(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】浴室ユニット
(51)【国際特許分類】
A47K 4/00 20060101AFI20230727BHJP
E03C 1/20 20060101ALI20230727BHJP
A47K 3/00 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
A47K4/00
E03C1/20 Z
A47K3/00 Z
A47K3/00 E
(21)【出願番号】P 2019136964
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】田村 和博
(72)【発明者】
【氏名】小川 潤
(72)【発明者】
【氏名】山口 惣男
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010251(JP,A)
【文献】特開2009-168333(JP,A)
【文献】特開2012-122294(JP,A)
【文献】特開2005-237590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00-4/00
E03C 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップを備えた浴槽と、
前記浴槽に隣接する洗い場側に設けられた洗い場床と、
前記浴槽の前記洗い場側の側面を覆うエプロンと、
給湯及び/又は追焚用の配管が接続された循環アダプターと、
前記循環アダプターの下方に設けられた水受けトレイと、
一端が前記水受けトレイに接続され、他端が前記洗い場床へ向けて排水を行う排水ホースと、
を備えた浴室ユニットにおいて、
前記ステップは、前記浴槽の短辺側に設けられた着座面と、前記浴槽の底面から前記着座面まで立ち上げられた立ち上がり面と、を有し、
前記循環アダプターは、前記立ち上がり面に形成された貫通孔に取り付けられており、
前記水受けトレイは、前記循環アダプターを挿入するために、前記浴槽の前記洗い場側の前記側面より前記洗い場側へ突出する開口部を有することを特徴とする浴室ユニット。
【請求項2】
前記水受けトレイの少なくとも上壁部分は弾性変形可能であることを特徴とする請求項
1記載の浴室ユニット。
【請求項3】
前記洗い場床における前記浴槽側に土手部が設けられ、
前記開口部は、前記土手部の前記浴槽側の端部より前記洗い場側へ突出していることを特徴とする請求項1
または2に記載の浴室ユニット。
【請求項4】
前記水受けトレイの前記洗い場側の部分は、前記土手部に載置されていることを特徴とする請求項3記載の浴室ユニット。
【請求項5】
前記水受けトレイの上端面は、前記洗い場側に段落ちした切り欠き部を有することを特徴とする請求項2~4のいずれか1つに記載の浴室ユニット。
【請求項6】
前記配管が前記循環アダプターとの接続部から前記浴槽の前記洗い場側の前記側面に沿うように流路を曲げることが可能な管継手が設けられ、
前記開口部は、前記管継手の下方まで、前記浴槽の前記洗い場側の前記側面に沿う方向に延びていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の浴室ユニット。
【請求項7】
前記排水ホースの前記一端は、前記水受けトレイの下方側に形成されたトレイ排水口に接続されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の浴室ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽の側面には、給湯や追い焚きなどを行うためのアダプターを取り付け可能な貫通孔が設けられている。このような構成においては、例えば、施工時の誤差にて浴槽とアダプターとの接続箇所より漏水が発生する虞がある。漏水対策としては、例えば、特許文献1のように浴槽とアダプターとの接続箇所の下方に水を受ける水受けトレイを設け、水受けトレイに受けた漏水を洗い場床へ排水する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば半身浴などの用途を考慮し設計されたステップ付きの浴槽において、ステップの立ち上がり面にアダプターを取り付けようとすると、ステップの高さの関係上、アダプターの設置高さは浴槽内側面において比較的低い位置に設置せざるを得ない。そのため、水受けトレイで受けた漏水を浴室の洗い場床へ排水するための排水勾配を確保しづらく、水受けトレイへ貯水できる最高水位を可能な限り、洗い場床に対して高さを確保した位置にする必要が発生する。
