(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】スマート巻き上げロープ
(51)【国際特許分類】
D07B 1/14 20060101AFI20230727BHJP
D07B 1/02 20060101ALI20230727BHJP
G01N 3/00 20060101ALN20230727BHJP
【FI】
D07B1/14
D07B1/02
G01N3/00 U
(21)【出願番号】P 2020515866
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 EP2018077472
(87)【国際公開番号】W WO2019072845
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-11
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522355798
【氏名又は名称】アビエント プロテクティブ マテリアルズ ビー. ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Avient Protective Materials B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボスマン, リゴベルト
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/153250(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0182130(US,A1)
【文献】特表2017-500255(JP,A)
【文献】特開2006-036430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00-9/00
B66C 1/00-3/20
B66B 7/00-7/12
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープ(1)が装備された、少なくとも1つのロープ車(21)を有する巻き上げ装置のためのロープ監視システムであって、
前記ロープは、強度部材(10)の長手方向寸法に沿って分布した物体(101)を含み、
前記物体(101)が、遠隔で検出可能、読み取り可能、及びプログラム可能な
IDタグであり、
前記ロープが、個々のロープ区分(11)であって、少なくとも1つの
前記IDタグ(101)が提供され、且つ、前記タグによって識別される個々のロープ区分(11)に事実上分かれているとともに、前記ロープが、前記巻き上げ装置の所定の経路に沿って、前記少なくとも1つのロープ車上に耐荷重ロープとして位置決めされているロープ監視システムにおいて、
-前記ロープの前記所定の経路に沿って取り付けられた少なくとも1つのIDタグ読み取り(22)デバイスであって、前記少なくとも1つのIDタグ(101)が提供され、且つ、前記経路に沿って移動するときに、前記タグによって識別される少なくとも前記個々のロープ区分の識別情報を検出するIDタグ読み取り(22)デバイスと、
-前記ロープの前記所定の経路に沿って取り付けられた少なくとも1つのIDタグ書き込み(24)デバイスであって、前記経路に沿って移動するときに、前記個々のロープ区分の新たな健全性状態を前記少なくとも1つのIDタグ(101)に書き込みするIDタグ書き込み(24)デバイスと、
-前記ロープの少なくとも1つの動作の間に、少なくとも1つのロープ動作パラメータを測定する少なくとも1つの手段(26)と、
-前記
所定の経路の幾何学的形状
と、前記少なくとも1つのロープ動作パラメータ
と、前記少なくとも1つのIDタグの前記識別情報及び位置
とを含むデータが提供されている演算ユニット(28)であって、
-前記データに基づいて、前記巻き上げ装置の前記所定の経路に関して前記ロープの個々の区分の相対的な長手方向の位置決め、及び、前記少なくとも1つのロープ動作パラメータの下での前記経路に沿った前記移動の間に、前記ロープの個々の区分が受けた追加の損傷又は複数の損傷を演算すること、
-前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を演算及び記録すること、
-前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を対応する前記ロープの前記少なくとも1つのプログラム可能なIDタグに格納するために、前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を対応する前記少なくとも1つのIDタグ書き込みデバイスに送ること、
が可能なアルゴリズムが装備された演算ユニット(28)と、
を含むロープ監視システム。
【請求項2】
少なくとも1つの仮想ロープ区分の物理的なロープパラメータを測定する少なくとも1つのさらなる手段(27)を含む、請求項1に記載のロープ監視システム。
【請求項3】
少なくとも1つのロープ動作パラメータを測定する前記少なくとも1つの手段(26)が、吊荷の質量、前記吊荷の加速度、前記吊荷の振動、前記ロープの動作方向、前記ロープの速度、前記ロープの加速度、前記ロープの滑り量、前記ロープに対する牽引力、前記ロープに対する圧力、前記ロープの張力、前記ロープの圧縮、及び前記ロープのトーションから選択される1つ又は複数のパラメータを検出する、請求項1又は2に記載のロープ監視システム。
【請求項4】
事前定義された時間又は動作レベルで、ロープの個々の仮想区分の、このような区分ごとのそれぞれの損傷を増分的に合計することにより、ロープの個々の区分の新たな健全性状態を演算及び記録するように前記アルゴリズムが構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のロープ監視システム。
【請求項5】
ロープの個々の区分が受けた損傷又は複数の損傷を、これらのロープの個々の区分の残存寿命を表示するパラメータ又は複数のパラメータに集約させることにより、ロープの個々の区分の新たな健全性状態を演算及び記録するように前記アルゴリズムが構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のロープ監視システム。
【請求項6】
