(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】円筒形電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20230727BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230727BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20230727BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/536 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/559 20210101ALI20230727BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M10/04 W
H01M10/0587
H01M50/107
H01M50/184 D
H01M50/548 201
H01M50/536
H01M50/559
(21)【出願番号】P 2020512260
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014647
(87)【国際公開番号】W WO2019194182
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018073840
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 夏彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭
(72)【発明者】
【氏名】出口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰右
(72)【発明者】
【氏名】上田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正信
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-148238(JP,A)
【文献】特開2001-093506(JP,A)
【文献】特開2005-209638(JP,A)
【文献】特開2000-228174(JP,A)
【文献】特開平10-340709(JP,A)
【文献】特開平10-021953(JP,A)
【文献】特開平11-329398(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 10/04
H01M 10/0587
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1極板と少なくとも1つの第2極板とがセパレータを介して巻回された巻回型の電極体と、
前記電極体を収容する有底筒状の外装缶と、
前記外装缶の開口部を塞ぐように前記開口部に第1絶縁部材を介して取り付けられた第1極端子と、を備え、
前記第1極板は、導電材料により形成された第1芯体と、前記第1芯体上に形成された第1活物質層とを有し、前記第1芯体の前記第1極端子側の一辺部が前記第1活物質層の前記第1極端子側の一辺より導出されることで第1導出部が形成され、
前記第1導出部は、前記電極体の内周側または外周側に曲げられた第1曲げ部を含み、
前記第1曲げ部の前記第1極端子側面に第1極集電板の第1面が接触しており、前記第1極集電板の第2面に直接、または導電部材を介して前記第1極端子が接続さ
れ、
前記外装缶は、前記開口部側部分に、内周側に張り出すように形成された張り出し部を含み、
前記第1極集電板の前記第2面の外周側にリング状の第2絶縁部材が配置され、
前記第1曲げ部と前記張り出し部とで、前記第2絶縁部材及び前記第1極集電板が挟まれており、前記第1極端子は、前記第2絶縁部材の貫通穴の内側を通じて、前記第1極集電板に接続されている、
円筒形電池。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒形電池において、
前記第1極端子は、前記外装缶の前記開口部側部分が外周側から内周側にかしめられることにより、前記開口部に前記第1絶縁部材を介して取り付けられている、
円筒形電池。
【請求項3】
請求項2に記載の円筒形電池において、
前記第1極端子と、前記第1極集電板の間に前記導電部材として板ばねが配置されている、
円筒形電池。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の円筒形電池において、
前記第2極板は、導電材料により形成された第2芯体と、前記第2芯体上に形成された第2活物質層とを有し、前記第2芯体の前記外装缶の底部側の一辺部が前記第2活物質層の前記底部側の一辺より導出されることで第2導出部が形成され、
前記第2導出部は、前記電極体の内周側または外周側に曲げられた第2曲げ部を含み、
前記第2曲げ部が前記底部の内面に接触している、
円筒形電池。
【請求項5】
請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の円筒形電池において、
