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<図1>
  • -表皮材層および断熱材層を備える積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】表皮材層および断熱材層を備える積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20230727BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B32B7/023
F16L59/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018208348
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020075369
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390032090
【氏名又は名称】マグ・イゾベール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(74)【代理人】
【識別番号】100195545
【弁理士】
【氏名又は名称】鮎沢 輝万
(72)【発明者】
【氏名】栗原 亮一
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-105095(JP,A)
【文献】特開2006-284511(JP,A)
【文献】特開2001-147170(JP,A)
【文献】特開2004-251657(JP,A)
【文献】特開2006-090971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維系断熱材を含む断熱材層と、表皮材層と、を備える積層体であって、
前記表皮材層が酸またはアルカリに対して変色する物質を含有し、
前記表皮材層が、基材と、前記物質を含有する検知層と、間隙および開口の少なくとも一方を有する第1層と、を有する、ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記検知層が、前記間隙または前記開口と同等の大きさである、ことを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項3】
繊維系断熱材を含む断熱材層と、表皮材層と、を備える積層体であって、
前記表皮材層が酸またはアルカリに対して変色する物質を含有し、
前記表皮材層が、前記物質を含有する基材と、間隙および開口の少なくとも一方を有する第1層と、を有する、ことを特徴とする層体。
【請求項4】
前記積層体が略円筒状である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記表皮材層が間隙および開口の少なくとも一方を有する第1層を有し、前記間隙または前記開口が、前記略円筒状の周方向に線状、前記略円筒状の軸方向に線状、および略格子状の少なくとも1種で形成されている、ことを特徴とする請求項に記載の積層体。
【請求項6】
前記表皮材層が開口を有する第1層を有し、前記開口が略円状である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記表皮材層が、前記物質を保護する第2層を有する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材層および断熱材層を備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の省エネルギ需要の高まりから、建築物等において、断熱することが重要となっている。断熱材としては、様々な材料が使用されており、例えば、ガラスウールやロックウール等からなる無機繊維系断熱材や、発泡プラスチック系断熱材等が使用されている。また、特許文献1に開示されるように、工場の配管等の設備においても、熱損失を防ぐために断熱することは、一般的であり、断熱材が配管に隣接して、または取り巻くように設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-080177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、工場等においては、様々な種類の気体、液体、固体等の流体が製品製造等のために使用されており、特に、これら流体は、配管等で輸送される。配管は温度変化によって膨張および収縮して損傷することや、輸送する流体が、例えば、酸またはアルカリである場合、配管自体の腐食、または配管同士の継ぎ目の腐食により配管が損傷することがある。それにより形成された配管の孔から、酸またはアルカリが漏えいすることがあり、もし、漏えいに気付かず、放置されたままとなると、重大な事故につながる危険性がある。そのため、流体の漏えいを未然に防止することに加え、漏えいを早期に発見することが検討されている。