ロープの個々の区分の残存寿命は、新品のロープ又はロープ区分の未使用状態の、百分率として表現される、請求項5に記載のロープ監視システム。
【請求項7】
前記ロープの少なくとも1つの仮想区分の前記残存寿命が、事前定義された限界に達すると、前記演算ユニットが、警告信号をさらに供給するように構成される、請求項5又は6に記載のロープ監視システム。
【請求項8】
少なくとも1つのIDタグ読み取り(22)デバイスは、
前記少なくとも1つのIDタグ(101)が提供され、且つ、前記経路に沿って移動するときに、前記タグによって識別される少なくとも前記個々のロープ区分の過去の健全性状態を検出するように構成され、
前記演算ユニット(28)には、前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を演算及び記録するため、対応する前記ロープ区分の前記過去の健全性状態が、更に提供される、請求項1~7のいずれか一項に記載のロープ監視システム。
【請求項9】
前記ロープ監視システムは更に前記ロープを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のロープ監視システム。
【請求項10】
前記ロープは、強度部材(10)であって、ASTM D885Mに規定されているように、少なくとも1.0N/Texの靭性を有する高機能ヤーンを含む一次ストランドを含む強度部材を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のロープ監視システム。
【請求項11】
巻き上げ装置のためのロープ(1)であって、強度部材(10)であって、ASTM D885Mに規定されているように、少なくとも1.0N/Texの靭性を有する高機能ヤーンを含む一次ストランドを含む強度部材を含み、間隔をあけて位置し、前記強度部材(10)の長手方向寸法に沿って分布した物体(101)をさらに含むロープにおいて、前記物体(101)が、遠隔で検出可能、読み取り可能、及びプログラム可能な
IDタグであり、
前記IDタグは、ロープの個々の区分の残存寿命を表示するパラメータ又は複数のパラメータ
に基づいて算出された、該ロープの個々の区分の健全性状態を保存する、ロープ。
【請求項12】
ロープの個々の区分の残存寿命は、新品のロープ又はロープ区分の未使用状態の、百分率として表現される、請求項11に記載のロープ。
【請求項13】
前記強度部材が編組構造であり、前記IDタグが前記編組強度部材の前記一次ストランド間に制約なしに位置決めされている、請求項11又は12に記載のロープ。
【請求項14】
前記IDタグが所定の間隔をあけて位置し、長尺の支持要素の前記長手方向寸法に沿って分布し、長尺の支持要素が、前記IDタグを含む編組構造を有する、請求項11又は12に記載のロープ。
【請求項15】
ロープ(1)が装備された、少なくとも1つのロープ車(21)を有する巻き上げ装置のためのロープ監視方法であって、
前記ロープは、強度部材(10)の長手方向寸法に沿って分布した物体(101)を含み、
前記物体(101)が、遠隔で検出可能、読み取り可能、及びプログラム可能な
IDタグであり、
前記ロープが、個々のロープ区分(11)であって、少なくとも1つの
前記IDタグ(101)が提供され、且つ、前記タグによって識別される個々のロープ区分(11)に事実上分かれているとともに、前記ロープが、前記巻き上げ装置の所定の経路に沿って、前記少なくとも1つのロープ車上に耐荷重ロープとして位置決めされて
おり、
前記ロープ監視方法
が、
-
前記所定の経路に沿って移動するときに、
前記少なくとも1つのIDタグ(101)によって識別され
る前記個々のロープ区分の識別情報を
少なくとも検出する
ために、前記ロープの前記所定の経路に沿って少なくとも1つのIDタグ読み取り(22)デバイス
を用意するステップと、
-
前記所定の経路に沿って移動するときに、前記個々のロープ区分の新たな健全性状態を前記少なくとも1つのIDタグ(101)に書き込
むために、前記ロープの前記所定の経路に沿って少なくとも1つのIDタグ書き込み(24)デバイス
を用意するステップと、
-前記ロープの少なくとも1つの動作の間
に少なくとも1つのロープ動作パラメータを測定する少なくとも1つの手段(26)
を用意するステップと、
-前記
所定の経路の幾何学的形状
と、前記少なくとも1つのロープ動作パラメータ
と、前記少なくとも1つのIDタグの前記識別情報及び位置
とを含むデータが提供されている演算ユニット(28)
を用意するステップと、
前記演算ユニット(28)に、
-前記データに基づいて、前記巻き上げ装置の前記所定の経路に関して前記ロープの個々の区分の相対的な長手方向の位置決め、及び、前記少なくとも1つのロープ動作パラメータの下での前記経路に沿った前記移動の間に、前記ロープの個々の区分が受けた追加の損傷又は複数の損傷を演算すること、
-前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を演算及び記録すること、
-前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を対応する前記ロープの前記少なくとも1つのプログラム可能なIDタグに格納するために、前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を対応する前記少なくとも1つのIDタグ書き込みデバイスに送ること、
が可能なアルゴリズム
を装備
させるステップと、
を含むロープ監視方法。
【請求項16】
請求項15
に記載のロープ監視方法を実行する前記演算ユニットとしてコンピュータを機能させるプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能媒体であって、
前記プログラムが、
-前記データにアクセスすること、
-前記データに基づいて、前記相対的な長手方向の位置決め、及び、前記追加の損傷又は複数の損傷を演算すること、
-前記新たな健全性状態を演算及び記録すること、及び
-前記ロープの前記個々の区分の前記新たな健全性状態を、前記対応する少なくとも1つのIDタグ書き込みデバイスに送ること、
を前記コンピュータに実行させる、
コンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高機能ヤーンを含む一次ストランドを含む強度部材を含む巻き上げロープなどのロープであって、間隔をあけて位置し、強度部材の長手方向寸法に沿って分布した物体をさらに含むロープに関する。本発明は、前記ロープを含むロープ監視システムにさらに関する。