前記第2極板は、導電材料により形成された第2芯体と、前記第2芯体上に形成された第2活物質層とを有し、前記電極体の最外周面に前記第2芯体が露出しており、
前記電極体の最外周面の前記第2芯体が露出した部分が前記外装缶の筒部の内面に接触している、
円筒形電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻回型の電極体を備える円筒形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形の非水電解質二次電池等の電池は、正極と負極とがセパレータを介して渦巻き状に巻回されてなる巻回型の電極体を備え、電極体が外装体に収容されることにより構成される。電極体を構成する正極板及び負極板には、集電リードが接続され、正極板及び負極板は、それぞれ集電リードを介して封口体や、外装缶などに接続されている。
【0003】
一方、集電リードを用いる場合には、極板との接続経路が少なくなり電池の内部抵抗が高くなる可能性がある。電池の内部抵抗を低くするために、特許文献1に記載された構成のように、電極体の端面における極板の端辺に集電板を接合することが考えられる。この構成では、ニッケル-カドミウム電池において、正極板の芯体部分の端辺が電極体の他の部分より外装体の開口側に突き出して、その端辺に正極集電板が抵抗溶接によって接合されている。正極集電板は、外装体の開口を塞ぐ封口体に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成は、ニッケル-カドミウム電池のように、厚く剛性の高い芯体を用いる場合には有効と考えられるが、非水電解質二次電池のように薄く剛性の低い芯体を用いる場合には集電板と芯体とを良好に接合できない可能性がある。このため、正極板の芯体が薄く剛性の低い構成において、正極側での内部抵抗を低くすることが望まれる。また、負極板の芯体が薄く剛性の低い構成において、負極側での内部抵抗を低くすることも望まれる。
【0006】
本開示は、円筒形電池において、正極板及び負極板の一方の極板である第1極板の芯体が薄く剛性の低い構成における内部抵抗を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る円筒形電池は、少なくとも1つの第1極板と少なくとも1つの第2極板とがセパレータを介して巻回された巻回型の電極体と、電極体を収容する有底筒状の外装缶と、外装缶の開口部を塞ぐように開口部に第1絶縁部材を介して取り付けられた第1極端子と、を備え、第1極板は、導電材料により形成された第1芯体と、第1芯体上に形成された第1活物質層とを有し、第1芯体の第1極端子側の一辺部が第1活物質層の第1極端子側の一辺より導出されることで第1導出部が形成され、第1導出部は、電極体の内周側または外周側に曲げられた第1曲げ部を含み、第1曲げ部の第1極端子側面に第1極集電板の第1面が接触しており、第1極集電板の第2面に直接、または導電部材を介して第1極端子が接続される、円筒形電池である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る円筒形電池によれば、第1極板の芯体が薄く剛性の低い構成における内部抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の一例の円筒形電池の断面図である。
【
図3】
図1から正極板を取り出して展開状態で示している図である。
【
図4】実施形態の別例の円筒形電池の断面図である。
【
図5】実施形態の別例の円筒形電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、電池の仕様に合わせて適宜変更することができる。また、以下において「略」なる用語は、例えば、完全に同じである場合に加えて、実質的に同じとみなせる場合を含む意味で用いられる。さらに、以下において複数の実施形態、変形例が含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0011】
また、以下では、電池が円筒形の非水電解質二次電池である場合を説明するが、電池はこれに限定するものではなく、他の二次電池、または一次電池であってもよい。
【0012】
図1は、実施形態の一例の円筒形電池10の断面図である。
図2は、
図1のA部拡大図である。
図3は、
図1から正極板12を取り出して展開状態で示している図である。
【0013】
図1~
図3に例示するように、円筒形電池10は、巻回型の電極体11及び非水電解質(図示せず)を含む発電要素と、外装缶51とを備える。以下では、円筒形電池10は、電池10と記載する場合がある。巻回型の電極体11は、少なくとも1つの正極板12と、少なくとも1つの負極板17と、セパレータ25とを有し、正極板12と負極板17がセパレータ25を介して渦巻状に巻回されている。以下では、電極体11の軸方向一方側を「上」、軸方向他方側を「下」という場合がある。非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解したリチウム塩等の電解質塩とを含む。非水電解質は、液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。正極板12は、第1極板に相当し、負極板17は、第2極板に相当する。
【0014】
