(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】乗物の再生ブレーキトルクを制御する方法とシステム
(51)【国際特許分類】
B60L 7/08 20060101AFI20230727BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20230727BHJP
B60T 8/58 20060101ALI20230727BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20230727BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230727BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20230727BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20230727BHJP
B60L 7/24 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
B60L7/08
B60T8/17 C
B60T8/58
B60T8/171 Z
B60L50/60
B60L58/12
B60L15/20 S
B60L7/24 D
(21)【出願番号】P 2019554890
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(86)【国際出願番号】 IB2018052399
(87)【国際公開番号】W WO2018185720
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】102017000038501
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501016696
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・カルボーネ
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ・カレージア
(72)【発明者】
【氏名】アレッシオ・ミオット
(72)【発明者】
【氏名】ジュリオ・カラマイ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ブッティ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・ドッシ
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-068771(JP,A)
【文献】特開2006-335171(JP,A)
【文献】特開2012-196104(JP,A)
【文献】特開2004-222395(JP,A)
【文献】特開2005-014692(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068800(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0262994(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102114783(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物(100)の再生ブレーキトルクを制御する方法(300)であって、
前記乗物(100)は、前記乗物(100)の少なくとも一つの第1の移動部材(R1)が設けられた少なくとも一つの第1の車軸と、前記乗物(100)の少なくとも一つの第2の移動部材(R2)が設けられた少なくとも一つの第2の車軸を有し、
前記乗物(100)はさらにブレーキシステム(200)を有し、
前記ブレーキシステム(200)は、
前記少なくとも一つの第1の車軸に動作上関連付けられた第1の複数のコンポーネント(201)、及び前記少なくとも一つの第2の車軸に動作上関連付けられた第2の複数のコンポーネント(202)を有し、
前記乗物(100)は、前記乗物(100)に設けられた一つ又は複数の再生ブレーキトルク作動モジュールに再生ブレーキトルクを提供するように構成された少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール(203)を有し、
前記乗物(100)はさらに、バッテリモジュール(205)、前記少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール(203)、前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(201)、前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)に動作上接続された少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)を有し、
前記方法(300)は、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記乗物(100)の減速要求を示す第1の情報を検出するステップ(301)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記乗物(100)、前記乗物(100)の前記第1の移動部材(R1)、及び前記乗物(100)の前記第2の移動部材(R2)の少なくとも一つの速度を示す第2の情報を検出するステップ(302)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記少なくとも一つの第1の車軸と動作上関連付けられた前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(202)のうちの少なくとも一つのコンポーネントの第1の温度値を求めるステップ(303)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記少なくとも一つの第2の車軸と動作上関連付けられた前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)のうちの少なくとも一つのコンポーネントの第2の温度値を求めるステップ(304)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記バッテリモジュール(205)と前記少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール(203)の状態を示す第3の情報を求めるステップ(305)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記第1の情報、前記第1の温度値、及び前記第2の温度値に基づいて、前記第1の車軸と前記第2の車軸との間の再生ブレーキ力動的分配率を求めるステップ(306)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、求められた前記再生ブレーキ力動的分配率、前記第2の情報、及び前記第3の情報に基づいて、前記第1の車軸に加えられる第1の再生ブレーキトルク値と前記第2の車軸に加えられる第2の再生ブレーキトルク値を求めるステップ(307)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュールに対して前記第1の再生ブレーキトルク値と前記第2の再生ブレーキトルク値を提供するステップ(308)、を有し、
前記第1の車軸と前記第2の車軸の間の前記再生ブレーキ力動的分配率を求めるステップ(306)は、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記乗物(100)の前記減速要求を示す前記第1の情報と前記乗物(100)の特性を示すデータに基づいて、前記第1の車軸と前記第2の車軸との間のブレーキ力固定分配率を求め、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記第1の温度値と設定された第1の温度閾値とに基づいて、前記第1の車軸の再生ブレーキ力変化を求め、
前記第2の温度値と設定された第2の温度閾値とに基づいて、前記第2の車軸の再生ブレーキ力変化を求め、
前記第1の車軸と前記第2の車軸との間の前記再生ブレーキ力動的分配率は、前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記ブレーキ力固定分配率、前記第1の車軸の前記再生ブレーキ力変化、及び前記第2の車軸の前記再生ブレーキ力変化の関数として求められる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの第1の車軸に関連付けられた前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(201)は少なくとも一つの第1の散逸ブレーキトルク作動装置(D1)を有し、
