(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-25
(45)【発行日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ネイルシール用記録媒体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20230726BHJP
A45D 29/00 20060101ALI20230726BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20230726BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230726BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230726BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230726BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230726BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B41M5/52 400
A45D29/00
B32B7/06
B32B7/12
B32B27/00 L
B32B27/36
B32B27/40
B41M5/50 410
B41M5/50 420
(21)【出願番号】P 2022529336
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2019017538
(87)【国際公開番号】W WO2021100962
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0148756
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0148755
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0148754
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0148753
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0149613
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516286280
【氏名又は名称】ディーエス グローバル
【氏名又は名称原語表記】DS GLOBAL
【住所又は居所原語表記】Main Building 2F(Gasan-dong),107,Gasan digital 2-ro,Geumcheon-gu,Seoul 153-803,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、グ ボム
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ドン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ソン ボク
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0015029(KR,A)
【文献】登録実用新案第3197611(JP,U)
【文献】特開2017-176426(JP,A)
【文献】特開2017-097018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/52
B41M 5/50
A45D 29/00
B32B 27/00
B32B 27/40
B32B 7/06
B32B 7/12
B32B 27/20
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離紙と、
前記剥離紙上に形成される粘着層と、
前記粘着層上に付着されるポリウレタン材質の基材と、
前記基材上に形成されるインク収容層と、
前記剥離紙の裏面に形成されるポリウレタンまたはアクリル材質のバックコーティング層 と、を含む
ことを特徴とするネイルシール用記録媒体。
【請求項2】
前記インク収容層は、厚さが15μm以上である
請求項1に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項3】
前記基材は、厚さが50μm以上である
請求項1に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項4】
前記基材とインク収容層との間には、インク収容層のコーティング時、耐溶剤性の強化のために、アンダーコーティング層が形成される
請求項1に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項5】
前記アンダーコーティング層は、ポリエステル、アクリル系高分子、ポリウレタンのうちいずれか一つで形成される
請求項4に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項6】
前記バックコーティング層 は、顔料がさらに含まれる