【0005】
しかしながら、断熱材には、例えばアルミニウム箔とクラフト紙とを貼り合せた表皮材が保温対象に施工する際の作業性、強度、および保温性を高めるために設けられており、このような断熱材と表皮材との積層体が、配管に隣接して、または取り巻くように設置されていると、配管から酸またはアルカリが漏えいしているのか否かの確認をすることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、酸またはアルカリが検知可能な積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の積層体は以下の構成を備える。すなわち、
断熱材層と、表皮材層と、を備える積層体であって、
前記表皮材層が酸またはアルカリに対して変色する物質を含有する
ことを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸またはアルカリが検知可能な表皮材層を備える積層体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る積層体を示す断面図。
図2】本実施形態に係る表皮材層を示す図。
図3】本実施形態に係る表皮材層の酸またはアルカリの検知を説明する図。
図4】別の実施形態に係る表皮材層を示す図。
図5】別の実施形態に係る表皮材層を示す図。
図6】別の実施形態に係る表皮材層を示す図。
図7】別の実施形態に係る表皮材層を示す図。
図8】別の実施形態に係る表皮材層を示す図。
図9】別の実施形態に係る積層体の概略図。
図10】別の実施形態に係る積層体の概略図。
図11】別の実施形態に係る積層体の概略図。
図12】別の実施形態に係る積層体の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用できる実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[本実施形態に係る積層体]
図1は本実施形態に係る積層体の断面図である。まず、本実施形態に係る積層体10の構造について説明する。積層体10は、表皮材層20と、断熱材層30と、含み、表皮材層20と、断熱材層30とが、積層されている。表皮材層20は、酸またはアルカリに対して変色する物質を含有する。
【0012】
一実施形態において、表皮材層20と断熱材層30とは、それぞれで使用される材料に応じて、公知の接着剤によって接着されている。例えば、接着剤としては、ホットメルト系のポリオレフィン系接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤等を挙げることができる。
【0013】
本実施形態に係る積層体10は、断熱性を有し、さらに、遮音性、吸音性等も有することができる。積層体10は、これらの機能が必要とされる分野で、酸またはアルカリが漏えいする可能性のある対象に隣接して利用されることができる。一実施形態において、積層体10は、建築用部材、自動車用部材、保温用部材、保冷用部材(冷蔵庫、冷凍庫等)等で利用することできる。本実施形態に係る積層体10は、これらの分野で利用可能な形状に成形されたもので、例えば、平板状、湾曲板状、波板状、棒状、円筒状、球状、ブロック状等に成形されたものである。
【0014】
次に、本実施形態に係る積層体10の酸またはアルカリの検知について説明する。一実施形態において、図1に示すように、積層体10は、酸またはアルカリが漏えいする可能性がある対象40(例えば、工場配管等)に、隣接して(接して)設置される(例えば、巻かれる)。対象40が損傷し、酸またはアルカリ50が漏えいした場合、矢印で示されるように、酸またはアルカリ50は対象40から断熱材層30に移動(浸透)し、表皮材層20まで達し得る。本実施形態に係る表皮材層では、この酸またはアルカリ50が、表皮材層20に含有される、酸またはアルカリに対して変色する物質と反応し、その物質が変色した領域60が形成される。検知者は、この変色した領域60により、酸またはアルカリ50が、対象40から漏えいしたことを早期に検知することができる。また、検知者は、漏えい初期の段階で、漏えいの対策をとることができ、事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0015】