正極板12は、導電材料により形成された帯状の正極芯体13を有し、正極芯体13が正極集電板30を介して正極端子31に接続される。このために、正極板12は、正極芯体13上に形成された正極活物質層14を有する。正極芯体13の正極端子31側の一辺部(
図1、
図2の上辺部)が正極活物質層14の正極端子31側の一辺より上方に導出されることで第1導出部15が形成されている。正極端子31は、第1極端子に相当し、正極芯体13は第1芯体に相当し、正極活物質層14は第1活物質層に相当する。
【0015】
第1導出部15は、電極体11の内周側に曲げられた第1曲げ部16を含んでいる。具体的には、第1曲げ部16は、正極芯体13の巻き方向の全長にわたって断面L字形に曲げられることで、上端に渦巻き状に形成された上端板部16aを有する。このため、電極体11を上方から見た場合に、電極体11の正極芯体13以外の部分は、渦巻き状の上端板部16aによってほぼ覆われている。後述のように、正極集電板30には正極端子31が接触され、正極端子31には上端板部16aが接触される。これにより、電池10の内部抵抗を低くできる。
【0016】
負極板17は、導電材料により形成された帯状の負極芯体18を有し、負極芯体18が外装缶51の底部52に接続される。このために、負極板17は、負極芯体18上に形成された負極活物質層19を有する。負極芯体18の後述の外装缶51の底部52側の一辺部(
図1の下辺部)が負極活物質層19の底部52側の一辺より下方に導出されることで第2導出部20が形成されている。負極芯体18は第2芯体に相当し、負極活物質層19は第2活物質層に相当する。後述のように第2導出部20は、負極端子となる外装缶51の底部52に接触される。
【0017】
外装缶51の開口部53aを塞ぐように、開口部53aに絶縁材料製のガスケット34を介して正極端子31が取り付けられる。これらの外装缶51及び正極端子31によって、発電要素を収容する金属製の電池ケースが構成されている。ガスケット34は、第1絶縁部材に相当する。
【0018】
外装缶51は、底部52を有し、発電要素を収容する有底円筒状の金属製容器である。外装缶51と正極端子31との間には上記のガスケット34が配置され、電池ケース内の密封性が確保されるとともに、外装缶51と正極端子31との絶縁を確保している。外装缶51は、開口部53a側部分に内周側に張り出すように形成された張り出し部54を有する。例えば、張り出し部54は、外装缶51の側面部を外側からプレスすることにより形成される。張り出し部54は、外装缶51の周方向に沿って環状に形成されることが好ましく、その上面でガスケット34を介して正極端子31を支持する。発電要素は、外装缶51において張り出し部54より下側に収容される。正極端子31は、円板部の上下両面のそれぞれの中心部に形成された2つの略円形の突部32,33を有する。2つの突部32,33のうち、下側の突部33の下面が正極集電板30の第2面である上面に接触する。
【0019】
外装缶51は、金属材料を有底円筒状に加工して形成される。外装缶51の構成材料は、例えば銅、ニッケル、鉄、又はこれらの合金等であり、好ましくは鉄又は鉄合金である。
【0020】
正極集電板30の上面の外周側には、リング状の絶縁部材35が配置される。絶縁部材35は、第2絶縁部材に相当する。
【0021】
正極板12の正極活物質層14は、例えば正極芯体13の両面に形成されている。正極芯体13には、例えばアルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。好適な正極芯体13は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主成分とする金属などの正極の電位範囲で安定な金属の箔である。
【0022】
正極活物質層14は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含むことが好ましい。正極板12は、例えば正極活物質、導電剤、結着剤、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の溶剤を含む正極合剤スラリーを正極芯体13の両面に塗布した後、乾燥及び圧延することにより作製される。
【0023】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム含有複合酸化物が例示できる。例えば、リチウム含有複合酸化物としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-yO2、LixCoyM1-yOz、LixNi1-yMyOz、LixMn2O4、LixMn2-yMyO4、LiMPO4、Li2MPO4F{0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3、Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種}等が例示できる。
【0024】
上記導電剤の例としては、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料などが挙げられる。上記結着剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
図3に示すように、正極芯体13の一辺部(