前記少なくとも一つの第2の車軸に関連付けられた前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)は少なくとも一つの第2の散逸ブレーキトルク作動装置(D2)を有し
前記方法はさらに、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記第1の情報と前記第2の情報をもとに、求められた前記再生ブレーキ力動的分配率に基づいて、前記第1の車軸に加えられる第1の散逸ブレーキトルク値と前記第2の車軸に加えられる第2の散逸ブレーキトルク値を求めるステップ(309)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記第1の散逸ブレーキトルク値を前記少なくとも一つの第1の散逸ブレーキ
トルク作動装置に提供するとともに前記第2の散逸ブレーキトルク値を前記少なくとも一つの第2の散逸ブレーキ
トルク作動装置に提供するステップ(310)と、を有する請求項1の方法。
【請求項3】
前記乗物(100)はさらに損失抵抗モジュール(207)を有し、
前記方法(300)はさらに、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記第3の情報、前記第1の散逸ブレーキトルク値、前記第2の散逸ブレーキトルク値に基づいて、損失電力値を求めるステップ(311)と、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記損失電力値を前記損失抵抗モジュール(207)に提供する、請求項2の方法。
【請求項4】
前記第1の温度値を求めるステップ(303)は、前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)に動作上接続され、前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(201)に設けられた複数のセンサを用いて行われる、請求項1~3のいずれかの方法。
【請求項5】
前記第1の温度値を求めるステップ(303)は、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記第1の温度値を推定するサブステップを有し、
前記推定するサブステップは、
前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(201)のうちの一つのコンポーネントによって発揮される力の測定と、
前記乗物(100)、前記乗物(100)の前記第1の移動部材(R1)、及び前記乗物(100)の前記第2の移動部材(R2)の少なくとも一つの速度を示す第2の情報に基づいて得られる、請求項1~3のいずれかの方法。
【請求項6】
前記第2の温度値を求めるステップ(304)は、前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)に動作上接続され、前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)に設けられた複数のセンサを用いて行われる、請求項1~5のいずれかの方法。
【請求項7】
前記第2の温度値を求めるステップ(304)は、前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)によって、前記第2の温度値を評価するステップを有し、
前記第2の温度値を評価するステップは、前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)のうちの一つのコンポーネントによって発揮される力の測定値と、前記乗物(100)、前記乗物(100)の前記第1の移動部材(R1)、前記乗物(100)の前記第2の移動部材(R2)の少なくとも一つの速度を示す前記第2の情報に基づいて得られる、請求項1~5のいずれかの方法。
【請求項8】
乗物(100)の再生ブレーキトルクを制御するシステム(100,200)であって、前記システムは、
前記乗物(100)の少なくとも一つの第1の移動部材(R1)が設けられた少なくとも一つの第1の車軸、及び前記乗物(100)の少なくとも一つの第2の移動部材(R2)が設けられた少なくとも一つの第2の車軸と、
前記少なくとも一つの第1の車軸に動作上関連付けられた第1の複数のコンポーネント(201)と、前記少なくとも一つの第2の車軸に動作上関連付けられた第2の複数のコンポーネント(202)とを有するブレーキシステム(200)と、
前記乗物(100)に設けられた一つ又は複数の再生ブレーキトルク作動モジュールに前記再生ブレーキトルクを提供するように構成された少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール(203)と、
バッテリモジュール(205)と、
前記少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール(23)、前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(201)、前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)に動作上接続された少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)とを有し、
前記少なくとも一つのデータ処理ユニット(204)は、請求項1~7のいずれかに係る方法のステップを実行するように構成されているシステム。
【請求項9】
前記少なくとも一つの第1の車軸に関連付けられた前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(201)は、少なくとも一つの第1の散逸ブレーキトルク作動装置(D1)を有し、
前記少なくとも一つの第2の車軸に関連付けられた前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)は、少なくとも一つの第2の散逸ブレーキトルク作動装置(D2)を有する、請求項8のシステム。
【請求項10】
損失抵抗モジュール(207)を有する、請求項8又は9のシステム(100)。
【請求項11】
前記ブレーキシステム(200)の前記第1の複数のコンポーネント(201)は、前記少なくとも一つの第1の移動部材(R1)が設けられた前記少なくとも第1の車軸に動作上接続された第1の再生ブレーキトルク作動モジュール(M1)を有し、
前記ブレーキシステム(200)の前記第2の複数のコンポーネント(202)は、前記少なくとも一つの第2の移動部材(R2)が設けられた前記少なくとも第2の車軸に動作上接続された第2の再生ブレーキトルク作動モジュール(M2)を有する、請求項8~10のいずれかのシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物の再生ブレーキトルクを制御する方法とシステムに関する。
【0002】
本発明はまた、電気式の乗物又はハイブリッド式の乗物のトラクション(牽引力)と再生ブレーキを制御する技術に関する。本発明は特に、乗物の再生ブレーキトルクを制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気式の乗物又はハイブリッド式の乗物が知られている。この乗物には、乗物の個々の車軸(一般には一つ又は複数の車輪が設けられる)にかかるトラクションと再生ブレーキトルクを個々に制御できるように構成されたブレーキシステムアーキテクチャが備えられている。
【0004】
また、電気式の乗物又はハイブリッド式の乗物には電気エネルギバッテリが備えられている。バッテリは、電気エネルギの蓄積部である。電気エネルギは、個々の車軸にかかるトラクションと再生ブレーキトルクの機能を達成するために、ブレーキシステムのアーキテクチャによって利用される。
【0005】
乗物自体の状態を示す情報に従って乗物及び/又はその利用の動的状態を示す物理法則に基づいて、バッテリから利用可能な再生電気エネルギを乗物の車軸に一定の割合で分配する、上述の電気式の乗物又はハイブリッド式の乗物におけるブレーキ力を制御することが知られている。
【0006】
一般に、このような情報は、ドライバ又は(もしあれば)自動ガイドシステムによる減速又はブレーキングに対する要求、乗物の質量、乗物の中心位置に対する該乗物の重量分布、乗物のそれぞれの車輪のローリング半径である。
【0007】
乗物の車軸に再生電気パワーを一定の割合で分配する技術は、要求されていない車軸にも電気が分配され、その結果、例えば、特定の車軸に設けられた車輪にブレーキをかけるように構成されたキャリパとディスクブレーキとの間に、必要でもないのに過剰な締め付け力を加えることになる、という問題がある。
【0008】
ブレーキシステムに集中的介入(繰り返し加速と減速が繰り返されること)が起こる乗物(例えば、スポーツイベント乗物)の場合、このような非効率な事態が頻繁に発生する。
【0009】