【0002】
強度部材の長手方向寸法に沿って間隔をあけて分布した物体を含むロープ、並びにロープ監視デバイスも同様に、とりわけ、国際公開第2017/153250号パンフレット、国際公開第2016/059652号パンフレット、及び米国特許第7441464号明細書から既知である。
【0003】
国際公開第2107/153250号パンフレットは、エレベータ設備のための支持手段について記載しており、この支持手段に沿って複数のセンサが配置されている。センサは、支持手段の局所的な物理特性を判定し、この物理特性を伝達して支持手段の廃棄基準を演算するように設計されている。
【0004】
国際公開第2016/059652号パンフレットは、空間的に離隔された遠隔で検出可能な複数の物体がロープの長尺の寸法に沿って位置する合成繊維からなる強度部材で形成されたロープを含み、これにより、連続した遠隔で検出可能な物体間の空間的間隔の長さの変化を経時的に監視して、クリープ破断につながる過剰なクリープに関して警告する、クリープ警告監視システムについて記載している。
【0005】
米国特許第7441464号明細書は、繊維ロープの歪みを測定するための歪みゲージセンサシステム及び方法について記載しており、そこでは複数の磁石が、繊維ロープに沿った個々のゲージ長を画定している。個々のゲージ長の長さの変化は、1対の通過する磁石を磁気的に感知することによって検出され、これにより、磁石間のロープに配置されたIDタグがRF読み取り機によって検出されて、測定されている特定のゲージ長を識別することができる。
【0006】
クレーンなどの巻き上げ設備に取り付けられたロープは、ロープの力学的な曲げ、張力及び張力変化、圧縮、剪断力、温度、並びに/又は気候、ロープに加えられる損傷といったような、複雑な劣化要因の組み合わせの影響を受ける。さらに、ロープの各区分は、個別の要因の影響を受け、ゆえに、個別の損傷を受ける。国際公開第2016/059652号パンフレット及び米国特許第7441464号明細書に記載されている方法は、ロープ又はロープ区分の伸長状態によってロープ又はロープ区分の損傷を観察し、このため、臨界廃棄条件は、故障時の伸長にのみ基づくことになる。とは言え、かかっている張力のレベル及び張力の継続時間に大きく左右されるので、故障時の伸長は、ロープ又はロープ区分の絶対的な特性ではない。言いかえれば、大きいが短時間の張力がかかっていたロープの破断時の伸長は、小さいが持続的な張力がかかっていたロープの破断時の伸長よりもはるかに小さい場合があり、このため、温度のような他の要因が、等式に追加されるべき、さらなるパラメータである。ゆえに、ロープの漸進的な伸長を測定することは、ロープの廃棄最適点を予測するためには、十分に使用できない。
【0007】
稼働中のロープの最適な廃棄の監視及び識別を含む、巻き上げ設備の安全で信頼性の高い性能を監視するための改良されたシステム及び方法であって、構造上の完全性の低下を早期に警告し、適宜、その安全な配備を強化するシステム及び方法を提供することが、引き続き必要とされている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、稼働中のロープの最適な廃棄の監視及び識別を含む、巻き上げ設備の性能を監視し、構造上の完全性の低下が近づいていることを早期に警告するための改良された監視システム及び改良されたロープを提供することである。本発明のさらなる目的は、巻き上げロープの予防保守及び修理を可能にする監視システム及びロープを提供することである。本発明のさらなる目的は、ロープを取り外し、保管し、スプライスし、及び/又は再装備した後でも、高い信頼性を保つ監視システム及びロープを提供することである。
【0009】
この目的は、遠隔で検出可能、読み取り可能、及びプログラム可能な識別、ID、タグである物体を含むロープを含むロープ監視システムによって達成され、このロープ監視システムは、ロープが装備された、少なくとも1つのロープ車を含み、このロープが、個々のロープ区分であって、少なくとも1つのIDタグが提供され、且つ、このタグによって識別される個々のロープ区分に事実上分かれているとともに、このロープが巻き上げ装置の所定の経路に沿って、少なくとも1つのロープ車上に耐荷重ロープとして位置決めされているロープ監視システムであって、
-前記ロープと、
-ロープの前記所定の経路に沿って取り付けられた少なくとも1つのIDタグ読み取りデバイスであって、少なくとも1つのIDタグが提供され、且つ、前記経路に沿って移動するときに、このタグによって識別される少なくとも個々のロープ区分の識別情報、及び任意選択的に、過去の健全性状態及び/又は少なくとも1つの物理的なロープパラメータを検出するIDタグ読み取りデバイスと、
-ロープの前記所定の経路に沿って取り付けられた少なくとも1つのIDタグ書き込みデバイスであって、前記経路に沿って移動するときに、個々のロープ区分の新たな健全性状態を少なくとも1つのIDタグに書き込みするIDタグ書き込みデバイスと、
-ロープの少なくとも1つの動作の間に、少なくとも1つのロープ動作パラメータを測定する少なくとも1つの手段と、
-所定のロープ経路の幾何学的形状、少なくとも1つのロープ動作パラメータ、少なくとも1つのIDタグの識別情報及び位置、並びに任意選択的に、対応するロープ区分の過去の健全性状態を含むデータが提供されている演算ユニットであって、
-前記データに基づいて、巻き上げ装置の所定の経路に関してロープの個々の区分の相対的な長手方向の位置決め、及び、前記少なくとも1つのロープ動作パラメータの下での前記経路に沿った前記移動の間に、ロープの個々の区分が受けた追加の損傷又は複数の損傷を演算すること、
-ロープの個々の区分の新たな健全性状態を演算及び記録すること、
-ロープの個々の区分の新たな健全性状態を対応する少なくとも1つのロープのプログラム可能なIDタグに格納するために、ロープの個々の区分の新たな健全性状態を対応する少なくとも1つのIDタグ書き込みデバイスに適切に送ること、
が可能なアルゴリズムが装備された演算ユニットと、
を含む。
【0010】
