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特許7320128チューブ状接着印刷版取付層、および、その製造方法
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  • 特許-チューブ状接着印刷版取付層、および、その製造方法 図1
  • 特許-チューブ状接着印刷版取付層、および、その製造方法 図2
  • 特許-チューブ状接着印刷版取付層、および、その製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】チューブ状接着印刷版取付層、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/12 20060101AFI20230726BHJP
   B29C 48/09 20190101ALI20230726BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20230726BHJP
   B29C 48/151 20190101ALI20230726BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20230726BHJP
   B41F 27/06 20060101ALI20230726BHJP
   B41F 5/24 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B41F27/12 A
B29C48/09
B29C48/10
B29C48/151
B29C48/21
B41F27/06
B41F5/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022512737
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2020073165
(87)【国際公開番号】W WO2021037621
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】19194643.3
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】テブート・ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ブッテリス・タンヤ
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-082059(JP,A)
【文献】特表2006-508828(JP,A)
【文献】特開2006-231758(JP,A)
【文献】特開2003-200554(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0037687(US,A1)
【文献】米国特許第05860360(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/24
B29C 48/09
B29C 48/10
B29C 48/151
B29C 48/21
B41F 27/12
B41F 27/06
B41N 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久粘着層と弾性支持体層を含むチューブ状の接着印刷版取付層であって、チューブがシームレスであり、前記永久粘着層がチューブの外面を形成しており、
前記接着印刷版取付層が印刷スリーブの外径より小さい内径を有することを特徴とする、前記チューブ状の接着印刷版取付層。
【請求項2】
前記永久粘着層が弾性であることを特徴とする、請求項1に記載の接着印刷版取付層。
【請求項3】
接着印刷版取付層が、非永久粘着性材料からなる内面を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の接着印刷版取付層。
【請求項4】
前記弾性支持体層が弾性であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層。
【請求項5】
前記永久粘着層が非弾性であり、永久粘着層のセグメントを壊すことなく接着印刷版取付層が拡張できるようなセグメントに分割されている、請求項1に記載の接着印刷版取付層。
【請求項6】
永久粘着層と弾性支持体層を合わせた接着印刷版取付層が、チューブ押出成形またはブローフィルム押出成形によって形成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層を製造する方法。
