(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】電極、電極の製造方法及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/443 20210101AFI20230727BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230727BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230727BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230727BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230727BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230727BHJP
H01M 10/0583 20100101ALI20230727BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230727BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20230727BHJP
【FI】
H01M50/443 M
H01M4/02 Z
H01M4/04 Z
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/04 Z
H01M10/0583
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/46
(21)【出願番号】P 2019052088
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 良太
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛正
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/021774(WO,A1)
【文献】特開平02-296840(JP,A)
【文献】特開2017-123269(JP,A)
【文献】特開2011-108516(JP,A)
【文献】特表2016-535401(JP,A)
【文献】特開2013-191485(JP,A)
【文献】特開2002-334690(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163562(WO,A1)
【文献】特開2007-224056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/403 - 46
H01M 4/02
H01M 4/13
H01M 4/04
H01M 4/139
H01M 10/04
H01M 10/0583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質層と、
前記活物質層上
の塗布層と、
を含み、
前記塗布層が、ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウム粒子
を含む
、電極。
【請求項2】
請求項1に記載の電極において、
前記塗布層が樹脂
をさらに含む電極。
【請求項3】
請求項2に記載の電極において、
前記樹脂は、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミドアミド及びポリアミドのうちの少なくとも一である、電極。
【請求項4】
ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウムを含む溶液を活物質層上に塗布する工程を含む、電極の製造方法。
【請求項5】
正極又は負極として機能可能な電極を含み、
前記電極は、
活物質層と、
前記活物質層上
の塗布層と、
を含み、
前記塗布層が、ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウム粒子
を含む、電池。
【請求項6】
請求項5に記載の電池において、
隣り合う前記正極と前記負極の間に樹脂層が存在しない、電池。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電池において、
前記電極は、つづら折りに折り重ねられている、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、電極の製造方法及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の一種として、二次電池、特に、非水電解質二次電池が開発されている。非水電解質二次電池は、正極、負極及びセパレータを含んでいる。セパレータは、正極及び負極の間に位置している。
【0003】
特許文献1には、セパレータの一例について記載されている。セパレータは、ポリエチレン微多孔膜及びポリエチレン微多孔膜の両面上の耐熱性多孔質層を含んでいる。耐熱性多孔質層は、ポリメタフェニレンイソフタルアミド及び水酸化アルミニウムからなる無機フィラーを含んでいる。
【0004】
特許文献2には、セパレータの一例について記載されている。セパレータは、ポリエチレン微多孔膜及びポリエチレン微多孔膜の両面上の多孔質層を含んでいる。多孔質層は、メタ型全芳香族ポリアミド及びα-アルミナからなる無機フィラーを含んでいる。
【0005】
特許文献3及び4には、セパレータの一例について記載されている。セパレータは、ポリエチレン多孔質フィルム及びポリエチレン多孔質フィルム上の耐熱多孔層を含んでいる。耐熱多孔層は、液晶ポリエステル及びアルミナ粒子を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-231281号公報
【文献】特開2010-160939号公報
【文献】特開2008-311221号公報
【文献】特開2008-307893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、電池において、正極及び負極を電気的に絶縁するための新規な構造を検討した。