<本実施形態に係る表皮材層>
次に、本実施形態に係る表皮材層20について説明する。本実施形態に係る表皮材層20は、断熱材層30を少なくとも部分的に覆うものである。図1では、表皮材層20は、シート状の形態であるが、袋状の形態として、断熱材層30を包囲してもよい。本実施形態に係る表皮材層20は、酸またはアルカリ50の漏えいを検知可能とすることができるため、表皮材層20は、断熱材層30の対象40と隣接していない反対側(検知者が確認できる側)にだけ設けることができ、断熱材層30の対象40と隣接している側に表皮材層20を設けなくてもよい。
【0016】
図2は本実施形態に係る表皮材層20を示す。図2(a)は、表皮材層20の平面図であるが、積層構造を理解しやすくするために、構成する各層が斜めに階段状に切断されている。図2(b)は図2(a)に示すX-X断面の断面図である。一実施形態において、表皮材層20は、基材21と、検知層24と、第1層22と、第2層23と、を備え、各層がこの順で積層されている。なお、表皮材層20は、第2層23を含まなくてもよい。
【0017】
以降、基材21から第2層23に向かう方向を外方、その逆の方向を内方ということがある。また、検知層24の酸またはアルカリに対して変色する物質が変色したこと、つまり、酸またはアルカリを検知したことは、第2層23側から内方に確認され得る。基材21と、第1層22と、検知層24とは、それぞれで用いる材料に応じて、公知の接着剤によって接着され得る。例えば、接着剤としては、ホットメルト系のポリオレフィン系接着剤、スチレンブタジエンゴム系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤等を挙げることができる。
【0018】
(基材)
次に、基材21について説明する。一実施形態において、基材21は、第1層22、第2層23、および検知層24のための下地として設けられている。基材21の材料としては、天然繊維、有機合成繊維、ガラス繊維または炭素繊維を含む織布または不織布が挙げられる。一実施形態において、基材21としては、クラフト紙、またはガラスクロスが例示される。
【0019】
基材21の厚さは、特に限定はされないが、一実施形態において0.05mm以上、別の実施形態において0.07mm以上、さらに別の実施形態において、0.13mm以上である。これにより、基材21は第1層22、第2層23、および検知層24を安定に保持し得、しわ等を防止することができる。また、基材21の厚さは、一実施形態において0.30mm以下、別の実施形態において0.25mm以下、さらに別の実施形態において0.20mm以下である。これにより、基材21の柔軟性が確保され、またコストが低減され得る。
【0020】
基材21がクラフト紙である場合、秤量は、一実施形態において50g/m以上、別の実施形態において60g/m以上、さらに別の実施形態において、70g/m以上である。これにより、基材21は第1層22、第2層23、および検知層24を安定に保持し得、しわ等を防止することができる。また、秤量は、一実施形態において120g/m以下、別の実施形態において110g/m以下、さらに別の実施形態において100g/m以下である。これにより、基材21の柔軟性が確保され、またコストが低減され得る。
【0021】
(第1層)
次に、第1層22について説明する。一実施形態において、第1層22は、下層(基材21、検知層24)の保護層として働き、外的な衝撃を防止し得るものである。一実施形態において、第1層22は、第1層の第1部分22aと第1層の第2部分22bの間に間隙(スリット)25を有する。第1部分22aと第2部分22bは、間隙25で完全に分離された部分であっても、部分的に分離された部分であってもよい。
【0022】
間隙25の間隔は、特に限定されるものでなく、一実施形態において1mm以上、別の実施形態において5mm以上、さらに別の実施形態において10mm以上、さらに別の実施形態において50mm以上である。これにより、検知層24において酸またはアルカリに対して変色する物質が変色した場合、検知者が確認し易い。間隙25の間隔は、一実施形態において100mm以下、別の実施形態において80mm以下、さらに別の実施形態において70mm以下、さらに別の実施形態において60mm以下である。これにより、第1層22は外的な衝撃を防止することができる。
【0023】