本発明によるロープ及びロープ監視システムは、監視システムが肉眼で見えるロープ特性に基づいて廃棄又はメンテナンスのクリテリウムを識別しているのではなく、ロープの過去の健全性状態に基づいており、これにより、ロープそれ自体が、仮想ロープ区分の前記過去の健全性状態を含むプログラム可能なIDタグを含むという利点を提供する。このことは、巻き上げ装置が装備されたロープが必要な巻き上げ動作に応じて容易に交換可能である、というさらなる利点を提供する。巻き上げ設備に新たな、又は古くなったロープが装備されると、監視システムは、埋め込まれたIDタグを読み取り、ロープの現在の健全性状態を検出する。さらに、本発明による巻き上げロープの仮想区分は、取り付け、又は取り外し時に容易に分類することが可能であり、適切な場合には、残りのロープ区分の健全性情報を失うことなく、損傷箇所を選択的に取り除くことができる。このため、本発明の好適な実施形態は、対応する仮想ロープ区分の健全性状態を含むIDタグを含むロープ及びロープ監視デバイスに関係する。
【0011】
本発明に関連する巻き上げ装置とは、荷物を持ち上げたり下げたりするためのデバイスであると理解される。巻き上げ装置は、ロープが持ち上げ媒体として周囲に位置決めされているドラム又は持ち上げホイールをさらに含むことができる。荷物は、持ち上げフックを用いて巻き上げ機に取り付けてもよい。巻き上げ装置の典型的な一例は、クレーンである。
【0012】
ロープ車とは、本明細書では、張力要素、すなわち、その縁部を通過するロープを用いて力をそらすために使用される曲面を意味し、凹凸状に溝が刻まれたリム、又は平坦なリムとすることができる。「ロープ車」という用語は、本明細書では、ホイール、ローラー、プーリー、滑りシュー、係柱、ドラム、ウィンチ、例えば、このような張力要素を周囲に巻き付けることが可能なスプール又はリールを含む。
【0013】
識別(ID)タグとは、本明細書では、情報を格納及び処理するための集積回路を含む電子デバイスであって、デジタル情報をワイヤレスでやり取りすることが可能な電子デバイスであると理解される。このようなワイヤレスのデジタル情報の伝送は、GSM、誘導、ブルートゥース(blue tooth)、ワイファイ(wifi)又は無線周波数変調など、当技術分野において既知の手段を介して実行することができる。好ましくは、IDタグは無線周波数識別(RFID)タグである。RFIDタグは、無線周波数(RF)信号を変調、及び復調する。IDタグは、例えば、入射読み取り機信号から電力を収集する手段と、信号を受信及び送信するためのアンテナと、をさらに含むことができる。本発明のロープ内のIDタグは、(近傍のID読み取り機の問い合わせ信号からエネルギーを収集する)受動型、(バッテリなど、局在の電源を有する)能動型、又はそれらの組み合わせのいずれかとすることができる。タグは、IDタグ読み取り機及び/又は書き込み機によって、遠隔で検出可能、遠隔で読み取り可能、及び遠隔でプログラム可能である。動作中、IDタグ読み取り機は、信号を送信してタグに問い合わせする。IDタグは、問い合わせを受信し、その識別、及び任意選択的に、他の情報とともに応答する。タグはそれぞれ、その識別によって一意的であることで、システムは、IDタグ読み取り機の範囲内にあり得るいくつかのタグの中で区別し、同時にそれらを読み取りできるようになっている。IDタグは、繰り返しプログラム可能であるが、プログラム可能とは、一意のIDタグ識別が、単に個々のIDタグに帰属する以上のことを指すだけでなく、追加の情報、とりわけ、過去及び現在の、ロープ又は該当するロープ区分の健全性状態を繰り返し、且つ/又は増分的に格納することを可能にすることであると理解される。このため、IDタグはそれぞれ、このような情報を格納するのに十分なデータ記憶容量を含み、好ましくは、IDタグはそれぞれ、少なくとも8kバイトの、好ましくは、少なくとも64kバイトの、及び最も好ましくは、少なくとも512kバイトの、繰り返しプログラム可能な記憶容量を含む。IDタグは、間隔をあけて位置し、ロープの強度部材の長手方向寸法に沿って分布している。連続したIDタグ間の間隔の長さは、等しくてもよいし、広範にわたって変えてもよい。個々のIDタグの間隔の長さによって画定された、様々な長さのロープ区分の位置を監視システムが適切に突きとめ、演算できることが、本発明の利点である。2つの連続したIDタグ間の典型的な距離は、ロープの他の寸法によって決まる場合があり、通常、ロープが長くなるほど、且つ/又は、厚くなるほどIDタグ間の距離が大きくなる。連続したIDタグ間の間隔の好適な長さは、0.2から20mの間、より好ましくは、0.3から10mの間、及び最も好ましくは、0.5から5mの間であるが、2つの連続したIDタグの間の距離は、前記IDタグの中心間の距離として測定される。好ましくは、IDタグは、実質的に一定間隔で位置決めされるが、前記間隔は、0.5~10mの範囲の長さを有することが好ましい。
【0014】
本発明のロープに含まれるIDタグの数は、広範にわたって変えることができ、それぞれのロープ及びロープ監視システムの使用法によって決まる。好ましくは、本発明によるロープは、少なくとも10個の、より好ましくは、少なくとも20個の、及び最も好ましくは、少なくとも50個のIDタグを含む。
【0015】
本発明に関連するロープは、例えば、その幅及び厚さ、又は直径の横寸法よりも、はるかに大きい長さを有する長尺体である。本発明に従って使用されるロープは、円形、丸形、若しくは多角形、又はそれらの組み合わせである断面を有することができる。好ましくは、ベルトとも呼ばれる長円形の断面、又は円形の断面を有するロープが、巻き上げ動作時に使用される。ロープの直径とは、本明細書では、ロープの断面の外周上の2つの対向する場所の間の最大距離であると理解される。本発明に従って使用されるロープの直径は、大きな範囲の間で、例えば、直径5mm以下から直径200mmまで、さらには、500mmまで変えることができる。限定要因ではないが、巻き上げロープ及び監視システムは、前記ロープの前記直径が、少なくとも10mmであるときに、より好ましくは、少なくとも20mmであるときに、最も好ましくは、少なくとも30mmであるときに最良に動作することが観察された。
【0016】
本発明のロープの長さは、広範にわたって変えることができ、ロープを使用する動作の用途によって決まる場合がある。ロープは、少なくとも5メートルの、好ましくは、少なくとも10メートルの、より好ましくは、少なくとも20メートルの、及び最も好ましくは、少なくとも100mの長さを有することができ、ロープの最大長さは特に関係しない。場合によっては、ロープの長さは、最大でも100km、好ましくは、最大でも50km、より好ましくは、最大でも10kmである。
