(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-26
(45)【発行日】2023-08-03
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/42 20060101AFI20230727BHJP
H01Q 5/371 20150101ALI20230727BHJP
H01Q 9/40 20060101ALI20230727BHJP
【FI】
H01Q9/42
H01Q5/371
H01Q9/40
(21)【出願番号】P 2019217725
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】行本 真介
(72)【発明者】
【氏名】南保 尚
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134773(JP,A)
【文献】特開2014-230028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/030203(US,A1)
【文献】国際公開第2016/203889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/42
H01Q 5/371
H01Q 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、
前記基板本体に金属箔でパターン形成されグランドに接続されるグランドパターンと、
前記グランドパターンが形成されていない領域として前記基板本体上に前記基板本体の一辺に接して設けられ前記一辺に沿って長方形状に延在したアンテナ占有領域と、
前記アンテナ占有領域に金属箔でパターン形成され給電点と接続された第1エレメント及び第2エレメントとを備え、
前記グランドパターンが、前記一辺と前記アンテナ占有領域の一方の短辺とに近接した第1グランド領域と、
前記一辺から離間し前記アンテナ占有領域の一方の長辺に近接した第2グランド領域とを有し、
前記給電点が、前記第1グランド領域から離間して前記アンテナ占有領域の他方の短辺側で前記第2グランド領域に近接して配され、
前記第1エレメントが、前記第2エレメントよりも前記第2グランド領域側に配されていると共に、前記給電点から前記一辺に向かって延在する第1延在部と、
前記第1延在部から前記第1グランド領域に向かって延在した第2延在部と、
前記第2延在部の先端部から前記一辺側に向かって延在する容量装荷部と、
前記容量装荷部の先端から前記第2延在部に沿って前記第1グランド領域から離間する方向に延在する第3延在部とを備え、
前記容量装荷部が、前記第2延在部の基端部よりも幅広に形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記第2エレメントが、前記第1延在部から前記第2延在部とは反対方向に延在する第4延在部と、
前記第4延在部の先端から前記一辺に向けて延在した第5延在部と、
前記第5延在部の先端から前記第4延在部に沿って前記第3延在部側に向けて延在する第6延在部とを有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ装置において、
前記第1エレメントが、前記第2延在部の途中から前記一辺に向けて前記第6延在部の先端及び第3延在部の先端に対向する位置まで突出した突出部を有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のアンテナ装置において、
前記第1延在部が、前記第2延在部の基端部よりも幅広に形成され前記第2延在部の接続部から前記第6延在部の途中に向けて突出した容量調整部を有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第2延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項2から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、
前記第2延在部及び前記第4延在部の少なくとも一方の基端又は途中に、受動素子が接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数共振化が可能なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器において、複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、用途や機器毎に応じたアンテナ性能を安価かつ容易に確保できるアンテナ装置が開発されている(例えば、特許文献1)。このアンテナ装置は、基板本体の表面にそれぞれ金属箔でパターン形成されたグランドパターン及び複数のエレメントを備えているので、各エレメント間やグランドパターンとの間の各浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化させるものである。