一実施形態において、第1層22の材料としては、金属箔、または金属合金箔が挙げられ、例えば、アルミニウム箔が使用され得る。第1層22は、一実施形態において6μm以上、別の実施形態において7μm以上、さらに別の実施形態において10μm以上、さらに別の実施形態において20μm以上である。これにより、第1層22は下層を外的な衝撃から防止することができる。第1層22は、一実施形態において150μm以下、別の実施形態において100μm以下、さらに別の実施形態において70μm以下、さらに別の実施形態において50μm以下である。これにより、第1層22の柔軟性が確保され、またコストが低減され得る。
【0024】
(第2層)
次に、第2層23について説明する。一実施形態において、第2層23は、下層(検知層24)の保護層として働き、外的な衝撃を防止し得るものとすることができる。第2層23は、気密性を向上させ、また、外方から検知層24に埃や、酸またはアルカリ等が付着することを抑制することができる。一実施形態において、第2層23は、樹脂の塗膜とすることができ、透明、または半透明とすることができる。第2層23の樹脂は特に限定はされないが、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂等を例示できる。また、樹脂は、撥水剤、吸水剤、抗菌剤、防かび剤、消臭剤、芳香剤等の有機物、および、無機遮熱材、無機抗菌剤、マイナスイオン発生物質等の無機物を含むことができる。
【0025】
第2層23の塗膜量は、一実施形態において2g/m以上、別の実施形態において5g/m以上、さらに別の実施形態において8g/m以上である。これにより、第2層23は下層を外的な衝撃から防止することができる。第2層23の塗膜量は、一実施形態において20g/m以下、別の実施形態において15g/m以下、さらに別の実施形態において13g/m以下である。これにより、第2層23の不燃性が向上する。なお、表皮材層20は、第2層23を含まなくてもよい。
【0026】
(検知層)
次に、検知層24について説明する。検知層24は、酸またはアルカリに対して変色する物質を含有する。一実施形態において、検知層24は、酸またはアルカリが浸透し得る基部と、酸またはアルカリに対して変色する物質とを含む。検知層24は、基部の材料と物質とを混合して成形すること、物質を溶剤に溶解後し基部に担持すること、または、基部に物質を含む塗布液を塗布すること等により得られる。
【0027】
一実施形態において、基部は、特に限定されるものでなく、基材21と同様に、天然繊維、有機合成繊維、ガラス繊維または炭素繊維を含む織布または不織布とすることができる。また、基部は、酸またはアルカリに対して変色する物質の変色の判断容易性のため、透明、半透明、または白色とすることができる。
【0028】
酸またはアルカリに対して変色する物質は、積層体10が設置される対象40中の酸またはアルカリ50に応じて選択すればよく、特に限定されるものでない。一実施形態において、酸またはアルカリに対して変色する物質は、pH指示薬とすることができる。例えば、pH指示薬は、フェノールフタレイン、メチルレッド、メチルオレンジ、チモールブルー、ブロムチモールブルー、メチルイエロー、または、リトマス等とすることができる。また、検知する酸またはアルカリは特に限定されるものでなく、無機および有機の酸またはアルカリであり、単一の化合物に限らず、混合物等を含み得る。
【0029】
検知層24は、一実施形態において10μm以上、別の実施形態において20μm以上、さらに別の実施形態において30μm以上、さらに別の実施形態において50μm以上である。これにより、検知層24は酸またはアルカリに対する変色を確認し易い。検知層24は、一実施形態において150μm以下、別の実施形態において120μm以下、さらに別の実施形態において100μm以下、さらに別の実施形態において70μm以下である。これにより、コストが低減され得る。
【0030】
図3は、本実施形態に係る表皮材層20の酸またはアルカリの検知を説明する図である。図3(a)は、表皮材層20の平面図であるが、積層構造を理解しやすくするために、構成する各層が斜めに階段状に切断されている。図3(b)は図3(a)に示すX-X断面の断面図である。
【0031】
一実施形態において、対象40の酸またはアルカリ50は、対象40の損傷により、断熱材層30を介して、基材21に移動する。基材21に移動した酸またはアルカリ50は、検知層24に移動する。検知層24において、酸またはアルカリに対して変色する物質(例えば、pH指示薬)は、移動してきた酸またはアルカリ50と反応し、酸またはアルカリを含む変色した領域60a、60bを形成する。第1層22は、間隙25を有し、間隙25に対応する位置に形成された領域60aは、外方から確認できる。なお、第2層23は、透明、または半透明とすることができ、表皮材層20が第2層23を有していても、酸またはアルカリを含む変色した領域60aを確認できる。