【0005】
そのような構成において、例えば、施工やメンテナンス時に、水受けトレイが設置された状態の浴槽へアダプターを後付け設置することが困難となる課題が発生する。
【0006】
そこで、本発明は、浴槽のステップの立ち上がり面に設けた貫通孔にアダプターを取り付ける構成においても、アダプターを取り付ける際の作業性に優れた水受けトレイを有する浴室ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の浴室ユニットは、ステップを備えた浴槽と、前記浴槽に隣接する洗い場側に設けられた洗い場床と、前記浴槽の前記洗い場側の側面を覆うエプロンと、給湯及び/又は追焚用の配管が接続された循環アダプターと、前記循環アダプターの下方に設けられた水受けトレイと、一端が前記水受けトレイに接続され、他端が前記洗い場床へ向けて排水を行う排水ホースと、を備えた浴室ユニットにおいて、前記ステップは、前記浴槽の短辺側に設けられた着座面と、前記浴槽の底面から前記着座面まで立ち上げられた立ち上がり面と、を有し、前記循環アダプターは、前記立ち上がり面に形成された貫通孔に取り付けられており、前記水受けトレイは、前記循環アダプターを挿入するために、前記浴槽の前記洗い場側の前記側面より前記洗い場側へ突出する開口部を有することを特徴とする。
第1の発明によれば、浴槽の短辺側に設けたステップの着座面より下方に形成された貫通孔に対し、循環アダプターを水受けトレイよりも後から取り付ける場合において、着座面の下方の限られた空間において洗い場床へ向かう排水勾配を確保するべく、水受けトレイを立ち上がり面の上方に設置した際に、水受けトレイの上部と着座面との距離が近接したとしても、現場作業者は浴槽の洗い場側の側面よりも洗い場側に突出する開口部を通じて、浴槽の貫通孔に循環アダプターを取り付けることが容易となる。
第2の発明は、第1の発明において、前記洗い場床における前記浴槽側に土手部が設けられ、前記開口部は、前記土手部の前記浴槽側の端部より前記洗い場側へ突出していることを特徴とする。
第2の発明によれば、浴槽の洗い場側の側面よりも突出している開口部の面積をより大きく確保でき、開口部から循環アダプターを挿入して浴槽に取り付ける際の作業性により優れる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記水受けトレイの少なくとも上壁部分は弾性変形可能であることを特徴とする。
第3の発明によれば、水受けトレイの少なくとも上壁部分を弾性変形させることで、水受けトレイと着座面との間のスペースを大きく確保できる。水受けトレイの開口部を必要以上に大きくしなくても、水受けトレイ内に手を挿入して循環アダプターを浴槽に取り付ける際の作業性を確保できる。すなわち、循環アダプターを浴槽に取り付ける際の作業性を維持しつつも、水受けトレイをコンパクトにすることができる。
第4の発明は、第3の発明において、前記水受けトレイの前記洗い場側の部分は、前記土手部に載置されていることを特徴とする。
第4の発明によれば、水受けトレイに弾性変形させることが可能な材質を採用したとしても、水受けトレイ内に貯水された場合において水の重みによる水受けトレイの変形を抑制することができる。そのため、水の重みによる変形によって水受けトレイ内の水が機外(浴槽の下方側)へ漏水することを抑制することができる。
第5の発明は、第2~第4の発明のいずれか1つにおいて、前記水受けトレイの上端面は、前記洗い場側に段落ちした切り欠き部を有することを特徴とする。
第5の発明によれば、浴槽と循環アダプターとの接続箇所からの漏水量が、水受けトレイ内からの排水量を上回るような場合において、満水位を超えた水を、機外漏水させずに、切り欠き部から洗い場床へと排水させることが可能となる。
