(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】経口静菌組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/744 20150101AFI20230727BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20230727BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230727BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230727BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230727BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230727BHJP
【FI】
A61K35/744
A61K31/7004
A61P31/04
A61P43/00 121
A23L33/135
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2019086912
(22)【出願日】2019-04-27
【審査請求日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019033153
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519066898
【氏名又は名称】只野 武
(73)【特許権者】
【識別番号】509177887
【氏名又は名称】株式会社元気プロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】只野 武
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/072124(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016178(WO,A1)
【文献】特開2017-001961(JP,A)
【文献】特開2017-225365(JP,A)
【文献】畜産技術ひょうご, (2011), 102, p.21-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 36/06-36/068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
REGISTRY/CASREACT/MARPAT/KOSMET/GSTA/RDISCLOSURE/ReaxysFile/CHEMCATS/AGRICOLA/BIOTEHNO/CABA/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌死菌末とを含有する経口静菌組成物
において、
前記乳酸菌死菌末は、Enterococcus faecalisの死菌末であることを特徴とする経口静菌組成物。
【請求項2】
食品中に存在する1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌作用を増強する静菌作用増強剤としての前記食品中へのEnterococcus faecalisの死菌末の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口静菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖類は、食品中における呈味成分、特に甘みを呈する成分として古くから広く使用されているが、近年では糖類が持つ様々な機能に着目し、その機能に応じた使用方法が模索されている。
【0003】
例えば、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは、でん粉などのα-1,4-グルカンにα-1,4-グルカンリアーゼを作用させることで製造できる糖であり、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースを比較的高濃度で含有する水あめ製品が食品用素材として日本で製造・販売されている。
【0004】
この1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは、抗酸化性や静菌作用を有し、加工食品の品質を維持する目的で使用されている(非特許文献1)。また、抗炎症作用、抗アレルギー作用、血小板凝集抑制作用などの健康機能も報告されていて、健康を維持する目的の食品にも利用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本応用糖質科学会誌、1 巻 (2011) 1 号 70-75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、様々な機能を有する1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは、その有用性が広く期待される糖の一つであるが、例えば、静菌機能を主体とする利用分野、より具体的な一例としては加工食品の日持ち向上(消費期限の延長)に関する利用分野においては、多くの加工食品に適用可能とすべく更なる静菌活性の向上が求められている。
【0007】
付言すれば、これまで加工食品の日持ち向上には、グリシンや酢酸などの化学的に合成されている食品添加物が多く使用されているものの、消費者の中には化学的な合成品に不安を抱き、食品添加物を使用していない加工食品を選択する人も少なくない。
【0008】
その一方で、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは、でん粉を食用海藻の酵素で分解することで生産できる安全・安心な天然素材であり、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースを食品の日持ち向上に使用した場合には、それが化学合成品でなく、天然の素材であることのメリットは大きい。
【0009】