【0032】
一方、第1層22に覆われた内方(間隙でない部分)に形成された酸またはアルカリを含む変色した領域60bの外方からの確認は困難である。なお、図3(a)では、表皮材層20の積層構造を理解しやすくするために、構成する各層が斜めに階段状に切断されているため、領域60bが確認できるかのように描かれているが、領域60bの外方からの確認は困難である。
【0033】
以下、別の実施形態に係る表皮材層について説明するが、本実施形態に係る表皮材層20と異なる部分を説明し、同一の部分の説明を省略する。
【0034】
<別の実施形態に係る表皮材層>
図4は、別の実施形態に係る表皮材層20を示す。図4(a)は、表皮材層20の平面図であるが、積層構造を理解しやすくするために、構成する各層が斜めに階段状に切断されている。図4(b)は図4(a)に示すX-X断面の断面図である。
【0035】
別の実施形態に係る表皮材層20は、検知層24が間隙25と同等の幅(同等の大きさ、または同様の形状)で形成されている。一実施形態において、検知層24が間隙25と同じ幅(同じ大きさ、または同じ形状)で形成されることができ、または、検知層24が間隙25より10%大きい幅で形成されることができる。
【0036】
一実施形態において、第1層22は、例えば、アルミニウム箔のような金属箔、または金属合金箔で形成されており、第1層22に覆われた内方の検知層24に、酸またはアルカリ50によって変色した領域60が形成されても、外方から領域の確認は困難である。そのため、外方から酸またはアルカリ50によって変色した領域60を確認し易い位置、すなわち、間隙25に対応する部分に検知層24を形成することで、検知層24の量を減少させることができ、コストが低減される。
【0037】
<別の実施形態に係る表皮材層>
図5および図6は、別の実施形態に係る表皮材層20を示す。図5(a)および図6(a)は、表皮材層20の平面図であるが、積層構造を理解しやすくするために、構成する各層が斜めに階段状に切断されている。図5(b)および図6(b)は、それぞれ図5(a)および図6(a)に示すX-X断面の断面図である。
【0038】
別の実施形態に係る表皮材層20では、第1層22が間隙25に代わって開口26を有している。開口26に対応する位置に、酸またはアルカリ50によって変色した領域60が形成された場合、外方から領域を確認することができる。間隙25に代わって開口26とすることで、第1層22の強度が維持され得、保護層としての機能が向上する。
【0039】
また、図6に示すように、開口26を複数設け、全体として略線状に配置させることもできる。また、図4に示す実施形態に係る表皮材層20のように、検知層24を開口26と同等の幅(同等の大きさ、または同様の形状)で形成することができる。
【0040】
図5および図6では、開口26が略円状であるが、開口26は、楕円状、多角形状(三角形、四角形、五角形等)、プラス状(十字状)、数字、および文字(漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット等)の少なくとも1つとすることができ、さらに円状、楕円状、多角形状、プラス状等を数字や文字で形作ること等の複雑な形状もできる。
【0041】
<別の実施形態に係る表皮材層>
図7は、別の実施形態に係る表皮材層20を示す。図7(a)は、表皮材層20の平面図であるが、積層構造を理解しやすくするために、構成する各層が斜めに階段状に切断されている。図7(b)は図7(a)に示すX-X断面の断面図である。
【0042】
別の実施形態に係る表皮材層20は、基材と検知層とを別体とせず、両者を一体としたもので、基材が酸またはアルカリによって変色する物質を含有するものである。これにより、コストが低減される。
【0043】
一実施形態において、変色物質含有基材27は、基材の材料と変色物質とを混合して形成すること、基材の材料に変色物質を担持すること、または、基材の材料に変色物質を含む塗布液を塗布すること等により得られる。また、基材の材料は、変色物質の変色の判定を容易にするために、透明、半透明、または白色であるものを選択することができる。
【0044】
<別の実施形態に係る表皮材層>
図8は、別の実施形態に係る表皮材層20を示す。図8(a)は、表皮材層20の平面図であるが、積層構造を理解しやすくするために、構成する各層が斜めに階段状に切断されている。図8(b)は図8(a)に示すX-X断面の断面図である。