【0008】
本発明の目的の一例は、新規な構造によって正極及び負極を電気的に絶縁することにある。本発明の他の目的は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、
活物質層と、
前記活物質層上にあって、ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と、
を含む電極である。
【0010】
本発明の他の態様は、
ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウムを含む溶液を活物質層上に塗布する工程を含む、電極の製造方法である。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、
正極又は負極として機能可能な電極を含み、
前記電極は、
活物質層と、
前記活物質層上にあって、ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と、
を含む、電池である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上述した一態様によれば、新規な構造によって正極及び負極を電気的に絶縁することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】
図3に示した正極の製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
図1は、実施形態に係る電池10の上面図である。
図2は、
図1のA-A´断面図である。
図3は、
図2の一部分を拡大した図である。
図2では、説明のため、
図1に示した外装材400を示していない。
【0016】
図3を用いて、電池10の概要を説明する。電池10は、正極100及び負極200を含んでいる。正極100は、活物質層120(活物質層122及び活物質層124)及び層300(層310及び層320)を含んでいる。層300は、活物質層120上にある。層300は、水酸化マグネシウム粒子(A)を含んでいる。水酸化マグネシウム粒子(A)は、ステアリン酸で表面処理されている。
【0017】
上述した構成によれば、新規な構造によって正極100及び負極200を電気的に絶縁することができる。具体的には、上述した構成においては、正極100は、水酸化マグネシウム粒子(A)を含んでいる。水酸化マグネシウム粒子(A)は、正極100及び負極200を電気的に絶縁するためのセパレータとして機能することができる。
【0018】
さらに、上述した構成によれば、スラリー中における水酸化マグネシウム粒子(A)の分散性を向上させることができる。具体的には、上述した構成においては、水酸化マグネシウム粒子(A)は、ステアリン酸で表面処理されている。したがって、層300の形成において水酸化マグネシウム粒子(A)を含むスラリーが用いられる場合、スラリー中における水酸化マグネシウム粒子(A)の分散性をステアリン酸によって向上させることができる。
【0019】
さらに、上述した構成によれば、水酸化マグネシウム粒子(A)のアルカリ性を抑えることができる。アルカリ成分が強いと電池内の二酸化炭素がアルカリによって析出し、活物質表面に付着してしまうため、アルカリ成分を抑制することは電池10において好適である。具体的には、上述した構成においては、水酸化マグネシウム粒子(A)は、ステアリン酸で表面処理されている。したがって、水酸化マグネシウム粒子(A)のアルカリ性をステアリン酸によって抑えることができる。
【0020】
特に
図3に示す例においては、正極100と負極200の間に樹脂層(すなわち、セパレータ)が存在しない。
図3に示す例においては、上述したように、水酸化マグネシウム粒子(A)がセパレータとして機能することができる。したがって、正極100と負極200の間に樹脂層を設けなくてもよい。この場合、電池10の厚さを薄くすることができる。他の例において、正極100及び負極200の間に樹脂層(例えば、セパレータ)が存在していてもよい。
【0021】
【0022】
電池10は、第1リード130、第2リード230及び外装材400を含んでいる。
【0023】
第1リード130は、
図2に示す正極100に電気的に接続されている。第1リード130は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成させてもよい。
【0024】
第2リード230は、
図2に示す負極200に電気的に接続されている。第2リード230は、例えば、銅若しくは銅合金又はそれらにニッケルメッキを施したもので形成させてもよい。
【0025】
図1に示す例において、外装材400は、4辺を有する矩形形状を有している。
図1に示す例において、第1リード130及び第2リード230は、外装材400の4辺のうちの共通の1辺から突出している。他の例において、第1リード130及び第2リード230は、外装材400の4辺のうちの異なる辺(例えば、互いに反対側の辺)から突出していてもよい。
【0026】
外装材400は、
図2に示す積層体12を電解液(不図示)とともに収容している。
【0027】
外装材400は、例えば、熱融着性樹脂層及びバリア層を含み、例えば、熱融着性樹脂層及びバリア層を含む積層フィルムにしてもよい。
【0028】
熱融着性樹脂層を形成する樹脂材料は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等にしてもよい。熱融着性樹脂層の厚さは、例えば、20μm以上200μm以下である。
【0029】
バリア層は、例えば、電解液の漏出又は外部からの水分の侵入防止といったバリア性を有しており、例えば、ステンレス(SUS)箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、チタン箔等の金属により形成されたバリア層にしてもよい。バリア層の厚さは、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0030】
積層フィルムの熱融着性樹脂層は、1層であってもよいし、又は2層以上であってもよい。同様にして、積層フィルムのバリア層は、1層であってもよいし、又は2層以上であってもよい。