【請求項7】
印刷スリーブ上に取り付けられた請求項1~5のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層を含むアセンブリ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の接着印刷版取付層を印刷スリーブ上に被せることによって、請求項7に記載のアセンブリを形成する方法。
【請求項9】
接着印刷版取付層の外周が、接着印刷版取付層を印刷スリーブ上に被せる間に、または接着印刷版取付層を印刷スリーブ上に被せる前に、2~50%増加する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接着印刷版取付層が印刷スリーブの外径より2~50%小さい内径を有することを特徴とする、請求項1~5いずれか1項に記載の接着印刷版取付層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷工程における印刷工程中の印刷版(=印刷プレート)を印刷スリーブを介してシリンダーに接着固定するために使用される接着印刷版の取付層に関する。本発明はさらに印刷版の取付層と印刷スリーブ(印刷シリンダーとも呼ばれる)のアセンブリ、またはそれぞれ接着印刷版の取付層を備えている複数の印刷シリンダーのセット、およびフレキソ印刷プロセスにおける接着印刷版の取付層の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術
印刷版を印刷シリンダーに取り付ける方法は、いくつか知られている。歴史的には、印刷版を直接印刷シリンダーに取り付けていたが、新しい印刷版(または=刷版)を取り付けるたびに印刷工程を停止させる必要があった。そこで、これに代わって印刷用スリーブが開発された。印刷スリーブとは、プラスチックや金属でできたチューブ状の装置であり(図3参照)、印刷機の軸に取り付けて簡単に交換できるようにしたものである。印刷機に装着された刷版を載せた印刷スリーブは、別の刷版を載せた印刷スリーブに素早く交換することができ、それにより印刷機のアイドル(遊休)時間を短縮することができる。また、印刷機が稼働している間に、新しい印刷版を搭載した印刷スリーブを準備することができる。
【0003】
印刷版に印刷スリーブを取り付ける方法としては、両面粘着テープを使用する方法が最も広く用いられており、両面粘着テープを介して印刷版を取り付けた印刷スリーブを取り付けることになる。しかし、両面粘着テープの使用は、面倒で繊細な操作であり、かなりの時間を必要とする。また、両面粘着テープの使用は、印刷シリンダーおよび/または印刷版からテープを剥がすのに困難が生じるという問題がある。また、両面粘着テープの跡が残りやすく、これが印刷版の再利用の妨げとなり、その後の印刷作業で印刷性能を低下させるという問題がある。また、両面粘着テープを均一に、かつ印刷画像を損なうような表面の凹凸を生じさせることなく貼り付けることは、煩雑な手作業である。また、一般に必要とされるような複数枚の両面粘着テープの使用は、特に、取り外しや再配置が困難であるため、印刷版と印刷シリンダーとの位置合わせを困難にする。
【0004】
別の方法は、印刷版を印刷シリンダーに接着するために、接着性フォトポリマーを含む接着性印刷版取付層を使用することを含む。例えば、WO95/19267には、両面粘着テープを置き換えるために、接着印刷版取付層を使用することが記載されている。ここで、一般的な用語「接着」は、「永久接着性」または「永久粘着性」の意味で使用され、本発明ではこの用語によって同じ意味が包含される。同文献には、接着印刷版取付層が、継続的な使用や再使用(複数の印刷版の着脱)においても粘着性を維持できること、残留物を容易に除去でき、印刷版に残留するフォトポリマーがないことが記載されている。しかし、接着印刷版取付層の製造方法については、光重合性であること以外、詳細な教示はない。また、WO95/19267においては、取付手段は、対応する層状材料のシートを提供し、そのシートをロールに適用することによって製造される。
【0005】
このように取付手段を用意することは、依然として煩雑な作業であり、時間を要する。印刷スリーブを使用する場合、印刷スリーブの外周を形成する粘着面を準備するために、シート状の別の貼り付け手段の両面粘着テープを貼り付ける作業は、熟練した技術者でも15分以上かかることがある。また、得られる外周には、必然的に隙間または少なくとも継ぎ目(シーム)、すなわち、2枚の粘着材料のシートがそれぞれ直接接触していない領域または互いに出会っている領域が含まれる。このような継ぎ目は、印刷スリーブからの接着手段の不要な放出の起点となるという点で、しばしば弱い部分を形成する。このような継ぎ目はまた、表面に凹凸を生じさせ、印刷品質を損なう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO95/19267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題