また、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは糖であることから、弱い甘味を感じるのみで、加工食品に添加しても、その食品の風味に殆ど影響を及ぼさないという優れた長所も兼ね備えている。
【0010】
しかし、より多くの加工食品に適用可能とするためには、より静菌活性を高める技術が求められているのも実情である。
【0011】
また、もう少し医事薬事的な事例を考察すると、例えば口腔内には多くの細菌が存在しており、これらの静菌に関して1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの利用が考えられる。
【0012】
すなわち、口腔内細菌のうち、例えば、ミュータンス菌はう蝕、ジンジバリスは歯周病の原因菌として知られており、このような一部の口腔内細菌は、ヒトの健康に悪影響を及ぼす場合がある。
【0013】
これらの菌を抑制するためにデンタルペーストやマウスウオッシュなどが販売されているが、これらの製品の有効成分は化学合成品が主体であり、口腔内洗浄後に吐き出す必要がある。
【0014】
その反面、介護上やエチケット上、口臭防止をはじめとする口腔内ケアの必要性はますます重要視されており、口腔内細菌を抑制する新たな商品として、吐き出しが不要で食べられる口腔内ケア商品に対するニーズも今後高まると予想される。
【0015】
この点、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは、喫食可能であるのは勿論のこと、優れた静菌活性をも有しており、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌活性をより助長することが可能となれば、上述のような商品の開発に大きく寄与するものと考えられる。
【0016】
このように、食品や医薬品の別を問わず、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌効果を助長できる技術がより求められている。
【0017】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、これまで一般に経口摂取されている実績があり、異味・異臭をできるだけ伴わずに1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの味や風味を損なわせることのない、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌効果を助長できる物質が配合された経口静菌組成物を提供する。
【0018】
また本発明では、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌作用の増強に際しての乳酸菌死菌末の使用についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る経口静菌組成物では、(1)1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌死菌末とを含有することとした。
【0020】
また、本発明に係る経口静菌組成物では、前記乳酸菌死菌末は、Enterococcus faecalisの死菌末であることにも特徴を有する。
【0022】
また本発明では、(2)食品中に存在する1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌作用の増強に際し、静菌作用増強剤として、Enterococcus faecalisの死菌末を前記食品中に使用することとした。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る経口静菌組成物によれば、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌死菌末とを含有することとしたため、これまで一般に経口摂取されている実績があり、異味・異臭をできるだけ伴わずに1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの味や風味を損なわせることのない、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌効果を助長できる物質が配合された経口静菌組成物を提供することができる。
【0024】
また、前記乳酸菌死菌末は、Enterococcus faecalisの死菌末であることとすれば、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌作用の増強効果をより堅実に得ることができる。
【0026】
また、本発明に係る使用によれば、食品中に存在する1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌作用の増強に際し、静菌作用増強剤として、Enterococcus faecalisの死菌末を前記食品中に使用したため、これまで一般に経口摂取されている実績があり、異味・異臭をできるだけ伴わずに1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの味や風味を損なわせることなく1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌効果を助長することができる。また、認知症の改善が期待できるという効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、これまで一般に経口摂取されている実績があり、異味・異臭をできるだけ伴わずに1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの味や風味を損なわせることのない、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌効果を助長できる物質が配合された経口静菌組成物を提供するものであり、特に、本発明者らが鋭意研究を行い、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースに乳酸菌の菌体を混合することで味、香りに刺激的な影響を及ぼすことなく、静菌効果が相乗的に高まるとの知見に基づいて完成させたものである。