【0031】
電解液は、例えば、非水電解液である。この非水電解液は、リチウム塩及びリチウム塩を溶解する溶媒を含んでいてもよい。
【0032】
リチウム塩は、例えば、LiClO4、LiBF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、CF3SO3Li、CH3SO3Li、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等にしてもよい。
【0033】
リチウム塩を溶解する溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等にしてもよい。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。
【0034】
【0035】
積層体12は、複数の正極100及び複数の負極200を含んでいる。複数の正極100及び複数の負極200は、交互に積層されている。
【0036】
図3を用いて、正極100、負極200及びセパレータ300のそれぞれの詳細を説明する。
【0037】
正極100は、集電体110、活物質層120(活物質層122及び活物質層124)及び層300(層310及び層320)を含んでいる。集電体110は、第1面112及び第2面114を有している。第2面114は、第1面112の反対側にある。活物質層122は、集電体110の第1面112上にある。活物質層124は、集電体110の第2面114上にある。層310は、活物質層122上にある。層320は、活物質層124上にある。
【0038】
集電体110は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金で形成させてもよい。集電体110の形状は、例えば、箔、平板又はメッシュにしてもよい。
【0039】
活物質層120(活物質層122及び活物質層124)は、活物質、バインダー樹脂及び導電助剤を含んでいる。
【0040】
活物質層120(活物質層122及び活物質層124)に含まれる活物質は、例えば、LiaNibM1-bO2(Mは、Co、Mn、Al、Ti、Zr、Na、Ba及びMgの中から選ばれる少なくとも一種以上の元素である。)によって示される。LiaNibM1-bO2は、例えば、
リチウム-ニッケル複合酸化物;
リチウム-ニッケル-A1複合酸化物(A1は、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。);
リチウム-ニッケル-B1-B2複合酸化物(B1及びB2のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。B1及びB2は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-C1-C2-C3複合酸化物(C1~C3のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。C1~C3は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-D1-D2-D3-D4複合酸化物(D1~D4のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。D1~C4は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-E1-E2-E3-E4-E5複合酸化物(E1~E5のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。E1~E5は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-F1-F2-F3-F4-F5-F6複合酸化物(F1~F6のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。F1~F6は、互いに異なる。);
リチウム-ニッケル-G1-G2-G3-G4-G5-G6-G7複合酸化物(G1~G7のそれぞれは、コバルト、マンガン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、バリウム及びマグネシウムのうちの一である。G1~G7は、互いに異なる。);又は
リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム-チタン-ジルコニウム-ナトリウム-バリウム-マグネシウム複合酸化物である。LiaNibM1-bO2の組成比aは、例えば、0.95≦a≦1.05である。LiaNibM1-bO2の組成比bは、適宜決定することができる。組成比bは、例えば、a≧0.50である。他の例において、活物質層120(活物質層122及び活物質層124)に含まれる活物質は、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物等のリチウム及び遷移金属の複合酸化物;TiS2、FeS、MoS2等の遷移金属硫化物;MnO、V2O5、V6O13、TiO2等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等であってもよい。オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb及びFeからなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物は、その特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。
これらの中でも、正極活物質層にニッケルを60%以上含有する層状活物質を用いたい場合にはアルカリ性を強く示すため、ステアリン酸で表面処理を施した水酸化マグネシウムを用いるとこのアルカリ性を抑制でき、本発明により好適である。
【0041】
活物質層120(活物質層122及び活物質層124)に含まれる活物質の密度は、例えば、2.0g/cm3以上4.0g/cm3以下である。
【0042】