図3の上辺部)には、正極活物質層14の一辺(
図3の上辺)より上方に延出された第1導出部15が形成される。この第1導出部15は、正極芯体13のみで形成され、厚みが小さくかつ剛性が低いので容易に曲げられる。第1導出部15を厚み方向に曲げることにより第1曲げ部16(
図2)が形成される。
【0026】
図1に戻って、負極板17の負極活物質層19は、例えば負極芯体18の両面に形成されている。負極芯体18には、例えば銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。
【0027】
負極活物質層19は、負極活物質及び結着剤を含むことが好ましい。負極活物質層19は、必要により導電剤を含んでいてもよい。負極板17は、例えば負極活物質、結着剤、及び水等を含む負極合剤スラリーを負極芯体18の両面に塗布した後、乾燥及び圧延することにより作製される。
【0028】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、リチウム、珪素、炭素、錫、ゲルマニウム、アルミニウム、鉛、インジウム、ガリウム、リチウム合金、予めリチウムを吸蔵させた炭素や珪素、これらの合金や混合物などを用いることができる。負極活物質層19に含まれる結着剤には、例えば正極板12の場合と同様の樹脂が用いられる。水系溶媒で負極合剤スラリーを調製する場合は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、CMCまたはその塩、ポリアクリル酸またはその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
負極芯体18の一辺部(
図1の下辺部)には、負極活物質層19の一辺(
図1の下辺)より下方に延出された第2導出部20が形成される。この第2導出部20は、負極芯体18のみで形成され、厚みが小さくかつ剛性が低いので容易に曲げられる。第2導出部20を厚み方向に曲げることにより第2曲げ部21が形成される。第2曲げ部21は、外装缶51の底部52の内面に接触している。これにより、電池10の内部抵抗を低くできる。第2導出部20は、後で詳しく説明する。
【0030】
セパレータ25には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布などが挙げられる。セパレータ25の材質としては、セルロース、またはポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂が好ましい。セパレータ25は、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。
【0031】
電解質の非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0032】
本実施形態では、正極板12の第1曲げ部16(
図2)の正極端子31側面である上面には、正極集電板30の第1面である下面が接触している。このとき、第1曲げ部16と正極集電板30とは、溶接しない構成としてもよい。正極集電板30は、導電材料である鋼板または銅板等の金属板により円板状に形成される。正極集電板30は、少なくとも1つの位置に、正極集電板30の開口部53a側から電解液を電極体11側の空間に注入するための注液孔が形成されてもよい。そして、正極集電板30の上面に正極端子31の下側の突部33の下面が接触することにより、正極集電板30に正極端子31が直接接触される。正極端子31の上端の外周部には、ガスケット34を介して外装缶51の開口部53a側端部が、内周側にかしめ付けられている。これにより、正極端子31は、外装缶51の開口部53aに固定される。
【0033】
さらに、正極板12の第1曲げ部16と張り出し部54とで、絶縁部材35及び正極集電板30が挟まれている。正極端子31は、絶縁部材35の上下に貫通する貫通穴36の内側を通じて、正極集電板30に接続されている。
【0034】
また、負極板17の第2導出部20は、電極体11の内周側に曲げられた第2曲げ部21を含んでいる。具体的には、第2曲げ部21は、負極芯体18の巻き方向の全長にわたって断面L字形に曲げられることで、下端に渦巻き状に形成された下端板部22を有する。このため、電極体11を下方から見た場合に、電極体11の負極芯体18以外の部分が、渦巻き状の下端板部22によってほぼ覆われている。下端板部22の外装缶51の底部52側面である下面は、底部52の内面に接触している。これにより、負極板17と、負極端子となる外装缶51との接続面積が大きくなる。例えば、負極芯体18の巻き方向全長にわたって形成された第2曲げ部21と外装缶51の底部52の内面とを広い範囲で面接触させることができる。これにより、電池10の内部抵抗を低くできる。
【0035】
上記の電池10によれば、正極板12の正極芯体13が薄く剛性の低い構成において、正極芯体13の第1曲げ部16を、正極集電板30を介して正極端子31に接続できる。このとき、第1曲げ部16と正極集電板30、及び正極集電板30と正極端子31の接触面積を大きくできる。例えば、正極芯体13の巻き方向全長にわたって形成された第1曲げ部16と正極集電板30とを広い範囲で面接触させることができる。これにより、電池10の内部抵抗を低くできる。また、正極芯体13の正極端子31側の一辺部に形成した第1曲げ部16の上面に正極集電板30の下面を接触させればよく、厚く剛性の高い正極芯体を用いる必要がない。なお、正極芯体13の第1曲げ部16と正極集電板30とは抵抗溶接や超音波溶接、レーザ溶接等により溶接してもよい。