【0045】
別の実施形態に係る表皮材層20は、第1層22と検知層24の積層の順を変更したもので、外方に、基材21、第1層22、検知層24、および第2層23の順で積層されている。酸またはアルカリは、間隙25を経由して検知層24に移動し得る。この検知層24の変色した領域は確認され易いものである。
【0046】
<断熱材層>
ここで図1に戻り、断熱材層30について説明する。本実施形態に係る断熱材層30は、長さ方向および幅方向に延びる第1主面(外方面)および第2主面(内方面)を有し、かつ厚みを有する。なお、主面とは、断熱材層のうちで表面積が最も大きい表面を示す。また、断熱材層30は、側面を有することができ、例えば、板状の形状とすることや、円筒状にとすることができる。
【0047】
本実施形態に係る断熱材層30は、繊維系断熱材、発泡プラスチック系断熱材等であり得る。一実施形態において、断熱材層30は、繊維系断熱材とすることができ、例えば、グラスウール、およびロックウール等の繊維系断熱材とすることができる。一実施形態において、グラスウールは、遠心法で製造され得、例えば、ガラス繊維の原料が、側面に小孔を多数有するスピナーに投入されて熱溶融され、スピナーを高速回転させることで、繊維状態で吹き出され、空冷され、ガラス繊維が絡み合ったグラスウールが製造され得る。
【0048】
繊維系断熱材には、バインダー樹脂が含まれていてもよい。例えば、グラスウールの繊維系断熱材のバインダー樹脂としては、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。また、ホルムアルデヒドを実質的に放出しない、天然由来の材料をバインダーとして用いてもよい。
【0049】
繊維系断熱材の総重量に対するバインダー樹脂の含有率は、一実施形態において1重量%以上、別の実施形態において3重量%以上、さらなる実施形態において5重量%以上、さらなる実施形態において7重量%以上とすることができ、また、一実施形態において20重量%以下、別の実施形態において15重量%以下、さらなる実施形態において8重量%以下とすることができる。
【0050】
繊維系断熱材の密度は、一実施形態において8kg/m以上、別の実施形態において10kg/m以上、さらなる実施形態において20kg/m以上、さらなる実施形態において30kg/m以上、さらなる実施形態において40kg/m以上とすることができ、一実施形態において100kg/m以下、別の実施形態において90kg/m以下、さらなる実施形態において80kg/m以下、さらなる実施形態において70kg/m以下、さらなる実施形態において60kg/m以下とすることができる。
【0051】
次に、本実施形態に係る積層体10を円筒状にした別の実施形態に係る積層体を説明する。なお、本実施形態に係る積層体10と同一の部分の説明を省略する。
【0052】
[別の実施形態に係る積層体]
図9は、本実施形態に係る積層体を略円筒状にした別の実施形態に係る積層体の概略図を示す。別の実施形態に係る積層体10は、表皮材層20と、断熱材層30と、含み、表皮材層20と、断熱材層30とが、略円筒状で積層されている。表皮材層20は、酸またはアルカリに対して変色する物質を含有する。
【0053】
一実施形態において、積層体10は、第1層の第1部分22aと第1層の第2部分22bの間隙25aが円筒の周方向(円筒の軸方向に略垂直)に形成されている。なお、説明の便宜上、第2層23を図示していない。また、検知層24は間隙25aから確認できるようになっている。
【0054】
一実施形態において、断熱材層30の内方の円柱状空間には、配管等が挿入され得る。配管等から酸またはアルカリが漏えいした場合、酸またはアルカリは、検知層24に移動し、検知層24の変色する物質と反応し、外方(円筒の外側)から間隙25aを介して確認され得る。これにより、配管等の円周方向のいずれの箇所から酸またはアルカリが漏えいしているのか確認することができる。また、断熱材層30に表皮材層20を接着する場合、周方向に引っ張りながら固定するが、周方向に間隙が形成されていると、間隙25aが略直線状になり、また、間隙25aの間隔が均一になり易い。
【0055】
また、隣接する間隙25aの間の間隔は、特に限定されるものでなく、円筒の積層体10の軸方向長さに応じて決めることができる。また、積層体の設置対象40において酸またはアルカリが漏えいし易い箇所(例えば継ぎ目)が判明している場合は、その箇所に対応する付近に、間隙25aを設け、または、その箇所に対応する付近の間隙25aの間隔を狭くなるように設けてもよい。