請求項1に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項7】
前記バックコーティング層 の厚さは、2~3μmである
請求項1に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項8】
前記基材は、透明なポリウレタン材質で形成され、前記粘着層と基材との間に形成される白色層がさらに形成される
請求項1に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項9】
前記白色層の厚さは、5μm以下である
請求項8に記載のネイルシール用記録媒体。
【請求項10】
ポリウレタン材質で、厚さが50μm以上である基材を形成するステップと、
前記基材の下面に粘着層を形成するステップと、
前記基材の上面に、厚さが15μm以上であるインク収容層を形成するステップと、
前記粘着層の下部に剥離紙を付着するステップと、
前記剥離紙の裏面に、ポリウレタンまたはアクリル材質で厚さが2~3μmであるバックコーティング層を形成するステップと、を含む
ことを特徴とするネイルシール用記録媒体の製造方法。
【請求項11】
前記インク収容層の厚さ/前記基材の厚さは、0.15よりも大きい
請求項10に記載のネイルシール用記録媒体の製造方法。
【請求項12】
前記基材とインク収容層との間には、インク収容層のコーティング時、耐溶剤性の強化のために、アンダーコーティング層をさらに形成する
請求項10に記載のネイルシール用記録媒体の製造方法。
【請求項13】
前記アンダーコーティング層は、ポリエステル、アクリル系高分子、ポリウレタンのうちいずれか一つで形成される
請求項12に記載のネイルシール用記録媒体の製造方法。
【請求項14】
前記バックコーティング層 は、顔料がさらに含まれる
請求項10に記載のネイルシール用記録媒体の製造方法。
【請求項15】
前記基材は、透明なポリウレタンで形成し、
前記粘着層と基材との間には、厚さが5μm以下である白色層をさらに形成する
請求項10に記載のネイルシール用記録媒体の製造方法。
【請求項16】
前記剥離紙は、ポリエステル材質である
請求項10に記載のネイルシール用記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルシール用記録媒体、及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、ポリウレタン材質の基材上にインク収容層が形成されており、昇華型プリンタを用いて、ネイルシールを印刷することができる記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネイルアートは、手足の爪を美しく表現することをいい、単純にマニキュアを塗ることから、芸術的な表情を爪に活かしたことを意味する総合的な概念であって、長い爪に絵を描くか、ビーズ、宝石等を貼り付けることが代表的である。
【0003】
最近は、韓国内における美容及びネイルアート産業は、速い成長傾向を見せ、約4兆ウォン台と推定されるビューティー市場において、ネイルアート産業の規模は、約1兆ウォンの規模と推定されており、当分の間、その規模が持続的に広がる傾向を示すと予想される。
【0004】
また、ネイルアートに用いられる装飾素材のうち、簡便に利用可能な「ネイルシール」があるが、このようなネイルシールは、一方の面にデザインが印刷され、もう一方の面に粘着剤が塗布される形態からなり、爪の上にシールの貼り方で貼り付けて美容効果を出す製品である。
【0005】
図1は、一般のネイルシールを例示した図であって、これを参照すると、ネイルシールは、基材層11と、このような基材層11の底面に塗布されて形成される粘着剤層12と、このような粘着剤層12の底面に脱離可能に付着される剥離紙13と、エポキシとグリッターが混合されたグリッターミックスを、前記基材層11の上面にシルクスクリーン印刷して形成される装飾層14と、を含んで構成される。前記基材層は、屈曲のある爪等に貼り付けなければならないので、伸縮性と柔軟性のある材質が用いられる。
【0006】
一方、画像を形成する印刷中、染料が塗布された熱転写リボン(ribbon)に熱を加えて、熱転写リボン上の染料が記録媒体に転写されて定着されるようにする方式の熱転写プリンタがある。
【0007】
前記熱転写プリンタは、染料の熱転写方式により、染料が昇華して転写される昇華型熱転写方式と、感熱記録ヘッド(thermal recording head)により、染料または顔料層が溶融して転写される溶融型熱転写方式とに分けられる。
【0008】
このような熱転写型プリンタは、インクジェットプリンティング方式とともに、フォトプリンタの重要な手段であって、身分証の製造やカメラから電気的に表現される画像をプリンタを通じて印刷する分野まで、その使用領域が普遍化している。
【0009】
このような熱転写型プリンタ、特に、昇華型プリンタは、サイズが小さく、個人用または携帯用に適する。
【0010】
したがって、昇華型プリンタを用いて、使用者が個人の趣向に合わせて、家庭でネイルシールを製作することも不可能ではない。但し、昇華型プリンタを用いてネイルシールを製作するためには、専用記録媒体の開発が必要である。
【0011】