【0017】
本発明によるロープは、耐荷重ストランドとも呼ばれる一次ストランドを含む少なくとも1つの強度部材を含む。繊維を含有するヤーンが、撚り合わせるか、又は他の手段によってより大きなロープヤーンに集約され、次に、このロープヤーンが集約されてストランドを形成するロープ構造を作ることが、ロープ製造業界では一般に知られている。ストランドは、ロープヤーンを撚合、又は編組することによって作ることができるし、或いは、平行なヤーンを含む場合がある。好ましくは、本発明のロープのストランドは、前記巻き上げ動作によって生じた荷重の少なくとも一部を支える。ストランドを様々なやり方で組み立てて、ロープの強度部材を形成することができる。好ましくは、強度部材は、編組構造、撚合構造、緊張材ヤーン束、合成リンクチェーン、及び/又はベルトである。
【0018】
ロープは、実質的に強度部材のまわりに位置している保護カバーなどの、さらなる要素を含むことができる。このようなカバーは、編んだ、若しくは重ね編み組みされた合成繊維のカバー、及び/又は保護コーティングとすることができる。
【0019】
本発明では、一次ストランドとは、ロープをほどいたときに出てくる最初のストランドであるストランドを意味する。概して、これらはロープの最も外側のストランドであるが、存在する場合には、コアストランドを含んでもまたよい。一次ストランドは、さらなる二次ストランドで構成されている場合がある。
【0020】
本発明のロープの強度部材のストランド、例えば、一次ストランドは、本文脈において強力繊維とも呼ばれる高機能繊維を含む高機能ヤーンを含有している。本明細書における繊維とは、長さ寸法が幅及び厚さの横寸法よりもはるかに大きい長尺体であると理解される。したがって、繊維という用語は、規則的な断面又は不規則的な断面を有するフィラメント、リボン、帯状片、帯、テープ等を含む。繊維は、当技術分野においてフィラメントとして知られている連続した長さを有していてもよいし、又は当技術分野においてステープル繊維として知られている連続しない長さを有していてもよい。ステープル繊維は一般に、フィラメントを切断又は牽切することによって得られる。本発明の解釈上、ヤーンとは、少なくとも2つの繊維を含有する長尺体である。
【0021】
高機能繊維とは、本明細書では、ポリアミド及びポリアラミド、例えば、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(ケブラー(Kevlar)(登録商標)として知られている);ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE);ポリ{2,6-ジイミダゾ-[4,5b-4’,5’e]ピリジニレン-1,4(2,5-ジヒドロキシ)フェニレン}(M5として知られている);ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)(PBO)(ザイロン(Zylon)(登録商標)として知られている);液晶ポリマー(LCP);ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6として知られている)、ポリ(4-アミノ酪酸)(ナイロン6として知られている);ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(ブチレンテレフタラート)、及びポリ(1,4シクロヘキシリデンテレフタル酸ジメチル);ポリビニルアルコール;そしてまた、ポリオレフィン、例えば、ホモポリマー、並びに、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンの共重合体からなる群から選ばれるポリマーから製造された繊維であると理解される。好適な高機能繊維は、ポリアラミド繊維及び、高分子量ポリエチレン又は超高分子量ポリエチレン(HMWPE又はUHMWPE)繊維である。好ましくは、HMWPE繊維はメルトスパンであり、UHMWPEはゲルスパン、例えば、DSM Dyneema,NLによって製造されている繊維である。
【0022】
好適な実施形態では、高機能繊維はUHMWPE繊維であり、より好ましくは、ゲルスパンUHMWPE繊維である。好ましくは、UHMWPE繊維に存在するUHMWPEは、少なくとも3dl/gの、より好ましくは、少なくとも4dl/gの、最も好ましくは、少なくとも5dl/gの固有粘度(IV:intrinsic viscosity)を有する。好ましくは、前記IVは最大でも40dl/gであり、より好ましくは、最大でも30dl/gであり、より好ましくは、最大でも25dl/gである。IVは、ASTM D1601(2004)に準拠して、デカリン中、135℃で、溶解時間を16時間とし、酸化防止剤としてBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)を2g/Lの量で含む溶液を使用し、異なる濃度で測定された粘度を濃度ゼロに外挿することによって判定することができる。UHMWPE繊維を製造するためのゲル紡糸プロセスの例は、国際公開第01/73173A1号パンフレット、欧州特許第1,699,954号明細書を含む多数の公報、及び“Advanced Fibre Spinning Technology”,Ed.T.Nakajima,Woodhead Publ.Ltd(1994),ISBN 185573 182 7に記載されている。
【0023】
高機能ヤーンは高い靭性及び/又は高い強度を有する場合がある。本発明との関連において、高機能ヤーンは、少なくとも1.0N/Texの、好ましくは、少なくとも1.2N/Texの、より好ましくは、少なくとも1.5N/Texの、さらにより好ましくは、少なくとも2.0N/Texの、なおさらにより好ましくは、少なくとも2.2N/Texの、及び最も好ましくは、少なくとも2.5N/Texの靭性を有する。高機能ヤーンがUHMWPEヤーンである場合、前記UHMWPEヤーンは、好ましくは、少なくとも1.8N/Texの、より好ましくは、少なくとも2.5N/Texの、最も好ましくは、少なくとも3.5N/Texの靭性を有する。好ましくは、高機能ヤーンは、少なくとも30N/Texの、より好ましくは、少なくとも50N/Texの、最も好ましくは、少なくとも60N/Texの弾性率を有する。好ましくは、UHMWPEヤーンは、少なくとも50N/Texの、より好ましくは、少なくとも80N/Texの、最も好ましくは、少なくとも100N/Texの引張弾性率を有する。本発明との関連において、引張強度及び引張弾性率は、マルチフィラメントヤーンに関して、ASTM D885Mに規定されているように、繊維の公称ゲージ長500mm、クロスヘッド速度50%/分、「Fibre Grip D5618C」型のInstron 2714クランプを使用して定義及び判定される。弾性率は、歪み0.3から1%の間の勾配として判定される。