【0028】
具体的には、本実施形態に係る経口静菌組成物では、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌死菌末とを含有することとしている。
【0029】
1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは、でん粉などのα-1,4-グルカンをα-1,4-グルカンリアーゼで分解することにより生産可能であるが、本実施形態ではこの製造方法に限定されるものではなく、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースのみの場合や、1,5-アンヒドロ-D-フルクトース以外にぶどう糖やα-1,4-グルカンをα-1,4-グルカンリアーゼで分解した際の未分解物なども含まれても良い。また、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースは乾燥粉末や液状の状態でも良い。
【0030】
一方、乳酸菌死菌末は、乳酸発酵した発酵液より乳酸菌の菌体を分離し殺菌処理を施したものであり、例えば、分離した菌体を乾燥(例えば熱風乾燥)等に供し粉末化することで得たものを使用することができる。
【0031】
また乳酸菌は、代謝により乳酸を産生する細菌類の総称でありラクトバシラス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、リューコノストック属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属などが挙げられるが、乳酸菌体自体の異味や香りが少ないないものが好ましい。
【0032】
このように、本実施形態に係る経口静菌組成物の調製において乳酸菌の種類は特に限定されないが、敢えて限定的に例示するならば、好ましくはエンテロコッカス属、より好ましくはエンテロコッカス・フェカリス、更に好ましくは、エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株が良い。
【0033】
1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌死菌末との混合比は、1gの1,5-アンヒドロ-D-フルクトースに対し、100億個から7.5兆個の菌体数に相当する量の乾燥死菌末、好ましくは、500億個から1兆個、より好ましくは2000億個から7000億個の菌体数に相当する量の乾燥死菌末を混合するのが良い。100億個を下回ると乳酸菌の効果が発揮し難いため好ましくなく、7.5兆個を超えたとしても乳酸菌の費用が高く経済的な競争力が下がるため好ましくない。
【0034】
本実施形態に係る経口静菌組成物は、ヒトや非ヒト動物が経口摂取するものであれば特に限定されず、例えば、経口静菌剤などの薬剤や、一般的な食品の他に、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品なども含む食品と解することもできる。なお、これらの薬剤や食品は、本実施形態に係る経口静菌組成物の他に、他の組成物や食品原料等が含まれても良いのは勿論である。
【0035】
本実施形態に係る経口静菌組成物そのものや、薬剤、食品として加工した場合の使用例としては、加工食品やペットフードの日持ち向上、ペットやヒトの口腔細菌の抑制、ペットやヒトの便通改善に使用することができる。
【0036】
加工食品の例としては生めん、乾麺のうどん、そば、中華麺など、その他、惣菜類、菓子類、パン類、パンのフィリングなどが例示できるが、これに限定されるものではない。
【0037】
また、本実施形態に係る経口静菌組成物は、静菌効果を有するのは勿論であるが、驚くべきことに、ヒトや非ヒト動物に対し認知症の改善効果が期待できる点で特徴的である。
この点については、追って試験結果等を参照しながら説明する。
【0038】
また、これら本実施形態に係る経口静菌組成物や、薬剤、食品の剤形は特に限定されるものではなく、例えば粉末状や錠剤状、顆粒状、液体、カプセル状でも良く、シロップ状の1,5-アンヒドロ-D-フルクトースに乳酸菌の乾燥粉末を混合したペスート状、などいずれの形態とすることもできる。
【0039】
また、賦形剤や溶媒はなんら限定されるものではないが、賦形剤の例としてはぶどう糖やマルトデキストリン、水あめ、でん粉、乳糖などが挙げられる。また、溶媒としては水、果汁、アルコール、牛乳などが例示できる。
【0040】
以下、本実施形態に係る経口静菌組成物や認知症改善剤について、試験結果等を参照しつつ更に説明する。
【0041】
〔1.異味・異臭確認試験〕
1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌素材としての特徴は静菌効果を有することに加え、天然物の食品素材であることや、味に強い異味・異臭がないことなどが挙げられる。
【0042】
すなわち、食品会社等に代表される1,5-アンヒドロ-D-フルクトースのユーザは、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースが異味・異臭を有しておらず、静菌効果の付与対象となる食品等の風味を壊さないことを理由の一つとして製造原料として採用している場合も多い。
【0043】
従って、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースに混合する剤としては、静菌活性を有し天然物の食品素材であること、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースに混合した際に味に強い異味・異臭がないことが要求される。
【0044】
そこで本確認試験では、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌作用の増強に際し、静菌作用増強剤として、Enterococcus faecalis EF-2001株の死菌末を使用した本実施形態に係る経口静菌組成物A1を調製し、3人のパネラーにより異味、異臭を官能評価した。
【0045】