【0003】
また、近年、基板の垂直方向(アンテナのエレメントが延在する方向に直交する方向)が短い小型基板をアンテナ用に用いることが要望されている。例えば、特許文献2に記載されている基板では、グランド面が形成されていない領域(以下、アンテナ占有領域)が、細長い長方形状又は帯状に形成され、その領域の短辺の一方にグランド面が接している。
【0004】
特許文献2のような基板上のグランド面を矩形状に切り欠いた長方形状のアンテナ占有領域にアンテナパターンを形成する場合、アンテナ占有領域の短辺に接したグランド面の近傍に給電点を設け、波長の短い高周波においてグランド間の影響を低減することで、良好なアンテナ性能を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-92978号公報
【文献】特開2017-139818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
従来、特許文献2のような基板上のグランド面を矩形状に切り欠いた長方形状のアンテナ占有領域において、高周波だけでなく低周波のアンテナパターンを設けて複共振化する場合、通常、低周波側のアンテナパターンを当該グランド面から離れた領域に設計し、高周波側のアンテナパターンをアンテナ占有領域の短辺に近接したグランド面に近く設計する。このとき、低周波側では、基板におけるグランド面の垂直方向の長さ(アンテナ占有領域の短辺長さ)を利用して、当該垂直方向にアンテナパターンの一部を延在させることで効果的にアンテナ特性を得ることができる。しかしながら、小型基板において短辺がグランド面に隣接した長方形状のアンテナ占有領域であると、アンテナ占有領域が狭く、特に短辺長さが短いために、低周波・高周波共に十分なアンテナ特性を得ることが困難であった。すなわち、給電点から水平方向(アンテナ占有領域の長辺方向)の前記短辺側のグランド面までの距離が短く、十分な長さの高周波側のアンテナパターンが設けられないと共に、アンテナパターンの折り返しを長くすると高周波側のアンテナと低周波側のアンテナとが、干渉し易くなってしまう不都合があった。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、小型基板のグランド面を矩形状に切り欠いた長方形状のアンテナ占有領域でも、複共振化した際に高周波側と低周波側との両方のアンテナ性能の高性能化が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、前記基板本体に金属箔でパターン形成されグランドに接続されるグランドパターンと、前記グランドパターンが形成されていない領域として前記基板本体上に前記基板本体の一辺に接して設けられ前記一辺に沿って長方形状に延在したアンテナ占有領域と、前記アンテナ占有領域に金属箔でパターン形成され給電点と接続された第1エレメント及び第2エレメントとを備え、前記グランドパターンが、前記一辺と前記アンテナ占有領域の一方の短辺とに近接した第1グランド領域と、前記一辺から離間し前記アンテナ占有領域の一方の長辺に近接した第2グランド領域とを有し、前記給電点が、前記第1グランド領域から離間して前記アンテナ占有領域の他方の短辺側で前記第2グランド領域に近接して配され、前記第1エレメントが、前記第2エレメントよりも前記第2グランド領域側に配されていると共に、前記給電点から前記一辺に向かって延在する第1延在部と、前記第1延在部から前記第1グランド領域に向かって延在した第2延在部と、前記第2延在部の先端部から前記一辺側に向かって延在する容量装荷部と、前記容量装荷部の先端から前記第2延在部に沿って前記第1グランド領域から離間する方向に延在する第3延在部とを備え、前記容量装荷部が、前記第2延在部の基端部よりも幅広に形成されていることを特徴とする。
【0009】
このアンテナ装置では、給電点が、第1グランド領域から離間してアンテナ占有領域の他方の短辺側で第2グランド領域に近接して配され、容量装荷部が、第2延在部の基端部よりも幅広に形成されているので、第1グランド領域から離間した給電点から長く第1エレメントを第1グランド領域に向けて延在させることができると共に、容量装荷部で得られる第1グランド領域との間の浮遊容量によって第1エレメントの低周波と第2エレメントの高周波との干渉を抑制可能になる。したがって、長く第2グランド領域に沿って延在する第1エレメントが更に容量装荷部を介して折り返すことで、良好な低周波側のアンテナ特性が得られると共に、高周波側のアンテナ特性と干渉し難いため、高周波側も良好なアンテナ特性を得ることができる。また、折り返した第3延在部を長くし過ぎると、反対側の第2エレメントや第2延在部等に干渉し易くなるが、容量装荷部を設けることで、第1グランド領域との間の浮遊容量を大きくして短い第3延在部でも十分な特性を得ることが可能になる。