本発明は、印刷工程中の印刷版を印刷シリンダーに確実に接着することができる新規な接着印刷版取付層とその製造方法を提供することを目的とする。本発明の接着剤印刷版取付層は、先行技術の接着剤印刷版取付層の1つまたは2つ以上の欠点を克服することを目的とし、特に、先行技術の接着印刷版取付層と比較して、以下の1つまたは2つ以上の側面における改善を達成することを特徴とするものである
-印刷スリーブへのより速いおよび/またはより容易な取り付け
-耐久性、寿命の向上
-印刷品質の向上、および
-準弾性特性を提供できること
【0008】
本発明の他のおよび更なる利点は、以下の説明を鑑みれば、より明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明者らは、本発明の基礎となる問題の1つ以上が、印刷スリーブの上に被せる(引き込む)ことができるチューブ形状の接着印刷版取付層(APFAL)を提供することによって解決されることを見出した。ここで、永久粘着層は、チューブ形状のAPFALの少なくとも外面を形成する。
【0010】
本発明は、以下の態様を提供する。
1.永久粘着層と弾性支持体層を含むチューブ状の接着印刷版取付層であって、チューブがシームレスであり、前記永久粘着層がチューブの外面を形成していることを特徴とする、前記チューブ状の接着印刷版取付層。
2.前記永久粘着層が弾性であることを特徴とする、請求項1に記載の接着印刷版取付層。
3.接着印刷版取付層が、非永久粘着性材料からなる内面を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の接着印刷版取付層。
4.接着印刷版取付層を形成する前記各層が弾性であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層。
5.前記永久粘着層が非弾性であり、永久粘着層のセグメントを壊すことなく接着印刷版取付層が拡張できるようなセグメントに分割されている、請求項1に記載の接着印刷版取付層。
6.前記層のうちの1層が、チューブ押出成形またはブローフィルム押出成形によって形成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層を製造する方法。
7.印刷スリーブ上に取り付けられた請求項1~5のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層を含むアセンブリ。
8.請求項1~6のいずれか一項に記載の接着印刷版取付層を印刷スリーブ上に被せることによって、請求項7に記載のアセンブリを形成する方法。
9.接着印刷版取付層の外周が、接着印刷版取付層を印刷スリーブ上に被せる間に増加するか、またはこれをその前に増加させる、好ましくは2~50%増加するまたは増加させる、請求項8に記載の方法。
【0011】
定義
本発明において、すべてのパラメータおよび製品特性は、特に断らない限り、標準条件(25℃、10Pa)で測定したものに関するものである。
すべての物理的パラメータは、当技術分野における標準的な方法および/または以下の詳細な説明によって測定することができる。標準的な方法と以下に述べる方法との間に矛盾がある場合には、本明細書が優先される。
【0012】
用語「含む」は、自由な態様で使用され、追加の成分または工程の存在を許容する。明示的な言及がない限り、それはしかし、より限定的な意味である「本質的に~からなる」及び「~からなる」をも含む。ここで、「本質的にからなる」とは、引用された成分以外の他の成分が、本発明の成功を犠牲にしない程度の量で存在してもよいことを意味する。
【0013】
範囲を「x~y」と表現する場合、または同義表現である「x-y」と表現する場合は、必ず範囲の端点(すなわち、値xおよび値y)が含まれる。したがって、範囲は、「x以上、y以下」という表現と同義である。
本明細書で使用される場合、不定冠詞「ある~」は、1つだけでなく複数も示し、その参照名詞を必ずしも単数に限定しない。
【0014】
用語「約」は、当該量または値が、指定された特定の値またはその近傍の他の値、一般に指示された値の±5%の範囲内である可能性があることを意味する。そのため、例えば、「約100」という表現は、100±5の範囲を示す。
【0015】
