算される。0.5:1を超え、好ましくは1:1~5:1の範囲での水素対炭化水素の周期的増加は、軟質コークスの水素化による触媒再生を可能とする。不均化ゾーンは、大まかに約100kPa(a)~6MPa(a)、または2~3.5MPa(a)の範囲の適度な高圧で操作される。不均化反応は、広範囲の空間速度にわたって実行することができ、空間速度が高いほど、変換とひき替えにパラキシレンの比が高くなる。LHSVは一般に、約0.2~20hr-1の範囲である。
【0039】
不均化流出物230は、芳香族分離ゾーン205に戻される。当技術分野で公知のように、不均化流出物230から水素を分離し、再循環することができる(図示せず)。
いくつかの実施形態において、トルエンは、ベンゼンと共に分留される。この場合、再循環ストリーム180は、ベンゼンおよびトルエンを含み、トランスアルキル化ゾーン160に再び再循環される。
【0040】
混合キシレンストリーム215は、キシレン分離ゾーン235に送られ、そこで分離されて、p-キシレンを含むp-キシレンストリーム240と、o-キシレンおよびm-キシレンを含む第2の混合キシレンストリーム245とになる。
【0041】
第2の混合キシレンストリーム245および水素ストリーム252は、異性化反応ゾーン250に送られ、そこで、o-キシレンおよびm-キシレンが異性化されて、異性化ゾーン流出物255を形成する。異性化条件は、約100~600℃または150~500℃の温度、約10kPa(a)~5MPa(a)の圧力、約0.5~100hr-1、または1~50hr-1のWHSVを含む。
【0042】
異性化ゾーン流出物255は、芳香族分離ゾーン205に送られる。当技術分野で公知のように、異性化流出物255から水素を分離し、再循環することができる(図示せず)。
【0043】
重質アルキルベンゼンストリーム220および水素ストリーム262は、脱アルキル化反応ゾーン260に送られ、そこで、重質アルキルベンゼンは脱アルキル化されて、ベンゼン、未反応重質アルキルベンゼン、水素およびパラフィンを含む脱アルキル化反応ゾーン流出物265を形成する。
【0044】
脱アルキル化反応ゾーン流出物265は、脱アルキル化分離ゾーン270に送られ、そこで分離されて、水素および軽質炭化水素を含む軽質ガスストリーム275と、ベンゼンおよび未反応重質アルキルベンゼンを含む第2の芳香族化合物ストリーム280とになる。
【0045】
いくつかの実施形態において、脱アルキル化反応条件は、触媒の存在下での100~700℃の範囲の温度;触媒の非存在下での400~900℃の範囲の温度;1~5MPa(a)の範囲の圧力;または1~5h-1のLHSVのうちの少なくとも1つを含む。脱アルキル化反応は、真空下、例えば、典型的には50kPa(a)で、必要に応じ最大20kPa(a)で遂行することもできる。
【0046】
触媒失活を最低限に抑えるために、水素を脱アルキル化反応ゾーンに同時供給することができる。水素対炭化水素の比は、典型的には0.1:1~10:1、または1:1~4:1の範囲である。
【0047】
第2の芳香族化合物ストリーム280は、芳香族分離ゾーン205に再循環される。
軽質ガスストリーム275は、ガス分離ゾーン285に送られ、そこで分離されて、水素を含む水素ストリーム290と、C2~C4炭化水素を含む軽質炭化水素ストリームとになる。水素ストリーム290は、脱アルキル化反応ゾーン260に再循環することができる。任意選択で、新鮮な水素ストリーム300を水素ストリーム290に添加することができる。
【0048】
ここで使用する場合、「ゾーン」という用語は、1つまたは複数の設備機器および/または1つまたは複数のサブゾーンを含む領域を指すことができる。設備機器は、1つまたは複数の反応器または反応容器、ヒーター、交換機、パイプ、ポンプ、コンプレッサ、およびコントローラを含むことができる。加えて、設備機器、例えば反応器、乾燥機、または容器は、1つまたは複数のゾーンまたはサブゾーンを更に含むことができる。
【0049】
図示されるように、図中のプロセスフローラインは、交換可能に、例えば、ライン、パイプ、分岐、分配器、ストリーム、流出物、供給原料、生成物、一部、触媒、回収、再循環、吸引、排出、および腐蝕性物質と呼ぶことができる。
【0050】
本発明の前述の詳細な説明では、少なくとも1つの例示的な実施形態が提示されたが、膨大な数の変形例が存在することを理解すべきである。同じく理解すべきことであるが、例示的な実施形態または複数の例示的な実施形態は、単なる例であり、本発明の範囲、適用可能性、または構成をいかなる形でも限定することを意図するものではない。むしろ、前述の詳細な説明は、本発明の例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを当業者に提供するものである。理解されることであるが、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に記載されている要素の機能および配置に様々な変更を加えることができる。