【0010】
第2の発明に係るアンテナ装置は、第1の発明において、前記第2エレメントが、前記第1延在部から前記第2延在部とは反対方向に延在する第4延在部と、前記第4延在部の先端から前記一辺に向けて延在した第5延在部と、前記第5延在部の先端から前記第4延在部に沿って前記第3延在部側に向けて延在する第6延在部とを有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第4延在部と第5延在部と第6延在部とを有しているので、折り返して長く延在した第2エレメントによって良好な高周波側のアンテナ特性を得ることができる。
【0011】
第3の発明に係るアンテナ装置は、第2の発明において、前記第1エレメントが、前記第2延在部の途中から前記一辺に向けて前記第6延在部の先端及び第3延在部の先端に対向する位置まで突出した突出部を有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1エレメントが、第2延在部の途中から前記一辺に向けて第6延在部の先端及び第3延在部の先端に対向する位置まで突出した突出部を有しているので、突出部と第3延在部との間と、突出部と第6延在部との間とで浮遊容量がそれぞれ発生し、各帯域を広くすることができる。
【0012】
第4の発明に係るアンテナ装置は、第2又は第3の発明において、前記第1延在部が、前記第2延在部の接続部から前記第6延在部の途中に向けて突出した容量調整部を有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1延在部が、第2延在部の接続部から第6延在部の途中に向けて突出した容量調整部を有しているので、容量調整部と第6延在部との間に高い浮遊容量が生じて第6延在部を短く設定しても十分なアンテナ特性を得ることが可能になる。なお、容量調整部を第6延在部の途中ではなく先端に向けて突出させた場合、第2エレメントの先端と結合し易くなり、互いに干渉してアンテナ特性が劣化してしまうおそれがある。
【0013】
第5の発明に係るアンテナ装置は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記第2延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第2延在部の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子が接続されているので、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子によってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
【0014】
第6の発明に係るアンテナ装置は、第2から第4の発明のいずれかにおいて、前記第2延在部及び前記第4延在部の少なくとも一方の基端又は途中に、受動素子が接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第2延在部及び第4延在部の少なくとも一方の基端又は途中に、受動素子が接続されているので、各受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置によれば、給電点が、第1グランド領域から離間してアンテナ占有領域の他方の短辺側で第2グランド領域に近接して配され、容量装荷部が、第2延在部の基端部よりも幅広に形成された容量装荷部とされているので、長く第2グランド領域に沿って延在する第1エレメントが更に容量装荷部を介して折り返すことで、良好な低周波側のアンテナ特性が得られると共に、高周波側のアンテナ特性と干渉し難いため、高周波側も良好なアンテナ特性を得ることができる。
したがって、本発明のアンテナ装置は、小型基板において長方形状の狭いアンテナ占有領域であっても高性能に複共振化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態において、各エレメントの位置関係を示す平面図である。
【
図2】本実施形態において、各共振周波数に寄与する主な領域を示す配線図である。
【
図3】本実施形態において、アンテナ装置で生じる浮遊容量を示す配線図である。
【
図4】本実施形態において、アンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)及び底面図(d)である。
【
図5】グランドパターンと給電点との位置関係を示す説明図である。
【
図6】本実施形態において、アンテナ装置の放射効率を示すグラフである。
【
図7】本発明に係る比較例1のアンテナ装置において、各エレメントの位置関係を示す平面図である。
【