いずれの場合であっても、ブレーキシステムが過大な疲労を受けると最大の性能について保障すべき信頼性が得られず、摩耗が増加し、ブレーキシステムの部品の動作寿命が飛躍的に低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来の技術に関連した上述の問題を少なくとも部分的に解消し、特に出来るだけブレーキシステムに一定の効率を保証し、最大性能を保証しつつ過度に疲労した状態を無くし、ブレーキシステムのコンポーネントの摩耗を減少するとともにその動作寿命を延ばすことができる、乗物の再生ブレーキトルクを制御する方法を考案し利用できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に係る方法によって達成される。
【0012】
本発明の目的はまた、乗物の再生ブレーキトルクを制御する関連システムである。
【0013】
本発明に係る方法とそれに関連するシステムの特徴と利点は、添付図面を参照する、非限定的で且つ単なる実施例である本発明の好適な実施形態に関する以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における、乗物の再生ブレーキトルクを制御するシステムのブロック図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の別の実施形態に係る乗物の再生ブレーキトルクを制御するシステムのブロック図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の別の実施形態に係る乗物のトラクション及びブレーキトルクを制御する方法を示すブロック図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の方法に係る、乗物の2つの車軸の間で再生ブレーキ力の分配例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の方法に係る、乗物の2つの車軸間で再生ブレーキ力の分配例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の種々の実施形態に係る乗物の再生ブレーキトルクを制御するシステムを説明する。
【0016】
以下、乗物の再生ブレーキトルクを制御するシステムは、制御システム又は単にシステムとして、本発明では示されている。
【0017】
図面において、等価な要素又は同等の要素は同じ番号で示されている。
【0018】
説明の目的上、システムは、再生ブレーキトルクの制御が行われる乗物自体である。
【0019】
以下、システム又は乗物を区別することなく説明する。
【0020】
乗物は、全体が符号100で示されており、例えば4輪の乗物である。
【0021】
しかし、そのような乗物はまた、2輪又は3輪の自動車又は4輪の自動車である。
【0022】
図1,2の実施形態を参照すると、乗物100は、少なくとも一つの第1の車軸(図示せず)を有し、該第1の車軸には乗物100の少なくとも一つの第1の移動部材R1が設けられている。
【0023】
図1,2の実施形態において、少なくとも一つの第1の車軸は乗物100の前部車軸である。乗物100の第1の移動部材R1は前部右側の車輪又は前部左側の車輪で、これは共に符R1で示される。
【0024】
乗物100はまた、少なくとも一つの第2の車軸(図示せず)を有する。第2の車軸には、乗物100の少なくとも第2の移動部材R1が設けられている。
【0025】
図1,2の実施形態では、少なくとも一つの第2の車軸は、乗物100の後部車軸である。乗物100の第2の移動部材R2は、後部右側の車輪又は後部左側の車輪で、これは共に符号R2で示される。
【0026】
図1,2の実施形態を参照すると、乗物100はさらにブレーキシステム200を有する。
【0027】
ブレーキシステム200は、第1の複数のコンポーネント201を有する。第1の複数のコンポーネント201は、上述の少なくとも一つの第1の車軸に動作が関連付けられている。前記少なくとも一つの第1の車軸に、乗物100の少なくとも第1の移動部材R1が設けられている。
【0028】
また、ブレーキシステム200は、第2の複数のコンポーネント202を有する。第2の複数のコンポーネント202は、少なくとも一つの第2の車軸に動作が関連付けられている。前記少なくとも一つの第2の車軸に、乗物100の前記少なくとも一つの第2の移動部材R2が設けられている。
【0029】
さらに詳細に説明すると、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201は第1のブレーキディスクを有する。第1のブレーキディスクには、第1の車軸に設けられ少なくとも一つの移動部材R1(例えば、前部右側車輪)と、第1のブレーキディスクに散逸(摩擦損失)ブレーキトルクを発揮するように動作する第1のブレーキキャリパが設けられている。
【0030】
本説明の目的上、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201はまた、ブレーキシステム200の中を循環するブレーキ液を有する。
【0031】
図1,2に示す実施例において、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201はまた第1のブレーキディスクを有する。さらなる第1のブレーキディスクには、少なくとも一つの第1の車軸に設けられた別の第1の移動部材R1(例えば、前部左側車輪)と、別の第1のブレーキディスクに散逸ブレーキトルクを発揮するように動作する別の第1のブレーキキャリパが設けられる。
【0032】
同様に、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は第2のブレーキディスクを有する。第2のブレーキディスクには、第2の車軸設けられた少なくとも一つの第2の移動部材R2(例えば、後部右側車輪)と、第2のブレーキディスクに散逸ブレーキトルクを発揮するように動作する第2のブレーキキャリパが設けられる。
【0033】
本説明の目的上、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202はまた、ブレーキシステム200の中を循環するブレーキ液を有する。
【0034】
図1,2の実施例において、ブレーキシステム202の第2の複数のコンポーネント202はさらに第2のブレーキディスクを有する。第2のブレーキディスクには、少なくとも第2の車軸に設けられた別の第2の移動部材R2(例えば、後部左側車輪)と、別の第2のブレーキディスクに散逸ブレーキトルクを発揮するように動作する別の第2のブレーキキャリパが設けられる。
【0035】
再び
図1,2を参照すると、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント202はさらに、第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1を有する。
【0036】
第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1(例えば、電気機械式又は電子式の流体アクチュエータ)は、第1のブレーキキャリパによって乗物100の第1の移動部材R1に設けられた第1のブレーキディスクに、散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を発揮するように構成されている。
【0037】
同様に、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202はさらに、第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2を有する。
【0038】
第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2(例えば、電気機械式又は電気流体式のアクチュエータ)は、第2ブレーキキャリパによって、第2の移動部材R2に設けられた、第2のブレーキディスク上に散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を作用させるように構成されている。
【0039】
図1に示す一つの実施形態によれば、第1の複数のコンポーネント201はまた、別の第1の散逸ブレーキトルク作動装置(符号D1で示す。)を有する。
【0040】
該別の第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1(例えば、電気機械式又は電気流体式のアクチュエータである。)は、別の第1のブレーキキャリパによって、乗物100の別の第1の移動部材R1に設けられた、別の第1のブレーキディスクに散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を発揮するように構成されている。
【0041】
この実施形態(
図1)では、第2の複数のコンポーネント202がまた、別の第2の散逸ブレーキトルク作動装置(再び符号D2で示す。)を有する。
【0042】