集電体110の両面(第1面112及び第2面114)のうちの一方の面上の活物質層(活物質層122又は活物質層124)の厚さは、適宜決定することができる。当該厚さは、例えば、60μm以下である。
【0043】
集電体110の両面(第1面112及び第2面114)上の活物質層(活物質層122及び活物質層124)の厚さの合計は、適宜決定することができる。当該厚さは、例えば、120μm以下である。
【0044】
活物質層120(活物質層122及び活物質層124)は、例えば次のようにして製造可能である。まず、活物質、バインダー樹脂及び導電助剤を有機溶媒中に分散させてスラリーを調製する。有機溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。次いで、このスラリーを集電体110の第1面112上に塗布し、スラリーを乾燥させ、必要に応じてプレスを実施して、集電体110上に活物質層120(活物質層122)を形成する。活物質層124も同様にして形成可能である。
【0045】
活物質層120(活物質層122及び活物質層124)に含まれるバインダー樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0046】
活物質層120(活物質層122又は活物質層124)に含まれるバインダー樹脂の量は、適宜決定することができる。活物質層122は、活物質層122の総質量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10.0質量部以下のバインダー樹脂を含んでいる。活物質層124についても同様である。
【0047】
活物質層120(活物質層122及び活物質層124)に含まれる導電助剤は、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、炭素繊維等である。黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛又は球状黒鉛であってもよい。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。
【0048】
活物質層120(活物質層122又は活物質層124)に含まれる導電助剤の量は、適宜決定することができる。活物質層122は、活物質層120の総質量100質量部に対して、例えば、3.0質量部以上8.0質量部以下の導電助剤を含んでいる。活物質層124についても同様である。
【0049】
層300(層310及び層320)は、複数の水酸化マグネシウム粒子(A)及び樹脂(B)を含んでいる。樹脂(B)は、複数の水酸化マグネシウム粒子(A)を互いに接着させるためのバインダー樹脂として機能している。
【0050】
水酸化マグネシウム粒子(A)の平均粒径は、例えば、50nm以上10μm以下である。平均粒径が上記下限以上である場合、スラリーにおける水酸化マグネシウム粒子(A)の分散性を向上させることができる。平均粒径が上記上限以下である場合、水酸化マグネシウム粒子(A)による層300の表面の凹凸を抑えることができる。
【0051】
樹脂(B)は、例えば、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミドアミド及びポリアミドのうちの少なくとも一である。樹脂(B)は、特に芳香族ポリアミドは耐熱性が高く、ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウムとの結合性が高いため、剥離強度の観点からも好ましい。その他の例として、樹脂(B)は、エンジニアリングプラスチック、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)及びポリフェニルスルホン(PPSU)のうちの少なくとも一であってもよい。
【0052】
負極200は、集電体210及び活物質層220(活物質層222及び活物質層224)を含んでいる。集電体210は、第1面212及び第2面214を有している。第2面214は、第1面212の反対側にある。活物質層222は、集電体210の第1面212上にある。活物質層224は、集電体210の第2面214上にある。
【0053】
集電体210は、例えば、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン又はこれらの合金で形成させてもよい。集電体210の形状は、例えば、箔、平板又はメッシュにしてもよい。
【0054】
活物質層220(活物質層222及び活物質層224)は、活物質及びバインダー樹脂を含んでいる。活物質層220は、必要に応じて、導電助剤をさらに含んでいてもよい。
【0055】
活物質層220(活物質層222及び活物質層224)に含まれる活物質は、例えば、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素材料;リチウム金属、リチウム合金等のリチウム系金属材料;Si、SiO2、SiOx(0<x≦2)、Si含有複合材料等のSi系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー材料等である。これらの物質は、単独で使用されてもよいし、又は組み合わせて使用されてもよい。一例において、活物質層220(活物質層222及び活物質層224)は、第1平均粒径及び第1平均硬度を有する第1群の黒鉛粒子(例えば、天然黒鉛)及び第2平均粒径及び第2平均硬度を有する第2群の黒鉛粒子(例えば、天然黒鉛)を含んでいてもよい。第2平均粒径は第1平均粒径より小さくてもよく、第2平均硬度は第1平均硬度より高くてもよく、第2群の黒鉛粒子の総質量は、第1群の黒鉛粒子の総質量より小さくてもよく、第2群の黒鉛粒子の総質量は、第1群の黒鉛粒子の総質量100質量部に対して、例えば、20質量部以上30質量部以下であってもよい。
【0056】
活物質層220(活物質層222及び活物質層224)に含まれる活物質の密度は、例えば、1.2g/cm3以上2.0g/cm3以下である。
【0057】
集電体210の両面(第1面212及び第2面214)のうちの一方の面上の活物質層(活物質層222又は活物質層224)の厚さは、適宜決定することができる。当該厚さは、例えば、60μm以下である。
【0058】