【0056】
[別の実施形態に係る積層体]
図10は、本実施形態に係る積層体を略円筒状にした別の実施形態に係る積層体の概略図を示す。別の実施形態に係る積層体10は、表皮材層20と、断熱材層30と、含み、表皮材層20と、断熱材層30とが、略円筒状で積層されている。表皮材層20は、酸またはアルカリに対して変色する物質を含有する。
【0057】
一実施形態において、積層体10は、第1層の第3部分22cと第1層の第4部分22dの間隙25bが円筒の軸方向(円筒の周方向と略垂直)に形成されている。なお、説明の便宜上、第2層23を図示していない。また、検知層24は間隙25bから確認できるようになっている。
【0058】
一実施形態において、断熱材層30の内方の略円柱状空間には、配管等が挿入され得る。配管等から酸またはアルカリが漏えいした場合、酸またはアルカリは、検知層24に移動し、検知層24の変色する物質と反応し、外方(円筒の外側)から間隙25bを介して確認され得る。これにより、配管等の軸方向のいずれの箇所から酸またはアルカリが漏えいしているのか確認することができる。
【0059】
また、隣接する間隙25bの間の間隔は、特に限定されるものでなく、円周の長さに応じて決めることができる。また、間隙25bは、円筒状の積層体10の軸方向の一部に形成されていても、全長に亘って形成されていてもよい。また、一実施形態において、鉛直下向きに酸またはアルカリは漏えいし易いので、円筒状の軸方向の隣接する間隙25bの距離を円周方向の一方で狭く(密に)、それと反対側で広くし、密に間隙25を形成した部分を設置対象40の鉛直下側となるように積層体10を設定してもよい。
【0060】
[別の実施形態に係る積層体]
図11は、本実施形態に係る積層体を略円筒状にした別の実施形態に係る積層体の概略図を示す。別の実施形態に係る積層体10は、表皮材層20と、断熱材層30と、含み、表皮材層20と、断熱材層30とが、略円筒状で積層されている。表皮材層20は、酸またはアルカリに対して変色する物質を含有する。
【0061】
一実施形態において、積層体10は、第1層の第1部分22aと第1層の第2部分22bの間隙25aが円筒の周方向(円筒の軸方向に略垂直)に形成され、第1層の第2部分22cと第1層の第3部分22dの間隙25aが円筒の軸方向(円筒の周方向と略垂直)に形成されている。すなわち、第1層22に間隙25が略格子状に形成されている。なお、説明の便宜上、第2層23を図示していない。また、検知層24は間隙25a、25bから確認できるようになっている。
【0062】
一実施形態において、格子状の配列は、正方格子状配列、矩形格子状配列、斜方格子状配列、六角格子状配列等とすることができる。これにより配管等の円周方向および軸方向のいずれの箇所から酸またはアルカリが漏えいしているのか確認できる。
【0063】
[別の実施形態に係る積層体]
図12は、本実施形態に係る積層体を略円筒状にした別の実施形態に係る積層体の概略図を示す。別の実施形態に係る積層体10は、表皮材層20と、断熱材層30と、含み、表皮材層20と、断熱材層30とが、略円筒状で積層されている。表皮材層20は、酸またはアルカリに対して変色する物質を含有する。
【0064】
一実施形態において、積層体10は、第1層の第1部分22aと第1層の第2部分22bの間に複数の開口26が円筒の周方向(円筒の軸方向に略垂直)に沿って形成されており、表皮材層20は、図5に示した別の実施形態に係る表皮材層20に相当する。なお、説明の便宜上、第2層23を図示していない。また、検知層24は開口26から確認できるようになっている。開口26は、図11に示す間隙25a、25bのように格子状に配列させることも、ランダムに配置することもできる。
【0065】
また、図10および11に示す間隙25a、25bと、図12に示す開口26を両方形成し、種々の配列を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0066】
10 積層体、20 表皮材層、21 基材、22 第1層、22a 第1層の第1部分、22b 第1層の第2部分、22c 第1層の第3部分、22d 第1層の第4部分、23 第2層、24 検知層、25、25a、25b 間隙、26 開口、27 変色物質含有基材、30断熱材層、40 対象、50酸またはアルカリ、60、60a、60b 変色した領域
図1
図2
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図4
図5
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図12