図8】本実施形態と比較例1との放射効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を、
図1から
図8を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、
図1及び
図2に示すように、絶縁性の基板本体2と、基板本体2に銅箔等の金属箔でパターン形成されグランドに接続されるグランドパターンGNDと、グランドパターンGNDが形成されていない領域として基板本体2上に基板本体2の一辺2aに接して設けられ前記一辺2aに沿って長方形状に延在したアンテナ占有領域AOAと、アンテナ占有領域AOAに銅箔等の金属箔でパターン形成され給電点FPと接続された第1エレメント3及び第2エレメント4とを備えている。
【0019】
上記グランドパターンGNDは、前記一辺2aとアンテナ占有領域AOAの一方の短辺とに近接した第1グランド領域G1と、前記一辺2aから離間しアンテナ占有領域AOAの一方の長辺に近接した第2グランド領域G2とを有している。すなわち、グランドパターンGNDを矩形状に切り欠いて設けられた長方形状のアンテナ占有領域AOAの短辺側に第1グランド領域G1が設けられていると共に、長辺側に第2グランド領域G2が設けられている。
上記給電点FPは、第1グランド領域G1から離間してアンテナ占有領域AOAの他方の短辺側で第2グランド領域G2に近接して配されている。
【0020】
上記第1エレメント3が、第2エレメント4よりも第2グランド領域G2側に配されている。
第1エレメント3が、給電点FPから前記一辺2aに向かって延在する第1延在部E1と、第1延在部E1から第1グランド領域G1に向かって延在した第2延在部E2と、第2延在部E2の先端部から前記一辺2a側に向かって延在する容量装荷部E2aと、容量装荷部E2aの先端から第2延在部E2に沿って第1グランド領域G1から離間する方向に延在する第3延在部E3とを備えている。
上記容量装荷部E2aは、第2延在部E2の基端部よりも幅広に形成されている。
すなわち、第1エレメント3は、前記一辺2a側にコ字状に折り返されて延在し、第2延在部E2の先端部に、容量装荷部E2aが設けられている。
【0021】
上記第2エレメント4は、第1延在部E1から第2延在部E2とは反対方向に延在する第4延在部E4と、第4延在部E4の先端から前記一辺2aに向けて延在した第5延在部E5と、第5延在部E5の先端から第4延在部E4に沿って第3延在部E3側に向けて延在する第6延在部E6とを有している。
すなわち、第2エレメント4は、前記一辺2a側にコ字状に折り返されて延在している。
なお、第2延在部E2の基端部は、前記一辺2aから離間してアンテナ占有領域AOAの短辺方向(アンテナ占有領域AOAの長手方向に直交する方向)の略中間に配置されている。
また、第6延在部E6の先端部は、第2延在部E2の基端部に沿って対向する位置まで延在している。
【0022】
また、第1エレメント3は、第2延在部E2の途中から前記一辺2aに向けて第6延在部E6の先端及び第3延在部E3の先端に対向する位置まで突出した突出部E2bを有している。この突出部E2bは、第2延在部E2の基端部よりも幅広であることが好ましい。
上記第1延在部E1は、第2延在部E2の接続部から第6延在部E6の途中に向けて突出した容量調整部E1aを有している。この容量調整部E1aは、第2延在部E2の基端部よりも幅広に形成されることが好ましい。
【0023】
上記第2延在部E2の途中には、誘電体アンテナのアンテナ素子ATが接続されている。このアンテナ素子ATは、突出部E2bと容量装荷部E2aとの間に接続されている。
また、第2延在部E2及び第4延在部E4の少なくとも一方の基端又は途中には、受動素子が接続されている。本実施形態では、第2延在部E2の基端部に第1受動素子P1が接続され、第4延在部E4の基端部に第2受動素子P2が接続されている。
さらに、第1延在部E1の基端には、給電点FPと離間して第2グランド領域G2と接続された第3受動素子P3が接続されている。
上記各受動素子は、例えばインダクタ、コンデンサ、抵抗又はジャンパー線が採用される。
【0024】
上記基板本体2は、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、ガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板を採用している。
なお、グランドパターンGNDの領域には、回路部品等を実装しても構わない。
上記給電点FPは、同軸ケーブル等の給電手段を介して別のメイン基板等に設けられた高周波回路(図示略)の給電点に接続される。この給電手段としては、同軸ケーブル、レセプタクル等のコネクタ、接点が板バネ形状を有する接続構造、接点がピンプローブ形状またはピン形状を有する接続構造、ハンダ付け用のランドを用いた接続構造等の種々の構造が採用可能である。