【0036】
また、負極板17の第2曲げ部21の下面が外装缶51の底部52の内面に広い範囲で接触しているので、正極側及び負極側の両方でバランスよく内部抵抗を低くできる。
【0037】
図4は、実施形態の別例の電池10aの断面図である。本例の電池10aでは、
図1~
図3の構成と異なり、正極端子31aの下面には、下側の突部が形成されず、正極端子31aの下面は、全体的に平坦面となっている。
【0038】
正極端子31aの下面と、正極集電板30の上面との間には、導電部材としての板ばね38が配置される。板ばね38は、金属材料により形成され、上から見た形状が円形であり、中心部が下側に窪んだ皿状である。
【0039】
外装缶51aには内周側に大きく張り出す張り出し部は形成されていない。外装缶51aの筒部53の開口部53a側端部にガスケット34を介して正極端子31aが配置された状態で、外装缶51aの開口部53a側部分が外周側から内周側にかしめられている。また、正極端子31aの上端の外周部には、ガスケット34を介して外装缶51aの開口部53a側端部が、内周側にかしめ付けられている。これにより、正極端子31aは、外装缶51aの開口部53aに固定される。この状態で、板ばね38の上面の外周部には正極端子31aの下面の外周部が押し付けられ、板ばね38の下面の中心部には正極集電板30の上面の中心部が押し付けられる。これにより、板ばね38が上下方向両側から圧縮された状態となり、板ばね38のバネ力が正極集電板30と正極端子31aとに加わっている。このため、正極芯体13の第1曲げ部16の上面に正極集電板30の下面が接触しており、正極集電板30の上面には、板ばね38を介して正極端子31aが電気接続される。このように、外装缶51aの開口部53a側部分が外周側から内周側にかしめられることにより開口部53aに正極端子31aが取り付けられる場合には、いわゆる横かしめで外装缶51aが変形している。この場合、外装缶51aのみによっては正極集電板30には、電極体11に押し付ける方向の力が加わらない。一方、上記のように正極端子31aと正極集電板30との間に板ばね38を配置することにより、正極端子31aと板ばね38とによって、正極集電板30に対し電極体11に押し付ける方向の力を加えることができる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図3の構成と同様である。
【0040】
図5は、実施形態の別例の電池10bの断面図である。本例の電池10bでは、
図1~
図3の構成と異なり、負極芯体18の外装缶51の底部52側の一辺部(
図5の下辺部)は、負極活物質層19の底部52側の一辺(
図5の下辺)より下方に導出していない。一方、電極体11の最外周面には負極芯体18が露出している。このために、負極板17は、電極体11の最外周面となる第1面の巻き終わり側端部には、負極活物質層を形成しない芯体露出部11aが配置される。そして、電極体11の最外周面の負極芯体18が露出した部分である芯体露出部11aが、外装缶51の筒部53の内面に接触している。これによって、負極芯体18と負極端子となる外装缶51とを広い範囲で面接触させることができるので、電池10の内部抵抗を低くできる。また、正極側で内部抵抗を低くできることとあいまって、正極側及び負極側の両方でバランスよく内部抵抗を低くできる。芯体露出部11aは、電極体11の最外周面の略全周に形成することが、内部抵抗を低くする面からより好ましい。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図3の構成と同様である。
【0041】
上記の各例では、正極芯体13の第1導出部16が電極体11の内周側に曲げられる場合を説明し、上記の各例の一部の構成では、負極芯体18の第2導出部20が電極体11の内周側に曲げられる場合を説明した。一方、正極芯体13の第1導出部と、負極芯体18の第2導出部との一方または両方が電極体11の外周側に曲げられる構成としてもよい。
【0042】
上記の各例では、第1極板を正極板とし、第2極板を負極板としたが、第1極板を負極板とし、第2極板を正極板とすることもできる。例えば、
図1~
図3の構成において、外装缶51の開口部53aに負極端子が取り付けられ、正極板12における正極芯体13のうち、正極活物質層の第1辺である下辺から延出した部分が外装缶の底部の内面に接続された構成にも、本開示の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0043】
10,10a 円筒形電池(電池)、11 電極体、12 正極板、13 正極芯体、14 正極活物質層、15 第1導出部、16 第1曲げ部、16a 上端板部、17 負極板、18 負極芯体、19 負極活物質層、20 第2導出部、21 第2曲げ部、22 下端板部、25 セパレータ、30 正極集電板、31,31a 正極端子、32,33 突部、34 ガスケット、35 絶縁部材、36 貫通孔、38 板ばね、51,51a 外装缶、52 底部、53 筒部、53a 開口部、54 張り出し部。