【0024】
高機能ヤーンを含む強度部材は、ロープに高強度を提供することができる。このため、本発明の実施形態は、ロープ及びロープ監視システムに関係し、ロープは、少なくとも0.50N/texの靭性を有し、好ましくは、ロープは、少なくとも0.60N/texの、より好ましくは、少なくとも0.70N/texの、さらにより好ましくは、0.80N/texの、及び最も好ましくは、少なくとも1.00N/texの靭性を有する。本発明のさらなる実施形態では、強度部材は、少なくとも0.9N/texの、好ましくは、少なくとも1.1N/texの、より好ましくは、少なくとも1.3N/texの、及び最も好ましくは、少なくとも1.3N/texの靭性を有する。
【0025】
好ましくは、本発明のロープは、高靭性及び高径を有する。これらの特徴の組み合わせにより、少なくとも10kNの、より好ましくは、少なくとも50kNの、及び最も好ましくは、少なくとも100kNの、最大破断荷重(MBL:maximum break load)とも呼ばれる破断強さを有するロープが提供される。MBLは、ISO 2307に準拠して試験することによって得ることができ、これにより、ロープの靭性は、前記MBLをロープの力価で除算することにより計算される。
【0026】
一次ストランドを1つにまとめて、本発明のロープの少なくとも1つの強度部材を形成することができる。強度部材は、ストランドを撚り合わせ、又は編み組みすることによって、又は、個々のストランドを平行に束ねることによって作ることができる。本発明の好適な実施形態では、強度部材は、撚合構造をしており、好ましくは、前記撚合構造は、3本、4本、6本、又は6+1本の耐荷重一次ストランドを含む。本発明の別の好適な実施形態では、少なくとも1つの強度部材は、編組構造をしており、好ましくは、前記編組構造は、6本、8本、又は12本の一次ストランドを含む。編組構造又は撚合構造の利点は、編組構造又は撚合構造内で安定した中心通路が利用可能になることであり、IDタグの収容が可能になることである。このため、本発明の好適な実施形態では、少なくとも1つの強度部材は、編組構造をしており、IDタグが編み組みされた強度部材の耐荷重ストランド間に制約なしに位置決めされている。好ましくは、IDタグは、編み組みされた強度部材構造の中心軸に位置決めされている。本発明によるロープのこのような構造は、強度部材内の適切な位置にIDタグを配置することによって、編み組みされた強度部材からの製造が容易であり、個々のIDタグ間の位置及び距離に関する可撓性を大きくすることが可能になり、これにより、IDタグが制約なしに編組構造に埋め込まれ、且つ、容易に取り外し、又は編組構造内での再配置が可能であることが観察された。本発明との関連において、「制約なしに」とは、タグは、さらなる、追加の手段なしに位置決めされることで、単に編組をほどくだけで、しかも前記構造にさらなる損傷を与えずに、構造から取り外し可能であるようになっている、と理解されなければならない。任意選択的に、IDタグは、接着剤、接着テープ等のような固定手段によって割り当てられた位置で保持することができる。
【0027】
代替的な実施形態では、IDタグは、所定の間隔をあけて位置し、長尺の支持要素の長手方向寸法に沿って分布している。このような長尺の支持要素は、ロープ及び/又は強度部材と実質的に同じ長さをした物体である。通常、長尺の支持要素は、バー、スティック又はチューブ形状を有する。支持要素は、例えば、熱可塑性材料から作られた、IDタグが埋め込まれているロッドとすることができる。熱可塑性材料は、限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン又はそれらの任意の共重合体、ポリアミド、ポリエステル及びポリスチレンとすることができる。長尺の支持要素は、本発明のロープの編み組みされた強度部材、又は撚り合わせられた強度部材内の中心に位置し、これにより、少なくとも1つの強度部材の耐荷重ストランドは、長尺の支持要素を取り囲むように配置することができる。或いは、長尺の支持要素は、強度部材の一次ストランドの編組構造又は撚合構造内の中心に位置する場合があり、前記編み組みされた耐荷重ストランド、又は撚り合わせられた耐荷重ストランドは、他の一次ストランドとともに本発明のロープの少なくとも1つの強度部材を形成することになる。本発明のロープの強度部材のこのような好適な構造は、必要とされる強度及び性能特性を有するロープを構成するのに十分な可撓性を引き続き提供しながら、ロープを支持要素及びストランドのような予め組み立てられたユニットから構成することが容易になる場合がある、という利点を有する。或いは、長尺の支持要素はそれ自体、例えば、編組又は撚合により、本発明の高機能繊維を含むサブストランドから作ることができ、これにより、IDタグが、サブストランド構造内に適切な間隔で位置決めされ、強度部材構造の一次ストランドをともに形成している。したがって、本発明の好適な実施形態は、長尺の支持要素が、強度部材の一次ストランドの一部であるか、若しくは一部を形成するか、又は長尺の支持要素が、強度部材の長手方向のコア区分を形成するロープである。さらなる好適な実施形態では、長尺の支持要素は、IDタグを含む編組構造を有する。代替的なさらなる好適な実施形態では、長尺の支持要素は、IDタグを含む熱可塑性ロッドである。
【0028】
本発明の好適な実施形態では、ロープは、少なくとも100mの長さ、少なくとも10mmの直径、少なくとも0.8N/texの靭性、少なくとも10kNの最大破断荷重を有し、編み組みされた強度部材の長手方向寸法に沿って分布した少なくとも50個のIDタグを含み、その間隔は、実質的に等しい長さであり、0.5~5mの範囲にある。
【0029】