例えば、給電手段として同軸ケーブルを採用する場合、第2グランド領域G2に同軸ケーブルのグランド線が接続されると共に、同軸ケーブルの芯線が給電点FPに接続される。
【0025】
上記アンテナ素子ATは、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば
図4に示すように、セラミックス等の誘電体121の表面にAg等の導体パターン122が形成されたチップアンテナである。
このアンテナ素子ATは、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターン等が異なる素子を選択しても構わない。また、所望の周波数によっては、アンテナ素子ATに使用している誘電体121を、磁性体、若しくは誘電体と磁性体とを混合した複合材料としても構わない。
【0026】
本実施形態のアンテナ装置1では、以下のように浮遊容量が発生する。
すなわち、
図3に示すように、容量装荷部E2aと第1グランド領域G1との間の浮遊容量Caと、容量装荷部E2a及び第2延在部E2の先端部と第2グランド領域G2との間の浮遊容量Cbと、アンテナ素子ATと第2グランド領域G2との間の浮遊容量Ccと、アンテナ素子ATと第3延在部E3との間の浮遊容量Cdと、第3延在部E3と突出部E2bとの間の浮遊容量Ceと、突出部E2bと第6延在部E6との間の浮遊容量Cfと、突出部E2bと第2グランド領域G2との間の浮遊容量Cgと、第6延在部E6と第2延在部E2との間の浮遊容量Chと、容量調整部E1aと第6延在部E6との間の浮遊容量Ciと、第4延在部E4と第6延在部E6との間の浮遊容量Cjと、第4延在部E4及び第5延在部E5と第2グランド領域G2との間の浮遊容量Ckとが発生可能である。
【0027】
次に、本実施形態のアンテナ装置1における各共振周波数について説明する。
本実施形態のアンテナ装置1では、
図6に示すように、周波数の低い方から、第1の共振周波数f1及び第2の共振周波数f2の順に2つの周波数帯に複共振化される。
なお、この測定においては、各受動素子は以下のものを用いた。
第1受動素子P1:L=10nHのインダクタ
第2受動素子P2:L=3.3nHのインダクタ
第3受動素子P3:L=5.6nHのインダクタ
【0028】
「第1の共振周波数f1について」
上記第1の共振周波数f1の周波数は、アンテナ素子ATを含む第1エレメント3により設定および調整することができる。
また、第1の共振周波数f1のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca~Cgの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第1の共振周波数f1は、主に
図2中の一点鎖線A1の部分で調整される。
【0029】
「第2の共振周波数f2について」
上記第2の共振周波数f2の周波数は、第2エレメント5及び容量調整部E1aにより設定および調整することができる。
また、第2の共振周波数f2のインピーダンス調整は、浮遊容量Cf~Ckの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第2受動素子P2の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように第2の共振周波数f2は、主に
図2中の二点鎖線A2の部分で調整される。
【0030】
なお、各共振周波数f1,f2における最終的なインピーダンス調整は、第3受動素子P3の選択によりグランドパターンGND(第2グランド領域G2)側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、フレキシブルに行うことが可能である。
【0031】
なお、低周波の設計を考慮すると、
図5に示すように、第2グランド領域G2の垂直方向(アンテナ占有領域AOAの短辺が延在する方向)の長さAが長い方が望ましいが、小型の基板本体2の場合、アンテナ占有領域AOAも狭くなる場合が多く、長さCが長くなる位置に給電点FPを設けることが理想である。すなわち、本実施形態では、第2グランド領域G2の長手方向に沿って第1グランド領域G1から給電点FPをできるだけ離間させることが好ましい。
【0032】
従来の手法による比較例1のアンテナ装置101と本実施形態のアンテナ装置1とについて、小型の基板本体2の場合において放射効率を比較した結果を
図8に示す。
なお、比較例1及びアンテナ装置101では、
図7に示すように、給電点FPを第1グランド領域G1に近い側に配し、給電点FPから第1グランド領域G1側に高周波側アンテナエレメント103をコ字状に形成し、高周波側アンテナエレメント103とは反対側に向けて給電点FPから低周波側アンテナエレメント104をL字状に延在させた。また、低周波側アンテナエレメント104は、先端部にアンテナ素子ATが接続されている。
【0033】