また、静菌作用を有することが知られている食品素材として、醸造酢、クエン酸発酵液、わさび、にんにくを選択し、これらと1,5-アンヒドロ-D-フルクトースとを混合して調製した比較組成物X1~X4についても、比較対照として官能試験を行った。
【0046】
なお、本試験では、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースとして、株式会社サナス製のアンヒドロース(登録商標)を用いた。アンヒドロースは、製品中に1,5-アンヒドロ-D-フルクトースを27.0~30.0wt%(例えば、28.5wt%)、水あめを41.5~44.5wt%(例えば、43.0wt%)、水を27.0~30.0wt%(例えば、28.5wt%)程度含有する製品である。
【0047】
この1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの製剤(アンヒドロース)に各種の食品成分を、アンヒドロースが8重量部に対して各種食品成分を2重量部を加え、混合し、得られた経口静菌組成物A1や比較組成物X1~X4について異味、異臭を官能評価した。その結果を表1に示す。
【表1】
【0048】
表1からも分かるように、本試験の結果、醸造酢やクエン酸発酵液、わさび、にんにくを使用した比較組成物X1~X4は、異味や異臭が感じられた。
【0049】
一方で、エンテロコッカス・フェカリスEF-2001株を使用した経口静菌組成物A1は、異味・異臭は感じられなかった。
【0050】
これらの結果から、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌作用の増強に際し、静菌作用増強剤として、乳酸菌の死菌末、特に、Enterococcus faecalisの死菌末を使用すれば、本実施形態に係る経口静菌組成物そのものや、薬剤、食品として加工した場合においても、異味・異臭を可及的伴うことなく、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌効果を助長できることが示唆された。
【0051】
〔2.静菌効果確認試験〕
次に、細菌に対する1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌の混合製剤の静菌活性を評価するために、表2に示す試料を用い、これらの枯草菌に対する静菌活性で評価した。
【0052】
具体的には、2 mlのNutrient broth培地(1%グルコース含有、pH6.0)に40μLの試料を加え、Bacillus subtilisの前培養液を20μL加え、菌数濃度を1mlあたり100個とした。
【0053】
これを35℃で20時間静置培養した後の菌数を測定した。菌数測定は培養液を乾式フィルム(3M社製ペトリフィルム(登録商標))にのせ、培養し形成したコロニー数より求めた。
【表2】
【0054】
このようにして行った試験結果を表3に示す。
【表3】
【0055】
表3からも分かるように、この条件下ではアンヒドロースや乳酸菌粉末が、それぞれ単独では静菌効果は認められないが、アンヒドロースと乳酸菌粉末を混合した場合は、強い静菌活性が認められ、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌粉末を混合することで静菌活性が相乗的に高まることが認められた。
【0056】
〔3.認知症改善剤の調製〕
次に、本実施形態に係る経口静菌組成物を含有してなる薬剤や食品の一態様として、認知症改善剤の調製を行った。具体的には、1包あたり3gずつアルミパウチに充填してなるペースト状の認知症改善剤であり、各原料の配合は表4に示す通りである。
【表4】
【0057】
表4に示す各原料をステンレス製の調合タンク内に投入し、30~35℃に加温しつつ攪拌混合することで、ペースト状の混合物を得た。
【0058】
次に、当該混合物をアルミパウチ用充填機に供して3gずつ分包し、得られた包装体を80~85℃の湯煎にて35分間以上殺菌を行い、認知症改善剤B1を得た。
【0059】
〔4.認知症改善効果確認試験〕
次に、〔3.認知症改善剤の調製〕にて得た本実施形態に係る認知症改善剤B1を用い、認知症改善効果の確認試験を行った。
【0060】
富山県の高齢者施設に入所中の認知症患者18名に対し、認知症改善剤B1を1日1回1包経口投与し、長谷川式スコア(認知症診断)と患者の状態を経時的に調べた。その結果を表5に示す。
【表5】
【0061】
表5からも分かるように、認知症改善剤B1の経口摂取で長谷川式スコアは時間経過とともに上昇し、認知症の改善効果が認められた。具体的には、摂取開始前の被験者の長谷川式スコアの平均値は「やや高度認知症」と判断される11.6であったが、6か月の摂取後は「中程度認知症」と判断される15.1までに改善した。
【0062】
このように、本実施形態に係る認知症改善剤B1によれば、定期的な経口摂取を行うことで、軽度認知症者(MCI被験者)の3名は6か月の摂取で正常な状態にまで回復することが示された。
【0063】
また、表6に摂取6か月目の便の状態と周辺症状をまとめたものを示す。
【表6】
【0064】
表6からも分かるように、本実施形態に係る認知症改善剤B1を摂取した被験者の殆どが便通・便臭に改善効果が認められ、さらにコミュニケーション能力などの周辺症状の改善も認められた。
【0065】
なお本試験では、毎日6か月間に亘り認知症改善剤B1を高齢の認知症患者に経口摂取させたが、被験者から試験物質の味に対するクレームは1件もなく、逆に毎日の摂取を楽しみにしている被験者もいた。
【0066】
上述してきたように、本実施形態に係る経口静菌組成物によれば、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースと乳酸菌死菌末とを含有することとしたため、これまで一般に経口摂取されている実績があり、異味・異臭をできるだけ伴わずに1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの味や風味を損なわせることのない、1,5-アンヒドロ-D-フルクトースの静菌効果を助長できる物質が配合された経口静菌組成物を提供することができる。
【0067】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。