該別の第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2(例えば、電気機械式又は電気流体式のアクチュエータである。)は、別の第2のブレーキキャリパによって、乗物100の別の第2の移動部材R2に設けられた、別の第2のブレーキディスクに散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を発揮するように構成されている。
【0043】
図1の実施形態はブレーキシステム200を示す。ブレーキシステム200は、乗物100の各移動部材(車輪)に割り当てられた
ブレーキ・バイ・ワイヤ型(BbW)の散逸ブレーキトルク作動装置を備えている。
【0044】
図2に示す別の実施形態によれば、代わりに、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201は、第1の車軸と動作上関連する第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1を有するだけである。
【0045】
第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1(例えば、電気機械式又は電気流体式のアクチュエータ)は、第1のブレーキキャリパによって、乗物100の第1の移動部材R1に設けられた、第1のブレーキディスクに散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を作用させるように構成されている。
【0046】
また、第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1は、別の第1のブレーキキャリパによって、乗物100の別の第1の移動部材R1に設けられた、別の第1のブレーキディスクに散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を発揮するように構成されている。
【0047】
該別の実施形態(
図2)において、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は、第1の車軸と動作上関連する第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2を有するだけである。
【0048】
第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2(例えば、電気機械式又は電気流体式のアクチュエータ)は、第1のブレーキキャリパによって、乗物100の第2の移動部材R2に設けられた、第2のブレーキディスクに散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を作用させるように構成されている。
【0049】
また、第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2は、別の第2のブレーキキャリパによって、乗物100の別の第2の移動部材R2に設けられた、別の第2のブレーキディスクに散逸ブレーキトルク(ブレーキ・バイ・ワイヤ型BbW)を発揮するように構成されている。
【0050】
図2の実施形態はブレーキシステム200を示す。ブレーキシステム200は、乗物100の各車軸に割り当てられた
ブレーキ・バイ・ワイヤ型(BbW)の散逸ブレーキトルク作動装置D1,D2を備えている。
【0051】
別の実施形態(図示せず)によれば、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201の第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1は、前記ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202の第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2に一致する。
【0052】
換言すれば、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201とブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は、集中された散逸ブレーキトルク作動装置(ブレーキ・バイ・ワイヤ型)として機能する第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1を有する。
【0053】
詳細に説明すると、第1の散逸ブレーキトル作動装置(例えば、電気機械式又は電子流体式のアクチュエータ)は、散逸ブレーキトルクを
第1のブレーキキャリパによって、乗物100(前右車輪)の第1の移動部材R1に設けられた第1のブレーキディスクに、
また、別の第1のブレーキキャリパによって、乗物100(前左車輪)の別の第1の移動部材R1に設けられた別の第1のブレーキディスクに、
さらに、第2のブレーキキャリパによって、乗物100(後右車輪)の第2の移動部材R2に設けられた第2のブレーキディスクに、
そして、別の第2のブレーキキャリパによって、乗物100(後左車輪)の別の第2の移動部材R2に設けられた別の第2のブレーキディスクに、発揮するように構成されている。
【0054】
図1,2の実施形態に戻ると、一般に、乗物100はさらに、少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203を有する。該モジュール203は、再生ブレーキトルクを、乗物100に設けられた一つ又は複数の再生ブレーキトルク作動モジュール(以下に説明する)に提供するように構成されている。
【0055】
また、乗物100は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204を有する。該ユニット204は、動作上、上述の少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201、及びブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202に接続されている。
【0056】
該少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204から、ブレーキシステム200に設けられたそれぞれの再生ブレーキトルク作動モジュールに提供されるべき再生ブレーキトルクに対する一つ又は複数の要求を受けるように構成されている。
【0057】
この点に関して、一つの実施形態(
図1,2に示された実施形態)では、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201が、少なくとも一つの第1の移動部材R1が設けられた少なくとも一つの第1の車軸に動作上接続された第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM1を有する。
【0058】
この実施形態によれば、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は、少なくとも一つの第2の移動部材R2が設けられた少なくとも一つの第2の車軸に動作上接続された少なくとも一つの第2の再生ブレーキトルク作動モジュールM2を有する。
【0059】
さらに詳細に説明すると、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201は、
図1に示されるように、乗物の2つ又はそれ以上の移動部材(車輪)が少なくとも第1の車軸に設けられている場合、少なくとも一つの第1の車軸に動作上接続された第1のデファレンシャルモジュールDF1を有する。
【0060】
第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM2は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって要求された再生ブレーキトルクを、第1のデファレンシャルモジュールDF1によって、乗物100の第1の移動部材R1(前右車輪)と乗物100の別の第1の移動部材R1(前左車輪)に送るように構成されている。
【0061】
第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM1は、例えば電気モータである。一方、第1のデファレンシャルDF1は、例えばデファレンシャル装置である。これらの電気モータとデファレンシャル装置は共に、少なくとも一つの第1の車軸に設けられている。
【0062】
この実施形態(
図1)において、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は、
図1に示されているように、乗物の2つ又はそれ以上の移動部材(車輪)が少なくとも第2の車軸に設けられている場合、少なくとも一つの第2の車軸に動作上連結されている。
【0063】
第2の再生ブレーキトルク作動モジュールM2は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204で要求された再生ブレーキトルクを、第2のデファレンシャルモジュールDF2によって、乗物100の第2の移動部材R2(後右車輪)と別の第2の移動部材R2(後左車輪)に送るように構成されている。