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つにおいて、前記配管が前記循環アダプターとの接続部から前記浴槽の前記洗い場側の前記側面に沿うように流路を曲げることが可能な管継手が設けられ、前記開口部は、前記管継手の下方まで、前記浴槽の前記洗い場側の前記側面に沿う方向に延びていることを特徴とする。
第6の発明によれば、配管を循環アダプターとの接続部から浴槽の洗い場側の側面に沿わす際に、配管の許容曲げ半径を考慮することなく作業性に優れる。また、水受けトレイの開口部は管継手の下方まで延びているため、管継手と配管との接続箇所からの漏水も水受けトレイで受けることが可能となる。
第7の発明は、第1~第6の発明のいずれか1つにおいて、前記排水ホースの前記一端は、前記水受けトレイの下方側に形成されたトレイ排水口に接続されていることを特徴とする。
第7の発明によれば、水受けトレイ内に貯水された漏水のうち、汚れなどが沈殿した下の方の古い水から排水が開始されるので、そのような古い水がいつまでも水受けトレイ内に残らないようにすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浴槽のステップの立ち上がり面に設けた貫通孔にアダプターを取り付ける構成においても、アダプターを取り付ける際の作業性に優れた水受けトレイを有する浴室ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の浴室ユニットの斜視図である。
【
図2】
図1からエプロンを外した状態の浴室ユニットの斜視図である。
【
図3】
図2における右方から見た浴室ユニットの側面図である。
【
図5】
図4の浴槽に循環アダプターが取り付けられた状態の側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の水受けトレイの斜視図である。
【
図7】
図3と同方向から見た浴室ユニットの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の浴室ユニット1の斜視図である。
図2は、
図1からエプロン31を外した状態の浴室ユニット1の、
図1とは異なる方向から見た斜視図である。
【0012】
浴室ユニット1は、浴室内に設けられ、浴槽10と、洗い場床20と、エプロン31を有する。洗い場床20は、浴室内において浴槽10に隣接する洗い場側に設けられている。
【0013】
浴槽10のリムは矩形状の外形を有し、浴槽10における一方の短辺側の浴槽壁にステップ14が設けられている。ステップ14は、着座面16と、浴槽10の底面13から着座面16まで立ち上げられた立ち上がり面15とを有する。使用者は着座面16に腰掛けて、脚を他方の短辺側の壁面に向けて伸ばすことで半身浴を行うことができる。
【0014】
エプロン31は、浴槽10の洗い場側の側面11(
図2に示す)を覆っている。洗い場床20には排水口23が形成され、その排水口23には、図示しない排水トラップの取付部材24が嵌め込まれている。洗い場床20における浴槽10側に土手部22が設けられている。土手部22は洗い場床20の床面から上方に立ち上げられ、例えば土手部22の上半分ほどの部分はエプロン31に覆われる。
【0015】
図3は、
図2における右方から見た浴室ユニット1の側面図である。
図4は、
図3と同方向から見た浴槽10の側面図である。
図5は、
図4の浴槽10に循環アダプター51が取り付けられた状態の側面図である。
【0016】
図4に示すように、浴槽10における立ち上がり面15に貫通孔(浴槽貫通孔)17が形成されている。その貫通孔17には、
図5に示すように、循環アダプター51が取り付けられる。浴槽10の内側から貫通孔17に対しては、
図1に示すフィルター18が取り付けられる。
【0017】
循環アダプター51には、
図2に示す配管52が接続される。循環アダプター51および配管52は、給湯及び/または追焚に用いられる。2本の配管52が設けられ、そのうちの1本は湯の供給路として、他の1本は浴槽10内の湯を吸い込む循環路として用いられる。
【0018】
着座面16の下方には、
図3に示すように水受けトレイ40が設けられる。水受けトレイ40は、着座面16の下方における立ち上がり面15の側方に配置される。