用語および/またはは、示された要素のすべてまたは1つだけが存在することを意味する。例えば、「aおよび/またはb」は、「aのみ」、「bのみ」、または「aおよびbの両方」であることを示す。「aのみ」の場合、この用語は、bが存在しない可能性、すなわち「aのみで、bは存在しない」ケースもカバーする。
【0016】
用語「半透明」は、材料が250~700nmの範囲の電磁波を透過させることができることを意味する。透光性材料の光線透過率は、ASTM D1003-07(手順A)に従って1mmの厚さを有する材料のサンプル上で測定された、250~700nmの範囲内に入る全ての波長において、典型的には50%以上、例えば70%以上又は80%以上である。なお、「半透明」な材料には、透明な材料も含まれる。
【0017】
用語「架橋可能」は、組成物または化合物が、電磁放射線、電子線または熱による照射などの適切な開始時に、好ましくは350nm以下の波長を有する電磁放射線(以下、UVともいう)の照射時にのみ、架橋反応を起こすことができることを表す。また、「架橋された」とは、架橋性組成物又は化合物が架橋反応を受けた後に得られる物質を表す。
【0018】
本発明において、高分子化合物の分子量に言及する場合は、特に断らない限り、一般に重量平均分子量であり、分子量はポリスチレン標準を用いたGPC法により測定されたものである。
【0019】
用語「層」とは、互いに直交する2つの方向(x,y)のそれぞれの伸び率が、方向xいずれyにも直交する第3の方向(z)の伸び率の10倍以上、例えば100倍以上、500倍以上、1000倍以上で上回る物理形状を有する材料を示す。方向「z」は、層の厚さとも称され得る。また、「層」という用語には、層の具体的な形態として、シートが含まれる。
【0020】
定義に用いられる用語「粘着」は、ASTM規格D-2979-95によって測定された少なくとも400グラムの表面粘着性を示す。「永久的に粘着性がある(永久粘着)」という用語は、粘着性が経時的に、例えばポリマー材料から作られた印刷版の10回の着脱の後にも保存されることを意味する。
【0021】
用語「(メタ)アクリルモノマー」は、アクリル酸およびメタクリル酸のエステル、例えばアルキル基が1~18個の炭素原子を有するアルキルエステル、ならびにメタクリル酸およびアクリル酸を示す。
【0022】
本発明の範囲において、印刷版取付層(APFAL)は、印刷スリーブに装着されたときに、印刷プロセス中に印刷版(=印刷プレート)、特にフレキソ印刷版の支持体を提供することができる構造物である。APFAL層は、印刷版を担持し、チューブ状のAPFALの最外面を形成する永久粘着層(PSL)を有する。PSLは、その固有の粘着性により、接着力によって印刷版を固定することができる。APFALはまた、基材を含んでいてもよく、この基材も典型的には層の形態である。使用中、基材は印刷スリーブの方に向けられ、印刷スリーブ上に直接、またはクッション層や輸送層などの中間層を介して設けられていてもよいが、典型的には中間層やクッション層はない。
【0023】
本発明において、「弾性(体)」という用語は、破断することなく力を加えることによって変形(膨張)し、典型的には変形(膨張)の程度に比例する反力を作用させることによって、少なくともある程度(例えば10%以上)の変形に達するまで変形する材料の能力を示す。本発明のチューブ状APFALの層は、力を加える前の内径に対して、破断せずに5%以上、例えば10%以上、15%以上内径を広げることができる場合、弾性であると定義することができる。弾性体は、多少の広がり(例えば3%以下)があっても、一般に力を加える前に元の直径程度に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るAPFALを示す図である。チューブ状のAPFALは空隙4を取り囲んでおり、本実施形態では、永久粘着層(PSL)1、中間弾性層2および内層3から構成されている。
図2図2は、弾性層の可能な構造の一例である。
図3図3は、本発明のAPFALを印刷スリーブ上に被せることで本発明のアセンブリを提供することができる印刷スリーブの一例を示す。ここでは、APFALが印刷スリーブに可逆的に取り付けられるように、印刷スリーブが空隙4に入り込んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明者らは、印刷スリーブに被せるだけで使用できるチューブ状のAPFALがあれば、スリーブとAPFALの組み立ての準備時間を大幅に短縮でき、より時間的、コスト的に有利な印刷工程が可能になるという知見に基づき、本発明を完成するに至った。また、APFALを印刷スリーブに装着する(取り付ける)際の煩雑な作業が大幅に軽減され、APFALを装着して印刷版を保持した後、脱着して再利用することも可能である。このことは、両面粘着テープやチューブ状でないAPFALに比べ、印刷スリーブからの取り外し時にAPFALが破壊または損傷することが多いので、大きな利点をもたらす。