昇華型プリンタは、記録媒体として、主に印画紙やシール用紙が用いられる。印画紙は、基材上に、昇華型染料との相溶性が良いインク収容層を含んでおり、シール用紙の場合は、基材の反対面に粘着層をさらに含む。このとき、用いられる基材は、ボイドPETやPP合成紙が使われるが、これは、基材に応じて、印刷適性に大きな影響を及ぼすので、その使用材質に制限がある。
【0012】
また、昇華型プリンタの印刷方式は、順序通りに、Y(yellow)→M(magenta)→C(cyan)→O(Overlay)が記録媒体に転写またはコートされるが、この過程中、記録媒体は、プリンタにおいて前後4回以上往復移送され、記録媒体の剛性(stiffness)が足りな過ぎると、初期または往復時、給紙エラーが発生してしまう。印画紙やシール用紙の場合、基本的に剛性のあるPETまたはPPのようなプラスチックフィルムを用いるので、印刷時、給紙の問題が発生しない。
【0013】
しかしながら、基材が、ボイドPETやPP合成紙である場合は、伸縮性と柔軟性がなく、屈曲のある爪等に貼り付けなければならないジェルネイルシール用記録媒体としては適用し難いという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、ポリウレタン材質の基材上にインク収容層が形成されており、昇華型プリンタを用いて、ネイルシールを印刷することができる記録媒体、及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、昇華型プリンタにおいて、記録媒体を移送するとき、ポリウレタン等の伸縮性がある材質の基材上に形成されたインク収容層が変形されず、平坦に移送することができる記録媒体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によるネイルシール用記録媒体は、剥離紙と、前記剥離紙上に形成される粘着層と、前記粘着層上に付着されるポリウレタン材質の基材と、前記基材上に形成されるアンダーコーティング層と、前記アンダーコーティング層上に形成されるインク収容層と、を含む。
【0017】
また、前記基材は、透明なポリウレタン材質で形成される場合は、前記粘着層と基材との間に形成される白色層がさらに形成されることが好ましい。
【0018】
本発明によるネイルシール用記録媒体の製造方法は、ポリウレタン材質で、厚さが50μm以上である基材を形成するステップと、前記基材の下面に粘着層を形成するステップと、前記基材の上面に、インク収容層のコーティング時、耐溶剤性の強化のためのアンダーコーティング層を形成するステップと、前記アンダーコーティング層の上面に、厚さが15μm以上であるインク収容層を形成するステップと、前記粘着層の下部に剥離紙を付着するステップと、前記剥離紙の裏面にバックコーティング層を形成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ポリウレタン材質の基材上にインク収容層が形成されており、昇華型プリンタを用いて、ネイルシールを印刷することができる記録媒体が提供される。
【0020】
また、剥離紙の両側に、基材及びインク収容層が付着されていない移送部が形成されており、昇華型プリンタにおいて記録媒体を移送するとき、伸縮性のあるインク収容層が変形されず、平坦に移送することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】昇華型プリンタにおいて、本発明による実施例の移送状態を示す図である。
【
図5】手の爪用シールと足の爪用シールが形成されたものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付された図面を参照して、本発明による実施例について具体的に説明する。
【0023】
図2は、
図3のA-A線断面図であり、
図3は、本発明による実施例の斜視図である。これを参照すると、本発明の実施例による記録媒体100は、剥離紙110と、粘着層120と、基材130と、インク収容層140と、を含む。
【0024】
前記剥離紙は、粘着層に脱離可能に付着されるものであって、ネイルシールの使用時、使用者は、剥離紙を粘着層から分離後、粘着層の粘着力を用いて、基材を手足の爪に貼り付けて使用するものである。
【0025】
前記剥離紙110は、主に、ポリエステル材質であり、75~125μmの厚さで形成する。
【0026】
前記剥離紙110の厚さが75μm未満である場合、印刷時、フィードローラが粘着層により汚染される問題があり、125μmを超過する場合、全体厚さが増加して、プリンタの給紙に無理が生じるだけでなく、原価が上昇するという問題がある。
【0027】
前記粘着層120は、基材の裏面に形成され、剥離紙110から分離した基材130を手足の爪に貼り付けるものである。
【0028】
前記基材130は、ネイルシールの母体に相当する構成要素であって、本実施例では、ポリウレタン材質で形成する。
【0029】
前記基材130が、ポリウレタン材質で形成されるので、伸縮性と柔軟性があり、屈曲のある手足の爪等に貼り付けることができるものである。
【0030】
特に、前記ポリウレタン材質の基材130は、厚さを50~200μmで形成する。
【0031】
前記基材130の厚さが50μm未満である場合、使用者が取り扱うとき、不便であり、垂れやすい等の問題があり、200μmを超過する場合、段差が大きくなり過ぎ、プリンタの給紙に無理が生じるだけでなく、原価が上昇するという問題がある。