【0064】
第2の再生ブレーキトルク作動モジュールM2は、例えば電気モータである。一方、第2のデファレンシャルモジュールDF2はデファレンシャル装置である。これら電気モータとデファレンシャル装置は共に、少なくとも一つの第1の車軸に設けられている。
【0065】
図1,2の実施形態における構造において、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201とブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は、それぞれが乗物の一つの車軸に分配された再生ブレーキトルク作動モジュールを有する。
【0066】
別の実施形態(図示せず)によれば、第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM1は、乗物100(インホイールモータ式構造)の第1の移動部材R1、又は乗物100(インハブモータ式構造)の第1の移動部材R1(前右車輪)が設けられた第1の車軸シャフトに、設けられている。
【0067】
これらの実施形態において、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201はさらに、別の第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM1を有する。該モジュールは、乗物100(インホイールモータ式構造)の別の第1の移動部材R1に設けてもよいし、乗物100(インハブモータ構造)の別の第1の移動部材R1に設けられる別の第1の車軸シャフト(例えば、前左のもの)に設けてもよい。
【0068】
また、これらの実施形態において、第2の再生ブレーキトルク作動モジュールM2は、乗物100(インホイールモータ式構造)の第2の移動部材R2、または乗物100(インハブモータ構造)の第2の移動部材R1が設けられる第2の車軸シャフト(例えば、後右のもの)に設けてもよい。
【0069】
これらの実施形態において、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202はさらに、別の第2の再生ブレーキトルク作動モジュールM2を有する。該モジュールは、乗物100(インホイールモータ式構造)の別の第2の移動部材R2に設けてもよいし、乗物100(インハブモータ構造)の別の第2の移動部材R2に設けられる別の第2の車軸シャフト(例えば、前左のもの)に設けてもよい。
【0070】
以上に説明した実施形態によれば、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201とブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202はそれぞれ、再生ブレーキトルク作動モジュールを有する。各モジュールは、乗物100(ホイールモータ式構造の中)のそれぞれの移動部材(車輪)に直接分配されるか、乗物100(インハブモータ構造)のそれぞれの車軸に直接分配される。
【0071】
上述の実施形態に代わる別の実施形態(図示せず)によれば、ブレーキシステム200における第1の複数のコンポーネント201(例えば電気モータ)の第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM1は、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202の第2の再生ブレーキトルク作動モジュールM2(例えば電気モータ)に一致する。
【0072】
この実施形態において、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201は、乗物の2つ又はそれ以上の移動部材(車輪)が少なくとも一つの第1の車軸に設けられている場合、少なくとも一つの第1の車軸に動作上連結されている。
【0073】
この実施形態において、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は、乗物の2つ又はそれ以上の移動部材(車輪)が少なくとも一つの第1の車軸に設けられている場合少なくとも一つの第2の車軸に動作上連結された第2のデファレンシャルモジュールDF2(例えば、デファレンシャル装置)を有する。
【0074】
この実施形態において、第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM1は、第1のデファレンシャルモジュールDF1によって、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、要求された再生ブレーキトルクを乗物100の第1の移動部材R1(前右車輪)と乗物100の別の第1の移動部材R1(前左車輪)に伝えるように構成されている。
【0075】
また、第1の再生ブレーキトルク作動モジュールM1は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204で要求された再生ブレーキトルクを、第2のデファレンシャルモジュールDF2によって、乗物100の第2の移動部材R2(後右車輪)と乗物100の別の第2の移動部材R2(後左車輪)に伝えるように構成されている。
【0076】
換言すれば、この実施形態では、再生ブレーキトルク作動モジュール(電気モータ)は、集中されている。
【0077】
別の実施形態(図示せず)において、ブレーキシステム200はさらに、損失(機械式)ブレーキトルクを、乗物100の第1の移動部材R1と(存在する場合は)別の第1の移動部材R1に提供し、また、第2の移動部材R2と(存在する場合は)別の第2の移動部材R2に提供するように、構成されている。
【0078】
特に、この実施形態では、集中された再生ブレーキトルク作動モジュールと内燃エンジンは、ブレーキトルク(再生ブレーキトルク又は散逸ブレーキトルク)を第1のデファレンシャルモジュールDF1に伝えるように構成された第1の電子機械式又は電子流体式の装置によって、ブレーキトルク(再生ブレーキトルク又は散逸ブレーキトルク)を乗物100の第1の移動部材R1と(存在する場合には)別の第1の移動部材R1に提供し、ブレーキトルク(再生ブレーキトルク又は散逸ブレーキトルク)を第2のデファレンシャルモジュールDF2に伝えるように構成された第2の電子機械式又は電子流体式の装置によって、ブレーキトルク(再生ブレーキトルク又は散逸ブレーキトルク)を乗物100の第2の移動部材R2と(存在する場合には)別の第2の移動部材R2に提供するように構成されている。
【0079】
図1,2の実施形態に戻ると、乗物100はさらに、少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203に動作上接続されたバッテリモジュール205を有する。
【0080】
バッテリモジュール205は、電気バッテリと、電気バッテリに動作上接続されて電気バッテリを管理するように構成された制御ユニットを有する。
【0081】
電気バッテリとそれぞれの制御ユニットは、図面には示していない。
【0082】
その他の実施形態(図示せず)によれば、バッテリモジュール205は、バッテリモジュール205の制御ユニットに動作上接続された別の電気エネルギ貯蔵モジュールを備えてもよい。
【0083】
図1,2の実施形態を参照すると、乗物100はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に動作上接続された、乗物100の減速要求のためのモジュール206を有する。
【0084】
乗物100の減速要求のためのモジュール206は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に、乗物100の減速要求を提供するように構成されている。
【0085】
一つの実施形態において、乗物100の減速要求のためのモジュール206は、例えば、乗物のドライバによって動作されて乗物100の減速要求を手動で提供する電気式及び/又は機械式の装置(例えばブレーキペダルと加速ペダルの少なくともいずれか一方)である。
【0086】
上述の実施形態に代わる別の実施形態によれば、乗物100の減速要求のためのモジュール206は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に乗物100の減速要求を自動的に提供するように構成された乗物100の電子式自動運転システムの一部を形成する電子ユニットである。
【0087】
図1,2の実施形態に戻ると、乗物100はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に動作上接続された損失抵抗モジュール207を有する。
【0088】
損失抵抗モジュール207は、バッテリモジュール205の内側に割り当てられていない所定量の再生パワーを損失するように構成されている。
【0089】
再び