【0026】
さらに、本発明のAPFALは、印刷スリーブに適用する前に(スリーブの上に被せることによって)品質をチェックすることができるので、品質管理が容易である。また、APFALをスリーブ上に被せるステップは、両面粘着テープや恒久的に取り付けられたAPFAL(すなわち、本発明のAPFALのように、印刷スリーブに対して可逆的に着脱できないAPFAL)を設ける場合と比較して、ミスが起こりにくい。ここで、装着作業の終盤でもミスが発生する可能性があり、その場合は、APFALを廃棄して、新たにスリーブへの装着を開始する必要がある。
【0027】
一実施形態において、本発明のAPFALは、シームレス(継ぎ目のない)チューブの形状を有する。ここで、「シームレス」とは、シートを円筒に巻き付け、シートの両端を連結してチューブ状体を構成した場合のように、チューブ状APFALの長手方向に連結部が存在しないことを表す。このようなシームレスチューブ状APFALは、当技術分野で公知の技術、特にチューブ押出成形またはブローフィルム押出成形によって構成することができる。このようにして、多層APFALも多層共押出しによって製造することができる。このような多層APFALは、2層、3層または4層から構成されてもよい(またはこれらから成る)。層が2つである場合、これらはPSLと基板層である。3層の場合、基板とPSLとの間にさらに追加の層(クッション層や弾性層など)があってもよいし、基板と反対側の面に設けられてもよい。後者の場合、基材層と反対側の層は、非粘着性材料の層(例えば、非粘着性材料からの硬くて滑らかなプラスチックフィルム)であってもよい。
【0028】
また、組成物が押出ヘッドを出た後に発泡をもたらすことによって(例えば、潜在的な発泡剤を含み、押出後にそれを活性化することによって)、発泡または架橋された材料層を製造することが可能である、例えば、PSLであることができる架橋材料層は、紫外線架橋開始剤などの適切な開始剤を含む前駆体組成物を押出し、押出機ヘッドの下流に紫外線ランプを設けるなどして、押出後すぐに架橋させることにより製造することができる。
【0029】
上記に概説したような押出しによって提供されるシームレスチューブ状体への追加層は、押出し以外の技術によって提供されてもよい。例えば、追加の層(PSLであってもよい)は、チューブ形状の支持体、好ましくはシームレスチューブ上にPSL用の適切な永久粘着性材料を噴霧するか、さもなければ提供することによって提供されてもよい。ここで、例えば噴霧によって材料層を提供し、その後、発泡または架橋などの適切な後処理を行うことも可能である。もちろん、様々な層をこの方法で設けてもよい。例えば、チューブ状APFALの内面は、滑材によって形成されてもよく、この滑材は、別個の層の形態であってもよいし、適切な層を後処理することによって提供されてもよい。
【0030】
したがって、本発明のAPFALの可能な構成には、以下の例の構成が含まれる(チューブ状のAPFALの内部から外部に向かって見た場合)。
単一のPSL
支持体層-PSL
弾性層-PSL
内層-支持体層-PSL
内層-弾性層-PSL
内層-弾性層-支持体層-PSL
支持体層-弾性層-PSL
以下、それぞれの層について詳しく説明する。
【0031】
PSL(Permanently Sticky Layer:永久粘着層)
PSLはAPFALの唯一の必須層であり、印刷動作中において、印刷版を受け取り、印刷版を固定するのに適している必要がある。支持体層や弾性層など、他の層上に設けてもよい。PSLは、チューブ状のAPFALの外周面を形成する。PSLは、それ自体が弾性であってもよいし、非弾性であってもよい。
【0032】
PSLはシームレスチューブであってもよく、適切な押出し技術によって製造することができる。PSLは、当該分野で知られているような永久粘着性材料、例えば、ポリウレタン、アクリレート、シリコーンおよび永久粘着性を示すことができる他のポリマーから選択されるポリマーに基づく材料を含むことにより、その永久粘着性を示す。本発明は、これらの化合物のいずれにも限定されず、これらのうちの1つ以上をPSLに使用することができる。
【0033】
PSLがAPFALの唯一の層である場合、印刷スリーブへの装着を容易にするために、弾性層として設計することが好ましい場合がある。この場合、弾性ゴム成分を組成物に含有させることにより、弾性特性を得ることができる。
【0034】