【0019】
【0020】
水受けトレイ40は、底面および側壁によって囲まれた空間を有し、その空間の上部は開口部41を通じて上方に開放されている。側壁の上端が、開口部41の縁を形成する。また、水受けトレイ40は、貫通孔(トレイ貫通孔)42が形成された側壁44を有する。
【0021】
図7は、
図3と同方向から見た浴室ユニットの一部断面図である。
図8は、
図2における一部分の拡大斜視図である。
【0022】
図7に示すように、水受けトレイ40の側壁44は、浴槽10の立ち上がり面15に対して例えば接着固定される。側壁44に形成された貫通孔42の位置は、浴槽10の立ち上がり面15に形成され貫通孔17(
図4に示す)の位置に合わされる。
【0023】
貫通孔17に取り付けられた循環アダプター51は、
図7に示すように、水受けトレイ40の貫通孔42を通じて水受けトレイ40内に突出する。水受けトレイ40の底面は、循環アダプター51の下方に位置する。循環アダプター51は、水受けトレイ40の開口部41よりも下方の水受けトレイ40内に位置する。
【0024】
水受けトレイ40の開口部41の一部は、
図7および
図8に示すように、浴槽10の洗い場側の側面11および着座面16より洗い場側へ突出し、洗い場側に露出している。
【0025】
図3に示すように、開口部41は、洗い場床20の土手部22の浴槽10側の端部22aより洗い場側へ突出し、水受けトレイ40の洗い場側の部分46は、土手部22の上面に載置されている。水受けトレイ40の底面は、浴槽10の底面よりも上方に位置する。
【0026】
図6に示すように、水受けトレイ40の洗い場側の部分46にはねじ止め用の穴46aが形成されている。その穴46aを貫通して図示しないねじが洗い場床20の土手部22の上面にねじ込まれることで、水受けトレイ40の洗い場側の部分46は、土手部22に固定される。
【0027】
図6に示すように、水受けトレイ40の洗い場側の部分46の上端面は、他の部分の上端面よりも洗い場側に段落ちした切り欠き部47を有する。
【0028】
水受けトレイ40は、例えばゴムなどの弾性体からなり、弾性変形可能である。
【0029】
エプロン31よりも浴槽10側の浴槽設置空間には、
図8に示す排水ホース61が設けられている。排水ホース61の一端は水受けトレイ40に接続されている。
図3に示すように、水受けトレイ40における浴槽10の立ち上がり面15とは反対側の側壁の下方側にトレイ排水口43が形成され、排水ホース61の一端はトレイ排水口43に接続されている。
【0030】
排水ホース61の他端は、エプロン31の長手方向の一端側を保持するエプロンガイド62に接続されている。エプロンガイド62には、洗い場側で大気開放された水抜き穴63が形成され、排水ホース61の他端は水抜き穴63に通じている。
【0031】
配管52は循環アダプター51に接続されている。例えば、配管52は、水受けトレイ40内を浴槽10の立ち上がり面15に沿って延びる第1部分と、浴槽10の洗い場側の側面11に沿って延びる第2部分とを有し、それら第1部分と第2部分とはエルボ形状の管継手53によって接続されている。すなわち、管継手53によって、配管52が循環アダプター51との接続部から浴槽10の洗い場側の側面11に沿うように流路が曲げられている。
【0032】
水受けトレイ40の開口部41は、管継手53の下方まで、浴槽10の洗い場側の側面11に沿う方向に延びている。開口部41は、浴槽10の側面11および着座面16よりも洗い場側に突出しつつ、浴槽10の洗い場側の側面11におけるステップ14に対向しない部分に向かって延びている。管継手53自体、および管継手53と配管52との接続部が、開口部41を通じて、水受けトレイ40内の空間に重なる位置にある。
【0033】
次に、実施形態に係る浴室ユニット1の設置現場における作業について説明する。
【0034】
例えば、浴槽10、洗い場床20、水受けトレイ40などの設置は浴室設置業者が担い、給湯器と接続される配管52や循環アダプター51の取り付けは、給湯関連業者(給湯器メーカー、ガス業者、電気業者など)が担う。
【0035】
そのため、浴室設置業者が浴室設置空間に浴槽10および洗い場床20を設置した後、循環アダプター51を浴槽10にまだ取り付けない状態で、先に水受けトレイ40を設置する場合がある。