図1,2の実施形態によれば、乗物100はさらに、乗物100、乗物100の第1の移動部材R1、乗物100の第2の移動部材R2の少なくとも一つの速度検出モジュール208を有する。
【0090】
速度検出モジュール208は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に動作上接続されている。
【0091】
図2に示す一つの実施形態において、乗物100はさらに、乗物100(例えば、乗物100のシャーシ)に配置された複数のセンサ209を有する。これらのセンサは、速度検出モジュールに動作上接続されている。
【0092】
複数のセンサ209は、乗物100の挙動を表す情報を速度検出モジュール208に提供する。これらの情報に基づいて、乗物100、乗物100の第1の移動部材R1、又は乗物100の第2の移動部材R2の速度が求められる。
【0093】
複数のセンサ209はまた、図示されていないが、
図1の実施形態と組み合わされて提供され得る。
【0094】
図1,2に表された本発明のさらに一般的な実施形態を参照すると、乗物100はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に動作上接続された、ブレーキシステム200のパラメータを推定するモジュール210を有する。
【0095】
そのようなパラメータの例としては、摩耗と温度である。
【0096】
図1、2に表された実施形態を再び参照すると、少なくとも一つのデータ処理ユニット204は、乗物の代表的ブレーキトルクを制御する方法(後述する)を実行するように構成されている。
【0097】
さらに詳細に説明すると、
図1の実施形態を参照すると、少なくとも一つのデータ処理ユニット204は一つである。したがって、該ユニットは中央データ処理ユニットである。
【0098】
図2に示す別の実施形態によれば、乗物100はさらに、乗物100の少なくとも一つの第1の移動部材R1が設けられた少なくとも一つの第1の車軸に動作上接続された第1の二次データ処理ユニット211と、乗物の少なくとも第2の移動部材R2が設けられた少なくとも一つの第2の車軸に動作上接続された第2の二次データ処理ユニット212を有する。
【0099】
さらに詳細に説明すると、第1の二次データ処理ユニット211は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204と少なくとも一つの第1の車軸との間に動作上入れられている。
【0100】
少なくとも一つのデータ処理ユニット204は、第1の二次データ処理ユニット211に制御を提供する。これにより、第1の二次データ処理ユニットは、第1の車軸に動作上関連付けられたブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201を制御する。
【0101】
同様に、第2の二次データ処理ユニット212は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204と少なくとも一つの第2の車軸との間に動作上入れられている。
【0102】
少なくとも一つのデータ処理ユニット204は、第2の二次データ処理ユニット212に制御を提供する。これにより、第2の二次データ処理ユニットは、第2の車軸に動作上関連付けられたブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202を制御する。
【0103】
図2の実施形態において、少なくとも一つのデータ処理ユニット204は、中央データ処理ユニットである。
【0104】
上述の実施形態に代わる別の実施形態(図示せず)によれば、少なくとも一つのデータ処理ユニット204は、乗物100の少なくとも第1の移動部材R1が設けられた少なくとも一つの第1の車軸に動作上接続された第1のデータ処理ユニットを有する。
【0105】
また、少なくとも第1のデータ処理ユニット204は、乗物100の少なくとも一つの第2の移動部材R2が設けられた少なくとも一つの第2の車軸に動作上接続された第2のデータ処理ユニットを有する。
【0106】
少なくとも一つのデータ処理ユニット204に設けられた第1のデータ処理ユニットと第2のデータ処理ユニットは共に、少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203、損失抵抗モジュール207、乗物100の減速要求用のモジュール206、速度検出モジュール208、ブレーキシステム200のパラメータを推定するモジュール210と動作上接続されている。
【0107】
少なくとも一つのデータ処理ユニット204に設けられた第1のデータ処理ユニットは、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって行われた方法と同じように、乗物100の少なくとも一つの第1の移動部材R1が設けられた第1の車軸だけに対して、再生ブレーキトルクを制御する方法を実行するように構成されている。
【0108】
代わって、少なくとも一つのデータ処理ユニット204を有する第2のデータ処理ユニットは、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって行われた方法と同じように、乗物100の少なくとも一つの第2の移動部材R2が設けられた第2の車軸だけに対して、再生ブレーキトルクを制御する方法を実行するように構成されている。
【0109】
図3を参照すると、乗物100の再生ブレーキトルクを制御する方法300(以下、制御方法又は単に方法という。)を説明する。
【0110】
上述のように、
図12とその他の実施形態を参照すると、そのような乗物100は、乗物100の少なくとも一つの第1の移動部材R1が設けられた少なくとも一つの第1の車軸と、乗物100の少なくとも一つの第2の移動部材R2が設けられた少なくとも一つの第2の車軸を有する。
【0111】
乗物100はさらにブレーキシステム200を有する。該ブレーキシステムは、少なくとも一つの第1の車軸に動作上関連付けられた第1の複数のコンポーネント201と、少なくとも第2の車軸に動作上関連付けられた第2の複数のコンポーネント202を有する。
【0112】
乗物100は、乗物100に設けられた一つ又は複数の再生ブレーキトルク作動モジュールに再生ブレーキトルクを提供するように構成された、少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203を有する。
【0113】
乗物100はさらに、バッテリモジュール205と、少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201、及びブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202に動作上接続された少なくとも一つのデータ処理ユニット204を有する。
【0114】
図3を参照すると、方法300は、開始ステップSTを有する。
【0115】
方法300はまた、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、乗物100の減速要求を表す第1の情報を検出する検出ステップ301を有する。
【0116】
一つの実施形態によれば、乗物100の減速要求を表す第1の情報は、乗物100のドライバによって動作される電気式及び/又は機械式の装置(例えば、ブレーキペダル、及び/又は加速ペダル)などの乗物100の減速要求モジュール206を介して、乗物100のドライバによって手動で提供される。
【0117】
別の実施形態によれば、上述の実施形態に代えて、乗物100の減速要求を示す第1の情報は、乗物100の減速要求モジュール206(乗物100の電子自動運転システムに属する電子ユニット)によって自動的に提供される。
【0118】
図3に戻ると、方法300はさらに、少なくともデータ処理ユニット204によって、乗物100、の乗物の第1の移動部材R1、及び乗物100の第2の移動部材R2の少なくとも一つの速度を示す第2の情報を検出するステップ302を有する。
【0119】
このような第2の情報は、乗物100に設けられた速度検出モジュール208によって提供される。
【0120】
方法300はさらに、データ処理ユニット204によって、少なくとも一つの第1の車軸と動作上関連するブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201の少なくとも一つのコンポーネントの第1の温度値を求めるステップ303を有する。
【0121】
ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201は、第1のブレーキディスク、第1のブレーキキャリパ、ブレーキ流体を有する。
【0122】
一つの実施形態において、第1の温度値を求めるステップ303は、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201に配置され、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に動作上接続された複数のセンサを用いて行われる。
【0123】