印刷版の良好な接着性を得ると同時に、押出成形プロセスによる容易な製造を可能にするために、PSLは架橋材料であってもよい。この場合、例えば架橋性基を有するポリウレタンプレポリマーからなる非架橋の架橋性組成物を押出し、押出し後に例えば紫外線照射により架橋させることが可能である。
【0035】
あるいは、PSLは、第一に多孔質であってもよい基材層、例えば押出成形及び任意にその後の発泡により形成されたシームレス層であってもよい多孔質層又は発泡層を提供し、次に、例えばスプレー(噴霧)またはディッピングにより基材層の外周全体に又はその上にのみ架橋性組成物を提供することにより形成することができる。この後、例えばUVまたは熱による架橋を行うことができる。
【0036】
APFALがPSLのみによって形成される場合、特にAPFALが弾性であり、膨張して印刷スリーブに「スナップオン」できる場合には、後処理なしに印刷スリーブの上にAPFALを被せることが可能である場合がある。ここで、APFALをスリーブ上に「被せる」ことは、装着操作の間、印刷スリーブとAPFALとの間の摺動接触を必要とせず、弾性APFALは、次に印刷スリーブが拡張APFALの空隙に挿入される拡張状態で保持されることができる。
【0037】
しかし、APFALの材料がこのような操作を可能にする程度に膨張できない場合、APFALと印刷スリーブとの装着の際に印刷スリーブとの滑動接触が避けられないことがある。ここで、PSL(更なる層が存在する場合にはAPFAL)の内表面は、永久的に粘着性を有さない表面を提供することによって、例えば金属箔またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような滑性物質を提供することによって処理されてもよい。
【0038】
PSLは、好ましくは、マイクロスフィアを含まない。
【0039】
支持体層
PSLの組成と構造によっては、例えば、APFALの強度を高めるために、追加の支持体層を設けることが有益な場合がある。このような支持体層は、例えば共押出しによってPSLと同時に形成してもよいし、別々に形成した後に適切な接着剤を用いてAPFALに結合させてもよい。
【0040】
支持体層は、弾性であっても非弾性であってもよい。支持体層は、例えば、ゴムまたは他の弾性材料から形成されることができる。支持体層は、典型的には、永久的に粘着性がないように設計され、非弾性支持体層は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル又は同様の一般工学プラスチックから作られたプラスチックフィルムであってよい。弾性特性が望まれる場合、ポリウレタンまたはジエン系ポリマーまたはコポリマーなどのより柔軟な材料、例えばEPDMを使用してもよい。
【0041】
追加の支持体層を設けることにより、所望の特性のバランス、特に所望の強度、耐久性、外面での高い粘着性、チューブ状APFALの内面で印刷スリーブの上に被せられる能力を提供することが容易になる場合がある。
【0042】
弾性層
PSLと任意の基材層に加えて、弾性層が存在してもよい。この層は、主にAPFALに弾性特性を付与するためのものであり、非連続的な層であってもよい。ここで、「非連続的」とは、貫通孔を有する格子構造の層または他の構造であってもよいことを意味する。このような層は、図1及び図2に例示的に示すようなデザインを有していてもよく、例えば、ゴム又は適当な他の材料からなる弾性グリッド状又はネット状構造で形成されていてもよい。弾性層はまた、適切な金属または合金構造を使用することによって得られるようなバネのような特性に依存することもできる。もちろん、弾性層は、図1および図2に示されるものとは異なる構造を有することもできる。
【0043】
APFALが弾性であることが望ましく、弾性特性が対応する弾性層を含むことによって得られる場合、非弾性PSL(および任意で他の非弾性層)との組み合わせは、他の層が適さない構造として弾性特性を得ることを避けることができるであろう。このような場合、PSLと他の任意層がある場合は、弾性層の膨張時に離間する個別のセグメントに切断することが考慮され。
【0044】
AFPALが印刷スリーブに装着された状態では、非装着状態に対する膨張は一般に小さいので(例えば+2%以上、例えば+5%以上、しかし一般に30%以下、例えば15%以下)、PSLをこのように分割して提供しても、APFALの外周の主要部分がPSLによってカバーされないことにならず、従って印刷動作中にPSLとその印刷形態保持能力を著しく損なうことはない。
【0045】
内層