【0036】
水受けトレイ40の側壁44は、浴槽10の立ち上がり面15に例えば接着固定される。このとき、水受けトレイ40の貫通孔42内に、浴槽10の立ち上がり面15に形成された貫通孔17が位置するようにする。さらに、
図3に示すように、水受けトレイ40における洗い場側の部分46は、洗い場床20の土手部22の上面に載置され、土手部22に対して例えばねじ止め固定される。
【0037】
この後、給湯関連業者が、循環アダプター51を浴槽10の立ち上がり面15に形成された貫通孔17に取り付ける。このとき、すでに水受けトレイ40が設置されている。作業者は、浴槽10の洗い場側の側面11よりも洗い場側に突出した開口部41から循環アダプター51を手でつかんで水受けトレイ40内に挿入し、水受けトレイ40内に露出する浴槽10の貫通孔17に循環アダプター51を取り付けることができる。この開口部41への挿入時、循環アダプター51には、配管52における少なくとも管継手53よりも循環アダプター51側の部分が接続されている。
【0038】
循環アダプター51を浴槽10に取り付けた後、浴槽10の側面11に沿うように延びる配管52を管継手53を介して循環アダプター51に接続する。または、可撓性を有する配管52を管継手53を介さずに循環アダプター51に接続し、この配管52が接続された状態の循環アダプター51を開口部41から水受けトレイ40内に挿入し、浴槽10の貫通孔17に取り付けてもよい。配管52は可撓性を有するため、循環アダプター51との接続部から浴槽10の側面11に沿うように曲げることができる。または、循環アダプター51だけを先に浴槽10の貫通孔17に取り付け、その後に配管52を手でつかんで開口部41から水受けトレイ40内に挿入し、循環アダプター51に接続してもよい。
【0039】
循環アダプター51を浴槽10に取り付ける前、または取り付けた後に、排水ホース61の一端を水受けトレイ40のトレイ排水口43に接続し、他端をエプロンガイド62に接続する。その後、
図1に示すようにエプロン31を取り付ける。
【0040】
浴室ユニット1の使用中に、浴槽10と循環アダプター51との接続箇所における施工時の誤差等により漏水が発生しても、その漏水を水受けトレイ40で受けることができ、機外(浴槽10の下方側)への漏水を防ぐことができる。
【0041】
水受けトレイ40内には、エプロンガイド62に形成された水抜き穴63の位置(鉛直方向の位置)よりも高い水位まで貯水可能である。水抜き穴63は洗い場側に向けて大気開放され、水抜き穴63の位置よりも高い水位まで水受けトレイ40内に水が貯まると、水受けトレイ40内の水は排水ホース61を通じて水抜き穴63に向けて流れ、水抜き穴63から洗い場床20の床面に向けて排水される。
【0042】
水受けトレイ40内に貯まった漏水の排水先を、洗い場床20の排水口23の下のトラップ(浴槽水の排水先でもある)ではなく、洗い場床20の床面上にすることで、使用者は異常(浴槽10と循環アダプター51との接続箇所における漏水)を認識し、機外漏水前に適切な対処をすることができる。また、トラップ側から水受けトレイ40への排水の逆流も防止できる。また、排水ホース61の他端をトラップに接続する場合において現場施工時に作業者がその接続を忘れてしまうことによる機外漏水のリスクも回避できる。
【0043】
以上説明した実施形態によれば、浴槽10の短辺側に設けたステップ14の着座面16より下方に形成された貫通孔17に対し、循環アダプター51を水受けトレイ40よりも後から取り付ける場合において、着座面16の下方の限られた空間において洗い場床20へ向かう排水勾配を確保するべく、水受けトレイ40を立ち上がり面15の上方に設置した際に、水受けトレイ40の上部と着座面16との距離が近接したとしても、現場作業者は浴槽10の着座面16および側面11よりも洗い場側に突出する開口部41を通じて、浴槽10の貫通孔17に循環アダプター51を取り付けることが容易となる。
【0044】
また、開口部41は、洗い場床20の土手部22の浴槽10側の端部22aより洗い場側へ突出しているため、浴槽10の側面11よりも突出している開口部41の面積をより大きく確保できる。そのため、開口部41から循環アダプター51を挿入して浴槽10に取り付ける際の作業性により優れる。