別の実施形態において、第1の温度値を求めるステップ303は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第1の温度値を推定するステップを有する。
【0124】
さらに詳細に説明すると、第1の温度値を推定するステップは、ブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201のコンポーネントによって発揮される力(例えば、第1のブレーキキャリパ及び/又はブレーキ流体の圧力によって発揮される力)の測定に基づいて、また、乗物100、乗物100の第1の移動部材R1、乗物100の第2の移動部材R2の少なくとも一つの速度を示す第2の情報に基づいて、得られる。
【0125】
図3を参照すると、方法300はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、少なくとも一つの第2の車軸に動作上関連付けられたブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202の少なくとも一つのコンポーネントの第2の温度値を求めるステップ304を有する。
【0126】
ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202は、第2のブレーキディスク、第2のブレーキキャリパ、ブレーキ流体を有する。
【0127】
一つの実施形態において、第2の温度値を求めるステップ304は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204に動作上接続された、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202に配置された複数のセンサを用いて行われる。
【0128】
別の実施形態において、第2の温度値を求めるステップ304は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第2の温度値を評価するステップを有する。
【0129】
さらに詳細に説明すると、第2の温度値を推定するステップは、ブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202の一つのコンポーネントによって発揮される力の測定に基づいて、また、乗物100、乗物100の第1の移動部材R1、乗物100の第2の移動部材R2の少なくとも一つの速度を示す第2の情報に基づいて、得られる。
【0130】
図3に戻ると、方法300はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、バッテリモジュール205と少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203の少なくとも一つの状態を示す第3の情報を求めるステップ305を有する。
【0131】
バッテリモジュール205と少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203の少なくとも一つの「状態」は、バッテリモジュール205の電気充電状態、電気モータによって伝達されるトルク、バッテリモジュール205によって又何等かの電気貯蔵システムによって分配/吸収される電力、バッテリモジュール205によって又電気貯蔵システムによって許容される最大再生電力、損失抵抗システムによって許容される最大電力等を意味する。
【0132】
図3を再び参照すると、方法300はさらに、第1の温度値の又第2の温度値の第1の情報に基づいて、第1の車軸と第2の車軸の間の再生ブレーキパワーの動的配分率を求めるステップ306を有する。
【0133】
その再生ブレーキパワーの動的配分率を求めることは、一つの実施形態に従って以下に説明する。
【0134】
図3を再び参照すると、方法300はさらに、データ処理ユニット204によって、第2の情報の又第3の情報の、再生ブレーキパワー動的配分率に基づいて、第1の車軸に加えられる第1の再生ブレーキトルク値と第2の車軸に加えられる第2の再生ブレーキトルク値を求めるステップ307を有する。
【0135】
方法300はまた、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203に対する第1の再生ブレーキトルク値と第2の再生ブレーキトルク値を提供するステップ308を有する。
【0136】
方法300は、終了EDのステップを有する。
【0137】
図1と2に示された実施形態によれば、少なくとも一つの第1の車軸に関連するブレーキシステム200の第1の複数のコンポーネント201は、少なくとも一つの第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1を有する。
【0138】
また、少なくとも一つの第2の車軸に関連付けられたブレーキシステム200の第2の複数のコンポーネント202はさらに、第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2を有する。
【0139】
図3を参照して上述した実施形態と組み合わされた
図3に点線で示された本実施形態において、方法300はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第1の情報の又第2の情報の再生ブレーキパワーの動的分配率に基づいて、第1の車軸に加えられる第1の散逸ブレーキトルク値と第2の車軸に加えられる第2の散逸ブレーキトルク値を求めるステップ309を有する。
【0140】
さらに、方法300は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第1の散逸ブレーキトルク作動装置D1に対する第1の散逸ブレーキトルク値と少なくとも一つの第2の散逸ブレーキトルク作動装置D2に対する第2の散逸ブレーキトルク値を提供するステップ310を有する。
【0141】
図1,2に示す別の実施形態によれば、上述の実施形態の一つと組み合わされて、乗物100は損失抵抗モジュール207を有する。
【0142】
図3に点線で示された実施形態において、方法300は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第1の散逸ブレーキトルク値の又第2の散逸ブレーキトルク値の第3の情報に基づいて損失電気パワー値を求めるステップ311を有する。
【0143】
方法300はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、損失抵抗モジュール207に対する損失電気パワー値を提供するステップ312を有する。
【0144】
方法300をさらに詳細に説明すると、その実施形態(図示せず)によれば、第1の車軸と第2の車軸との間の再生ブレーキパワーの動的分配率を求めるステップ306は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、乗物100の減速要求を示す第1の情報と乗物100の特性を示すデータに基づいて、第1の車軸と第2の車軸の間のブレーキパワーの一定分配率RPFを求めるステップを有する。
【0145】
乗物の特性を示すデータの例としては、乗物100の減速要求、乗物100の質量、乗物100の中心位置に対する乗物の重量分布、車輪の回転半径である。
【0146】
ブレーキトルクの一定分配率RPFは、乗物(第1の車軸)の前部ブレーキパワー(又はトルク若しくは力)と乗物(第2の車軸)の後部ブレーキパワー(又はトルク若しくは力)との間の比率で、これは乗物の動的特性を説明する機能又は物理法則によって求められる。
【0147】
一定分配率RPFは、乗物の減速要求RDVと乗物の特性DPVを示すデータの関数である。
【数1】
【0148】
ブレーキパワーの一定分配率RPFは、
図4を参照して付録1で説明する。
【0149】
図3の方法に戻ると、第1の車軸と第2の車軸の間の再生ブレーキ力の動的分配率を求めるステップ306はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第1の温度値と設定された第1の温度閾値に基づいて第1の車軸の再生ブレーキ力変化を求めるステップを有する。
【0150】
換言すれば、第1の車軸の再生ブレーキ力変化VPF1は、第1の温度値T1と設定された第1の温度閾値ST1の関数である。
【数2】
【0151】
第1の車軸と第2の車軸の間の再生ブレーキ力の動的分配率を求めるステップ306はさらに、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第2の温度値と設定された第2の温度閾値に基づいて、第2の車軸の再生ブレーキ力変化を求めるステップを有する。
【0152】
換言すれば、第2の車軸の再生ブレーキ力変化VPF2は、第2の温度値T2と設定された第2の温度閾値ST2の関数である。
【数3】
【0153】
第1の車軸と第2の車軸の間の再生ブレーキ力の動的分配率は、少なくとも一つのデータ処理ユニット204によって、第1の車軸の再生ブレーキ力変化と第2の車軸の再生ブレーキ力の変化の、第1の車軸と第2の車軸の間のブレーキ力の一定分配率の関数として求められる。