【0032】
前記インク収容層140は、熱転写リボンから転写される染料との親和力が良好であり、転写の過程において、染料が拡散されやすく、転写後、染料に対する保存性が良い物質を使用することが好ましい。
【0033】
このような物質としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、その他、極性が大きい結合を有する樹脂等がある。
【0034】
インク収容層140は、このような樹脂とともに、転写時の離型性を向上させるために、ポリエチレンワックス、シリコンオイル等が加えられてもよく、これらの分散のために、界面活性剤も一緒に用いてもよい。
【0035】
記録媒体100の白色度を向上させるために、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレイ、酸化亜鉛等を、蛍光性を与えるために、蛍光染料を加えてもよい。また、耐候性を増加させるために、酸化防止剤や紫外線吸収剤を取り入れてもよい。
【0036】
前記インク収容層140は、樹脂と添加剤、必要に応じては、無機物を含んだコーティング液をコーティングした後、乾燥して形成されてもよい。
【0037】
インク収容層140の厚さは、15μm~30μmが適当であり、「インク収容層の厚さ/基材の厚さ」は、0.15よりも大きいことが好ましい。
【0038】
また、前記インク収容層の厚さ/前記基材の厚さは、0.15よりも大きい範囲内で、前記基材の厚さが増加するほど、前記インク収容層の厚さも増加されることが好ましい。
【0039】
ポリウレタン材質の基材130を用いる場合、前記インク収容層の厚さが15μm未満である場合は、昇華型印刷適性を満足させることができない。
【0040】
昇華型プリンタの基材として、ボイドPETやPP材質の合成紙が用いられることは、基材自体の剛性があるとともに、ある程度のクッション感もあるからである。昇華型プリンタの特性上、リボンと記録媒体が、印刷時、ある地点で出会って、ヘッドとプラテンローラとの間で互いに密着するように圧力を受けるが、このとき、記録媒体の基材が、クッション感がなく、過度に剛性であれば、リボンと記録媒体の密着性が落ち、染料の転写が不十分に進行され、これにより、光学密度(OD、Optical density)が落ちるような印刷性の低下が発生する。
【0041】
これに対して、基材がポリウレタンのように伸縮性と柔軟性が極めて良好であれば、かえって圧力を十分に受けることができず、染料の転写が不十分に発生し、往復給紙にも問題が生じる。
【0042】
これを解決するためには、リボンと接触すべきインク収容層の部分を既存の5μmよりも厚く処理して、ポリウレタン基材により低下する部分を補完しなければならない。多くの実験を進行した結果、15μm以上のインク収容層により、前記問題を解決することができることが分かり、これは、ポリウレタン基材の厚さにより影響を受けることも分かるようになった。上述したように、インク収容層に用いられるバインダーは、主に、剛性のある高分子であるため、厚さの調整だけでも補完された。
【0043】
インク収容層140のコーティング剤溶媒としては、溶解性及び作業性等を考慮して、アルコール、グリコールエーテル、ケトン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド、酢酸エチル等が一緒に用いられてもよい。本発明では、ケトン、トルエン、ジメチルホルムアルデヒド等が好ましい。
【0044】
前記基材130とインク収容層140との間には、アンダーコーティング層150がさらに形成される。これは、インク収容層140のコーティング時、耐溶剤性を強化するためのものである。
【0045】
従来技術では、基材をPETやPPで形成するが、このような基材は、インク収容層のトルエンやMEK(Methyl Ethyl Ketone)等の溶媒に対して、ある程度の耐溶剤性があり、インク収容層のコーティング時、ほとんど影響を受けない。
【0046】
しかしながら、本発明の基材であるポリウレタンの場合、種類に応じて、トルエンやMEKに容易に溶解されることもあり、インク収容層のコーティング時、インク収容層の溶媒により基材が溶けるか、スウェリング(swelling)が生じ、全体的にしわが寄る現象等が発生する。これを防止するためには、耐溶剤性のあるポリウレタンを用いるか、インク収容層の下にアンダーコーティング層を設け、この問題を解決することができる。耐溶剤性のあるポリウレタンの使用は、ポリウレタンの選択に制限が生じ、アンダーコーティング層の導入は、費用上昇が発生するように、互いに長短所を有する。
【0047】
前記アンダーコーティング層150は、高光沢の樹脂を含んだコーティング液でコートすることにより、前記基材130の材質にかかわらず、光沢に優れた記録媒体を製造することができる。アンダーコーティング層150に用いられるコーティング液は、サンスクリーン剤、酸化防止剤等を含有し、基材の光に対する脆弱性を改善することにより、記録媒体の耐光性を高めることができる。
【0048】
一般に、記録媒体の白色度を増加させるために、インク収容層140に増白剤や染料を加えてもよい。これらは、長期的な観点で、印刷部及び非印刷部の黄変現象を引き起こす要因になる。