本発明のロープ監視システムでは、ロープは、個々のロープ区分に事実上分かれている。個々のロープ区分は、実質的に同一の長さをしている場合もあれば、ロープの長さに沿って異なっている場合もある。仮想ロープ区分の長さは、個々のIDタグ間の距離によって実質的に画定され、これにより、仮想ロープ区分は、1つ又は複数のIDタグが提供され、1つ又は複数のIDタグによって識別することができる。1つの同じIDタグが、仮想ロープ区分が重複している2つ以上の前記仮想ロープ区分を識別する場合がある。少なくとも1つのIDタグによってそれぞれが識別される仮想ロープ区分は、ロープの重複する区分、隣接する区分、及び/又は離散した区分とすることができる。仮想ロープ区分の長さは、広範にわたって変えることができ、それはロープの寸法、IDタグ間の数及び距離、並びにその使用法によって決まることになる。仮想ロープ区分の典型的な長さは、0.2から20メートルの間、好ましくは、0.3から10メートルの間、及びより好ましくは、0.5から5メートルの間とすることができる。仮想ロープ区分当たりのIDタグの数は、1つ又は複数個、好ましくは、1個とすることができる。
【0030】
ロープ監視システムの動作中、ロープは、耐荷重ロープとして巻き上げ装置の所定の経路に沿って位置決めされている。前記経路は、少なくとも1つのロープ車を含むが、好ましくは、経路は、2つ以上のロープ車を含む。
【0031】
本発明によるロープ監視システムは、ロープの所定の経路に沿って取り付けられた少なくとも1つのID読み取りデバイスを含む。IDタグ読み取りデバイスは、少なくとも1つのIDタグを検出、及び識別することを可能にする無線周波数信号を発信及び受信することができる。任意選択的に、IDタグは、以前にプログラムされた情報、及び/又は測定されたパラメータなど、さらなる情報をID読み取り機に送信することができる。以前にプログラムされた情報は、仮想ロープ区分の過去の健全性状態とすることができ、また、測定されたパラメータは、IDタグを含み、このIDタグによって識別される個々のロープ区分の物理的なロープパラメータとすることができる。
【0032】
ロープ監視システムは、ロープの所定の経路に沿って取り付けられた、少なくとも1つのIDタグプログラミングデバイス(書き込みデバイスとも呼ばれる)をさらに含む。ID書き込みデバイスは、少なくとも1つの特定のIDタグを検出、及び識別する無線周波数信号を発信及び受信し、続いて、個々のロープ区分の新たな健全性状態をこの少なくとも1つのIDタグに書き込むことができる。好ましくは、IDタグ読み取り、及びIDタグ書き込みデバイスを単一のIDタグ読み取り/書き込みユニットに組み合わせ、これにより、読み取り及び書き込みを順次、又は同時に実行することができる。
【0033】
ロープ監視システムは、好ましくは、2つ以上のID読み取り機及び書き込み機をそれぞれ含み、このようなIDタグ読み取りデバイス及び/又は書き込みデバイスが、所定の経路に沿って理想的に配置されている場所は、当業者には明白であろう。好ましくは、2つ以上のIDタグ読み取り機及び/又は書き込み機は、重要経路位置で所定の経路全体にわたって広がっている。重要位置は、リールシステムの付近、ロープ車又は複数のロープ車の付近とすることができるが、さらに、このような電気設備を安全に設置することが可能な所定のロープ経路に沿った任意の位置とすることができる。
【0034】
動作中、読み取りデバイス及び書き込みデバイスは、該当するIDタグを識別し、IDタグからの関連情報、及び/又はIDタグへの関連情報を書き込み、及び/又は、読み取りする必要がある。好ましくは、このようなプロセスは、1秒未満の時間枠内で、好ましくは、0.1秒未満で、及びより好ましくは、0.01秒未満で実行され、これにより、ロープ監視システムは、少なくとも2m/秒の、好ましくは、少なくとも5m/秒の、及び最も好ましくは、少なくとも10m/秒のロープ速度に適合されることになる。好ましくは、IDタグは、少なくとも1メガビット/秒の、好ましくは、5メガビット/秒の、より好ましくは、10メガビット/秒の、及び最も好ましくは、少なくとも25メガビット/秒の書き込み速度を有する。
【0035】
ロープ監視システムは、ロープの少なくとも1つの動作の間に、少なくとも1つのロープ動作パラメータを測定する少なくとも1つの手段をさらに含む。ロープ動作パラメータとは、本明細書では、ロープを動作させる条件、特に、ロープの寿命に悪影響を及ぼす動作の条件を表す値であると理解される。動作のこのような条件は、限定されないが、質量、加速度、振動のような、吊荷に関係するパラメータ、及びロープの方向、速度、加速度、滑り量、張力、圧縮又はトーションのような、巻き上げ動作に関係するパラメータとすることができる。ロープ動作パラメータを測定する手段は、ロープ監視システムなしで動作させるために巻き上げ装置にさらに設置してもよいし、又は、本システム専用に設置してもよい。したがって、本発明の好適な実施形態は、少なくとも1つのロープ動作パラメータを測定する少なくとも1つの手段が、吊荷の質量、吊荷の加速度、吊荷の振動、ロープの動作方向、ロープの速度、ロープの加速度、ロープの滑り量、ロープに対する牽引力、ロープに対する圧力、及びロープの張力から選択される1つ又は複数のパラメータを検出するロープ監視システムに関係する。
【0036】
本発明の好適な実施形態では、ロープの監視は、物理的なロープパラメータに基づいてロープの健全性状態を演算することによって、さらに改良することができる。本発明に関連する物理的なロープパラメータとは、所定の経路に沿ったロープの1つ又は複数の仮想ロープ区分に起因する少なくとも1つの局所的な条件を記述するパラメータであると理解される。このようなパラメータは、例えば、放射温度、周囲温度、又はコア温度、トーション、剪断力、張力及び/又は圧縮、並びに水分レベルとすることができる。前記物理的なロープパラメータは、当技術分野で一般的な手段によって測定することができ、これにより、前記手段は、所定のロープ経路に沿ってIDタグ読み取り機及び/又はIDタグ書き込み機に組み込まれてもよいし、又は、これらとは別個であってもよい。前記手段は、ロープ、特に、前記ロープに存在するIDタグの一部又は全部に組み込まれていてもまたよく、これにより、それぞれの物理的なロープパラメータが個別に、又は他のIDタグ読み取り機の情報と組み合わせられて送信される。このため、本発明の好適な実施形態は、少なくとも1つの仮想ロープ区分の物理的なロープパラメータを測定する少なくとも1つのさらなる手段を含むロープ監視システム及びロープに関係する。好ましくは、前記手段は、ロープの所定の経路に沿って取り付けられた少なくとも1つのID読み取りデバイスに組み込まれるか、又は、ロープに存在する少なくとも1つのIDタグに組み込まれる。本発明の別の好適な実施形態では、少なくとも1つの物理的なロープパラメータは、周囲温度又はコア温度、剪断力、トーション、張力、圧縮、及び水分レベルから選択される。代替的な実施形態では、ロープは、物理的なロープパラメータを測定する手段を含まず、これにより、間隔をあけて位置し、強度部材の長手方向寸法に沿って分布した物体が、遠隔で検出可能、遠隔で読み取り可能、且つ、遠隔でプログラム可能な識別タグで構成される。