PSL(および、存在する場合には任意の支持体層および/または任意の弾性層)に加えて、APFALは、印刷スリーブの外面に接触するAPFALの最内面を形成する内層を含んでいてもよい。この最内層は、印刷スリーブ上でのAPFALの良好な固定を可能にするように設計されてもよいが、同時に、滑動接触で印刷スリーブ表面上にAPFALを引き込む(または被せる)限定的な能力を提供することも可能である。このため、内層の材料は特に限定されないが、EPDMなどの天然または合成ゴム材料であってよく、任意に潤滑油などの滑剤、またはステアリン酸マグネシウムやタルクなどの固体滑剤を含むことによって処理されてもよい。
【0046】
印刷スリーブとAPFALのアセンブリ、および印刷方法
APFALが弾性体を有する場合、一般的に印刷スリーブの外径より小さい(例えば2%以上、一般的には50%以下)内径を有する(図3参照)。次に、APFALは膨張すると同時に、例えば手動で、それ以上の補助なしにスリーブの上に被せることができるが、滑沢剤を使用することもできる。この場合、「被せる」とは、スリーブに滑動接触して被せること、またはAPFALを拡張し、拡張力を解放してスリーブ上に「スナップ」させることを意味することができる。
【0047】
スリーブ上に適用されるように拡張された形態のAPFALは、次に、その弾性特性により、印刷スリーブに押し込むことによって、印刷スリーブ上に必要な固定を提供する。これにより、APFALは印刷スリーブに可逆的に取り付けられ、印刷版を受ける役割を果たし、印刷動作中にこれを固定することができる。その後、印刷版を取り外し、新しい印刷版を取り付けて印刷に使用することができる。印刷残渣の付着などでAPFALの洗浄が必要な場合は、印刷スリーブから引き剥がし、適当な溶剤で洗浄することができる。
【0048】
上記から導かれるように、弾性APFALは、類似しているが異なるサイズ(弾性特性の程度に依存する)を有する様々な印刷スリーブに適合するように使用することができる。これは、従来のAPFALでは実現できなかった、本発明のさらなる利点である。
【0049】
APFALが非弾性体である場合、一般に、その内径が使用する印刷スリーブの外径と密接に一致するように製造する必要がある。この場合、印刷スリーブへの固定は、APFALの弾性特性によるバック力(back-force)ではなく、主にAPFALの内面が印刷スリーブの外面にグリップすることによって行われる。この場合、APFALの内面に適切な特性を与えること、例えば、ゴム状の材料(例えば、α-オレフィン/ジエン共重合体または類似のゴム)を提供することが好ましい場合がある。印刷スリーブへのAPFALの装着を容易にするために、次に、滑剤のいずれかを使用すること、または好ましくは、APFALが滑動するエアクッションを提供すること、例えば、外部圧力を加えることによって圧縮空気などのガスが強制され得る開口部を有する印刷スリーブを使用することが考慮できる。圧力をかけている間は、APFALを印刷スリーブから引き寄せたり引き離したりすることができ、ガスの流れを止めると確実な装着が可能になる。もちろん、この概念は、伸縮性のあるAPFALにも適用できるが、その場合は必要ない場合もある。
また、本発明は、以下の項目を含む。
[項目1]
永久粘着層と弾性支持体層を含むチューブ状の接着印刷版取付層であって、チューブがシームレスであり、前記永久粘着層がチューブの外面を形成していることを特徴とする、前記チューブ状の接着印刷版取付層。
[項目2]
前記永久粘着層が弾性であることを特徴とする、項目1に記載の接着印刷版取付層。
[項目3]
接着印刷版取付層が、非永久粘着性材料からなる内面を有することを特徴とする、項目1または2に記載の接着印刷版取付層。
[項目4]
接着印刷版取付層を形成する前記各層が弾性であることを特徴とする項目1~3のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層。
[項目5]
前記永久粘着層が非弾性であり、永久粘着層のセグメントを壊すことなく接着印刷版取付層が拡張できるようなセグメントに分割されている、項目1に記載の接着印刷版取付層。
[項目6]
前記層のうちの1層が、チューブ押出成形またはブローフィルム押出成形によって形成される、項目1~5のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層を製造する方法。
[項目7]
印刷スリーブ上に取り付けられた項目1~5のいずれか1項に記載の接着印刷版取付層を含むアセンブリ。
[項目8]
項目1~6のいずれか一項に記載の接着印刷版取付層を印刷スリーブ上に被せることによって、項目7に記載のアセンブリを形成する方法。
[項目9]
接着印刷版取付層の外周が、接着印刷版取付層を印刷スリーブ上に被せる間に増加するか、またはこれをその前に増加させる、好ましくは2~50%増加するまたは増加させる、項目8に記載の方法。
図1
図2
図3