図8からわかるように、比較例1では、低周波(Low Band)及び高周波(High Band)の両方とも性能が低くなってしまったのに対し、本実施形態のアンテナ装置1では、低周波、高周波共に十分なアンテナ特性が得られている。
【0034】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、給電点FPが、第1グランド領域G1から離間してアンテナ占有領域AOAの他方の短辺側で第2グランド領域G2に近接して配され、第1エレメント3の容量装荷部E2aが、第2延在部E2の基端部よりも幅広に形成されているので、第1グランド領域G1から離間した給電点FPから長く第1エレメント3を第1グランド領域G1に向けて延在させることができると共に、容量装荷部E2aで得られる第1グランド領域G1との間の浮遊容量Caによって第1エレメント3の低周波と第2エレメント4の高周波との干渉を抑制可能になる。
【0035】
したがって、長く第2グランド領域G2に沿って延在する第1エレメント3が更に容量装荷部E2aを介して折り返すことで、良好な低周波側のアンテナ特性が得られると共に、高周波側と干渉し難いため、高周波側も良好なアンテナ特性を得ることができる。また、折り返した第3延在部E3を長くし過ぎると、反対側の第2エレメント4や第2延在部E2等に干渉し易くなるが、容量装荷部E2aを設けることで、第1グランド領域G1との間の浮遊容量Caを大きくして短い第3延在部E3でも十分な特性を得ることが可能になる。
【0036】
また、第4延在部E4と第5延在部E5と第6延在部E6とを有しているので、折り返して長く延在した第2エレメント4によって良好な高周波側のアンテナ特性を得ることができる。
また、第1エレメント3が、第2延在部E2の途中から前記一辺2aに向けて第6延在部E6の先端及び第3延在部E3の先端に対向する位置まで突出した突出部E2bを有しているので、突出部E2bと第3延在部E3との間と、突出部E2bと第6延在部E6との間とで浮遊容量Ce,Cfがそれぞれ発生し、各帯域を広くすることができる。
【0037】
さらに、第1延在部E1が、第2延在部E2の基端部よりも幅広に形成され第2延在部E2の接続部から第6延在部E6の途中に向けて突出した容量調整部E1aを有しているので、容量調整部E1aと第6延在部E6との間に高い浮遊容量Ciが生じて第6延在部E6を短く設定しても十分なアンテナ特性を得ることが可能になる。なお、容量調整部E1aを第6延在部E6の途中ではなく先端に向けて突出させた場合、第2エレメント4の先端と結合し易くなり、互いに干渉してアンテナ特性が劣化してしまうおそれがある。
【0038】
なお、第2延在部E2の途中に誘電体アンテナのアンテナ素子ATが接続されているので、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子ATによってエレメント長の短縮化及び高インピーダンス化と、浮遊容量の増大とが可能になり、複共振化の調整が容易になると共に小型化とアンテナ特性の向上とを図ることができる。
また、第2延在部E2及び第4延在部E4の少なくとも一方の基端又は途中に、受動素子P1,P2が接続されているので、各受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた複共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、第2延在部にアンテナ素子を設けているが、他の延在部にアンテナ素子を設けてエレメントの短縮化を行い、装置全体の小型化を図っても構わない。
【0040】
また、上述したようにアンテナ素子を接続してエレメントの一部とすることが好ましいが、アンテナ素子を接続せずに、銅箔等の金属箔のみで延在した第2延在部でも構わない。この際、高インピーダンス化するために、第2延在部の少なくとも一部を他の部分よりも幅狭の細いパターンにしたり、ジグザグに折り返しながら全体として一定方向に延在するミアンダパターンとしたりすることが好ましい。
【0041】
さらに、基板サイズに余裕がある場合には、上記エレメントの一部を線状若しくは板状の金属を折り返した形状のパターンに置き換えても構わない。また、同一の基板本体の表裏面に対してスルーホールを用いて、螺旋状などの形状に旋回させたパターンにしても構わない。
また、第3延在部や第6延在部をスルーホールを介して基板本体の裏面側に形成しても構わない。
【符号の説明】
【0042】
1,101,102…アンテナ装置、2…基板本体、2a…基板本体の一辺、3…第1エレメント、4…第2エレメント、AT…アンテナ素子、E1…第1延在部、E1a…容量調整部、E2…第2延在部、E2a…容量装荷部、E2b…突出部、E3…第3延在部、E4…第4延在部、E5…第5延在部、E6…第6延在部、GND…グランドパターン、G1…第1グランド領域、G2…第2グランド領域、P1…第1受動素子、P2…第2受動素子、P3…第3受動素子、FP…給電点