集電体210の両面(第1面212及び第2面214)上の活物質層(活物質層222及び活物質層224)の厚さの合計は、適宜決定することができる。当該厚さは、例えば、120μm以下である。
【0059】
活物質層220(活物質層222及び活物質層224)は、例えば次のようにして製造可能である。まず、活物質及びバインダー樹脂を溶媒中に分散させてスラリーを調製する。溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機溶媒であってもよいし、又は水であってもよい。次いで、このスラリーを集電体210の第1面212上に塗布し、スラリーを乾燥させ、必要に応じてプレスを実施して、集電体210上に活物質層220(活物質層222)を形成する。活物質層224も同様にして形成可能である。
【0060】
活物質層220(活物質層222及び活物質層224)に含まれるバインダー樹脂は、スラリーを得るための溶媒として有機溶媒を用いた場合、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のバインダー樹脂にすることができ、スラリーを得るための溶媒として水を用いた場合、例えば、ゴム系バインダー(例えば、SBR(スチレン・ブタジエンゴム))又はアクリル系バインダー樹脂にすることができる。このような水系バインダー樹脂は、エマルジョン形態にしてもよい。溶媒として水を用いる場合、水系バインダー及びCMC(カルボキシメチルセルロース)等の増粘剤を併用することが好ましい。
【0061】
活物質層220(活物質層222又は活物質層224)に含まれるバインダー樹脂の量は、適宜決定することができる。活物質層222は、活物質層222の総質量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上10.0質量部以下のバインダー樹脂を含んでいる。活物質層224についても同様である。
【0062】
図4は、
図3に示した正極100の製造方法の一例を説明するための図である。正極100は、以下のようにして製造可能である。
【0063】
まず、
図4(a)に示すように、集電体110の第1面112上に活物質層120(活物質層122)を形成する。上述したように、活物質層120は、活物質、バインダー樹脂、導電助剤及び溶媒(例えば、有機溶媒)を含むスラリーを集電体110の第1面112上に塗布して形成される。
図4(a)に示す工程において、活物質層120(すなわち、スラリー)は、乾燥されておらず、液状にある。
【0064】
次いで、
図4(b)に示すように、活物質層120上に層300(層310)を形成する。層300は、水酸化マグネシウム粒子(A)、樹脂(B)及び溶媒(C)を含む溶液を活物質層120上に塗布して形成される。溶液は、例えば、リバースロール、ダイレクトロール、ドクターブレード、ナイフ、エクストルージョン、カーテン、グラビア、バー、ディップ又はスクイーズによって塗布させることができる。溶媒(C)は、例えば、N-メチル-2-ピロリドンである。
【0065】
次いで、活物質層120及び層300を乾燥させる。
【0066】
集電体110の第2面114上にも同様にして活物質層120(活物質層124)及び層300(層320)を形成することができる。
【0067】
このようにして、正極100を製造することができる。
【0068】
【0069】
図5に示すように、負極200が層300(層330及び層340)を含んでいてもよい。層330は活物質層222上にあり、層340は活物質層224上にある。負極200の層300は、
図3に示した層300と同様にして、水酸化マグネシウム粒子(A)を含み、必要に応じて樹脂(B)をさらに含んでいてもよい。
【0070】
【0071】
図6に示すように、正極100及び負極200の双方が層300を含んでいてもよい。
【0072】
【0073】
図7に示すように、正極100は、つづら折りに折り重ねられていてもよい。
図7に示す例において、電池10(積層体12)は、複数の負極200を含んでいる。正極100は、隣り合う負極200の間に正極100の一部が位置するように、つづら折りに折り重ねられている。
【0074】
【0075】
図8に示すように、負極200は、つづら折りに折り重ねられていてもよい。
図8に示す例において、電池10(積層体12)は、複数の正極100を含んでいる。負極200は、隣り合う正極100の間に負極200の一部が位置するように、つづら折りに折り重ねられている。
【0076】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 活物質層と、
前記活物質層上にあって、ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と、
を含む電極。
2. 1.に記載の電極において、
前記活物質層上の層を含み、
前記層は、前記水酸化マグネシウム粒子と、樹脂と、を含む電極。
3. 2.に記載の電極において、
前記樹脂は、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミドアミド及びポリアミドのうちの少なくとも一である、電極。
4. ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウムを含む溶液を活物質層上に塗布する工程を含む、電極の製造方法。
5. 正極又は負極として機能可能な電極を含み、
前記電極は、
活物質層と、
前記活物質層上にあって、ステアリン酸で表面処理された水酸化マグネシウム粒子と、
を含む、電池。
6. 5.に記載の電池において、
隣り合う前記正極と前記負極の間に樹脂層が存在しない、電池。
7. 5.又は6.に記載の電池において、
前記電極は、つづら折りに折り重ねられている、電池。
【符号の説明】
【0077】
10 電池
12 積層体
100 正極
110 集電体
112 第1面
114 第2面
120 活物質層
122 活物質層
124 活物質層
130 第1リード
200 負極
210 集電体
212 第1面
214 第2面
220 活物質層
222 活物質層
224 活物質層
230 第2リード
300 層
300 セパレータ
310 層
320 層
330 層
340 層
400 外装材