【0154】
確かに、再生ブレーキ力動的分配率RDPFは、一定分配率RPFと第1の車軸の再生ブレーキ力変化DPF1と第2の車軸の再生ブレーキ力変化VPF2の関数である。
【数4】
【0155】
少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203に提供される第1の再生ブレーキトルク値VCFR1と第2の再生ブレーキトルク値VCFR2は、求めた再生ブレーキ力動的分散率RDPFと、第2の情報(乗物100、乗物100の第1の移動部材R1、及び乗物100の第2の移動部材R2の少なくとも一つの速度)と、第3の情報(バッテリモジュール205の状態と少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203の状態)の関数である。
【数5】
【0156】
第1の車軸に加えられる第1の散逸ブレーキトルク値VCFD1と第2の車軸に加えられる第2の散逸ブレーキトルク値VCFD2は、再生ブレーキ力動的分配率RDFPによれば、第1の情報11(乗物100の減速要求)、第3の情報13(バッテリモジュール205と少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203の状態)に対するものである。
【数6】
【0157】
また、損失電気パワー値VPEDは、第3の情報(バッテリモジュール205と少なくとも一つのトラクション及び再生ブレーキ供給モジュール203の状態)と、第1の散逸ブレーキトルク値VCFD1と、第2の散逸ブレーキトルク値VCFD2の関数である。
【数7】
【0158】
再生ブレーキ力動的分散率RDPFの計算例を、
図5を参照して付録2で後に説明する。
【0159】
上述のように、本発明の目的は完全に達成される。
【0160】
まず、上述した方法とシステムにより、ブレーキシステムのコンポーネントに関連する温度(測定値又は推定値)にしたがって、再生ブレーキトルクが制御/管理できる。
【0161】
これにより、再生ブレーキトルクを制御する方法は、比例的(線形)に変化する温度に対する温度閾値(すなわち、ブレーキシステムのコンポーネントの温度が上昇する程、温度上昇に関連する乗物の車軸に対する再生ブレーキトルクの影響が大きくなること)を考慮しながら行われる。
【0162】
これにより、再生ブレーキトルクが分配され、より均一な温度が得られるとともに、温度が極度に高くなることが防止され、ブレーキ効率が良くなる。
【0163】
乗物の車軸間の再生ブレーキ力の分解を一定にする制御方法に関する本発明で提案された方法とその関連システムによれば、高いブレーキ効率が得られ、その結果、ブレーキキャリパとブレーキディスクとの間に作用する締付力が低下する。
【0164】
また、ブレーキシステムのコンポーネントの温度にしたがって再生ブレーキトルクの分配を制御することによって、例えば加速とブレーキングが繰り返されるスポーツイベント等においても、乗物のブレーキシステムの特性が駆動中は強力に維持される。
【0165】
また、ブレーキシステムのコンポーネントの温度にしたがって再生ブレーキトルクの分配を制御することによって、効率が維持されるとともに、ドライバ又は自律ドライブシステムがブレーキシステムがブレーキシステムの強い介入を必要とする一般の乗物において、ブレーキシステムに高い安全性が保障される。
【0166】
本発明に係る方法とそれに関連するシステムによれば、乗物の様々な車軸(例えば、第1の前部車軸と第2の後部車軸)においてブレーキシステムのコンポーネントの温度が出来るだけ統一されるとともに、乗物の動作中ブレーキシステムの効率が出来るだけ一定に維持され、これにより、ブレーキシステムの疲労(ブレーキシステムが疲労状態に陥ると、最高の性能が保障できない)が防止され、ブレーキの摩耗が減少し、乗物のブレーキシステムのコンポーネントの動作寿命が延びる。
【0167】
再生ブレーキトルクを制御する方法とそれに関連するシステムによれば、ブレーキシステムに流れるエネルギ量が管理され、これにより、そこに含まれるコンポーネント(ブレーキディスク、ブレーキキャリパ、ブレーキパッド、ブレーキ流体)における均一な温度分布が保障される。
【0168】
トラクションシステム、バッテリの充電状態、その他の電力貯蔵システムによって再生される電力に依存する、又は乗物の駆動中は一定である、一定の電力を分配する再生法に関して、本発明に係る方法とシステムは、上述した情報(乗物の減速要求、第1の車軸におけるブレーキシステムのコンポーネントの第1の温度値、第2の車軸におけるブレーキシステムのコンポーネントの第2の温度値、バッテリモジュールの状態等)を用いて、ブレーキシステムのコンポーネントの温度を制御して、再生ブレーキトルクを設定された比率で分配する。
【0169】
本発明に係る方法とシステムは、車輪のブロッキングとそれに起因する乗物の不安定性を避けることによって、安定したブレーキングを理論的に保障する理想の分配曲線に対して、ブレーキングのアンバランスを生じることがない。
【0170】
確かに、本発明の方法とシステムは、再生ブレーキ力を動的にバランスさせ、第1の前部車軸と第2の後部車軸の間の全体のブレーキ力(散逸ブレーキ力と再生ブレーキ力の和)の理想的な分布曲線に対して一定のバランスを保つ。
【0171】
さらに詳しく説明すると、本発明の方法とシステムにおいて、第1の前部車軸と第2の後部車軸の間の全体のブレーキ力の分布は一定である。一方、第1の前部車軸と第2の後部車軸との間の(温度とシステムの状態に従った)再生ブレーキ力の分布は変化し得る。したがって、最適なブレーキングが得られるように両者を出来るだけバランスさせて、乗物を安定に保つ。
【0172】
本発明の方法とシステムにおいて、複数の閾値を超える場合又エネルギを受けるバッテリが利用できる場合、温度測定値/推定値、摩耗、再生パワーの使用は、再生エネルギを利用するブレーキングの疲労を減らすことの恩恵を受けるためには、地面に加えられるブレーキ力に関して、バランスの取れたブレーキングを得ることが肝要である。
【0173】
したがって、本件発明の方法とシステムによって得られるブレーキング技術によれば、再生ブレーキ力に関連する部分に関してのみ、第1の前部車軸と第2の後部車軸との間で再生ブレーキ力が動的に分配されるので、地面に加える力(乗物の安定性、理想的なブレーキ力の分配関数の使用)に関してバランスの取れた状態でブレーキ力が分配される。
【0174】
これにより、地面に対するブレーキ力の理論分配曲線によって安定を得て、再生ブレーキ力の動的分配によってブレーキシステムにおける温度と摩耗を制御する、といったバランスの取れたブレーキングの恩恵を受けることができる。
【0175】
本発明の方法とシステムは、ブレーキ力を貯蔵するバッテリの限界の関連する情報が少なくとも一つのデータ処理ユニットによって検出された場合、地面に対するブレーキ力の理論分配曲線によって安定を得て、再生ブレーキ力の動的分配によってブレーキシステムにおける温度と摩耗を制御する、といったバランスの取れたブレーキングの恩恵を受けるために、過剰なエネルギの損失に対する対抗策を用いることを提供する。
【0176】
また、本発明の方法とシステムは、地面に対するブレーキ力の理論分配曲線によって安定を得て、再生ブレーキ力の動的分配によってブレーキシステムにおける温度と摩耗を制御する、といったバランスの取れたブレーキングを行うために、第1の前部車軸と第2の後部車軸との間の動的分配率と車軸間のブレーキ力の固定分配率(力の最適分配曲線)を求めるために複数の温度閾値を用いることを提供する。
【0177】
請求の範囲から逸脱することなく、上述した方法とそれに関連したシステムの実施形態に変更や改変を加えたり、偶発的必要性に対応するために機能的に同等の構成に置換してもよい。実施形態に関連して説明した特徴はそれぞれ、上述した他の実施形態とは関わりなく、達成することができる。
【0178】
付録1
ブレーキ力固定分散率RPFの計算例
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
図4は、付録1の計算例に係る乗物100の第1の前部車軸(Fbrakefront)と第2の後部車軸(Fbrakerear)との間のブレーキ力の最適分配をグラフで示す。
【0190】
付録2:
再生ブレーキ力の動的分配率RDPFの計算例を示す。
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
式(11)と(12)を式(14)から以下が得られる。
【0197】
【0198】
【0199】
式(11)、(12)、(16)、(17)(〔可変〕動的再生ブレーキ力率を求める法則)と付録1の式(9)、(10)(車軸間のブレーキ力のブレーキ力固定分配率RPFを求める法則)を用いると、以下の式が得られる。
【0200】
【0201】
【0202】
図5は、本発明に係る方法にしたがって、乗物100の第1の前部車軸(Pregenfront)と第2の後部車軸(Pregenrear)の間の利用可能な再生ブレーキ力(Pregenavaiiabie)
の分配例をグラフで示す。