【0037】
ロープ監視システムは、演算ユニットをさらに含む。前記ユニットには、所定のロープ経路の幾何学的形状、少なくとも1つのロープ動作パラメータ、少なくとも1つのIDタグの識別情報及び位置、並びに任意選択的に、対応するロープ区分の過去の健全性状態、及び/又は物理的なロープパラメータを含むデータが提供されている。この文脈において、「データが提供されている」という用語は、データが、揮発性若しくは不揮発性メモリにデータベース又は個々のデータポイントの形式で保存された、アナログ又はデジタル入力によって、測定デバイス又は補助設備から取り出し可能な、アルゴリズムの一部などの任意の形式で、演算ユニットに対して利用可能であることを意味する。演算ユニットには、前記データに基づいて、巻き上げ装置の所定の経路に関してロープの個々の区分の相対的な長手方向の位置決め、並びに、前記少なくとも1つのロープ動作パラメータ、及び随意の物理的なロープパラメータの下での前記経路に沿った前記移動の間に、ロープの個々の区分が受けた追加の損傷又は複数の損傷を演算することが可能なアルゴリズムがさらに装備されている。演算ユニットに対して利用可能なデータに基づいて、前記少なくとも1つのロープ動作パラメータの下での前記経路に沿った前記移動の間に、ロープの個々の区分が受けた追加の損傷又は複数の損傷を演算する機能が、前記アルゴリズムを開発するときにロープに損傷を加えるパラメータ及び条件の深いノウ・ハウによって有効になる。前記アルゴリズムは、ロープの個々の区分の新たな健全性状態を演算及び記録する。このような演算は、事前定義された時間又は動作レベルで、ロープの個々の仮想区分の、このような区分ごとのそれぞれの損傷を増分的に合計することによって行うことができる。
【0038】
好ましくは、ロープの個々の区分が受けた損傷又は複数の損傷は、これらのロープの個々の区分の残存寿命を表示するパラメータ又は複数のパラメータに集約される。通常、個々のロープ区分の残存寿命は、例えば、100%として表現される新品のロープ又はロープ区分の未使用状態の、百分率として表現される。巻き上げ装置の動作の間に、本明細書に記載されたロープ監視システムは、動作条件を蓄積し、ロープがさらされてきた様々な条件によって被る個々の損傷を演算することになる。特定の区分の集約された損傷は、例えば、50%の局所的なロープ寿命になる場合があり、これにより、同様の張力履歴を受けてきたが、ロープ車上を通過する回数が少ない付近のロープ区分は、80%の局所的なロープ寿命を有する場合がある。ロープのそれぞれの残存寿命は、いつでも検査することができ、巻き上げ設備の適切な修正につながり、ロープの損傷プロファイルがより均一になり、ゆえに、ロープの全体的な寿命を延ばす場合がある。或いは、巻き上げ設備は、主としてロープの特定の区分を損傷するようなやり方で使用される場合もあり得るため、予防保守の間にこのような区分を除去することができる。さらなる好適な実施形態として、本発明によるロープ監視システムは、ロープの少なくとも1つの仮想区分の残存寿命が、事前定義された限界に達すると、警告信号を供給する演算ユニットを含む。
【0039】
演算ユニットが、ロープの少なくとも1つの仮想区分の少なくとも1つの新たな健全性状態を演算したら、演算ユニットは、前記新たな健全性状態を格納することができ、且つ/又は、ロープの個々の区分の新たな健全性状態を、対応する少なくとも1つのロープのプログラム可能なIDタグに格納するために、前記新たな健全性状態を、対応する少なくとも1つのIDタグ書き込み/プログラミングデバイスに送ることができる。仮想ロープ区分の新たな健全性状態の対応するIDタグへの書き込みは、ロープがそれ自体、演算デバイスに加えて、冗長メモリとしての、及び場合によっては、個々のロープ区分の健全性状態の外部記憶デバイスとしての役割を果たすことができるという利点を有する。ロープ内に健全性状態が存在することにより、ロープ管理がより強固なものになる。ロープの巻き上げ設備からの取り外しが容易になり、これにより、取り外されたロープが、その長さに沿った健全性の履歴を保持することになる。変換されたロープを取り付けると、ロープ監視デバイスはそのロープ自体から関連情報をすべて取り出すので、スプライス又は切断によりロープの長さを短縮しても、安全性にさらに影響を及ぼすことはない。さらに、記憶装置内のロープは、手動で容易に走査することができ、特定の使用法への適合性を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】
図1Aは、本発明のロープ1の上面図であり、ロープ及びロープの単一の強度部材10を示している。
【
図1B】
図1Bは、本発明のロープ1の断面図であり、強度部材10、仮想ロープ区分11、及びそこに埋め込まれたIDタグ101を描いている。
【
図2】
図2は、本発明のロープ監視システムの概略図である。ロープ監視システムは、IDタグ101が提供された個々のロープ区分11に事実上分かれているロープ1を含む。IDタグ読み取りデバイス22及びIDタグ書き込みデバイス24が、ロープ経路に沿って取り付けられている。演算ユニット28が、読み取りデバイス22及び書き込みデバイス24、並びにロープ動作パラメータで測定する手段26に接続されている。
【
図3】
図3は、本発明のロープ監視システムが装備された巻き上げ動作の概略図である。ロープ1はフックが装備され、ロープ車21上に取り付けられ、動作中のロープへの張力を測定する手段26を表すウィンチに巻き付けられている。IDタグ読み取り機22/書き込み機24が、ロープの決められた経路に沿って取り付けられている。
図3のロープ監視システムは、温度計など、物理的なロープパラメータを測定する手段27をさらに含む。