【0045】
また、水受けトレイ40は弾性体からなるため、例えば水受けトレイ40における浴槽10の立ち上がり面15とは反対側の側壁の上壁部分45(
図3、
図6に示す)を弾性変形させることができる。上壁部分45の上端は、開口部41の縁の一部を形成する。
【0046】
例えば作業者の腕で上壁部分45を押圧して、水受けトレイ40内に倒すように弾性変形させることで、
図8において水受けトレイ40の右方側(立ち上がり面15に面する側の反対側)における着座面16との間のスペースを大きく確保できる。水受けトレイ40の開口部41を、着座面16の下のスペースから
図8において右方に突出させなくても(水受けトレイ40を大きくしなくても)、着座面16の下方に手を挿入して循環アダプター51を浴槽10に取り付ける際の作業性を確保できる。すなわち、循環アダプター51を浴槽10に取り付ける際の作業性を維持しつつも、水受けトレイ40をコンパクトにすることができる。
【0047】
水受けトレイ40をコンパクトにすることで、水受けトレイ40内の貯水容積を小さくすることができる。これにより、水受けトレイ40内において排水が開始される水位に至るまでの貯水時間を短くでき、貯まった水の重みによって水受けトレイ40が変形して機外(浴槽の下方側)へ漏水することを抑制することができる。
【0048】
また、水受けトレイ40の洗い場側の部分46は洗い場床20の土手部22に載置される。すなわち、水受けトレイ40の洗い場側の部分46は洗い場床20の土手部22によって支えられる。そのため、水受けトレイ40に弾性変形させることが可能な材質を採用したとしても、水受けトレイ40内に貯水された場合において水の重みによる水受けトレイ40の変形を抑制することができる。そのため、水の重みによる変形によって水受けトレイ40内の水が機外(浴槽の下方側)へ漏水することを抑制することができる。
【0049】
なお、水受けトレイ40は全体が弾性変形可能である必要はなく、少なくとも、例えば浴槽10の立ち上がり面15とは反対側の側壁の上壁部分45が弾性変形可能であれば、上述したようにその上壁部分45を作業者の腕で押しつぶすようにして水受けトレイ40内に腕を入れるスペースを広げることができる。
【0050】
配管52は、前述したように、管継手53を使わずに循環アダプター51に接続し、浴槽10の側面11に沿うように曲げてもよい。ただし、管継手53を使うと、配管52を循環アダプター51との接続部から浴槽10の側面11に沿わす際に、配管52の許容曲げ半径を考慮することなく作業性に優れる。また、
図8に示すように、水受けトレイ40の開口部41は管継手53の下方まで延びているため、管継手53と配管52との接続箇所からの漏水も水受けトレイ40で受けることが可能となる。
【0051】
図3には、トレイ排水口43を水受けトレイ40の下方側に形成した例を示すが、トレイ排水口43は水受けトレイ40の上方側に形成されてもよい。ただし、トレイ排水口43を水受けトレイ40の下方側に形成した場合には、水受けトレイ40内に貯水された漏水のうち、汚れなどが沈殿した下の方の古い水から排水が開始されるので、貯水された漏水の置換を円滑に行え、そのような古い水がいつまでも水受けトレイ40内に残らないようにすることができる。
【0052】
図6に示すように、水受けトレイ40の洗い場側の部分46の上端面は、他の部分の上端面よりも洗い場側に段落ちした切り欠き部47を有する。そのため、浴槽10と循環アダプター51との接続箇所からの漏水量が、トレイ排水口43からの排水量を上回るような場合において、満水位を超えた水を、機外漏水させずに、切り欠き部47から洗い場床20へと排水させることが可能となる。
【0053】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…浴室ユニット、10…浴槽、14…ステップ、15…立ち上がり面、16…着座面、20…洗い場床、22…土手部、31…エプロン、40…水受けトレイ、41…開口部、43…トレイ排水口、51…循環アダプター、52…配管、53…管継手、61…排水ホース、62…エプロンガイド、63…水抜き穴