【0049】
このような増白剤や染料をインク収容層ではなく、アンダーコーティング層150に加えることにより、外部環境への効果を減らすようになり、耐光性を改善することができる。
【0050】
アンダーコーティング層150に用いられる樹脂としては、ポリオール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニール樹脂等があり、大概、ポリイソシアネート系、アジリジン系等の硬化剤を一緒に使用する。これらは、ポリウレタンだけでなく、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタルレートフィルム等において同様に使用される、アンダーコーティング層は、全てのコーティング方法を適用してもよく、例えば、普通、バー(Bar)やグラビアコーティング法が一般に用いられる。
【0051】
前記アンダーコーティング層150の厚さは、3μm~5μmであることが好ましい。
【0052】
前記アンダーコーティング層150の厚さが3μm未満である場合、十分な耐溶剤性が得られないという問題があり、5μmを超過する場合、全体の厚さが増加して、原価が上昇するという問題がある。
<発明の実施形態>
【0053】
本発明による実施例は、前記基材130が透明なポリウレタン材質であってもよい。
【0054】
この場合は、粘着層120と基材130との間に白色層160を形成することが好ましい。
【0055】
もちろん、基材130が不透明な場合、例えば、基材130が白色ポリウレタンである場合は、白色層160が不要である。
【0056】
前記白色層160の厚さは、5μm以下であることが好ましい。
【0057】
また、前記剥離紙110の裏面には、バックコーティング層 170が形成される。前記バックコーティング層 170は、記録媒体間の印刷時、分離性、美観等のためのものであり、マット(matte)処理、帯電防止剤、離型性の付与等があり、会社ロゴ等の印刷も追加で行われてもよい。
【0058】
前記バックコーティング層 170は、ポリウレタンやアクリル材質で形成され、必要に応じて、シリカのような顔料を加えてもよい。厚さは、2μm~3μmであることが好ましい。
【0059】
前記バックコーティング層 170の厚さが2μm未満である場合、記録媒体間の分離が円滑でないという問題があり、3μmを超過する場合、全体の厚さが増加して、原価が上昇するという問題がある。
【0060】
以下では、本発明によるネイルシール用記録媒体の製造方法について説明する。
【0061】
本発明によるネイルシール用記録媒体の製造方法は、まず、ポリウレタン材質で、厚さが50μm以上である基材を形成する。
【0062】
次に、前記基材の下面に粘着層を形成する。
【0063】
次に、前記基材の上面に、インク収容層のコーティング時、耐溶剤性の強化のためのアンダーコーティング層を形成する。
【0064】
次に、前記アンダーコーティング層の上面に、厚さが15μm以上であるインク収容層を形成する。
【0065】
次に、前記粘着層の下部に剥離紙を付着し、前記剥離紙の裏面にバックコーティング層 を形成する。
【0066】
以下では、本発明による実施例を通じて詳しく説明する。しかしながら、本発明は、下記の実施例により限定されるものではない。
【0067】
実施例及び比較例
一面に50μmの透明なポリエチレンテレフタルレート(PET)保護フィルムがラミネートされたいろんな厚さのポリウレタン(商品名;DSALシリーズ、大韓民国、ツーアンドツーケミカル)基材のもう一面に、下記の表1の粘着層組成物をベーカーアプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが~40μmになるように塗布して、ネイルシール用記録媒体の粘着層を形成した後、前記50μmの保護フィルムを剥がし、帯電防止剤及びマット白コーティングが施された~105μmの離型PET剥離紙を粘着層の方面にラミネートした。このように製造された記録媒体のポリウレタン基材の一面上に、下記の表2において提示されたアンダーコーティング層組成物を、バーコーターを用いて、乾燥後に~4μmになるように塗布した後、その上に、さらに表3に提示されたインク収容層組成物を、バーコーターを用いて、乾燥後にいろんな厚さになるように塗布して、最終のネイルシール用記録媒体を完成した。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
下記の表4は、ポリウレタンの厚さ及びインク収容層の厚さによる実施例及び比較例である。
【0072】
【0073】
実験方法;ネイルシール用記録媒体の特性評価
前記実施例(1~3)及び比較例(1~4)で製造したネイルシール用記録媒体を、大韓民国のLG電子製品の熱転写フォトプリンタ(PC389P)を用いて画像を出力した。このとき、画像のしわと染み、給紙品質(往復)、光学密度(OD)を評価し、その結果を下記の表5にまとめた。
【0074】
下記の表5において、光学密度は、1cm×1cmのマゼンタ、ブラックの画像を印刷した後、米国のX-rite社製品のSpectroEye測定器で測定した。
【0075】
また、印刷された画像のしわと染みに対する評価は、画像を印刷するとき、画像にしわや染みがあるか否かを目視で確認し、そのサイズを互いに比較する方式で行った。その結果、しわや染みがない場合を「○」、そのサイズが0.3cm以下である場合を「△」、そのサイズ0.3cm以上である場合を「×」と示した。
【0076】
また、給紙品質に対する評価は、同様に画像を印刷するとき、Y(yellow)→M(magenta)→C(cyan)→O(Overlay)の順序で往復して印刷しながら、最初または中間で止まるか、最後のOの順序でフィルムがくっつく等の給紙エラーが発生するかを目視で確認し、その程度を比較して行った。その結果、給紙エラーがない場合を「○」、3枚に1枚の割で給紙エラーが発生するか、最後のOの順序で問題が発生するときを「△」、ほとんど常に給紙エラーが発生する酷い場合を「×」と示した。
【0077】
【0078】
前記表5の結果から、全ての場合において、「しわ/染み」及び「給紙品質」の問題は、比較例1と比較例4でのみ発生した。比較例1の場合、記録媒体の全体厚さが400μmを超えるが、これは、プリンタを機構的に少し修正しても、極めて厚くて給紙が十分に進行されなかった。これにより、3枚のうち1枚がY印刷は行われたことがあるが、そのとき、インク収容層/ポリウレタン基材が押し戻され、しわと染みが大きく発生することも認められた。費用的な側面もあるが、記録媒体が極めて厚いものは、機構的でも合わせ難いと認められる。比較例4の場合、「インク収容層の厚さ/基材の厚さ」の値が0.17であって、0.15よりも大きいが、インク収容層の厚さが10μmであって、15μmよりも小さい。
【0079】
上述したように、伸縮性と柔軟性が良いポリウレタンの導入は、給紙品質に大きな影響を及ぼすが、インク収容層がある程度厚ければ(15μm以上)ポリウレタンの短所を補完することが分かる。比較例4は、インク収容層が十分に厚くなく、給紙品質において問題が発生し、それにより、しわ/染みの問題も引き起こした。
【0080】
比較例3の場合は、ポリウレタンの厚さも50μm以上であり、インク収容層の厚さも15μm以上であるが、「インク収容層の厚さ/基材の厚さ」の値が0.125であって、0.15よりも小さい。
【0081】
インク収容層の厚さが15μm以上であるので、「しわ/染み」及び「給紙品質」の問題はないことが分かるが、光学密度まで満たすためには、ポリウレタン基材の厚さに応じて、ある程度は一緒に厚くならなければならない。
【0082】
マゼンタ、ブラックの光学密度が、インク収容層が10μmである比較例4よりも高いが、実施例と比べると、~10%ほど低いことが分かる。比較例2の場合は、印刷時、しわ/染み、給紙品質、光学密度にも問題がない。
【0083】
しかしながら、印刷後、実際に、手足の爪に貼り付けるために、印刷された記録媒体からシール部分を取り外すとき、ポリウレタン部分が極めて薄くて、剥離紙から取り外し難く、何よりも垂れやすい傾向があり、印刷画像に変形が生じ、爪に貼り付けるときにも不便さが発生する。これは、ポリウレタンの厚さが、ネイルアート用シールであることを考慮して、ある程度以上の厚さ(50μm以上)を持たなければならないことを示す。
【0084】
【0085】
図3及び
図4を参照すると、本発明による記録媒体100は、剥離紙110の両端に、基材130及びインク収容層140等が除去され、剥離紙110の表面が露出した移送部111が形成されていることが分かる。
【0086】
前記剥離紙110は、フィードローラ210の突起211が突き破って、正確なピッチで移送するための構成要素である。
【0087】
すなわち、前記基材130は、剥離紙110よりも面積が小さく形成される。したがって、剥離紙110の両側が露出し、移送部111が形成されるものである。
【0088】
上述したように、昇華型プリンタの印刷方式は、順序通りに、Y(yellow)→M(magenta)→ C(cyan)→O(Overlay)が、記録媒体に転写またはコートされるが、この過程中、記録媒体は、プリンタにおいて前後4回以上往復移送されなければならない。したがって、昇華型プリンタは、記録媒体を挟んで、上部には、加圧ローラー220、下部には、フィードローラ210が備えられる。
【0089】
前記フィードローラ210は、剥離紙110を突き破る複数の突起211が形成され、加圧ローラー220には、前記移送部111に密着する段差部222が形成される。
【0090】
前記突起211が突き破る部分では、ポリウレタン材質の基材130がないので、突起211が突き破る圧力により伸縮性のある材質の基材130が歪むことがない。特に、前記移送部111を段差部222が密着して加圧するので、段差部222の内側に位置された基材130には、影響を及ぼさず、基材130が平坦に維持され得る。
【0091】
前記段差部222の幅は、前記移送部111の幅と等しいか大きいことが好ましい。
【0092】
図5を参照すれば、本発明による実施例は、剥離紙110の上部に切り取り線が形成され、手の爪用シールS1と、足の爪用シールS2を容易に分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、記録媒体の基材を伸縮性のある材質で構成することにより、曲面で形成された手足の爪に密着して貼り付けることができる。
【0094】
特に、昇華型プリンタは、携帯が可能なサイズへの小型化が可能であるので、今後、本発明による記録媒体を用いて、個人の個性と趣向に合わせたネイルシールを独自に印刷して使用できる。